特許第6653438号(P6653438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6653438
(24)【登録日】2020年1月30日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/30 20060101AFI20200217BHJP
   F16H 7/06 20060101ALI20200217BHJP
   B01D 21/18 20060101ALI20200217BHJP
   B65G 19/00 20060101ALI20200217BHJP
   B65G 23/06 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   F16H55/30 Z
   F16H7/06
   B01D21/18 G
   B65G19/00 A
   B65G23/06 A
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-112688(P2018-112688)
(22)【出願日】2018年6月13日
(62)【分割の表示】特願2014-20188(P2014-20188)の分割
【原出願日】2014年2月5日
(65)【公開番号】特開2018-179300(P2018-179300A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2018年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】増田 智也
【審査官】 増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−64439(JP,A)
【文献】 特開2011−17354(JP,A)
【文献】 実開昭57−3161(JP,U)
【文献】 米国特許第6588110(US,B2)
【文献】 特開昭57−173648(JP,A)
【文献】 特開2009−149445(JP,A)
【文献】 特開2014−169165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/30
F16H 7/06
B01D 21/18
B65G 19/00
B65G 23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転輪と該回転輪に一部が巻き掛けられたチェーンとを有する動力伝達装置において、
前記チェーンは、
間隔をあけて対向する一対のリンク板の間に設けられ、該一対のリンク板を連結する被係合部と、
前記一対のリンク板どうしが対向する側とは反対側に突出したボス部と、
このチェーンの周方向に前記ボス部とは間隔を開けて配置され、前記一対のリンク板から前記反対側に延在した延在部を有するステーとを備えたものであって、
前記回転輪は、
この回転輪の厚み方向における中央部分でこの回転輪の放射方向に突出し、前記被係合部に係合する係合歯と、
前記係合歯が前記被係合部に係合した状態において、前記リンク板よりも前記厚み方向外側で、前記ボス部と前記延在部とをこの回転輪の周方向に避けた位置で前記放射方向に突出した制止歯を有することを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記制止歯は、前記係合歯よりも前記放射方向へ突出したものであることを特徴とする請求項1記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間隔をあけて対向する一対のリンク板が周方向に連結されたチェーンと該チェーンが巻き掛けられる回転輪とを備えた動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チェーンと、このチェーンが巻き掛けられた回転輪とを備え、回転輪に付与される動力を伝達する動力伝達装置が知られている。この動力伝達装置は、例えば、汚泥かき寄せ機に用いられている。汚泥かき寄せ機は、受け入れた水に含まれている汚泥が池底部に沈殿する沈殿池に設けられ、池底部に沈殿した汚泥を動力伝達装置から動力が伝達されるフライト板によってかき寄せるものである。チェーンは、駆動するスプロケットや従動のシーブ車等、複数の回転輪に巻き掛けられ、回転輪を結ぶ周回軌道を走行する。すなわち、汚泥かき寄せ機に設けられたチェーンは、沈殿池の池底部に沿って延在するかき寄せ軌道と、水面側に延在する水面軌道とがつながった周回軌道を走行する。チェーンが周回軌道を走行することによって、チェーンに設けられたフライト板は、沈殿池の池底部を走行するときには池底に沈殿した汚泥をかき寄せ、水面側を走行するときには水面に浮かんだスカムをかき寄せる。
【0003】
