(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6653321
(24)【登録日】2020年1月29日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】ゴルフパッティング器具
(51)【国際特許分類】
A63B 69/36 20060101AFI20200217BHJP
【FI】
A63B69/36 511H
A63B69/36 514A
A63B69/36 533A
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-518038(P2017-518038)
(86)(22)【出願日】2015年6月12日
(65)【公表番号】特表2017-517379(P2017-517379A)
(43)【公表日】2017年6月29日
(86)【国際出願番号】US2015035667
(87)【国際公開番号】WO2015192082
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2018年5月7日
(31)【優先権主張番号】14/304,664
(32)【優先日】2014年6月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516371357
【氏名又は名称】イ、ジョンフン
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジョンフン
【審査官】
槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第07140971(US,B1)
【文献】
国際公開第2009/005434(WO,A1)
【文献】
登録実用新案第3063959(JP,U)
【文献】
実開昭59−127674(JP,U)
【文献】
特開2013−042866(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0295722(US,A1)
【文献】
米国特許第06699141(US,B1)
【文献】
特開2006−341035(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第02368024(GB,A)
【文献】
米国特許第03610631(US,A)
【文献】
米国特許第03772841(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 57/40
A63B 69/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフパッティング器具であって、
展開された状態で細長い平面を形成するように構成された可撓性材料製のパターマット部材と、
前記パターマット部材上に形成された第1の取付機構と、
前記パターマット部材の端部まで移動して来たボールが重力により落とされる空洞部を画定する第1の壁を有する可搬体ユニットとを含み、
前記第1の壁の上面が、前記パターマット部材の前記第1の取付機構に結合する第2の取付機構上部を有し、前記第1の壁の側面が、保管のために前記第1の壁の周りに前記パターマット部材を巻き付けるときに前記第1の取付機構に結合する第2の取付機構側部を有することを特徴とする器具。
【請求項2】
前記可撓性材料が、スプリングテンパーステンレス鋼、スプリングテンパー青銅、スプリングテンパー真鍮、スプリングテンパー銅のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記パターマット部材の幅が、約2インチ(5.08cm)であることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記可撓性材料が、鏡面を含むことを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項5】
前記第1の取付機構が、前記パターマット部材の一端付近に配置された鉤状部材であり、
前記第2の取付機構上部及び前記第2の取付機構側部が、前記鉤状部材が係入する切欠溝であることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項6】
ゴルフパッティング器具であって、
展開された状態で細長い平面を形成するように構成された可撓性材料製のパターマット部材と、
前記パターマット部材に着脱可能に結合するように構成された可搬体ユニットであって、該可搬体ユニットが第1の壁を有し、該第1の壁の周りに前記パターマット部材が巻き付けられて保管されるように構成されており、かつ前記第1の壁が空洞部を画定し、該空洞部が、前記パターマット部材の端部まで移動して来たボールを捕捉するように構成された該可搬体ユニットと、
