(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ハンドルフレームはハンドル部とその両側のハンドルサイド部とを有し、前記ハンドル部が後輪側に位置する背面走行タイプと前輪側に位置する対面走行タイプとにハンドル部の位置が切り替え可能になっており、前記左右の回動カムにそれぞれ連結したワイヤーを前記ハンドルサイド部の内部を経由して取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の手押車。
前記前輪及び後輪のブレーキ装置は、前記前輪及び後輪の各ホイールにそれぞれブレーキをかけるためのブレーキシュと、前記ブレーキシュをホイールから離れる方向に付勢した付勢部材と、前記ブレーキシュをホイールに摺接する方向に引っ張る前輪ワイヤー及び後輪ワイヤーを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の手押車。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車輪の回転を規制したベビーカー用の制動機構を開示するが、後輪の回転を安定して規制するためのものである。
特許文献2には、能動ブレーキ装置と受動ブレーキ装置とで2つの車輪に同時にブレーキをかけることができる乳母車を開示する。
しかし、同公報に開示する2つの車輪とは、左右の2つの後輪であって、この左右の後輪に同時にブレーキをかけるためのものである。
このように従来の車輪制動機構は、後輪のみにブレーキをかけるものである。
また、ブレーキの目的も従来は、手押車を駐車させる際の駐車ブレーキとして使用するものである。
しかし、例えば、手押車を押して下り坂を移動する場合には、坂道により手押車が過度に加速されないようにブレーキ制御したいニーズもある。
また、ベビーカーやペットカート等、乳児やペットを乗せて背面から押す態様と、対面しながら押す態様に手押しハンドルを切り替えることができるタイプの手押車にあっては、次のような問題もあった。
従来の後輪のみにブレーキがかかる機構のものは、後輪が進行前側に位置する対面走行の場合に、ブレーキをかけると前方側に位置する後輪にのみブレーキがかかり、手押車が前のめり状態になり危険である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前輪及び後輪に同時にブレーキがかかる車輪制動装置を有する手押車の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る手押車は、左右一対の前輪をそれぞれ支持する左右一対の前輪フレームと、左右一対の後輪をそれぞれ支持する左右一対の後輪フレームを備えた手押車であって、前記前輪フレームは前輪のブレーキ装置を有し、前記後輪フレームは後輪のブレーキ装置を有し、手押車に設けた1つの操作レバーにて前記前輪及び後輪のブレーキ装置を同時に操作できることを特徴とする。
ここで手押車とは、ベビーカー,ペットカート及びシルバーカー等の手押し操作にて走行する車をいう。
本明細書では、乳幼児,ペット,介護者等を座席に乗せて背後側から手押し走行する背面走行状態で、進行方向前方側の車輪を前輪、進行方向後方側の車輪を後輪と表現する。
従って、後述するようにハンドルを前輪側に切り替えた対面走行状態では、前輪が走行方向の後方側に位置することになる。
【0006】
このように左右一対の前輪と、左右一対の後輪とを有する四輪手押車であって、1つの操作レバーにて同時に四輪ともにブレーキがかかるようにしたので、手押車の手押し走行中にブレーキをかけた際の制動制御に優れ、下り坂道であってもブレーキ制御しながら安心して走行することができ、従来のように対面走行状態にて前方に位置する車輪にのみブレーキがかかり、前のめりになることもない。
本発明において前輪は、前輪フレームに対して旋回自在に支持され、前記前輪のブレーキ装置は、前輪とともに回動し前輪にブレーキをかけるブレーキシュを有し、前記ブレーキシュと、前記操作レバーにつながれた当該ブレーキシュを操作するワイヤーとが回動自在に連結されているようにしてもよい。
