(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、例えばブラシレスモータなどに用いられるステータのステータコアは、薄板状の電磁鋼板を多数積層して形成されている。
【0003】
このようなステータコアにおいて、ロータの外周面と対向する例えば一対の磁極部であるコア歯部のうち、ロータの回転方向に対してロータの磁極と最初に接近する前縁部を、ロータの回転方向に対してロータの磁極と最後に接近する後縁部に対して相対的に厚く形成するとともに、ロータとのエアギャップを大きくすることで、前縁部での磁気飽和を抑制し、後縁部でのインダクタンスを減少することで、強力で効率的なブラシレスモータを実現する構成が知られている。
【0004】
しかしながら、このような構成とした場合、コア歯部の後縁部は相対的に薄くなるので、積層した電磁鋼板が、製造過程で捲れたり剥がれたりしやすくなる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態の構成を
図1ないし
図5を参照して説明する。
【0010】
図1において、11はステータコアを示し、このステータコア11は、例えば電気掃除機やブロワなどに用いられる、
図4および
図5に示す電動送風機12に適用されるものである。
【0011】
ここで、電動送風機12は、上記ステータコア11が用いられる電動機13と、この電動機13より回転されるファンである遠心ファン14とを一体的に備えている。そして、電動機13は、ロータ(回転子)21と、上記ステータコア11を備えロータ21を回転させる力を発生させるステータ(固定子)22と、ロータ21の回転位置を検出する検出部23と、ステータ22で発生させる力を制御する制御部24と、ステータ22および検出部23を位置決めしつつ固定する固定部材25と、この固定部材25を介してステータ22および検出部23が固定される被固定部材であるフレーム26とを備えている。
【0012】
ロータ21は、一端側に遠心ファン14が取り付けられる出力軸(シャフト)である細長い円柱状の回転軸28と、この回転軸28の他端側に一体的に固定される磁石部である円筒状のロータ本体29と、このロータ本体29よりも一端側の位置で回転軸28を回転可能に保持するベアリング部30とを備えている。
【0013】
ロータ本体29には、図示しない永久磁石が埋め込まれ、外周の略半分(略半周分)が例えばN極の(一の)磁極、残りの略半分(略半周分)がS極の(他の)磁極となっている。すなわち、このロータ本体29は、略等しい大きさでかつ互いに極性が異なる一対の磁極を周方向(回転方向)に隣接して備えている。
【0014】
ステータ22は、上記ステータコア11と、このステータコア11に一体成形されたステータ絶縁である絶縁体32とを備えており、この絶縁体32に銅線などの線材33が巻き付けられて一および他のコイル35,36が構成されている。
【0015】
ステータコア11は、
図1ないし
図3に示すように、所定形状に形成された薄板状の鋼板である珪素鋼板などの電磁鋼板40を互いにロータ21(ロータ本体29)の軸方向に積層して形成されており、離間された対をなす一および他のコア部41,42の一端部間が連結部43により連結され、略U字状(略C字状)に形成されて、両側面が略平坦状(平面状)となっている。そして、一および他のコア部41,42の他端部側と、連結部43とのそれぞれに、ステータ22をフレーム26にねじ44(
図4)によって固定するための丸孔状の通孔45がそれぞれ厚み方向に貫通して設けられている。
【0016】
一および他のコア部41,42の自由端部側である他端部には、(一および他の)磁極部である一および他のコア歯部47,48が形成されている。なお、以下、
図1などに示す上下方向(矢印U側および矢印D側)および左右方向(矢印L側および矢印R側)を基準として方向を説明する。
【0017】
