特許第6653537号(P6653537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6653537
(24)【登録日】2020年1月30日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】皮膚外用剤又は化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/96 20060101AFI20200217BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20200217BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20200217BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20200217BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20200217BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20200217BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20200217BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20200217BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20200217BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20200217BHJP
   A61K 35/10 20150101ALI20200217BHJP
   A61K 47/16 20060101ALI20200217BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20200217BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20200217BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   A61K8/96
   A61K8/44
   A61K8/37
   A61K8/63
   A61Q19/00
   A61Q1/14
   A61Q5/02
   A61Q5/12
   A61Q5/06
   A61Q19/10
   A61K35/10
   A61K47/16
   A61K47/14
   A61P17/16
   A61P17/18
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-162893(P2015-162893)
(22)【出願日】2015年8月20日
(65)【公開番号】特開2017-39669(P2017-39669A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】大塚 千恵
(72)【発明者】
【氏名】小原 妙
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−171917(JP,A)
【文献】 特開2012−171921(JP,A)
【文献】 特開2015−040195(JP,A)
【文献】 特開2012−184179(JP,A)
【文献】 特開2015−074646(JP,A)
【文献】 特開2006−273807(JP,A)
【文献】 特開2014−062056(JP,A)
【文献】 Amatora,Hair Bath Shampoo,Mintel GNPD,2014年12月,ID:2796367,URL,http://www.gnpd.com
【文献】 Amatora,CollamaskQ,Mintel GNPD,2014年12月,ID:2796369,URL,http://www.gnpd.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
A61K 35/10
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B);
(A)腐植土抽出物
(B)抱水性油剤
を含有し、
成分(B)の抱水力が200以上であり、
成分(B)の含有量が、0.1〜20質量%であり、
成分(A)と成分(B)との含有比率(B)/(A)が1〜4000である、
皮膚外用剤又は化粧料。
【請求項2】
次の成分(A)及び(B);
(A)腐植土抽出物
(B)抱水性油剤
を含有し、
成分(B)の抱水力が200以上であり、
成分(B)の含有量が、0.1〜20質量%であり、
成分(A)と成分(B)との含有比率(B)/(A)が1〜100000であり、
さらに、成分(C)として、炭素数12〜18の高級脂肪酸と炭素数2〜6の一価のアルコールとのエステルであって、25℃で液状のエステル油を1種又は2種以上含有する、
皮膚外用剤又は化粧料。
【請求項3】
成分(A)腐植土抽出物が、水系溶媒抽出物である、請求項1または2に記載の皮膚外用剤又は化粧料。
【請求項4】
成分(A)腐植土抽出物が、エキス分濃度が0.5質量%となるように水に溶解または懸濁したときにフミン質を100mg/L以上含有するものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の皮膚外用剤又は化粧料。
【請求項5】
成分(A)腐植土抽出物が、エキス分濃度が0.5質量%となるように水に溶解または懸濁したときにフルボ酸を0.1〜100mg/L含有するものである、請求項1〜のいずれか1項に記載の皮膚外用剤又は化粧料。
【請求項6】
成分(B)抱水性油剤がN−アシルアミノ酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ダイマー酸エステルから選ばれる1種又は2種以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の皮膚外用剤又は化粧料。
【請求項7】
成分(A)の含有量が、エキス分として0.00001〜1質量%である、請求項1〜のいずれか1項に記載の皮膚外用剤又は化粧料。
【請求項8】
