特許第6653525号(P6653525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6653525骨アンカーで使用する骨プレート・アセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6653525
(24)【登録日】2020年1月30日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】骨アンカーで使用する骨プレート・アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/80 20060101AFI20200217BHJP
【FI】
   A61B17/80
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-82430(P2015-82430)
(22)【出願日】2015年4月14日
(65)【公開番号】特開2015-205179(P2015-205179A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2018年1月19日
(31)【優先権主張番号】61/981,058
(32)【優先日】2014年4月17日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511211737
【氏名又は名称】ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルック・ビーダーマン
【審査官】 吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−537703(JP,A)
【文献】 特表2003−530141(JP,A)
【文献】 特表2002−515800(JP,A)
【文献】 特表2013−521095(JP,A)
【文献】 特開2014−023929(JP,A)
【文献】 特表2007−516811(JP,A)
【文献】 特開平10−057399(JP,A)
【文献】 特開2007−152141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド(7)およびシャンク(8)を有する骨アンカー(6)で使用する骨プレート・アセンブリであって、骨プレート・アセンブリは、
頂面(1a)および底面(1b)を有するプレート部材(1,1’,1’’)と、頂面(1a)から底面(1b)まで延びる少なくとも1つの通路(2)とを備え、
前記少なくとも1つの通路(2)は、
頂面(1a)に向かって開口する第1の端部および第2の端部を備えた第1の穴(2a)と、
骨アンカー(6)のヘッド(7)を受容するシート部(2c)と、
底面(1b)に向かって開口している第2の穴(2b)とを含み、
第1の穴(2a)は第1の中心軸(C1)と雌ねじ(5)とを含み、シート部(2c)は第2の中心軸(C3)を含み、第1の中心軸(C1)および第2の中心軸(C3)は通路(2)内で互いに交差し、
前記第1の穴(2a)が略円筒状である、骨プレート・アセンブリ。
【請求項2】
第1の穴(2a)の第2の端部が第1の面(P1)を画定し、底面(1b)に向いている内方に延びるシート部(2c)の下縁部(4)が、第2の面(P2)を画定し、第1の面(P1)および第2の面(P2)がある角度(α)で互いに交差する、請求項1に記載の骨プレート・アセンブリ。
【請求項3】
第3の穴(2d)が第1の穴(2a)とシート部(2c)との間に設けられ、第3の穴(2d)は、第1の穴(2a)およびシート部(2c)に向かって開口している、請求項1または2に記載の骨プレート・アセンブリ。
【請求項4】
第1の穴(2a)の直径が、骨アンカー(6)のヘッド(7)の最大直径と等しいか、該最大直径より大きい、請求項1から3のいずれか一項に記載の骨プレート・アセンブリ。
【請求項5】
第1の穴(2a)の直径が、骨アンカー(6)のヘッド(7)の最大直径より大きい、請求項1から4のいずれか一項に記載の骨プレート・アセンブリ。
【請求項6】
シート部(2c)が、骨アンカー(6)のヘッド(7)をヘッドの異なる角度向きで受容するように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の骨プレート・アセンブリ。
【請求項7】
第2の穴(2b)の直径が、シート部(2c)の最小直径と等しいか、前記シート部の最小直径よりも大きい、請求項1から6のいずれか一項に記載の骨プレート・アセンブリ。
