(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6653399
(24)【登録日】2020年1月29日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】改良型シート高調整装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/16 20060101AFI20200217BHJP
【FI】
B60N2/16
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-3711(P2019-3711)
(22)【出願日】2019年1月11日
(65)【公開番号】特開2019-127263(P2019-127263A)
(43)【公開日】2019年8月1日
【審査請求日】2019年1月11日
(31)【優先権主張番号】107102407
(32)【優先日】2018年1月23日
(33)【優先権主張国】TW
(31)【優先権主張番号】107124120
(32)【優先日】2018年7月12日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】500059575
【氏名又は名称】信昌機械廠股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】519012792
【氏名又は名称】福州明芳汽車部件工業有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江 季達
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 正夫
(72)【発明者】
【氏名】奚 仲強
【審査官】
毛利 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−205515(JP,A)
【文献】
特開2015−157631(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0200677(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの複数の取付孔に固定されるための改良型シート高調整装置であって、ブレーキ機構と、クラッチ機構と、駆動ディスクと、を含み、
前記ブレーキ機構は、固定枠を備え、当該固定枠は、各前記取付孔にそれぞれ対応して固定され前記固定枠に対して自転できない複数の固定要素を有し、各前記固定要素は、前記固定枠に接続される接続端部を有し、各前記固定要素には、各前記接続端部に対応してキャップ体がそれぞれ形成され、各前記固定要素はロッドであり、当該ロッドは、インプラントロッド、圧入ロッド、又はスポット溶接ロッドであり、
前記クラッチ機構は、各前記接続端部に対して外径が拡大した機構であり、前記ブレーキ機構と同軸に配置されており、各前記接続端部に対して外径が拡大した外カバーを備え、当該外カバーは、前記固定枠に対応して組み立てられ、各前記接続端部を部分的又は完全に遮蔽し、
前記駆動ディスクは、前記クラッチ機構と前記ブレーキ機構との間に挟持され、
前記クラッチ機構は、前記駆動ディスクを介して前記ブレーキ機構を駆動することを特徴とする改良型シート高調整装置。
【請求項2】
前記駆動ディスクは、各前記接続端部に対して外径が拡大したものであることを特徴とする請求項1に記載の改良型シート高調整装置。
【請求項3】
前記ブレーキ機構は、各前記接続端部に対してリング径が拡大したリング体をさらに備え、当該リング体は、前記駆動ディスクと前記固定枠との間に挟持され、各前記接続端部を部分的又は完全に遮蔽することを特徴とする請求項1に記載の改良型シート高調整装置。
【請求項4】
前記リング体の周縁には、各前記キャップ体に対応して回避するための複数の回避用切欠が形成されることを特徴とする請求項3に記載の改良型シート高調整装置。
【請求項5】
前記ロッドは、ボルト又はリベットであることを特徴とする請求項1に記載の改良型シート高調整装置。
【請求項6】
各前記接続端部は、前記固定枠の周縁に近接しており、前記外カバーの周縁内に対応して位置するか、又は前記外カバーの周縁に対応して位置することを特徴とする請求項1に記載の改良型シート高調整装置。
【請求項7】
