(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態1)
(1−1.フロントフォーク4の全体構成)
図1(a)は、実施形態1に係るフロントフォーク4を搭載した自動二輪車1の構成を示す図である。また、(b)は、フロントフォーク4の構成を示す図である。
【0018】
図1(a)に示す自動二輪車1は、車体2と、車体2の前方に配される車軸である前輪14Aと、車体2の後方に配される車軸である後輪14Bと、車体2と後輪14Bとを接続するリヤサスペンション3と、車体2と前輪14Aとを接続するフロントフォーク4と、自動二輪車1を操舵するためのハンドル5とを備えている。
【0019】
フロントフォーク4は、例えば二輪車や三輪車等のハンドル5と前輪14Aとの間を接続するように設けられ、衝撃を緩衝するとともにハンドル5の操舵を前輪14Aに伝達する。本実施形態では、フロントフォーク4は、
図1(b)に示すように、第1フロントフォーク(フロントフォーク)11Aと、第2フロントフォーク11Bと、第1ブラケット12Aと、第2ブラケット12Bと、ステアリングシャフト13とを備えている。
【0020】
第1フロントフォーク11A及び第2フロントフォーク11Bは、前輪14Aを挟んで対向するように前輪14Aの左右に配置され、車軸14Sを介して前輪14Aに接続されている。また、第1フロントフォーク11A及び第2フロントフォーク11Bは、軸方向に伸縮可能に構成されている。なお、本実施形態において、以下の説明では、第1フロントフォーク11Aの長手方向を「軸方向」と呼ぶ。
【0021】
第1フロントフォーク11Aは、エアばねからなる懸架ばねを内蔵している。なお、本実施形態では第1フロントフォーク11Aは減衰機構を備えていない。第1フロントフォーク11Aの詳細については後述する。
【0022】
第2フロントフォーク11Bは、オイルダンパなどの減衰機構を内蔵している。ただし、第2フロントフォーク11Bの構成はこれに限らず、例えば、第1フロントフォーク11Aと同様の構成であってもよい。
【0023】
第1ブラケット12A及び第2ブラケット12Bは、第1フロントフォーク11Aと第2フロントフォーク11Bとを接続している。ステアリングシャフト13は、両端が第1ブラケット12A及び第2ブラケット12Bにそれぞれ固定されており、このステアリングシャフト13が車体2に連結されることでフロントフォーク4が車体2に操舵(回転)可能に接続されている。
【0024】
(1−2.第1フロントフォーク11Aの構成)
図2(a)は、フロントフォーク4に設けられた第1フロントフォーク11Aの断面図である。また、(b)は、第1フロントフォーク11Aの車体側の端部を示す図である。
図3は
図2(a)に示されるA部の詳細を示す拡大断面図である。
図4は
図2(a)に示されるB部の詳細を示す拡大断面図である。
図5(a)は
図2(a)に示されるC部の詳細を示す拡大断面図であり、(b)は
図2(a)に示されるD部の詳細を示す拡大断面図である。
【0025】
図2(a)に示すように、第1フロントフォーク11Aは、アウタチューブ部20と、インナチューブ部30と、車軸ブラケット部40と、シリンダ50と、ロッド部60とを備えている。なお、アウタチューブ部20は車体側に配置され、車軸ブラケット部40は車軸側に配置される。
【0026】
(1−2−1.アウタチューブ部20)
アウタチューブ部20は、管状の部材であるアウタチューブ21と、アウタチューブ21における車軸側の端部に配されるブッシュ22A及びシール部材23と、最伸長時にインナチューブ31の車体側の端部付近に位置する様にアウタチューブ21に圧入されたブッシュ22Bと、アウタチューブ21の車体側の端部に配されてアウタチューブ21を封止するキャップ部24とを備えている。
【0027】
アウタチューブ21における車軸側の端部には、ブッシュ22A及びシール部材23を保持するための拡管部21Dが形成されている。
【0028】
ブッシュ22Aは、環状の部材であり、拡管部21Dの内周部に設けられている。またブッシュ22Bは、ブッシュ22Aと同様の環状の部材であり、アウタチューブ21とインナチューブ31との間に設けられている。ブッシュ22A及び22Bは、インナチューブ31の外周面に対向して、アウタチューブ21とインナチューブ31との間の摩擦抵抗を低減する。
【0029】
また、アウタチューブ21とインナチューブ31とは、ブッシュ22A及び22Bを介して軸方向にスライド可能に接続されている。
【0030】
シール部材23は、リング状の部材であり、拡管部21Dの内周部に取り付けられている。シール部材23は、アウタチューブ21とインナチューブ31とによって形成される後述のアウタ室R2を気密する。
