【文献】
巽大輔,セルロースを原料としたゲルらしくないゲル−ネットワークの構造と物性の観点から−,繊維学会誌,2017年 5月10日,第73巻,第5号,P-206,Online ISSN 1884-2259
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態であるゲル状洗浄剤組成物の具体的な態様について説明する。
【0015】
[ゲル状洗浄剤組成物の構成]
本発明の実施形態であるゲル状洗浄剤組成物は、ゲル状に形成され、セルロースナノファイバー(以下、「CNF」という。)及びシクロデキストリンを含有するものである。
なお、本発明において、「ゲル状」とは、25℃において、ゾルにならず、定形性のある半固形状の状態をいう。
【0016】
(CNF)
CNFとは、パルプ繊維を解繊して得られる微細なセルロース繊維をいい、一般的に平均繊維幅がナノサイズ(1nm以上、1000nm以下)のセルロース微細繊維を含むセルロース繊維をいう。
【0017】
CNFの製造に使用可能なパルプ繊維としては、広葉樹パルプ(LBKP)、針葉樹パルプ(NBKP)等の化学パルプ、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、更紙古紙等から製造される古紙パルプ、古紙パルプを脱墨処理した脱墨パルプ(DIP)などが挙げられる。これらは、本発明の効果を損なわない限り、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
CNFの製造方法としては、例えば、高圧ホモジナイザー法、マイクロフリュイダイザー法、グラインダー磨砕法、ビーズミル凍結粉砕法、超音波解繊法等の機械的手法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
例えば、パルプ繊維に対して機械的手法の解繊処理を施したものに、カルボキシメチル化等の化学的処理を施しても良いし、酵素処理を施してもよい。化学的処理を施したCNFとしては、例えば、TEMPO酸化CNF、リン酸エステル化CNF、亜リン酸エステル化CNF等の、直径が3〜4nmとなるiCNF(individualized CNF) (シングルナノセルロース)が挙げられる。
また、化学的処理や酵素処理を施したCNFに、機械的手法の解繊処理を施してもよい。
【0019】
本実施形態において用いられるCNFは、後述の方法によって算出した平均繊維幅が、1nmから100nmであることが好ましい。
【0020】
ゲル状洗浄剤組成物中のCNFの含有割合としては、0.002質量%以上、0.2質量%以下であることが好ましい。例えばCNFを水に混ぜ合わせ、濃度が2質量%のスラリー液として用いる場合、当該液を0.1質量%以上、10質量%以下加えることが好ましいということとなる。0.002質量%未満となると、後述の泡立ちを向上する効果が十分に発揮されず、0.2質量%を超えると、製造時の撹拌の際の泡立ちが多くなり、製造が困難となる。また、0.01質量%以上、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0021】
なお、具体的に用いることができるCNFとしては、例えば、NBKP100%のCNFであり、CNFの平均繊維幅(メジアン径)が49nmのものが挙げられる。このCNFは、NBKPをリファイナー処理して粗解繊した後、高圧ホモジナイザーを用いて、4回処理して解繊することにより得られたものである。
【0022】
ここで、CNFの繊維幅(平均繊維幅)の測定方法について説明する。
まず、固形分濃度0.01〜0.1質量%のセルロースナノファイバーの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t−ブタノール20mlで3回溶媒置換する。
次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて5000倍、10000倍又は30000倍のいずれかの倍率(段落0021に記載のCNFについては、30000倍の倍率を用いた。)で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径(メジアン径)を平均繊維幅とする。なお、計測値の中位径に限らず、例えば、数平均径や、モード径(最頻径)を平均繊維幅としてもよい。
【0023】
(シクロデキストリン)
