【文献】
西村正三,“マルチコプタを活用したインフラ・文化財構造物点検調査における適用事例”,計測と制御,日本,公益社団法人計測自動制御学会,2017年 1月10日,第56巻, 第1号,p.36-39
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に基づく検査対象となる構造物を説明する図である。
図1に示されるように、本例においては、一例として桟橋4を検査する場合について説明する。具体的には、桟橋4の桟橋上部工下面を検査する場合について説明する。
【0022】
図2は、本発明の実施形態に基づく小型船1の外観構成を説明する図である。
図2に示されるように、小型船1には、桟橋上部工下面を検査する検査装置10が搭載されている。
【0023】
小型船1は、図示しないコントローラによる遠隔操作により水面を移動する船である。なお、一例として小型船1を遠隔操作する場合について説明するが、航行制御装置を用いた自動航行(予め設定された計測コース等の情報とGNSS等で得られた船位置とを比較しながら航行する機能)により移動させるようにしてもよい。
【0024】
小型船1は、本体111と、本体111を左右方向に貫通する第1パイプ112と、本体111の後方に設けられ左右方向に延びる第2パイプ113と、第2パイプ113に接続された支持部材114と、本体111の両側に配置された一対のフロート110を備えている。
【0025】
本体111上には、2つのカメラ120,121と、制御装置30と、距離計16が設けられる。また、フロート110上には、桟橋上部工下面を撮像するために海面側と反対方向の上方を撮像方向とした状態でカメラ122〜125が載置されている。左側のフロート110には、カメラ122,124が設けられている。右側のフロート110には、カメラ123,125が設けられている。本例においては、一例として6台のカメラが設けられているが、少なくとも1台のカメラが有ればよく、特にカメラの台数については限定されない。
【0026】
ライト130は、連結金具132により第1パイプ112の左側の領域で連結されている。ライト131は、連結金具133により第1パイプ112に右側の領域で連結されている。なお、ライト130,131の位置については当該位置に限定されるものではなく、カメラ122〜125の撮像範囲が一定照度となるように調整可能な位置であればどのような位置でも良い。
【0027】
支持部材114には慣性計測装置14が取り付けられている。
本体111には、図示しないコントローラから送信される信号を受信する受信器と、受信器で受信した信号に従って図示しないモータにより駆動されるスクリュウプロペラとがさらに設けられている。
【0028】
フロート110は、前後方向に延在し、内部に空気が充填されて浮遊性を備える樹脂製容器である。フロート110は、小型船1の左側と右側とのそれぞれに配置されている。このため、小型船1は横揺れし難い構成となっている。
【0029】
図3は、本発明の実施形態に基づく検査装置10の構成を説明する図である。
図3に示されるように、検査装置10は、撮像装置12と、照明装置13と、慣性計測装置14と、距離計16と、表示部18と、制御装置30とを備える。
【0030】
撮像装置12は、カメラ122〜125で構成される。カメラ122〜125は、同期信号に従って並列的に撮像する。すなわち、同期信号に従って同時に複数の撮像データを取得することが可能である。
【0031】
照明装置13は、ライト130,131で構成される。桟橋上部工の下部には自然光が入り難いが、カメラ122〜125の撮像範囲が一定照度となるように調整される。なお、照明装置13における照度の調整は、自動調整であってもよいし、コントローラからの指示に従って調整するようにしてもよい。
【0032】
慣性計測装置14は、桟橋4の下部等においてGNSS(Global Navigation Satellite System)による位置測定が難しい場所において撮像装置12の位置情報の算出に用いる。一例として、IMU(inertial measurement unit)を利用することが可能である。IMUには、ジャイロおよび加速度計の機能を有するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサが設けられており、当該センサを用いた積算位置の算出に基づいて撮像装置12の位置情報を算出することが可能である。具体的には、桟橋4の外では、GNSSにより位置情報を算出して、GNSSによる位置測定ができなくなる直前の位置を基点に、慣性計測装置14を用いて桟橋4の下部における位置情報を算出するようにしてもよい。
