特許第6653544号(P6653544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6653544
(24)【登録日】2020年1月30日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】超音波診断装置及びその制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20200217BHJP
【FI】
   A61B8/14
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-187700(P2015-187700)
(22)【出願日】2015年9月25日
(65)【公開番号】特開2017-60587(P2017-60587A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2018年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100115462
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】神山 直久
【審査官】 森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/097090(WO,A1)
【文献】 特開2008−212680(JP,A)
【文献】 特開2002−095640(JP,A)
【文献】 特開2012−161559(JP,A)
【文献】 特開2015−136467(JP,A)
【文献】 特表2016−501605(JP,A)
【文献】 特開平05−277109(JP,A)
【文献】 特開2011−229547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00−8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元空間における被検体に対して超音波の送受信を行なう超音波プローブであって、発光部が設けられた超音波プローブと、
該超音波プローブによって形成される超音波の送受信面の前記三次元空間における位置座標を検出する位置検出部と、
該位置検出部で検出された送受信面の位置座標に基づいて、前記送受信面の位置が予め定められた位置になったか否かを判定する判定部と、
該判定部によって、前記送受信面の位置が予め定められた位置になったと判定された場合に、前記発光部の発光状態を変化させる発光制御部と、
前記三次元空間において設定された前記被検体の注目部分と、前記位置検出部によって前記三次元空間における位置座標が検出された前記送受信面との距離を算出する距離算出部と、
を備え
前記判定部は、前記距離算出部で算出された距離が予め定められた距離になった場合に、前記送受信面の位置が予め定められた位置になったと判定し、
前記予め定められた距離は、複数の異なる距離であり、
前記発光制御部は、前記複数の異なる距離に応じて、前記発光部の発光状態を変化させる、超音波診断装置。
【請求項2】
三次元空間における被検体に対して超音波の送受信を行なう超音波プローブであって、発光部が設けられた超音波プローブと、
該超音波プローブによって形成される超音波の送受信面の前記三次元空間における位置座標を検出する位置検出部と、
該位置検出部で検出された送受信面の位置座標に基づいて、前記送受信面の移動速度が予め定められた速度になったか否かを判定する判定部と、
前記発光部の発光状態を変化させる発光制御部と、
前記超音波プローブによって得られた超音波のエコー信号に基づいて、超音波画像のデータを作成するデータ作成部と、
二つのフレームの超音波画像のデータに対して相関演算を行なって、超音波画像の動きを検出する動き検出部と、
を備え
前記判定部は、前記送受信面の移動速度が零になった場合に、前記送受信面の移動速度が予め定められた速度になったと判定し、なおかつ前記動き検出部によって超音波画像の動きが検出されたか否かを判定し、
前記発光制御部は、前記判定部によって、前記送受信面の移動速度が零になったと判定され、なおかつ前記動き検出部によって超音波画像の動きが検出されないと判定された場合に、前記発光部の発光状態を変化させる、超音波診断装置。
【請求項3】
前記位置検出部は、前記超音波プローブに設けられて、前記三次元空間に設置された磁気発生部で発生する磁気を検出する磁気センサを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記発光部の発光状態の変化は、輝度の変化又は色の変化であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記発光部は、複数の発光部であり、該複数の発光部の発光状態の変化は、発光する発光部の数の変化であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