ゲル状洗浄剤組成物中のシクロデキストリンの含有割合としては、0.1質量%以上、0.5質量%以下であることが好ましい。0.1質量%未満となると、後述の泡立ちを向上する効果が十分に発揮されず、0.5質量%を超えると、泡立ちを向上する効果は得られるものの、シクロデキストリンが水に溶けにくくなり、透明がゲルの製造が困難となるため好ましくない。
【0024】
用いるシクロデキストリンの種類は特に限定されず、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン又はγ−シクロデキストリンのいずれも用いることができる。
【0025】
(その他の組成物)
ゲル状洗浄剤組成物は、CNF及びシクロデキストリン以外に、界面活性剤、香料、グリセリン、水等を含む。この内、界面活性剤及び水を含有することは必須である。
【0026】
界面活性剤及び水は、洗浄剤をゲル化させるために必須となる。界面活性剤としては、エステル型、エーテル型、アルキルグリコシド等の非イオン界面活性剤を用いることが好ましい。
具体的には、界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルを用いることができ、含有割合は、1質量%以上、70質量%以下であることが好ましい。
後述の実施例に示されているように、非イオン界面活性剤が10質量%未満という低濃度の場合、又は50質量%を超える高濃度の場合のいずれであっても、本発明の効果を得ることができる。
【0027】
香料は、ゲル状洗浄剤組成物に、洗浄作用に加え、芳香作用を付与するために加えられる。
香料としては、特に限定されないが、例えば、シトラス系、ローズ系、フローラル系等の香料を用いることができる。
香料の含有割合としては、0.5質量%以上、10質量%以下であることが好ましい。0.5質量%未満であると、芳香作用が十分でない場合が多く、10質量%を超えると洗浄剤組成物がゲル状となり難くなる。
【0028】
グリセリンは、ゲル状洗浄剤組成物のゲル化濃度をコントロールするために加えられる。
グリセリンの含有割合としては、3質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。
【0029】
[ゲル状洗浄剤組成物の効果]
CNFは表面積が大きいことから、立体障害物となり、発泡性の向上に寄与する効果を有する。また、シクロデキストリンは、発泡を妨げる疎水性の物質を包接し、これを覆うことから、ゲル状洗浄剤組成物中の香料等の油分による発泡への悪影響を低減させる効果を有する。したがって、ゲル状洗浄剤組成物に、CNF及びシクロデキストリンを加えることで、ゲル状洗浄剤が水に溶け出した際の泡立ちを向上させることができる。
これによって、ゲル状洗浄剤をトイレの便器内面等に付着させて使用する場合において、これが流水によって溶け出した際に泡が生じやすくなることから、使用者は、視覚的に洗浄剤の効果が生じているかを確認し易くなる。
また、発泡性が高まることで、洗浄効果も向上させることができる。
【0030】
また、シクロデキストリンは、香料と共に加えられた場合、香料を包接し、水に触れた際に包接されていた香料が放出されるようにする効果を有する。したがって、香料をシクロデキストリンと共に加えることで、香料が、ゲル状洗浄剤が水に溶けるまで放出され難くすることができ、ゲル状洗浄剤の芳香効果の持続性を高めることができる。
このような効果を効率的に生じさせるためには、香料は、事前にシクロデキストリンと混合しておき、当該状態でゲル状洗浄剤組成物に加えられることが望ましい。
【0031】
また、CNFは、チクソトロピー性が高い。すなわち、剪断応力を受けている際には粘度が低下し易く、静止している際には、粘度が上昇し易い。
したがって、使用者がゲル状洗浄剤組成物を容器から押し出そうとして力を加えた際には、その粘度が低下し、ゲル状洗浄剤組成物を容器から押し出す作業が容易となる。また、これをトイレの便器内面等に付着させた後には、その粘度が上昇し、定着性が高まることから、長時間洗浄効果を発揮させることができる。
【0032】
[変形例]
ゲル状洗浄剤組成物は、さらに、カルボキシメチルセルロース(以下、「CMC」という。)を含有していてもよい。
CMCは、CNFのOH基に結合することで、静電相互作用により立体障害的に分子同士を離れやすくし、CNFの凝集を防ぎ、その効果を高めることができる。
【0033】
ゲル状洗浄剤組成物にCMCを加える場合の含有割合としては、0.5質量%以上、10質量%以下であることが好ましい。0.5質量%未満であると、上記の効果を十分に発揮できず、10質量%を超えるとゲル化が不安定となり、ゲル状を維持し難くなる。さらに、1質量%以上、5質量%以下であることが最も好ましい。