【0031】
キャップ部24は、
図2(a)及び(b)、並びに
図5に示すように、ボルト24Bと、第1シール部材24Sと、第2シール部材24Gと、ガス圧調整部24Aとを備えている。
【0032】
ボルト24Bは、アウタチューブ21の車体側の端部においてアウタチューブ21の内側に螺合され、アウタチューブ21の車体側の開口を塞いでアウタチューブ21内を気密するように固定される。
【0033】
第1シール部材24Sは、アウタチューブ21とシリンダ50との間に配置されており、シリンダ50とアウタチューブ21との隙間を封止している。第2シール部材24Gは、シリンダ50とボルト24Bとの間に配置されており、シリンダ50とボルト24Bとの隙間を封止している。第1シール部材24S及び第2シール部材24Gは、後述するインナ室R1及びアウタ室R2をそれぞれ密封する。
【0034】
ガス圧調整部24Aは、ボルト24Bの外部に臨む位置に取り付けられている。ガス圧調整部24Aには、例えばガス圧注入器の注入針が刺通できるゴム膜などを用いることができる。
【0035】
(1−2−2.インナチューブ部30)
図2(a)、
図3、及び
図4に示すように、インナチューブ部30は、管状の部材であるインナチューブ31を有している。
【0036】
インナチューブ31の外径はアウタチューブ21の内径よりも小さく形成されており、インナチューブ31はアウタチューブ21の内周に挿入される。これにより、インナチューブ31は、アウタチューブ21の軸方向に沿ってアウタチューブ21に対して相対的に移動可能な状態でアウタチューブ21に接続される。また、インナチューブ31は、車軸側の端部が車軸ブラケット部40を介して前輪14A(
図1参照)を回転可能に支持し、車体側の端部がアウタチューブ21内に挿入されている。
【0037】
インナチューブ31における車軸側の端部近傍には、車軸ブラケット部40との接続部位を形成する雄ねじ部31Jが形成されている。また、インナチューブ31は、車体側が開口している。また、インナチューブ31における車軸側の端部は、ボトムピース32によって密閉されている。
【0038】
ボトムピース32は、円筒形状を有しており、インナチューブ31の車軸側の端部と車軸ブラケット部40との間に配置されている。また、ボトムピース32は、シール部材32aを備えており、インナチューブ31と車軸ブラケット部40との間の隙間を封止する。
【0039】
(1−2−3.シリンダ50)
アウタチューブ21にはシリンダ50が設けられる。シリンダ50は、第1気体が封入されると共に、その第1端がアウタチューブ21の車体側の端部に取り付けられ、その第2端がインナチューブ31の内部に挿入される。
【0040】
(1−2−4.ロッド部60)
ロッド部60は、インナチューブ31の軸方向に沿って延びる棒状の部材であるロッド部材61(ロッド)と、ロッド部材61の車体側の端部に取り付けられたピストン62と、ピストン62に取り付けられたピストンリング63及びシール部材64とを備える。
【0041】
シリンダ50の車軸側の端部近傍にロッドガイド66が取り付けられる。ロッドガイド66とピストン62との間にリバウンドスプリング67が、ロッド部材61の周りに軸方向に沿って介装される。
【0042】
ロッド部材61は、アウタチューブ21及びインナチューブ31の内側に配置される。ロッド部材61は、アウタチューブ21に対するインナチューブ31の移動に伴ってアウタチューブ21の軸方向に沿ってアウタチューブ21及びシリンダ50に対して相対的に移動する。
【0043】
ロッド部材61には、
図5(b)に示すように、車軸側の端部に車軸側雄ねじ部61Pが形成されている。車軸ブラケット部40にはチューブ保持部41が設けられる。チューブ保持部41は、ロッド部材61の車軸側に配置された略円筒状の取付けボルト70を有する。取付けボルト70には、ロッド部材61に対応する凹部が形成される。取付けボルト70の外周面には、周方向に沿って円周溝70Bが形成される。また、凹部の内壁面から円周溝70Bの底面に向かう複数の連通孔70Aが取付けボルト70の凹部から放射状に形成される。取付けボルト70の車体側の外周面には、雄ねじ70Cが形成される。取付けボルト70の凹部の車体側の内周面に雌ねじ70Dが形成される。取付けボルト70とチューブ保持部41との間にはシール部材72が設けられる。
【0044】
取付けボルト70の雄ねじ70Cが、チューブ保持部41に形成された雌ねじと螺合することにより、取付けボルト70がチューブ保持部41に固定される。また、ロッド部材61の車軸側雄ねじ部61Pが、取付けボルト70の雌ねじ70Dに螺合することにより、ロッド部材61が取付けボルト70に固定される。
【0045】