前記第1の壁を取り囲み、かつ前記第1の壁との間に空間が形成されるように前記第1の壁から離間されている第2の壁とを含み、
前記第1の壁及び前記第2の壁が、互いに対して同軸回転するように構成されていることを特徴とする器具。
【請求項7】
前記第1の壁及び前記第2の壁が、その断面が同心円を含むように配置されていることを特徴とする請求項6に記載の器具。
【請求項8】
前記第1の壁が、基部から一体的に延出するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の器具。
【請求項9】
前記第1及び第2の壁に対して垂直に延在しかつ前記第2の壁と一体化された上壁を有することを特徴とする請求項6に記載の器具。
【請求項10】
前記第1の壁が切欠開口を含み、前記第2の壁が開口部を含み、前記切欠開口及び前記開口部が互いに整合されることにより、前記空洞部に至る窓孔が形成されるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の器具。
【請求項11】
前記第1の壁上の取付機構を露出させる開口部を前記第2の壁にさらに含み、それによって、前記パターマット部材を前記第1の壁に取り付けることを可能にせしめ、さらに前記第1の壁に対する前記第2の壁の回転により前記パターマット部材を前記第1の壁に巻き付けることを可能にせしめたことを特徴とする請求項6に記載の器具。
【請求項12】
前記第2の壁に対して上壁を介して連結されかつ前記空洞部に収まるように構成された第3の壁をさらに含み、
前記第1の壁が、前記第2の壁と前記第3の壁の間に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の器具。
【請求項13】
前記第3の壁の一端から他端まで延在してカップを形成する底面をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の器具。
【請求項14】
前記第3の壁が、前記カップ内から外へボールが転がり出ることを可能にする内側開口部を含み、
前記底面が、その最も低い部分が前記内側開口部の近くに位置するように傾斜していることを特徴とする請求項13に記載の器具。
【請求項15】
前記空洞部を開閉するように構成されたラッチ部材をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の器具
【請求項16】
前記パターマット部材が、該パターマット部材上で使用されるべきボールよりも17〜25%広い幅を有するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項17】
前記可撓性材料が、巻き上げ時の癖が残ることなく、巻き上げられ、かつ平らに伸ばせるスプリングテンパー金属または金属合金を含むことを特徴とする請求項1に記載の器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2014年6月13日に出願された米国特許出願第14/304,664号の利益を主張する。当該出願の内容は、引用を以って本明細書の一部となす。
【0002】
技術分野
本願は、ゴルフパッティング器具に関する。詳細には、ゴルフパッティング器具であって、平らに広げて使用することができかつゴルフパッティング器具内に格納することもできるパターマット部材を含むゴルフパッティング器具に関する。
【背景技術】
【0003】
ゴルフは、今日あらゆる年代の男女が楽しめる非常に人気のあるスポーツである。特に、狭い空間で多くの時間を費やしかつ/または多忙なスケジュールに追われているような都市生活者にとって、ゴルフコースに出ることは、多くの理由から魅力的である。ゴルフコースが広大な緑豊かな開けた土地であるという事実は、多くのプレーヤーに対する訴求力を高めているが、ゴルフというスポーツのまさにその側面がゴルフの練習を困難にすることもある。例えば、ゴルフ練習場やゴルフコースで練習をするには、必然的に、嵩張るゴルフ用具を持ってそこまで赴くことが必要になる。プレーヤーがゴルフ練習場やゴルフコースからどれだけ離れているかによって、仕事の短い休み時間や昼休みに軽く練習することができる場合もあればできない場合もある。
【0004】
この問題に対処するために、今日では、個人がゴルフコースに赴かずとも練習することを可能にする種々のゴルフ練習器具が市販されている。
また、特許文献1には、ボールに係合するカラーと、カラーに巻きつけて保管できる可撓性直線トラックとを備えるパッティング練習装置が記載されている。特許文献2には、カップが設けられた穴を有するパッティングマットと、パッティングマットを巻きつけ可能なロールとを備えるパッティング練習用装置が記載されている。これらの器具は、或る程度の練習時間を簡便迅速に捻出できるように、屋内使用向けに設計されているものが多い。パッティングは、ボールが高くまたは遠くに飛ばないので、屋内練習に特に適している。