三次元空間における被検体に対して超音波の送受信を行なう超音波プローブであって、発光部が設けられた超音波プローブと、
プロセッサーと、
を備える超音波診断装置の制御プログラムであって、
前記プロセッサーに、
前記超音波プローブによって形成される超音波の送受信面の前記三次元空間における位置座標を検出する位置検出機能と、
該位置検出機能で検出された送受信面の位置座標に基づいて、前記送受信面の位置が予め定められた位置になったか否かを判定する判定機能と、
該判定機能によって、前記送受信面の位置が予め定められた位置になったと判定された場合に、前記発光部の発光状態を変化させる発光制御機能と、
前記三次元空間において設定された前記被検体の注目部分と、前記位置検出機能によって前記三次元空間における位置座標が検出された前記送受信面との距離を算出する距離算出機能と、を実行させるものであり、
前記判定機能は、前記距離算出機能で算出された距離が予め定められた距離になった場合に、前記送受信面の位置が予め定められた位置になったと判定し、
前記予め定められた距離は、複数の異なる距離であり、
前記発光制御機能は、前記複数の異なる距離に応じて、前記発光部の発光状態を変化させる、超音波診断装置の制御プログラム。
【請求項7】
三次元空間における被検体に対して超音波の送受信を行なう超音波プローブであって、発光部が設けられた超音波プローブと、
プロセッサーと、
を備える超音波診断装置の制御プログラムであって、
前記プロセッサーに、
前記超音波プローブによって形成される超音波の送受信面の前記三次元空間における位置座標を検出する位置検出機能と、
該位置検出機能で検出された送受信面の位置座標に基づいて、前記送受信面の移動速度が予め定められた速度になったか否かを判定する判定機能と、
前記発光部の発光状態を変化させる発光制御機能と、
前記超音波プローブによって得られた超音波のエコー信号に基づいて、超音波画像のデータを作成するデータ作成機能と、
二つのフレームの超音波画像のデータに対して相関演算を行なって、超音波画像の動きを検出する動き検出機能と、を実行させるものであり、
前記判定機能は、前記送受信面の移動速度が零になった場合に、前記送受信面の移動速度が予め定められた速度になったと判定し、なおかつ前記動き検出機能によって超音波画像の動きが検出されたか否かを判定し、
前記発光制御機能は、前記判定機能によって、前記送受信面の移動速度が零になったと判定され、なおかつ前記動き検出機能によって超音波画像の動きが検出されないと判定された場合に、前記発光部の発光状態を変化させる、超音波診断装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作者が手元を見たまま超音波プローブによる超音波の送受信を行なう場合であっても、超音波検査や治療などの質及び効率等を向上させることができる超音波診断装置及びその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置においては、被検体の内部の超音波画像をリアルタイム(real time)で観察することができる。操作者は、超音波画像が表示される表示部を観察しているが、被検体に対する超音波の送受信を行なっている超音波プローブを持つ手元を見る必要性が生じる場合がある。例えば、超音波ガイド(guide)下で穿刺を行なう場合、操作者は、穿刺針の刺入位置や角度について、実際の穿刺針を見たり、穿刺針と超音波プローブの位置関係を見たりして確認することが必要である。また、操作者が、被検体の身体の傾き、呼吸及び痙攣等の動きなどを観察しながら、超音波診断装置に超音波画像を記録する場合、超音波画像と手元を交互に見ながら検査を行なうことが必要である。さらに、操作者が、被検体の肋間に超音波プローブを位置させて検査を行なう場合において、肋間が狭いために所望の送受信面を見つけるのが困難な場合にも、超音波画像と手元を交互に見ながら検査を行なうことが必要である。
【0003】
ところで、操作者が超音波画像において、例えば穿刺針を刺入する目標部分に、マーカー(marker)を設定する場合がある。このマーカーの設定は、穿刺針を刺入する前に行われる。従って、操作者は、先ず所望の断面についての超音波画像を表示させた後に、その超音波画像においてマーカーを設定する。超音波プローブには、三次元空間における位置を検出する位置センサが設けられており、超音波画像においてマーカーが設定されることにより、そのマーカーの三次元空間における位置が記憶される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
操作者は、マーカーを設定した後に、穿刺針を刺入する準備を行なうために、一旦超音波プローブを置く。そして、穿刺針を刺入する準備が整うと、マーカーが設定された位置が超音波の送受信面に含まれるよう超音波プローブの位置及び角度を調節して、超音波画像に再びマーカーを表示させる。
【0005】