【請求項8】
第3の穴(2d)の直径が、ヘッド(7)の最大直径と等しいか、前記ヘッド部の最大直径よりも大きく、かつ第1の穴(2a)の最小直径よりも小さい、請求項3に記載の骨プレート・アセンブリ。
【請求項9】
プレート部材(1)の底面(1b)の開口端に向かって、第2の穴(2b)の内径が増加し、かつ/または第3の穴(2d)の内径が減少する、請求項3または8のいずれか一項に記載の骨プレート・アセンブリ。
【請求項10】
第1の中心軸(C1)が、プレート部材(1)の頂面(1a)および/または底面(1b)にほぼ直交する、請求項1から9のいずれか一項に記載の骨プレート・アセンブリ。
【請求項11】
シート部(2c)が、プレート部材(1)の底面(1b)に部分的に延びている、請求項1から10のいずれか一項に記載の骨プレート・アセンブリ。
【請求項12】
前記第2の中心軸(C3)に対して片側のシート部(2c)の最下部が底面(1b)にあるか、あるいは底面(1b)からある距離だけ離れている、請求項1から10のいずれか一項に記載の骨プレート・アセンブリ。
【請求項13】
前記角度(α)が約1〜20度である、請求項2または請求項2に従属する請求項3から12のいずれか一項に記載の骨プレート・アセンブリ。
【請求項14】
前記角度(α)が約10度である、請求項13に記載の骨プレート・アセンブリ。
【請求項15】
シート部(2c)が球面形状の表面部を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の骨プレート・アセンブリ。
【請求項16】
面形状の外表面部を備えたヘッド(7)を有する骨アンカー(6)と、
シャンク軸(S)を有するシャンク(8)と、をさらに備え、
第2の中心軸(C3)が前記骨アンカー(6)に対してゼロ位置を画定し、シャンク軸(S)が第2の中心軸(C3)に同軸である、請求項1から15のいずれか一項に記載の骨プレート・アセンブリ。
【請求項17】
雄ねじ(13)を備えた固定要素(10)をさらに備え、前記雄ねじ(13)が、第1の穴(2a)の雌ねじ(5)を係合するように構成されている、請求項1から16のいずれか一項に記載の骨プレート・アセンブリ。
【請求項18】
ヘッド(7)およびシャンク(8)を有する骨アンカー(6)で使用する骨プレート・アセンブリであって、骨プレート・アセンブリは、
頂面(1a)および底面(1b)を有するプレート部材(1,1’,1’’)と、頂面(1a)から底面(1b)まで延びる少なくとも1つの通路(2)とを備え、
前記少なくとも1つの通路(2)は、
頂面(1a)に向かって開口する第1の端部および第2の端部を備えた第1の穴(2a)と、
骨アンカー(6)のヘッド(7)を受容するシート部(2c)と、
底面(1b)に向かって開口している第2の穴(2b)とを含み、第1の穴(2a)は第1の中心軸(C1)を含み、シート部(2c)は第2の中心軸(C3)を含み、第1の中心軸(C1)および第2の中心軸(C3)は通路(2)内で互いに交差し、
シート部(2c)が、球状表面部分を有し、かつ、骨アンカー(6)のヘッド(7)をヘッドの異なる角度向きで受容するように構成されており、
環状縁部(4)が、シート部(2c)と第2の穴(2b)との間に形成され、環状縁部(4)はシート部(2c)の第2の中心軸(C3)に対して垂直な第2の面(P2)を画定する、骨プレート・アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この本発明は、骨または骨片を固定化するための骨プレート・アセンブリに関する。特に、本発明は、骨プレートおよび骨アンカーを含む骨プレート・アセンブリに関し、この骨プレート・アセンブリによって、骨アンカー孔のある位置で、プレートを通る垂直軸に対して骨アンカーへの傾斜角を片側に拡大することができる。
【背景技術】
【0002】
米国特許公開第2012/0059425A号は、骨プレート・アセンブリの骨アンカーとプレート部材との間に多軸継手を備えた骨プレート・アセンブリを記載しており、この骨プレート・アセンブリは、角運動範囲が増大し、かつ目立たない。
【0003】
Lorich DGおよびGardner MJは、長手方向面で骨アンカーを25度傾斜し、かつ横断面で最大で7度傾斜することのできる細長い孔を備えた、接点が制限された動的圧縮プレート・アセンブリを記載している(Ruedi TP, Buckley R, Moran CG(2007) AO Principles of Fracture Management. 2nd ed. Vol. 1. Stuttgart New York: Thieme−Verlag)。