残念ながら、現在市販されているゴルフパッティング練習器具は、一般的に、嵩張っていて可搬性に欠ける。さらに、そのようなゴルフパッティング練習器具の多くのパターマットは、大抵は、ゴルファーのパッティング能力の限界を押し広げるように最適化されてはいない。それどころか、多くの練習器具は、実際のコースよりも難易度が低いので、そのような練習器具を使用していると、自身のスキルレベルに対する感覚が歪んでしまう。このため、屋内器具で練習した後に自信を持ったゴルファーは、ゴルフコースでのスコアが期待したほど良くない理由に関して釈然としない思いを抱く羽目になりかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7140971号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/005434号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、使い易く、かつゴルファーのスキルレベルを高めるように設計されたゴルフパッティング練習器具が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本発明は、持ち運び可能なゴルフパッティング器具に関連する。この器具は、展開された状態で細長い平面を形成するように構成された可撓性材料製のパターマット部材を含む。パターマット部材は、可搬体ユニットに着脱可能に結合されるように構成されている。可搬体ユニットは第1の壁を有し、該第1の壁の周りにパターマット部材が巻き付けられて保管され、かつ第1の壁が空洞部を画定し、該空洞部が、パターマット部材の端部まで移動して来たボールを捕捉するように構成されている。
【0008】
任意選択で、可搬体ユニットは、第1の壁に巻き付けられたパターマット部材を収容するための空間を形成するべく、第1の壁を取り囲む第2の壁を有することもできる。第1の壁及び第2の壁を互いに対して(例えば逆方向に)回転させることによって、第2の壁の内側の第1の壁の周りにパターマット部材を巻き付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明の一実施形態に係るパターマット部材の上面図を示す。
【
図1B】本発明の一実施形態に係るパターマット部材の底面図を示す。
【
図1C】本発明の一実施形態に係るパターマット部材の側面図を示す。
【
図2】本発明のパターマット部材を使用しているゴルファーを示す。
【
図3】パターマット部材に着脱可能に結合することができる可搬体の第1の実施形態を示す。
【
図4A】パターマット部材に着脱可能に結合することができる可搬体の第2の実施形態を示す。
【
図5】本発明の一実施形態に係る可搬体の2つの構成要素を示す。
【
図6】本発明の別の実施形態に係る可搬体の2つの構成要素を示す。
【
図7】可搬体に結合された本発明のパターマット部材を使用しているゴルファーを示す。
【
図8A】パターマット部材に着脱可能に結合することができる、2つの構成要素に分かれた可搬体の第3の実施形態を示す。
【
図8C】
図8Aに示した可搬体の実施形態の水平断面図を示す。
【
図9A】ラッチ部材を含み、該ラッチ部材が開位置をとっている本発明の可搬体の一実施形態を示す。
【
図9B】ラッチ部材が閉位置をとっている
図9Aの可搬体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
持ち運び及び保管が容易なパッティング練習器具が示される。本開示は、説明を明瞭かつ簡単にするために、本発明の幾つかの実施形態に焦点を当てているが、本明細書に示されている実施形態は包括的なものではなく、本発明を実施することができる方法は他にも数多く存在することを理解されたい。
【0011】
図1Aは、本発明の一実施形態に係るパターマット部材10を示している。本実施形態のパターマット部材10は、細長い可撓性材料片であり、巻くか、折りたたむか、または別な方法でコンパクトな形態に形成して保管することができ、かつ広げて使用することができる。使用中、パターマット部材10は、
図2に示されているように、パッティンググリーンとして機能する。ゴルファーは、パターマット部材10上にボール5(例えばゴルフボール)を置き、自身のゴルフクラブでボールを打ってパターマット部材10の端まで転がす。パターマット部材10は、任意の適切な長さlを有することができ、何らかの特定の寸法に限定されるものではない。ゴルファーは、望ましい距離で自身のパッティングスキルを向上させるために、パターマット部材10上の好きな場所にボールを置くことができる。ゴルフの試合中にパットする頻度が多い距離の範囲が含まれるように、パターマット部材10の長さを約5フィート(約1.524メートル)にすることができる。