また、超音波プローブから送信された超音波が、被検体内にせん断波を発生させ、このせん断波の伝搬速度が計測されることにより、被検体の生体組織の弾性を計測する手法がある(例えば、特許文献2参照)。この計測手法においては、操作者が超音波プローブを静止するとともに、被検体が息止めを行なうことによって、超音波画像が静止した後に、操作者は、超音波プローブから超音波を送信してせん断波を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−161598号公報
【特許文献2】特開2015−150379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
操作者は、上述のように、超音波画像に再びマーカーを表示させるために超音波プローブの位置を調整したり、せん断波を用いた弾性計測を行なうために超音波プローブを静止させたりする場合に、手元を見る必要性が生じる場合がある。従って、操作者が手元を見ていても、超音波の送受信面の位置や超音波の送受信面の移動速度が、予め定められた位置又は速度になったことを知ることができれば、超音波検査や治療などの質及び効率等を向上させることが期待される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するためになされた一の観点の発明は、三次元空間における被検体に対して超音波の送受信を行なう超音波プローブであって、発光部が設けられた超音波プローブと、この超音波プローブによって形成される超音波の送受信面の前記三次元空間における位置座標を検出する位置検出部と、この位置検出部で検出された送受信面の位置座標に基づいて、前記送受信面の位置又は前記送受信面の移動速度が予め定められた位置又は速度になったか否かを判定する判定部と、この判定部によって、前記送受信面の位置又は前記送受信面の移動速度が予め定められた位置又は速度になったと判定された場合に、前記発光部の発光状態を変化させる発光制御部と、を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0009】
上記観点の発明によれば、前記超音波プローブに発光部が設けられており、この発光部の発光状態が、前記送受信面の位置又は前記送受信面の移動速度が予め定められた位置又は速度になったと判定された場合に変化する。従って、操作者は、手元を見たままでも、前記送受信面の位置又は前記送受信面の移動速度が予め定められた位置又は速度になったことを知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態における超音波診断装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図2】超音波プローブの拡大図である。
図3図1に示された超音波診断装置における表示処理部の詳細を示すブロック図である。
図4】制御部の機能の一部を示すブロック図である。
図5】マーカーが設定された超音波画像が表示された表示部を示す図である。
図6】第一実施形態の変形例における制御部の機能の一部を示すブロック図である。
図7】発光部の他例が設けられた超音波プローブの拡大図である。
図8】発光部の他例が設けられた超音波プローブの拡大図である。
図9】第二実施形態において、図1に示された超音波診断装置におけるエコーデータ処理部の詳細を示すブロック図である。
図10】第二実施形態において、図1に示された超音波診断装置における表示処理部の詳細を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について説明する。図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信ビームフォーマ3、エコーデータ処理部4、表示処理部5、表示部6、操作部7、制御部8、記憶部9を備える。前記超音波診断装置1は、コンピュータ(computer)としての構成を備えている。
【0012】
超音波プローブ2は、アレイ状に配置された複数の超音波振動子(図示省略)を有して構成され、この超音波振動子によって三次元空間における被検体に対して超音波を送信し、そのエコー信号を受信する。
【0013】
超音波プローブ2には、例えばホール素子で構成される磁気センサ10(後述の図2では図示省略)が設けられている。この磁気センサ10により、前記三次元空間に設置された磁気発生部11から発生する磁気が検出されるようになっている。磁気発生部11は、例えば磁気発生コイルで構成される。
【0014】
磁気センサ10における検出信号は、表示処理部5へ入力されるようになっている。磁気センサ10における検出信号は、図示しないケーブルを介して表示処理部5へ入力されてもよいし、無線で表示処理部5へ入力されてもよい。磁気センサ10は、本発明における磁気センサの実施の形態の一例である。また、磁気発生部11は、本発明における磁気発生部の実施の形態の一例である。
【0015】