ところで、地震が発生すると、地震による揺れによって沈殿池内の水面付近の水が大きく波打つスロッシングが発生する。このスロッシングが発生すると、特に水面軌道部分が大きく揺れ動き、その揺れの力が水面側に位置する回転輪に巻き掛けられたチェーンに伝わることで、チェーンの、回転輪に巻き掛けた部分が回転輪から脱輪してしまうことがある。このため、スロッシングが発生した場合に、チェーンが回転輪から脱輪してしまうことを抑制する工夫がなされた動力伝達装置が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。特許文献1に記載された動力伝達装置のチェーンは、リンク部材と連結ピンとを有し、連結ピンによってリンク部材を周方向に連結してなるものである。リンク部材は、間隔をあけて対向する一対のリンク板が、バレル部によってつながったものである。リンク板には、回転輪の半径方向と平行に延在した突出板部が設けられている。これにより、スロッシングが発生し、チェーンの、回転輪に巻き掛けた部分が揺れ動いた場合であっても、突出板部を回転輪に接触させることでチェーンが回転輪から脱輪してしまうことを抑制しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−194794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された動力伝達装置は、チェーンのリンク板に突出板部が設けられたものであるため、突出板部を設けない従来構造のチェーンを備えた動力伝達装置に比べ、製造コストが上昇してしまうとともに、チェーンの重量増により駆動装置にかかる負荷も増加してしまう。これらの問題は、リンク板の数が増えれば増えるほど大きくなり、特にリンク板の数が多く全周の長さが長いチェーンを備えた場合には、動力伝達装置の製造コストの大幅な上昇や駆動装置にかかる負荷の大幅な増加は避けられない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、スロッシングが発生しても脱輪し難く、製造コストの上昇やチェーンの重量増による駆動装置への負荷増を抑える工夫がなされた、動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決する本発明の動力伝達装置は、回転輪と該回転輪に一部が巻き掛けられたチェーンとを有する動力伝達装置において、
前記チェーンは、
間隔をあけて対向する一対のリンク板の間に設けられ、該一対のリンク板を連結する被係合部と、
前記一対のリンク板どうしが対向する側とは反対側に突出したボス部と、
このチェーンの周方向に前記ボス部とは間隔を開けて配置され、前記一対のリンク板から前記反対側に延在した延在部(例えば、図8(a)に示す延在部86b)を有するステーとを備えたものであって、
前記回転輪は、
この回転輪の厚み方向における中央部分でこの回転輪の放射方向に突出し、前記被係合部に係合する係合歯と、
前記係合歯が前記被係合部に係合した状態において、前記リンク板よりも前記厚み方向外側で、前記ボス部と前記延在部とをこの回転輪の周方向に避けた位置で前記放射方向に突出した制止歯を有することを特徴とする。
【0008】
ここで、前記制止歯は、前記係合歯よりも前記放射方向へ突出したものであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スロッシングが発生しても脱輪し難く、製造コストの上昇やチェーンの重量増による駆動装置への負荷増を抑える工夫がなされた、動力伝達装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態である動力伝達装置を備えた汚泥かき寄せ機を、沈殿池に設置した一例を示す平面図である。
図2図1のA−A断面を模式的に示した図である。
図3】(a)は、図2に示すチェーンの一部を上方から見た図であり、(b)は、(a)に示すチェーンの一部を側方から見た図である。
図4】(a)は、図2に示すスプロケットを池幅方向から見た図であり、(b)は、(a)に示すスプロケットのB−B断面図である。
図5】(a)は、図2に示す駆動スプロケットにチェーンの一部が巻き掛けられた様子を模式的に示す斜視図であり、(b)は、(a)を上方から見た模式図である。
図6図5(b)のC−C断面図である。
図7】本実施形態の第1変形例における、図6に対応した態様を示す図である。
図8】(a)は、本実施形態の第2変形例における、図5(b)に対応した態様を示す図であり、(b)は、(a)のD−D断面図である。
図9】本発明の第2実施形態である動力伝達装置を備えた汚泥かき寄せ機を沈殿池の集積溝上に配置した態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態である動力伝達装置を備えた汚泥かき寄せ機を、沈殿池に設置した一例を示す平面図である。また、図2は、図1のA−A断面を模式的に示した図である。なお、図1では、図2に示す汚泥かき寄せ機3を省略している。
【0013】
図1に示す沈殿池1は、所定方向(図1では左から右方向)に延在した矩形状の池であり、延在方向の一端側(図1では左側)から汚水や雨水といった下水を受け入れ、受け入れた下水に含まれる汚泥を池底部1dに沈殿させ、他端側(図1では右側)から排水する。以下、図1における左方向を上流方向と称し、図1における右方向を下流方向と称することがある。また、図1における上下方向を池幅方向と称することがある。
【0014】
