(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも片面にポリエステル樹脂、アクリル樹脂又はウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂からなるコート層が積層されたポリエステルフィルムのコート層面上に、プライマー層、離型層がこの順に積層された離型フィルムであって、該コート層が積層されたポリエステルフィルムを180℃で180分加熱処理した後の該コート層面における5μm以上のオリゴマーが400個以下/mm2であり、かつ、該離型フィルムを180℃で180分加熱処理した後の該離型層面における5μm以上のオリゴマーが50個以下/mm2であることを特徴とする離型フィルム。
【背景技術】
【0002】
近年、情報技術関連ビジネスの成長に伴い、液晶や有機EL等の光学表示分野における各種フィルム材料の使用量が飛躍的に伸びている。
【0003】
ポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムもそれら材料の一つであり、光学用フィルム同士の貼り合わせに用いられる粘着剤シート(OCA:Optically Clear Adhesive)を製造するために、離型フィルムは、離型フィルム/OCA/離型フィルムの構成として広く用いられている。
【0004】
このOCAの用途として、透明導電フィルムである酸化インジウム・スズ積層フィルム(ITOフィルム)をガラス等の被着体に接着する用途がある。すなわち、この用途においては、離型フィルム/OCA/離型フィルムの一方の離型フィルムを剥離し、ITOフィルムと貼り合わせ、ITOフィルム/OCA/離型フィルムの構成とされる。この積層構成で断裁された後、ITOの結晶化度を上げるために140〜160℃の高温で長時間焼成される。この際に、離型フィルムのポリエステルフィルムから析出したオリゴマーが、OCAへ付着またはOCA内部へ混入することがある。この後、離型フィルムが剥離されて被着体に接着されるが、オリゴマーによるOCAの透明性の低下や輝点の発生などの問題を引き起こす原因となっている。
【0005】
ポリエステルフィルム表面から析出するオリゴマーを抑制するために、エチレンテレフタレート環状三量体含有量がポリエステルに対し0.4重量%未満と少なくすることがなされている(特許文献1)。本ポリエステルフィルムはオリゴマー析出防止性能が向上しているが、その防止性は不十分であった。離型層を設けて離型フィルムとし、上記のようなITOの製造工程において、ITOの結晶化度を上げるためにITOフィルム/OCA/離型フィルムの構成で、高温で長時間焼成されることで、離型フィルムに使用しているポリエステルフィルムから析出したオリゴマーが、OCAへ付着及び混入することにより、OCA付きITOフィルムが積層されたときに、欠陥原因となる輝点や表面荒れ、透明性の低下が起こるという問題は解決できなかった。
【0006】
また、特定の樹脂組成の離型層をポリエステルフィルム上に設けることでオリゴマーの析出を抑えることができる離型フィルムの開示がある(特許文献2)。ポリエステルフィルムの少なくとも片面に特定のコート層を設けることでオリゴマーの析出を防止する開示もある(特許文献3、4)。しかしながら、これらの特定の樹脂組成の離型層、コート層を設けたとしても、高温で長時間加熱されるとコート層が設けられていないものと同じ程度にオリゴマーが生成し、その効果は限定的であった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、少なくとも片面にポリエステル樹脂、アクリル樹脂又はウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂からなるコート層が積層されたポリエステルフィルムのコート層面に、プライマー層、離型層がこの順に積層された離型フィルムであって、該離型フィルムを180℃で180分加熱処理した後の該コート層面における5μm以上のオリゴマーが400個以下/mm
2であり、該離型層面における5μm以上のオリゴマーが50個以下/mm
2であることを特徴とする離型フィルムである。
【0016】
本発明におけるポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、芳香族二塩基酸成分とジオール成分とからなる結晶性の線状飽和ポリエステルであることが好ましく、ホモポリエステルや共重合ポリエステルが例示される。ホモポリエステルとしては芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールを重縮合させて得られるものが好ましい。前述の芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。また、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、パラオキシ安息香酸のようなオキシカルボン酸等の1種または2種以上を併用することが例示され、グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの1種又は2種を併用することが例示される。
【0017】
本発明におけるコート層は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂からなり、ポリエステルフィルムの片面に設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。
【0018】