また、超音波プローブ2の表面には、図2に拡大して示すように、発光部12が設けられている。発光部12は、例えばLED(Light Emitting Diode)で構成される。本例では、発光部12は、超音波の送受信が行われる時に、超音波プローブ2において、操作者が把持する把持部2aの端部近傍に設けられている。発光部12は、本発明における発光部の実施の形態の一例である。
【0016】
送受信ビームフォーマ3は、超音波プローブ2から所定の走査条件で超音波を送信するための電気信号を、制御部8からの制御信号に基づいて超音波プローブ2に供給する。また、送受信ビームフォーマ3は、超音波プローブ2で受信したエコー信号について、A/D変換、整相加算処理等の信号処理を行ない、信号処理後のエコーデータを前記エコーデータ処理部4へ出力する。
【0017】
エコーデータ処理部4は、送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに対し、超音波画像を作成するための処理を行なう。例えば、エコーデータ処理部4は、対数圧縮処理、包絡線検波処理等のBモード処理を行ってBモードデータを作成する。
【0018】
表示処理部5は、図3に示すように、位置特定部51、マーカー設定部52及び画像表示制御部53を有する。位置特定部51は、磁気センサ10からの磁気検出信号に基づいて、磁気発生部11を原点とする三次元空間の座標系における超音波プローブ2の位置座標及び向きを特定する。そして、位置特定部51は、超音波プローブ2の位置座標及び向きに基づいて、超音波プローブ2によって形成される超音波の送受信面の位置座標を、前記三次元空間の座標系において特定する。位置特定部51及び磁気センサ10は、本発明における位置検出部の実施の形態の一例である。位置特定部51及び磁気センサ10を含む位置検出部の位置検出機能は、本発明における位置検出機能の実施の形態の一例である。
【0019】
マーカー設定部52は、表示部6に表示されたBモード画像などの超音波画像に、マーカーMKを設定する(図5参照)。マーカー設定部52は、操作部7における操作者の入力を受けて、マーカーMKを設定する。操作者は、超音波画像における被検体の注目部分にマーカーMKを設定する。
【0020】
画像表示制御部53は、エコーデータ処理部4から入力されたデータを、スキャンコンバータ(Scan Converter)によって走査変換して超音波画像データを作成する。例えば、画像表示制御部53は、Bモードデータを走査変換してBモード画像データを作成する。画像表示制御部53及びエコーデータ処理部4は、本発明におけるデータ作成部の実施の形態の一例である。
【0021】
また、画像表示制御部54は、超音波画像データに基づいて表示部6に超音波画像を表示させる。超音波画像は、例えば前記Bモード画像データに基づくBモード画像である。
【0022】
前記表示部6は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイなどである。
【0023】
操作部7は、ユーザーが指示や情報を入力するデバイスである。例えば、操作部7は、特に図示しないが、ボタンやキーボード(keyboard)などを含み、さらにトラックボール(trackball)等のポインティングデバイス(pointing device)などを含んでいる。
【0024】
制御部8は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーである。制御部8は、記憶部9に記憶されたプログラムを読み出し、超音波診断装置1の各部を制御する。例えば、制御部8は、記憶部9に記憶されたプログラムを読み出し、読み出されたプログラムにより、送受信ビームフォーマ3、エコーデータ処理部4及び表示処理部5の機能を実行させる。
【0025】
制御部8は、送受信ビームフォーマ3の機能のうちの全て、エコーデータ処理部4の機能のうちの全て及び表示処理部5の機能のうちの全ての機能をプログラムによって実行してもよいし、一部の機能のみをプログラムによって実行してもよい。制御部8が一部の機能のみを実行する場合、残りの機能は回路等のハードウェアによって実行されてもよい。
【0026】
なお、送受信ビームフォーマ3、エコーデータ処理部4及び表示処理部5の機能は、回路等のハードウェアによって実現されてもよい。
【0027】
また、制御部8は、図4に示す判定部81による判定機能及び発光制御部82による発光制御機能をプログラムによって実行させる。判定部81は、位置特定部51で特定された超音波の送受信面の位置座標に基づいて、前記送受信面の位置が予め定められた位置になったか否かを判定する。詳細は後述する。判定部81は、本発明における判定部の実施の形態の一例である。また、判定部81による判定機能は、本発明における判定機能の実施の形態の一例である。
【0028】
発光制御部82は、発光部12の発光状態を変化させる。詳細は後述する。発光制御部82は、本発明における発光制御部の実施の形態の一例である。また、発光制御部82による発光制御機能は、本発明における発光制御機能の実施の形態の一例である。
