【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日 平成27年12月22日(火) 掲載アドレス 国土交通省 関東地方整備局 東京外かく環状国道事務所ウェブサイト http://www.ktr.mlit.go.jp/gaikan/index.html
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(国土交通省関東地方整備局、東京外環トンネル地中拡幅部における技術開発業務(その7)、履行期間 平成26年11月6日〜平成27年9月30日、国土交通省関東地方整備局、東京外環トンネル地中拡幅部における技術開発業務(その10)、履行期間 平成26年11月6日〜平成27年9月30日、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
本線シールドトンネルとランプシールドトンネルとの分岐合流部をなす地中拡幅部を施工する際に、該地中拡幅部の掘削予定位置の外側に、予め複数の外殻シールドトンネルを外殻シールド機を掘進させることでトンネル周方向に配列した状態で施工することにより、それら前記外殻シールドトンネルによって前記掘削予定位置を取り囲む外殻覆工体を構築し、該外殻覆工体の内側を掘削して大断面地下空間を施工する際に用いられる動線シールドトンネルであって、
前記ランプシールドトンネルから発進し、前記本線シールドトンネルの所定位置において円周方向に施工される地中発進基地へ向けて掘進され、
前記ランプシールドトンネルと前記地中発進基地とを接続するとともに、前記外殻シールド機が通過可能な内空断面を有していることを特徴とする動線シールドトンネル。
本線シールドトンネルとランプシールドトンネルとの分岐合流部をなす地中拡幅部を施工する際に、該地中拡幅部の掘削予定位置の外側に、予め複数の外殻シールドトンネルを外殻シールド機を掘進させることでトンネル周方向に配列した状態で施工することにより、それら前記外殻シールドトンネルによって前記掘削予定位置を取り囲む外殻覆工体を構築し、該外殻覆工体の内側を掘削する大断面地下空間の施工方法であって、
前記ランプシールドトンネルを所定の到達位置に到達させる工程と、
前記ランプシールドトンネルから本線シールドトンネルの円周方向に施工される地中発進基地に向けて動線シールドトンネルを施工する工程と、
前記動線シールドトンネルが前記地中発進基地に到達した後に、該動線シールドトンネル内で前記外殻シールド機を搬送して前記ランプシールドトンネルから前記地中発進基地へ移動させ、前記地中発進基地の所定の発進位置に前記外殻シールド機を配置する工程と、
前記外殻シールド機を掘進して外殻シールドトンネルを設ける工程と、
を有することを特徴とする大断面地下空間の施工方法。
前記動線シールドトンネル内を搬送される外殻シールド機は、掘削カッタを前記動線シールドトンネルの発進側に向けた状態で前記地中発進基地へ向けて後ろ向きに移動されることを特徴とする請求項2又は3に記載の大断面地下空間の施工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の大断面地下空間の施工方法では、本線シールドトンネルを使用して外殻シールド機を搬入させることのみならず、施工中の掘削土砂の搬出やセグメント等の資材の搬入においても本線シールドトンネルを使用している。そのため、本線シールドトンネル自体が施工中である場合には、これら外殻シールドトンネルに係る搬入出作業が制限されるという問題があった。
また、本線シールドトンネルにおける地中発進基地への投入用開口部は、外殻シールド機の移動が必要となり、大規模な補強が必要となることから、その点で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、外殻シールドトンネルの施工を他の施工と干渉させることなく行うことで、工期の短縮を図ることができ、しかも地中発進基地の補強を小規模に抑えることができる動線シールドトンネル及び大断面地下空間の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る動線シールドトンネルは、本線シールドトンネルとランプシールドトンネルとの分岐合流部をなす地中拡幅部を施工する際に、該地中拡幅部の掘削予定位置の外側に、予め複数の外殻シールドトンネルを外殻シールド機を掘進させることでトンネル周方向に配列した状態で施工することにより、それら前記外殻シールドトンネルによって前記掘削予定位置を取り囲む外殻覆工体を構築し、該外殻覆工体の内側を掘削して大断面地下空間を施工する際に用いられる動線シールドトンネルであって、前記ランプシールドトンネルから発進し、前記