(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転積層ステップは、前記素材板厚計測ステップで計測された複数の前記計測基準点における前記素材の板厚に基づいて、補間演算を行って、前記積層基準点における前記素材の板厚を推定する補間演算ステップを含む、
請求項1に記載の積層鉄心形成方法。
素材から打ち抜かれた複数の鉄心片を積層して、積層鉄心を形成する積層鉄心形成装置を構成するコンピュータであって、前記素材の板厚を計測する板厚計測ユニットと、前記素材から前記鉄心片を打ち抜く鉄心片打抜ユニットと、前記鉄心片を、中心軸回りに、積層体に対して相対的に回転させて、前記積層体の上に積層する回転積層ユニットを制御するコンピュータにインストールされて、
前記板厚計測ユニットを、複数の計測基準点において、前記素材の板厚を計測する素材板厚計測手段として、機能させ、
前記回転積層ユニットを、
前記素材板厚計測手段で計測された前記計測基準点における前記素材の板厚に基づいて、前記鉄心片を、先に積層された積層体に対して中心軸回りに相対的に回転させて、前記積層体の上に積層した場合の、複数の積層基準点における積層高さを推定し、推定された複数の前記積層高さの最大値から最小値を減じて積層高偏差を算出する操作を、複数の回転角度について繰り返して、前記積層高偏差が最小になる最適回転角度を決定し、前記鉄心片を、中心軸回りに、前記積層体に対して相対的に、前記最適回転角度だけ実際に回転させて、前記積層体の上に積層する回転積層手段として、機能させる、
プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、転積を行えば、転積を行わない場合に比べて、積層鉄心の傾きは一応は減少する。しかしながら、鉄心片の板厚偏差は一定ではない。最大板厚と最小板厚が生じる部位も、鉄心片毎に微妙に変動する。そのため、毎回、同じ角度だけ回転角度を変更する従来の転積法では、板厚偏差を十分に相殺できない場合がある。つまり、積層鉄心の形状精度を十分に改善できない場合がある。また、回転電機の性能を向上させるために、積層鉄心の形状精度を更に改善することが求められている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、鉄心片の板厚偏差に起因する積層鉄心の傾きをより確実に解消して、積層鉄心の形状精度を更に改善できる積層鉄心形成方法、積層鉄心形成装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る積層鉄心形成方法は、素材から打ち抜かれた複数の鉄心片を積層して、積層鉄心を形成する積層鉄心形成方法において、複数の計測基準点において、前記素材の板厚を計測する素材板厚計測ステップと、前記素材から前記鉄心片を打ち抜く鉄心片打抜ステップと、前記素材板厚計測ステップで計測された前記計測基準点における前記素材の板厚に基づいて、前記鉄心片を、先に積層された積層体に対して中心軸回りに相対的に回転させて、前記積層体の上に積層した場合の、複数の積層基準点における積層高さを推定し、推定された複数の前記積層高さの最大値から最小値を減じて積層高偏差を算出する操作を、複数の回転角度について繰り返して、前記積層高偏差が最小になる最適回転角度を決定し、前記鉄心片を、中心軸回りに、前記積層体に対して相対的に、前記最適回転角度だけ実際に回転させて、前記積層体の上に積層する回転積層ステップと、を有するものである。
【0010】
前記計測基準点及び前記積層基準点は、前記素材の前記鉄心片にされる領域の外側に配置されていても良い。
【0011】
前記計測基準点は、前記素材の前記鉄心片にされる領域の外側に配置され、前記積層基準点は、前記素材の前記鉄心片にされる領域内に配置されていても良い。
【0012】
前記計測基準点及び前記積層基準点は、前記素材の前記鉄心片にされる領域内に配置されていても良い。
【0013】
前記回転積層ステップは、前記素材板厚計測ステップで計測された複数の前記計測基準点における前記素材の板厚に基づいて、補間演算を行って、前記積層基準点における前記素材の板厚を推定する補間演算ステップを含んでいても良い。