【0029】
記憶部9は、HDD(Hard Disk Drive:ハードディスクドライブ)や、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体メモリ(Memory)などである。
【0030】
超音波診断装置1は、記憶部9として、HDD、RAM及びROMの全てを有していてもよい。また、記憶部9は、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)などの可搬性の記憶媒体であってもよい。
【0031】
制御部8によって実行されるプログラムは、HDDやROMなどの非一過性の記憶媒体に記憶されている。また、前記プログラムは、CDやDVDなどの可搬性を有し非一過性の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0032】
さて、本例の超音波診断装置1の作用について説明する。ここでは、穿刺針を用いて、腫瘍などの患部を焼灼する場合の作用について説明する。
【0033】
先ず、操作者は、図5に示すように超音波画像UIにおいてマーカーMKを設定する。操作者は、先ず腫瘍など穿刺針を刺入する対象を含む所望の断面Dについての超音波画像UIが表示部6に表示されるように超音波プローブ2の位置や角度を調節する。
【0034】
所望の断面Dについての超音波画像UIが表示されると、操作者は、操作部7においてマーカーMKを表示させる入力を行なう。この入力に基づいて、マーカー設定部52は、表示部6にマーカーMKを表示させる。そして、操作者が操作部7のトラックボール等を用いて、マーカーMKを移動させる入力を行なうと、この入力に基づいて、マーカー設定部52は、マーカーMKを移動させる。操作者が、穿刺針を刺入する対象の位置において、マーカーMKの位置を確定させる入力を操作部7において行なうと、マーカー設定部52は、磁気発生部11を原点とする三次元空間におけるマーカーMKの位置座標を特定し、その位置座標を記憶部9に記憶させる。
【0035】
マーカー設定部52は、位置特定部51によって特定された超音波の送受信面の位置座標と、超音波画像UIにおけるマーカーMKの位置とに基づいて、三次元空間におけるマーカーMKの位置座標を特定する。
【0036】
次に操作者は、穿刺針を刺入する準備を行なうため、所望の断面Dにおける超音波の送受信を中断して、超音波プローブ2を置く。穿刺針を刺入する準備が完了すると、操作者は、再び所望の断面Dについての超音波画像UIが表示されるように超音波プローブ2の位置や角度を調節する。
【0037】
判定部81は、位置特定部51によって前記三次元空間における位置座標が検出された超音波の送受信面に、前記三次元空間において設定されたマーカーMKの位置座標が含まれるか否かを判定する。そして、判定部81は、超音波の送受信面にマーカーMKの位置座標が含まれる場合に、超音波の送受信面の位置が予め定められた位置になったと判定する
【0038】
判定部81によって、超音波の送受信面にマーカーMKの位置座標が含まれると判定された場合、発光制御部82は発光部12を発光させる。一方、判定部81によって、超音波の送受信面にマーカーMKの位置座標が含まれていないと判定された場合、発光制御部82は発光部12を発光させない。従って、超音波の送受信面にマーカーMKの位置座標が含まれるか否かにより、発光制御部82は発光部12の発光状態を変化させる。
【0039】
操作者は、発光部12が発光したことを確認すると、穿刺針による焼灼治療を開始する。
【0040】
本例によれば、操作者は、表示部6を見ずに手元を見ていても、発光部12が発光したことによって、超音波の送受信面が、マーカーMKが設定された位置を含む断面になったことを知ることができる。従って、操作者は、穿刺針自体や、穿刺針と超音波プローブ2の位置関係を見たりして、穿刺針の刺入位置や角度を確認したい場合に、超音波画像を見なくても、穿刺針を刺入する対象を含む断面に、超音波の送受信面が位置していることを知ることができるので、超音波検査や治療などの質及び効率等を向上させることが期待される。
【0041】
次に、第一実施形態の変形例について説明する。本例においては、制御部8は、判定部81による判定機能及び発光制御部82による発光制御機能の他、図6に示す距離算出部83による距離算出機能をプログラムによって実行させる。
【0042】
距離算出部83は、磁気発生部11を原点とする三次元空間に設定されたマーカーMKの位置座標と、位置特定部51によって特定された超音波の送受信面の位置との距離を算出する。ここでの距離は、例えばマーカーMKの位置座標と送受信面の位置との最短距離である。
【0043】
判定部81は、距離算出部83で算出された距離Xが、予め定められた距離Xth以下(X≦Xth)になったか否かを判定する。判定部81は、距離算出部83で算出された距離Xが、予め定められた距離Xth以下になった場合に、超音波の送受信面の位置が予め定められた位置になったと判定する。