図1に示すように、沈殿池1は、池幅方向両側に設けられた一対の側壁1aと、上流壁1bと、下流壁1cによって囲まれた、平面視で略長方形状をした池である。
【0015】
図2に示すように、この沈殿池1には、スカム除去装置10と、汚泥かき寄せ機3と、排水樋41と、汚泥ピット42が設けられている。排水樋41は沈殿池1の下流側に設けられており、汚泥ピット42は沈殿池1の上流側に設けられている。
【0016】
汚泥かき寄せ機3は、沈殿池1の池幅方向両端部それぞれに設けられ、沈殿池1内を走行する一対のチェーン8と、その一対のチェーン8の間に掛け渡された複数のフライト板9を備えている。チェーン8は、池底部1dに沿った軌道と水面Wに沿った軌道とがつながった周回軌道を形成した環状のものである。環状であるチェーン8には、全周にわたって、周方向に均等に間隔をあけてフライト板9が取り付けられている。なお、図2では、チェーン8を上記周回軌道で示している。チェーン8についての詳しい説明は後述する。以下、チェーン8が周回軌道を時計回りに走行する方向(図2において矢印で示す方向)を、周回方向と称することがある。
【0017】
水面Wに沿った軌道の上流端付近と下流端付近には、本発明にかかる回転輪の一例としてのスプロケット5,6が配置されるものであり、これらスプロケット5,6は、本発明における水面側回転輪の一例にも相当する。また、池底部1dに沿った軌道の下流端付近と上流端付近には、シーブ車71,72が配置されている。シーブ車71,72は、スプロケット5,6の下側に位置するものであり、本発明における下側回転輪の一例に相当する。これらのスプロケット5,6およびシーブ車71,72は、上記周回軌道よりも内側に配置され、チェーン8の一部が巻き掛けられている。また、これらのスプロケット5,6およびシーブ車71,72は、池幅方向両端側それぞれに設けられている。チェーン8の、スプロケット5,6に巻き掛けられた部分は、スプロケット5,6に係合している。なお、スプロケット6に代えて、シーブ車を配置してもよく、シーブ車71,72に代えて、スプロケットを配置してもよい。
【0018】
スプロケット5の中心部分には、駆動軸55が回転不能に固定されており、駆動軸55が不図示のモータによって回転することで、スプロケット5も回転する。すなわち、このスプロケット5は、不図示のモータの駆動力が伝達され、チェーン8を走行させる駆動輪である。以下の説明では、スプロケット5を駆動スプロケット5と称することがある。図2に示す駆動スプロケット5は時計回りに回転駆動し、チェーン8も時計回りに走行する。一方、スプロケット6、シーブ車71,72は、チェーン8の走行に伴って回転する従動輪である。従動輪のスプロケット6と、従動輪のシーブ車71,72の中心部分には固定軸65,75,75が通されている。スプロケット6、シーブ車71,72はいずれも、その固定軸65,75,75に対して回動自在であり、各軸65,75,75は軸回りに回転不能に固定配置されている。以下の説明では、スプロケット6を従動スプロケット6と称することがある。スプロケット5,6の構造についての詳しい説明は後述する。
【0019】
駆動軸55が回転することで駆動スプロケット5が回転し、チェーン8が走行する。チェーン8が走行すると、フライト板9が池底部1dに沿った軌道を下流側から上流側に向かって走行し、池底部1dに沈殿した汚泥は、フライト板9によって上流側の汚泥ピット42にかき寄せられる。本実施形態の動力伝達装置31は、駆動スプロケット5とチェーン8とを備えたものであり、従動スプロケット6、シーブ車71,72も有している。なお、汚泥ピット42に掻き寄せられた汚泥は、図示しない汚泥ポンプによって沈殿池1の外部に排出される。
【0020】
スカム除去装置10は、堰11と、トラフ12と、スカムピット16(図1参照)を備えている。トラフ12は、池底部1dから所定の高さ位置に固定されたものである。このトラフ12は、沈殿池1を池幅方向に横切って、沈殿池1の外部に設けられたスカムピット16(図1参照)まで延在している。図2に示すトラフ12の、池幅方向に延在した上流側の壁121の上縁よりも高い所定の水位が、この沈殿池1の最低水位になる。堰11は、トラフ12に対して下端を回動中心にして回動自在に、接続部材13によってそのトラフ12に接続されている。堰11は、水面に浮かんだスカムを堰止めたり呑み込んだりするためのものであり、上端が水面Wよりも上に位置する堰止状態と、上段が水中に没した呑込状態との間で状態変化するものである。図2に示す堰11は堰止状態である。この堰止状態にある堰11は、不図示の駆動機構によってその上端が押し下げられると下端を回動中心にして回動し、呑込状態になる。堰11は、堰止状態では沈殿池1内の水がトラフ12に流入するのを阻止するのに対して、呑込状態では沈殿池1内の水がトラフ12に流入する。
【0021】