【0012】
パターマット部材10を用いて練習する場合の1つの目標は、ボールをパターマット部材10から外れないようにすることである。打ったボールがパターマット部材10から離れた(すなわち、意図する方向から外れた)ならば、それは暗に、何らかの形でユーザのスイングが良くなかったことをユーザに示している。グラウンド上に凹凸や傾斜がない限りボールは通常真っ直ぐに進むので、パターマット部材10は真っ直ぐに延びている。パターマット部材10の幅wは、想定される難易度に応じて、広くしても狭くしてもよい。パターマット部材10が幅広であればあるほど、ユーザはボールをパターマット部材10から外れないように意図した方向に完璧に打つ必要がないので、難易度が低くなる。ゴルフの初心者は、より幅の広いパターマット部材10を用いてパッティング練習をすることにより、自身のスイングに対してボールがどのように反応するかの「感覚」を掴むことができる。ゴルフの上級者は、幅の狭いパターマット部材10を用いることができるが、その場合、些細な判断ミス、集中力の低下、またはショートパット恐怖症のせいで、ボールがパターマット部材10から転がり出る可能性がある。一実施形態では、パターマット部材10の幅wは約2インチ(5.08cm)であってよい。平均的なゴルフボールの径が約1.6〜1.7インチ(4.064〜4.318cm)であることを考えれば、パターマット部材10の幅が2インチ(5.08cm)であれば、誤差範囲は17〜25%となる。
【0013】
図1A及び
図1Bに示されているように、パターマット部材10は、第1の面14及び第2の面16を有し得る。第1の面14は、
図2に示したような、使用中に上向きになっている面であり得る。第2の面16は、グラウンドに接触する面、すなわち第1の面14とは反対の面であり得る。
図1Aに示したように、ユーザのスイングをガイドするために、第1の面14の全ての部分または選択された部分上にマーク12を設けることができる。この特定の実施形態では、マーク12は、パターマット部材10の長辺に対して垂直に引かれた線を含む。多くのゴルファーが、狙ったボールの進行方向に対してクラブフェースを垂直に維持しようとするので、例えばバックスイング中にクラブフェース面をマーク12と一直線になるように維持すれば、通常、ボールはパターマット部材10を進んで行くことになる。したがって、ユーザは、クラブフェースがマーク12に対して何らかの角度で傾いていないかを確かめるなどして、自身のバックスイングを評価することができる。「クラブフェース」は、本明細書においては、ボールを動き出させるために意図的にボールに接触させるゴルフクラブ表面を意味するものとする。いくつかの別の実施形態では、パターマット部材10上のマーク12はなくてもよい。
【0014】
パターマット部材10は、鏡面性を有する材料、例えば金属製であってよい。いくつかの実施形態では、第1の面14のみが鏡面であってもよい。第1の面14が鏡面特性を有していることにより、ゴルファーは、ボールに対する自身の体の向き(アライメント)を確認することができる。多くのゴルファーは、パッティング中に、目の位置がボールの真上にくるようにすることによって、ボールに対するアライメントを追求する。第1の面14が鏡面特性を有していることにより、ゴルファーは、頭を上げずに目線がボールに合っていることを確認することができ、スイング中に頭を過度に動かしていないかを確認することもできる。
【0015】
力を受けた際のボールの感度を高めるために、パターマット部材10の表面を滑らかにすることができる。必要に応じて、パターマット部材10の表面に質感を持たせて様々なグリーンコンディションをシミュレートできるようにしてもよい。パターマット部材10を、平面を形成するように広げることができ、かつ保管のために巻くかまたは別な方法でコンパクトな形状にすることができる限り、パターマット部材10の厚さは何らかの特定の寸法に限定されるものではない。
【0016】
パターマット部材10は、その一部または全部において、スプリングテンパー(spring-tempered)金属または金属合金製、例えば、スプリングテンパーステンレス鋼製、スプリングテンパー青銅製、スプリングテンパー真鍮製、またはスプリングテンパー銅製などであってよい。スプリングテンパー金属または合金(例えば、ステンレス鋼、青銅、真鍮、または銅)は、パターマット部材10を巻くかまたは別な方法でコンパクトにして保管すること、及び保管時の癖が残ることなくパターマット部材を平らに伸ばすことを可能にする。ほとんどのゴルファーは、パッティング練習をしないときに長さ5フィート(1.524メートル)のパターマット部材10が床に広がっていることを望んではいないので、上記のことは望ましい。スプリングテンパーステンレス鋼、真鍮、青銅または銅は、鏡面性を有するという理由においても、本願にとって適切な選択肢である。上記のように、表面の鏡面特性により、ユーザは自身のスイングを容易に評価することができる。パターマット部材10は、ボールがパターマット部材10の上を転がっているときにしわが寄ったり折り目がついたりしないように十分に重いものであるべきである。パターマット部材10は、スプリングテンパー金属または金属合金に限らず、任意の適切な材料であって、保管時に癖が付かず、上記したような鏡面特性及び重量を有するものから製造することができる。いくつかの実施形態では、パターマット部材10の一端または別の部分におもりを取り付けることができる。