【0044】
判定部81により、X≦Xthであると判定された場合(ただし、X≠0)、発光制御部82は発光部12を第一の輝度Br1で発光させる。一方、判定部81により、X>Xthであると判定された場合、発光制御部82は発光部12を発光させない。
【0045】
また、判定部81によって、超音波の送受信面にマーカーMKの位置座標が含まれると判定された場合、発光制御部82は第二の輝度Br2で発光部12を発光させる。第二の輝度Br2は第一の輝度Br1よりも高輝度であるものとする(Br2>Br1)。
【0046】
この変形例によれば、超音波の送受信面が、マーカーMKが設定された位置に近づくと第一の輝度Br1で発光部12が発光し、超音波の送受信面が、マーカーMKが設定された位置を含むと第二の輝度Br2で発光部12が発光する。このように、超音波の送受信面とマーカーMKの位置座標との距離に応じて、発光部12の発光状態が変化するので、操作者は手元を見ながら、発光部12の発光状態に注目することにより、超音波の送受信面が、穿刺針の穿刺対象を含むように、より容易に位置させることができる。
【0047】
発光部12は、異なる色で発光するようになっていてもよい。この場合、上述において、超音波の送受信面とマーカーMKの位置座標との距離に応じて、発光部12の発光色が変化してもよい。すなわち、判定部81により、X≦Xthであると判定された場合(ただし、X≠0)、発光制御部82は発光部12を第一の色Cl1で発光させる。また、判定部81によって、超音波の送受信面にマーカーMKの位置座標が含まれると判定された場合、発光制御部82は第二の色Cl2で発光部12を発光させる。
【0048】
発光部12は、LEDではなく、図7に示すように、液晶ディスプレイ121によって構成されていてもよい。この場合、液晶ディスプレイ121の発光色が変化するようになっていてもよい。
【0049】
また、発光部12は、図8に示すように、複数の発光部12A,12B,12C,12D,12Eによって構成されていてもよい。この場合、上述の予め定められた距離Xthは、複数の異なる距離Xth1,Xth2,Xth3,Xth4(Xth1>Xth2>Xth3>Xth4>0)であってもよい。判定部81は、距離算出部83で算出された距離Xが、距離Xth1,Xth2,Xth3,Xth4以下になったか否かを判定する。
【0050】
判定部81により、Xth2<X≦Xth1であると判定された場合、発光制御部82は発光部12Aを発光させ、他の発光部12B〜12Eは発光させない。判定部81により、Xth3<X≦Xth2であると判定された場合、発光制御部82は発光部12A,12Bを発光させ、他の発光部12C〜12Eは発光させない。判定部81により、Xth4<X≦Xth3であると判定された場合、発光制御部82は発光部12A〜12Cを発光させ、他の発光部12D,12Eは発光させない。判定部81により、0<X≦Xth4であると判定された場合、発光制御部82は発光部12A〜12Dを発光させ、他の発光部12Eは発光させない。
【0051】
また、判定部81によって、超音波の送受信面にマーカーMKの位置座標が含まれると判定された場合(X=0)、発光制御部82は全ての発光部12A〜12Eを発光させる。
【0052】
このように複数の発光部12A〜12Eの発光状態が変化することにより、操作者は、手元を見ながら、超音波の送受信面とマーカーMKの位置座標との距離のより細かい変化を知ることができる。
【0053】
ただし、一つの発光部12のみが設けられている場合であっても、発光部12が異なる色で発光するようになっていることにより、超音波の送受信面とマーカーMKの位置座標との距離のより細かい変化を知ることができる。すなわち、判定部81が、距離算出部83で算出された距離Xが距離Xth1,Xth2,Xth3,Xth4以下になったか否かを判定し、判定結果に応じて、発光制御部82が発光部12を異なる色で発光させる。
【0054】
予め定められた距離Xthの数をより多くすることにより、発光部12の輝度や色が連続的に変化するようにしてもよい。
【0055】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。ただし、第一実施形態と同一事項については説明を省略する。
【0056】
本例では、超音波プローブから送信された超音波が、被検体内にせん断波を発生させ、このせん断波の伝搬速度が計測される。具体的には、図9に示すように、エコーデータ処理部4は、Bモード処理部41、伝搬速度算出部42及び弾性値算出部43を有する。Bモード処理部41は、送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに対し、対数圧縮処理、包絡線検波処理等のBモード処理を行い、Bモードデータを作成する。
【0057】