【0014】
前記素材から複数の前記鉄心片を打ち抜く場合に、複数の前記計測基準点の少なくとも一部は、前記鉄心片にされる領域であって前記素材において隣接する2つの領域の中間に配置されていて、当該2つの領域の間で共有されていても良い。
【0015】
本発明に係る積層鉄心形成装置は、素材から打ち抜かれた複数の鉄心片を積層して、積層鉄心を形成する積層鉄心形成装置において、複数の計測基準点において、前記素材の板厚を計測する板厚計測ユニットと、前記素材から前記鉄心片を打ち抜く鉄心片打抜ユニットと、前記板厚計測ユニットで計測された前記計測基準点における前記素材の板厚に基づいて、前記鉄心片を、先に積層された積層体に対して中心軸回りに相対的に回転させて、前記積層体の上に積層した場合の、複数の積層基準点における積層高さを推定し、推定された複数の前記積層高さの最大値から最小値を減じて積層高偏差を算出する操作を、複数の回転角度について繰り返して、前記積層高偏差が最小になる最適回転角度を決定し、前記鉄心片を、中心軸回りに、前記積層体に対して相対的に、前記最適回転角度だけ実際に回転させて、前記積層体の上に積層する回転積層ユニットと、を備えるものである。
【0016】
本発明に係るプログラムは、素材から打ち抜かれた複数の鉄心片を積層して、積層鉄心を形成する積層鉄心形成装置を構成するコンピュータであって、前記素材の板厚を計測する板厚計測ユニットと、前記素材から前記鉄心片を打ち抜く鉄心片打抜ユニットと、前記鉄心片を、中心軸回りに、積層体に対して相対的に回転させて、前記積層体の上に積層する回転積層ユニットを制御するコンピュータにインストールされて、前記板厚計測ユニットを、複数の計測基準点において、前記素材の板厚を計測する素材板厚計測手段として、機能させ、前記回転積層ユニットを、前記素材板厚計測手段で計測された前記計測基準点における前記素材の板厚に基づいて、前記鉄心片を、先に積層された積層体に対して中心軸回りに相対的に回転させて、前記積層体の上に積層した場合の、複数の積層基準点における積層高さを推定し、推定された複数の前記積層高さの最大値から最小値を減じて積層高偏差を算出する操作を、複数の回転角度について繰り返して、前記積層高偏差が最小になる最適回転角度を決定し、前記鉄心片を、中心軸回りに、前記積層体に対して相対的に、前記最適回転角度だけ実際に回転させて、前記積層体の上に積層する回転積層手段として、機能させるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、鉄心片の板厚偏差に応じて、鉄心片の転積角度を最適化できるので、積層鉄心の積層高さの偏差を最小化し、積層鉄心の傾きを最小化することができる。その結果、電機子の品質と回転電機の性能が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る積層鉄心形成方法、積層鉄心形成装置及びプログラムについて図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る積層鉄心形成装置1の構成を示す説明図である。積層鉄心形成装置1は、鋼板2から鉄心片3を打ち抜いて、その鉄心片3を積層して積層鉄心4を形成する装置である。また、
図1に示すように、積層鉄心形成装置1は、板厚計測ユニット5、打抜ユニット6及び回転積層ユニット7を備えている。これらは、図の左側から右側に順に配列されている。なお、積層鉄心形成装置1は、図示しない送り装置を備えている。鋼板2は該送り装置によって、
図1において、左側から右側に向かう方向(送り方向)に移送される。そのため、鋼板2は、板厚計測ユニット5、打抜ユニット6及び回転積層ユニット7に順次、搬入されて、後述するような処理が成される。また、積層鉄心形成装置1はコンピュータ8を備えている。板厚計測ユニット5、打抜ユニット6、回転積層ユニット7、及び前記の送り装置は、コンピュータ8によって制御されて、動作する。
【0021】