【0004】
脊椎手術の分野において、米国特許第8,409,260B2号は、骨アンカーと、骨アンカーのピボット角度を片側に拡大することのできる受容部とを備えた骨固定アセンブリを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第8,409,260B2号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Ruedi TP, Buckley R, Moran CG(2007) AO Principles of Fracture Management. 2nd ed. Vol. 1. Stuttgart New York: Thieme−Verlag
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
知られている骨プレート・アセンブリによって、骨ねじを骨プレートに対して両側に等しい傾斜角で多軸調整することができるが、その一方で、プレートねじの構成が薄型で、かつプレートねじが高安定性でありつつ、プレートを通る垂直軸に対して骨アンカー孔のある位置で好みの側に傾斜角を拡大することのできる、改良された骨プレート・アセンブリがさらに必要である。たとえば、プレートを通る垂直軸に対する骨アンカー孔の位置での傾斜角を、片側のみに拡大させるべき解剖学的状況があり得る。これは、たとえば手または肩の骨折に関連する場合であり得る。
【0008】
したがって、本発明の目的は、骨プレート・アセンブリであって、傾斜角を片側に拡大して骨アンカーおよびプレートを多軸調整することが可能であり、同時に、厚さが薄いという観点から目立ちにくく、かつ角度安定性が高い骨プレート・アセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本目的は、請求項1による骨プレート・アセンブリによって解決される。さらなる開発は、従属請求項に示されている。
【0010】
一態様によると、ヘッドおよびシャンクを備えた骨アンカーで使用する骨プレート・アセンブリが、頂面および底面を有し、頂面から底面まで少なくとも1つの通路が延びているプレート部材を含み、ここでは、少なくとも1つの通路が頂面に向かって開口する第1の端部および第2の端部を備えた第1の穴と、骨アンカーのヘッドを受容するシート部と、第1の穴は第1の中心軸を含み、シート部は第2の中心軸を含み、第1の中心軸および第2の中心軸は通路内で互いに交差し、底面に向かって開口している第2の穴を含み、第1の穴は、雌ねじを含む。
【0011】
このアセンブリでは、骨アンカーは、そのゼロ位置に対して1〜30度の角度で、好ましくは約20度で、対称的にシートで旋回するよう構成されている。
【0012】
さらなる態様によると、骨プレート・アセンブリが、第1の穴の雌ねじを係合するよう構成されている雄ねじを備えた固定要素を含む。
【0013】
さらなる態様によると、固定要素が略円筒状であり、底面が骨アンカーのヘッドに向いており、頂面が底面と対向しており、固定要素が、ヘッドの少なくとも一部分を収容する第1の凹部を底面に、ねじ回しと係合する第2の凹部を頂面に有する。
【0014】
さらなる態様によると、プレート部材の頂面の少なくとも一部と、通路を含むプレート部材の底面の一部分とが、互いに略平行である。
【0015】
さらなる態様によると、プレート部材が少なくとも1つのさらなる通路を含み、前記少なくとも1つのさらなる通路が、上述の少なくとも1つの通路に従って任意選択的に設計される。
【0016】
さらなる態様によると、プレート部材が、第1の部分と、第1の部分に対してある角度で延びる第2の部分とを含む。
【0017】
さらなる態様によると、第1の中心軸および第2の中心軸が、シートの中心点に対応する位置で互いに交差する。
【0018】
さらなる態様によると、ヘッドおよびシャンクを有する骨アンカーで使用する骨プレート・アセンブリが、頂面および底面を有するプレート部材を含み、少なくとも1つの通路が頂面から底面まで延び、少なくとも1つの通路は、頂面に向かって開口する第1の端部を備えた第1の穴と、第1の面を画定する環状縁部を通路内に形成する第2の端部とを含んでおり、第1の穴は頂面で縁部を画定し、底面に向かって開口する第2の穴とを含み、第2の穴は、底面で縁部を画定し、骨アンカーのヘッドを受容するよう構成されるシート部を含み、シート部は底面に向かって幅が減少し、シート部と第2の穴との間に内方に延びる環状縁部を形成し、縁部は第2の面を画定し、第1の面および第2の面は、ある角度で互いに交差する。