【0034】
ゲル状洗浄剤組成物は、ヒドロキシエチルセルロース(以下、「HEC」という。)を含有していてもよい。HECによっても、CMCと同様の効果を得ることができる。
ゲル状洗浄剤組成物にHECを加える場合の含有割合としては、0.5質量%以上、10質量%以下であることが好ましい。0.5質量%未満であると、上記の効果を十分に発揮できず、10質量%を超えるとゲル化が不安定となり、ゲル状を維持し難くなる。さらに、1質量%以上、5質量%以下であることが最も好ましい。
【0035】
また、実施形態に係るゲル状洗浄剤組成物は、トイレの便器内面において用いられるものに限られず、例えば洗面台の流しの中等、定期的に水が流されることとなる場所において、広く用いることができる。
【0036】
[押し出し式容器の説明]
次に、実施形態に係るゲル状洗浄剤組成物からなるゲル状洗浄剤Wを、トイレの便器内面等に付着させるために用いられる押し出し式容器100について、
図1から
図3に基づいて説明する。ただし、押し出し式容器100は一例にすぎず、実施形態に係るゲル状洗浄剤組成物からなるゲル状洗浄剤Wをトイレの便器内面等に付着させるために用いられる容器の形状は、これに限られるものではない。
【0037】
{押し出し式容器の構成}
押し出し式容器100は、
図1に示すように、容器本体1と、吐出部2と、を備える。
【0038】
(容器本体)
容器本体1は、内部が空洞となり収納空間Sが形成され、ゲル状洗浄剤Wによって充填される、押し出し式容器100の本体をなす部材である。
図1及び
図2に示すように、容器本体1には、一端が扁平となるように融着され、扁平端部11が形成されている。また、
図2に示すように、もう一方の端部は略円形の開口部となっており、本体側開口部12が形成されている。
容器本体1は、
図2に示すように、本体側開口部12の周囲の外周が、後述の吐出部2の吐出部側開口部211の内周と略同一の直径を有する円形に形成され、容器本体1が吐出部側開口部211に挿入されるようにして、容器本体1と吐出部2とが、所定の接着剤によって接着する等の任意の方法により接続されている。
なお、これとは反対に、本体側開口部12の内周が、後述の吐出部2の吐出部側開口部211の周囲の外周と略同一の直径を有する円形に形成され、吐出部2が本体側開口部12に挿入されるようにして、容器本体1と吐出部2とが接続されていてもよい。ただし、ゲル状洗浄剤Wの押し出し時に剥がれ難くするため、
図2に示すように接続されている方が好ましい。
【0039】
容器本体1は、吐出部2と比較して軟質な材料によって形成される。具体的な硬度としては、70から90であることが好ましい。なお、上記硬度は、JIS K 6253(タイプAデュロメータ)によって測定されたものである。
具体的な材料としては、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン
(PP)、アルミ、各種蒸着フィルム等が用いられる。
【0040】
容器本体1の大きさは、充填されるゲル状洗浄剤Wの量に応じて任意に定めることができるが、複数回使用できる十分な内容量を確保しつつ、かつ、ゲル状洗浄剤Wをトイレの便器内面に付着させる際の利便性も確保する観点から、本体側開口部12付近において直径5mmから30mmとなり、扁平端部11から本体側開口部12までの長さが50mmから150mmとなるように形成され、内容量が30mlから100mlであることが望ましい。
【0041】
(吐出部)
吐出部2は、ゲル状洗浄剤Wが押し出される開口部をなす部分であり、
図1及び
図2に示すように、接続部21と、突出部22と、を備える。
吐出部2は、容器本体1と比較して硬質な材料によって形成される。具体的な硬度としては、90から100であることが好ましい。なお、上記硬度は、JIS K 6253(タイプA
デュロメータ)によって測定されたものである。
具体的な材料としては、例えばPET、PP等が用いられる。
【0042】
(接続部)
接続部21は、
図1及び
図2に示すように、一方の端部は略円形の開口部となっており、吐出部側開口部211が形成されている。
図2に示すように、吐出部側開口部211の内周は、容器本体1の本体側開口部12の周囲の外周と略同一の直径を有する円形に形成され、容器本体1が吐出部側開口部211に挿入されるようにして、容器本体1と吐出部2とが、所定の接着剤によって接着する等の任意の方法により接続されている。
