(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料タンクの蒸発燃料を回収するキャニスタと、吸気通路に設けられたコンプレッサを有するターボ過給機と、前記キャニスタと前記吸気通路とを接続し、途中で、前記吸気通路のうち前記コンプレッサの上流側に接続された第1分岐通路と前記吸気通路のうち前記コンプレッサの下流側に接続された第2分岐通路とに分岐するパージ通路と、前記吸気通路における前記コンプレッサの下流側から前記コンプレッサの上流側に吸気を還流させ、前記第1分岐通路を介した前記吸気通路へのパージガスの供給を還流される吸気によって促進するエジェクタとを備えたエンジンの制御装置であって、
前記第1分岐通路の下流端の圧力である第1圧力を取得する第1圧力取得部と、
前記第2分岐通路の下流端の圧力である第2圧力を取得する第2圧力取得部と、
前記第1圧力及び前記第2圧力に基づいて、前記パージ通路における前記第1分岐通路と前記第2分岐通路との分岐部の圧力である分岐部圧力を推定する推定部とを備え、
前記第1分岐通路及び前記第2分岐通路のそれぞれには、前記吸気通路からの吸気の逆流を防止する逆止弁が設けられ、
前記推定部は、
前記第1分岐通路を流通するパージガスの流量である第1パージ流量及び前記第2分岐通路を流通するパージガスの流量である第2パージ流量を前記第1圧力及び前記第2圧力に基づいて求め、
求められた前記第1パージ流量が負の値の場合には、前記第1パージ流量を零とし、求められた前記第2パージ流量が負の値の場合には、前記第2パージ流量を零とし、
前記分岐部圧力を前記第1パージ流量及び前記第2パージ流量のそれぞれに基づいて求め、前記第1パージ流量に基づいて求められた前記分岐部圧力と前記第2パージ流量に基づいて求められた前記分岐部圧力のうち小さい方を前記分岐部圧力として採用することを特徴とするエンジンの制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ターボ過給機を備えるエンジンにおいては、吸気が過給されている場合にはコンプレッサ下流側の圧力が高いため、コンプレッサ下流側(例えば、サージタンク等)にはパージガスを供給することができない。そこで、パージ通路を分岐させ、吸気通路のうちコンプレッサ上流側にパージガスを供給する第1分岐通路と、吸気通路のうちコンプレッサ下流側にパージガスを供給する第2分岐通路とを設けることが考えられる。吸気が過給されている場合には、第1分岐通路を介してパージガスが供給され、吸気が過給されていない場合には、第2分岐通路を介してパージガスが供給される。
【0006】
しかしながら、このような構成においては、インマニ圧力だけでは、パージ流量を正確に推定したり、パージ流量を正確に制御したりすることは難しい。
【0007】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コンプレッサの上流側に接続された第1分岐通路とコンプレッサの下流側に接続された第2分岐通路とに分岐するパージ通路において、分岐部の圧力を正確に推定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示された技術は、燃料タンクの蒸発燃料を回収するキャニスタと、吸気通路に設けられたコンプレッサを有するターボ過給機と、前記キャニスタと前記吸気通路とを接続し、途中で、前記吸気通路のうち前記コンプレッサの上流側に接続された第1分岐通路と前記吸気通路のうち前記コンプレッサの下流側に接続された第2分岐通路とに分岐するパージ通路と、前記吸気通路における前記コンプレッサの下流側から前記コンプレッサの上流側に吸気を還流させ、前記第1分岐通路を介した前記吸気通路へのパージガスの供給を還流される吸気によって促進するエジェクタとを備えたエンジンの制御装置が対象である。この制御装置は、前記第1分岐通路の下流端の圧力である第1圧力を取得する第1圧力取得部と、前記第2分岐通路の下流端の圧力である第2圧力を取得する第2圧力取得部と、前記第1圧力及び前記第2圧力に基づいて、前記パージ通路における前記第1分岐通路と前記第2分岐通路との分岐部の圧力である分岐部圧力を推定する推定部とを備える。
【0009】