鋼板2は、鉄心片3を構成する素材であって、一般に電磁鋼板あるいは珪素鋼板と呼ばれる圧延鋼の帯状の薄板である。なお、鋼板2は、圧延機で連続圧延された幅広の原鋼板を、図示しない前工程において、鉄心片3の製造に適した幅にスリット加工して製造される。また、鋼板2は、コイル状に巻き取られた状態(図示せず)で、
図1において積層鉄心形成装置1の左側に配置されている。そして、鋼板2はコイルから引き出されて、
図1における右方向に順次移送されて、積層鉄心形成装置1の内部に搬入される。なお、鋼板2の送り方向(
図1における左右方向)は、圧延機の送り方向と一致する。鋼板2の幅方向(
図1における上下方向)は、圧延機の幅方向と一致する。
【0022】
鉄心片3は、積層鉄心4を構成する部材であって、打抜ユニット6において鋼板2から打ち抜かれる。鉄心片3は、回転積層ユニット7において、順次積層されて、積層鉄心4を構成する。なお、積層鉄心4は図示しない回転電機の電機子(固定子又は回転子)を構成する部品である。
【0023】
板厚計測ユニット5は、積層鉄心形成装置1において、鋼板2が最初に搬入されるユニットである。板厚計測ユニット5では、鋼板2の板厚が複数の部位において計測される。板厚計測ユニット5において計測された鋼板2の板厚はコンピュータ8に記憶される。なお、板厚計測ユニット5の詳細な構成については後述する。板厚の計測が終わった鋼板2は、打抜ユニット6に移送される。
【0024】
打抜ユニット6は、鋼板2から鉄心片3を打ち抜くユニットである。打抜ユニット6の詳細な構成については後述する。また、鋼板2から打ち抜かれた鉄心片3と鋼板2は、回転積層ユニット7に移送される。
【0025】
回転積層ユニット7は、打抜ユニット6から、鋼板2と共に移送された鉄心片3を、鋼板2から分離して、順次積層して積層鉄心4を形成するユニットである。また、回転積層ユニット7は、新たに積層される鉄心片3を、先に積層された鉄心片3(の積層体)に対して、相対的に回転させてから、積層する。つまり、回転積層ユニット7では、転積が行われる。また、鉄心片3が分離された後に残った鋼板2(つまり、スクラップ)は、
図1において、右方向(送り方向)に移送されて、積層鉄心形成装置1の外に排出される。回転積層ユニット7の詳細な構成については後述する。
【0026】
図2(a)に示すように、板厚計測ユニット5は、4組の板厚計51を備えている。板厚計51は、
図2(b)に示すように、上プローブ51aと下プローブ51bとから構成されて、上プローブ51aを鋼板2の上面に、下プローブ51bを鋼板2の下面に、それぞれ接触させて、つまり、上プローブ51aと下プローブ51bで鋼板2を挟持して、鋼板2の板厚を計測する接触式の板厚計である。また、
図2(a)に示すように、4組の板厚計51は、鋼板2の鉄心片3を構成する領域(鋼板2から分離されて鉄心片3となる領域)の外側に仮想される正方形10の各頂点に配置されている。また、板厚計測ユニット5はコンピュータ8に制御されて、前述したような計測を行う。板厚計51で計測された鋼板2の板厚の値はコンピュータ8に入力される。
【0027】
図3に示すように、打抜ユニット6は、打抜パンチ61、打抜ダイス62、板押え63を備えている。また、打抜ダイス62の内部には、プッシュバック用逆押え64が配置されている。打抜パンチ61と板押え63は、それぞれ、図示しない駆動装置で駆動されて、鋼板2に対して昇降される。板押え63が押し下げられて、板押え63と打抜ダイス62の間に鋼板2が挟まれると、その後に、打抜パンチ61が押し下げられて、鋼板2から鉄心片3を打ち抜く。鋼板2から鉄心片3を打ち抜いたら、打抜パンチ61は元の位置に戻される(上方に引き上げられる)。また、プッシュバック用逆押え64の下方には図示しないばね要素が配置されていて、打抜パンチ61が上昇すると、鉄心片3は鋼板2に嵌め戻される。鉄心片3が鋼板2に嵌め戻されたら、板押え63は元の位置に戻される(上方に引き上げられる)。なお、打抜ユニット6はコンピュータ8に制御される。上記の動作はコンピュータ8に制御されてなされる。
【0028】
図4に示すように、回転積層ユニット7は、積層パンチ71、回転積層ダイス72、及び回転積層ダイス72を鉄心片3の中心軸(
