【文献】
松井 伸之,外2名,「四元数ニューロコンピューティングとその応用」,計測と制御,公益社団法人計測自動制御学会,2012年 4月10日,第51巻,第4号,pp.358−363
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば空間における方向を表現する場合、従来の方法はユーザにとって把握しにくい。例えば、変換行列を乗じて事象理解することは、膨大な手間を要するばかりでユーザが事象の本質を把握しにくくなるばかりである。オイラー角の場合は、3回の回転を経る中で回転の基準となる軸が変わるため、ユーザが直感的に事象を把握するのは難しい。また、任意の軸の周りの3つの回転によって角変位を表現することができるため、ある方向を表す表現が一意に定まらない点でもユーザは直感的に事象を把握し辛いものといえる。四元数については、空間との関係を把握し辛い上に、3つの虚数を定義するための演算規則を設けておりユーザにとっては理解が難しい。
【0005】
本発明は上記のような問題に鑑みてなされてものであり、ユーザにとって空間的に把握し易い態様で三次元空間を表現及び処理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る三次元データ処理方法は、仮想的な虚数i及びjを用いて表す三次元極座標A=r・e
iφ+jθ(ただし、i
2=−1、j
2=−1、i・j=0、j・f(φ)=j・f(0)、φは実軸−i軸平面上における実軸からの偏角、θは実軸−i軸平面からの偏角、及びf(φ)は変数φを有する項)を用いて事物の位置を表し、三次元空間における情報処理をコンピュータが実行する。
【0007】
このように、虚数i及びjに関して独自の制約を設けることにより、三次元極座標を、実軸、虚数i軸及び虚数j軸からなる空間の複素関数として表すことができるようになる。
【0008】
また、三次元空間における情報処理は、動径に対する加減乗除、偏角方向の回転、動径方向又は偏角方向の微
分を含むようにしてもよい。これらの処理であれば、上記の制約のもとでも計算結果が整合する。
【0009】
また、地震波に係る波形データを複数の観測地点におけるセンサからそれぞれ取得するステップと、複数の波形データを観測した時刻の差分に基づき、三次元極座標を用いて各観測地点と震源との距離及び震源の位置を推定するステップと、をさらにコンピュータが実行するようにしてもよい。このようにすれば、上記の仮想的な虚数を用いた三次元極座標を利用し、簡易に震源位置の推定を行うことができる。
【0010】
上記課題を解決するための手段の内容は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で可能な限り組み合わせることができる。また、上記手段をコンピュータに実行させるプログラムや、上記手段を実行する処理部を備えた装置を提供するようにしてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録して提供するようにしてもよい。コンピュータが読み取り可能な記録媒体とは、情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、又は化学的作用によって蓄積し、コンピュータによって読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうち、コンピュータから取り外し可能なものとしては、例えば光ディスク、光磁気ディスク、フレキシブルディスク、磁気テープ、メモリカード等がある。また、コンピュータに固定された記録媒体としてHDD(Hard Disk Drive)、
SSD(Solid State Drive)、ROM(Read Only Memory)等が挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザにとって空間的に把握し易い態様で三次元空間を表現及び処理することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<処理の概要>
三次元ユークリッド空間における極座標表示によれば、ある点Aの座標は次の数1のように表現することができる。
【数1】
ここで、