【0019】
さらなる態様によると、頂面の第1の穴の縁部が、第2の穴の縁部と底面で略平行である。
【0020】
本発明の骨プレート・アセンブリが、骨アンカー用のシートを含み、その中心軸は、プレートを通る垂直軸に対して骨アンカーの孔のある位置で傾斜している。少なくとも最大で40度の全可動域に対応して、骨アンカーのゼロ位置に対して最大約20度で骨アンカーをシートに挿入することができるように、シートが構成されている。プレートの孔の設計により、特に骨アンカー用シートの傾斜位置により、運動円錐が、好みの側に拡大した角度を形成するように傾けられる。それゆえに、たとえば片側に30度に挿入角度を拡大させることができる。
【0021】
ある解剖学的状況では、たとえば遠位端半径プレートなどのプレート部材が手による手術で角度をつけられることがある。この場合、本発明によって、プレートの厚さを増加せずに、プレート部材の角度付き部分の傾斜角が好きな方向に拡大される。さらに、固定式骨プレートの場合、固定ねじ用のねじの軸が、骨プレートの表面に対して垂直に設けられてもよい。したがって、円錐形のねじ付き孔または傾斜したねじ付き孔を回避することができる。
【0022】
拡大した傾斜角の所望の側を画定する孔の数ならびにその設計を、解剖学的要件に容易に適合させることができ、したがって、用途が広がる。
【0023】
骨アンカーを固定要素によってプレートに固定してもよい。固定要素によって、骨アンカーの角度安定性が増大し、骨アンカーが固着され引き抜かれない。完全に固定するか摩擦によって固定するかのどちらかのために、あるいは骨アンカーが引き抜かれることだけはないようにしつつ自由に角形成を行うことができるように、異なる固定要素を設けてもよい。本発明による骨プレート・アセンブリの固定プレートとしての用途の他に、プレート・アセンブリはまた、固定要素なしに、すなわち非固定式プレートとして使用可能である。
【0024】
本発明による骨プレート・アセンブリが、臨床応用に応じて1つの孔または1つを超える孔、すなわち複数の孔を有してもよい。さらに、より広く使用するために、プレート部材が、中央長手方向線から中心が外れている心違いの孔を有してもよい。プレート部材は、最小の骨接触領域を有するように設計されていてもよく、動的プレートとして使用可能である。また、プレート部材は、特定の臨床応用のために特定の形状を備えるように輪郭がつけられてもよい。
【0025】
骨プレート・アセンブリは、さまざまな臨床応用に適している。たとえば、骨プレート・アセンブリは、骨または骨の部分を含む領域に適用するのに適している。たとえば手または肩の骨折の関連で、解剖学的状況に最も適応させるために、骨プレートと骨アンカーとの間の角度が拡大していることは有利となる。孔の設計によって、骨プレート・アセンブリ全体が目立たなくなり、たとえば手または骨盤の場合など、最小限の軟組織範囲を有する領域での適用に適するようになる。
【0026】
本発明のさらなる特徴および利点が、添付の図面を参照しつつ実施形態の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1の実施形態による孔を備えた、骨プレート・アセンブリのプレート部材の概略横断面図である。
図2図1の孔およびシートを画定する縁部および面の幾何学的配置を示す概略図である。
図3】第1の実施形態による孔、ねじ、および固定要素を備えた骨プレート・アセンブリの概略断面図である。
図4】第1の実施形態による孔をいくつか備えた骨プレート・アセンブリのプレート部材の概略断面図である。
図5】第1の実施形態による孔、ねじ、および固定要素をいくつか備えた骨プレート・アセンブリの概略横断面図である。
図6図5による骨プレート・アセンブリの底面図である。
図7】たとえば第1の実施形態による概略的な運動円錐を備えた、角度をつけられた骨プレートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
骨プレート・アセンブリの第1の実施形態を、ここで図1から図3を参照しつつ記載する。第1の実施形態の骨プレート・アセンブリは、固定式であるが、非固定式プレートとして使用可能である。図1で分かるように、骨プレート・アセンブリが、頂面1a、および底面1bを備えたプレート部材1を含み、頂面1aおよび底面1bは互いに略平行である。通路2を形成する孔が、プレート部材1を通って頂面1aから底面1bまで延びている。通路2は、3つの穴2a、2b、2dと、その間にあるシート部分2cとで形成されている。シート部分2cは、骨アンカーのヘッドを受容するように構成されている。