図4においてXで示す軸)回りに回転駆動する回転駆動装置73を備えている。また、回転積層ユニット7は、積層パンチ71を昇降させる図示しない駆動装置を備えている。鉄心片3が嵌め込まれた状態で鋼板2が、回転積層ユニット7内に搬入されると、後述するような手順で、コンピュータ8において、最適回転角度が決定され、回転駆動装置73によって、回転積層ダイス72がX軸回りに回転される。その結果、鉄心片3は、回転積層ダイス72に対して、最適回転角度だけ相対的に回転する。その後で、積層パンチ71が押し下げられて、鉄心片3が回転積層ダイス72内に押し入れられる。このようにして、複数の鉄心片3が、回転積層ダイス72に、逐次、押し入れられて、積層体9を形成する。事前に規定された枚数の鉄心片3が回転積層ダイス72内で積層されると、積層鉄心4が完成する。
【0029】
回転積層ダイス72の中には、積層体9が載置されているので、回転積層ダイス72が回転されて、鉄心片3が、回転積層ダイス72に対して、最適回転角度だけ相対的に回転すると、鉄心片3は、積層体9に対して、最適回転角度だけ相対的に回転する。
【0030】
さて、前述したように、板厚計測ユニット5と回転積層ユニット7は、コンピュータ8に制御されて、上記のように動作する。かかる制御を行うために、板厚計測プログラムと回転積層プログラムがコンピュータ8にインストールされている。以下において、板厚計測プログラムと回転積層プログラムによってなされる処理を説明する。
【0031】
板厚計測プログラムは、鋼板2が板厚計測ユニット5に搬入されると起動される。
図5に示すように、板厚計測プログラムが起動されると、板厚計測ユニット5が備える4組の板厚計51が動作されて、鋼板2上に設定された4点の計測基準点において、板厚が計測される(STEP11)。そして、計測された板厚の値をコンピュータ8に記憶して(STEP12)、処理を終える。コンピュータ8に記憶された板厚の計測値は、回転積層プログラムにおいて参照される。なお、前述したように、4点の計測基準点は鋼板2の鉄心片3を構成する領域(鋼板2から打ち抜かれて鉄心片3となる領域)の外側に仮想された正方形10の各頂点に配置されている。以後、
図6に示すように、これら4点の計測基準点に符号a,b,c,dを付けて説明する。また、計測基準点a,b,c,dにおいて計測された、鋼板2の板厚の値を、それぞれ、t
a,t
b,t
c,t
dで表示する。つまり、板厚計測プログラムの処理が終了すると、コンピュータ8には板厚t
a,t
b,t
c,t
dが記憶される。また、板厚t
a,t
b,t
c,t
dでは、回転積層プログラムにおいて参照される。
【0032】
このように、積層鉄心形成装置1においては、コンピュータ8が板厚計測プログラムに従って、処理を行うことによって、素材板厚計測ステップが実行される。また、コンピュータ8が板厚計測プログラムに従って、処理を行うことによって、板厚計測ユニット5が、素材板厚計測手段として機能する。
【0033】
回転積層プログラムによる処理を説明する前に、回転積層プログラムで参照される積層基準点について説明する。積層基準点は、
図7に示すように、平面形において積層体9の外側に仮想された正方形10の各頂点に配置されている。また、積層基準点の積層体9に対する相対的な位置は、計測基準点の鉄心片3に対する相対的な位置に等しい。以後、
図7に示すように、これら4点の積層基準点に符号A,B,C,Dを付けて説明する。また、積層基準点A,B,C,Dにおける積層高さを、それぞれT
A,T
B,T
C,T
Dで表示する。積層基準点A,B,C,Dの積層高さT
A,T
B,T
C,T
Dは、積層体9を構成する全ての鉄心片3の計測基準点a,b,c,dにおいて計測された板厚t
a,t
b,t
c,t
dに基づいて推定される。
【0034】
さて、回転積層プログラムは、鉄心片3が回転積層ユニット7に搬入されると起動される。
図8に示すように、回転積層プログラムが起動されると、まず、鉄心片3を回転させないで(回転角度=0°)、つまり、回転積層ユニット7に搬入された時の向きのままで、積層体9の上に積層した(
