(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係るニッケル合金多孔体の製造方法は、三次元網目状構造を有する樹脂成形体の骨格の表面に、ニッケルと添加金属とのニッケル合金粉末を含有する塗料を塗布する工程と、
前記塗料を塗布した前記樹脂成形体の骨格の表面にニッケルをめっきする工程と、
前記樹脂成形体を除去する工程と、
熱処理によって前記添加金属を前記ニッケル中に拡散させる工程と、
を有するニッケル合金多孔体の製造方法、である。
上記(1)に記載の発明によれば、ニッケルに添加する金属の濃度が低い場合であっても、濃度の制御が容易で、かつ多孔体中に添加金属を均一に拡散させることが可能なニッケル合金多孔体の製造方法を提供することができる。
【0014】
(2)上記(1)に記載のニッケル合金多孔体の製造方法は、前記添加金属が、Cr、Sn、Co、Cu、Al、Ti、Mn、Fe、Mo、及びWからなる群より選ばれるいずれか一種以上の金属であることが好ましい。
上記(2)に記載の発明によれば、ニッケル多孔体中にAl、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Mo、Sn、及びWがなる群より選ばれるいずれか一種以上の添加金属を均一に分布させることができ、かつその濃度制御を容易に行うことができる。
【0015】
(3)上記(1)又は(2)に記載のニッケル合金多孔体の製造方法は、前記ニッケル合金粉末の少なくとも表面が酸化されていることが好ましい。
上記(3)に記載の発明によれば、ニッケル合金粉末の粒径を小さくして、ニッケル層中に添加金属を拡散させやすくすることができる。
【0016】
(4)上記(1)から上記(3)のいずれか一項に記載のニッケル合金多孔体の製造方法は、前記ニッケル合金粉末を含有する塗料が、更にカーボン粉末を含有していることが好ましい。
上記(4)に記載の発明によれば、樹脂成形体の表面の導電性をより向上させて、ニッケルめっきを行いやすくすることができる。
【0017】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係るニッケル合金多孔体の製造方法の具体例を、以下に、より詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
本発明の実施形態に係るニッケル合金多孔体の製造方法を、
図1A〜
図1Cを用いて詳述する。
図1A〜
図1Cは本発明の実施形態に係るニッケル合金多孔体の製造方法によってニッケル合金多孔体を製造する場合の、各工程における樹脂成形体骨格の断面の状態を表す概念図である。
まず、ニッケル合金多孔体の基材となる樹脂成形体1を用意する。そして、樹脂成形体1の骨格の表面が導電性を有するようにするために、前記樹脂成形体1の骨格の表面に導電性粉末を含有する塗料を塗布する。この導電性粉末として、ニッケル多孔体に添加する金属とニッケルとの合金粉末4を用いる(
図1A参照)。続いて、樹脂成形体1の骨格の表面にニッケルめっき層3を形成する。樹脂成形体1の骨格の表面は導電性になっているため電解めっきによってニッケルめっき層3を形成することが可能である。これにより、
図1Bに示すように、樹脂成形体1の骨格の表面にニッケル合金粉末4による層とニッケルめっき層3とが形成される。
【0019】
そして、前記樹脂成形体を除去すべく熱処理を行うが、このとき、樹脂成形体の骨格の表面のニッケル合金粉末4はニッケルめっき層3中に速やかに拡散を始める。このため、樹脂成形体1が収縮し始めた場合に、ニッケル合金粉末4は樹脂成形体1の表面に付着して移動するのではなく、ニッケルめっき層1に取り込まれたままとなる(
図1C参照)。
すなわち、従来の方法では樹脂成形体の骨格の表面の金属粉末が金属めっき層中に拡散を始める前に樹脂成形体の骨格表面に引っ張られてしまい金属めっき層に取り込まれないという現象が一部でみられた(
図3C参照)が、本発明の実施形態に係るニッケル合金多孔体の製造方法ではこのような現象が起こらず、ニッケル合金粉末を全て有効に利用することができる。
【0020】