【0033】
距離計16は、レーザ光線式の距離計である。測定対象に向けてレーザ光線を照射し、反射して返って来るまでの時間を測ることにより対象との距離を計測する。なお、レーザ光線に限られず、超音波等を利用して距離を計測するようにしてもよい。本例においては、距離計16は、慣性計測装置14と連携して用いられ、慣性計測装置14の積算位置補正に用いられる。これにより精度の高い位置情報を算出することが可能である。
【0034】
慣性計測装置14の位置情報を小型船1の位置情報として利用することにより、小型船1の航行制御装置を用いた自動航行への入力信号として用いることが可能である。あるいは、当該位置情報に基づいて、オペレータが操作するコントローラの操作画面に表示される地図に位置表示を行なって、オペレータへの操船補助情報とすることも可能である。また、本例においては、後述するが合成画像データの生成においても利用することが可能である。
【0035】
制御装置30は、撮像装置12で取得した複数の撮像データに対する画像処理を実行する。具体的には、制御装置30は、オルソ画像生成部20と、画像合成部26と、画像解析部28とを含む。
【0036】
オルソ画像生成部20は、撮像装置12で取得した複数の撮像データのそれぞれに対して複数のオルソ画像を生成する。
【0037】
具体的には、地物データ取得部21と、正射投影部25とを含む。
地物データ取得部21は、撮像装置12により撮像された複数の撮像データに基づいて、3次元形状の地物データを取得する。
【0038】
正射投影部25は、地物データ取得部21で取得した地物データに対して複数の撮像データのそれぞれを正射投影した複数のオルソ画像を生成する。
【0039】
地物データ取得部21は、状態推定部22と、地物データ生成部24とを含む。
状態推定部22は、撮像装置12で取得した複数の撮像データのそれぞれに対してSfM(Structure from Motion)処理を実行する。SfM処理は、撮像データに対して、カメラの撮像位置および撮像姿勢を算出し、3次元モデリングの構築を行なう処理である。
【0040】
具体的には、画像マッチングにより対応点を多数取得し、写真測量の原理式を最小二乗近似等で計算(=バンドル法)し、付与した標定点を用いて撮像位置および姿勢に関する撮像状態情報を取得する。なお、SfM処理における基準点として小型船の位置情報を用いることが可能である。
【0041】
地物データ生成部24は、状態推定部22で推定した撮像状態情報に基づいて複数の撮像データに対してMVS(Multi-View Stereo)処理を実行し、3次元点群データを算出する。そして、当該3次元点群データからDSM(Digital Surface Model)(地物データ)を生成する。MVS(Multi View Stereo)処理は、撮像位置および撮像姿勢が関連付けられた画像データ間で、立体視可能な総てのペアで画像マッチングにより対応点を抽出し、その抽出した対応点の座標を算出して、3次元点群データとして保存する処理である。
【0042】
正射投影部25は、生成したDSMに、複数の撮像データをそれぞれ正射投影し、正射投影画像である複数のオルソ画像を生成する。この状態で作成された画像は、小型船から桟橋上部工下面を見上げた状態の画像となる。
【0043】
なお、本例においては、正射投影部25は、一例としてオルソ画像から透過オルソ画像を生成する。具体的には、小型船から桟橋上部工下面を見上げた状態のオルソ画像を桟橋の測量図等にあわせ座標軸の変換をおこない、桟橋の上部から桟橋上部工下面を透過した透過オルソ画像を生成する。
【0044】
画像合成部26は、正射投影部25により生成された複数の透過オルソ画像を合成した合成画像データを生成する。具体的には、複数の透過オルソ画像に対してモザイク処理(画像が重なった部分を切り抜いて合成する処理)することにより合成画像データを生成する。モザイク処理には種々の方式があるが、透過オルソ画像の一致点を抽出することにより重なり合う部分を判別することが可能である。