油剤の総含有量が0.01〜20質量%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の皮膚外用剤又は化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐植土抽出物と抱水性油剤を含有する皮膚外用剤又は化粧料に関し、さらに詳しくは、腐植土抽出物由来のべたつきが軽減され、かつ保湿感やその持続に優れた皮膚外用剤又は化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腐植土は、地上植物、大型・微細藻類などの植物(広義)や魚介類およびその他無機物が、海、沼、池や湖の底部に堆積したものやこれが地表に隆起したもの、また森林の地表部に堆積したもの等のように植物(広義)などやこれを含む堆積物が、長い年月の間に嫌気性微生物等により分解、有機化を受けたものである。この腐植土の抽出物は、フルボ酸、フミン酸などの腐植土壌特有の構成物質のほか、脂肪酸、有機酸、アミノ酸、タンパク質、ミネラル等が含まれていることが知られており、化粧料や浴剤への配合が検討されてきた(特許文献1〜7)。腐植土抽出物またはその成分であるフミン質、フルボ酸もしくはフミン酸はまた、各種の機能、具体的には抗菌・殺菌、ウイルス不活化、I型アレルギー抑制作用、毛穴目立ち改善作用、収斂作用、コラーゲンゲル収縮促進作用、または一重項酸素消去作用が見出され、皮膚外用剤や化粧料組成物における有効成分として利用することが検討されてきた(特許文献8〜15)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−169322号公報
【特許文献2】特開2002−187817号公報
【特許文献3】特開2004−339120号公報
【特許文献4】特開2000−136140号公報
【特許文献5】特表2013−531629号公報
【特許文献6】特開昭61−148113号公報
【特許文献7】特開平10−059837号公報
【特許文献8】特開2000−136140号公報
【特許文献9】特開2006−232785号公報
【特許文献10】特開2006−273734号公報
【特許文献11】特開2008−007451号公報
【特許文献12】特開2012−162489号公報
【特許文献13】特開2012−171917号公報
【特許文献14】特開2012−171921号公報
【特許文献15】特開2012−171937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようにさまざまな効果が検討されてきた腐植土抽出物であるが、保湿感については十分でなかった。保湿感を付与する方法としては、水溶性保湿剤や油剤を配合するなどの方法があるが、水溶性保湿剤のみでは保湿効果が十分ではなく乾燥しがちである。一方、油剤を配合すると、べたつきを感じる場合があった。
【0005】
また、腐植土抽出物は肌上でべたついてしまい、このべたつきを抑えることが処方上の課題となっており、炭化水素油等を配合すると、保湿感は付与できるもののべたつきは抑えられないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、腐植土抽出物に抱水性油剤を組み合わせることで、水系成分である腐植土抽出物を抱水性油剤が抱え込んだ膜を肌上に形成させることができ、保湿感やその持続性に優れることに加え、べたつきを抑えた、皮膚外用剤又は化粧料を具現化できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、(A)腐植土抽出物、(B)抱水性油剤を含有し、成分(B)の抱水力が200以上であり、成分(B)の含有量が、0.1〜20質量%であり、成分(A)と成分(B)との含有比率(B)/(A)が1〜4000である、皮膚外用剤又は化粧料を提供するものである。
また、本発明は、(A)腐植土抽出物、(B)抱水性油剤を含有し、成分(B)の抱水力が200以上であり、成分(B)の含有量が、0.1〜20質量%であり、成分(A)と成分(B)との含有比率(B)/(A)が1〜100000であり、さらに、成分(C)として、炭素数12〜18の高級脂肪酸と炭素数2〜6の一価のアルコールとのエステルであって、25℃で液状のエステル油を1種又は2種以上含有する、皮膚外用剤又は化粧料を提供するものである。
【0008】
さらに、成分(A)腐植土抽出物が、水系溶媒抽出物である腐植土抽出物である皮膚外用剤又は化粧料を提供するものである。
【0009】
さらに、成分(A)腐植土抽出物が、エキス分濃度が0.5質量%となるように水に溶解または懸濁したときにフミン質を100mg/L以上含有するものである皮膚外用剤又は化粧料を提供するものである。
【0010】
さらに、成分(A)腐植土抽出物が、エキス分濃度が0.5質量%となるように水に溶解または懸濁したときにフルボ酸を0.1〜100mg/L含有するものである皮膚外用剤又は化粧料を提供するものである。
【0011】
さらに、成分(B)抱水性油剤がN−アシルアミノ酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ダイマー酸エステル、から選ばれる1種又は2種以上である皮膚外用剤又は化粧料を提供するものである。
【0012】
さらに、成分(A)の含有量が、エキス分として0.00001〜1質量%である皮膚外用剤又は化粧料を提供するものである。
【0015】
油剤の総含有量が0.01〜20質量%である皮膚外用剤又は化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、腐植土抽出物を含有しながらもべたつきがなく使用感が良好であり、かつ保湿感やその持続性に優れた、皮膚外用剤又は化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳述する。なお、本明細書においては、〜を用いて数値範囲を表す際は、その範囲は両端の数値を含むものとする。
【0018】
本発明に用いられる成分(A)は、腐植土抽出物である。本発明で使用する腐植土抽出物の腐植土は、特に限定されず、産地、状態を問わずいずれのものも使用することができる。具体的には、この腐植土として、例えば、森林、河川、湖沼、海洋などを起源とするものを使用することが可能であり、この腐植土とは、そこで生息していた地上植物、大型・微細藻類などの植物(広義)などやこれを含む堆積物が、嫌気性微生物などにより分解、合成、有機化を受けたものである。このうち、海洋でできた堆積物を起源とする腐植土、より好ましくは海洋でできた堆積物が隆起してなったような日本列島由来の腐植土であり、さらに九州由来の腐植土が好ましい。この腐植土の腐植の程度も特に限定されず、腐植が進行し、高分子有機化合物であるフルボ酸やフミン酸が含まれるものが好ましい。
【0019】
本発明で使用する腐植土抽出物は、抽出手段にて腐植土を溶媒に接触させて効果のある成分を抽出し、回収することによって得られる。さらに、不要物除去や除菌のため、ろ過手段を行うのが好ましい。得られた腐植土抽出物は、必要に応じて、希釈、濃縮や乾燥を行うことができ、また不純物の除去のため分離や精製等を行ってもよい。腐植土抽出物の形態としては、特に限定されず、例えば、固体状、半固体状や液状が挙げられる。具体的には、例えば、溶液、懸濁液、濃縮液、エマルジョン、スラリー、粉末、顆粒および固形などの状態が挙げられる。また腐植土抽出物は、特に記載した場合を除き、腐植土から抽出操作によって得られる、組成物または腐食土特有の成分をいう。腐植土抽出物は、フミン質、フミン酸またはフルボ酸であり得る。
【0020】