前記固定枠は、各前記取付孔に対応して複数の接続孔が開設され、各前記固定要素の前記接続端部は、前記接続孔に対応して固定されることを特徴とする請求項1に記載の改良型シート高調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの高さ調整に関し、特に、クラッチ機構の外径を径方向に大きくすることで構造を強化するとともに、一般的な方法でシートに取り付けることができる改良型シート高調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート高調整装置は、互いに同軸に配置されるクラッチ機構とブレーキ機構とを含み、制御ハンドルがクラッチ機構に接続されている。使用者が制御ハンドルを介してクラッチ機構を駆動し、クラッチ機構がブレーキ機構を連動させ、ブレーキ機構における出力部材が自動車用シート、マッサージチェアや車椅子等のシートの昇降機を駆動して昇降を制御する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、自動車用シートを例にとると、自動車用シートと車体との間の距離が制限され、上記の制御ハンドルを設置する必要もあるため、構造強度を強化するためにシート高調整装置の高さを高めることは不可能である。また、自動車用シートの側面には、シート高調整装置を取り付けるための取付孔が複数設けられ、同一車種での取付孔の位置が一定である。
【0004】
上記の条件下で、シート高調整装置の構造強度を強化する必要がある場合、発明者は以下の問題を克服する必要があることを見出した。
1、シート高調整装置は、その高さ方向に高さを増加させることで強化することができないので、強化するために他の方法について考える必要がある。
2、発明者は、クラッチ機構の外径を径方向に大きして構造を強化する方法を見出したが、その代わりに、すべての取付けねじ(シート高調整装置を自動車シートに固定するために用いられる)のねじ頭が大きくされたクラッチ機構によって遮蔽されるため、使用者がどのような工具を使用してもねじ頭を介して取付けねじを回転駆動することが不可能になる問題があった。
【0005】
したがって、上記の問題を同時に克服することができるシート高調整装置を如何に設計するかが、本発明者が解決しようとしている大きな課題である。
【0006】
本発明の目的は、クラッチ機構(例えば、外カバー等)の外径を径方向に大きくするとともに、一般的な方法でシート高調整装置をシートに取り付けて固定することができる改良型シート高調整装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る改良型シート高調整装置は、シートの複数の取付孔に固定するために用いられ、ブレーキ機構と、クラッチ機構と、
駆動ディスクと、を含み、前記ブレーキ機構は、固定枠を備え、当該固定枠は、各前記取付孔にそれぞれ対応して固定され前記固定枠に対して自転できない複数の固定要素を有し、各前記固定要素は、前記固定枠に接続される接続端部を有し、
各前記固定要素には、各前記接続端部に対応してキャップ体がそれぞれ形成され、各前記固定要素はロッドであり、当該ロッドは、インプラントロッド、圧入ロッド、又はスポット溶接ロッドであり、前記クラッチ機構は、
各前記接続端部に対して外径が拡大した機構であり、前記ブレーキ機構と同軸に配置されており、各前記接続端部に対して外径が拡大した外カバーを備え、当該外カバーは、前記固定枠に対応して組み立てられ、各前記接続端部を部分的又は完全に遮蔽
し、前記駆動ディスクは、前記クラッチ機構と前記ブレーキ機構との間に挟持され、前記クラッチ機構は、前記駆動ディスクを介して前記ブレーキ機構を駆動する。
【発明の効果】
【0008】
従来技術と比較して、本発明は、シートの取付孔の位置を変えず、シート高調整装置の高さを高めない前提において、構造強度を強化するとともに、一般的な方法(例えば、ドライバやレンチ等の工具)で、シートにシート高調整装置を簡単に取付けて固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明のある角度から見た組立斜視図である。
【
図3】本発明の別の角度から見た組立斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して本発明の技術的手段を以下に詳細に説明するが、本発明の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0011】
図1〜
図3に示すように、本発明に係る改良型シート高調整装置は、自動車用シート、マッサージチェアや車椅子等のシートの複数の取付孔(図示せず)に固定されるために用いられる。高調整装置は、クラッチ機構100と、駆動ディスク400と、ブレーキ機構500とを含む。駆動ディスク400は、互いに同軸に配置されたクラッチ機構100とブレーキ機構500との間に挟持されることで、クラッチ機構100は、駆動ディスク400を介してブレーキ機構500を連動させることができる。