【0017】
図1Bは、パターマット部材10の第2の面16を示している。図のように、第2の面16には第1の取付機構18を形成することができる。図示されているこの特定の実施形態では、第1の取付機構18が第2の面16の一端付近に形成されている。しかし、このことは本発明の限定事項ではない。以下においてより詳細に説明するように、第1の取付機構18は、可搬体100へのパターマット部材10の取り付けを可能にする。
【0018】
図1Cは、一実施形態に係るパターマット部材10の側面図である。この特定の実施形態では、第1の取付機構18は、パターマット部材10の一端に形成された鉤状部材である。第1の取付機構18は、マーク12を有していないパターマット部材10の第1の端部付近に形成することができる。パターマット部材10の第2の端部には、傾斜構造19を設けることができ、傾斜構造19の助けによりパターマット部材10の第2の端部が持ち上げられて、なだらかな傾斜面が形成される。パターマット部材10の第2の端部のなだらかな傾斜面は、マーク12を常に持ち上げているので、ゴルファーがバックスイング中にマーク12を見てスイング中にクラブヘッドを曲線軌道にのせることを容易にする。したがって、傾斜構造19が存在しなかった場合に比べて、クラブヘッドはマーク12から遠く離れていない。図示されているこの特定の実施形態では、傾斜構造19はパターマット部材10の折返し端を含む。しかし、このことは本発明の限定事項ではなく、様々な他の構造を用いて傾斜面を形成することができる。
【0019】
図3は、パッティング練習のためにパターマット部材10を着脱可能に結合させることができる多機能可搬体100の一実施形態を示している。可搬体100は、基部40上に設けられた第1の壁20を含む。第1の壁20によって空洞部22が画定され、空洞部22は、
図3に示されているような円形形状を有することができる。図のように、可搬体100は、第1の取付機構18に結合するように設計された第2の取付機構53a,53b(集合的に第2の取付機構53と呼ぶ。)を含む。この特定の実施形態では、第2の取付機構53aは、可搬体100の上面29上に形成されている。
【0020】
パターマット部材10をパッティング練習に使用するときには、第1及び第2の取付機構18,53aを互いに結合させることによって、可搬体100にパターマット部材10を取り付ける。一実施形態では、第1の取付機構18は鉤状部材であり、第2の取付機構53は鉤状部材を係入可能な切欠溝であってよい。パッティングを練習するために、ゴルファーは、
図7に示されているように、切欠溝53に鉤状部材18を掛止して、パターマット部材10に沿ってボールを打つ。方向及び力が正しければ、ボールはパターマット部材10を進んで行って空洞部22に落ちることになり、空洞部22はパッティンググリーンの「ホール」として有効に機能する。第1及び第2の取付機構18,53は、パターマット部材10が吸い付く磁石、ベルクロ(登録商標)、または任意の他の締結手段を含むことができる。様々な取付機構の任意の組合せを用いて、可搬体100にパターマット部材10を固定することができる。
【0021】
パターマット部材10がパッティング練習に使用されていない(例えば保管されている)とき、空洞部22を用いてボールを格納することができる。パターマット部材10を使用していないとき、第1の壁20の周りにパターマット部材10をリボンのように巻き付けて保管することができる。第1の壁20の外面上に第2の取付機構53bを形成することができ、それによって、パターマット部材10を片付けるべき時間になったら、ゴルファーは、パターマット部材10を第2の取付機構53aから取り外してもう一方の第2の取付機構53bに結合させることができる。そのようにすることで、パターマット部材10の一端が可搬体100に固定されるので、パターマット部材10の残りの部分を第1の壁20に巻き付けることが容易になる。パターマット部材10を巻かれた状態に維持するための機構、例えば、第1の壁20にぴったりと合うバンド、マグネットクリップ、ベルクロ(登録商標)ストリップなどを設けてもよい。
【0022】
図4A及び