本発明のコート層におけるポリエステル樹脂としては、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するものであり、このようなポリエステル樹脂は、酸成分とグリコール成分から重縮合して得ることができるものである。また、ポリエステル樹脂を水性塗液として用いる場合、接着性や水溶性化の点において、スルホン酸塩基を含む化合物やカルボン酸塩基を含む化合物を共重合することが好ましい。該ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、0〜120℃が好ましい。さらに、ポリエステル樹脂として、変性ポリエステル共重合体、例えば、アクリル、ウレタン、エポキシなどで変性したブロック共重合体、グラフト共重合体などを用いることも可能である。
【0019】
本発明のコート層におけるアクリル樹脂は、該塗布層における樹脂のうち、接着性やオリゴマー抑制性の点において、塗布層中の樹脂のうち20重量部以上の割合で、特に好ましく用いることができる。該アクリル樹脂を構成するモノマー成分として、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレートなどを用いることができ、これらは1種もしくは2種以上を用いて共重合される。さらに、これらは他種のモノマーと併用することができる。他種のモノマーとしては、例えば、スルホン酸基またはその塩を含有するモノマー、酸無水物を含有するモノマー、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリスアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマル酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキルイタコン酸モノエステル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、塩化ビニルなどを用いることができる。該アクリル樹脂のガラス転移温度は、0〜70℃が好ましい。さらに、アクリル樹脂として、変性アクリル共重合体、例えば、ポリエステル、ウレタン、エポキシなどで変性したブロック共重合体、グラフト共重合体などを用いることもできる。
【0020】
本発明のコート層におけるウレタン樹脂としては、分子構造中にウレタン結合を有するものであれば特に限定されるものではなく、ポリオール化合物とイソシアネート化合物より得られる反応生成物をその基本骨格とするものである。
【0021】
さらに、本発明におけるコート層には、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の樹脂、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂などが配合されていてもよい。
【0022】
本発明のコート層における、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂を水性塗液として塗布する際には、水に溶解あるいは分散された状態にする必要があり、乳化剤として界面活性剤(例えば、ポリエーテル系化合物などが挙げられるが、限定されるものではない。)を使用する場合がある。該乳化剤の使用量が多すぎると接着性やオリゴマー抑制性が損なわれる場合があり、該乳化剤の使用量が少なすぎると水性塗液としての安定性が損なわれる場合がある。
【0023】
さらに、本発明におけるコート層には、本発明の効果を損なわない範囲内で、各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などが配合されていてもよい。特に本発明におけるオリゴマー析出防止層に、粒子や架橋剤、界面活性剤(特に限定されないが、例えばポリエーテル系化合物、フッ素系化合物など)を添加することは任意であるが、これらの添加によって易滑性や耐ブロッキング性、接着性、塗布後の外観、オリゴマー抑制性が向上するので好ましい。
【0024】
本発明において、ポリエステルフィルムに予めインラインコートされたコート層を有する積層ポリエステルフィルムを用いることが好ましい。コート層としては、ポリエステルからのオリゴマー析出を防止する機能を有していれば他の機能を有していてもよく、紫外線吸収性、易接着性、ハードコート性、反射防止性、アンチグレア性、帯電防止性などの機能を有していてもよい。
【0025】
本発明にかかるコート層のオリゴマー防止性は、180℃で180分加熱処理後において、5μm以上のオリゴマー析出個数が、400個以下/mm
2である必要がある。400個以上/mm
2であると、離型フィルムとして、析出したオリゴマーにより導電性の低下や欠陥原因となる輝点や表面荒れ、透明性の低下、工程汚染に繋がる。
【0026】
次に、本発明におけるプライマー層について説明する。本発明におけるプライマー層は、離型フィルムが高温で長時間処理されてもポリエステルフィルムから析出されたオリゴマーが、OCAへ付着又はOCA内部へ混入することを抑制し、輝点や面荒れ、透明性の低下や外観不良を防ぐことができる。その構成としては有機珪素化合物を含有することが好ましく、下記一般式(1)で示される有機珪素化合物を使用することが好ましい。
Si(X)a(Y)b(R1)c ・・・・(1)
(X:アルキレン基にグリシドキシ基、メルカプト基、(メタ)アクリロキシ基、およびアミノ基から選ばれる1種が結合したもの、またはアルケニル基、ハロアルキル基、R1:1価の炭化水素基であり炭素数が1〜12のもの、Y:加水分解性基であり、aは0または1、bは2または3、cは0〜2の整数であり、a+b+c=4。)
前記一般式(1)で表される有機珪素化合物は、加水分解・縮合反応によりシロキサン結合を形成しうる加水分解性基Yを2個有するもの(D単位源)あるいは3個有するもの(T単位源)を使用することができる。
【0027】
一般式(1)において1価炭化水素基R1は炭素数が1〜12のもので特にメチル基、エチル基、プロピル基が一般的である。
【0028】
また一般式(1)において加水分解性基Yとしては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソプロペノキシ基、アセトキシ基、ブタノキシム基、ケトキシム基およびアミノ基等である。これらの加水分解基は単独、あるいは複数種を使用してもよい。メトキシ基、あるいはエトキシ基を使用するとプライマー層が良好に形成することができ、また良好な加水分解性があるため特に好ましい。