【0029】
さらに、アセンブリは、図3で分かるように、ヘッド7およびシャンク8を有する骨アンカー6を含んでもよい。本実施形態では、骨アンカー6は、球面形状の外表面部を備えたヘッド7と、骨ねじ9およびシャンク軸Sを備えたシャンク8とを有する骨ねじである。一般的に、ヘッドは、ねじ回し用の係合構造部7aを有する。
【0030】
通路2の第1の穴2aは、プレート部材1の頂面1aに向かって開口する第1の端部を有する。第1の穴は頂面1aで縁部14を画定する。第1の穴2aは、断面が円形であり、固定要素10と係合するために雌ねじ5を有する。ねじ5は、全軸長に沿って、あるいは穴2aの長さの一部分に沿って延びていてもよい。さらに、第1の穴2aは、骨アンカー6のヘッド7の最大直径よりも大きな直径を有する。図1および図3で分かるように、第1の穴2aはプレート部材1内に実質的に延び、その第2の端部でプレート部材1の厚さの約半分で終端する。ここでは、第1の穴2aは、通路2内で環状の肩部3を形成する。環状の肩部3は、図1および図2で分かるように、第1の面P1を画定する。第1の穴2aは、穴軸すなわち中心軸C1をさらに備え、この軸は第1の面P1の中心軸でもある。頂面1aが底面1bと平行である場合、C1は、プレート部材1の頂面1aおよび底面1bに対して垂直である。このことによって、固定要素の挿入および締付けが容易となり、交差螺着のリスクが最小限に抑えられる。
【0031】
第2の穴2bは、円錐形であり、プレート部材1の底面1bに向かって開口しており、内表面を形成する。第2の穴が、底面1bで円形または楕円形の縁部15を画定する。第2の穴2bの直径は、シート部分2cの最小直径と少なくとも等しく、内径はプレート部材の底面1bで開口端に向かって増加している。
【0032】
シート部2cは、中空の球形区画が成形された部分によって形成される。この部分は、第1の穴2aと第2の穴2bとの間に延びており、内径が第2の穴2bに向かって減少している。シートの対称中心軸C3は、以下シート中心軸C3であり、シート部2cを通って延びている。シート部のシート中心軸C3は、第1の穴2aの中心軸C1に対して角度αだけ傾斜している。本実施形態では、角度αは約10度である。シート中心軸C3は、通路2のある位置で中心軸C1と交差する。この位置は、球形のシート2cによって画定される球体の中心の位置に対応する。シート部2cの先細りの設計によって、内方に延びる環状縁部4が、シート部2cと第2の穴2bとの間に形成される。内方に延びる環状縁部4は、通路2で最小直径を画定する。さらに、内方に延びる環状縁部4によって、第2の面P2が画定される。シート中心軸C3は第2の面P2に対して垂直である。これによって、第2の面P2が、第1の面P1に対して傾斜し、面P1と角度αで交差する。骨アンカー6のゼロ位置(0度位置)は、シート中心軸C3に同軸であるシャンク軸Sによって画定される。
【0033】
シート部2cは、プレート部材1の底面1bに向かって部分的に延びる。図1で分かるように、シート部2cの中心軸C3に対して片側のシート部2cの最下部は、プレート部材1の底面1bにあってもよく、反対側は底面1bからある距離だけ離れている。しかし、シート部2cの最下部は、底面1bから多少の距離だけ離れて配置されてもよい。シート部2cの最上部は、第1の面P1にあってもよく、あるいは第1の穴2aに没入されてもよい。
【0034】
さらに、通路2が、第1の穴2aとシート部2cとの間に配置され、これらを連結する第3の穴2dを含む。図1で分かるように、第3の穴2dの直径は、ねじ3のヘッド4の最大直径以上であり、第1の穴2aの直径より小さくてもよい。ヘッド7は、挿入されると第3の穴2dによって案内されてもよい。
【0035】
シャンク軸Sがシートの中心軸C3に対して想定し得る最大傾斜角は、ヘッド7の最大外径ならびにねじ回し用の係合構造物7aのサイズおよび位置に対して、穴2aの直径によって定義されてもよい。さらに、第2の穴2bの幅が、最大傾斜角を制限してもよい。シート部の骨アンカーのピボット角、すなわちシートの中心軸C3を中心とする骨アンカーの挿入角は、角度βであり、結果として全可動域が2βとなる。
【0036】