この構成によれば、パージガスは、パージ通路の第1分岐通路及び第2分岐通路を介して吸気通路へ供給される。パージガスが第1分岐通路を流通するか第2分岐通路を流通するかは、吸気通路の状態(例えば、過給されているか否か等)に応じて決定される。このような構成において、推定部は、第1分岐通路の下流端の圧力である第1圧力と第2分岐通路の下流端の圧力である第2圧力に基づいて分岐部圧力を推定する。そのため、パージガスが第1分岐通路及び第2分岐通路の何れかを流通する場合であっても、さらには、パージガスが第1分岐通路及び第2分岐通路の両方を流通する場合であっても、分岐部圧力が精度良く求められる。
【0010】
そして、前記第1分岐通路及び前記第2分岐通路のそれぞれには、前記吸気通路からの吸気の逆流を防止する逆止弁が設けられ、前記推定部は、前記第1分岐通路を流通するパージガスの流量である第1パージ流量及び前記第2分岐通路を流通するパージガスの流量である第2パージ流量を前記第1圧力及び前記第2圧力に基づいて求め、求められた前記第1パージ流量が負の値の場合には、前記第1パージ流量を零とし、求められた前記第2パージ流量が負の値の場合には、前記第2パージ流量を零とし、前記分岐部圧力を前記第1パージ流量及び前記第2パージ流量のそれぞれに基づいて求め、前記第1パージ流量に基づいて求められた前記分岐部圧力と前記第2パージ流量に基づいて求められた前記分岐部圧力のうち小さい方を前記分岐部圧力として採用す
る。
【0011】
この構成によれば、推定部は、第1パージ流量及び第2パージ流量を第1圧力及び前記第2圧力に基づいて求める。求められた第1パージ流量又は第2パージ流量が負の値となることがあり得る。第1パージ流量又は第2パージ流量が負の値となることは、第1分岐通路又は第2分岐通路を吸気が上流側へ逆流することを意味する。しかし、第1分岐通路及び第2分岐通路のそれぞれには、吸気通路からの吸気の逆流を防止する逆止弁が設けられているため、実際には吸気の逆流は起こらない。そのため、推定部は、求められた第1パージ流量又は第2パージ流量が負の値となった場合には、負の値を零に置き換える。しかし、第1パージ流量又は第2パージ流量を負の値から零に置き換えることは、求められた第1パージ流量又は第2パージ流量を増量することになる。結果として、増量された第1パージ流量又は第2パージ流量に基づいて求められた分岐部圧力も大きくなる。つまり、第1パージ流量及び第2パージ流量を、吸気が逆流しないという第1分岐通路及び第2分岐通路の実際の構成に応じて補正した場合、分岐部圧力が不正確になる虞がある。そこで、推定部は、第1パージ流量に基づいて求められた分岐部圧力と第2パージ流量に基づいて求められた分岐部圧力のうち小さい方を分岐部圧力として採用する。つまり、第1パージ流量又は第2パージ流量を負の値から零に置き換えることによって、分岐部圧力は大きくなる側にずれ得るので、小さい方の分岐部圧力を採用することによって、分岐部圧力を精度良く推定することができる。
【0012】
ここに開示するエンジンの制御装置はまた、前記第1分岐通路及び前記第2分岐通路のそれぞれには、前記吸気通路からの吸気の逆流を防止する逆止弁が設けられ、前記推定部は、前記第1分岐通路を流通するパージガスの流量である第1パージ流量及び前記第2分岐通路を流通するパージガスの流量である第2パージ流量を前記第1圧力及び前記第2圧力に基づいて求め、求められた前記第1パージ流量が負の値の場合には、前記第2パージ流量が全パージ流量に一致するとして、前記第2パージ流量に基づいて前記分岐部圧力を求め、求められた前記第2パージ流量が負の値の場合には、前記第1パージ流量が全パージ流量に一致するとして、前記第1パージ流量に基づいて前記分岐部圧力を求め
る。
【0013】
また、前記パージ通路には、前記パージ通路を流通するパージガスの流量を調整するパージバルブが設けられており、前記推定部は、推定された前記分岐部圧力に基づいて前記パージバルブの開度を制御するようにしてもよい。
この構成によれば、推定された分岐部圧力は、パージバルブの開度制御に用いられる。
【0014】
さらに、前記推定部は、前記パージ通路を流通するパージガスの流量を、前記分岐部圧力に基づいて推定してもよい。
【0015】
この構成によれば、推定された分岐部圧力は、パージ流量の推定に用いられる。