一および他のコア歯部47,48は、一および他のコア部41,42の他端部にて互いに対向するように(一のコア部41の右側および他のコア部42の左側に)突設されている。これら一および他のコア歯部47,48は、それぞれ円弧状に湾曲して互いに対向しロータ21を回転させるための磁気をロータ本体29(一対の磁極)に作用させる対向面である一および他の磁気作用面51,52を有しているとともに、一および他のスロット開口部53,54を介して互いに左右へと略等しい距離で離間されている。そして、これら一および他のコア歯部47,48は、一および他の磁気作用面51,52の円弧の中心の位置が上下方向に互いに僅かにずれて配置され、本実施形態では、一のコア歯部47(一の磁気作用面51)に対して他のコア歯部48(他の磁気作用面52)が上方にずれている。そのため、一および他のコア歯部47,48は、ロータ21のロータ本体29の外周面に対して相対的に距離(空隙)が大きい(一および他の)前縁部56,57と、ロータ21のロータ本体29の外周面に対して相対的に距離(空隙)が小さい(一および他の)後縁部58,59とを備えている。すなわち、一のコア歯部47の前縁部56は、一のコア歯部47の下端に位置し、後縁部58は、一のコア歯部47の上端に位置している。また、他のコア歯部48の前縁部57は、他のコア歯部48の上端に位置し、後縁部59は、他のコア歯部48の下端に位置している。
【0018】
前縁部56,57は、ロータ21(ロータ本体29)の回転方向の前側に位置する、換言すれば、ロータ21(ロータ本体29)の一対の磁極のいずれかに対して一および他のコア歯部47,48において最初に接近する部分であり、それぞれ左右方向に沿って直線状に延びる(一および他の)前側外郭である前側外側面61,62と、これら前側外側面61,62に対して略垂直、すなわち上下方向に沿って直線状に延びて一および他の磁気作用面51,52と連続しスロット開口部53,54の内縁部を構成する前側対向面63,64とにより区画されている。また、後縁部58,59は、ロータ21(ロータ本体29)の回転方向の後側に位置する、換言すれば、ロータ21(ロータ本体29)の一対の磁極のいずれかに対して一および他のコア歯部47,48において最後に接近する部分であり、それぞれ左右方向に沿って直線状に延びる(一および他の)後側外郭である後側外側面66,67と、これら後側外側面66,67に対して略垂直、すなわち上下方向に沿って直線状に延びて一および他の磁気作用面51,52と連続しスロット開口部53,54の内縁部を構成する後側対向面68,69とにより区画されている。そして、前縁部56,57および後縁部58,59は、それぞれロータ21の軸方向と交差(直交)する所定方向である上下方向の幅W(前側対向面63,64および後側対向面68,69の長さ)が互いに等しく設定されている。
【0019】
そして、ステータコア11は、後縁部58,59の位置に形成された(一および他の)かしめ部71,72の位置で電磁鋼板40が互いに固定されることにより形成されている。
【0020】
かしめ部71,72は、各電磁鋼板40を厚み方向に変形させて形成されており、例えば正面から見て長方形状(四角形状)となっている。これらかしめ部71,72は、各電磁鋼板40に対して、相対的に長い互いに対向する両側部71a,71aおよび両側部72a,72aが寸断され、かつ、相対的に短い互いに対向する両端部71b,71bおよび両端部72b,72bが連続するように切り起こし形成されている(
図2(b)および
図3)。すなわち、このかしめ部71,72の位置で、各電磁鋼板40は、一主面側が凹、他主面側が凸となっている。
【0021】
そして、かしめ部71,72は、一および他の磁気作用面51,52の所定方向である上下方向に沿う仮想的な接線L1と、後縁部58,59と一および他の磁気作用面51,52とが連続する位置、すなわち後側対向面68,69と一および他の磁気作用面51,52とが連続する角部から接線L1(上下方向)と直交する左右方向に延びる仮想線L2と、後縁部58,59の外郭、すなわち後側外側面66,67とにより囲まれる領域A1,A2に少なくとも一部が位置するように配置されている。本実施形態では、かしめ部71,72は、領域A1,A2内に半分以上の面積が位置し、両側部71a,71aおよび両側部72a,72aが左右方向に沿い、両端部71b,71bおよび両端部72b,72bが上下方向に沿って、かつ、後側対向面68,69の上下方向の中心位置と両端部71b,71bおよび両端部72b,72bの中心とが略一致するように配置されている。
【0022】
一および他のコイル35,36は、ステータコア11の一および他のコア歯部47,48(一および他の磁気作用面51,52)に互いに極性が異なる磁極を発生させる電磁石をなすものである。これら一および他のコイル35,36は、それぞれ図示しない端子部に対して電気的に接続されている。
【0023】
図4に示す検出部23は、例えばホールICなどを備えることでロータ21のロータ本体29の一対の磁極の極性を検出することによってロータ21の回転位置(回転角度)を検出する位置検出手段の機能、および、例えばサーミスタなどを備えることでステータ22(一および他のコイル35,36)の温度を検出する温度検出手段の機能などを有している。