上記のように本発明の実施形態に係るニッケル合金多孔体の製造方法は、樹脂成形体の骨格の表面にニッケル合金粉末を含有する塗料を塗布する工程と、ニッケルをめっきする工程と、前記樹脂成形体を除去する工程と、ニッケル合金粉末をニッケル中に拡散させる工程と、を有するものである。
以下に各工程について詳述する。
【0021】
(ニッケル合金粉末を含有する塗料を塗布する工程)
−樹脂成形体−
三次元網目状構造を有する樹脂成形体としては、樹脂発泡体、不織布、フェルト、織布などが用いられるが必要に応じてこれらを組み合わせて用いることもできる。また、素材としては特に限定されるものではないが、金属をめっきした後焼却処理により除去できるものが好ましい。また、樹脂成形体の取扱い上、特にシート状のものにおいては剛性が高いと折れるので柔軟性のある素材であることが好ましい。
【0022】
本発明の実施形態に係るニッケル合金多孔体の製造方法においては、三次元網目状構造を有する樹脂成形体として樹脂発泡体を用いることが好ましい。樹脂発泡体は、多孔性のものであればよく公知又は市販のものを使用でき、例えば、発泡ウレタン、発泡スチレン等が挙げられる。これらの中でも、特に多孔度が大きい観点から、発泡ウレタンが好ましい。発泡状樹脂の厚み、多孔度、平均孔径は限定的でなく、用途に応じて適宜に設定することができる。
【0023】
−ニッケル合金粉末−
前記樹脂成形体の骨格の表面を導電化処理するために用いるニッケル合金粉末は、体積平均粒径が10μm以下のものを用いる。前記ニッケル合金粉末をバインダーや溶剤中に添加して塗料を作製するためには、体積平均粒径は小さいほうが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。また、用いる樹脂成形体の骨格の径に合わせて適宜選択すればよい。
【0024】
前記ニッケル合金粉末において、ニッケルと合金化する添加金属は特に限定されるものではなく、目的に応じて所望の金属を選択すればよい。例えば、Cr、Sn、Co、Cu、Al、Ti、Mn、Fe、Mo、及びWからなる群より選ばれるいずれか一種以上の金属を用いることが好ましい。
【0025】
本発明の実施形態に係るニッケル合金多孔体の製造方法においては、前記ニッケル合金粉末はニッケルと添加金属とが完全に均質な合金を形成していてもよいし、混合型やコアシェル型、あるいは複合型の複合粉末であってもよい。本発明においてはこれらの態様の粉末を全てニッケル合金粉末と呼ぶものとする。
なお、前記混合型の粉末とは、ニッケル粒子の内部に添加金属の複数の単体粒子が存在していたり、ニッケル粒子の内部に層状の添加金属が存在したりしているものをいう。また、コアシェル型とは、単体の添加金属の表面がニッケルで被覆されているものをいう。
複合型とは、例えば、添加金属とニッケル合金とのコアシェル構造や、コアシェル構造中に部分的に添加金属が粒子状や層状で存在しているなどの状態のものをいう。
【0026】
いずれのものも、ニッケルめっき層中にニッケル合金粒子が拡散しやすいように、ニッケル合金粒子の表面の大部分がニッケルあるいは均質なニッケル合金となっているものを用いる。
このようなニッケル合金粉末は、ニッケル合金を粉砕する粉砕法や、アトマイズ法などによって得ることができる。
【0027】
前記ニッケル合金粉末は、少なくとも表面が酸化されていることが好ましい。
ニッケルと添加金属との合金を粉砕することによってニッケル合金粉末を作製する場合には、材料となるニッケル合金が酸化された状態の方が粉砕し易く、体積平均粒径がより小さいニッケル合金粉末を得ることができる。このような小粒径のニッケル合金粉末を用いることで、ニッケル中に添加金属を拡散させ易くすることができる。また、酸化された状態のニッケル合金を粉砕して得られるニッケル合金粉末は、少なくとも表面が酸化された状態になっているが、添加金属をニッケル中に拡散させる熱処理工程において還元させることができる。あるいは、別途、還元性雰囲気下において熱処理を行って金属酸化物を還元させる工程を行ってもよい。
【0028】
−カーボン粉末−
前記ニッケル合金粉末の少なくとも表面が酸化されており導電性の粉末ではない場合には、カーボン粉末を更に添加して用いることが好ましい。これにより前記塗料の導電性を高めることができる。カーボン粉末の体積平均粒径は前記ニッケル合金多孔体と同様に10μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。また、樹脂成形体の骨格の径に合わせて適宜選択すればよい。