【発明の効果】
【0016】
前記エンジンの制御装置によれば、パージ通路における第1分岐通路と第2分岐通路との分岐部の圧力を正確に推定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
〈エンジンの構成〉
図1は、ターボ過給機付エンジンを備えたエンジンシステム100の概略構成図である。
【0020】
図1に示すように、エンジンシステム100は、主に、外部から導入された吸気(空気)が通過する吸気通路10と、この吸気通路10から供給された吸気と後述する燃料噴射弁23から供給された燃料との混合気を燃焼させて車両の動力を発生するエンジン20(例えばガソリンエンジン)と、このエンジン20内の燃焼により発生した排気を排出する排気通路30と、排気のエネルギを利用して吸気を過給するターボ過給機40と、燃料タンク50と、燃料タンク50内で発生した蒸発燃料を吸気通路10へ供給するパージシステム60と、エンジンシステム100全体を制御するECU(Electronic Control Unit)70とを有する。
【0021】
吸気通路10には、上流側から順に、外部から導入された吸気を浄化するエアクリーナ11と、通過する吸気を昇圧させる、ターボ過給機40のコンプレッサ41と、通過する吸気を冷却するインタークーラ12と、通過する吸気量を調整するスロットルバルブ13と、エンジン20に供給する吸気を一時的に蓄えるサージタンク14とが設けられている。
【0022】
エンジン20は、主に、吸気通路10から供給された吸気を燃焼室21内に導入する吸気バルブ22と、燃焼室21に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁23と、燃焼室21内に供給された吸気と燃料との混合気に点火する点火プラグ24と、燃焼室21内での混合気の燃焼により往復運動するピストン27と、ピストン27の往復運動により回転されるクランクシャフト28と、燃焼室21内での混合気の燃焼により発生した排気を排気通路30へ排出する排気バルブ29とを有する。
【0023】
排気通路30には、上流側から順に、通過する排気によって回転させられ、この回転によってコンプレッサ41を回転駆動する、ターボ過給機40のタービン42と、例えばNOx触媒や三元触媒や酸化触媒などの、排気の浄化機能を有する排気浄化触媒31とが設けられている。
【0024】
また、排気通路30には、排気にターボ過給機40のタービン42を迂回させるタービンバイパス通路32が設けられている。このタービンバイパス通路32には、タービンバイパス通路32を流れる排気の流量を制御するウェイストゲートバルブ(W/Gバルブ)33が設けられている。
【0025】
パージシステム60は、燃料タンク50内で発生した蒸発燃料を吸着して貯蔵するキャニスタ61、キャニスタ61と吸気通路と10とを接続し、キャニスタ61から蒸発燃料を含むパージガスを吸気通路10に導くパージ通路62と、パージ通路62に設けられたパージバルブ66とを有している。
【0026】
キャニスタ61には、燃料蒸気を脱離可能に吸着する活性炭が収容されている。キャニスタ61には、燃料タンク50内の燃料蒸気を導入する燃料蒸気管61a、キャニスタ61を大気に開放する大気開放管61b、及びパージ通路62が接続されている。大気開放管61bには、図示は省略するが、キャニスタ61に流入する空気を濾過するエアフィルタ及び大気開放管61bを開閉するバルブが設けられている。バルブは、蒸発燃料がパージされるとき開とされる。
【0027】
パージ通路62の上流側の部分は、1本の通路で形成され、キャニスタ61に接続されている。一方、パージ通路62の下流側の部分は、2本の通路に分岐し、吸気通路10の2箇所に接続されている。
【0028】
詳しくは、パージ通路62は、上流側の共通通路63と、下流側の第1分岐通路64及び第2分岐通路65とを有する。共通通路63の上流端は、キャニスタ61に接続されている。共通通路63の下流端に、第1分岐通路64の上流端と第2分岐通路65の上流端が接続されている。第1分岐通路64の下流端は、吸気通路10のサージタンク14に接続されている。第2分岐通路65の下流端は、後述するエジェクタ67を介して、吸気通路10のうちコンプレッサ41の上流側の部分に接続されている。