【0045】
この場合、桟橋の上部から桟橋上部工下面を透過した透過オルソ画像の合成画像データが生成される。なお、小型船から桟橋上部工下面を見上げた状態のオルソ画像の合成画像データを生成することも可能である。
【0046】
合成画像データには、状態推定部22で推定された撮像位置および姿勢に関する撮像状態情報が関連付けられた画像データが合成されている。
【0047】
画像合成部26は、生成した合成画像データを表示部18に出力する。
画像解析部28は、画像合成部26で生成された合成画像データに対する画像解析処理を実行してその解析結果を表示部18に出力する。
【0048】
表示部18は、制御装置30での画像処理を実行した結果を表示する。具体的には、表示部18は、画像合成部26で生成された合成画像データを表示する。また、表示部18は、画像解析部28で画像解析処理された解析結果を表示する。表示部は、制御装置30での画像処理を実行した結果を表示する。表示部18は、検査装置10の一部として設けられていてもよいし、検査装置10と別体として設けられていてもよい。
【0049】
図4は、本発明の実施形態に基づく桟橋上部工下面を検査装置10が検査する状態を説明する図である。
【0050】
図4には、桟橋上部工5が支持部7を介して杭8により支持されている場合が示されている。本例は、桟橋上部工5が陸地とは連結されていない場合(海上にある場合)が示されている。小型船1は、杭8の間の桟橋4の下部に入り込んで検査装置10により撮像する場合が示されている。本例においては、複数のカメラを用いて桟橋上部工5の下面を撮像する場合が示されている。当該図に示されるように複数のカメラで撮像する撮像範囲は互いにオーバーラップするように設定される。撮像範囲が互いにオーバラップすることにより画像マッチングにおける対応点を多数取得することが可能となり合成画像の精度を高めることが可能となる。
【0051】
図5は、本発明の実施形態に基づく桟橋上部工下面を検査装置10が検査する別の状態を説明する図である。
【0052】
図5には、桟橋上部工5が支持部7を介して杭8により支持されている場合が示されている。本例においては、桟橋上部工5が陸地と連結されている場合が示されている。小型船1は、杭8の間の桟橋4の下部に入り込んで検査装置10により撮像する場合が示されている。本例においては、複数のカメラを用いて桟橋上部工5の下面を撮像する場合が示されている。また、距離計16によりレーザで陸地と検査装置10との間の距離を測距する場合も示されている。距離計16で取得された距離情報は、慣性計測装置14の積算位置補正に用いられる。
【0053】
図6は、本発明の実施形態に基づく桟橋上部工下面を検査する検査装置10の処理について説明するフロー図である。
【0054】
図6に示されるように、まず、検査装置10は、撮像データを取得する(ステップS2)。具体的には、撮像装置12は、桟橋上部工下面の撮像データを取得する。複数のカメラを用いることにより複数の撮像データを取得する。なお、1つのカメラを用いる場合であっても連続的に撮像することにより複数の撮像データを取得することも可能である。
【0055】
次に、検査装置10は、撮像位置および撮像姿勢を推定する(ステップS4)。具体的には、状態推定部22は、撮像装置12で取得した複数の撮像データのそれぞれに対してSfM処理を実行して、撮像データに対する撮像位置および撮像姿勢(撮影状態情報)を推定する。
【0056】
次に、検査装置10は、地物データを生成する(ステップS6)。
具体的には、地物データ取得部21は撮像装置12により撮像された複数の撮像データに基づいて、3次元形状の地物データを生成する。状態推定部22で推定した撮像状態情報に基づいて複数の撮像データに対してMVS処理を実行し、3次元点群データを算出する。そして、当該3次元点群データからDSM(桟橋上部工下面の3D形状データ)を生成する。
【0057】
次に、検査装置10は、オルソ画像を生成する(ステップS8)。
具体的には、正射投影部25は、地物データ取得部21で取得したDSM(桟橋上部工下面の3D形状データ)に対して複数の撮像データのそれぞれを正射投影した複数のオルソ画像を生成する。また、座標軸の変換を行ない桟橋上部工下面を透過した複数の透過オルソ画像を生成する。