図7に示した積層体9の上に、
図9(a)に示した鉄心片3を積層した)場合の、積層基準点A,B,C,Dの積層高さT’
A,T’
B,T’
C,T’
Dを推定する(STEP21)。積層高さT’
A,T’
B,T’
C,T’
Dの推定は下式によってなされる。
【0035】
T’
A=T
A+t
a
T’
B=T
B+t
b
T’
C=T
C+t
c
T’
D=T
D+t
d
【0036】
そして、T’
A,T’
B,T’
C,T’
Dの最大値T’
MAXと最小値T’
MINを求め、その差(T’
MAX−T’
MIN)を積層高偏差ΔT’として算出する(STEP22)。
【0037】
次に、回転積層ユニット7に搬入された鉄心片3を時計回りに90°回転させて(回転角度=90°)、積層体9の上に積層した(
図7に示した積層体9の上に、
図9(b)に示した鉄心片3を積層した)場合の、積層基準点A,B,C,Dの積層高さT’
A,T’
B,T’
C,T’
Dを推定する(STEP23)。積層高さT’
A,T’
B,T’
C,T’
Dの推定は下式によってなされる。
【0038】
T’
A=T
A+t
d
T’
B=T
B+t
a
T’
C=T
C+t
b
T’
D=T
D+t
c
【0039】
そして、T’
A,T’
B,T’
C,T’
Dの最大値T’
MAXと最小値T’
MINを求め、その差(T’
MAX−T’
MIN)を積層高偏差ΔT’として算出する(STEP24)。
【0040】
次に、回転積層ユニット7に搬入された鉄心片3を時計回りに180°回転させて(回転角度=180°)、積層体9の上に積層した(
図7に示した積層体9の上に、
図9(c)に示した鉄心片3を積層した)場合の、積層基準点A,B,C,Dの積層高さT’
A,T’
B,T’
C,T’
Dを推定する(STEP25)。積層高さT’
A,T’
B,T’
C,T’
Dの推定は下式によってなされる。
【0041】
T’
A=T
A+t
c
T’
B=T
B+t
d
T’
C=T
C+t
a
T’
D=T
D+t
b
【0042】
そして、T’
A,T’
B,T’
C,T’
Dの最大値T’
MAXと最小値T’
MINを求め、その差(T’
MAX−T’
MIN)を積層高偏差ΔT’として算出する(STEP26)
【0043】
最後に、回転積層ユニット7に搬入された鉄心片3を時計回りに270°回転させて(回転角度=270°)、積層体9の上に積層した(
図7に示した積層体9の上に、
図9(d)に示した鉄心片3を積層した)場合の、積層基準点A,B,C,Dの積層高さT’
A,T’
B,T’
C,T’
Dを推定する(STEP27)。積層高さT’
A,T’
B,T’
C,T’
Dの推定は下式によってなされる。
【0044】
T’
A=T
A+t
b
T’
B=T
B+t
c
T’
C=T
C+t
d
T’
D=T
D+t
a
【0045】
そして、T’
A,T’
B,T’
C,T’
Dの最大値T’
MAXと最小値T’
MINを求め、その差(T’
MAX−T’
MIN)を積層高偏差ΔT’として算出する(STEP28)。
【0046】
次に、STEP22,24,26,28で算出された、積層高偏差ΔT’を比較して、板厚偏差ΔT’が最小になる回転角度θを決定する(STEP29)。
【0047】
次に、回転積層ダイス72を反時計回り方向に、回転角度θだけ回転させる(STEP30)。その後、積層パンチ71を下降させて、鉄心片3を回転積層ダイス72の中に押し入れて、積層体9の上に積層する。そして、積層パンチ71を上昇させる(STEP31)。そして、積層高さT
A,T
B,T
C,T
Dの値を、積層体9の上に鉄心片3を積層して構成された新たな積層体9の積層高さT’
A,T’
B,T’
C,T’
Dの値に更新して(STEP32)、処理を終える。
【0048】
このように、積層鉄心形成装置1においては、コンピュータ8が回転積層プログラムに従って、処理を行うことによって、回転積層ステップが実行される。また、コンピュータ8が回転積層プログラムに従って、処理を行うことによって、回転積層ユニット7が、回転積層手段として機能する。