伝搬速度算出部42は、送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに基づいて、前記せん断波の伝搬速度を算出する。弾性値算出部43は、プッシュパルスが送信された生体組織の弾性値を、前記伝搬速度に基づいて算出する。前記伝搬速度及び前記弾性値は、生体組織の弾性に関する計測値である。
【0058】
ちなみに、前記伝搬速度のみが算出され、前記弾性値は必ずしも算出されなくてもよい。前記伝搬速度のデータ又は前記弾性値のデータを、弾性データと云うものとする。
【0059】
また、図10に示すように、表示処理部5は、動き検出部54を有している。この動き検出部54は、被検体における同一部分についての時間的に異なる二つのフレームの超音波画像データに対して画像の相関演算を行なって、超音波画像の動きを検出する。超音波画像の動きには、超音波プローブ2の移動に伴う動きと、心拍などによる生体組織自体の動きとが含まれる。動き検出部54は、超音波画像に設定された関心領域を対象にして画像の相関演算を行ない、超音波画像の動きを検出する。動き検出部54は、本発明における動き検出部の実施の形態の一例である。
【0060】
後述するように、本例では、判定部81は、位置特定部51で特定された超音波の送受信面の位置座標に基づいて、送受信面の移動速度が予め定められた速度になったか否かを判定する。
【0061】
本例の超音波診断装置1の作用について説明する。先ず、操作者は、表示部6にBモード画像を表示させて、生体組織の弾性を計測したい所望の断面D′を探す。操作者は、所望の断面D′を見つけると、超音波プローブ2を静止させる。判定部81は、位置特定部51によって特定される超音波の送受信面の位置に基づいて、超音波の送受信面の移動速度が零になったか否かを判定する。そして、判定部81は、超音波の送受信面の移動速度が零になった場合に、超音波の送受信面の移動速度が予め定められた速度になったと判定する。ちなみに、送受信面の移動は、例えば、操作者が、超音波プローブ2を体表面上において移動させたり、超音波プローブ2を煽ったりすることにより生じる。
【0062】
また、判定部81は、動き検出部54によって超音波画像の動きが検出されたか否かを判定する。
【0063】
判定部81によって、超音波の送受信面の移動速度が零になったと判定され、なおかつ動き検出部54によって超音波画像の動きが検出されないと判定された場合(第一の場合)、発光制御部82は発光部12を発光させる。一方、判定部81によって、超音波の送受信面の移動速度が零になっていないと判定されるか、または動き検出部54によって超音波画像の動きが検出されたと判定された場合(第二の場合)、発光制御部82は発光部12を発光させない。従って、超音波の送受信面の移動速度が零になったか否か及び呼吸等による生体組織自体の動きがなくなったか否かにより、発光制御部82は発光部12の発光状態を変化させる。
【0064】
操作者は、発光部12が発光したことを確認すると、被検体の生体組織にせん断波を発生させる超音波(プッシュパルス)を超音波プローブ2から送信させる入力を、操作部7において行なう。この入力により、せん断波を発生させる超音波が送信され、せん断波の伝搬速度が伝搬速度算出部42によって算出される。また、伝搬速度に基づいて、生体組織の弾性値が弾性値算出部43によって算出される。
【0065】
本例によれば、操作者は、発光部12が発光したことによって、超音波プローブ2が静止状態にあり、生体組織の動きがないことを知ることができるので、せん断波を発生させる超音波を送信するタイミングを知ることができる。
【0066】
以上、本発明を前記実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、第一実施形態において、超音波の送受信面にマーカーMKの位置座標が含まれている場合と含まれていない場合とで、発光部12の発光色や輝度が変化してもよい。また、第二実施形態において、超音波の送受信面の移動速度が零になったと判定され、なおかつ動き検出部54によって超音波画像の動きが検出されないと判定された場合(第一の場合)と、超音波の送受信面の移動速度が零になっていないと判定されるか、または動き検出部54によって超音波画像の動きが検出されたと判定された場合(第二の場合)とで、発光部12の発光色や輝度が変化してもよい。
【0067】
また、第一実施形態において、マーカーMKは複数設定されてもよい。この場合、マーカーMKの色が異なっていてもよい。マーカーMKの色が異なっている場合、マーカーMKの色と同じ色で発光部12が発光してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 超音波診断装置
2 超音波プローブ
10 磁気センサ
11 磁気発生部
12 発光部
51 位置特定部
54 動き検出部
81 判定部
82 発光制御部
83 距離算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10