【0012】
クラッチ機構100は、外カバー1と、入力部材2と、複数の第1の作用コンポーネント3とを備える。第1の作用コンポーネント3のそれぞれは、第1弾性部材と第1ローラセットと(符号が付されていない)を含む。駆動ディスク400の前方凹部には、入力部材2と各第1の作用コンポーネント3とが収容されている。外カバー1は、駆動ディスク400の前方凹部に対応して覆い、入力部材2は、制御ハンドル(図示せず)により回動制御され、各第1の作用コンポーネント3を介して駆動ディスク400を回動駆動する。
【0013】
ブレーキ機構500は、リング体5と、複数の第2の作用コンポーネント6と、出力部材7と、固定枠8とを備える。第2の作用コンポーネント6のそれぞれは、第2弾性部材と第2ローラセットと(符号が付されていない)を含む。各第2の作用コンポーネント6は、リング体5内に配置され、駆動ディスク400の後歯によって駆動される。出力部材7は、各第2の作用コンポーネント6に配置され、各第2の作用コンポーネント6と連動している。固定枠8は、その正面でリング体5と上記の外カバー1とともに固定される。固定枠8の背面は、自動車用シート、マッサージチェアや車椅子等に固定される。出力部材7は、出力駆動歯(符号が付されていない)を含む。出力駆動歯は、自動車用シート、マッサージチェアや車椅子等における昇降機構等に係合して駆動する。
【0014】
ブレーキ機構500では、固定枠8は、各取付孔にそれぞれ対応して固定される複数の固定要素9を有している。これら固定要素9は、固定枠8に対して自転不能となっている。言い換えれば、固定要素9は、固定枠8に対して様々な方法で自転不能に取付けてもよく(図に示す)、固定枠8の背面から一体的に突出して形成されてもよい(図示せず)。接続方法では、固定要素9を固定枠8に対して自転させない方法が多いが、本実施形態では、一例として以下に説明する。
【0015】
固定要素9は、インプラントロッド、圧入ロッドやスポット溶接ロッド等であってもよいが、これに限定されず、固定枠8に対して自転不能であればよい。また、これらのロッドは、ボルトやリベットであってもよい。ボルトを例にとると、固定要素9は、インプラントボルト、圧入ボルトやスポット溶接ボルト等であってもよい。
図1、
図3及び
図6に示すように、固定要素9は、固定枠8に接続される接続端部91(
図6参照)を有している。固定枠8には、各取付孔に対応して複数の接続孔81が開設されている(
図3、
図6参照)。固定要素9が固定枠8に対して自転できないように、各固定要素9の接続端部91が接続孔81に対応して固定されている。
【0016】
クラッチ機構100は、各接続端部91(又は各接続孔81)に対して外径が拡大した機構であってもよいが、本実施形態では、そのうちの外カバー1を例に挙げて説明する。つまり、外カバー1は、各接続端部91(又は各接続孔81)に対して外径が拡大した外カバーであってもよい。したがって、
図4、
図5及び
図6に示すように、外カバー1が固定枠8に対応して組み立てられた後、外カバー1は、各接続端部91(又は各接続孔81)を部分的又は完全に遮蔽することができる。
【0017】
このようにして、各取付孔間の距離を大きくしないでシート高調整装置の全高を高めない前提において、シート高調整装置の構造強度を強化しようとすると、高さ方向に対して垂直な幅方向(径方向)に構造を大きくするしかない。しかし、各取付孔の位置が変わらないので、径方向に大きくされた構造が各取付孔を部分的に又は完全に遮蔽してしまうことになり、使用者は、正面(
図4に示す)からドライバやレンチを使用して各固定要素9を各取付孔に対応して締めることができない。また、外カバー1と固定枠8との間隔が狭すぎるため、この間隔で特殊な工具を使用しても固定要素9を回転させることができない。
【0018】
このとき、外カバー1が
図4〜
図6に示すように各取付孔(又は各接続端部91)を部分的又は完全に遮蔽しても、本発明の各固定要素9が固定枠8に対して自転できないことにより、使用者は、各取付孔に対応して固定要素9を挿入した後、固定要素9の自由端から複数の対応する固定部材(図示せず)を組み立てれば(例えば、複数のナットを組み立てたり、複数のリベットヘッドを作成したりする)、本発明の改良型シート高調整装置を、例えば、自動車用シート、マッサージチェアや車椅子等のシートに取付けることができる。
【0019】