【0049】
さて、上記において、鉄心片3の外側の領域に仮想された正方形10の各頂点に計測基準点と積層基準点を配置する例を示したが、計測基準点と積層基準点の配置は、このようなものには限定されない。例えば、
図10(a)に示すように、鉄心片3の外側の領域に3個の計測基準点a,b,cと3個の積層基準点A,B,Cを配置しても良い。この場合、最適回転角度の選択は、鉄心片3を120°ずつ回転させて行われる。つまり、最適回転角度は、0°、120°、240°の中から選択される。あるいは、
図10(b)に示すように、鉄心片3の外側の領域に配置された計測基準点a〜d(積層基準点A〜D)に加えて、計測基準点e(積層基準点E)を鉄心片3の中心に配置するようにしても良い。また、計測基準点と積層基準点を配置する領域は、鉄心片3の外側の領域には限定されない。
図10(c)に示すように、計測基準点a〜d(積層基準点A〜D)を鉄心片3の内側の領域に配置しても良い。
【0050】
また、上記において、鉄心片3のそれぞれに固有の計測基準点の組が配置される例を示したが、隣接する鉄心片3の間で計測基準点を共有するようにしても良い。例えば、計測基準点a〜hを
図11(a)に示すように配置して、計測基準点c,dを鉄心片3aと鉄心片3bの間で、計測基準点e,fを鉄心片3bと鉄心片3cの間で,それぞれ共有するようにしても良い。あるいは、計測基準点a〜jを
図11(b)に示すように配置して、計測基準点dを鉄心片3aと鉄心片3bの間で、計測基準点gを鉄心片3bと鉄心片3cの間で、それぞれ共有するようにしても良い。このように、計測基準点の一部を、隣接する鉄心片3a〜3cの間に配置して、鉄心片3a〜3cの間で共有すれば、板厚計測ユニット5が備える板厚計51の個数を減らすことができる。その結果、板厚計測ユニット5の製造コストが削減される。
【0051】
また、上記においては、計測基準点と積層基準点が同じ位置に配置されて、互いに一対一で対応する例を示した。つまり、鉄心片3を積層体9の上に載置した場合に、平面形において、計測基準点a〜dがそれぞれ積層基準点A〜Dに重なるように構成した例を示した。しかしながら、計測基準点と積層基準点の相互の関係はこのような物には限定されない。例えば
図12に示すように、計測基準点a〜dを鉄心片3の外側の領域に配置して、積層基準点A〜Dを鉄心片3の内側の領域に配置しても良い。この場合、計測基準点a〜dで計測された鉄心片3の板厚に基づいて補間演算を行って、積層基準点A〜Dにおける鉄心片3の積層高さを推定する。
図12の場合において、転積を行わない(回転角度=0°)時の積層高さT’
A〜T’
Dは下式によって推定される。転積を行う(回転角度≠0°)時は、これに準じる。
【0052】
T’
A=T
A+(t
a+t
b)/2
T’
B=T
B+(t
b+t
c)/2
T’
C=T
C+(t
c+t
d)/2
T’
D=T
D+(t
d+t
a)/2
【0053】
計測基準点の個数と積層基準点の個数は異なっていても良い。例えば、
図13(a)に示すように、計測基準点を4個(計測基準点a〜d)を設定して、
図13(b)に示すように積層基準点を8個(積層基準点A〜H)を設定するようにしても良い。
図13の場合において、転積を行わない(回転角度=0°)時に、対応する計測基準点がない積層基準点の積層高さは下式によって推定される。転積を行う(回転角度≠0°)時は、これに準じる。
【0054】
T’
B=T
B+(t
a+t
b)/2
T’
D=T
D+(t
b+t
c)/2
T’
F=T
F+(t
c+t
d)/2
T’
H=T
H+(t
d+t
a)/2
【0055】
以上、説明したように、本発明の実施形態によれば、鉄心片3を積層体9の上に積層した場合の、積層高偏差が最小になる最適回転角度を決定して、当該最適回転角度だけ鉄心片3を中心軸周りに、積層体9に対して相対的に回転させて、鉄心片3を積層体9の上に積層するので、積層鉄心の積層高偏差を最小化して、積層鉄心の傾きを最小化することができる。そのため、積層鉄心の形状精度を十分に改善することができる。その結果、回転電機の性能が向上する。