【0029】
本発明における有機珪素化合物として具体的にはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、5−ヘキセニルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を例示することができる。
【0030】
本発明におけるプライマー層の有機珪素化合物の加水分解における触媒的役割、および離型層とポリエステルフィルムとの塗膜密着性を向上させるために、金属元素を含む有機金属化合物を少なくとも1種類または2種以上プライマー層中に含有することが好ましい。中でも、有機金属化合物として特にオリゴマー析出防止性能が良好となる点でアルミニウム、ジルコニウム、チタンから選ばれる金属元素を含む有機金属化合物が好ましく、キレート構造を有する有機金属化合物が好ましい。
【0031】
アルミニウム元素を有する有機金属化合物の具体例としてはビス(エチルアセトアセテート)(2,4−ペンタンジオネート)アルミニウム、アルミニウムトリス(アセチルアセトネ−ト)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウム−ジ−n−ブトキシド−モノエチルアセトアセテート、アルミニウム−ジ−イソ−プロポキシド−モノメチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が例示される。
【0032】
チタン元素を有する有機金属化合物の具体例としては、例えば、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート等のチタンオルソエステル類、チタンアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、ポリチタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、チタンエチルアセトアセテート等のチタンキレート類等が挙げられる。
【0033】
ジルコニウム元素を有する有機金属化合物の具体例としては、例えば、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート等が挙げられる。
【0034】
これらプライマー層に含まれる有機金属化合物の量は、0.001〜70重量%、好ましくは5〜30重量%であり、さらに好ましくは5〜15重量%の範囲である。有機金属化合物の量が0.001重量%以下であると、塗布層の硬化反応が迅速に進まず、塗布層の上に離型層を形成した後の離型面の塗膜密着性が悪化することがある。また、有機金属化合物の量が70重量%以上であると、塗布層の硬化反応に関与せずに、塗布層中に残存した有機金属化合物が離型層の硬化を妨げ、離型面の塗膜密着性が悪化することがある。
【0035】
プライマー層が不活性微粒子を含むことも可能であるが、かかる不活性微粒子の具体例として、例えば湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、クレー、カオリン、マイカ、タルク、ゼオライト、ケイソウ土、結晶性シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック等の無機微粒子が挙げられる。使用される無機微粒子の形状についても限定されるものではなく球状、塊状、棒状、扁平状、鱗片状が例示される。
【0036】
プライマー層への粒子含有量は、0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%である。
【0037】
プライマー層の厚さは、20〜300nmであることが好ましく、50〜250nmであることがより好ましい。プライマー層が20nm未満であるとオリゴマー抑制性能が不十分となることがあり、厚すぎると平面性や乾燥性が悪化し、加えてプライマー層は3次元架橋された樹脂層であり、それ自身が脆いため離型層を塗布する際に脱落や表面欠陥の起点となることがある。
【0038】
これらのプライマー層を形成するために、ポリエステルフィルムに塗布する方法としては、一般的なコーティング方式を利用することができる。たとえば、グラビアコート、グラビアリバースコート、リップコート、ダイコート、マイクログラビアコート、マイヤーバーコート、多段リバースコートなどの塗布方式を使用することができる。
【0039】
本発明におけるプライマー層には、本発明の効果を損なわない範囲内で、各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、易滑剤、顔料、染料、帯電防止剤、核剤などが配合されていてもよい。プライマー層に、粒子や架橋剤、界面活性剤(特に限定されないが、例えばポリエーテル系化合物、フッ素系化合物など)を添加することは任意であるが、これらの添加によって易滑性や耐ブロッキング性、接着性、塗布後の外観、オリゴマー抑制性が向上するので好ましい。
【0040】
本発明における離型層形成材料としては、公知のものを適宜使用することができる。例えば、アルキッド樹脂系離型剤、ポリオレフィン系離型剤、長鎖アルキル基含有樹脂系離型剤、フッ素系離型剤、シリコーン系離型剤、有機系とシリコーン系の混合もしくは共重合樹脂系離型剤などが挙げられる。これらのうち、優れた離型性や耐熱性からシリコーン系離型剤が特に好ましい。シリコーン系離型剤は、反応形態で分けると、付加反応型や縮合反応型などの加熱硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型、熱と紫外線の併用硬化型などがあるが、いずれのシリコーン系離型剤も使用し得る。
【0041】