なお、これとは反対に、吐出部2の吐出部側開口部211の周囲の外周が、本体側開口部12の内周と略同一の直径を有する円形に形成され、吐出部2が本体側開口部12に挿入されるようにして、容器本体1と吐出部2とが接続されていてもよい。ただし、ゲル状洗浄剤Wの押し出し時に剥がれ難くするため、
図2に示すように接続されている方が好ましい。
【0043】
また、接続部21の吐出部側開口部211と対向する面は、
図2に示すように、中央部のみが開口部となるように形成され、当該開口部に、突出部22が接続されている。
【0044】
接続部21は、直径が容器本体1の本体側開口部12付近と比較して僅かに大きくなり、高さが10mmから30mmとなる円筒状に形成されている。
【0045】
(突出部)
突出部22は、
図2に示すように、筒状に形成され、接続部21の容器本体1と接続される側とは反対側の面に形成された開口部に接続され、接続部21を介して、容器本体1の収納空間Sと接続されている。これによって、接続部21及び突出部22の内部を通って、収納空間S内のゲル状洗浄剤Wを押し出すことができる。
【0046】
突出部22の先端には、ゲル状洗浄剤Wが押し出される円形の吐出口221が形成されており、これを周回するように複数の突起部222…が形成されている。
図1においては、10個の突起部222…が形成された場合につき図示したが、突起部222…の形成数はこれに限られない。突起部222…が備えられていることによって、便器内面等の対象面に付着させたゲル状洗浄剤Wの形状を揃えることができ、かつ、突出部22先端にゲル状洗浄剤Wが付着してしまうことを防止することができる。
【0047】
突出部22は、後述のようにして、ゲル状洗浄剤Wを押し出し易く、かつ便器内面等に押し付けた際に適切な大きさとすることができるように、吐出口221の直径が10mmから25mmであることが好ましく、15mmから20mmであればさらに好ましい。
また、突出部22の長さは、後述のようにして、ゲル状洗浄剤Wを便器の内面に押し付ける際に、容器本体1から便器内面までに適切な距離を確保し、押し付ける作業を行い易くするため、突起部222…を除いて、5mmから30mmであることが好ましく、10mmから20mmであればさらに好ましい。
また、突起部222…は、上記効果を好適に生じさせるため、吐出口221の周囲から、0.5mmから5mm突出するように形成されることが好ましく、1mmから3mm突出するように形成されることがさらに好ましい。突起部222…の間の間隙は、突出部22先端にゲル状洗浄剤Wが付着してしまうことを防止するため、1mm以上の幅を有することが好ましい。
また、突起部222…は、全て同じ長さに形成され、先端部が同一平面状に位置するように形成されていることが好ましい。
【0048】
{押し出し式容器の使用方法}
押し出し式容器100を使用する際には、使用者は、まず、容器本体1を把持した上で、これを押圧し、突出部22の先端から、収納空間S内部のゲル状洗浄剤Wが押し出された状態とする。この際、使用者は、便器内面等に付着させたい量に応じて、押し出す量を調整する。
【0049】
続いて、使用者は、ゲル状洗浄剤Wが押し出された状態の押し出し式容器100を、突出部22側において、便器内面等のゲル状洗浄剤Wを押し付けたい箇所に近接させ、押し出された状態のゲル状洗浄剤Wを、当該箇所に押し付ける。この際、ひねりながら押し込むことで、突出部22の周りに、均等にゲル状洗浄剤Wが広がる。
なお、この際には、突出部22が直接便器内面等に振れないようにする。
【0050】
続いて、使用者は、押し出し式容器100を便器内面等から離す。この際、突出部22の先端から押し出されていたゲル状洗浄剤Wは、便器内面等に付着し、残ることとなる。
この際、上記のように、突出部22の周りに、均等にゲル状洗浄剤Wが広がり、突出部22の外側であった部分において付着量が多くなり、突出部22と重なっていた部分において付着量が少なくなるため、便器内面に付着したゲル状洗浄剤Wは、
図3に示すような、中心部に凹部が形成され、その周囲が、前記凹部の全周を囲むように突出した形状となる。
【0051】
{押し出し式容器の効果}
押し出し式容器100によれば、上記のように、
図3に示すような形状となるように、便器内面等に対してゲル状洗浄剤Wを付着させることができる。
便器内面等に付着し、流水によって徐々に解け出す洗浄剤は、長時間トイレ等が使用されず、水が流されることがないと、付着させた洗浄剤の表面が乾燥してしまう。そして、過度に乾燥して固まってしまうと、トイレ等の流水によって溶け出さなくなってしまい、洗浄剤としての効果が失われてしまうことがある。
