【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成させるために、本発明は下記技術案を採用する。
【0007】
本発明は、ターゲット物質の認識機能と電気化学的信号を発生させる機能を兼ね備えてターゲット生体分子を検出するバイオプローブ(以下、バイオ捕捉プローブと呼ばれることがある)であって、
ナノ銀とナノ銀の表面に接続された複数のプローブ本体とを備え、前記プローブ本体はターゲット物質に対して特異的認識機能を有する核酸アプタマー断片(以下、ターゲットアプタマーと呼ばれることがない)と該核酸アプタマー断片と部分相補的な塩基配列を構成する核酸断片(以下、捕捉プローブDNAと呼ばれることがある)とを含み、前記核酸アプタマー断片は前記核酸断片とハイブリダイゼーションして前記プローブ本体を形成し、前記核酸断片の3’末端がチオール化されており、
前記核酸断片の前記核酸アプタマー断片に対する競合ハイブリダイゼーション能力が前記ターゲット物質の核酸アプタマー断片に対するハイブリダイゼーション能力より低いバイオプローブを提供することを第一目的とする。
【0008】
本発明は、前記ターゲット生体分子を検出するバイオプローブを含む電気化学的バイオセンサであって、
前記ターゲット生体分子を検出するバイオプローブはターゲット物質により開始されて、競合反応を行って、前記核酸アプタマー断片を前記プローブ本体から離脱させてターゲット物質と特異的に結合するステップと、
EXO I酵素を加えて、EXO I酵素で前記一本鎖形態として存在する核酸アプタマー断片を加水分解し、ターゲット物質が遊離して前記プローブ本体中の核酸アプタマー断片と特異的に結合し続けて、加水分解と特異的結合に対応したターゲット信号の増幅サイクル反応を形成し、最終的に前記核酸断片(捕捉プローブDNA)に接続されたナノ銀を得るステップと、
ナノ銀とナノ銀の表面に接続されて前記核酸断片の塩基と相補的であり、3’末端がチオール化された核酸断片(以下、相補的プローブDNAと呼ばれることがある)とを含む、相補的プローブ(以下、バイオ相補的プローブと呼ばれることがある)を加えるステップと、
塩基相補的対合の原理を利用して、得られた前記相補的プローブの塩基と相補的であるナノ銀が前記相補的プローブDNAを修飾した金電極の表面に集まり、金電極すなわち電気化学的バイオセンサを得るステップとを含む方法によって製造される電気化学的バイオセンサを提供することを第二目的とする。
【0009】
前記核酸断片(捕捉プローブDNA)に接続されたナノ銀としては、ナノ銀に上記核酸断片(捕捉プローブDNA)だけが接続される場合と、ナノ銀に上記核酸断片(捕捉プローブDNA)以外、前記プローブ本体が接続される場合がある。
【0010】
本発明に係る核酸アプタマー/ナノ銀バイオプローブとEXO I酵素のターゲットサイクル増幅策略とに基づく電気化学的バイオセンサの製造方法は、具体的に、以下のステップを含む。
(1)バイオ捕捉プローブの製造
ジスルフィド結合を開裂した捕捉プローブDNAとターゲットアプタマーとを相補的に対合して、プローブ本体溶液(二本鎖DNA溶液)を形成し、前記プローブ本体溶液とナノ銀コロイドを混合して反応させて、3’末端がチオール化されたバイオ捕捉プローブを得る。
(2)バイオ相補的プローブの製造
ジスルフィド結合を開裂したステップ(1)の前記捕捉プローブDNAの塩基相補的プローブDNAとナノ銀コロイドを混合して反応させ、DNAの3’末端がチオール化されたバイオ相補的プローブを得る。
(3)バイオ捕捉プローブの認識及び酵素を補助としたターゲットサイクル切断信号増幅
ステップ(1)で得られたバイオ捕捉プローブ、ターゲット物質及びEXOIエキソヌクレアーゼを混合して反応させる。
(4)電気化学的バイオセンサの製造
ステップ(3)で得られた溶液をステップ(2)で得られたバイオ相補的プローブに加え、次に前記相補的プローブDNAを修飾した金電極を上記反応溶液に浸入して混合して反応させ、電極を取り出して、電気化学的バイオセンサを得る。
【0011】
以上のステップの順番は必要に応じて調整してもよい。
【0012】
ステップ(1)では、ターゲットアプタマーはターゲット物質に特異的に結合され、好ましくは、前記ターゲット物質がリゾチームである場合、前記捕捉プローブのDNA配列は、SEQID NO:1に示されるように、5’−A CTC TTT AGC CCT GAT−C6−SH−3’であり、リゾチームアプタマー配列は、SEQID NO:2に示されるように、5’− ATC AGG GCT AAA GAG TGC AGA GTT ACT TAG−3’である。