好適な腐植土抽出物を製造する方法の一例として、腐植土に、抽出溶媒を加えて混合攪拌後、有効成分を分離することによって腐植土抽出物を得ることが挙げられる。
【0021】
抽出手段としては、特に限定されず、固液抽出、液液抽出、浸漬、煎出、浸出、還流抽出、超臨界流体抽出、超音波抽出、マイクロ波抽出、混合攪拌等が挙げられる。これらを適宜組み合わせてもよい。また、分離手段としては、特に限定されず、例えば、ろ過分離手段や遠心分離手段などが挙げられる。これらを単独で又は組み合わせて使用してもよい。ろ過分離手段としては、自然ろ過、減圧ろ過および加圧ろ過などが挙げられる。このとき、セルロースフィルター、ガラス繊維フィルター、メンブランフィルターなどのろ材を用い、必要に応じてセライト、砂利および活性炭などのろ過助剤を用いる。孔径は特に限定されず、例えば0.1〜1μmが好適である。これらを適宜組み合わせてもよい。なお、腐植土抽出物は、除菌用フィルターを用いてろ過されているものが、腐植土が熱変性されず、また不溶性物質などが除去されているので、好ましい。
また、抽出に先立って行う腐植土の乾燥や前処理の有無および方法に特に限定はない。
【0022】
抽出溶媒としては、特に限定されず、極性溶媒又は非極性溶媒のいずれも使用してもよい。この抽出溶媒としては、例えば、水(温泉水、海洋深層水などのミネラル分を含む水や精製水等);直鎖、分岐鎖又は環状のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどの鎖状および環状エーテル類;ポリエチレングリコールなどのポリエーテル類;スクワラン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテルなどの炭化水素類;トルエンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類;および超臨界二酸化炭素などが挙げられる。なお、これらは単独で又は2種以上組み合わせた混合溶媒として使用してもよい。また、有機溶媒は水溶性のものが、好適である。
【0023】
抽出溶媒のうち、水、アルコール類、ケトン類および超臨界二酸化炭素から選ばれる1種以上のものが好ましい。それらのうちでも、水およびアルコール類から選ばれる1種以上のものが好ましく、例えば、水、アルコール類および水とアルコール類との混液が挙げられる。
【0024】
ここで、アルコール類は、一価又は多価アルコール類のいずれでもよく、一価アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノールおよびプロパノールなどが挙げられ、多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、グリセリンおよびジプロピレングリコールなどが挙げられる。アルコール類のうち、例えば、エタノールおよび1,3−ブチレングリコールなどの炭素数1〜5の低級アルコール類が好ましく、このうち低級一価アルコール類が好ましく、このうちさらにエタノールが好ましい。
【0025】
本発明者らの検討によると、腐植土抽出物に含まれる成分のうち、目的の効果が高い成分の一つがフルボ酸であると考えられることから、腐植土抽出物の抽出溶媒は、フルボ酸が溶解可能であることが好ましい。具体的には水系溶媒、すなわち水を含む溶媒が好ましく、水および水アルコール類混液がより好ましい。より具体的には、アルコール類を0〜90容量%含む水溶液が好適であり、好ましくは0〜70容量%、より好ましくは0〜50容量%、さらに好ましくは0〜20容量%を含む水溶液が好適である。
【0026】
溶媒の使用量は、特に限定されず、例えば、腐植土(乾燥状態)100kgに対して、腐植土成分の抽出効率および作業効率の点で、100〜1000Lとするのが好ましく、200〜600Lとするのがより好ましい。
【0027】
抽出期間は、特に限定されず、好ましくは1日〜3年間であり、より好ましくは10日〜1.5年間である。このときの腐植土と抽出溶媒との混合攪拌は、特に限定されず、例えば、0.5〜48時間程度行えばよい。これにより腐植土と抽出溶媒が接触し、有効成分を抽出しやすくなる。また、連続又は不連続に混合攪拌を行えばよい。例えば、混合撹拌した後、さらに一定期間混合攪拌する若しくは一定期間混合攪拌後放置するか、又は放置して熟成させるのが、抽出効率の点で、好適である。混合攪拌後に放置することで腐植土が沈降し、分離の際に有利であるため、好ましい。例えば、抽出期間内(例えば1日〜3年間)、連続又は不連続に混合攪拌を行う;1時間〜7日間混合攪拌後、1〜60日間(好適には20〜40日間)放置する;引き続き1〜20日間(好適には3〜9日間)混合攪拌した後、1日〜3年間(好適には6ヶ月〜2年間)放置するなどが挙げられる。
【0028】
抽出温度は、特に限定されず、好ましくは低温〜高温(例えば、0〜100℃程度)、より好ましくは低温(例えば、0〜9℃程度)〜常温(例えば、10〜40℃程度)とするのが、腐植土を熱変性させないために、好適である。
【0029】
なお、乾燥としては、天日乾燥、自然乾燥、風乾燥、熱乾燥、凍結乾燥などが挙げられ、腐植土が熱変性しない乾燥であれば好適である。このとき、腐植土が微粉砕できる程度に乾燥するのが望ましく、粉砕することによって腐植土の抽出効率が向上するので、好適である。
【0030】
腐植土抽出物には、フルボ酸、フミン酸などの腐植土壌特有の構成物質(フミン質など)や、脂肪酸、有機酸、アミノ酸、タンパク質、ミネラルなどが含まれている。
【0031】
腐植土抽出物には、エキス分濃度が0.5質量%となるように水に溶解もしくは懸濁したときに、フミン質が、少なくとも少なくとも0.1mg/L以上、好ましくは10mg/L以上、より好ましくは100mg/L以上、さらに好ましくは100〜1000mg/L、さらに好ましくは200〜700mg/L、さらに好ましくは350〜650mg/L含まれているのが好適である。ここで、フミン質(腐植質)とは、例えば、植物成分などが土壌中に分解、縮合して生成する高分子物質を指す。ここで、フミン質は、鉱泉試験法(衛生試験法・注解2002、日本薬学会)の腐植質についての試験法で定量することができる。試験法詳細は、下記のとおりである。
【0032】
試料VmL(腐植質として約20mg以上含む。)を正確にとり、孔径0.45μmメンブランフィルター(あらかじめデシケーター(シリカゲル)で乾燥し、秤量しておく。)を用いて吸引ろ過し、少量の水で洗浄した後、ろ液および洗浄液を合わせ、HCl10mLを加えてよくかき混ぜ、一昼夜放置する。これをメンブランフィルターでろ過する。ろ過に際しては、上清をまず静かに吸引ろ過し、最後に沈殿部を追加する。ろ過し終わったら沈殿を水でよく洗う。ろ液はいくらか着色しているのが普通である。フルボ酸が多いときは着色が著しい。ろ過後、フィルター部分をはがして、パラフィン紙に包んでデシケーター(シリカゲル)中で恒量になるまで乾燥する(一昼夜放置)。メンブランフィルターの重量を差し引いて腐植質の量を求め、試料中の含量を計算する。腐植質は灰分を含むので、メンブランフィルターをるつぼに移し、少量のメチルアルコールを加えて燃やし、さらに灰化して灰分を求め、先の重量から差し引く。