【0029】
共通通路63には、パージバルブ66が設けられているパージバルブ66は、ECU70からの制御信号により開閉される電子制御式のバルブである。第1分岐通路64には、吸気通路10からの吸気の逆流を防止する逆止弁64aが設けられている。第2分岐通路65には、吸気通路10からの吸気の逆流を防止する逆止弁65aが設けられている。
【0030】
エジェクタ67は、本体67aと、吸気通路10のうちコンプレッサ41の下流側の部分と本体67aとを接続する導入ノズル67bと、吸気通路10のうちコンプレッサ41の上流側の部分と本体67aとを接続する排出路67cとを有している。第1分岐通路64は、本体67aに接続されており、エジェクタ67の一部を構成する。導入ノズル67bの先端は、先細状となっており、導入ノズル67bを介して還流される吸気は、その先端部で減圧され、導入ノズル67bの先端周辺に負圧が発生する。この負圧により、第1分岐通路64からパージガスが本体67a内に吸引される。吸引されたパージガスは、導入ノズル67bから還流される吸気と共に、排出路67cを介して吸気通路10のうちコンプレッサ41の上流側に導入される。
【0031】
ターボ過給機40が吸気を過給していないとき(以下、「非過給時」という)には、パージガスは、第2分岐通路65を介して吸気通路10へ導入される。詳しくは、非過給時は、吸気通路10のコンプレッサ41の上流側の圧力の方がコンプレッサ41の下流側の圧力よりも高いので、エジェクタ67を介した吸気の還流は生じない。そのため、第1分岐通路64の下流端の圧力は、吸気通路10のうちエジェクタ67が接続された部分の圧力となり、その圧力は、大気圧と略等しい。キャニスタ61は、大気圧に開放されているので、第1分岐通路64の上流端と下流端との差圧は、略零であり、パージガスは第1分岐通路64を流通しない。
【0032】
一方、第2分岐通路65の下流端が接続されたサージタンク14は、負圧となっている。そのため、パージ通路62を流通するパージガスは、第2分岐通路65を介して、サージタンク14に導入される。
【0033】
ターボ過給機40が吸気を過給しているとき(以下、「過給時」という)には、パージガスは、第1分岐通路64を介して吸気通路10へ導入される。詳しくは、過給時は、サージタンク14は、過給により正圧となっている。前述の如く、キャニスタ61は、大気圧に開放されているので、第2分岐通路65の下流端の圧力は、第2分岐通路65の上流端の圧力よりも高くなっている。そのため、パージガスは、第2分岐通路65を流通しない。尚、第2分岐通路65には、逆止弁65aが設けられているので、吸気通路10の吸気が第2分岐通路65を逆入することもない。
【0034】
一方、コンプレッサ41による過給により、吸気通路10のコンプレッサ41の下流側の圧力の方がコンプレッサ41の上流側の圧力よりも高いので、エジェクタ67を介した吸気の還流が生じる。これにより、第1分岐通路64からパージガスが吸引され、吸引されたパージガスが吸気通路10のコンプレッサ41の上流側に導入される。こうして、パージ通路62を流通するパージガスは、第1分岐通路64を介して、吸気通路10に導入される。
【0035】
また、過給開始直後又は過給停止直後等の過渡時には、エジェクタ67による第1分岐通路64からのパージガスの吸引が行われると共に、サージタンク14の負圧により第2分岐通路65からサージタンク14にパージガスが導入され得る。つまり、第1分岐通路64及び第2分岐通路65の両方を介して、パージガスが吸気通路10に供給され得る。
【0036】
過給時、非過給時及び過渡時の何れの場合であっても、パージ通路62を流通するパージガスの流量であるパージ流量は、パージバルブ66によって調整される。
【0037】
また、
図1に示すエンジンシステム100には、各種のセンサが設けられている。具体的には、吸気通路10のうちエアクリーナ11とコンプレッサ41との間の部分に吸入空気量を検出するエアフロセンサ81が設けられている。吸気通路10におけるコンプレッサ41とスロットルバルブ13との間の部分に、過給圧を検出する第1圧力センサ82が設けられている。また、吸気通路10におけるスロットルバルブ13の下流側の部分(詳しくはサージタンク14内)に、インマニ圧を検出する第2圧力センサ83が設けられている。排気通路30のうち、タービン42と排気浄化触媒31との間の部分に、排気中の酸素濃度を検出するO