本線シールドトンネルの所定位置において円周方向に施工される地中発進基地へ向けて掘進され、前記ランプシールドトンネルと前記地中発進基地とを接続するとともに、前記外殻シールド機が通過可能な内空断面を有していることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る大断面地下空間の施工方法は、本線シールドトンネルとランプシールドトンネルとの分岐合流部をなす地中拡幅部を施工する際に、該地中拡幅部の掘削予定位置の外側に、予め複数の外殻シールドトンネルを外殻シールド機を掘進させることでトンネル周方向に配列した状態で施工することにより、それら前記外殻シールドトンネルによって前記掘削予定位置を取り囲む外殻覆工体を構築し、該外殻覆工体の内側を掘削する大断面地下空間の施工方法であって、前記ランプシールドトンネルを所定の到達位置に到達させる工程と、前記ランプシールドトンネルから本線シールドトンネルの円周方向に施工される地中発進基地に向けて動線シールドトンネルを施工する工程と、前記動線シールドトンネルが前記地中発進基地に到達した後に、該動線シールドトンネル内で前記外殻シールド機を搬送して前記ランプシールドトンネルから前記地中発進基地へ移動させ、前記地中発進基地の所定の発進位置に前記外殻シールド機を配置する工程と、前記外殻シールド機を掘進して外殻シールドトンネルを設ける工程と、を有することを特徴としている。
【0010】
本発明では、先行して所定位置に到達したランプシールドトンネルを使用して動線シールド機を掘進させ、予め所定の位置に設けた地中発進基地に到達する動線シールドトンネルが施工される。つまり、ランプシールドトンネルと地中発進基地とが動線シールドトンネルによって接続されるので、この動線シールドトンネルを使用して複数の外殻シールド機をランプシールドトンネル側から地中発進基地内へと搬送することができる。すなわち、本線シールドトンネルを使用せずに外殻シールド機を地中発進基地内に搬送することが可能となる。また、外殻シールドトンネルの施工中における土砂搬出や施工に必要な資材搬出路としても動線シールドトンネルを利用することができる。
このように、動線シールドトンネルを設けることで、本線シールドトンネルの掘進施工に干渉するような他の作業をなくすことができる。そのため、外殻シールドトンネルと本線シールドトンネルの両施工を並行して効率よく行うことができ、施工全体の工期短縮を図ることができる。したがって、本線シールドトンネルがランプシールドトンネルよりも遅れて地中拡幅部の施工予定位置に到達する場合であっても、先に所定位置に到達したランプシールドトンネルより動線シールドトンネルを施工することで、外殻シールドトンネルの施工を開始することができ、大幅な工期の短縮を図ることが可能となる。
【0011】
また、本発明では、動線シールドトンネルが地中発進基地に直接接続するため、動線シールドトンネルが到達するための新たな到達坑を地中に設ける必要がなく、効率よく施工を行うことができる。
さらに、本発明では、動線シールドトンネルを使用して地中発進基地内に重量の大きな外殻シールド機を搬入することができる。そのため、本線シールドトンネル内と地中発進基地内とを連通する投入用開口部を使用して外殻シールド機を搬入する必要がなくなり、地中発進基地における投入用開口部の補強を小規模に抑えることができる。
【0012】
また、本発明に係る大断面地下空間の施工方法は、前記動線シールドトンネルは、前記複数の外殻シールドトンネルの1本として構成されることが好ましい。
【0013】
この場合には、施工した動線シールドトンネルを外殻シールドトンネルのうち1本として機能するので、外殻シールド機の搬送や外殻シールドトンネルの施工時の動線としての機能が完了した後に、動線シールドトンネルを撤去する必要がなくなり、効率的な施工を行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る大断面地下空間の施工方法は、前記動線シールドトンネル内を搬送される外殻シールド機は、掘削カッタを前記動線シールドトンネルの発進側に向けた状態で前記地中発進基地へ向けて後ろ向きに移動されることが好ましい。
【0015】
この場合には、動線シールドトンネル内で搬送された外殻シールド機を、その搬送中の向きを変更することなく地中発進基地の円周方向に沿って移動させ、所定の発進切羽面の位置に配置させることができる。つまり、外殻シールド機の移動時に、その外殻シールド機の向きを変更する作業が不要となるので、工期の短縮を図ることができる。
【0016】
また、本発明に係る大断面地下空間の施工方法は、複数の前記外殻シールド機を前記動線シールドトンネル内で通過させ、前記地中発進基地に到着した前記複数の外殻シールド機を、順次、前記地中発進基地の円周方向に沿って移動させて連続的に配置することが好ましい。