このようにすると、前輪が旋回してもブレーキ操作用ワイヤーがねじれることがない。
【0007】
1つの操作レバーにてブレーキ制御するには、手押車を手押し操作するための略逆U字形状のハンドルフレームを有し、前記ハンドルフレームは左右方向に延設したブレーキ操作のための操作レバーを有し、前記操作レバーは左右両側の端部側にそれぞれ回動カムを有し、手押車の左側の前輪及び後輪のブレーキ装置を操作するためのワイヤーを前記左側の回動カムに連結してあり、手押車の右側の前輪及び後輪のブレーキ装置を操作するためのワイヤーを前記右側の回動カムに連結してもよい。
【0008】
この場合に、前輪及び後輪のブレーキ装置は、前記前輪及び後輪の各ホイールにそれぞれブレーキをかけるためのブレーキシュと、前記ブレーキシュをホイールから離れる方向に付勢した付勢部材と、前記ブレーキシュをホイールに摺接する方向に引っ張る前輪ワイヤー及び後輪ワイヤーを有するようにしてもよい。
さらには、左側と右側の回動カムにそれぞれ連結した主ワイヤーをそれぞれ有し、手押車の左側の前輪ワイヤーと後輪ワイヤーとを前記左側の主ワイヤーに連結してあり、手押車の右側の前輪ワイヤーと後輪ワイヤーとを前記右側の主ワイヤーに連結してあるようにしてもよい。
また、ブレーキ装置を駐車ブレーキとして使用できるように、操作レバーはブレーキ装置のブレーキ作動状態を保持するためのロック手段を有するようにしてもよい。
【0009】
本発明において、ハンドルフレームはハンドル部とその両側のハンドルサイド部とを有し、前記ハンドル部が後輪側に位置する背面走行タイプと前輪側に位置する対面走行タイプとにハンドル部の位置が切り替え可能になっており、前記左右の回動カムにそれぞれ連結したワイヤーを前記ハンドルサイド部の内部を経由して取り付けてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る手押車は、前後の四輪を同時にブレーキ操作できるので、走行制御の安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る手押車の構造例を以下図面に基づいて説明するが、本発明は前輪及び後輪に同時にブレーキ制御可能である点に特徴があり、本実施例に限定されない。
【0013】
図1に手押車1を、その座席シートや幌等のカバー類を取り外した骨組み状態を示す。
図2はその側面視を示す。
本実施例は、
図3(a)に示すようにハンドルフレーム13のハンドル部13aを後輪12a側に位置させた背面走行タイプモードと、
図3(b)に示すように上記ハンドル部13aを前輪11a側に位置させた対面走行タイプモードに切り替えることができる例になっているが、これに限定されない。
【0014】
左右一対の前輪11aをそれぞれ支持する左右一対の前輪フレーム11と、左右一対の後輪12aをそれぞれ支持する左右一対の後輪フレーム12を有する。
本実施例は、各前輪及び各後輪が1つのホイールからなる例を示したが、2つのホイールからなる二重ホイールタイプも含まれる。
前輪フレーム11及び後輪フレーム12は、各前輪及び各後輪を回転可能に支持するためのものであり、構造に制限がない。
本実施例は、前輪フレーム11の上部と、後輪フレーム12の上部とを連結部19にて側面視略三角形状に連結し、左右の前輪フレーム11の下部側を連結フレーム111,左右の後輪フレーム12の下部側を連結フレーム112にて連結してある。
シート部は、左右の前輪フレーム11を連結した上下のフロントフレーム15,15aと、後輪フレーム12に連結した逆U字形状のシートフレーム16及び上下のサイドフレーム18,18aにて枠体に形成してある。
手押車1は、手押し操作する略逆U字形状のハンドルフレーム13を有し、ハンドルフレーム13はハンドル部13aと両側のハンドルサイド部13bを有し、支持フレーム14及びサブ支持フレーム17に左右のハンドルサイド13bをそれぞれ支持してあり、
図3に示すようにハンドルサイド13bの下端部を回動連結部13cにて回動可能に連結してある。
図3(a)は、ハンドルフレーム13のハンドル部13aを後輪12a側に回動させた背面走行タイプモードであり、
図3(b)はこのハンドル部13aを前輪11a側に回動させた対面走行タイプモードにした状態を示す。