略円筒形状を有する、ゆるみ止めのためのロックナット71が、取付けボルト70の車体側に設けられる。ロックナット71の内周面には、ロッド部材61の車軸側雄ねじ部61Pに螺合する雌ねじ71Aが形成されている。
【0046】
これにより、ロッド部材61は、インナチューブ31と共に移動するようにインナチューブ31における車軸側の端部に固定されている。
【0047】
ロッド部材61には、車体側にピストン62を取り付けるための車体側雄ねじ部61Jが形成されており、車体側雄ねじ部61Jに取り付けられたピストン62を保持する。インナ室R1は、シリンダ50の内部におけるピストン62よりも車体側の空間に相当する。
【0048】
ピストン62は、ロッド部材61の車体側の端部に固定されており、シリンダ50の軸方向に移動可能な状態でシリンダ50の内周面に摺接する。
【0049】
図3に示すように、ピストンリング63は、環状の部材であり、ピストン62の外周部に取り付けられている。ピストンリング63の外径は、シリンダ50の内径と略等しく設定されている。
【0050】
シール部材64は、環状の部材であり、ピストン62の外周部に取り付けられている。
【0051】
図4に示すように、ロッドガイド66は、シリンダ50の車軸側の端部にねじ留め等により固定されている。また、ロッドガイド66は、ロッド部材61の外径よりも大きい内径を有して軸方向に貫通する貫通孔66Hを有している。そして、貫通孔66Hにロッド部材61が貫通して設けられ、貫通孔66Hによってロッド部材61が軸方向にスライド可能に支持されている。
【0052】
リバウンドスプリング67は、例えば金属コイルばねからなり、アウタチューブ21とインナチューブ31とを収縮させる方向に付勢する。
【0053】
また、本実施形態では、ロッドガイド66によって、インナチューブ31内の空間を区画している。この構成により、ロッドガイド66の車軸側に、第2気体が封入されるアウタ室R2が形成される。具体的には、アウタチューブ21の内周及びインナチューブ31の内周と、シリンダ50の外周及びロッド部材61の外周とによってアウタ室R2が形成される。
【0054】
ロッド部材61は中空状の部材であり、ロッド部材61の内部には、軸方向に延伸する貫通部65(増設インナ室)が形成されている。また、ロッド部材61における車体側の端面にはロッド部材61の内部に形成された貫通部65とインナ室R1とを連通させる孔68(
図3参照)が形成されている。
【0055】
このように、インナ室R1に連通する増設インナ室としての貫通部65をロッド部材61に形成することにより、インナ室R1の容積が貫通部65の容積分拡大される。このため、フロントフォークの圧側行程時の反力特性を改善するためにリバウンドスプリング67が長くなり、その分だけインナ室R1の容積が減少しても、インナ室R1に連通する貫通部65の容積によりインナ室R1の容積の減少を補填して、所望のエア反力特性を実現することができる。本実施形態に限らず、一般的にロッド部材61に相当するロッド部材は、中空状の部材である。このため、既存のロッド部材の中空空間を増設インナ室として機能させることで、部品点数を増加させることなく、インナ室R1の容積を増加させることができる。
【0056】
(1−2−5.車軸ブラケット部40)
車軸ブラケット部40は、
図2(a)に示したように、チューブ保持部41と、車軸連結部42と、インナチューブ31と連接された車軸側タンク室43(増設インナ室)とを有している。なお、本実施形態では、チューブ保持部41と車軸連結部42とは一体的に形成されている。
【0057】
チューブ保持部41は、インナチューブ31の外径よりも大きい内径の円筒形状を有しており、この円筒形状の内周面にはインナチューブ31の車軸側の端部近傍に形成された雄ねじ部31Jが螺合される雌ねじ部が形成されている。これにより、チューブ保持部41にインナチューブ31の車軸側の端部が挿入され、チューブ保持部41とインナチューブ31とは、シール部材を介して接続される。
【0058】
車軸連結部42は、前輪14Aの車軸14S(
図1参照)が挿入される車軸孔42Hを備えている。また、車軸孔42Hの内径は、車軸ボルト(図示せず)を締付けることにより変更可能であり、それによって前輪14Aの車軸14Sを締め付け可能な構成になっている。
【0059】
車軸側タンク室43は、通路44、円周溝70B、及び連通孔70Aを介してロッド部材61の貫通部65と連通しており、この車軸側タンク室43により、インナ室R1に連通する貫通部65による増設インナ室がさらに拡張され、インナ室R1の容積がさらに拡大される。このため、第1フロントフォーク11Aの圧側行程時の反力特性を改善するためにリバウンドスプリング67が長くなり、その分だけインナ室R1の容積が減少しても、インナ室R1に連通する貫通部65及び車軸側タンク室43からなる増設インナ室の容積によりインナ室R1の容積の減少を補填して、所望のエア反力特性を実現することができる。