【0017】
この場合には、動線シールドトンネルを使用して複数の外殻シールド機を連続的に地中発進基地へ移動させることができ、さらに地中発進基地に到着した複数の外殻シールド機を順次、円周方向に沿って移動させることで、複数の外殻シールド機を効率よく地中発進基地の所定の発進位置に配置することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の動線シールドトンネル及び大断面地下空間の施工方法によれば、ランプシールドトンネルと地中発進基地とを動線シールドトンネルで接続し、この動線シールドトンネルを外殻シールドトンネル施工時の運搬等を施工用の動線として利用することができ、外殻シールドトンネルの施工を他の施工と干渉させることなく行うことで、工期の短縮を図ることができ、しかも地中発進基地の補強を小規模に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態による動線シールドトンネル及び大断面地下空間の施工方法について、図面に基づいて説明する。
【0021】
図1乃至
図3に示すように、本実施の形態による動線シールドトンネル及び大断面地下空間の施工方法は、例えば道路トンネルにおいて、予め地中に施工されている本線シールドトンネル11に対してランプシールドトンネル12が合流・分岐する箇所に地中拡幅部1を構築する施工に適用されている。
【0022】
この地中拡幅部1は、本線シールドトンネル11及びランプシールドトンネル12の外側に複数の外殻シールドトンネル13、13、…を、本線シールドトンネル11のトンネル軸方向Xに平行な方向を中心軸とする円周方向Eに配列した状態で施工することによって、それら外殻シールドトンネル13によって掘削予定位置を取り囲む外殻覆工体1Aを構築し、さらに本線シールドトンネル11及びランプシールドトンネル12を取り囲む外殻覆工体1Aの内側を掘削することにより構築される。外殻シールドトンネル13は、外殻シールド機14を掘進させることにより施工される。なお、本実施の形態では、本線シールドトンネル11及びランプシールドトンネル12は、周知のシールド工法により施工されている。
【0023】
本実施の形態では、地中拡幅部1の掘削予定領域における所定の到達位置に先にランプシールドトンネル12を到達させ、このランプシールドトンネル12の一部を拡幅して動線シールド発進基地12Aを施工するとともに、ランプシールドトンネル12側に向けて掘進している本線シールドトンネル11の所定の位置に外殻シールド機14を発進させるための地中発進基地15を施工する。そして、動線シールド発進基地12Aから動線シールド機(図示省略)を発進させて動線シールドトンネル3を施工し、その動線シールドトンネル3を使用して地中発進基地15に外殻シールド機14を搬入して設置する施工方法となっている。
【0024】
外殻シールド機14は、
図4及び
図5に示すように、本線シールドトンネル11の外側に円周方向Eに沿ってリング状に形成される地中発進基地15を発進部として掘進される。
複数の外殻シールドトンネル13は、
図3に示すように、本線シールドトンネル11及びランプシールドトンネル12の外周の所定位置に設定される地中到達部に向かうように外殻シールド機14を掘進させることにより施工される。
【0025】
地中発進基地15は、周囲を凍結工法等で地盤改良した後掘削し、それと並行してコンクリートセグメント、鋼殻セグメント等を組み立てて構築される。発進基地15は、外殻シールド機14が発進可能な寸法に設定されている(
図4及び
図5参照)。なお、地中発進基地15は、円周シールド掘削機を使用して構築しても良い。
地中発進基地15のうち外殻シールド機14の発進部分をなす複数の発進切羽面15aは、それぞれ施工時においてセグメント10Aにより外壁が形成されているが、適宜なタイミングで一般的なシールド工法と同様に切削カッタで切削可能な例えば炭素繊維入りコンクリート等の材料により施工しておく。なお、切削カッタで切削可能な材料からなる発進切羽面15aが予め組み込まれているセグメント10Aを使用することも可能である。
鋼殻セグメントを用いた場合の発進部分は、同様に切削可能な材料で施工する他、発進直前に取り外すことが可能な構造としておいても良い。
【0026】
ここで、地中発進基地15の掘削は、バックホウ等を使用して従来方法で行い、セグメントの組立は専用機械等を用いる。また、この地中発進基地15は、円周シールド掘削機を円周方向に掘進させることにより構築することも可能である。このような円周シールド掘削機を使用する場合には、掘削面にカッタを備えてトンネル線形が一定の曲線を描くように掘進させ、円周シールド掘削機の後方には筒状に組み立てられるセグメント10Aがトンネル掘進方向に連結され、円周シールドトンネル10が順次延長されて構築される。