シートの中心軸C3が上記したように骨アンカー3のゼロ位置を画定するので、図3の左側に示される骨アンカー3は、そのゼロ位置で面P1の中心軸C1に対して角度αで角度をつけられる。したがって、骨アンカーのシャンク軸Sは、すでに、第1の穴2aの中心軸C1に対してゼロ位置の好みの側に角度をつけられており、本実施形態ではこれは10度である。第1の穴2aのサイズに応じて、かつ第2の穴2bの設計により、骨アンカー6をそのゼロ位置に対して好みの側に角度βで骨に挿入することができる。したがって、骨アンカー6のシャンク軸Sを合計α+βである最大角度で好みの側に傾斜してもよく、この角度は、面P1の中心軸C1に対して約30度であってもよい。運動円錐が環状であり、したがって中心軸C3を中心として対称であるので、好みの側から反対側への傾斜角は、骨アンカーのゼロ位置から始まり角度αだけ減少し、したがって、全体としてβ−αとなる。しかし、このことは不都合ではない。というのは、好みの側はねじの角度位置のために使用されることを意図するからである。
【0037】
プレート1に対する骨ねじ6の位置を、前述の固定要素10によって固定するかあるいは安定化することができる。示されている実施形態では、固定要素10は、略円筒状であり、頂面10aと、頂面10aと対向する底面10bと、その間にある外表面部10cとを備える。固定要素10の直径は、第1の穴2aの直径に対応する。組立てられた状態では、底面10bは、骨アンカー6のヘッド7に向いている。図3で分かるように、ヘッド7の少なくとも一部分を収容するために、第1の凹部11が底面10bに設けられている。凹部11は、球面形状の内表面部を有し、ヘッド7の球面形状の外表面部に対応する。少なくとも1つのさらなる凹部12が、頂面10aでねじ回しとの係合するように設けられている。さらに、固定要素10は、その外表面部10cに雄ねじ13を含む。雄ねじ13は、プレート部材1の雌ねじ5と相互作用するように構成されている。固定要素10の高さは、プレート部材1内のねじ付き穴2aの深さよりも低い。望ましいのは、ヘッドが固定要素10によって固定される場合に、固定要素10の頂面10aがプレート部材1の頂面1とほぼ面一であることである。
【0038】
このプレート部材1は、第2の通路2’を有してもよい。この通路2’は、中心軸C1’を備えた第1の穴2a’と、第2の穴軸C1’を有する第2の穴2b’と、その間にある中心軸C3’を有するシート部2c’と、第1の穴2a’とシート部2c’との間にある第3の穴2d’とを含む。第1の穴2a’は、ねじ切りされていてもよい。肩部3’が、プレート部材1内で第1の穴2a’と第3の穴2d’との間に形成されており、肩部3’は中心軸C1’がそれに直交する面P1’を画定する。さらに、シート部2c’は、内方に延びる環状縁部4’を形成し、環状縁部4’は第2の面P2’を画定する。前述の通路2とは逆に、軸C1’およびC3’が通路2’を通って同軸状に延び、プレート部材1の頂面1aおよび底面1bに直交する。さらに、面P1’およびP2’が互いに平行に延びている。さらに、骨アンカー6および固定要素10を設けてもよく、この固定要素10は前述したように骨アンカーを固定するためのものである。
【0039】
プレート部材1は、通路2および/または通路2’の種類の通路を備えたいくつかの孔を有してもよい。
【0040】
骨プレート・アセンブリの要素は、ステンレス鋼またはチタンなどの生体適合性金属や、またはたとえばニチノールなどのニッケル―チタン合金などの生体適合性金属合金や、たとえば医療グレードPEEKなどの生体適合性プラスチック材料などの生体適合性材料、あるいはこれらの組み合わせでできている。たとえば、プレート部材および骨アンカーが、異材質でできていてもよい。
【0041】
ここで、第1の実施形態による骨プレート・アセンブリの使用を説明する。一旦、骨アンカーの必要数およびタイプを決定すると、プレート部材1を骨折部位に配置する。ついで、骨アンカーを第1のタイプの通路2および/または第2タイプの通路2’に挿入し、骨の部分に所望の角度で挿入する。球形のシートによって、ねじのヘッドを孔にこの角度で配置することができる。第1のタイプの通路の2に挿入された骨ねじ6は、10度に想定可能である。この角度は、第2のタイプの通路2’に挿入される骨アンカーと比較して、好みの側により大きく傾斜した角度である。
【0042】
骨アンカーとプレート部材との間をさらに安定して結合するために、第1の穴2a、2a’に挿入されている固定要素10を任意選択的に使用して、ヘッド7を固定するように締め付けてもよい。必要に応じて、上述したように固定部材のみがねじの引き抜きを防止する場合に、完全に固定するか摩擦性をもって固定するか、あるいは固定しないために、異なる固定要素を異なる骨アンカーに適用してもよい。留意されたいのは、ねじがなく別の固定構造物を有する固定要素を、ヘッド7を固定するのに使用してもよいことである。