図1に点Aを示すとおり、rは動径であり、原点Oからの距離を示す。また、φは、X−Y平面上におけるX軸からの偏角である。θは、X軸上の点を原点Oを中心に偏角φだけ回転させた回転後の点及びZ軸が含まれる平面上におけるX−Y平面からの偏角である。換言すれば、θは点AからX−Y平面へ下ろした垂線の足をHとしたとき、原点O及び点Aを通る直線と原点O及び点Hを通る直線とのなす角である。また、φは原点O及び点Hを通る直線とX軸とのなす角である。すなわち、本発明で用いる三次元極座標のr、φは一般的な動径、偏角であるが、θはZ軸からでなくX−Y平面からの偏角とする。
【0014】
本発明に係る三次元極座標の複素関数表示では、所定の座標(原点)に対する上述の点Aを次の数2のように表すものとする。ここでは、1つの実軸と2つの虚軸からなる空間を考える。
【数2】
ただし、i及びjは虚数であり、
i
2=−1
j
2=−1
i・j=0
j・f(φ)=j・f(0)
であるものとする。
【0015】
直交座標系を用いるよりも、極座標系を用いる方がユーザにとって直感的に理解し易いことがある。すなわち、空間における物体の回転や波の伝播といった方向を表現する場合等、所定の基準(原点)からの距離と角度とを用いることで、ユーザが一見して事象を把握できるようになる場合がある。本発明では上記のような定義を採用し、所定の用途においては三次元極座標を複素関数で扱うことができるようにした。
【0016】
(オイラーの公式)
数2を用いることで、次のような数3が成り立つ。
【数3】
これは、実軸、虚数i軸及び虚数j軸からなる空間の複素関数によって点Aを表したものである。すなわち、点A(r・cosφ・cosθ,r・sinφ・cosθ,r・sinθ)という一般的な三次元極座標の変数r、φ、θを用いて表したX−Y−Z直交座標系の成分(X,Y,Z)表示と一致する。
【0017】
(動径及び偏角に対する演算)
数4に示すように、動径rついては加法及び減法を行うことができる。すなわち、加法性がある。
【数4】
【0018】
また、数5に示すように、動径rについては乗法及び除法を行うことができる。すなわち、斉次性がある。
【数5】
なお、α=1/β(β≠0)とする。
【0019】
また、数6に示すように、偏角φ方向にΔφだけ回転する演算は、e
iΔφを乗じることにより算出できる。
【数6】
【0020】
同様に、数7に示すように、偏角θ方向にΔθだけ回転する演算は、e
iΔθを乗じることにより算出できる。
【数7】
【0021】
(微分)
動径方向の導関数は、数8に示すように求められる。
【数8】
【0022】
また、φ方向の導関数は、数9に示すように求められる。
【数9】
【数10】
【0023】
同様に、θ方向の導関数は、数11に示すように求められる。
【数11】
【0024】
以上のように、φ方向及びθ方向の導関数は、元の関数となる。例えば三角関数では導関数を求めると正弦と余弦とが互いに入れ替わるところ、上記のような指数関数で表現した方がユーザにとっても扱い易くなる
。
【0025】
以上のように、オイラーの公式の適用、動径rに対する四則演算、X−Y平面上におけるX軸からの偏角φの回転、回転後の点及びZ軸が含まれる平面上におけるZ軸からの偏角θの回転、微
分といった演算について、三次元極座標の複素関数表示が可能となる。実軸、虚数i軸及び虚数j軸からなる空間の複素関数として表すことができるため、ユーザにとっては空間上の位置及び方向が把握し易くなる。
【0026】
<実施形態>
本発明は、建築、土木、振動、流体、電磁気、航空等、様々な分野における三次元の情報処理に用いることができる。ここでは一例として、地震の震源位置の推定を行う方法について説明する。
【0027】
(原理)
図2は、震源eと観測地点mとの関係を説明するための図である。本実施形態では、直線状にない3以上の観測地点(
図2の例では、m、m+1及びm+2)で、加速度、速度又は変位を時刻と対応付けて継続的に測定し、波形データを取得する。なお、本実施形態は地表面を平面として扱い、観測地点は同一のX−Y平面(「地表面」とも呼ぶ)上に存在するものとしているが、例えば観測地点の海抜に応じてz座標を設定するようにしてもよい。数
12は、震源eと観測地点mとの間の地盤が均一である場合のある観測地点mにおけるP波及びS波の到達時刻の差を、震源eとの距離を用いて表した式である。
【数12】
R
mは、震源からm地点までの距離である。ΔT
PS(m)は、m地点におけるP波とS波との到達時刻の差である。また、v
pは、現地の地盤におけるP波の速度、v
sは、現地の地盤におけるS波の速度である。
【0028】
数
12の式を変形すると、震源からm地点までの距離R
mは、次の数