カーボン粉末の材質としては、例えば、結晶性のグラファイト、非晶質のカーボンブラック等が挙げられる。これらの中でも、一般的に粒子径が小さい傾向があるという点で、特にグラファイトが好ましい。
【0029】
−塗料−
前記ニッケル合金粉末と、必要な場合にはカーボン粉末とをバインダーに添加して混合することで導電性の塗料を作製することができる。
前記樹脂成形体の骨格の表面を導電化処理するためには、前記塗料を前記樹脂成形体の骨格の表面に塗布すればよい。塗布する方法は特に限定されるものではなく、浸漬による方法や、刷毛などを用いて塗布する方法が挙げられる。これにより前記樹脂成形体の骨格の表面に導電性被覆層が形成される。
前記導電性被覆層は前記樹脂成形体の骨格の表面に連続的に形成されていればよい。また、導電性被覆層の目付量は特に限定的ではなく、通常は0.1g/m
2以上300g/m
2以下程度とすればよく、1g/m
2以上、100g/m
2以下程度とすることが好ましい。
【0030】
(ニッケルをめっきする工程)
ニッケルをめっきする工程においては、公知のめっき法を利用することができ、電気めっき法を用いることが好ましい。電気めっき処理以外にも、無電解めっき処理及び/又はスパッタリング処理によってめっき膜の厚みを増していけば電気めっき処理の必要性はないが、生産性、コストの観点から好ましくない。このため、上記したように、まず樹脂成形体を導電化処理した後に、電気めっき法によってニッケルめっき層を形成する方法を採用することによって、高い生産性、低コストで作製できる。また、骨格断面の空孔率が1%未満の安定性の高いニッケル合金多孔体が得られる。
【0031】
なお、めっき層は多層になっていてもよいが、最初のめっき層はニッケルめっき層とする。これにより、前記ニッケル合金粒子がニッケルめっき層中に拡散しやすくすることができる。ニッケルめっき層の上には目的に応じて適宜金属めっき層を形成してよい。
ニッケルめっき層は、前記導電性被覆層が露出しない程度に当該導電性被覆層上に形成されていればよい。ニッケルめっき層の目付量は限定的ではなく、ニッケル合金多孔体の厚みによって適宜選択すればよいが、強度と気孔率を両立するため、厚さ1mmあたりの目付量として、通常100g/m
2以上、600g/m
2以下程度とすればよく、200g/m
2以上、500g/m
2以下程度とすることがより好ましい。
【0032】
(樹脂成形体を除去する工程)
以上の工程で得られた樹脂と金属の複合体を大気中で熱処理することにより、樹脂成形体を除去することができる。
熱処理温度は、700℃以上、1200℃以下とすることが好ましい。700℃以上であることにより樹脂成形体を除去すると共に、ニッケル合金粉末をニッケルめっき層中に拡散させやすくすることができる。また、1200℃以下であることにより、ニッケルが酸化しすぎることを抑制することができる。これらの観点から熱処理温度は750℃以上、1100℃以下であることがより好ましく、800℃以上、1050℃以下であることが更に好ましい。
また、熱処理時間は熱処理温度に応じて適宜変更すればよい。例えば、800℃で熱処理を行う場合には、10分以上、30分以下程度で良好に樹脂成形体を除去することができる。
【0033】
(熱処理によって添加金属を拡散させる工程)
この工程はニッケルめっき層中に取り込まれた添加金属を更に均一に拡散させるための工程である。
熱処理温度と熱処理時間は、添加した金属に応じて適宜選択すればよい。例えば、ニッケルクロム合金粉末あるいはニッケルタングステン粉末を用いてニッケル合金多孔体を作製する場合には、1100℃で30分間以上熱処理すればよい。スズやコバルト、銅、アルミ、チタン、マンガン、鉄、モリブデンとニッケルとの合金粉末を用いる場合であれば1000℃で15分以上熱処理すればよい。
また、熱処理を、H
2ガス等を用いて還元雰囲気で行うことで、ニッケル合金粉末あるいはニッケル合金酸化物粉末とニッケルめっき層を還元することができる。また、前記導電性被覆層中に含まれるカーボン粉末は、高温下で強力な還元剤として作用し、ニッケル合金粉末あるいはニッケル合金酸化物粉末とニッケルめっき層を還元する。