【0013】
前記ターゲット物質がγインターフェロン(IFN−γ)である場合、前記捕捉プローブのDNA配列は、SEQID NO:4に示されるように、5´− CC AAC ACA ACC AAC CCC−C6−SH−3´であり、γインターフェロンアプタマー配列は、SEQID NO:5に示されるように、5´−GGG GTT GGT TGT GTT GGG TGT TGT GTC CAA CCC C−3´である。
【0014】
好ましくは、捕捉プローブDNAの濃度は100μM、ターゲットアプタマーの濃度は100μMである。前記捕捉プローブDNA、ターゲットアプタマー及びナノ銀コロイドの体積比率は(0.5〜1.5):(0.5〜1.5):100である。
【0015】
プローブのジスルフィド結合を開裂するために、チオール化類還元剤を用いる等の方法が採用可能であり、好ましくは、前記ジスルフィド結合を開裂した捕捉プローブDNAの製造方法は、捕捉プローブDNAとトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンを含有する溶液を反応させてジスルフィド結合を開裂することであり、前記トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンを含有する溶液において、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の濃度が0.01M、PBの濃度が0.01M、NaClの濃度が0.1Mであり、反応時間が0.5〜1.5h(好ましくは1h)である。
【0016】
前記プローブ本体溶液(二本鎖DNA溶液)の具体的な反応ステップでは、35〜40℃で1.5〜2.5時間反応させ、好ましくは37℃で2h反応させる。
【0017】
前記混合反応の条件としては、密封遮光下、35〜40℃で撹拌して5〜6h反応させ、2〜6℃で10〜14h反応させる。
【0018】
バイオ捕捉プローブをさらに安定化させるために、2〜6℃で10〜14h反応させた後、撹拌しながら反応物にPBS緩衝液を加えてpHを調整し、次にNaCl溶液を加え、密封遮光下、2〜4h撹拌して、密封遮光下、2〜6℃で一晩(反応時間10〜24h)反応させた後、PBSで遠心洗浄して、バイオ捕捉プローブを得る。
【0019】
ステップ(2)では、ターゲット物質がリゾチームである場合、相補的プローブDNA配列は、SEQID NO:3に示されるように、5’−ATC AGG GCT AAA GAG T−C6−SH−3’ であり、ターゲット物質がγインターフェロンである場合、相補的プローブDNA配列は、SEQID NO:6に示されるように、5´−GGG GTT GGT TGT GTT GG−C6−SH −3´であり、その濃度が100μMである。前記相補的プローブDNAとナノ銀コロイドの体積比率は0.5〜1.5:100である。
【0020】
プローブのジスルフィド結合を開裂するために、チオール化類還元剤を用いる等の方法が採用可能であり、好ましくは、前記ジスルフィド結合を開裂した相補的プローブDNAの製造方法は、相補的プローブDNAとトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンを含有する溶液とを反応させてジスルフィド結合を開裂することであり、前記トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンを含有する溶液において、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の濃度が0.01M、PBの濃度が0.01M、NaClの濃度が0.1Mであり、反応時間が0.5〜1.5h(好ましくは1h)である。
【0021】
前記混合反応の条件としては、密封遮光下、35〜40℃で撹拌して5〜6h反応させ、2〜6℃で10〜14h反応させる。
【0022】
バイオ相補的プローブをさらに安定化させるために、2〜6℃で10〜14h反応させた後、撹拌しながら反応物にPBS緩衝液を加えてpHを調整し、次にNaCl溶液を加え、密封遮光下、2〜4h撹拌して、密封遮光下、2〜6℃で(反応時間10〜24h)反応させた後、PBSで遠心洗浄して、バイオ相補的プローブを得る。
【0023】