このモードの切り替えは、ハンドル部13aに設けた操作部50からのワイヤー操作でできる。
【0015】
次に車輪の制動構造(ブレーキ系統)について説明する。
左右の前輪11aにブレーキをかけるための前輪ブレーキ装置22を前輪フレーム11の下端部に取り付けてあり、左右の後輪12aにブレーキをかけるための後輪ブレーキ装置23を後輪フレーム12の下端部に取り付けてある。
前輪ブレーキ装置22を操作するための前輪ワイヤーケーブル24と、後輪ブレーキ装置23を操作するための後輪ワイヤーケーブル25を配設してあり、この前輪ワイヤーケーブル24と、後輪ワイヤーケーブル25の芯線であるワイヤー24a,25aを
図7に示すように主ワイヤーケーブル26の芯線であるワイヤー26aの下端部と連結してある。
本明細書では、ワイヤー24a,25aを摺動自在に保持したチューブを含めて、ワイヤーケーブルと表現する。
なお、図中には芯線であるワイヤーを含めてワイヤー(ケーブル)と表現した。
連結方法に制限はないが、本実施例は主ワイヤーケーブル26の下端保持部31に対して、上下移動可能な連結プレート32を設けてある。
連結プレート32の中央部に、主ワイヤーケーブル26のワイヤー26aの下端部を抜け止め部26bを介して取り付けてあり、この連結プレート32の左右には、前輪ワイヤーケーブル24のワイヤー24a及び後輪ワイヤーケーブル25のワイヤー25aをそれぞれ抜け止め部24c,25cを介して取り付けてある。
これにより、主ワイヤーケーブル26のワイヤー26aの引っ張り操作にて前輪ワイヤーケーブル24及び後輪ワイヤーケーブル25のそれぞれのワイヤー24a,25aを同時に引っ張り操作できる。
ハンドルフレーム13の上部側には、左右方向に延設したバー状の操作レバー21を有する。
その構造例を
図4〜6に示す。
操作レバー21は、左右の両端部が略直角に折り曲げられた略コ字形状になっている。
この操作レバー21の両端部をハンドルフレーム13の左右両側のコーナー部に取り付けた取付部材28に回動可能に取り付けてある。
取付部材28は、回動カム27の軸部27bの挿通孔28cを有する軸受け部28bと、この回動カム27の回動を規制する規制面部28aを有する。
回動カム27は、軸部27bを取付部材28の挿通孔28cに挿通させ、さらに操作レバー21の両側折り曲げ端部の連結部21aと、キャップ部材27dにて固定連結してある。
回動カム27は、軸部27bから偏心させた作動部27aに設けたワイヤー取付部27eに主ワイヤーケーブル26のワイヤー26aの上端部を抜け止め部を介して連結してある。
これにより、操作レバー21を握り、ハンドルフレーム13の上部側に回動操作すると、左右両側の主ワイヤーケーブル26のワイヤー26aが同時に引っ張られ、
図7に示した前輪及び後輪ワイヤーケーブル24,25のワイヤー24a,25aを介して、左右一対の前輪11a及び後輪12aの四つの車輪に同時にブレーキがかかる。
図5(a)に示すように、回動カム27の作動部27aが上方側に回動し、四輪にブレーキをかけた状態を維持できるようにロック手段を有する。
ロック手段は、回動カムの作動部27aの凸面部27cがスライド移動するスライド面部29cと、回動カムの作動部27aの下端部が係止する係止部29bを有するロック部材29を回動カム27側に付勢した回動付勢部材29aとからなる。
手押車をハンドル操作する者が操作レバー21を軽く握ると、回動カム27の作動部27aの凸面部27cがロック部材29のスライド面部29cに沿って上下にスライドし、ブレーキ調整できる。
なお、主ワイヤーケーブル26のワイヤー26aは後述するように、作動部27aが下側に回動する方向に付勢されている。
操作レバー21を強く握ると、凸面部27cがスライド面部29cから上側に外れる。
この際に、ロック部材29がスプリング等の回動付勢部材29aにより、回動カム側に押し出されるので、作動部27aの下端部が段差状に設けた係止部29bに係止し、車輪の回転がロックされた状態に保持される。
このロック部材29を前方側に傾けると、作動部27aの下端部が係止部29bから外れ、ブレーキが解除される。
【0016】