13のように求められる。
【数13】
【0029】
ところで、震源eと地表面の観測地点mとがある程度離隔されている場合、2地点間の地盤はたいてい均一でなく、複数の地層を含んでいる。また、地震波の伝播する速度は地層ごとに異なる。そして、地震波の伝播速度が異なる地層の境界で、地震波は屈折する。
図3は、震源eと観測地点mとの間に2種類の地層が存在する場合の模式的な縦断面図である。
図3に示すように、進行波の伝播する速度がV
1である地層と、進行波の伝播する速度がV
2である地層とが存在する場合、速度V
1及びV
2と地震波が進行する角度との関係は、スネルの法則より数
14のようになる。
【数14】
【0030】
ここで、未知数である震源eの仮の座標を(X
e,Y
e,Z
e)とおく。また、仮の原点Oを地表面上に設定し、各観測地点の座標(X
m,Y
m,Z
m)を仮定する。このとき、震源eを始点とするm地点における位置ベクトルMは、極座標を用いて表すと数
15のようになる。
【数15】
【0031】
そして、震源eを始点とした場合のm地点へのベクトルによって次の数
16から数
19に示す関数が成り立つ。なお、偏角φ及びθは、震源eを原点とした場合のm地点への偏角である。また、m地点が地表面である場合、Z
mは0である。
【数16】
【数17】
【数18】
【数19】
【0032】
なお、T
mは所定の波形(例えば、
図4に矢印で示すようなS波の振幅の所定期間における極大値)を観測した時刻、T
eは所定の波形が震源において発生した時刻、t
mは所定の波形がm地点まで伝達するのに要した時間とする。また、vは、S波が伝播する速度とする。なお、
図4は、実体波(P波及びS波を含む)の振幅の大きさを測定したデータの一例である。数
15に基づく数
16から数
18の導出は、i
2=−1、j
2=−1、i・j=0、j・f(φ)=j・f(0)、φは実軸−i軸平面上における実軸からの偏角、θは実軸−i軸平面からの偏角、f(φ)は変数φを有する項といった制約のもとで成り立っている。
【0033】
ここまでで、R
mは数
13により求まる。また、X
m、Y
m及びZ
mも、任意の原点Oとの相対的な経度、緯度及び海抜の差に基づいて求めることができる。さらに、vは、現地の地層におけるS波の速度として推定することができる。また、t
mは、R
m及びvに基づいて推定することができる。同様に、T
eも、R
m、v、及びT
mに基づいて推定することができる。ここで、X
e、Y
e、Z
eは変数である。
【0034】
しかし、地震波が複数の地層を通過すると、数
14に示したように地層の境界で屈折す
るため、地震波は震源eから最短距離を伝播して観測地点mに到達するわけではない。
図5は、地層の境界で地震波が屈折する例を示す模式図である。例えば2種類の地層が存在する場合、地層境界のZ座標を震源eからの極座標の関数で表すと次のようになる。
【数20】
【0035】
このとき、震源eから観測地点mへ伝播する地震波と地層の境界面との交点J
mを数
2
1のようにおく。
【数21】
【0036】
そして、地層境界面での屈折後の偏角をφ
jm2(XY平面上でX軸となす角)、θ
jm2(Z軸及び垂線の足Hを含む平面上でXY平面となす角)とおくと、φ方向の導関数(数9)及びθ方向の導関数(数11)並びにスネルの法則(数
14)より次の数
22及び数
23が成り立つ。すなわち、点J
mを境にφ及びθの値が変化する。なお、境界面よりも地下側の地層における地震波の伝播速度をV
1、境界面よりも地上側の地層における地震波の伝播速度をV
2とする。
【数22】
【数23】
【0037】
図6は、
図5に示した地震波の屈折を、震源e、境界面と地震波との交点J
m及びJ
mからXY平面への垂線の足Hを含む平面上に表した図である。なお、観測地点mは同一平面上にないため、
図6に表されたR
m2及びθ
m2の外見上の大きさは正確ではない。境界は、模式的に境界面を平面とし、震源e、境界面と地震波との交点J
m及びJ
mからXY平面への垂線の足Hを含む平面と交わる直線を示している。鉛直方向であるZ軸と境界の法線とのなす角を、θ方向の導関数で表すことができる。
【0038】
また、
図7は、
図5に示した地震波の屈折を、XY平面上に表した図である。
図7の例でも模式的に境界面を平面とし、XY平面と平行な、点J
mを通過する平面と交わる直線を示している。この場合は、Y軸と境界の法線とのなす角を、φ方向の導関数で表すことができる。
【0039】