【0056】
上記において、本発明の実施形態と変形例を説明したが、これらは、この発明の具体的実施態様を例示するものであって、この発明の技術的範囲を画すものではない。この発明は特許請求の範囲に記述された技術的思想の限りにおいて、自由に変形、応用あるいは改良して実施することができる。
【0057】
例えば、上記実施形態においては、素材板厚計測ステップで計測された鋼板2の板厚t
a,t
b,t
c,t
dを、そのまま、回転積層ステップにおいて参照する例を示したが、素材板厚計測ステップに異常値排除ステップを備えて、異常値を排除するようにしても良い。例えば、閾値Eを定めておき、板厚t
cが、他の板厚t
a,t
b,t
dとの差、つまり、|t
c−t
a|,|t
c−t
b|,|t
c−t
d|のいずれもが、閾値Eを超えるような極端に大きい、あるいは極端に小さい値である場合には、板厚t
cの実際の計測値に代えて、板厚t
a,t
b,t
dの算術平均を板厚t
cの値にしても良い。あるいは、板厚t
bと板厚t
dの算術平均を板厚t
cの値にしても良い。あるいは、当該素材板厚計測ステップの直前のターンに係る素材板厚計測ステップで計測された板厚t
cの値を、当該素材板厚計測ステップにおける板厚t
cの値にしても良い。なお、閾値Eは、素材の基準板厚や経験則等により定めれば良い。閾値Eの決定方法は特に限定されない。
【0058】
また、一般に電磁鋼板の磁気特性は、圧延方向に対する角度によって異なる。そこで、最適回転角度を決定する際に、積層鉄心4の磁気特性に偏りが生じないように、各鉄心片3の回転角度を分散させるようにしても良い。
【0059】
また、鉄心片3の積層に当たっては、積層高さによる制御を行っても良い。つまり、積層体9の高さが、事前に規定された積層鉄心4の積層高さに達するまで、鉄心片3の積層を繰り返すようにしても良い。
【0060】
上記実施形態においては、板厚計測ユニット5に接触式の板厚計51を備える例を示したが、板厚計測ユニット5が備える板厚計51は接触式のものには限定されない板厚計51は非接触式のセンサであっても良い。板厚計51の検出原理は特に限定されない。板厚計51は例えば、静電容量センサやレーザセンサであっても良い。
【0061】
上記実施形態においては、板厚計測ユニット5、打抜ユニット6及び回転積層ユニット7を独立させて、分散配置した例を示したが、これらの全部又は一部を一体に構成しても良い。例えば、打抜ユニット6に板厚計51を備えて、板厚計測ユニット5と打抜ユニット6を一体に構成しても良い。また、打抜ユニット6と回転積層ユニット7を一体に構成し、打抜きと積層を同時に行うようにしても良い。あるいは、板厚計測ユニット5、打抜ユニット6及び回転積層ユニット7を一体に構成しても良い。
【0062】
上記実施形態においては、打抜ユニット6に打抜パンチ61と打抜ダイス62の組を1組だけ備えて、1工程で鉄心片3を打ち抜く例を示したが、打抜ユニット6に打抜パンチ61と打抜ダイス62の組を複数組備えて、複数の工程を経て鉄心片3が完成するようにしても良い。
【0063】
上記実施形態においては、回転積層ユニット7において、回転積層ダイス72をX軸回りに回転させる回転駆動装置73を備えて、積層体9を回転させる例を示したが、積層体9を固定して、鉄心片3をX軸回りに回転させるようにしても良い。
【0064】
上記実施形態においては、鋼板2から1種類の鉄心片3を打抜き、1種類の積層鉄心4を形成する例を示した。しかしながら、本発明の適用対象は、このようなものには限定されない。同一の鋼板2から複数種類の鉄心片3を打抜いて、複数種類の積層鉄心4を形成するようにしても良い。そのために、積層鉄心形成装置1に複数台の回転積層ユニット7を備えるようにしても良い。例えば、同一の鋼板2から、回転子鉄心片と固定子鉄心片を同心円状に打抜いて、回転子鉄心片と固定子鉄心片をそれぞれ積層して、回転子積層鉄心と固定子積層鉄心を形成するようにしても良い。その場合、回転子鉄心片専用の板厚計51と固定子鉄心片専用の板厚計51を、それぞれ別個に備えても良いし、同一の板厚計51で兼用しても良い。