沈殿池1の水面Wにはスカムが浮遊している。チェーン8が走行すると、フライト板9が水面Wに沿った軌道を上流側から下流側に向かって走行し、沈殿池1の水面Wに浮かんだスカムは、堰11に向けてフライト板9によって移送される。ここでも、駆動スプロケット5とチェーン8によって、不図示のモータの駆動力がフライト板9に伝達される。スカムは、一定時間経過後、堰が呑込状態になると、沈殿池1内の水とともに堰11の上端を越えてトラフ12内に流入する。トラフ12の底は、沈殿池1の外部にあるスカムピット16に向けて下方へ傾斜しており、スカムが混入したスカム混入水は、トラフ12を通って図1に示すスカムピット16に到達する。スカムピット16には、ポンプ161を備えている。このポンプ161は、スカムピット16に溜まったスカム混入水を汲み上げるものである。沈殿池1内の水は、トラフ12の下をくぐって排水樋41から図示しない排水路に流れ、沈殿池1の外部に排水される。
【0022】
続いて、チェーンの一例について説明する。
【0023】
図3(a)は、図2に示すチェーンの一部を上方から見た図であり、同図(b)は、同図(a)に示すチェーンの一部を側方から見た図である。図3では、図の左から右に向う方向が周回方向になり、チェーン8は、図の左から右に向かって走行する。また、図3(a)では、図の上下方向が池幅方向になり、同図(b)では、紙面と直交する方向が池幅方向になる。
【0024】
チェーン8は、リンク部材80と連結ピン85とを有し、連結ピン85によってリンク部材80を周方向に連結してなるものである。リンク部材80は、例えば合成樹脂製のものであり、連結ピン85は、例えば、合成樹脂製または金属製のものである。リンク部材80は、池幅方向に間隔をあけて対向する一対のリンク板81が、バレル部82によってつながったものである。バレル部82は、対向する一対のリンク板81における、周回方向上流側に設けられている。また、一対のリンク板81それぞれの周回方向下流側には、池幅方向の外側に突出したボス部83が設けられている。リンク部材80は、一対のリンク板81とバレル部82とを池幅方向に貫通した第1挿通孔81aと、一対のリンク板81とボス部83とを池幅方向に貫通した第2挿通孔81bを有している。
【0025】
連結ピン85は、池幅方向に延在した軸部851と、軸部851の一端側に設けられ、第1挿通孔81aおよび第2挿通孔81bの径より大きな頭部852を有している。連結ピン85は、リンク部材80の第1挿通孔81aと、このリンク部材80に連結する別のリンク部材80の第2挿通孔81bとに軸部851が通されている。連結ピン85は、頭部852が一方のボス部83に当接し、軸部851の他端側部分が他方のボス部83から外側に突出している。軸部851の、ボス部83から突出した部分には、係止リング853と抜け止め防止ピン854が配置されている。係止リング853は、軸部851の他端側の端部を係止するものである。抜け止め防止ピン854は、軸部851の径と略同じ径を有する馬蹄形のものであり、ボス部83と係止リング853との間に配置され、連結ピン85の延在方向の位置を規制している。また、抜け止め防止ピン854は、連結ピン85がリンク部材80に対して回転することを規制する回り止めピンとしても機能している。係止リング853および抜け止め防止ピン854と、頭部852は、チェーン8の周回方向にわたって互い違いに設けられている。なお、図3では、右側のリンク部材80に対し、周回方向下流側に連結するリンク部材は省略し、リンク板81の第2挿通孔81bに連結ピン85の軸部851が通された状態を示している。また、左側のリンク部材80に対し、周回方向上流側に連結するリンク部材と連結ピンを省略している。なお、リンク部材80は、ボス部83を省略して、連結ピン85の頭部852をリンク板81に直接当接させる構成にしてもよく、抜け止め防止ピン854を、リンク板81と係止リング853との間に配置する構成にしてもよい。また、リンク部材80は、バレル部82を有しないものであってもよく、対向する一対のリンク板81は、バレル部82以外の部分や部材によってつながったものであってもよい。
【0026】
中央に示すリンク部材80には、ステー86が設けられている。図3(b)に示すように、このステー86には、取付部材87を介して、フライト板9が取り付けられている。図3(a)では、リンク部材80を明確に示すため、フライト板を省略するとともにステー86を簡略化して示している。
【0027】
続いて、本発明の回転輪の一例としてのスプロケットについて説明する。
【0028】
図4(a)は、図2に示すスプロケットを池幅方向から見た図であり、同図(b)は、同図(a)に示すスプロケットのB−B断面図である。図4(a)では、紙面と直交する方向が池幅方向になり、矢印で示す時計回りの方向が周回方向になる。図4(b)では、図の左右方向が池幅方向になる。また、図4に示すスプロケットは、池幅方向が厚み方向になる。なお、本実施形態では、図2に示す駆動スプロケット5と従動スプロケット6は、略同一構造であり、ここでは駆動スプロケット5を例にとって説明する。
【0029】
図4(a)および同図(b)に示すように、駆動スプロケット5は、ボス51と、このボス51の外周部分における、厚み方向の中央部分から放射方向に延在した中央フランジ52と、中央フランジ52の外周部分における、厚み方向の両側に配置された一対の外側フランジ53を備えている。以下の説明では、中央フランジ52に対して、一対の外側フランジ53がそれぞれ配置されている両側あるいは一方側のみを外側と称することがある。