この点、押し出し式容器100によれば、上記のように中央に凹部が形成されるようにして、ゲル状洗浄剤Wを便器内面等に付着させることができることから、当該凹部に水が溜まり易く、付着させたゲル状洗浄剤Wの乾燥を防止することができる。
【0052】
また、押し出し式容器100によれば、上記のようにして、ゲル状洗浄剤Wを押し出した上で、これを便器の内面等に押し付けるのみで付着させることができることから、ゲル状洗浄剤Wを便器内面等に付着させる作業が容易となる。
【0053】
また、押し出し式容器100によれば、便器内面等に対してゲル状洗浄剤Wを付着させる際に、ゲル状洗浄剤Wが、便器内面等に対し押し付けられることとなる。これによって、付直後のゲル状洗浄剤Wを剥がれ難くすることができる。また、曲面に対しても、確実にゲル状洗浄剤Wを付着させることができる。
【0054】
また、押し出し式容器100によれば、便器内面等に対し、吐出部2を直接触れさせることなく、ゲル状洗浄剤Wを付着させることができる。したがって、衛生面でも優れる。
【0055】
また、押し出し式容器100によれば、任意の量のゲル状洗浄剤Wを容器から出すことができ、洗浄効果を継続させたい期間等に応じて、付着させる量を調整しつつ使用することができる。
【0056】
また、押し出し式容器100によれば、比較的軟質な容器本体1にゲル状洗浄剤Wが収納されていることによって、容器本体1を変形させつつゲル状洗浄剤Wを押し出すことができることから、容器内に残ってしまい、使用できないゲル状洗浄剤Wを減少させることができる。
【0057】
{押し出し式容器の変形例}
吐出部2の突出部22の先端形状は、上記の突起部222…を備えるものに限られない。ただし、先端部の円周上に複数の間隙を有する形状であることが好ましい。また、突出部22先端にゲル状洗浄剤Wが付着してしまうことを防止するため、それぞれの間隙が、1mm以上の幅を有することが好ましい。
【0058】
また、突出部の形状は、
図1及び
図2に示したような円筒状のものに限られず、例えば、
図4及び
図5に示す突出部22Aように、略半球状に形成され、その先端部に吐出口221Aを備えるようにしてもよい。吐出口221Aの形状は、
図4及び
図5においては、平面視星形となるように形成した場合につき図示したが、これに限られない。また、吐出口221Aの周辺は、
図4及び
図5に示したように、先端が平面状となるように形成されていることが、押し出されたゲル状洗浄剤Wを安定して保持する上で好ましい。
【実施例】
【0059】
次に、本発明の実施例及び比較例に係るゲル状洗浄剤組成物につき、水に溶けた際の泡立ちにつき評価した結果について説明する。
【0060】
[実施例及び比較例の構成]
表Iに記載のとおりの配合率の実施例及び比較例に係るゲル状洗浄剤組成物を用意した。
【0061】
なお、表Iに記載の実施例及び比較例においては、各成分として、具体的には以下のものを用いた。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、PC−2465(ミヨシ油脂株式会社製)を用いた。
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウムとしては、ハイテノール227L(第一工業製薬株式会社製)を用いた。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、PC−2850(ミヨシ油脂株式会社製)を用いた。
セルロースナノファイバーとしては、段落0021から0022に記載したものを用い、これを水に混ぜ合わせ2質量%スラリー液として用いた。
シクロデキストリンとしては、CAVAMAX W6 Food(α−シクロデキストリン、株式会社シクロケム製)を用いた。
香料としては、クリーンフローラル(栄香料株式会社製)を用いた。
DPG・MIT(メチルイソチアゾリノン)・IPBC混合物としては、マイクロケアMTO(ソ―・ジャパン株式会社製)を用いた。
【0062】
[試験方法]
上記実施例及び比較例に係るゲル状洗浄剤組成物を用いて、以下の方法で、発生した泡の高さの測定を行った。
【0063】
(1)一回分の使用量に相当する6gのゲル状洗浄剤を、プラスチックボードに、平面視において、長辺略40mm、短辺略20mmの略長方形状となるように張り付けた。
(2)張り付けたゲル状洗浄剤に、水道水(温度18℃)500mlを、3分の1ずつ3回に分けてかけた。
(3)ゲル状洗浄剤にかけた水道水を全て回収し、浸透法用の筒(外径90mm、内径75mm、内部空間の高さ515mmの円柱状)に投入した。