【0033】
フミン質(腐植質)(mg/L)=((A−B)−C)/D×100

A:フィルター部分の重量(mg)
B:メンブランフィルターの重量(mg)
C:灰分の重量(mg)
D:試料採取量(ml)
【0034】
本発明者らの検討によると、水を溶媒として得た腐植土抽出物に目的の効果が十分に見られたので、目的の効果が高い成分の一つは、フミン質の中でもフルボ酸であると考えられている。したがって、有効成分として用いる腐植土抽出物にはフルボ酸が多く含まれていることが好ましく、具体的には、固形分濃度が0.5質量%となるように水に溶解もしくは懸濁したときに、フルボ酸が、好ましくは0.1〜100mg/L、より好ましくは1〜50mg/L、さらに好ましくは5〜50mg/L含まれているのが好適である。ここで、フルボ酸は、植物などが微生物により分解される最終生成物である腐植物質のうち、酸によって沈殿しない無定形高分子有機酸を指す。フルボ酸は、重金属などを吸着、放出するキレート作用を有し得る。
【0035】
腐植土抽出物には、エキス分濃度が0.5質量%となるように水に溶解もしくは懸濁したときに、フミン酸が、好ましくは0.2mg/L以上、より好ましくは2mg以上、さらに好ましくは3mg/L以上、さらに好ましくは4mg/L以上含まれているのが好適である。いずれの場合であっても、腐植土抽出物中のフミン酸は、好ましくは30mg/L以下とすることができ、20mg以下としてもよく、1.6mg/L以下としてもよい。また、フミン酸は、腐植物質のうち酸性領域で沈殿し、アルカリ性領域で可溶であるものを指す。詳細な化学構造は不明であるが、多価フェノール形の芳香族化合物と含チッ素化合物との縮合物であり、フェノール性水酸基およびカルボキシル基を有するとされている。
【0036】
フミン酸:フルボ酸の混合割合は、特に限定されず、好ましくは1:10〜10:1とするのが好適である。フミン酸およびフルボ酸の定量方法は、「Soil Science and Plant Nutrition, 38巻, 23-30頁(Kuwatsuka S et al. 1992); Soil Science and
Plant Nutrition, 40巻, 601-608頁(Watanabe A. et al. 1994);Humic Substances Research, 1巻, 18-28頁(Watanabe A. et al. 2004)」等の参考文献に従って行えばよい。測定法により定量値が異なる場合は、フルボ酸の定量値がより高い測定法を採用することが好ましい。
【0037】
腐植土抽出物のpHは、酸性領域、好ましくはpH1〜6、より好ましくはpH2〜5とするのが、薬理活性および安定性の点で、好適である。このとき、エキス分濃度0.1〜1質量%水溶液とし、20℃で適宜pH調整剤にて調整してもよい。pH調整剤としては、通常使用されるものであれば特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸などの無機酸類;クエン酸、酢酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、尿素、ε−アミノカプロン酸、ピロリドンカルボン酸などの有機酸類;グリシンベタイン、リジンベタインなどのベタイン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物(アルカリ金属水酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物など)などの無機アルカリ類;グアニジン、2−アミノ−2−メチルプロパンなどの有機アミン類;アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン;アルギニン、リジンなどの塩基性アミノ酸など、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0038】
本発明における成分(A)の含有量は、特に限定されないが、皮膚外用剤又は化粧料の安定性確保ならびにべたつき抑制の観点から、エキス分濃度として0.00001〜1質量%(以下、質量%は単に、「%」と略す)、好ましくは0.0001〜0.1%とするのが効用の点で好ましい。
【0039】
本発明における成分(B)抱水性油剤とは、以下の試験法により抱水力100以上のものである。
【0040】
試験法:50℃に加熱した油剤10gを200mlビーカーに秤り取り、デスパーミキサーにて3000rpmで攪拌しながら50℃の水を徐々に添加し、水が排液しない最大限(質量g)を測定し、この数値を10で除し、100倍して抱水力とした。
【0041】
本発明における成分(B)は、皮膚外用剤又は化粧料に使用できるものであればいずれのものも使用でき、N−アシルアミノ酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ダイマー酸エステル、ジペンタエリストール脂肪酸エステル、ステロール誘導体等が挙げられる。これら成分(B)としては、例えば、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジオクチルドデシル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)等のN−アシルアミノ酸エステル、ヒマシ油、シア脂、ヘキサグリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、(アジピン酸/2−エチルヘキサン酸/ステアリン酸)グリセリルオリゴエステル、ステアリン酸硬化ヒマシ油、ヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油等のグリセリン脂肪酸エステル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビスイソステアリル等のダイマー酸エステル、(12−ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリトール、(12−ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリトール等のジペンタエリストール脂肪酸エステル、コレステロール、イソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、リシノール酸コレステリル等の脂肪酸コレステリルエステル、フィトステロール、オレイン酸フィトステリル、マカデミアンナッツ油脂肪酸フィトステリル等の脂肪酸フィトステリルエステル等のステロール誘導体などが挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。
【0042】