また、屈折により方向の変化した2つのベクトルの和が観測地点mに一致することから、次の数
24の関係が成り立つ。数
22〜数
24に示すような進行方向の変化は、極座標
で表すとユーザにとって空間的に把握し易くなる。また、震源の推定処理とともに、数
22〜数
24や、
図5〜
図7に示したような表示をユーザに提示するようにしてもよい。
【数24】
【0040】
数
24の未知数R
m1、φ
m1、θ
m1、R
m2、φ
m2及びθ
m2は、数
16〜数
23の方程式より求めることができる。なお、数
16〜数
18を用いて地震波が2つの地層を通過する場合における数
19は、数
25のように表すことができる。
【数25】
【0041】
また、R
mは誤差を含む未定値であるとみなし、次の数
26、数
27に示す関係によって定義される変数X
e、Y
e、Z
e、X
m1、Y
m1、Z
m1の関数とする。
【数26】
【数27】
【0042】
そして、数
25に示す
tmを変数とみなし、次の数
28に示す関数を定義する。
【数28】
【0043】
なお、nは観測地点の数である。数
28に示すΨ(t
me)は、観測値から算出した震源からの距離R
m(R
m1+R
m2)及び地震波の速度に基づく地震波が到達するまでの時間と、仮定上の地震発生時刻T
eから観測地点に到達するまでの時間との差分を、複数の観測地点について合計した値である。そして、変数を変動させ、このΨを最小にする変数の組合せ(X
e,Y
e,Z
e,T
e)を求める。変数は、例えばモンテカルロ法によりランダムに変動させて近似するようにしてもよいし、その他の方法で求めるようにしてもよい。このように、同一の地震波形が観測された時刻のずれから推定される震源からの距離に基づいて、震源の位置を推定することができる。観測地点の個数mが増えるほど、R
mを算出する過程で含まれる観測誤差は低減され、震源の位置を精度よく推定することができるようになる。
【0044】
(構成)
図8は、本実施形態に係るシステムの概要を示すブロック図である。
図8のシステムは、三次元データ処理装置1と、複数のセンサ2(
図8の例では2a、2b、2c・・・)
とを有し、三次元データ処理装置1とセンサ2とは互いに接続されている。センサ2は、加速度、速度又は変位を時刻と対応付けて継続的に測定し、波形データを三次元データ処理装置1へ送信する。三次元データ処理装置1は、受信した波形データの到達時刻の差に基づいて震源の位置を推定する。
【0045】
図9は、本実施形態に係る三次元データ処理装置1の一例を示す機能ブロック図である。三次元データ処理装置1は、データ記憶部101と、設定取得部102と、波形データ取得部103と、位置推定部104と、結果出力部105とを有する。データ記憶部101には、センサ2の位置を示す情報や地層の構成を表す情報、各地層中を波形が進む速度等が予め保持されているものとする。なお、センサ2の位置は、所定の原点を基準とした座標が予め算出されているものとする。例えば、センサ2の設置された地点における緯度及び経度と、所定の原点に定められた地点の緯度及び経度とに基づき、空間上の座標に変換しておく。また、データ記憶部101には、センサ2から取得した波形データが保持される。また、設定取得部102は、データ記憶部101から、センサ2の位置やセンサ2の周辺に存在する地層において地震波が進む速度等の情報を取得する。波形データ取得部103は、センサ2が観測した波形データを取得する。波形データは、例えば、加速度、速度又は位相を示すデータであり、それぞれ既存のセンサによって観測することができる。また、位置推定部104は、原理の説明において示した数
27が最小となる変数の組み合わせを求め、震源の座標を推定する。また、結果出力部105は、推定した震源の位置等を、三次元データ処理装置1に接続されているモニタ等に出力する。なお、例えばネットワークを介して他の装置に結果を出力するようにしてもよい。
【0046】
(装置構成)
図10は、コンピュータの一例を示す装置構成図である。三次元データ処理装置1は、
図10に示すようなコンピュータである。
図10に示すコンピュータ1000は、CPU(Central Processing Unit)1001、主記憶装置1002、補助記憶装置1003、