また、添加金属種に応じた最適な温度、時間で熱処理を行うことによって、カーボン粉末を用いた場合には、ニッケル合金の還元(金属中の酸素濃度低減)、熱拡散による合金化、結晶粒の粗大化を行うことがでる。その結果、ニッケル合金多孔体の強度、靭性ともに向上し、曲げる、潰す等の塑性変形を伴う加工に対しても破断しない強靱なニッケル合金多孔体が得られる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は例示であって、本発明の金属多孔体はこれらに限定されるものではない。本発明の範囲は請求の範囲の範囲によって示され、請求の範囲の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0035】
[実施例1]
(樹脂成形体の導電化処理)
最初に、三次元網目状構造を有する樹脂成形体として、1.5mm厚の発泡ポリウレタンシート(孔径0.45mm)を用意した。続いて、体積平均粒径10μmのグラファイト100g、及び体積平均粒径0.1μmのカーボンブラック20g、表1に示す体積平均粒径のニッケル合金酸化物粉末100gを0.5Lの10%アクリル酸エステル系樹脂水溶液に分散し、この比率で粘着塗料を作製した。
前記ニッケル合金酸化物粉末としては、ニッケル−クロム合金酸化物粉末、ニッケル−コバルト合金酸化物粉末、ニッケル−スズ合金酸化物粉末、及びニッケル−銅合金酸化物粉末を用いた。また、各ニッケル合金酸化物粉末は、各ニッケル合金粉末を酸化させたものを粉砕・分級し、体積平均粒径を0.5μm〜1.5μmにして用いた。
【0036】
次に前記発泡ポリウレタンシートを前記塗料に連続的に漬け、ロールで絞った後乾燥させることによって導電化処理を施し、三次元網目状構造を有する樹脂成形体の表面に導電性被覆層を形成した。なお、導電性塗料の粘度は増粘剤によって調整し、塗料の塗布目付量は合金粉末換算で20g/m
2とした。塗布目付量を表1に示す。
【0037】
(ニッケルめっき工程)
導電化処理を施した三次元網目状構造を有する樹脂成形体の骨格の表面に、電気めっきによってニッケルめっき層を300g/m
2となるように形成した。めっき液としては、スルファミン酸ニッケルめっき液を用いた。
【0038】
(樹脂成形体を除去する工程)
大気中で、800℃、15分の熱処理をすることで、樹脂成形体を燃焼除去し、還元性水素雰囲気で1000℃、15分の熱処理をして酸化した金属多孔体を還元した。
(添加金属を拡散させる工程)
水素雰囲気下で、1100℃、30分の熱処理をすることで、添加金属をニッケル中に充分に拡散させた。
以上のようにしてニッケル合金多孔体1〜4を作製した。
【0039】
<評価>
上記で得たニッケル合金多孔体1〜4の骨格の断面を電子顕微鏡(SEM)によって観察した結果を
図2A〜
図2Dに示す。
図2A〜
図2Dに示すように、ニッケル合金多孔体1〜4においては、ニッケル合金多孔体の骨格の内部表面に添加金属粒子が残っておらず、添加金属がニッケル中に均一に拡散していることが確認された。
【0040】
[実施例2]
実施例1において、ニッケル−クロム合金酸化物粉末、ニッケル−コバルト合金酸化物粉末、ニッケル−スズ合金酸化物粉末、及びニッケル−銅合金酸化物粉末の替わりに、ニッケル−クロム合金粉末、ニッケル−コバルト合金粉末、ニッケル−スズ合金粉末、及びニッケル−銅合金粉末を用いた以外は実施例1と同様にしてニッケル合金多孔体5〜8を作製した。各ニッケル合金粉末の体積平均粒径及び塗布目付量を表1に示す。
実施例1と同様にしてニッケル合金多孔体5〜8の骨格の断面を電子顕微鏡によって観察したところ、ニッケル合金多孔体の骨格の内部表面には添加金属粒子が残っておらず、添加金属がニッケル中に均一に拡散していることが確認された。
【0041】
[比較例1]
実施例1において、ニッケル−クロム合金酸化物粉末、ニッケル−コバルト合金酸化物粉末、ニッケル−スズ合金酸化物粉末、及びニッケル−銅合金酸化物粉末の替わりに、酸化クロム粉末、酸化コバルト粉末、酸化スズ粉末、及び酸化銅粉末を用いた以外は実施例1と同様にしてニッケル合金多孔体9〜12を作製した。なお、各酸化金属粉末は、各金属粉末を酸化させて粉砕・分級したものを用いた。各酸化金属粉末の体積平均粒径及び塗布目付量を表1に示す。