これらの中でも、N−アシルアミノ酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ダイマー酸エステルが保湿感に優れるため好ましく、さらに、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、シア脂、デカグリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸硬化ヒマシ油、ヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油が、保湿効果の持続性を高めるため、より好ましい。
【0043】
成分(B)の市販品としては、エルデュウPS−203(抱水力300%)、エルデュウPS−304(抱水力420%)、エルデュウPS−306(抱水力470%)(味の素社製)、PLANDOOL−S(抱水力300%)(日本精化社製)、ビオデルマ SX−19<E>(抱水力110%)(一丸ファルコス社製)キャストライドMS(抱水力110%)(ナショナル美松社製)、テクノールMH(抱水力105%)(横関油脂社製)等が挙げられる。
【0044】
本発明における成分(B)の含有量は、特に限定されないが、0.01〜20%が好ましく、0.1〜5%が保湿効果の持続、ならびに腐植土抽出物由来のべたつきをより抑制するため更に好ましい。
【0045】
上記した成分(A)、成分(B)の含有量は、任意に選択可能であり、含有する比率も特に限定されるものではないが、これらの含有量の比率を特定の範囲とすることにより、さらに本発明の効果を高めることが可能となり好ましい。このような成分(A)と成分(B)の含有比率は、(B)/(A)=1〜100000であることが好ましく、さらに10〜10000の範囲が好ましい。この範囲内であれば、腐植土抽出物由来のべたつきの抑制や保湿感の付与がより優れるため好ましい。
【0046】
本発明の皮膚外用剤又は化粧料においては、上記成分に加え、さらに成分(C)として炭素数12〜18の高級脂肪酸と炭素数2〜6の一価のアルコールとのエステルであって、25℃で液状のエステル油含有することができる。成分(C)を含有することにより、保湿感をさらに持続させることがき、好ましい。成分(C)としては例えばラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、リノール酸エチルなどが挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。この中でも、オレイン酸エチル、リノール酸エチルが、保湿感の持続が優れる点でより好ましい。成分(C)の市販品としては、NIKKOL EOO、ニッコール VF−E(いずれも日光ケミカルズ社製)、CLEARBRIGHT E−81S(日油社製)等が挙げられる。
【0047】
本発明における成分(C)の含有量は、特に限定されないが、0.01〜10%が好ましく、0.05〜5%が保湿効果を持続させるうえで更に好ましい。
【0048】
本発明には、油剤として、成分(B)、(C)以外の油剤を使用することができる。成分(B)、(C)以外の通常皮膚外用剤又は化粧料に使用されるものであれば特に制限されず、動物油、植物油、鉱物油、合成油を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル類、シリコーン油類、フッ素系油、ラノリン誘導体類、油溶性紫外線吸収剤等を用いることができる。
【0049】
本発明において、成分(B)、(C)以外の油剤の含有量は、他の成分とのバランスで決まるものであるが、前記成分(B)、(C)を含めた全油剤の総含有量は、0.01〜20%が好ましく、0.05〜15%がより好ましく、0.1〜5%がさらに好ましい。全油剤の総含有量がこの範囲であれば、べたつきをより抑制した皮膚外用剤又は化粧料を得ることができるため好ましい。
【0050】
本発明においては、上記必須成分のほかに、本発明の効果を損なわない範囲で、通常化粧料に含有される成分として、水、アルコール類、界面活性剤、油性成分、水溶性高分子、保湿成分、紫外線吸収剤、酸化防止剤、金属キレート剤、防腐剤、粉体、色素、香料、各種薬剤等を本発明の効果を妨げない範囲で任意に含有することができる。かかる成分としては次のようなものが挙げられる。
【0051】
水としては、通常化粧料製造のために用いられる水であれば特に限定されず、常水、精製水、温泉水、深層水や、ラベンダー水、ローズ水、オレンジフラワー水などの植物由来の水蒸気蒸留水などが挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。
【0052】
水溶性高分子としては、アラビアゴム、トラガカント、ガラクタン、キャロブガム、グァーガム、カチオン化グァーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、アルゲコロイド(褐藻エキス)等の植物系高分子、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー(CARBOPOL(販売名)等)、アルキル変性カルボキビニルポリマー(PEMULEN(販売名)等)等のビニル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、ポリオキエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオン性ポリマー等の有機系水溶性高分子、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等の無機系水溶性高分子等が挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。
【0053】
保湿成分としては、糖類、アミノ酸及びその誘導体、ペプタイド類、植物抽出液等が挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。
【0054】
糖類としては、ソルビトール、エリスリトール、マルトース、マルチトール、キシリトール、キシロース、トレハロース、イノシトール、グルコース、マンニトール、ペンタエリスリトール、果糖、蔗糖およびそのエステル、デキストリン及びその誘導体、ハチミツ、黒砂糖抽出物等が挙げられる。
【0055】
アミノ酸類としては、例えばグリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン、ヒドロキシリジン、アルギニン、シスチン、システイン、アセチルシステイン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、オルチニン、シトルリン、テアニン、クレアチン、クレアチニン等が挙げられる。
【0056】
アミノ酸誘導体としては、グルタチオン、ピロリドンカルボン酸、N−アシルグルタミン酸リジン縮合物等が挙げられる。
【0057】
ペプタイド類としては、動物、魚、貝、植物由来のいずれでもよく具体的には、コラーゲン及びその誘導体又はそれらの加水分解物、エラスチン及びその誘導体又はそれらの加水分解物、ケラチン及びその誘導体又はそれらの分解物、コムギタンパク及びその誘導体又はそれらの加水分解物、ダイズタンパク及びその誘導体又はそれらの加水分解物等が挙げられる。