離型層の厚さは、10〜500nmであることが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。塗布層が薄すぎると剥離性能が低下し、厚すぎると平面性や乾燥性、外観塗布ムラが発生し、加えてシリコーン移行性が発生するため好ましくない。
【0042】
これらの離型層形成剤をポリエステルフィルムに塗布する方法としては、一般的なコーティング方式を利用することが出来る。たとえば、グラビアコート、グラビアリバースコート、リップコート、ダイコート、マイクログラビアコート、マイヤーバーコート、多段リバースコートなどの塗布方式を使用することができる。
【0043】
本発明において、ポリエステルフィルム上にプライマー層、離型層を形成する際の硬化条件に関しては、特に限定されるわけではなく、60〜200℃で3〜40秒間、好ましくは80〜180℃で3〜40秒間、熱処理を行うのが良い。また、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。
また離型フィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
本発明で用いた測定法は次のとおりである。
【0046】
<オリゴマー析出量(個数確認)>
(1)フィルムを架台に吊り下げ180℃、180分間オーブン中で加熱する。
(2)オーブンから取り出し、室温まで冷却したのち、オリゴマー析出量を確認する面の反対面をトルエンを染み込ませた綿布で丁寧にふき取る。
(3)風乾したのち、測定面を光学顕微鏡で観察(×400倍)し、析出したオリゴマーの最大の長さが5μm以上のオリゴマー個数を数えた。(対象面積:0.056mm
2)上記方法でn=15確認し、これらのオリゴマーの総個数を1mm
2当たりに換算しそのサンプルのオリゴマー析出量(個数)とした。
【0047】
(実施例1)
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであるBY24−846B(東レ・ダウコーニング(株)製、含有量98重量%)3重量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランである“XIAMETER”OFS−6030SILANE(東レ・ダウコーニング(株)製、含有量99重量%)1重量部、ビス(エチルアセトアセテート)(2,4−ペンタンジオネート)アルミニウムであるBY24−846E(東レ・ダウコーニング(株)製、含有量38重量%)2重量部をトルエン50重量部、IPA50重量部に混合したプライマー塗工液を作製した。
【0048】
付加反応型の硬化性シリコーン樹脂であるKS847H(信越化学工業(株)製)4重量部、硬化剤であるPL−50T(信越化学工業(株)製)0.04重量部をトルエン50重量部、n−ヘプタン50重量部に混合した離型層塗工液を作製した。
【0049】
製膜時にインラインにてアクリル樹脂系のコート層が片面に設けられた厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 “ルミラー”(登録商標)XD1NB1)のコート面上にプライマー塗工液を乾燥後の塗布厚さが50nmとなるようにマイヤーバーNo.3で塗布し100℃で5秒乾燥硬化した後、連続して離型層塗工液を塗布厚さが50nmとなるようにマイヤーバーNo.5で塗布し150℃で20秒乾燥硬化し離型フィルムを得た。“ルミラー”XD1NB1のコート層面および離型層面のオリゴマー析出量を測定した。その結果を表1に示した。オリゴマー防止性が付与されており、離型性も良好であった。
【0050】
(実施例2)
実施例1のプライマー塗工液を、乾燥後の塗布厚さが200nmとなるようにマイヤーバーNo.10で塗布したこと以外は同様にして離型フィルムを得た。オリゴマー防止性が付与されており、離型性も良好であった。
【0051】
(実施例3)
実施例1のプライマー塗工液を、さらにトルエン50重量部、IPA50重量部で希釈し乾燥後の塗布厚さが25nmとなるようにマイヤーバーNo.3で塗布したこと以外は同様にして離型フィルムを得た。オリゴマー防止性が付与されており、離型性も良好であった。
【0052】
(比較例1)
実施例1において、プライマー塗工液を塗布せず、離型層塗工液のみを塗布した離型フィルムを得た。フィルム表面に多数のオリゴマーが析出した。
【0053】
(比較例2)
実施例1のプライマー塗工液をさらに、トルエン110重量部、IPA110重量部で希釈してプライマー塗工液を作製し、プライマー塗工液を乾燥後の塗布厚さが17nmとなるようにマイヤーバーNo.3で塗布したこと以外は同様にして離型フィルムを得た。フィルム表面に多数のオリゴマーが析出した。
【0054】
(比較例3)
実施例1において、アクリル樹脂系のコート層が片面に設けられた厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 “ルミラー”XD1NB1)の非コート面上に塗布したこと以外は、同様にして離型フィルムを得た。ポリエチレンテレフタレートフィルムの非コート面および離型層面のオリゴマー析出量を測定した。離型層表面に、オリゴマーが析出していることを確認した。
【0055】
(比較例4)
アクリル樹脂系のコート層が片面に設けられた厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 “ルミラー”XD1NB1)の非コート面に直接離型層塗工液のみを塗布し、離型フィルムを得た。離型層表面に、オリゴマーが析出していることを確認した。
【0056】
(比較例5)
実施例2において、ポリエステル樹脂系のコート層が片面に設けられた厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 “ルミラー”U463)を用いたこと以外は同様にして離型フィルムを作成した。“ルミラー”U463のコート層面および離型層面のオリゴマー析出量を測定した。離型層面のオリゴマー量を50個以下/mm
2とすることはできなかった。
【0057】
【表1】