図示しない他の実施形態では、クラッチ機構100における入力部材2又は各第1の作用コンポーネント3も、各接続端部91に対して外径が拡大した構造であってもよい。駆動ディスク400もまた、各接続端部91に対して外径が拡大した駆動ディスクであってもよい。ただし、外径が拡大した入力部材2、すべての第1の作用コンポーネント3、又は駆動ディスク400は、シートの取付空間の大きさ次第で、必ずしも各接続端部91を遮蔽するわけではない。
【0020】
図示しない他の実施形態では、リング体5は、駆動ディスク400と固定枠8との間に挟持され、各接続端部91に対してリング径が拡大したリング体であってもよく、各接続端部91を部分的に又は完全に遮蔽する。ここで、リング体5の背面は、
図6に示すように固定枠8の正面に平らに取付けられているが、固定要素9は、上述したように、固定枠8に一体的に形成されるか、又は固定枠8の正面と平らに接続されてもよいので、固定枠8の正面から突出するキャップ体を有しておらず、リング体5の周縁51は、各接続端部91に対応して直接遮蔽することができる。また、各固定要素9には、各接続端部91に対応してキャップ体911がそれぞれ形成されても、固定枠8は、図示しない折り曲げ方法(即ち、固定枠8の正面から固定枠8の平面に向かって折り曲げられる)により複数の折り曲げ部を形成してもよく、各キャップ体911は、固定枠8の正面から突出することなく各折り曲げ部に収容される。
【0021】
また、
図1、
図3及び
図6に示すように、固定要素9には、各接続端部91に対応してキャップ体911がそれぞれ形成され、これらのキャップ体911が固定枠8の正面から突出していても、このとき、リング体5の周縁51には、各キャップ体911に対応して回避するための複数の回避用切欠52が形成されてもよい。
【0022】
なお、
図1、
図5及び
図6に示すように、各接続端部91は、固定枠8の周縁82に近接しており、各接続端部91は、外カバー1の周縁11に対応して位置している(
図6に示す。即ち、各接続端部91は、外カバー1の周縁11の上方を経過する)か、又は外カバー1の周縁11内に対応して位置している(図示せず)。
【0023】
本発明では、固定枠8に対して固定要素9を自転させない方法が限定されない。例えば、第1の方法では、接続端部91の直径を固定要素9のロッド部の直径よりも大きくキャップ体911の直径よりも小さくするとともに、非円形の接続端部91を固定枠8の対応する形状を有する接続孔に嵌めて固定することができる。第2の方法では、接続端部91の直径を固定要素9のロッドの直径よりも大きくするとともに、接続端部91の周縁の形状をのこぎり歯状に形成し、接続端部91と固定枠8とを圧接することで、接続端部91のこぎり歯状に形成された周縁を固定枠8の接続孔の内縁に食い込ませて固定することができる。第3の方法では、キャップ体911の底面に凸部を形成し、キャップ体911及び固定枠8にそれぞれ通電して、キャップ体911の凸部を固定枠8の上面に食い込ませて固定することができる。
【0024】
要約すると、本発明は、従来技術と比較して以下の効果を有する。シートの各取付孔の位置を変えないとともに、シート高調整装置の高さを高めない前提において、シート高調整装置の構造強度を強化するとともに、一般的な方法(例えば、ドライバやレンチ等の工具)で、シートにシート高調整装置を簡単に取付けて固定することができる。
【0025】
また、本発明は、以下の他の効果を有する。
1、シート高調整装置を高めたり広げたりしないことを前提とすると、従来技術では、駆動ディスク400の背面の凸歯が鍛造加工法で製造されるため、コストが高いのに対し、本発明では、径方向に大きくされているため、一般的な加工方法(例えば、精密プレス加工)によって駆動ディスク400の背面の凸歯を製造することができ、コストダウンを図ることができる。
2、第2の作用コンポーネント6によって押されるために用いられる内壁及び外壁を径方向に大きくして肉厚を増やす(例えば、リング体5の厚くされたリング壁)ことができるので、第2の作用コンポーネント6の数を減らしても、外部からの力を均等に分担することができ、コストダウンを図ることもできる。
【0026】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。また、本発明の内容を応用してなされる等価な変更は、すべて本発明の範囲に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0027】
100…クラッチ機構
1…外カバー
11…(外カバーの)周縁
2…入力部材
3…第1の作用コンポーネント
400…駆動ディスク
500…ブレーキ機構
5…リング体
51…(リング体の)周縁
52…回避用切欠
6…第2の作用コンポーネント
7…出力部材
8…固定枠
81…接続孔
82…(固定枠の)周縁
9…固定要素
91…接続端部
911…キャップ体