【0024】
制御部24は、検出部23と電気的に接続され、検出部23の位置検出手段の機能により検出したロータ21の回転位置に応じて各端子部を介して一および他のコイル35,36に流れる電流の向きや通電時間を切り換える電流切換手段の機能を有しており、通電時間の切り換えによってロータ21の回転数を制御するようになっている。また、この制御部24は、検出部23の温度検出手段の機能により検出した一および他のコイル35,36の温度が所定以上である場合には、一および他のコイル35,36に流れる電流を遮断するなどしてステータ22(一および他のコイル35,36)を過熱に対して保護できる保護手段の機能を有している。そして、この制御部24は、例えばフレーム26以外の所定の位置に固定される。
【0025】
また、フレーム26は、円柱状の被固定部材本体であるフレーム本体75と、このフレーム本体75の周囲に位置する円筒状の外壁部76と、これらフレーム本体75と外壁部76とを連結する複数の整流フィンである整流部77とを一体に備えている。そして、外壁部76の内周面とフレーム本体75の外周面との間に、各整流部77が位置する流通路78が区画され、この流通路78の後側である他端側が、遠心ファン14から吹き出された空気を電動送風機12(電動機13)の外部へと排出する図示しない排気口となっている。
【0026】
一方、遠心ファン14は、電動機13の回転軸28の前端部に一体的に固定されている。この遠心ファン14は、一端部から他端部に向かって徐々に拡径する円筒状に形成され、一方向への回転によって空気を中心側から外周側へと整流するように構成されている。そして、この遠心ファン14はフレーム26に対して一体的に固定されるカバー部81により覆われており、このカバー部81の中央部には、吸込口82が開口されている。
【0027】
次に、上記一実施形態の製造方法を説明する。
【0028】
ステータコア11を製造する際には、まず、薄板状の母材(電磁鋼板)に対してかしめ部71,72を形成した後、所定形状に打ち抜くことで、複数の電磁鋼板40を形成する。
【0029】
次いで、これら電磁鋼板40を、それぞれのかしめ部71,72を位置合わせして互いに重ね、かしめ部71,72の凸側を凹側に圧入する(かしめる)ことで積層して固着する。このとき、かしめ部71,72を四角形状とし、両側部71a,71aおよび両側部72a,72aが寸断されていることにより、かしめ部71,72の両側部71a,71a間および両側部72a,72a間の寸法が確実に設定され、各電磁鋼板40の保持力が向上する。そして、この完成したステータコア11に対して絶縁体32を例えば一体成形し、この絶縁体32に対して線材33を巻回して一のコイル35および他のコイル36を形成するとともに、線材33を端子部に接続することで、ステータ22が完成する。
【0030】
電動送風機12を製造する際には、ベアリング部30、ロータ本体29および遠心ファン14を回転軸28に取り付けたロータ21をフレーム26に取り付けるとともに、組み立てた上記ステータ22および検出部23を固定部材25とともにフレーム26に取り付け、フレーム26にカバー部81を取り付ける。
【0031】
このように完成した電動送風機12は所定の位置に組み付けるとともに、端子部にリード線などを電気的に接続することで、電力が供給されて回転可能な状態となる。
【0032】
検出部23では、一対の磁極を介してロータ21の回転位置、すなわち一対の磁極の回転位置を検出しており、この回転位置に応じて制御部24が一および他のコイル35,36に流す電流の向きを切り換えることで、一および他のコア歯部47,48(一および他の磁気作用面51,52)に生じる磁極を切り換えて、ロータ21を回転させる。
【0033】
より詳細には、回転初期において、ロータ21は、ロータ本体29の外周面からの距離が相対的に大きい前縁部56,57から距離が相対的に小さい後縁部58,59に向かう方向へと各磁極が引き寄せられるように回転することで、回転方向Aに向かって回転を開始する。そして、検出部23で検出したロータ21の回転位置が、例えば一方の磁極が一のコア歯部47(一の磁気作用面51)に対向し、他方の磁極が他のコア歯部48(他の磁気作用面52)に対向した位置である場合には、一のコイル35に一方の磁極と同じ極性(N極)が生じ、他のコイル36に他方の磁極と同じ極性(S極)が生じるように制御部24によって線材33に流す電流の向きを設定すると、一のコア歯部47(一の磁気作用面51)と一方の磁極との間、および、他のコア歯部48(他の磁気作用面52)と他方の磁極との間に反発力が生じるとともに、一のコア歯部47(一の磁気作用面51)と他方の磁極との間、および、他のコア歯部48(他の磁気作用面52)と一方の磁極との間に吸引力が生じることで、ロータ21が約半周回転する。次いで、制御部24が電流の向きを反対方向に切り換えることで、一および他のコイル35,36に上記と反対の磁極が生じ、ロータ21がさらに約半周回転して、全体として一周する。この動作を繰り返すことにより、ロータ21を一定方向に回転させ続けることができる。