【0060】
(1−3.第1フロントフォーク11Aの動作)
(1−3−1.圧側行程)
第1フロントフォーク11Aの圧側行程においては、アウタチューブ21とインナチューブ31とが軸方向に沿って相対的に近づく方向に移動する。一方、ピストン62とロッドガイド66とは、軸方向に沿って相対的に遠ざかる方向に移動する。すなわち、ロッドガイド66は車軸ブラケット部40に近づく方向に移動し、ピストン62はシリンダ50の内周面に沿って車体側に向けて移動する。
【0061】
そして、ピストン62が車体側に向けて移動することで、インナ室R1の容積が減少してインナ室R1内の空気(第1気体)、インナ室R1に連通する貫通部65及び車軸側タンク室43内の空気が圧縮される。これにより、インナ室R1、貫通部65及び車軸側タンク室43がエアばねとして作用し、アウタチューブ21とインナチューブ31とを伸張させる方向の反力が発生する。
【0062】
リバウンドスプリング67は、圧側行程における所定の収縮ストローク領域内において、アウタチューブ21とインナチューブ31とを収縮方向に附勢してインナ室R1、貫通部65及び車軸側タンク室43のエアばねによるエア反力を抑制する。
【0063】
一方、ロッドガイド66がインナチューブ31内を車軸側に向けて移動することで、アウタ室R2の容積が減少してアウタ室R2内の空気(第2気体)が圧縮される。これにより、アウタ室R2がエアばねとして作用し、アウタ室R2においてもインナ室R1と同様、アウタチューブ21とインナチューブ31とを伸張させる方向の反力が発生する。
【0064】
(1−3−2.伸側行程)
第1フロントフォーク11Aの伸側行程においては、アウタチューブ21とインナチューブ31とが軸方向に沿って相対的に遠ざかる方向に移動する。一方、ピストン62とロッドガイド66とは、軸方向に沿って相対的に近づく方向に移動する。すなわち、ロッドガイド66は車軸ブラケット部40から離れる方向に移動し、ピストン62はシリンダ50の内周面に沿って車体側から離れる方向に移動する。
【0065】
ピストン62が車体側から離れる方向に移動することにより、リバウンドスプリング67が圧縮される。これにより、アウタチューブ21とインナチューブ31とを収縮させる方向の反力が発生する。
【0066】
(1−4.実施形態1に係る第1フロントフォーク11Aのエア反力特性)
図6は、実施形態1に係る第1フロントフォーク11Aのエア反力特性を示すグラフである。横軸は第1フロントフォーク11Aのストロークを示しており、縦軸はフロントフォークの反力の荷重を示している。曲線C9は
図10(a)で前述したインナ室R9によるエア反力特性を示し、曲線Cは
図2に示すインナ室R1及び増設インナ室(インナ室R1に連通する貫通部65及び車軸側タンク室43)によるエア反力特性を示す。曲線C1は、
図11に示した曲線C1と同一の曲線であり、
図10(c)に示すインナ室R1のみによるエア反力特性を示す。インナ室R1及び増設インナ室(貫通部65及び車軸側タンク室43)に対応する曲線Cは、圧側行程の最終段階において、インナ室R1のみに対応する曲線C1よりもエア反力が小さくなっている。このように、圧側行程のエア反力特性の改善のためのリバウンドスプリング67の大型化によるインナ室R9からインナ室R1への容積の減少が、増設インナ室(貫通部65及び車軸側タンク室43)により、補填されている。
【0067】
(1−5.第1フロントフォーク11Aの効果)
以上のように、本実施形態にかかる第1フロントフォーク11Aは、車体側に設けられるアウタチューブ21と、車軸側に設けられると共に、アウタチューブ21の内周を摺動するインナチューブ31と、第1気体が封入されると共に、その第1端がアウタチューブ21の車体側の端部に取り付けられ、その第2端がインナチューブ31の内部に挿入されるシリンダ50と、インナチューブ31の車軸側の端部に取り付けられると共に、シリンダ50に挿入されるロッド部材61と、ロッド部材61に取り付けられると共に、シリンダ50の内周を摺動するピストン62と、シリンダ50の第2端とピストン62との間に介装されたリバウンドスプリング67と、シリンダ50の内部でピストン62よりも車体側に形成されたインナ室R1と、インナ室R1に連通すると共に、インナ室R1の容積が拡大されるように増設された増設インナ室(貫通部65及び車軸側タンク室43)とを備える。
【0068】