図4Bは、パターマット部材10に結合可能な可搬体100の別の実施形態を示している。本実施形態は、2つの環状壁層、すなわち、同軸上に配置された第1の壁20及び第2の壁30を含み、両壁間には空間35が形成されている。第1の壁20及び第2の壁30は、第1の壁20(より小さい方の壁)が第2の壁30に取り囲まれかつ第2の壁30から離間されるようにして同心円状に配置された、互いに異なる径を有する環状壁である。
【0023】
図4Aに示した可搬体100の水平断面を示す
図4Bにおいて、第1の壁20と第2の壁30との間の空間35が示されている。パターマット部材10は、使用されていないときに、第1の壁20に巻き付けて空間35内に格納することができる。パターマット部材10を取り囲む第2の壁30は、パターマット部材10を巻かれた状態に維持するとともに外部環境から保護する。
図4A及び
図4Bに示した2枚の壁を有する実施形態は、2つの壁を、例えば
図4Bに矢印で示されているように互いに逆方向に、それぞれ独立して回転できるようにすることによって、ユーザが容易にパターマット部材10を巻けるようにするというさらなる利点を与える。
【0024】
図5は、
図4Aに示した2枚の壁を有する可搬体100の実施態様を示している。図のように、第1の構成要素181を第2の構成要素182と組み合わせることによって可搬体100を組み立てることができる。この特定の実施形態では、第1の構成要素181は、第2の壁30及び上壁36を含み、上壁36上には第2の取付機構53aが形成されている。第2の構成要素182は、基部40、第1の壁20、及び第1の壁20に形成された第2の取付機構53bを含む。第1の構成要素181及び第2の構成要素182は各々、少し撓む硬質材料製、例えばプラスチック製の一体部品であってよい。第1及び第2の構成要素181,182は、
図4Bに示したように、互いに対して回転可能であるように組み合わせることができ、ユーザは、一方の手で第1の構成要素181を掴み、もう一方の手で基部40を掴み、これらを互いに逆方向に回転させる。例えば、第1の壁20を(矢印で示されている)時計回りに回転させる一方で、第2の壁30を静止したままにするかまたは反時計回りに回転させることも、その逆にすることも可能である。巻き付けが完了したときには、パターマット部材10全体が可搬体100の空間35内に収容されていることになる。
【0025】
パターマット部材10を、しっかり固定して格納するために、第1の壁20に巻き付けてかつ第2の壁30で包み込むことができる。
図5の実施形態では、第2の壁30は第1の部材181の上壁36に結合しており、第1の壁20は第2の部材182の基部40に結合している。第1及び第2の部材は、対になって可搬体100を形成する。いくつかの実施形態では、上壁36は、第1の壁20と一体化したものであってよい。
【0026】
図4A、
図4B及び
図5の、2枚の壁を有する実施形態においては、第2の壁30に開口部34が形成されている。開口部34は、取付機構53bが開口部34と整合されたときに取付機構53bが露出されるように、第2の壁30に形成されている。上記のように、第2の取付機構53aは、空洞部22付近にも第2の壁30上(または恐らく2つの表面が互いに接する縁部上)にも形成することができる。上述のように、パターマット部材10は、パッティング練習のためには第2の取付機構53aに、保管のためには第2の取付機構53bに、それぞれ結合させることができる。第1の壁20(内側の壁)に形成された第2の取付機構53bを利用するために、第1の取付機構18を有する側のパターマット部材10の端部を開口部34から中に入れる。例えば、ユーザは、パターマット部材10を握って開口部34から手を入れるか、またはパターマット部材10を開口部34へ案内することができる。その後、第1の取付機構18が第2の取付機構53bにしっかりと固定された状態で、第1の壁20及び第2の壁30を互いに対して回転させることによって、パターマット部材10が巻かれて保管される。
【0027】
図6は、可搬体100の別の実施形態を示しており、第1の壁20には切欠開口24が含まれている。切欠開口24と、第2の壁30に形成された開口部34とを整合させると、窓孔が形成され、該窓孔を通ってボールが空洞部22から転がり出ることができる。基部40の上面に傾斜を設けて、空洞部22に落ちたボールが切欠開口24に転がり落ちるようにしてもよい。パッティング練習中に、ゴルファーが、第1の壁20の切欠開口24と開口部34とが整合したままにしておけば、或るボールが空洞部22に落ちたときに、次のパットのためにそのボールが自動的に転がり出るかまたは空洞部22内の他のボールのうちの1つが窓孔を通って押し出されることになる。
【0028】
図7は、可搬体100に結合されたパターマット部材10を使用しているゴルファーを示している。可搬体100のどの実施形態でも図のように用いることができる。
【0029】
図8A及び