2センサ84が設けられている。
【0038】
エアフロセンサ81は、検出した吸入空気量をECU70に出力する。第1圧力センサ82は、検出した過給圧に対応する検出信号をECU70に出力する。第2圧力センサ83は、検出したインマニ圧に対応する検出信号をECU70に出力する。O
2センサ84は、検出した酸素濃度に対応する検出信号をECU70に出力する。また、エンジンシステム100には、大気圧を検出する大気圧センサ80が設けられており、この大気圧センサ80は、検出した大気圧に対応する検出信号をECU70に出力する。
【0039】
ECU70は、CPUと、CPU上で実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)や各種のデータを格納するためのROMやRAMの如き内部メモリとを備えるコンピュータにより構成される。ECU70は、上述した各種センサから供給された検出信号に基づいて、種々の制御や処理を行う。ECU70は、制御装置の一例である。
図2は、ECUの機能構成図を示す。
図2に示すように、ECU70は、機能的には、第1分岐通路64の下流端の圧力である第1圧力を取得する第1圧力取得部71と、第2分岐通路65の下流端の圧力である第2圧力を取得する第2圧力取得部72と、第1圧力及び第2圧力に基づいて、パージ通路62における第1分岐通路64と第2分岐通路65との分岐部の圧力である分岐部圧力を推定する推定部73と、燃料噴射量制御部74と、記憶部75とを有している。
【0040】
第1圧力取得部71は、コンプレッサ41の上流側の圧力とコンプレッサ41の下流側の圧力との圧力差に基づいて第1圧力を推定する。詳しくは、第1圧力取得部71は、第1圧力センサ82により検出される過給圧と、大気圧センサ80により検出される大気圧とに基づいてコンプレッサ41の前後の圧力差を求める。コンプレッサ41の前後の圧力差と第1圧力との関係が規定された第1圧力テーブルが、予め求められ、記憶部75に格納されている。第1圧力取得部71は、求められた圧力差を第1圧力テーブルに照らし合わせて、第1圧力を推定する。ただし、第1圧力テーブルで規定された第1圧力は、所定の標準状態(所定の温度条件等)で規定された圧力である。そのため、第1圧力取得部71は、第1圧力テーブルから取得した第1圧力を、大気圧に基づいて、そのときの環境条件に対応する実際の第1圧力に換算する。
【0041】
第2圧力取得部72は、第2圧力センサにより検出されるインマニ圧を第2圧力として取得する。
【0042】
推定部73は、第1圧力取得部71により求められた第1圧力及び第2圧力取得部72により求められた第2圧力に基づいて、分岐部圧力を推定する。分岐部圧力の推定方法については後述する。それに加えて、推定部73は、推定された分岐部圧力に基づいてパージバルブ66の開度を制御する。キャニスタ61の圧力は大気圧であるので、分岐部圧力がわかれば、パージバルブ66の前後の圧力差を求めることができる。パージ流量は、パージバルブ66の前後の圧力差とパージバルブ66の開度に依存する。推定部73は、パージ通路62を流通するパージ流量が目標流量となるように、パージバルブ66の開度を制御する。さらに、推定部73は、パージ通路62を流通するパージ流量を、分岐部圧力に基づいて推定する。詳しくは、推定部73は、分岐部圧力とキャニスタ61の圧力(即ち、大気圧)とパージバルブ66の開度とに基づいてパージ流量を推定する。推定されたパージ流量は、燃料噴射量制御部74による燃料噴射量の制御に用いられる。
【0043】
燃料噴射量制御部74は、エアフロセンサ81により検出された吸入空気量に基づいて、燃料噴射弁23から噴射する燃料噴射量を制御する。具体的には、燃料噴射量制御部74は、所望の空燃比となるように、吸入空気量に対する燃料噴射量を決定する。このとき、燃料噴射量制御部74は、推定部73により推定されたパージ流量に基づいて、パージシステム60から吸気通路10に供給されるパージガスに含まれる空気及び蒸発燃料も考慮して燃料噴射量を決定する。さらに、燃料噴射量制御部74は、O