これにより、インナ室R1に連通する増設インナ室を設けるので、インナ室R1の容積が拡大される。このため、第1フロントフォーク11Aの圧側行程時の反力特性を改善するためにリバウンドスプリング67が長くなり、その分だけインナ室R1の容積が減少しても、インナ室R1に連通する増設インナ室の容積によりインナ室R1の容積の減少を補填して、所望のエア反力特性を実現することができる。
【0069】
また、第1フロントフォーク11Aは、増設インナ室として、ロッド部材61の内部をロッド部材61の軸方向に貫通して形成された貫通部65を有している。
【0070】
ロッド部材は、一般的に軽量化の観点からパイプ材を使用するため貫通部を有しており、既存のロッド部材の貫通部を増設インナ室として機能させることで、部品点数を増加させることなく、リバウンドスプリング67が長くなることによるインナ室R1の容積の減少を補填することができる。
【0071】
また、第1フロントフォーク11Aは、増設インナ室として、貫通部65に連通すると共にインナチューブ31に隣接してインナチューブ31の外部に形成された車軸側タンク室43を有している。
【0072】
貫通部65に加えて、インナチューブ31の外部にインナチューブ31に隣接する車軸側タンク室43を有することで、インナ室R1の容積が更に拡大するため、所望のエア反力特性をさらに実現し易くなる。また、増設インナ室をインナチューブ31の外部に設けることにより、増設インナ室の容積を拡大する自由度が増加する。
【0073】
また、第1フロントフォーク11Aは、第2気体が封入されると共に、アウタチューブ21の内周及びインナチューブ31の内周と、シリンダ50の外周及びロッド部材61の外周との間に形成されたアウタ室R2を更に備えている。アウタ室R2内の第2気体とインナ室R1及び増設インナ室内の第1気体とは、連通されずに分離されている。
【0074】
フロントフォーク全体で反力が不足していたとしても、インナ室R1の外側のアウタ室R2に第2気体を封入することで、インナ室R1と増設インナ室とによるエア反力に加えて、アウタ室R2によるエア反力を追加することができ、第1フロントフォーク11Aにおいて発生する反力を更に増加せることができる。
【0075】
また、第1フロントフォーク11Aは、車体の左右のうちの一方側にのみ設けられても、車体の左右の両方に設けられてよい。オイルダンパなどの減衰機構を内蔵した第2フロントフォーク11Bと第1フロントフォーク11Aとを組み合わせることにより、衝撃緩衝機能の高いフロントフォークを実現できる。
【0076】
また、第1フロントフォーク11Aにおいて、車軸側タンク室43は、インナチューブ31の車軸側の外周面に隣接して設けられていている。
【0077】
車軸側タンク室43を車軸側に配置することができるので、フロントフォークの車体側のレイアウトの自由度が向上する。
【0078】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0079】
(実施形態2)
(2−1.車軸側タンク室43Aの構成)
図7は、実施形態2に係る第1フロントフォーク11Aに設けられた車軸側タンク室43Aの断面図である。
【0080】
車軸側タンク室43Aは、インナチューブ31Cと平行に配置され、略円筒形状を有している。車軸側タンク室43Aの軸方向のパイプ長Lの設定を変更可能に構成することにより、車軸側タンク室43Aの容積を可変とすることができる。
【0081】
車軸側タンク室43Aを、異なるパイプ長L´を有する車軸側タンク室43A´(図示せず)と交換することにより、車軸側タンク室43Aのパイプ長Lの設定を変更可能に構成してもよいし、パイプ長Lが伸縮可能となるように車軸側タンク室43Aを構成してもよい。
【0082】
(2−2.実施形態2に係る第1フロントフォーク11Aのエア反力特性)
図8は、実施形態2に係る第1フロントフォーク11Aのエア反力特性を示すグラフである。横軸は第1フロントフォーク11Aのストロークを示しており、縦軸はインナ室R1に封入された気体を利用したエアばねによる荷重(エア反力)を示している。曲線C5はパイプ長Lを設定変更する前のエア反力特性を示し、曲線C6は、曲線C5に対応する車軸側タンク室43Aの容積をパイプ長Lの設定変更により50cm
3増加させた時のエア反力特性を示す。曲線C7は、曲線C5に対応する車軸側タンク室43の容積をパイプ長Lの設定変更により100cm
3増加させた時のエア反力特性を示す。車軸側タンク室43Aの容積をパイプ長Lの設定変更により増加させると、曲線C6及び曲線C7に示されるように、圧側行程の初期段階から、容積を増加させる前(曲線C5)よりもエア反力が小さくなる。
【0083】
(車軸側タンク室43Aの効果)
以上のように、第1フロントフォーク11Aの増設インナ室である車軸側タンク室43Aの容積が可変である。
【0084】