実施例1と同様にしてニッケル合金多孔体9〜12の骨格の断面を電子顕微鏡によって観察した結果を
図2E〜
図2Hに示す。
図2E〜
図2Hに示すように、金属多孔体9〜12においては、添加金属粒子の一部がニッケル合金多孔体の骨格の内部表面に留まっていることが確認された。
【0042】
[比較例2]
実施例1において、ニッケル−クロム合金酸化物粉末、ニッケル−コバルト合金酸化物粉末、ニッケル−スズ合金酸化物粉末、及びニッケル−銅合金酸化物粉末の替わりに、クロム粉末、コバルト粉末、スズ粉末、及び銅粉末を用いた以外は実施例1と同様にしてニッケル合金多孔体13〜16を作製した。
実施例1と同様にしてニッケル合金多孔体13〜16の骨格の断面を電子顕微鏡によって観察したところ、添加金属粒子の一部がニッケル合金多孔体の骨格の内部表面に留まっていることが確認された。
【0043】
【表1】
【0044】
本発明のニッケル合金多孔体である金属多孔体は、燃料電池以外に、水電解による水素製造用途にも好適に使用できる。
【0045】
図4は従来の水分解装置を表す概念図である。イオン透過膜5の両端にそれぞれ集電体6が設けられている。イオン透過膜5は主に水素または酸素を透過し、集電体6はステンレス製の波型プレートや溝付きのカーボン構造体などで構成されるガス流路をイオン透過膜と接する側に有している。水蒸気はこのガス流路内に導入され、例えば、分解された水素イオンがイオン透過膜5を透過し反対側のガス流路から排出されるとともに、分解された酸素は分解されなかった水蒸気とともにそのまま排出される。
【0046】
図5は本発明の一態様に係る金属多孔体を用いた水分解装置を表す概念図である。ガス流路が金属多孔体7で形成されている点で
図4の従来の水分解装置と異なるが、その他の点では同様の構成である。このように集電体6のガス流路を金属多孔体7で形成することで、従来に比べさらに効率的に水分解による水素を製造することができる。
【0047】
(1)のアルカリ電解方式では、強アルカリ水溶液に陽極と陰極を浸漬し、電圧を印加することで水を電気分解する方式である。金属多孔体を電極として使用することで水と電極の接触面積が大きくなり、水の電気分解の効率を高めることができる。金属多孔体の孔径は100μm以上5000μm以下が好ましい。100μmより小さいと、発生した水素・酸素の気泡の抜けが悪くなり、水が電極と接触する面積が減って効率が低下する。また、5000μmより大きいと電極の表面積が小さくなるので効率が低下する。同様の観点から、400μm以上4000μm以下がさらに好ましい。
【0048】
金属多孔体の厚さや金属量は、電極面積が大きくなるとたわみなどの原因となるため、設備の規模によって適宜選択すればよい。気泡の抜けと表面積の確保を両立するために、異なる孔径を持つ複数の金属多孔体を組み合わせて使うこともできる。
【0049】
(2)のPEM方式は、固体高分子電解質膜を用いて水を電気分解する方法で、固体高分子電解質膜の両面に陽極と陰極を配置し、陽極側に水を流しながら電圧を印加することで、水の電気分解により発生した水素イオンを、固体高分子電解質膜を通して陰極側へ移動させ、陰極側で水素として取り出す方式である。動作温度は100℃程度である。水素と酸素で発電して水を排出する固体高分子型燃料電池と、同様の構成で全く逆の動作をさせるものである。陽極側と陰極側は完全に分離されているため、純度の高い水素を取り出せる利点がある。陽極・陰極共に電極を透過させて水・水素ガスを通す必要があるため、電極には導電性の多孔体が必要である。
【0050】
本発明の金属多孔体は高い気孔率と良好な電気伝導性を備えているため、固体高分子型燃料電池に好適に使用できるのと同じように、PEM方式の水電解にも好適に使用できる。金属多孔体の孔径は100μm以上5000μm以下が好ましい。100μmより小さいと、発生した水素・酸素の気泡の抜けが悪くなり、水が固体高分子電解質と接触する面積が減って効率が低下する。また、5000μmより大きいと保水性が悪くなるため、水が十分に反応する前に通り抜けてしまい効率が低下する。同様の観点から、400μm以上4000μm以下がさらに好ましい。