【0034】
このとき、一対の磁極が前縁部56,57の前側対向面63,64と磁気作用面51,52とが連続する角部に正対する位置、すなわちロータ21に生じるトルクが最大となる位置(最大トルク位置)では、一および他のコア歯部47,48を通る磁束が前縁部56,57に集中し、後縁部58,59を通る磁束が相対的に少なくなる。そして、前縁部56,57は、幅Wが確保されているため、ステータコア11の磁気飽和が抑制され、ステータ22を通る磁束について制限度が少ない経路(磁路)が得られ、電動機13の効率が向上するとともに、後縁部58,59は、かしめ部71,72により磁路が制限されて一および他のコイル35,36のインダクタンスが減少するものの、通る磁束が少ないため磁気飽和は生じず、磁気性能が低下しない。
【0035】
ロータ21の回転により、このロータ21の回転軸28と一体的に固定された遠心ファン14が回転することで負圧が生じ、吸込口82から空気が吸い込まれる。この空気は、遠心ファン14に沿って整流されつつ流通路78へと流れ、この流通路78を通過する際に各整流部77により整流されるとともに電動機13を冷却し、排気口から排気される。
【0036】
なお、制御部24では、検出部23でステータコア11を介して検出したコイル35,36の温度(ステータ22の温度)が所定温度以上であるかどうかを判断し、所定温度以上となった場合には、一のコイル35および(または)他のコイル36が過熱しているものと判断し、この制御部24が一および他のコイル35,36に流れる電流を低下させることで、ロータ21の回転を停止させ、電動送風機12(電動機13)を保護する。
【0037】
以上説明した一実施形態によれば、前縁部56,57を後縁部58,59に対してロータ21の軸方向と交差する上下方向の幅Wが略等しくなるように設定するとともに、後縁部58,59に形成したかしめ部71,72によって電磁鋼板40を固定するので、例えば製造工程などにおいて、積層した電磁鋼板40が前縁部56,57や後縁部58,59を基点として剥がれにくくなり、電磁鋼板40の剥がれに起因する性能の低下を抑制できる。また、前縁部56,57を、後縁部58,59に対して、ロータ本体29からの距離を大きくし、後縁部58,59のかしめ部71,72の少なくとも一部を、上下方向に沿う一および他の磁気作用面51,52の仮想的な接線L1と、後縁部58,59と一および他の磁気作用面51,52とが連続する位置から接線L1に対して直交する方向に延びる仮想線L2と、後縁部58,59の外郭とにより囲まれる領域A1,A2に位置させるので、最大トルク位置で磁束が集中する前縁部56,57については幅Wによって磁気飽和を抑制しつつ、磁束が少なく磁気飽和が生じにくい後縁部58,59についてはかしめ部71,72によって磁路を制限して一および他のコイル35,36のインダクタンスを低減するので、電動機13の効率を向上できる。
【0038】
さらに、かしめ部71,72を電磁鋼板40に対して両側部71a,71aおよび両側部72a,72aが寸断され両端部71b,71bおよび両端部72b,72bが連続する四角形状とすることで、電磁鋼板40をより確実に位置合わせできるとともに、積層した電磁鋼板40に対して強い保持力を得ることができる。
【0039】
しかも、かしめ部71,72は、相対的に長い両側部71a,71aおよび両側部72a,72aを寸断するので、磁路をより効果的に制限しつつ、電磁鋼板40をより強力に保持できるとともに、電磁鋼板40を貫通する穴を設ける場合と比較してステータコア11の強度を確保できる。
【0040】
なお、上記一実施形態において、かしめ部71,72は、例えば正方形状などとしてもよいし、円形状、あるいは楕円形状などとしてもよい。
【0041】
本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。