次に、ブレーキ装置の構造例について説明する。
図8に第1の実施例の前輪ブレーキ装置22の外観を示し、
図9に断面図を示す。
また、第2の実施例を
図11,12に示す。
第1,第2実施例は、共通の符号を付けて説明する。
前輪11aは、タイヤを保持するホイール11dの車軸11cを断面コ字形状のホルダー部11bに回転自在に支持させてある。
前輪ブレーキ装置22は、前輪フレーム11の下端部に固定したハウジング22aと、このハウジング22aの内側に円筒状で旋回自在の円筒連結部22dを有する。
円筒連結部22dと車輪のホルダー部11bとを固定連結してある。
これにより、前輪11aは前輪フレーム11に対して、旋回可能に支持されている。
また、ホルダー部11bの両側の側壁に沿って上下スライド可能にブレーキシュ22bを取り付け、このブレーキシュ22bの上端部を前輪のワイヤーケーブル24のワイヤー24aと連結する。
この際にワイヤー24aの下端部に抜け止め部24bを有し、この抜け止め部を回動自在に保持する取付部22cを円筒連結部22d側に設けてある。
これにより、前輪11aが旋回すると、取付部22c内にて抜け止め部24bが回動し、ワイヤー24aに捻れが生じないようになっている。
ブレーキシュ22bは、
図12(a)の第2の実施例に示すように、ホイール11dの内周面に当接するブレーキパッド122bを有し、操作レバー21を握り、前輪ワイヤーケーブル24のワイヤー24aを引っ張ると、ブレーキパッド122bがホイール11dの内周面に摺接し、ブレーキ力が生ずる。
また、操作レバー21を離すと、スプリング部材22fの反発力にてブレーキパッド122bがホイール内周面から離れ、ブレーキが解除される。
本実施例は、
図11に示すように前輪11aの旋回をロックするロックピース22eを有する例になっていて、このロックピース22eを下側にスライドさせ、ホルダー部材11b側の差込孔111bに差し込むと、旋回がロックされる。
【0017】
後輪12aの後輪ブレーキ装置23の第1の実施例を
図10に、第2の実施例を
図13,14に示す。
共通する部分については共通の符号を用いて、以下説明する。
後輪12aは、タイヤを保持するホイール12dと、ホイール12dの車軸12cを有する。
この車軸12cは、後輪フレーム12に取付孔12bを介して支持されている。
後輪ブレーキ装置23は、後輪フレーム12への固定部材23aと、ブレーキシュ23cをスライド自在に保持する保持部材23bを有する。
図10に示すように第1の実施例は、後輪フレーム12に取り付けた固定部材23aと、保持部材23bとの間にスプリング等の付勢部材23eを挟み込むようにして、この保持部材23bを後輪フレーム12の外周部に沿って上下にスライドするようになっている。
後輪ワイヤーケーブル25のワイヤー25aを引っ張ると、保持部材23bに設けたブレーキシュ23cが付勢部材23eに抗して上昇し、後輪12aのホイール12dの内周面に当たり、後輪にブレーキがかかる。
図13,14に示す第2の実施例は、後輪ワイヤーケーブル25を後輪フレーム12の内側に配設してあり、この後輪ワイヤーケーブル25のワイヤー25aを下端部に設けた抜け止め部25bを介して、内側の保持部材23bに取り付け、この保持部材23bと、後輪フレーム12の外周部に沿って上下動するブレーキシュ23cとを連結固定してある。
保持部材23bとブレーキシュ23cとは、保持部材23bに設けた連結孔123bを介して連結ピン223cにて連結してあり、ブレーキシュ23cに設けたブレーキパッド123cが操作レバー21を握ると、ワイヤー25aにて引っ張られ、ホイール12dの内周面に当接するようになっている。
なお、ブレーキシュ23cは、この保持部材23bを介してスプリング等の付勢部材23eによりホイール内側面から離れる方向に付勢されている。
この保持部材23bは、後輪フレーム12の内側の固定部材23aと外側の固定部材123aとで、この後輪フレーム12にスライド可能に取り付けられている。
この際に固定部材23a,123aには、車軸12cの挿通孔223aを後輪フレーム12の取付孔12bに合せて設けてある。
また、ブレーキシュ23cの上部には、キャップ23gを取り付けてもよい。