【0030】
ボス51は、一対のボス形成部材51a,51bを厚み方向に接合したものである。ボス51は、厚み方向に貫通するボス孔511を有している。なお、ボス孔511は、キー溝511aを有している。このボス孔511に、図1に示す駆動軸55を通し、キー溝511aに図示しないキーを嵌め込むことによって駆動軸55に駆動スプロケット5を固定する。一対のボス形成部材51a,51bを接合すると、一対のボス形成部材51a,51bの接合面における外周部分には、周方向に沿って延在する溝512が形成される。中央フランジ52は、中央部分に円形の開口を有する円盤状のものであり、内周側の端部がボス51の溝512に嵌め込まれている。これら、一対のボス形成部材51a,51bと中央フランジ52は、ボルトとナットからなる締結部材513によって固定されている。中央フランジ52は、その外周部分に、放射方向に突出した複数の係合歯521を有している。これら複数の係合歯521は、中央フランジ52の外周部分に、間隔をあけて周方向に配列されたものである。係合歯521は、周方向の両側それぞれに、係合歯521の歯たけを確定する立上がり部5211を有している。
【0031】
外側フランジ53は、中央フランジ52よりも厚みが薄い、ドーナツ円盤状であり、外周が、中央フランジ52の外周と略同じ大きさのものである。この外側フランジ53は、スペーサ54を介して、中央フランジ52の外周部分における外側それぞれに、締結部材532によって固定されている。このスペーサ54の厚み分、中央フランジ52の外周側部分と外側フランジ53の外周側部分は、厚み方向に間隔をあけて対向している。
【0032】
外側フランジ53は、その外周部分に、放射方向に突出した複数の制止歯531を有している。これら複数の制止歯531は、中央フランジ52の係合歯521と同様に、外側フランジ53の外周部分に、間隔をあけて周方向に配列されたものである。また、制止歯531は、周方向の両側それぞれに、制止歯531の歯たけを確定する立上がり部5311を有している。制止歯531は、周方向の長さが、係合歯521の周方向の長さよりも短いものである。また、制止歯531は、歯たけの高さが係合歯521の歯たけの高さと略同じものである。外側フランジ53は、制止歯531の周回方向上流側の立上がり部5311を、係合歯521の周回方向上流側の立上がり部5211に、池幅方向に合わせた状態で、中央フランジ52に固定されている。これらのため、図4(a)に示すように池幅方向から見た場合には、係合歯521の、周回方向下流側の一部が見え、係合歯521のその他の部分は、制止歯531に隠れている。すなわち、係合歯521は、制止歯531よりも周回方向側に長く、言い換えれば、係合歯521は、制止歯531よりも周回方向側に突出したものである。なお、係合歯521を、制止歯531よりも周回方向とは反対側に長くしてもよく、言い換えれば、係合歯521は、制止歯531よりも周回方向とは反対側に突出したものであってもよい。さらに、制止歯531の周方向の長さを周回方向に延ばし、池幅方向から見た場合に、制止歯531と係合歯521が一致する態様としてもよい。
【0033】
なお、外側フランジ53は、中央フランジ52の外側における一方にのみ設けてもよい。また、駆動スプロケット5は、ボス51と中央フランジ52を一体に構成してもよく、ボス51と、中央フランジ52と、外側フランジ53を一体に構成してもよい。さらに、駆動スプロケット5は、全体が、例えば合成樹脂や金属からなる同一の素材で構成されたものであってもよく、ボス51を金属製とし、中央フランジ52と外側フランジ53を合成樹脂製にする等、部材毎に素材を異ならせてもよい。
【0034】
続いて、回転輪と、チェーンとを備えた、本発明の動力伝達装置の一例について説明する。前述のごとく、本発明の一例としての動力伝達装置31は、図2に示す、チェーン8と、スプロケット5,6と、シーブ車71,71とを備えたものである。駆動スプロケット5と従動スプロケット6は、チェーン8の一部が同様に巻き掛けられるものであり、ここでは、駆動スプロケット5にチェーン8の一部が巻き掛けられた状態を例にとって説明する。
【0035】
図5(a)は、図2に示す駆動スプロケットにチェーンの一部が巻き掛けられた様子を模式的に示す斜視図であり、図5(b)は、同図(a)を上方から見た模式図である。なお、同図(a)では、図面を簡略化するため、フライト板とステーを省略し、チェーン8の一部のみを簡略化して示している。また、同図(b)では、駆動スプロケット5は、係合歯521と制止歯531のみを示すとともに、駆動スプロケット5とチェーン8の係合状態を分かりやすくするため、フライト板を省略しステー86を簡略化して示している。なお、同図(b)では、上下方向が、池幅方向になる。また、同図(a)では、矢印で示す方向が周回方向になり、同図(b)では、左側から右側に向かう方向が周回方向になる。
【0036】