【0027】
動線シールドトンネル3は、
図2及び
図3に示すように、ランプシールドトンネル12に施工される動線シールド発進基地12A内に不図示の動線シールド機を配置させ、地中発進基地15における複数の発進切羽面15aのうち1箇所に向けて到達することにより施工される。これにより、ランプシールドトンネル12と地中発進基地15とが動線シールドトンネル3を介して連通した状態となる。また、動線シールドトンネル3の内径は、少なくとも外殻シールド機14がランプシールドトンネル12側から地中発進基地15に向けて通過できる内空断面を有する寸法をなしている。
なお、動線シールドトンネル3は、複数の外殻シールドトンネル13、13、…のうちの1本として構成される。
【0028】
次に、上述した地中拡幅部1の施工方法について、図面に基づいて具体的に説明する。
本実施の形態の地中拡幅部1の施工方法は、
図2及び
図3に示すように、ランプシールドトンネル12を所定の到達位置P1に到達させる工程と、ランプシールドトンネル12から本線シールドトンネル11の円周方向に施工される地中発進基地15に向けて動線シールドトンネル3を施工する工程と、動線シールドトンネル3が地中発進基地15に到達した後に、動線シールドトンネル3内で外殻シールド機14を搬送してランプシールドトンネル12から地中発進基地15へ移動させ、地中発進基地15の所定の発進位置に外殻シールド機14を配置する工程と、外殻シールド機14を掘進して外殻シールドトンネル13を設ける工程と、を有している。
【0029】
具体的な地中拡幅部1の施工方法としては、地中拡幅部1の掘削予定位置において、本線シールドトンネル11に対して分岐合流するランプシールドトンネル12が施工されている。
先ず、ランプシールドトンネル12の一部に動線シールド発進基地12Aを施工する。この動線シールド発進基地12Aは、分岐合流する本線シールドトンネル11とは反対側の位置に設けられる。なお、
図2及び
図3において、ランプシールドトンネル12を掘削したランプシールド機12Bが示されているが、このランプシールド機12Bは、ランプシールドトンネル12の到達後、スキンプレートを残して動線シールド発進基地12Aの施工前又は施工後に解体され、ランプシールドトンネル12の発進側に向けて搬出される。つまり、動線シールド発進基地12Aの施工時には、このランプシールド機12Bは坑外に搬出された状態となっている。
【0030】
次に、ランプシールドトンネル12の所定位置において、動線シールド機が発進可能な所定の大きさを有する動線シールド発進基地12Aを施工する。なお、動線シールド発進基地12Aの施工前には、動線シールド発進基地12Aの施工領域の周囲の地盤を薬液注入工や凍結工法などにより地盤改良部を施工してから掘削する。
その後、不図示の動線シールド機をランプシールドトンネル12内で通過させ、搬送した動線シールド機を動線シールド発進基地12A内で組み立てて発進の準備施工を行う。
【0031】
そして、動線シールド発進基地12Aの施工と並行して、本線シールドトンネル11が地中発進基地15の施工予定位置を通過した適宜なタイミングで、本線シールドトンネル11の周囲に前述した方法により外殻シールド機14を発進させるための地中発進基地15を設ける。
【0032】
地中発進基地15は、動線シールドトンネル3の到達前までに施工されていればよく、上述した動線シールド発進基地12Aと並行に施工されることはなく、例えば動線シールドトンネル3の掘進中に施工されてもよい。
地中発進基地15における外殻シールド機14の発進部分に相当する発進切羽面15aは、一般的なシールド工法と同様にカッタで切削可能な材料により施工しておく。
【0033】
次に、動線シールド発進基地12Aに設置された動線シールド機をランプシールドトンネル12から地中発進基地15に向けて掘進させ、地中発進基地15の1箇所の発進切羽面15aに到達させる。そして、到達した動線シールド機を地中発進基地15内で解体し、本線シールドトンネル11を使用して搬出する。これにより、ランプシールドトンネル12と地中発進基地15とが動線シールドトンネル3を介して接続された状態となる。
【0034】