【0058】
次に、検査装置10は、合成処理を実行する(ステップS9)。具体的には、画像合成部26は、複数の透過オルソ画像を合成した合成画像データを生成する。
【0059】
次に、検査装置10は、解析処理を実行する(ステップS10)。画像解析部28は、透過オルソ画像に対してひび割れや浮き、剥離等のパターン解析処理を実行する。
【0060】
次に、検査装置10は、表示する(ステップS12)。具体的には、表示部220は、画像合成部26で生成された合成画像データを表示する。また、表示部220は、画像解析部28で合成画像データに対して画像解析処理した解析結果を出力表示する。
【0061】
そして、検査装置10は、処理を終了する(エンド)。
図7は、本発明の実施形態に基づく検査装置10の表示部18に表示された合成画像データを説明する図である。
【0062】
図7には、
図1の桟橋4の上部から桟橋上部工を透過した透過オルソ画像の合成画像データに基づく合成画像が示されている。
【0063】
また、
図7には、当該合成画像に対して画像解析処理した解析結果として、ひび割れや浮き、剥離等の異常パターンが検出された領域が表示されている。なお、解析結果として本例においては、当該検出された領域を矩形の枠で示す場合について説明するが、特にこれに限られず、強調表示するために色を着色したり、点滅させたり等することも可能である。
【0064】
図8は、本発明の実施形態に基づく合成画像の矩形領域を拡大した場合を説明する図である。
【0065】
図8に示されるように、
図7で説明した矩形領域を拡大した場合が示されている。具体的には、矩形領域に対して所定の処理(ダブルクリック)等の操作指示を実行することにより当該領域が拡大されて表示される。当該矩形領域を拡大することにより詳細な桟橋上部工の状況を容易に把握することが可能である。
【0066】
本発明の実施形態に基づく方式により、撮像装置12で撮像した撮像データに基づいてオルソ画像を生成し、オルソ画像を合成した合成画像データを生成することにより、構造物である桟橋上部工下面の全体の状態を簡易に把握することが可能である。また、それとともに、局所的な劣化状態も簡易な方式で視覚的に把握することが可能である。
【0067】
なお、本例においては、桟橋上部工を上部から見た透過オルソ画像を合成した合成画像を表示部220に表示する場合について説明したが、小型船から桟橋上部工を見上げたオルソ画像を合成した合成画像を表示部220に表示するようにしてもよい。当該オルソ画像と透過オルソ画像とを切替可能に設けるようにしてもよい。
【0068】
なお、本例においては、オルソ画像生成部20は、撮像データに基づいて生成したDSMに撮像データを正射投影したオルソ画像を生成する方式について説明したが、3次元形状の設計データ等により桟橋上部工下面の地物データが既知である場合には、当該設計データに撮像データを正射投影したオルソ画像を生成してもよい。
【0069】
(その他の実施形態)
図9は、他の実施形態に基づく検査システムを説明する図である。
【0070】
図9に示されるように、検査装置の一部の機能を遠隔に設けられたサーバに実行するようにしてもよい。
【0071】
検査システムは、検査ユニット200と、サーバ210と、表示部220とを含む。
検査ユニット200は、小型船1に搭載される。サーバ210および表示部220は遠隔地に設ける。
【0072】
検査ユニット200は、撮像装置12と、照明装置13と、慣性計測装置14と、通信部15と、距離計16とを含む。
【0073】
サーバ210は、オルソ画像生成部20と、通信部27と、画像合成部26と、画像解析部28とを含む。オルソ画像生成部20は、地物データ取得部21と、正射投影部25とを含む。地物データ取得部21は、状態推定部22と、地物データ生成部24とを含む。
【0074】
図3で説明した構成と比較して、検査ユニット200に通信部27が設けられている点が異なる。また、サーバ210に通信部27が設けられている点が異なる。その他の機能および構成については
図3で説明したのと基本的に同様であるのでその詳細な説明については繰り返さない。
【0075】