【0058】
植物抽出物としては、例えばオウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等を用い、水や有機溶媒により適宜抽出したものが挙げられる。
【0059】
酸化防止剤としては、アスコルビン酸、α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0060】
防腐剤としては、安息香酸、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸エステル、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0061】
本発明の皮膚に適用する皮膚外用剤又は化粧料は常法に従って製造することができ、例えば、成分(B)に界面活性剤や他の油剤等を加え、90℃に加熱して均一に混合し、予め他の水性成分等と混合された成分(A)に加えることによって得ることができる。
【0062】
本発明の皮膚に適用する皮膚外用剤又は化粧料の性状は、特に限定されず、液状、ゲル状、クリーム状、半固形状、固形状、スティック状、パウダー状等のいずれであってもよい。これらの中でも液状であると、べたつきのなさをより顕著に感じることができるため好ましい。
【0063】
また、本発明の皮膚外用剤又は化粧料としては、医薬品等の皮膚外用剤や化粧料等を挙げることでができ、例えば、外用固形剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤等や、乳液、化粧水、美容液、パック化粧料、洗顔料、マッサージ用化粧料、化粧用下地料、ボディ用化粧料、ヘア用化粧料等で挙げられる。一方、本発明の皮膚外用剤又は化粧料の形態としては、水中油型、油中水型、多重乳化、マイクロエマルション等いずれでもよく、用途や目的に応じて適宜選択することができるが、べたつきのなさを考慮した場合、水中油型が好ましい。
【実施例】
【0064】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに説明する。なお、これらは本発明を何ら限定するものではない。
[製造例1:腐植土抽出物の製造1]
地中(九州地方海岸付近土壌)から採取した腐食土壌を乾燥させた後、微粉砕した。この粉砕物5kgと、精製水20リットルを2時間混合攪拌し、さらに常温(10〜30℃程度)で7日間撹拌し、20日間静置した。静置後、メンブランフィルター(孔径0.45μm)を用いてろ過し、腐植土抽出物水溶液(原液)を得た。このときのpH(20℃)は3.0であった。また、この乾燥エキス分(エキス分濃度)は0.4質量%であった。この原液に含まれるフミン質の総量は350mg/L(乾燥エキス分5g/水1Lの水溶液換算としたとき、438mg/L)であり、フミン酸およびフルボ酸の含有量は、それぞれ4mg/Lおよび6.7mg/L(乾燥エキス分5g/水1Lの水溶液換算としたとき、それぞれ5mg/Lおよび8.4mg/L)であった。以下の実施例では乾燥エキス分をそのまま用いた。
【0065】
フミン酸およびフルボ酸の定量方法は、上述の参考文献Soil Science and Plant Nutrition, 38巻, 23-30頁(Kuwatsuka S et al. 1992); Soil Science and
Plant Nutrition, 40巻, 601-608頁(Watanabe A. et al. 1994);Humic Substances Reseacrh, 1巻, 18-28頁(Watanabe A. et al. 2004)にしたがって行った。
【0066】
実施例1〜10及び比較例1〜3:美容液
下記表1及び表2に示す美容液を下記製造方法により調製し、(イ)塗布直後の保湿感、(ロ)保湿感の持続、(ハ)べたつきのなさの各項目について、以下に示す評価方法及び判定基準により評価判定し、結果を合わせて表1及び表2に示した。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
※1:エルデュウ PS−203(味の素社製)
※2:PLANDOOL−S(日本精化社製)
※3:キャストライド MS(ナショナル美松社製)
※4:ポリブテンHV−100F(日本ナチュラルプロダクツ社製)
【0070】
(製造方法)
A:成分1〜8を室温で均一に混合する。
B:成分9〜14を70℃で均一に混合する。
C:AにBを添加し、均一に混合する。
D:Cをディスペンサー容器に充填し、美容液を得た。
【0071】
〔評価項目(イ)〜(ハ)の評価方法〕
化粧品評価専門パネル20名に、実施例1〜10及び比較例1〜3の美容液を、洗顔後に使用してもらい、(イ)塗布直後の保湿感、(ロ)保湿感の持続、(ハ)べたつきの無さの各項目について官能評価した。
(イ)塗布直後の保湿感については、美容液をなじませ、おさまった直後の保湿感を評価した。(ロ)保湿感の持続については、美容液を使用し、20℃50%RHの試験室で2時間経過した後の肌の保湿感を評価した。(ハ)べたつきのなさについては、製剤をなじませ、なじみ際のべたつきの無さを評価した。各評価項目は、以下の評価基準(I)に従って7段階に官能評価し、更に全パネルの評点の平均点を以下の判定基準(II)に従って判定した。
【0072】
評価基準(I)
[評価結果] : [評点]
非常に良い : 6点
良い : 5点
やや良い : 4点
普通 : 3点
やや悪い : 2点
悪い : 1点
非常に悪い : 0点
判定基準(II)
[評点の平均点] :[判定]
5点を超える : ◎
3.5点を超え5点以下 : ○
1点を超え3.5点以下 : △
1点以下 : ×
【0073】
表1及び表2の結果から明らかなように、実施例1〜10の美容液は「塗布直後の保湿感」、「保湿感の持続」、「べたつきのなさ」の全ての評価項目において優れた結果であった。
一方、成分(B)抱水性油剤を含有しない比較例1は、塗布直後の保湿感、保湿感の持続ともに不十分であり、さらに成分(A)腐植土抽出物由来のべたつきが顕著に出てしまった。成分(B)の代わりに抱水性のない炭化水素系油剤であるワセリンを含有させた比較例2は、塗布直後の保湿感は付与できたもののその持続性に劣り、成分(A)を抱え込めないためべたつきを十分に抑えることができなかった。同じく成分(B)をポリブテンに代えた比較例3は、ポリブテン自体のべたつきが強く出てしまい、保湿感の持続性も劣るものであった。
【0074】
実施例11:化粧水
(成分) (質量%)
1.クエン酸 0.02
2.クエン酸ナトリウム 0.04
3.製造例1の腐植土抽出物 0.025
4.1,3−ブチレングリコール 5
5.グリセリン 7
6.精製水 残量
7.トリステアリン酸ポリグリセリル−10 ※5 0.1
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.トコフェロール酢酸エステル 0.001
10.セスキオレイン酸ソルビタン 0.02