2センサ84により検出された排気中の酸素濃度に基づいて、空燃比が所望の値となるように燃料噴射量をフィードバック制御する。
【0044】
〈分岐部圧力の推定〉
以下、推定部73による分岐部圧力の推定について説明する。以下の説明では、パージ通路62を流通する全パージ流量をQpg、分岐部圧力をPpg、第1分岐通路64の第1パージ流量をQej、第1分岐通路64の下流端の圧力である第1圧力をPej、第2分岐通路65の第2パージ流量をQim、第2分岐通路65の下流端の圧力である第2圧力をPimとする。
【0045】
まず、第1分岐通路64の第1パージ流量Qejは、第1分岐通路64の上流端と下流端との圧力差に依存しており、以下の式(1)で表される。
【0047】
ここで、K
1は、第1分岐通路64の流路抵抗等の物性値をまとめた定数である。
【0048】
同様に、第2分岐通路65の第2パージ流量Qimは、第2分岐通路65の上流端と下流端との圧力差に依存しており、以下の式(2)で表される。
【0050】
ここで、K
2は、第2分岐通路65の流路抵抗等の物性値をまとめた定数である。
【0051】
また、全パージ流量をQpgは、第1分岐通路64の第1パージ流量Qejと第2分岐通路65の第2パージ流量Qimとの合計であり、以下の式(3)で表される。
【0053】
式(1)、(2)は、変形すると、それぞれ、以下の式(4)、(5)のようになる。
【0056】
さらに、式(4)、(5)をまとめると、以下の式(6)が導かれる。
【0058】
ここで、式(3)における全パージ流量Qpgを目標パージ流量であるqprgとし、第1パージ流量Qejについて解くと、以下の式(7)となる。
【0060】
この式(7)を式(6)に代入すると、式(6)は第2パージ流量Qimについての2次方程式となり、その2次方程式を解くと、第2パージ流量Qimは、以下の式(8)となる。
【0062】
ここで、
A=1−K
12/K
22
B=−2×qprg
C=qprg
2+K
12×Pej−K
12×Pim
【0063】
この式(8)により、第2パージ流量Qimが求められる。尚、式(8)において、分子の平方根の前の符号が負の場合を、第2パージ流量Qimの解とする。そして、求められた第2流量Qimを式(4)に代入することによって、第1パージ流量Qejが求められる。
【0064】
図3は、推定部73の演算内容を示す機能ブロック図である。推定部73は、
図3に示す演算回路を有している。
【0065】
推定部73は、Qim演算部91において、第2パージ流量Qimを演算する。Qim演算部91は、前記式(8)に基づいて、第2パージ流量Qimを演算する。ここで、定数K
1及び定数K
2は、記憶部75に格納されている。第1圧力Pejには、第1圧力取得部71により取得された値が用いられ、第2圧力Pimには、第2圧力取得部72により取得された値が用いられる。
【0066】
推定部73は、Qim演算部91により求められた値と「0」とを最大値取得部92で比較し、大きい方を第2パージ流量Qimとする。つまり、式(8)に基づいて算出される第2パージ流量Qimは負の値となる場合があり得る。負の第2パージ流量Qimは、第2分岐通路65の下流端の圧力の方が、第2分岐通路65の上流端の圧力よりも高く、吸気が第2分岐通路65を逆流することを意味する。しかし、実際の第2分岐通路65には逆止弁65aが設けられており、吸気が第2分岐通路65を逆流することはなく、第2パージ流量Qimは0となる。そのため、Qim演算部91により求められた第2パージ流量Qimが負の値の場合には、最大値取得部92において負の値が0に置き換えられる。
【0067】
最大値取得部92から出力される第2パージ流量Qimは、乗・除算部93に入力される。乗・除算部93には、定数K
2も入力される。乗・除算部93は、第2パージ流量Qimを定数K
2で除算する。乗・除算部93から出力された値(Qim/K
2)は、乗算部94において2乗される。乗算部94から出力された値(Qim/K
2)
2は、加算部95に入力され、加算部95において第2圧力Pimが加算される。こうして、加算部95から分岐部圧力Ppgが算出される。こうして算出される分岐部圧力Ppgは、式(5)に基づく分岐部圧力Ppgである。
【0068】