【0051】
金属多孔体の厚さや金属量は、設備の規模によって適宜選択すればよいが、気孔率が小さくなり過ぎると水を投入するための圧力損失が大きくなるため、気孔率は30%以上となるように厚みと金属量を調整することが好ましい。また、本方式では固体高分子電解質と電極の導通は圧着になるため、加圧時の変形・クリープによる電気抵抗増加が、実用上問題ない範囲になるように金属量を調節する必要がある。金属量としては400g/m
2以上が好ましい。他、気孔率の確保と電気的接続の両立のために、異なる孔径を持つ複数の金属多孔体を組み合わせて使うこともできる。
【0052】
(3)のSOEC方式は、固体酸化物電解質膜を用いて水を電気分解する方法で、電解質膜がプロトン伝導か酸素イオン伝導かによって構成が異なる。酸素イオン伝導膜では、水蒸気を投入する陰極側で水素が発生するため、水素純度が下がる。そのため、水素製造の観点からはプロトン伝導膜が好ましい。プロトン伝導膜の両側に陽極と陰極を配置し、陽極側に水蒸気を導入しながら電圧を印加することで、水の電気分解により発生した水素イオンを、固体酸化物電解質膜を通して陰極側へ移動させ、陰極側で水素のみを取り出す方式である。動作温度は600℃〜800℃程度である。水素と酸素で発電して水を排出する固体酸化物型燃料電池と、同様の構成で全く逆の動作をさせるものである。陽極・陰極共に電極を透過させて水蒸気・水素ガスを通す必要があるため、電極には導電性かつ、特に陽極側で高温の酸化雰囲気に耐える多孔体が必要である。
【0053】
本発明の金属多孔体は高い気孔率と良好な電気伝導性と高い耐酸化性・耐熱性を備えているため、固体酸化物型燃料電池に好適に使用できるのと同じように、SOEC方式の水電解にも好適に使用できる。酸化性雰囲気となる側の電極には、Crなどの高い耐酸化性を有する金属を添加したNi合金の使用が好ましい。金属多孔体の孔径は100μm以上5000μm以下が好ましい。100μmより小さいと、水蒸気や発生した水素の通りが悪くなり、水蒸気が固体酸化物電解質と接触する面積が減って効率が低下する。また、5000μmより大きいと圧損が低くなり過ぎるため、水蒸気が十分に反応する前に通り抜けてしまい効率が低下する。同様の観点から、400μm以上4000μm以下がさらに好ましい。
【0054】
金属多孔体の厚さや金属量は、設備の規模によって適宜選択すればよいが、気孔率が小さくなり過ぎると水蒸気を投入するための圧力損失が大きくなるため、気孔率は30%以上となるように厚みと金属量を調整することが好ましい。また、本方式では固体酸化物電解質と電極の導通は圧着になるため、加圧時の変形・クリープによる電気抵抗増加が、実用上問題ない範囲になるように金属量を調節する必要がある。金属量としては400g/m
2以上が好ましい。他、気孔率の確保と電気的接続の両立のために、異なる孔径を持つ複数の金属多孔体を組み合わせて使うこともできる。
【0055】
−付記−
(水分解装置)
三次元網目状構造を有する樹脂成形体の骨格の表面に、ニッケルと添加金属とのニッケル合金粉末を含有する塗料を塗布する工程と、
前記塗料を塗布した前記樹脂成形体の骨格の表面にニッケルをめっきする工程と、
前記樹脂成形体を除去する工程と、
熱処理によって前記添加金属を前記ニッケル中に拡散させる工程と、
によって製造されたニッケル合金多孔体を含む集電体と、
前記集電体を両端に有するイオン透過膜とを備える、水分解装置。
【0056】
(水分解方法)
ニッケル合金多孔体を含む集電体を準備する工程を備え、
前記ニッケル合金多孔体は、
三次元網目状構造を有する樹脂成形体の骨格の表面に、ニッケルと添加金属とのニッケル合金粉末を含有する塗料を塗布する工程と、
前記塗料を塗布した前記樹脂成形体の骨格の表面にニッケルをめっきする工程と、
前記樹脂成形体を除去する工程と、
熱処理によって前記添加金属を前記ニッケル中に拡散させる工程と、によって製造され、
さらに、前記集電体を両端に有するイオン透過膜を形成する工程と、
水蒸気を前記集電体に導入し前記イオン透過膜を透過した水素を取り出す工程とを備える、水分解方法。