図8Bは、本発明に係る可搬体100の別の実施形態を示している。この特定の実施形態では、可搬体100は3つの壁を有している。より具体的には、第1の壁20及び第2の壁30に加えて、第3の壁50が存在する。この特定の実施形態では、3つの壁は環状でありかつ同心円状に配置されている。本実施形態の第2の構成要素182は、
図6の実施形態の第2の構成要素182と実質的に類似している。しかし、本実施形態の第1の構成要素181においては、第3の壁50及び底面38によってカップが形成されている。第2の壁30及び第3の壁50は、上壁36によって互いに結合されていてもよい。
【0030】
この特定の実施形態では、底面38は空洞部22の一部に延在し、カップの「床面」を形成している。第3の壁50は、内側開口部56を有することができ、内側開口部56を切欠開口24及び開口部34に整合させることで、パッティング練習中にボールがカップから押し出されるようにすることができる。底面38を、内側開口部56付近の部分が他の部分よりも低くなるように傾斜させて、カップ内のボールが内側開口部56に向かって転がるようにしてもよい。いくつかの実施形態では、カップの底面38は、その周縁部に沿って形成された堀及び他のパターンを含むことができる。堀は、環状凹部として形成してもよい。カップがパターマット部材10の端でカップインしたボールを捕捉するように構成されている限り、本発明は、カップの如何なる形状、位置、材料、またはパターンにも限定されるものではない。堀は、例えば、器具を製造するのに必要な材料の量を減少させるように形成することができる。
【0031】
図8Bは、第1の構成要素181及び第2の構成要素182の底面図を示している。第1及び第2の構成要素181,182が互いに組み合わされているとき、第1の壁20は、第2及び第3の壁30,50間に収まっている。
【0032】
図8Bに示されているように、基部40の外縁に沿って複数のグリップ補助部48を形成することができる。半球形の切欠き48は、パターマット部材10を巻くときに第2の構成要素182を回転させるためのフィンガグリップホルダとして働く。
【0033】
図8Cは、
図8A及び
図8Bに示した3枚の側壁を有する可搬体100の水平断面図である。図のように、第3の壁50は、空洞部22に収まるように第1の壁20よりも径が小さく、かつボール保持区画部分58を形成している。パターマット部材10は、保管されるとき、第1の壁20と第2の壁30との間の空間35に収まる。第2の壁30及び第3の壁50は、(例えば上壁36によって)互いに結合されているので、
図8Cに矢印で示されているように、共に同一方向に変位する。
【0034】
図9A及び
図9Bは、ラッチ部材60を含む可搬体100の一実施形態を示しており、ラッチ部材60を閉じることによって、保管中や運搬中にボールが転がり落ちないようにボールを空洞部22内で固定することができる。ラッチ部材60を閉じた状態にしておけば、ボールを紛失することなく可搬体100を任意の姿勢で保管したり持ち運んだりすることができる。第2の取付機構53aは、
図9Aに示されているように第1の構成要素181上に直接形成する代わりに、ラッチ部材60上に形成してもよい。第2の壁30に結合されている上壁36上に、ラッチ部材60を載せるための凹部23を形成することができる。ラッチ部材60を閉位置において「ロック」するために、何らかの機構(図示せず)、例えば、数ある可能性の中で、磁石、ベルクロ(登録商標)、(例えば、所定の位置に「留める」ための)機械式ロック、または何らかの形の粘着性表面を組み入れることができる。
【0035】
図9Aの実施形態では、ラッチ部材60は、第1の壁20の上端にヒンジによって取り付けられている。ラッチ部材60は、開閉のためにヒンジを軸に回動するように構成されている。器具がパッティング練習に使用されていないときには、ボールを空洞部22内に入れておき、ラッチ部材60が、
図9Bに示されているような閉位置をとることによりボールが外に出ることを防止することができる。パッティング練習中には、ラッチ部材60は、
図9Aに示されているような「開」位置をとることができ、パターマット部材10を第2の取付機構53aに取り付けることができる。それにより、さらに難易度の高いなだらかな上向きの勾配が、ホール(空洞部22)の直前に現れる。
【0036】
ここまで本明細書において、本発明について特定の例示的な実施形態を参照して説明してきた。しかし、以下の特許請求の範囲に記載されている本発明のより広範な趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更形態及び変化形態が可能であることは、明白であろう。したがって、本明細書及び図面は、例示であって限定ではないと看做されるべきである。本発明の他の実施形態についても、本明細書の考察及び本明細書に開示されている概念の実践から、当業者に明らかであろう。