次に、地中発進基地15に外殻シールド機14を配置し掘進させることで、複数の外殻シールドトンネル13を施工する。複数の外殻シールドトンネル13は、複数の外殻シールド機14を同時、或いは並行に掘進させてもよいし、1本ずつ施工するようにしてもよい。地中発進基地15内の所定の発進切羽面15aに配置される外殻シールド機14は、ランプシールドトンネル12内及び動線シールドトンネル3内を搬送させることにより設置される。つまり、組み立てられた外殻シールド機14を、その後端14aを搬送方向の前方に向けた状態で、ランプシールドトンネル12の坑口側から搬入し、動線シールド発進基地12Aを経由し、さらに動線シールドトンネル3内を搬送して地中発進基地15内へ送り込む。ここで、
図2及び
図3等に示す矢印Fは、外殻シールド機14の搬送方向を示している。このとき、動線シールドトンネル3内を移動される外殻シールド機14は、掘削カッタを動線シールドトンネル3の発進側に向けた状態で地中発進基地15へ向けて後ろ向きに移動される。
【0035】
そして、
図5に示すように、地中発進基地15内に送り込まれた外殻シールド機14を円周方向Eに沿って移動させて所定の発進切羽面15aの位置に配置する。
なお、地中発進基地15に到着した複数の外殻シールド機14を、順次、地中発進基地15の円周方向Eに沿って移動させて連続的に配置するようにしてもよい。
【0036】
次に、
図2及び
図4に示すように、地中発進基地15に設置された外殻シールド機14を1基ずつ、あるいは複数同時に掘進させることで複数の外殻シールドトンネル13を施工する。そして、掘削土砂は地中発進基地15を介して動線シールドトンネル3内に送り込まれて外部へ搬出し、掘進に必要なセグメント等の資材類も動線シールドトンネル3内から地中発進基地15を介して外殻シールドトンネル13内に搬入される。
【0037】
なお、外殻シールドトンネル13の掘削土砂の搬出や、掘進に必要な資材類の搬入は、動線シールドトンネル3を用いることに限定されず、本線シールドトンネル11を使用してもよいし、両方のシールドトンネル3、11を使用してもかまわない。
このように、動線シールドトンネル3は、外殻シールドトンネル13の1つと同じトンネル線形で施工されるので、外殻シールドトンネルとして機能することになる。
【0038】
その後、
図3に示すように、全ての外殻シールド機14が所定の地中到達部に到達したら、その地中到達部において外殻シールド機14をスキンプレートを残した状態で解体して回収する。そして、円周方向Eに隣り合う外殻シールドトンネル13、13同士の間を凍結工法や薬液注入工法等により地盤改良を行った後、切開き構造体として接続することにより一体化を図り、これにより支保機能、及び止水機能を有する外殻覆工体1Aを構築する。さらに、外殻覆工体1Aの地中到達部付近の内側に褄壁を構築する。なお、動線シールドトンネル3の発進基地12Aは褄壁の一部として使用する。
【0039】
次に、外殻覆工体1Aによって囲まれる内側を掘削する。このとき、外殻覆工体1Aの内側に位置する本線シールドトンネル11、及びランプシールドトンネル12のセグメントを解体、撤去し、地中拡幅部1を形成する。
【0040】
次に、上述した動線シールドトンネル及び大断面地下空間の施工方法の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
図2及び
図3に示すように、本実施の形態では、先行して所定位置に到達したランプシールドトンネル12を使用して動線シールド機を掘進させ、予め所定の位置に設けた地中発進基地15に到達する動線シールドトンネル3が施工される。つまり、ランプシールドトンネル12と地中発進基地15とが動線シールドトンネル3によって接続されるので、この動線シールドトンネル3を使用して複数の外殻シールド機14をランプシールドトンネル12側から地中発進基地15内へと搬送することができる。すなわち、本線シールドトンネル11を使用せずに外殻シールド機14を地中発進基地15内に搬送することが可能となる。また、外殻シールドトンネル13の施工中における土砂搬出や施工に必要な資材搬出路としても動線シールドトンネル3を利用することができる。
【0041】
このように、動線シールドトンネル3を設けることで、本線シールドトンネル11の掘進施工に干渉するような他の作業をなくすことができる。そのため、複数の外殻シールドトンネル13と本線シールドトンネル11の両施工を並行して効率よく行うことができ、施工全体の工期短縮を図ることができる。
したがって、本線シールドトンネル11がランプシールドトンネル12よりも遅れて地中拡幅部1の施工予定位置に到達する場合であっても、先に所定位置に到達したランプシールドトンネル12より動線シールドトンネル3を施工することで、外殻シールドトンネル13の施工を開始することができ、大幅な工期の短縮を図ることが可能となる。
【0042】
さらに、本実施の形態では、動線シールドトンネル3を使用して地中発進基地15内に重量の大きな外殻シールド機14を搬入することができる。そのため、