本例においては、検査ユニット200に設けられた通信部15とサーバ210に設けられた通信部27とが通信し、互いにデータの授受を実行する。
【0076】
具体的には、撮像装置12で撮像された撮像データおよび慣性計測装置14等で計測された位置は、通信部15を介してサーバ210に送信される。サーバ210の通信部27は、当該データを受信して、オルソ画像生成部20に出力する。そして、上記で説明したのと同様の処理を実行する。
【0077】
表示部220は、サーバ210からのデータに基づいて情報を表示する。
本例においては、表示部220は、画像合成部26で生成された合成画像データを表示する。また、表示部220は、画像解析部28で合成画像データに対して画像解析処理した解析結果を出力表示する。
【0078】
当該構成により、データ処理量が多い画像処理等を遠隔に設けられたサーバで実行することにより演算処理を高速化することが可能である。
【0079】
<作用効果>
上述した実施形態の作用効果について説明する。
【0080】
実施形態における桟橋上部工下面の検査装置10には、桟橋上部工5の下面を撮像する撮像装置12と、オルソ画像生成部20と、画像合成部26とが設けられる。オルソ画像生成部20は、撮像装置12により撮像された複数の撮像データのそれぞれに対して複数のオルソ画像を生成する。画像合成部26は、オルソ画像生成部20により生成した複数のオルソ画像を合成した桟橋上部工5の下面の合成画像データを生成する。
【0081】
検査装置10は、複数の撮像データのそれぞれに対して複数のオルソ画像を生成する。そして、生成した複数のオルソ画像を合成した合成画像データを生成する。その結果、桟橋上部工の下面側の局所的な部分のみならず全体の構造物の劣化状態を視覚的に簡易に把握することが可能となる。
【0082】
実施形態における桟橋上部工下面の検査装置10のオルソ画像生成部20には、地物データ取得部21と、正射投影部25とが設けられる。地物データ取得部21は、撮像装置12により撮像された複数の撮像データに基づいて、3次元形状の地物データを取得する。正射投影部25は、地物データ取得部21で取得した地物データに対して複数の撮像データのそれぞれを正射投影した複数のオルソ画像を生成する。
【0083】
検査装置10は、複数の撮像データに基づいて、3次元形状の地物データを取得し、取得した3次元形状の地物データに対して複数の撮像データのそれぞれを正射投影した複数のオルソ画像を生成する。したがって、複数の撮像データに基づいて、3次元形状の地物データが取得されるため精度の高い地物データを取得することが可能である。これによりオルソ画像の精度を高めることが可能となり、桟橋上部工の下面側の構造物の劣化状態を視覚的に簡易に把握することが可能となる。
【0084】
実施形態における桟橋上部工下面の検査装置10の地物データ取得部21には、状態推定部22と、地物データ生成部24とを含む。状態推定部22は、撮像装置12により撮像された複数の撮像データに対してSfM(Structure from Motion)処理を実行することにより撮像位置および姿勢に関する撮像状態情報を取得する。地物データ生成部24は、状態推定部22で取得した撮像状態情報に基づいて複数の撮像データに対してMVS(Multi-View Stereo)処理を実行することによりDSM(桟橋上部工下面の3D形状データ)を生成する。
【0085】
検査装置10は、撮像データに対するSfM処理により撮像位置および姿勢に関する撮像状態情報を取得し、当該撮像状態情報に基づいて複数の撮像データに対してMVS処理を実行することにより地物データを生成する。したがって、Sfm処理およびMVS処理により精度の高い地物データを取得することが可能である。これによりオルソ画像の精度を高めることが可能となり、桟橋上部工の下面側の構造物の劣化状態を視覚的に簡易に把握することが可能となる。
【0086】
実施形態における桟橋上部工下面の検査装置10には、慣性計測装置14がさらに設けられる。慣性計測装置14は、撮像装置12の位置情報を取得する。地物データ生成部24は、慣性計測装置14で取得した位置情報および状態推定部22で取得された撮像状態情報に基づいて複数の撮像データに対してMVS処理を実行することによりDSM(桟橋上部工下面の3D形状データ)を生成する。
【0087】