増設インナ室の容積が可変可能であることにより、第1フロントフォーク11Aの収縮動作において反力の増加量を容易に調整することができる。
【0085】
(実施形態3)
(3−1.第1フロントフォーク11Cの構成)
図9は、実施形態3に係る第1フロントフォーク11Cの断面図である。
図2〜
図5を参照して前述した構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、それらの構成要素の詳細な説明は繰り返さない。
【0086】
図9に示すように、第1フロントフォーク11Cは、アウタチューブ部20Cと、インナチューブ部30Cと、車軸ブラケット部40Cと、シリンダ50Cと、ロッド部60Cとを備えている。なお、アウタチューブ部20Cは車体側に配置され、インナチューブ部30Cは車軸側に配置される。
【0087】
(3−1−1.アウタチューブ部20C)
アウタチューブ部20Cは、管状の部材であるアウタチューブ21Cと、アウタチューブ21における車軸側の端部に配されるブッシュ22A及びシール部材23と、最伸長時にインナチューブ31Cの車体側の端部付近に位置する様にアウタチューブ21Cに圧入されたブッシュ22Bと、アウタチューブ21Cの車体側の端部に配されるキャップ部24とを備えている。
【0088】
アウタチューブ21Cにおける車軸側の端部には、ブッシュ22A及びシール部材23を保持するための拡管部21Dが形成されている。
【0089】
(3−1−2.インナチューブ部30C)
図9を参照すると、インナチューブ部30Cは、管状の部材であるインナチューブ31Cを有している。
【0090】
インナチューブ31Cの外径はアウタチューブ21Cの内径よりも小さく形成されており、インナチューブ31Cはアウタチューブ21Cの内周に挿入される。これにより、インナチューブ31Cは、アウタチューブ21Cの軸方向に沿ってアウタチューブ21Cに対して相対的に移動可能な状態でアウタチューブ21Cに接続される。また、インナチューブ31Cは、車軸側の端部が車軸ブラケット部40Cを介して前輪14A(
図1参照)を回転可能に支持し、車体側の端部がアウタチューブ21C内に挿入されている。
【0091】
インナチューブ31Cにおける車軸側の端部近傍には、車軸ブラケット部40Cとの接続部位を形成する雌ねじ部31Kが形成されている。また、インナチューブ31Cは、車体側が開口している。また、インナチューブ31Cにおける車軸側の端部は、車軸ブラケット部40Cによって密閉されている。
【0092】
(3−1−3.シリンダ50C)
インナチューブ31Cにはシリンダ50Cが設けられる。シリンダ50Cは、第1気体が封入されると共に、その第1端がインナチューブ31Cの車軸側の端部に取り付けられ、その第2端がアウタチューブ21Cの内部に挿入される。
【0093】
(3−1−4.ロッド部60C)
ロッド部60Cは、インナチューブ31Cの軸方向に沿って延びる棒状の部材であるロッド部材61C(ロッド)と、ロッド部材61Cの車軸側の端部に取り付けられたピストン62Cとを備える。
【0094】
シリンダ50Cの車体側の端部近傍にロッドガイド66Cが取り付けられる。ロッドガイド66Cとピストン62との間にリバウンドスプリング67Cが、ロッド部材61Cの周りに軸方向に沿って介装される。
【0095】
ロッド部材61Cは、アウタチューブ21C及びインナチューブ31Cの内側に配置される。ロッド部材61Cは、アウタチューブ21Cに対するインナチューブ31Cの移動に伴ってアウタチューブ21C及びインナチューブ31Cの軸方向に沿ってインナチューブ31C及びシリンダ50Cに対して相対的に移動する。
【0096】
ロッド部材61Cは、
図9に示すように、アウタチューブ21Cの車体側の端部でボルト24Bに取り付けられる。これにより、ロッド部材61Cは、アウタチューブ21Cと共に移動するようにアウタチューブ21Cに固定されている。
【0097】
ロッド部材61Cは、車軸側に取り付けられたピストン62Cを保持する。
【0098】
ピストン62Cは、ロッド部材61Cの車軸側の端部に固定されており、シリンダ50Cの軸方向に移動可能な状態でシリンダ50Cの内周面に摺接するように設けられている。
【0099】
ロッドガイド66Cは、シリンダ50Cの車体側の端部にねじ留め等により固定されている。また、ロッドガイド66Cは、ロッド部材61Cの外径よりも大きい内径を有して軸方向に貫通する貫通孔66Hを有している。そして、貫通孔66Hにロッド部材61Cが貫通して設けられ、ロッドガイド66Cの貫通孔66Hによってロッド部材61Cが軸方向にスライド可能に支持されている。
【0100】
リバウンドスプリング67Cは、例えば金属コイルばねからなり、アウタチューブ21Cとインナチューブ31Cとを収縮させる方向に付勢する。