図5に示すように、本線シールドトンネル11内と地中発進基地15内とを連通する投入用開口部15Aを使用して外殻シールド機14を搬入する必要がなくなり、地中発進基地15における投入用開口部15Aの補強を小規模に抑えることができる。
【0043】
また、本実施の形態では、動線シールドトンネル3が地中発進基地15に直接接続するため、動線シールドトンネル3が到達するための新たな到達坑を地中に設ける必要がなく、効率よく施工を行うことができる。
【0044】
また、本実施の形態では、施工した動線シールドトンネル3を外殻シールドトンネル13のうち1本として機能するので、外殻シールド機14の搬送や外殻シールドトンネル13の施工時の動線としての機能が完了した後に、動線シールドトンネル3を撤去する必要がなくなり、効率的な施工を行うことができる。
【0045】
さらに、本実施の形態では、動線シールドトンネル3内で搬送された外殻シールド機14を、その搬送中の向きを変更することなく地中発進基地15の円周方向Eに沿って移動させ、所定の発進切羽面15aの位置に配置させることができる。つまり、外殻シールド機14の移動時に、その外殻シールド機14の向きを変更する作業が不要となるので、工期の短縮を図ることができる。
【0046】
さらにまた、本実施の形態では、動線シールドトンネル3を使用して複数の外殻シールド機14を連続的に地中発進基地15へ移動させることができ、さらに地中発進基地15に到着した複数の外殻シールド機14を順次、円周方向Eに沿って移動させることで、複数の外殻シールド機14を効率よく地中発進基地15の所定の発進位置に配置することができる。
【0047】
上述のように本実施の形態による動線シールドトンネル及び大断面地下空間の施工方法では、ランプシールドトンネル12と地中発進基地15とを動線シールドトンネル3で接続し、この動線シールドトンネル3を外殻シールドトンネル13の施工時の運搬等を施工用の動線として利用することができ、外殻シールドトンネル13の施工を他の施工と干渉させることなく行うことで、工期の短縮を図ることができ、しかも地中発進基地15の補強を小規模に抑えることができる。
【0048】
以上、本発明による動線シールドトンネル及び大断面地下空間の施工方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では、ランプシールドトンネル12が先行し、このランプシールドトンネル12に対して後から本線シールドトンネル11が分岐合流部に到達するケースとしているが、このような施工に限定されることはない。つまり、先行して施工された本線シールドトンネル11に対してランプシールドトンネル12が分岐合流部に到達する場合であっても、そのランプシールドトンネル12から動線シールドトンネル3を施工して地中発進基地15に接続して、その動線シールドトンネル3を使用して外殻シールド機14等を搬送する施工方法であってもかまわない。
【0049】
また、動線シールドトンネル3の位置、内径、本数等の構成は、外殻シールド機14の外径、ランプシールドトンネル12の位置等に応じて適宜、設定することが可能である。例えば、本実施の形態では、ランプシールドトンネル12に1箇所の動線シールド発進基地12Aを設け、その動線シールド発進基地12Aから発進する1本の動線シールドトンネル3を設ける施工方法としているが、これに限定されることはない。本線シールドトンネル11の到達が大きく遅れている場合には、ランプシールドトンネル12の複数箇所、あるいは大きな動線シールド発進基地12Aを設けておき、複数の動線シールドトンネル3を地中発進基地15に接続し、それら複数の動線シールドトンネル3を使用して外殻シールド機14を地中発進基地15に搬送して外殻シールドトンネル13を施工することで、工期の短縮を図ることが可能である。
【0050】
そして、地中発進基地15の施工法として、周囲を地盤改良して在来工法により掘削しセグメントを組み立てる方法や断面矩形状の円周シールド掘削機を掘進させることによる円周シールドトンネル10を構築する方法を対象としているが、シールド掘削機を用いた施工に制限されることはなく、拡大シールド等他の方法により施工したものであってもかまわない。
【0051】
さらにまた、本実施の形態では大断面の道路トンネルを施工する場合の適用例であるが、上述したような大断面地下空間を有する様々な規模、用途、形態のトンネルを施工する場合全般に広く適用できるものであるし、施工対象のトンネルにおける大断面地下空間の規模や形態に応じて、また周辺環境等の諸条件を考慮して様々な設計的変更が可能である。
【0052】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。