ステップ(1)(2)では、前記ナノ銀の製造方法は以下のとおりである。氷水浴において、激しく撹拌しながら、1回に1ミリリットル滴下する速度で0.002 M硝酸銀を緩慢にその体積に対して2〜2.5倍の0.003M水素化ホウ素ナトリウムに加えて、硝酸銀の滴下が終了した後、5分間かけて連続して激しく撹拌し、得られた反応物を沸騰水浴に移して、3〜5分間加熱した直後、所定量の0.003M水素化ホウ素ナトリウム溶液を加え、温水浴から取り出して激しく撹拌して室温まで冷却させ、製造されたナノ銀コロイドを王水で浸漬された茶色瓶に移して、遮光下、4℃で保存する。
【0024】
ステップ(3)では、前記ターゲット物質は所定濃度を有する被測定物または濃度が未知の被測定物であり、前記混合反応の条件としては、35〜40℃で0.5〜1.5h反応させ、好ましくは37℃で1h反応させる。
【0025】
前記ステップ(1)で得られたバイオ捕捉プローブとターゲット物質との体積比率は1:1〜2、EXOIエキソヌクレアーゼの添加量は15〜25Uであり、好ましくは、前記ステップ(1)で得られたバイオ捕捉プローブとターゲット物質との体積比率は1:1、EXOIエキソヌクレアーゼの添加量は20Uである。
【0026】
ステップ(4)では、ステップ(3)で得られた溶液とステップ(2)で得られたバイオ相補的プローブとの体積比率は1:1〜2、好ましくは1:1である。
【0027】
前記金電極について研磨処理を施す必要がある。研磨処理のステップとしては、金電極をアルミナパウダーで研磨し、次に、再蒸留水で洗浄し、さらにエタノールと再蒸留水においてそれぞれ超音波洗浄を行って、乾燥させて研磨処理済みの金電極を得る。具体的には、ウォッシュレザーにおいて0.3μmと0.05μmのアルミナパウダーで順次研磨し、研磨後、まず再蒸留水で洗浄して、次にエタノールと再蒸留水においてそれぞれ超音波洗浄を20−25s行って、窒素ガスで吹き干す。
【0028】
前記相補的プローブDNAを修飾した金電極の製造方法には、前記相補的プローブDNAをTCEPで2時間反応させてジスルフィド結合を開裂し、ここで、相補的プローブDNAのジスルフィド結合を開裂した反応系において、DNAの濃度を1μM、TCEPの濃度を0.01M、PBの濃度を0.01M、NaClの濃度を0.1Mにして、次にジスルフィド結合を開裂した相補的プローブDNAを研磨処理済みの金電極において24時間浸入して、前記相補的プローブDNAを修飾した金電極を得るステップを含む。
【0029】
前記混合反応の条件としては、35〜40℃で1.5〜2.5h反応させ、好ましくは37℃で振とう反応を2h行う。
【0030】
本発明第三目的は、上記電気化学センサの生体分子濃度検出における応用を提供することである。前記生体分子は、ATP、アミノ酸、ヌクレオチド、毒素、酵素、成長因子、細胞接着分子、ウィルス、細菌及び細胞またはアプタマーとしてスクリーニング可能なほかの生体分子を含む。本発明の発明構想に基づき、各種生体分子の濃度、たとえばリゾチーム、γインターフェロン、ATPまたはその他生体分子を検出できる。その応用方法は、
標準濃度を有する各ターゲット物質の電気化学的バイオセンサについてLSV検出を行って、異なる標準濃度を有するターゲット物質のLSVピーク電流を取得する、電気化学的検出をするステップ(1)と、
ステップ(1)のLSVピーク電流についてターゲット物質の濃度の対数に対して線形回帰方程を作成して、該方法の検量線を得る、検量線を作成するステップ(2)と、
実際サンプルの電気化学センサを用いて電気化学的検出を行って、対応したLSVピーク電流を得て、LSVピーク電流をステップ(2)の検量線に代入して、実際サンプルにおけるターゲット物質の濃度を得る、実際サンプルを検出するステップ(3)とを含む。
【0031】
ステップ(1)では、LSV検出条件としては、金電極を作用電極、カロメル電極を参照電極、白金線電極をコントラスト電極として三電極システムを構成してLSV検出を行う。
【0032】
LSV検出液はPBS緩衝液、具体的に0.2M PBSである。その調製方法としては、Na
2HPO
4・2H
2O 1.78gを水1000mLに溶解して、Na
2HPO
4水溶液を得て、NaH
2PO
4・H
2O 1.38gを水1000mLに溶解して、NaH
2PO
4水溶液を得て、Na
2HPO
4水溶液810mL、NaH
2PO
4水溶液190mL及びNaCl 11.69gを均一に混合して、pH7.4の0.2M PBSを得る。