【0101】
また、本実施形態では、ロッドガイド66Cによって、インナチューブ31C内の空間を区画している。これにより、ロッドガイド66Cの車体側に、アウタ室R2が形成される。アウタ室R2は、第2気体が封入されると共に、アウタチューブ21Cの内周及びインナチューブ31Cの内周と、シリンダ50Cの外周及びロッド部材61Cの外周とによって形成される。
【0102】
ロッド部材61Cは中空状の部材であり、ロッド部材61Cの内部には、軸方向に延伸する貫通部65C(増設インナ室)が形成されている。ロッド部材61Cはまた、ロッド部材61Cにおける車軸側の端面に貫通部65Cとインナ室R1とを連通させる孔68Cが形成されている。インナ室R1は、シリンダ50Cの内部でピストン62Cよりも車軸側に形成されている。
【0103】
このように、インナ室R1に連通する増設インナ室としての貫通部65Cをロッド部材61Cに形成することにより、インナ室R1の容積が貫通部65Cの容積分拡大される。このため、フロントフォークの圧側行程時の反力特性を改善するためにリバウンドスプリング67Cが長くなり、その分だけインナ室R1の容積が減少しても、インナ室R1に連通する貫通部65Cの容積によりインナ室R1の容積の減少を補填して、所望のエア反力特性を実現することができる。
【0104】
ロッド部60Cには、アウタチューブ21Cと連接され、ロッド部材61Cの車体側の端面と連通する車体側タンク室69が設けられる。この車体側タンク室69により、貫通部65Cに連通するインナ室R1がさらに拡張され、インナ室R1の容積がさらに拡大される。このため、第1フロントフォーク11Cの圧側行程時の反力特性を改善するためにリバウンドスプリング67Cが長くなり、その分だけインナ室R1の容積が減少しても、インナ室R1に連通する貫通部65C及び車体側タンク室69からなる増設インナ室の容積によりインナ室R1の容積の減少を補填して、所望のエア反力特性を実現することができる。
【0105】
(3−1−5.車軸ブラケット部40C)
車軸ブラケット部40Cは、
図9に示したように、チューブ保持部41Cと、車軸連結部42Cと、インナチューブ31Cと連接された車軸側タンク室43C(増設インナ室)とを有している。なお、本実施形態では、チューブ保持部41Cと車軸連結部42Cとは一体的に形成されている。
【0106】
チューブ保持部41Cは、インナチューブ31Cの内径よりも小さい外径の円筒形状を有しており、この円筒形状の外周面にはインナチューブ31Cの車軸側の端部近傍に形成された雌ねじ部31Kが螺合される雄ねじ部が形成されている。これにより、チューブ保持部41Cにインナチューブ31Cの車軸側の端部が挿入され、チューブ保持部41Cとインナチューブ31Cとは、シール部材を介して接続される。
【0107】
車軸連結部42Cは、前輪14Aの車軸14S(
図1参照)が挿入される車軸孔42Hを備えている。また、車軸孔42Hの内径は、車軸ボルト(図示せず)を締付けることにより変更可能であり、それによって前輪14Aの車軸14Sを締め付け可能な構成になっている。
【0108】
車軸側タンク室43Cは、通路44Cを介してインナ室R1と連通しており、この車軸側タンク室43Cにより、貫通部65C及び車体側タンク室69に連通するインナ室R1がさらに拡張され、インナ室R1の容積がさらに拡大される。このため、第1フロントフォーク11Cの圧側行程時の反力特性を改善するためにリバウンドスプリング67Cが長くなり、その分だけインナ室R1の容積が減少しても、インナ室R1に連通する貫通部65C、車体側タンク室69及び車軸側タンク室43Cからなる増設インナ室の容積によりインナ室R1の容積の減少を補填して、所望のエア反力特性を実現することができる。なお、車体側タンク室69及び車軸側タンク室43Cは、いずれか一方を設けるように構成してもよい。
【0109】
(3−2.第1フロントフォーク11Cの動作)
(3−2−1.圧側行程)
第1フロントフォーク11Cの圧側行程においては、アウタチューブ21Cとインナチューブ31Cとが軸方向に沿って相対的に近づく方向に移動する。一方、ピストン62Cとロッドガイド66Cとは、軸方向に沿って相対的に遠ざかる方向に移動する。すなわち、ロッドガイド66Cは車体側に向けて相対的に移動し、ピストン62Cはシリンダ50Cの内周面に沿って車軸側に向けて移動する。
【0110】
そして、ピストン62Cがシリンダ50Cの内周面に沿って車軸側に向けて移動することで、インナ室R1の容積が減少してインナ室R1内の空気(第1気体)、及び、インナ室R1に連通する貫通部65C、車体側タンク室69及び車軸側タンク室43C内の空気が圧縮される。これにより、インナ室R1、及び、インナ室R1に連通する貫通部65C、車体側タンク室69及び車軸側タンク室43Cがエアばねとして作用し、アウタチューブ21Cとインナチューブ31Cとを伸張させる方向の反力が発生する。