図5(a)および同図(b)に示すように、チェーン8の、駆動スプロケット5に巻き掛けられた部分のリンク部材80は、駆動スプロケット5の、係合歯521と制止歯531,531との間に、リンク板81がそれぞれ入り込んでいる。不図示の駆動軸が回転すると、スプロケット5が回転し、係合歯521における周回方向下流側の立上がり部5211がバレル部82に係合する。すなわち、本実施形態の動力伝達装置31では、チェーン8のバレル部82が、本発明における被係合部に相当する。係合歯521がバレル部82に係合した状態で、リンク板81よりも厚み方向の外側に制止歯531が位置している。なお、図5(b)に示す、右側の係合歯521は、係合が解除され、バレル部82と離れている。係合歯521がバレル部82に係合すると、駆動スプロケット5の動力がチェーン8に伝達され、チェーン8が周回方向に走行する。チェーン8が走行すると、従動スプロケット6の係合歯における周回方向上流側の立上がり部がチェーン8のバレル部82に係合し、従動スプロケット6が回転する。なお、チェーン8の走行に伴って、シーブ車71,72も回転する。また、チェーン8が走行することによって、ここでは不図示のフライト板もチェーン8とともに周回方向を走行し、池底部1dに沈殿した汚泥や水面Wに浮遊したスカムがかき寄せられる。なお、制止歯531の周方向の長さを周回方向に延ばし、池幅方向から見た場合に、制止歯531と係合歯521が一致する態様を採用し、係合歯521がバレル部82に係合した状態で、制止歯531がボス部83に係合するものであってもよい。
【0037】
図6は、図5(b)のC−C断面図である。図6では、左右方向が池幅方向になり、図5(b)において省略したフライト板9を示している。
【0038】
図6に示すように、一対のリンク板81の上端にステー86が設けられている。また、ステー86には、取付部材87(図3(b)参照)を介してフライト板9が固定されている。リンク板81とステー86の接続部分には、それぞれのリンク板81の上端側部分からステー86の池幅方向外側にかけて三角形状の補強部861が設けられている。この補強部861によって、リンク板81とステー86の接続部分の強度を向上させている。制止歯531は、その歯たけが、補強部861に接触しない高さに設定されている。本実施形態では、係合歯521の歯たけと制止歯531の歯たけを同じ高さにしているが、係合歯521の上方には、補強部が設けられていないため、係合歯521の歯たけを制止歯531の歯たけより高くしてもよい。さらに、制止歯531は、係合歯521の外側における一方側にのみ設けてもよく、係合歯521の外側において、周回方向に、一方側と他方側とに互い違いに設けてもよい。なお、係合歯521は、バレル部82以外の部分や部材に係合するものであってもよい。例えば、バレル部82を省略した場合には、係合歯521は、連結ピン85の軸部851に係合するものであってもよい。
【0039】
本実施形態では、水中に没して水面側に位置するスプロケット5,6(図2参照)は、係合歯521がバレル部82に係合した状態で、リンク板81よりも厚み方向の外側に制止歯531が位置している。このため、スロッシングが発生し、チェーン8が池幅方向に揺れ動くと、リンク板81が制止歯531に接触する。これにより、チェーン8の、スプロケット5,6に巻き掛けられた部分の動きが制止され、チェーン8がスプロケット5,6から脱輪し難くなる。このように、背景技術で説明した、例えば脱輪を抑制するための突出板部等をチェーン8に設けず、スプロケット5,6の構造を変えることで脱輪し難くすることができる。この結果、チェーン8が全周の長いものであっても、動力伝達装置31の製造コストの上昇やチェーンの重量増による駆動装置への負荷増を抑えることができる。
【0040】
ここで、駆動スプロケット5と従動スプロケット6のうち、いずれか一方について制止歯531を有しない構成としてもよい。ただし、チェーン8における、駆動スプロケット5に巻き掛けられた部分にかかる張力に比べ、従動スプロケット6に巻き掛けられた部分にかかる張力の方が弱い。また、チェーン8において、従動スプロケット6に巻き掛けられた部分の巻掛角度は、駆動スプロケット5に巻き掛けられた部分の巻掛角度よりも小さい。これらの理由から、スロッシングが発生した場合には、チェーン8における、駆動スプロケット5に巻き掛けられた部分に比べ、従動スプロケット6に巻き掛けられた部分の方が脱輪しやすい。このため、水面側の従動スプロケット6は、制止歯531を有する構成とすることが好ましい。
【0041】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
【0042】
図7は、本実施形態の第1変形例における、図6に対応した態様を示す図である。
【0043】
図7に示すように、第1変形例では、ステー86の下端側における池幅方向両側部分が切り欠かれ、この切欠かれた領域に、制止歯531の先端側部分が入り込んでいる。これにより、第1変形例では、制止歯531の歯たけが、係合歯521の歯たけよりも高くなっている。このため、図3図6に示す動力伝達装置31に比べて、チェーン8の、スプロケット5,6に巻き掛けられた部分の動きがより制止され、チェーン8がスプロケット5,6から一層脱輪し難くなる。
【0044】
図8(a)は、本実施形態の第2変形例における、図5(b)に対応した態様を示す図である。図8(b)は、同図(a)のD−D断面図であり、本実施形態の第2変形例における、図6に対応した態様を示す図である。