11.ポリソルベート80 0.05
12.ジ(C12−15)パレス−8リン酸 0.02
13.エタノール 10
14.香料 0.03
※5:EMALEX TSG−10(日本エマルジョン社製)
【0075】
(製造方法)
A:成分1〜6を混合する。
B:Aに成分7〜14を添加し、混合する。
C:上記混合物をボトル容器に充填し、化粧水を得た。
【0076】
実施例11の化粧水は、「塗布直後の保湿感」、「保湿感の持続」、「べたつきのなさ」に優れた化粧水であった。
【0077】
参考例12:乳液
(成分) (質量%)
1.N−ステアロイル−L−グルタミン酸 0.5
2.1,3−ブチレングリコール 10
3.モノイソステアリン酸ソルビタン 0.1
4.ステアリン酸 0.5
5.セトステアリルアルコール 0.2
6.流動パラフィン 4
7.シア油※6 0.5
8.トリエチルヘキサノイン 2
9.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
10.ローズヒップ油 0.1
11.ジメチコン 0.3
12.水素添加大豆リン脂質 0.1
13.精製水 残量
14.水酸化ナトリウム 0.06
15.グリセリン 5
16.(アクリレーツ/アクリル酸アルキル
(C10−30))コポリマー 0.15
17.エタノール 5
18.フェノキシエタノール 0.05
19.製造例1の腐植土抽出物 0.01
20.香料 0.04
※6:ビオデルマ SX−19<E>(抱水力110%)(一丸ファルコス社製)
【0078】
(製造方法)
A:成分1〜12を均一に加熱溶解する。
B:成分13、14を均一に溶解する。
C:BにAを添加し、乳化する。
D:Cに15〜20を順次添加し、均一に混合する。
E:上記混合物をボトル容器に充填し、乳液を得た。
【0079】
実施例12の乳液は、「塗布直後の保湿感」、「保湿感の持続」、「べたつきのなさ」に優れた乳液であった。
【0080】
参考例13:クレンジング料
(成分) (質量%)
1.ジプロピレングリコール 7
2.1,3−ブチレングリコール 10
3.ジグリセリン 2
4.カルボキシビニルポリマー 0.3
5.精製水 残量
6.水酸化ナトリウム 0.1
7.ジカプリン酸プロピレングリコール 5
8.水添ポリイソブテン 1
9.N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ
(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)※7 0.1
10.エタノール 4
11.フェノキシエタノール 0.5
12.香料 0.3
13.ローズマリーエキス 0.02
14.製造例1の腐植土抽出物 0.0005
※7:エルデュウ CL−301(抱水力235%)(味の素社製)
【0081】
(製造方法)
A:成分1〜6を均一に混合する。
B:Aに成分7〜9を添加し、均一に混合する。
C:Bに10〜14を添加し、均一に混合する。
D:上記混合物を容器に充填し、クレンジング料を得た。
【0082】
実施例13のクレンジング料は、「洗い流し直後の保湿感」、「保湿感の持続」、「べたつきのなさ」に優れたクレンジング料であった。
【0083】
実施例14:洗浄料
(成分) (質量%)
1.ココイルグリシンK 7
2.ココイルメチルタウリンNa 4
3.ココアンホ酢酸Na 2
4.精製水 残量
5.EDTA−2Na 0.1
6.フェノキシエタノール 0.1
7.1,3−ブチレングリコール 16
8.L−セリン 0.1
9.L−テアニン 0.1
10.製造例1の腐植土抽出物 0.0025
11.N−ラウロイル−L−グルタミン酸
ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)※1 0.01
【0084】
(製造方法)
A:成分1〜5を均一に混合する。
B:Aに成分6〜11を添加し、均一に混合する。
C:上記混合物をポンプフォーマー容器に充填し、洗浄料を得た。
【0085】
実施例14の洗浄料は、「洗い流し直後の保湿感」、「保湿感の持続」、「べたつきのなさ」に優れた洗浄料であった。
【0086】
参考例15:シャンプー
(成分) (質量%)
1.EDTA−2Na 0.2
2.安息香酸ナトリウム 0.5
3.クエン酸 0.5
4.精製水 残量
5.プロピレングリコール 0.5
6.1,3−ブチレングリコール 0.3
7.パラオキシ安息香酸メチル 0.3
8.ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム 20
9.ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液 13
10.ポリクオタニウム−10 0.3
11.ポリクオタニウム−7 1
12.PPG−2コカミド 0.1
13.フェノキシエタノール 0.2
14.ヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油※8 0.05
15.L−メントール 0.1
16.香料 0.5
17.製造例1の腐植土抽出物 0.02
※8:テクノール MH(抱水力105%)(横関油脂社製)
【0087】
(製造方法)
A:成分1〜11を均一に混合する。
B:Aに成分12〜17を添加し、均一に混合する。
C:上記混合物をディスペンサー容器に充填し、シャンプーを得た。
【0088】
実施例15のシャンプーは、「洗い流し直後の保湿感」、「保湿感の持続」、「べたつきのなさ」に優れた洗浄料であった。
【0089】
実施例16:ヘアコンディショナー
(成分) (質量%)
1.セトステアリルアルコール 2
2.ベヘニルアルコール 2.5
3.モノステアリン酸グリセリル 0.5
4.ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油 0.5
5.オレイン酸エチル 0.5
6.ミリスチン酸イソプロピル 3
7.N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ
(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)※9 1.5
8.精製水 残量
9.プロピレングリコール 10
10.1,2−ペンタンジオール 0.1
11.塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 2
12.ポリクオタニウム−10 0.3
13.フェノキシエタノール 0.2
14.香料 0.7
15.アルガニアスピノサ核油 0.01
16.サフラワー油 0.02
17.製造例1の腐植土抽出物 0.015
※9:エルデュウ PS−306(味の素社製)(抱水力470%)
【0090】
(製造方法)
A:成分1〜7を均一に混合溶解する。
B:成分8〜12を均一に加熱溶解する。
C:BにAを加え、乳化する。
D:Cに成分13〜17を添加し、均一に混合する。
E:上記混合物をディスペンサー容器に充填し、ヘアコンディショナーを得た。