【0111】
リバウンドスプリング67Cは、圧側行程における所定の収縮ストローク領域内において、アウタチューブ21Cとインナチューブ31Cとを収縮方向に附勢してインナ室R1、及び、インナ室R1に連通する貫通部65C、車体側タンク室69及び車軸側タンク室43Cのエアばねによるエア反力を抑制する。
【0112】
ロッドガイド66Cがインナチューブ31C内を車体側に向けて移動することで、アウタ室R2の容積が狭まってアウタ室R2内の空気(第2気体)が圧縮される。これにより、アウタ室R2がエアばねとして作用し、アウタ室R2においてもインナ室R1と同様、アウタチューブ21Cとインナチューブ31Cとを伸張させる方向の反力が発生する。
【0113】
(3−2−2.伸側行程)
第1フロントフォーク11Cの伸側行程においては、アウタチューブ21Cとインナチューブ31Cとが軸方向に沿って相対的に遠ざかる方向に移動する。一方、ピストン62Cとロッドガイド66Cとは、軸方向に沿って相対的に近づく方向に移動する。すなわち、ロッドガイド66Cは車体側から離れる方向に移動し、ピストン62Cはシリンダ50Cの内周面に沿って車軸側から離れる方向に移動する。
【0114】
ピストン62Cがシリンダ50Cの内周面に沿って車軸側から離れる方向に移動することにより、リバウンドスプリング67Cが圧縮される。これにより、アウタチューブ21Cとインナチューブ31Cとを収縮させる方向の反力が発生する。
【0115】
(3−3.第1フロントフォーク11Cの効果)
以上のように、本実施形態に係る第1フロントフォーク11Cは、車体側に設けられるアウタチューブ21Cと、車軸側に設けられると共に、アウタチューブ21Cの内周を摺動するインナチューブ31Cと、第1気体が封入されると共に、その第1端がインナチューブ31Cの車軸側の端部に取り付けられ、その第2端がアウタチューブ21Cの内部に挿入されるシリンダ50Cと、アウタチューブ21Cの車体側の端部に取り付けられると共に、シリンダ50Cに挿入されるロッド部材61Cと、ロッド部材61Cに取り付けられると共に、シリンダ50Cの内周を摺動するピストン62Cと、シリンダ50Cの第2端とピストン62Cとの間に介装されたリバウンドスプリング67Cと、シリンダ50Cの内部でピストン62Cよりも車軸側に形成されたインナ室R1と、インナ室R1に連通すると共に、インナ室の容積が拡大されるように増設された増設インナ室(貫通部65C、車体側タンク室69、車軸側タンク室43C)とを備える。
【0116】
これによれば、インナ室R1に連通する増設インナ室を設けることにより、インナ室R1の容積が拡大される。このため、第1フロントフォーク11Cの圧側行程時の反力特性を改善するためにリバウンドスプリング67Cが長くなり、その分だけインナ室R1の容積が減少しても、インナ室R1に連通する増設インナ室の容積によりインナ室R1の容積の減少を補填して、所望のエア反力特性を実現することができる。
【0117】
また、第1フロントフォーク11Cは、増設インナ室として、ロッド部材61Cの内部をロッド部材61Cの軸方向に貫通して形成された貫通部65Cと、貫通部65Cに連通すると共にアウタチューブ21Cに隣接してアウタチューブ21Cの外部に形成された車体側タンク室69とを有している。
【0118】
また、第1フロントフォーク11Cは、増設インナ室として、インナ室R1に連通すると共に、インナチューブ31Cに隣接してインナチューブ31Cの外部に形成された車軸側タンク室43Cを有している。
【0119】
インナ室R1に加えて、インナチューブ31Cの外部にインナチューブ31Cに隣接する車軸側タンク室43Cを有することで、インナ室R1の容積が更に拡大するため、所望のエア反力特性をさらに実現し易くなる。また、増設インナ室をインナチューブ31Cの外部に設けることにより、増設インナ室の容積を拡大する自由度が増加する。
【0120】
貫通部65Cに加えて、増設インナ室としての車体側タンク室69をアウタチューブ21Cの外部に設けることにより、インナ室R1の容積が更に拡大するため、所望のエア反力特性をさらに実現し易くなる。また、増設インナ室をアウタチューブ21Cの外部に設けることにより、増設インナ室の容積を拡大する自由度が増加する。また、増設インナ室を車体側に配置することができるので、第1フロントフォーク11Cの車軸側のレイアウトの自由度が向上する。
【0121】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。