【0045】
図8(a)に示すように、第2変形例では、図3図6に示す実施形態に比べて、制止歯531の周方向における長さが短く、係合歯521がバレル部82に係合した状態で、制止歯531が、リンク部材80のボス部83とステー86との間に位置している。これにより、制止歯531がステー86に干渉しなくなる。このため、図7に示す第1変形例のような切欠き部86aをステー86に形成しなくても、図8(b)に示すように、制止歯531の歯たけを、係合歯521の歯たけよりも高くすることができる。
【0046】
なお、第1変形例および第2変形例では、制止歯531は、フライト板9に接触しない範囲で歯たけを設定することができ、また、全ての制止歯531の歯たけを係合歯521の歯たけより高くしなくてもよい。例えば、スプロケット5,6の周方向において、1つおき、或いは複数おき毎に、歯たけの高い制止歯531を設けてもよく、歯たけの高い制止歯531を、スプロケット5,6の周方向において、一方側と他方側とに互い違いに設けてもよい。さらに、池幅方向両端側それぞれに設けられたスプロケット5,6において、それぞれの他方のスプロケット側(池幅方向内側)における制止歯531の歯たけを、中央の係合歯521の歯たけよりも高くしてもよく、あるいは反対に、それぞれの他方のスプロケット側とは反対側(池幅方向外側)における制止歯531の歯たけを、中央の係合歯521の歯たけよりも高くしてもよい。
【0047】
図9は、本発明の第2実施形態である動力伝達装置を備えた汚泥かき寄せ機を沈殿池の集積溝上に配置した態様を示す断面図である。図9では、紙面手前側が上流側になり、紙面奥側が下流側になる。また、図9では、汚泥ピット42が設けられた沈殿池1’の上流側部分を池幅方向に切断した様子を示している。
【0048】
図9に示すように、汚泥ピット42の池幅方向両側には、汚泥ピット42に接続した一対の集積溝421が設けられている。また、沈殿池1’における、汚泥ピット42および集積溝421よりも下流側は、長手方向に延在した3つの仕切壁1eによって4つの領域に仕切られている。これら4つの領域それぞれには池底部1dが形成され、それぞれの池底部1dの上方には不図示の汚泥かき寄せ機が設けられている。また、一対の集積溝421それぞれの上方には、汚泥かき寄せ機3’が配置されている。汚泥かき寄せ機3’は、集積溝421の幅方向(図9では紙面直交方向)の両端部それぞれに設けられた一対の動力伝達装置31’を有し、動力伝達装置31’のチェーン8’の間に掛け渡された複数のフライト板9’を備えている。水面W側には、本発明にかかる回転輪の一例としての駆動スプロケット5’が配置され、集積溝421における、池幅方向外側と池幅方向内側には、シーブ車71’,72’が配置されている。チェーン8’は、集積溝421に沿った軌道と駆動スプロケット5’に巻き掛けられた軌道とがつながった周回軌道を形成した環状のものである。
【0049】
池底部1dに沈殿した汚泥は、不図示の汚泥かき寄せ機のチェーンが走行すると、フライト板によって集積溝421にかき寄せられる。集積溝421まで掻き寄せられた汚泥は、動力伝達装置31’のチェーン8’が走行すると、フライト板9’によって汚泥ピット42に掻き寄せられる。本実施形態においても、水中に没して水面側に位置する駆動スプロケット5’を、図4に示すスプロケット5と同じ構成としている。これにより、スロッシングが発生して、チェーン8’の、駆動スプロケット5’に巻き掛けられた部分が池幅方向に揺れ動いても、チェーン8’が脱輪し難い。このように、水中に没して水面側に位置する回転輪は1つであってもよく、また、3つ以上であってもよい。
【0050】
以上説明した、回転輪および動力伝達装置によれば、スロッシングが発生しても脱輪し難く、また、製造コストの上昇やチェーンの重量増による駆動装置への負荷増を抑えることができる。
【0051】
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことが出来る。例えば、本実施形態では、動力伝達装置31,31’を、汚泥かき寄せ機3,3’に用いているがこれに限られるものではなく、駆動軸等の動力を伝達する必要がある各種装置や機械等に適用することができる。
【0052】
これまでに説明した回転輪は、間隔をあけて対向する一対のリンク板が周方向に連結され該一対のリンク板の間に被係合部を備えたチェーンが巻き掛けられる回転輪において、
この回転輪の厚み方向における中央部分でこの回転輪の放射方向に突出し、前記被係合部に係合する係合歯と、
前記厚み方向の一端側で前記放射方向に突出し、前記係合歯が前記被係合部に係合した状態で前記リンク板よりも該厚み方向の外側に位置することで、該係合歯に対して該リンク板を間において該外側から重なるように配置された制止歯とを有し、
前記係合歯も前記制止歯も、前記周方向に複数設けられたものであり、
前記周方向に隣り合う前記制止歯の間が、該制止歯が前記放射方向に突出していることで窪んでいることを特徴とする。
【0053】