一方、最大値取得部92から出力される第2パージ流量Qimは、加・減算部96にも入力される。加・減算部96には、目標パージ流量qprgも入力される。加・減算部96は、目標パージ流量qprgから第2パージ流量Qimを減算して、第1パージ流量Qejを算出する。つまり、加・減算部96は、式(3)に基づいて、第2パージ流量Qim及び目標パージ流量qprg(=全パージ流量Qpg)から第1パージ流量Qejを求める。
【0069】
加・減算部96から出力された第1パージ流量Qejは、最大値取得部97に入力され、「0」と比較され、大きい方が第1パージ流量Qejとされる。つまり、式(8)に基づいて算出される第2パージ流量Qimから第1パージ流量Qejを算出した結果、第1パージ流量Qejが負の値となり得る。負の第1パージ流量Qejは、第1分岐通路64の下流端の圧力の方が、第1分岐通路64の上流端の圧力よりも高く、吸気が第1分岐通路64を逆流することを意味する。しかし、実際の第1分岐通路64には逆止弁64aが設けられており、吸気が第1分岐通路64を逆流することはなく、第1パージ流量Qejは0となる。そのため、加・減算部96から出力された第1パージ流量Qejが負の値の場合には、最大値取得部97において負の値が0に置き換えられる。
【0070】
最大値取得部97から出力される第1パージ流量Qejは、乗・除算部98に入力される。乗・除算部98には、定数K
1も入力される。乗・除算部98は、第1パージ流量Qejを定数K
1で除算する。乗・除算部98から出力された値(Qej/K
1)は、乗算部99において2乗される。乗算部99から出力された値(Qej/K
1)
2は、加算部910に入力され、加算部910において第1圧力Pejが加算される。こうして、加算部910から分岐部圧力Ppgが算出される。こうして算出される分岐部圧力Ppgは、式(4)に基づく分岐部圧力Ppgである。
【0071】
最終的に、最小値取得部911において、加算部95から出力される分岐部圧力Ppgと、加算部910から出力される分岐部圧力Ppgと、大気圧とが比較され、最も小さい値が分岐部圧力Ppgとされる。 つまり、加算部95又は加算部910から出力される分岐部圧力Ppgの算出の途中で、第1パージ流量Qej又は第2パージ流量Qimが負となる場合があり、その場合には、流量が0に置き換えられている。つまり、第1パージ流量Qej又は第2パージ流量Qimが増量されている。第1パージ流量Qej又は第2パージ流量Qimが増量されると、結果として、算出される分岐部圧力Ppgも大きくなる側にずれる。そのため、加算部95から出力される分岐部圧力Ppg、及び、加算部910から出力される分岐部圧力Ppgのうち小さい方がより正確な分岐部圧力とみなすことができる。また、キャニスタ61の圧力が大気圧なので、分岐部圧力Ppgは、大気圧以上とはならない。そのため、加算部95から出力される分岐部圧力Ppg、及び、加算部910から出力される分岐部圧力Ppgが大気圧よりも大きい場合には、大気圧を分岐部圧力Ppgとする。
【0072】
尚、図示を省略しているが、推定部73は、求められた分岐部圧力Ppgと大気圧(キャニスタ61の圧力)とパージバルブ66の開度とに基づいてパージ流量Qpgを推定する。パージ流量Qpgは、燃料噴射量の制御等に用いられる。
【0073】
以上のように、ECU70は、第1分岐通路64の下流端の圧力である第1圧力を取得する第1圧力取得部71と、第2分岐通路65の下流端の圧力である第2圧力を取得する第2圧力取得部72と、第1圧力及び第2圧力に基づいて、パージ通路62における第1分岐通路64と第2分岐通路65との分岐部の圧力である分岐部圧力Ppgを推定する推定部73とを備える。
【0074】
この構成によれば、推定部73は、第1分岐通路64を流通するパージガスと第2分岐通路65を流通するパージガスとの両方を考慮して分岐部圧力Ppgを推定する。そのため、パージガスが第1分岐通路64及び第2分岐通路65の何れを流通する場合であっても、さらには、パージガスが第1分岐通路64及び第2分岐通路65の両方を流通する場合であっても、推定部73は、分岐部圧力Ppgを精度良く求めることができる。
【0075】