【0043】
あるいは、骨プレートを固定要素なしで非固定式プレートとして使用することができる。
【0044】
いわゆる非固定式プレートの第2の実施形態では、ねじ山のない第1の穴2a、2a’を設けてもよい。
【0045】
第3の実施形態を図4から図6を参照しつつ説明する。この実施形態では、骨プレート・アセンブリが、細長いプレート部材1’’を含む。このプレート部材1’’は、平坦上面1aと、平坦上面1aと平行な平坦底面1bと、第1のおよび第2の側壁1cおよび1dと、第1のおよび第2の曲線側壁1eおよび1fとを備える。さらに、プレート部材1’’が、中央長手方向軸Lと、第1の穴2aおよび2a’の中心軸C1およびC1’のそれぞれに平行である垂直軸Tと含む。ここでは、垂直軸Tが細長いプレート部材1の頂面1aおよび底面1bから直交するように延びる。5つの孔I〜Vが、細長いプレート部材1を通って長手方向軸L上に延びる。ここでは、第1の4つの孔IからV(左から右に)が、第1の実施形態に従って通路によって形成されている。反対に、5番目の孔Vが1つの単一の共通中心軸を有する穴だけを単に含む。
【0046】
図5および図6を参照すると最もよく分かるように、シート部2cの向きは、第1の4つのねじ6a〜6dのゼロ位置が5番目のねじ6fのゼロ位置とは異なるようになっている。第1の4つのねじのゼロ位置は、5番目のねじのゼロ位置に対してある角度で、たとえば約10度で、4方向のうちそれぞれに対して別の方向に傾けられている。これは、特定の解剖学的状況において有用であり得る。ゼロ位置の数および角度は、この種の特定の状況に適合することができる。
【0047】
ここで、第4の実施態様を、図7を参照しつつ記載する。本実施形態は、上方に角度をつけられた細長いプレート部材1’’’を有する骨プレート・アセンブリを含む。骨プレート部材が、上方に角度をつけられた骨プレート部100ならびに平坦な骨プレート部101を含む。2つの通路が角度をつけられた骨プレート部分100を通って延び、4つの通路が平坦な骨プレート部101を通って延びている。さらに、対応するゼロ位置および対応する骨アンカーの運動円錐が示されている。本実施形態では、角度をつけられた骨プレート部100の第1および第2の孔が、第1または第2の実施形態による設計を有し、骨プレート部材1’’’の傾斜の方向に骨アンカーの挿入角度を広げることができる。
【0048】
さらなる実施形態が可能である。たとえば、第1の穴2aが下面に向かって円錐形に先細りであってもよく、その最小直径はねじ頭の最大直径と等しい。さらなる実施形態では、第2の穴2bが、角度βを限定するようなサイズで円筒形に成形されていてもよい。特定の実施形態では、シャンク軸Sが第1の穴2aの中心軸C1に対して角度αだけであると想定することができるように、βはゼロであってもよい。
【0049】
さらに、シートおよび骨アンカーのヘッドがボール継手およびソケット継手を形成するように、シートを円錐形または他の形状に成形してもよい。
【0050】
P1は、頂面1aおよび/または底面1bに対して傾いていてもよい。これは、頂面1aおよび底面1bが略平行でないか、あるいは不規則な構造物を有する場合であり得る。さらに、骨プレートは、インサートを受容するように構成される代替の孔をさらに、または代わりに有していてもよい。ここでは、インサートは、上述の通り、角度をつけられたシート部2cを含む。
【0051】
上述から明らかであるのは、様々な孔の数、設計(たとえば向きおよび拡大傾斜角の範囲に関して)、ならびに配置が解剖学的状況に従って変更可能なことである。たとえば、孔が中央長手方向軸Lから心違いであってもよい。骨プレートの形状は、細長、矩形、または他の形状、および/または曲線であってもよく、異なる寸法を有してもよい。さらに、異なる実施形態を互いに組み合わせて、特定の用途に必要とされる特定のプレート部材を提供してもよい。
【0052】
ねじ付きシャンクを有する骨ねじの代わりに、突起の有無にかかわらず、たとえば髄内くぎなどの、骨に固着するためのシャンクを有する他のいかなる骨アンカーもまた使用可能である。このシャンクはカニューレを挿入されてもよく、骨セメントまたは他の物質を導入することができるように、壁に開口部を有していてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7