ここで、前記制止歯は、前記厚み方向の両端側で突出するものであってもよい。さらに、複数の前記係合歯は、形状が同じであってもよいし異なっていてもよく、複数の前記制止歯も、形状が同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0054】
この回転輪によれば、スロッシングが発生し、前記チェーンが揺れ動くと、該チェーンの、前記回転輪に巻き掛けられた部分における前記リンク板が前記制止歯に接触する。これにより前記チェーンの、前記回転輪に巻き掛けられた部分の動きが制止され、該チェーンが前記回転輪から脱輪し難くなる。また、前記チェーンとして、例えば脱輪を抑制するための突出板部等が設けられていない従来構造のチェーンを用いることができ、該チェーンが全周の長いものであっても、回転輪とチェーンを有する動力伝達装置の製造コストの上昇やチェーンの重量増による駆動装置への負荷増を抑えることができる。
【0055】
また、この回転輪において、前記制止歯は、歯たけが前記係合歯の歯たけよりも高いものであってもよい。
【0056】
ここで、前記制止歯は、周方向の長さが前記係合歯の周方向の長さよりも短いものであってもよい。
【0057】
前記制止歯の歯たけを、前記係合歯の歯たけよりも高い構成とすれば、前記チェーンの、前記回転輪に巻き掛けられた部分の動きがより制止され、該チェーンが該回転輪から一層脱輪し難くなる。
【0058】
これまでに説明した動力伝達装置は、水中に没して水面側に位置する水面側回転輪と該水面側回転輪に一部が巻き掛けられたチェーンとを有する動力伝達装置において、
前記チェーンは、間隔をあけて対向する一対のリンク板を周方向に連結し該一対のリンク板の間に被係合部を有するものであって、
前記水面側回転輪は、
この水面側回転輪の厚み方向における中央部分でこの水面側回転輪の放射方向に突出し、前記被係合部に係合する係合歯と、
前記厚み方向の一端側で前記放射方向に突出し、前記係合歯が前記被係合部に係合した状態で該厚み方向において前記リンク板の外側に位置することで、該係合歯に対して該リンク板を間において該外側から重なるように配置された制止歯とを有し、
前記係合歯も前記制止歯も、周方向に複数設けられたものであり、
前記周方向に隣り合う前記制止歯の間が、該制止歯が前記放射方向に突出していることで窪んでいることを特徴とする。
【0059】
ここで、前記水面側回転輪は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0060】
この動力伝達装置によれば、スロッシングが発生し、前記チェーンが揺れ動くと、該チェーンの、前記水面側回転輪に巻き掛けられた部分における前記リンク板が前記制止歯に接触する。これにより前記チェーンの、前記水面側回転輪に巻き掛けられた部分の動きが制止され、該チェーンが該水面側回転輪から脱輪し難くなる。また、前記チェーンには、例えば脱輪を抑制するための突出板部等を設ける必要がなくなり、該チェーンが全周の長いものであっても、製造コストの上昇やチェーンの重量増による駆動装置への負荷増を抑えることができる。
【0061】
また、この動力伝達装置において、前記水面側回転輪よりも下側に位置する下側回転輪を備え、
前記チェーンは、前記下側回転輪にも一部が巻き掛けられたものであってもよい。
【0062】
前記動力伝達装置が前記下側回転輪を備える構成であっても、前記回転輪を有することで、スロッシングが発生した場合に、前記チェーンが該回転輪から脱輪し難くすることができる。
【0063】
前記下側回転輪は、前記水面側回転輪と同じ構成のものであってもよいが、該下側回転輪は、該水面側回転輪よりも下側に位置するため、スロッシングが発生した場合に、前記チェーンの、該下側回転輪に巻き掛けられた部分は、該水面側回転輪に巻き掛けられた部分に比べて揺れ動きが小さい。このため、前記下側回転輪として、前記制止歯を有しないスプロケットやシープ車等を用いてもよい。こうすることで、製造コストの上昇をより抑えることができる。
また、これまでに説明した動力伝達装置は、回転輪と該回転輪に一部が巻き掛けられたチェーンとを有する動力伝達装置において、
前記チェーンは、
間隔をあけて対向する一対のリンク板の間に設けられ、該一対のリンク板を連結する被係合部と、
前記一対のリンク板どうしが対向する側とは反対側に突出したボス部と、
このチェーンの周方向に前記ボス部とは間隔を開けて配置され、前記一対のリンク板から前記反対側に延在した延在部を有するステーとを備えたものであって、
前記回転輪は、
この回転輪の厚み方向における中央部分でこの回転輪の放射方向に突出し、前記被係合部に係合する係合歯と、
前記係合歯が前記被係合部に係合した状態において、前記リンク板よりも前記厚み方向外側で、前記ボス部と前記延在部とを避けて前記放射方向に突出した制止歯を有することを特徴とする。
【符号の説明】
【0064】
3,3’ 汚泥かき寄せ機
31,31’ 動力伝達装置
5,5’,6 スプロケット
521 係合歯
5211 立上がり部
531 制止歯
8,8’ チェーン
80 リンク部材
81 リンク板
82 バレル部
9,9’ フライト板
W 水面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9