また、第1分岐通路64及び第2分岐通路65のそれぞれには、吸気通路10からの吸気の逆流を防止する逆止弁64a,65aが設けられ、推定部73は、第1分岐通路64を流通するパージガスの流量である第1パージ流量Qej及び第2分岐通路65を流通するパージガスの流量である第2パージ流量Qimを第1圧力Pej及び第2圧力Pimに基づいて求め、求められた第1パージ流量Qejが負の値の場合には、第1パージ流量Qejを零とし、求められた第2パージ流量Qimが負の値の場合には、第2パージ流量Qimを零とし、分岐部圧力Ppgを第1パージ流量Qej及び第2パージ流量Qimのそれぞれに基づいて求め、第1パージ流量Qejに基づいて求められた分岐部圧力Ppgと第2パージ流量Qimに基づいて求められた分岐部圧力Ppgのうち小さい方を分岐部圧力Ppgとして採用する。
【0076】
この構成によれば、逆止弁64a,65aを設けることによって、第1分岐通路64及び第2分岐通路65では逆流が生じない。そこで、推定部73により第1圧力Pej及び第2圧力Pimに基づいて求められた第1パージ流量Qej及び第2パージ流量Qimが負の値となった場合(即ち、逆流を示す場合)には、負の値が零に置き換えられる。しかし、求められた第1パージ流量Qej又は第2パージ流量Qimを零に置き換えることは、流量を増量することを意味し、零に置き換えられた第1パージ流量Qej又は第2パージ流量Qimに基づいて算出された分岐部圧力Ppgは大きい側にずれ得る。そこで、第1パージ流量Qejに基づいて求められた分岐部圧力Ppgと第2パージ流量Qimに基づいて求められた分岐部圧力Ppgのうち小さい方を分岐部圧力Ppgとして採用することによって、より正確な分岐部圧力Ppgを推定することができる。
【0077】
そして、パージ通路62には、パージ通路62を流通するパージガスの流量を調整するパージバルブ66が設けられており、推定部73は、推定された分岐部圧力Ppgに基づいてパージバルブ66の開度を制御する。詳しくは、推定部73は、分岐部圧力Ppgに基づいてパージバルブ66の前後の圧力差を求め、パージ通路62を流通するパージ流量が目標流量となるように、圧力差に基づいてパージバルブ66の開度を制御する。推定部73は、前述のように、分岐部圧力Ppgを正確に推定することができるので、パージ流量も正確に制御することができる。
【0078】
さらに、推定部73は、パージ通路62のパージ流量Qpgを分岐部圧力Ppgに基づいて推定する。キャニスタ61の圧力とパージバルブ66の開度とがわかっているので、推定部73は、分岐部圧力Ppgに基づいてパージ流量Qpgを推定することができる。推定されたパージ流量Qpgは、燃料噴射量の制御等に用いられる。
【0079】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0080】
前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0081】
例えば、推定部73は、式(6)を第2パージ流量Qimについての2次方程式とし、その2次方程式を第2パージ流量Qimについて解くことによって、最終的に分岐部圧力Ppgを求めている。しかし、式(6)を第1パージ流量Qejについての2次方程式とし、その2次方程式を第1パージ流量Qejについて解くことによって、最終的に分岐部圧力Ppgを求めてもよい。
【0082】
また、推定部73による分岐部圧力Ppgの算出の途中で、第1パージ流量Qej又は第2パージ流量Qimが負の値になったときには、推定部73は、負の値を零に置き換え、最終的に最初の分岐部圧力Ppgを採用することで正確な分岐部圧力Ppgを推定している。しかし、第1パージ流量Qej又は第2パージ流量Qimが負の値になったときには、推定部73は、第1パージ流量Qej及び第2パージ流量Qimのうち負の値でない方を用いて分岐部圧力Ppgを推定するようにしてもよい。つまり、第1パージ流量Qej及び第2パージ流量Qimの一方が負の値のときには、他方の流量が全パージ流量Qpgに一致する。そこで、式(4)、(5)のうち負の値でないパージ流量に対応する式を用いて分岐部圧力Ppgを求めてもよい。例えば、第2パージ流量Qimが負の値の場合は、式(4)が用いられる。Qej=Qpg=qprgを、式(4)に代入することで、分岐部圧力Ppgが求められる。この場合には、式(5)に基づく分岐部圧力Ppgの算出は行われない。