【0091】
実施例16のヘアコンディショナーは、「洗い流し直後の保湿感」、「保湿感の持続」、「べたつきのなさ」に優れたものであった。
【0092】
参考例17 :ヘアトリートメントローション
(成分) (質量%)
1.精製水 残量
2.グリシン 1
3.ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油 0.4
4.セトステアリルアルコール 1
5.ダイマージリノール酸
ダイマージリノレイルビスイソステアリル ※10 0.5
6.トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.5
7.ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 2.5
8.ジメチコン 2.5
9.パラメトキシケイ皮−2−エチルヘキシル 0.2
10.4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン 0.2
11.トリプロピレングリコール 0.5
12.塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.5
13.パラオオキシ安息香酸メチル 0.05
14.製造例1の腐植土抽出物 0.015
15.1,3−ブチレングリコール 5
16.香料 0.02
※10:PLANDOOL−G(抱水力200%)(日本精化社製)
【0093】
(製造方法)
A:成分1を加熱する。
B:成分2〜13を混合溶解する。
C:AにBを添加して均一に混合し、成分14〜16を添加混合する。
D:Cをミストディスペンサー容器に充填し、ヘアトリートメントローションを得た。
【0094】
実施例17のヘアトリートメントローションは、「塗布直後の保湿感」、「保湿感の持続」、「べたつきのなさ」に優れたものであった。
【0095】
実施例18:ヘアミルク
(成分) (質量%)
1.塩化ジステアリルジメチルアンモニウム 0.5
2.塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.5
3.セトステアリルアルコール 2
4.ベヘニルアルコール 1
5.ワセリン 1
6.パルミチン酸2−エチルヘキシル 1
7.パルミチン酸セチル 1
8.メチルフェニルポリシロキサン 0.5
9.テトラデシルドデカノール 2.5
10.N−ラウロイル−L−グルタミン酸
ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)※1 0.5
11.N−ラウロイル−L−グルタミン酸
ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)※7 0.5
12.N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジオクチルドデシル ※11 0.5
13.N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/
ベヘニル/オクチルドデシル)※12 0.5
14.N−ラウロイルサルコシンイソプロピル ※13 1
15.(ビスブチロキシアモジメチコン/
PEG−60)コポリマー ※14 1.1
16.2−エチルヘキサン酸セチル 1.1
17.エタノール 2
18.香料 0.3
19.フェノキシエタノール 0.5
20.製造例1の腐植土抽出物 1.5
21.精製水 残量
※11:AMITER LG−2000(日本エマルジョン社製)
※12:エルデュウPS−304(抱水力420%)(味の素社製)
※13:エルデュウSL−205(抱水力200%)(味の素社製)
※14:Silstyle 401(東レ・ダウコーニング社製)中のアミノポリエー
テル変性オルガノポリシロキサン。配合%は純分の量で表示した。
【0096】
(製造方法)
A:成分1〜14を80℃に加熱し、混合する。
B:成分20〜21を80℃に加熱し、混合する。
C:BにAを添加し、乳化する。
D:Cを冷却する。
E:Dに成分15〜19を順次添加し、均一混合して、ヘアミルクを得た。
【0097】
実施例18のヘアミルクは、「塗布直後の保湿感」、「保湿感の持続」、「べたつきのなさ」に優れた乳液であった。
【0098】
実施例19:ヘアワックス(O/W型)
(成分) (質量%)
1.モノステアリン酸ポリオキシエチレン(55E.O.) 2.5
2.ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(30E.O.) 0.5
3.ベヘニルアルコール 1
4.セトステアリルアルコール 2
5.キャンデリラワックス 2
6.マイクロクリスタリンワックス 2
7.パラフィンワックス 2
8.デキストリン脂肪酸エステル 1
9.パルミチン酸セチル 2
10.ワセリン 1
11.トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 5
12.流動パラフィン 5
13.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 1
14.N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ
(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)※9 2
15.精製水 残量
16.1,3−ブチレングリコール 5
17.トリプロピレングリコール 1
18.製造例1の腐植土抽出物 0.8
19.グリシン 0.2
20.フェノキシエタノール 0.5
21.香料 0.1
【0099】
(製造方法)
A:成分1〜14を80℃にて均一混合する。
B:Aに成分15〜19を加え均一に混合する。
C:冷却後、Bに成分20、21を添加混合しヘアワックスを得た。
【0100】
実施例19のヘアワックス(O/W型)は、「塗布直後の保湿感」、「保湿感の持続」、「べたつきのなさ」に優れた乳液であった。
【0101】
実施例20:軟膏
(成分) (質量%)
1.ステアリルアルコール 18.0
2.モクロウ 20.0
3.ポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸エステル 0.3
4.トコフェロール 0.1
5.ワセリン 40.0
6.N−ラウロイル−L−グルタミン酸
ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)※1 0.5
7.リノール酸エチル 0.5
8.パルミチン酸メチル 0.5
9.精製水 残量
10.グリセリン 10.0
11.製造例1の腐植土抽出物 0.5
【0102】
(製造方法)
A:成分1〜8を70℃で均一に混合する。
B:成分9〜11を70℃に加温する。
C:AにBを加え乳化し、軟膏を得た。
【0103】
実施例20の軟膏は、「塗布直後の保湿感」、「保湿感の持続」、「べたつきのなさ」に優れた軟膏であった。