通信IF(Interface)1004、入出力IF(Interface)1005、ドライブ装置1006、通信バス1007を備えている。CPU1001は、プログラム(「ソフトウェア」又は「アプリケーション」とも呼ぶ)を実行することにより本実施の形態に係る処理を行う。主記憶装置1002は、CPU1001が読み出したプログラムやデータをキャッシュしたり、CPUの作業領域を展開したりする。主記憶装置は、具体的には、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等である。補助記憶装置1003は、CPU1001により実行されるプログラムや、本実施の形態で用いる設定情報などを記憶する。補助記憶装置1003は、具体的には、HDD(Hard-disk Drive)やSS
D(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等である。主記憶装置1002や補助記憶
装置1003は、監視装置1のデータ記憶部101として働く。通信IF1004は、他のコンピュータとの間でデータを送受信する。通信IF1004は、具体的には、有線又は無線のネットワークカード等である。三次元データ処理装置1は、通信IF1004によりインターネット等のネットワークを介してセンサ2と接続されるようにしてもよい。入出力IF1005は、入出力装置と接続され、ユーザから操作を受け付けたり、ユーザへ情報を提示したりする。入出力装置は、具体的には、キーボード、マウス、ディスプレイ、タッチパネル等である。ドライブ装置1006は、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク等の記憶媒体に記録されたデータを読み出したり、記憶媒体にデータを書き込んだりする。以上のような構成要素が、通信バス1007で接続されている。なお、これらの構成要素はそれぞれ複数設けられていてもよいし、一部の構成要素(例えば、ドライブ装置1006等)を設けないようにしてもよい。また、入出力装置がコンピュータと一体に構成されていてもよい。また、ドライブ装置1006で読み取り可能な可搬性の記憶媒体や、フラッシュメモリのような可搬性の補助記憶装置1003、通信IF1004などを介して、本実施の形態で実行されるプログラムが提供されるようにしてもよい。そして、CPU1001がプログラムを実行することにより、
図10に示したコンピュータを
三次元データ処理装置1として働かせる。
【0047】
(震源推定処理)
図11は、震源推定処理の一例を示す処理フローである。震源推定処理では、上述した原理に従って震源の位置を推定する。まず、三次元データ処理装置1の設定取得部102は、データ記憶部101からセンサの位置や、当該地盤において実体波が伝達される速さ等の設定データを取得する(
図11:S1)。これらは、例えばユーザが予め入力してデータ記憶部101に保持させておくものとする。
【0048】
また、三次元データ処理装置1の波形データ取得部103は、センサ2から波形データを取得する(S2)。なお、波形データは、観測した時刻と対応付けてデータ記憶部101へ記憶させる。なお、時刻を示す情報は、各観測地点において付加されたものを取得してもよいし、波形データ取得部103が例えば各観測地点からの伝送にかかる時間を加味して決定してもよい。ここでは、各センサから
図4に示したようなデータが取得される。
【0049】
その後、三次元データ処理装置1の位置推定部105は、震源の座標を推定する(S3)。本ステップでは、三次元極座標形式を用いて、地層の境界で変化する地震波の進行方向を定義する。そして、変数である震源の座標を変動させつつ、原理の欄で説明した数
27のΨを最小にする震源の座標を求める。このとき、三次元極座標形式を用いて、計算過程又は計算結果をユーザに対して表示するようにしてもよい。
【0050】
そして、三次元データ処理装置1の結果出力部106は、推定された震源の位置を出力する(S4)。出力先は、三次元データ処理装置1に接続された表示装置であってもよいし、他のコンピュータであってもよい。
【0051】
<その他>
本発明は、上述の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加え得るものである。
【0052】
上でも述べた通り、本発明に係る三次元極座標の複素関数表示は、建築、土木、振動、流体、電磁気、航空等、様々な分野に用いることができる。このような表現によれば、特にユーザにとって空間上の位置や方向が把握し易くなるという利点がある。よって、機器の操作、仮想空間における3Dオブジェクトの移動、その他様々なユーザインタフェースや、ユーザ同士の情報伝達手段にも好適に用いることができる。