検査装置10は、慣性計測装置14を用いて撮像装置12の位置情報を算出するため、桟橋上部工下面のGNSSによる位置情報の算出が難しい場所でも精度の高い位置情報の算出が可能である。したがって、SfM処理およびMVS処理により精度の高い地物データを取得することが可能である。これによりオルソ画像の精度をさらに高めることが可能となり、桟橋上部工の下面側の構造物の劣化状態を視覚的に簡易に把握することが可能となる。
【0088】
実施形態における桟橋上部工下面の検査装置10には、距離計16がさらに設けられる。距離計16は、対象物に対する距離情報を計測する。地物データ生成部24は、距離計で取得した距離情報、慣性計測装置14で取得した位置情報および状態推定部22で取得された撮像状態情報に基づいて複数の撮像データに対してMVS処理を実行することによりDSM(桟橋上部工下面の3D形状データ)を生成する。
【0089】
検査装置10には、距離計16がさらに設けられるため
図5で説明したような陸地との距離を測距することが可能であり、撮像装置12の位置情報の精度を高めることが可能である。したがって、SfM処理およびMVS処理により精度の高いDSM(桟橋上部工下面の3D形状データ)を取得することが可能である。これによりオルソ画像の精度をさらに高めることが可能となり、桟橋上部工の下面側の構造物の劣化状態を視覚的に簡易に把握することが可能となる。
【0090】
実施形態における桟橋上部工下面の検査装置10の撮像装置12は、桟橋上部工下面を同期信号に従って並列的に撮像する複数のカメラ120〜125を含む。
【0091】
検査装置10の撮像装置12には、複数のカメラが設けられることにより、一度に撮影する範囲が広くなり、検査装置10の検査時間を短縮することが可能となる。
【0092】
実施形態における桟橋上部工下面の検査装置10には、桟橋上部工下面を照らす照明装置13がさらに設けられる。
【0093】
検査装置10は、桟橋上部工下面の自然光が入り難い場所であっても照明装置13により照度を確保することが可能であるため鮮明な撮像データを取得することが可能である。これにより、鮮明なオルソ画像を生成することが可能である。その結果、桟橋上部工の下面側の局所的な部分のみならず全体の構造物の劣化状態を視覚的に簡易に把握することが可能となる。
【0094】
実施形態における桟橋上部工下面の検査装置10には、合成画像データを解析する画像解析部28がさらに設けられる。
【0095】
検査装置10は、画像解析部28による合成画像データの解析結果を出力することが可能となるため、桟橋上部工下面側の構造物の劣化状態を視覚的に簡易に把握することが可能である。
【0096】
実施形態における桟橋上部工下面の検査システムには、桟橋上部工下面を撮像する撮像装置12と、撮像装置12により撮像された複数の撮像データを取得するサーバ210とが設けられる。サーバ210は、オルソ画像生成部20と、画像合成部26とを含む。オルソ画像生成部20は、撮像装置12により撮像された複数の撮像データのそれぞれに対して複数のオルソ画像を生成する。画像合成部26は、オルソ画像生成部20により生成された複数のオルソ画像を合成した桟橋上部工下面の合成画像データを生成する。
【0097】
検査システムは、複数の撮像データのそれぞれに対して複数のオルソ画像を生成する。そして、生成した複数のオルソ画像を合成した合成画像データを生成する。その結果、桟橋上部工の下面側の局所的な部分のみならず全体の構造物の劣化状態を視覚的に簡易に把握することが可能となる。
【0098】
実施形態における桟橋上部工下面の検査方法は、桟橋上部工下面を撮像するステップと、撮像された複数の撮像データのそれぞれに対して複数のオルソ画像を合成するステップと、生成された複数のオルソ画像を合成した桟橋上部工下面の合成画像データを生成するステップとが実行される。
【0099】
検査方法は、複数の撮像データのそれぞれに対して複数のオルソ画像を生成する。そして、生成した複数のオルソ画像を合成した合成画像データを生成する。その結果、桟橋上部工の下面側の局所的な部分のみならず全体の構造物の劣化状態を視覚的に簡易に把握することが可能となる。
【0100】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。