(4)回収された水道水が投入された筒を、垂直に立った状態(円柱の高さ方向が鉛直方向に一致する状態)から、上下が反転するように180度回転した後、当初の状態に戻るように−180度回転させる動作を、1秒で180度回転する回転速度で3回行った後、発生した泡の高さ(筒内の水面に生じた泡の鉛直方向の高さ)を、回転終了の直後及び5分後において測定した。
【0064】
[試験結果]
試験の結果を表Iに示す。
【0065】
【表1】
【0066】
なお、CNFの配合率を、2質量%スラリー液で10質量%(CNFが0.2質量%)とした実施例6、実施例15及び比較例8においては、製造段階で気泡が発生し易かった。
また、シクロデキストリンの配合率を1.0質量%とした実施例9においては、シクロデキストリンが水に溶け難かった。
【0067】
[評価]
まず、CNF及びシクロデキストリンのいずれも加えられていない比較例2と比較して、CNF及びシクロデキストリンが加えられ、その他の成分の配合率は同一である実施例1から9においては、回転終了の直後及び5分後の全ての場合において、泡の高さが高くなっている。この点から、ゲル状洗浄剤組成物につき、CNF及びシクロデキストリンを加えることで、泡立ちと、発生した泡の持続性を向上できることが分かる。
また、CNFの配合率が同一で、シクロデキストリンの含有の有無が異なる実施例と比較例とを比較(実施例1と比較例3、実施例2と比較例4、実施例3と比較例5、実施例4と比較例6、実施例5と比較例7、実施例6と比較例8)すると、明らかに、CNFのみが加えられた場合と比較して、CNF及びシクロデキストリンが加えられた場合の方が、回転終了の直後及び5分後のいずれにおいても、泡の高さが高くなっている。この点から、CNFのみを加えた場合と比較して、CNF及びシクロデキストリンを加えた場合の方が、さらに、泡立ちと、発生した泡の持続性を向上できることが分かる。
【0068】
非イオン界面活性剤であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルの配合率が、9.0質量%と低い実施例10から15と比較例9との比較においても、CNFが加えられていない比較例9と比較して、CNF及びシクロデキストリンが加えられた実施例10から15においては、いずれも、回転終了の直後及び5分後のほぼ全ての場合において、泡の高さが高くなっている。この点から、ゲル化成分である非イオン界面活性剤のポリオキシアルキレンアルキルエーテルの配合率が、50質量%を超える高濃度の場合、及び10質量%未満という低濃度の場合のいずれにおいても、CNF及びシクロデキストリンを加えることによって、泡立ちと、発生した泡の持続性を向上できることが分かる。
【0069】
実施例2から5と実施例1及び6との比較、及び実施例11から14と実施例10及び15との比較により、CNFの配合率は、2質量%スラリー液が0.5質量%以上、5質量%以下、すなわちCNFが0.01質量%以上、0.1質量%以下であることが特に好ましいことが分かる。すなわち、CNFの配合率が2質量%スラリー液で0.1質量%(CNFが0.002質量%)の場合、効果がみられるものの弱く、また、CNFの配合率を、2質量%スラリー液で10質量%(CNFが0.2質量%)としても、2質量%スラリー液で5質量%(CNFが0.1質量%)とした場合と効果の面で大差がなく、かつ、CNFの配合率を2質量%スラリー液で5質量%を超えて増やすと、ゲル状洗浄剤の製造時に気泡が生じやすくなることから、好ましくない。なお、CNFの配合率が、2質量%スラリー液で10質量%(CNFが0.2質量%)を超えると、気泡の影響で透明なゲルの製造が困難となる。
実施例4、7、8、9の比較により、シクロデキストリンの配合率は、0.1質量%以上、0.5質量%以下であることが好ましいことが分かる。すなわち、シクロデキストリンの配合率が0.1質量%の実施例7において、CNFの配合率が同一となり、シクロデキストリンが加えられていない比較例6と比較して十分な効果がみられる一方、これを増加させても大きな効果の向上は見られず、また、シクロデキストリンの配合率を1.0質量%とした実施例9においては、シクロデキストリンが水に溶けにくくなり、透明なゲルの製造が困難であった。
【解決手段】セルロースナノファイバーと、シクロデキストリンと、界面活性剤と、水と、を含有する。セルロースナノファイバーを、0.01質量%以上、0.1質量%以下含有し、シクロデキストリンを、0.1質量%以上、0.5質量%以下含有することが好ましい。