特許第6653758号(P6653758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6653758
(24)【登録日】2020年1月30日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】防汚性フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/02 20060101AFI20200217BHJP
   B29D 7/01 20060101ALI20200217BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20200217BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20200217BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20200217BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20200217BHJP
【FI】
   B29C59/02 B
   B29D7/01
   C08G18/79 010
   C08G18/67 075
   C08G18/38 002
   C08J7/04 Z
【請求項の数】11
【全頁数】52
(21)【出願番号】特願2018-527526(P2018-527526)
(86)(22)【出願日】2017年7月3日
(86)【国際出願番号】JP2017024381
(87)【国際公開番号】WO2018012344
(87)【国際公開日】20180118
【審査請求日】2019年1月11日
(31)【優先権主張番号】特願2016-137936(P2016-137936)
(32)【優先日】2016年7月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 秀和
(72)【発明者】
【氏名】田口 登喜生
(72)【発明者】
【氏名】中松 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】芝井 康博
(72)【発明者】
【氏名】厚母 賢
(72)【発明者】
【氏名】山下 恒雄
(72)【発明者】
【氏名】新居 沙弥
(72)【発明者】
【氏名】阪本 英司
(72)【発明者】
【氏名】英 翔
(72)【発明者】
【氏名】三橋 尚志
(72)【発明者】
【氏名】荒木 孝之
【審査官】 菅原 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/155480(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/056744(WO,A1)
【文献】 特開2014−236172(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/131652(WO,A1)
【文献】 特開2014−200973(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/021408(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/04
B23B 27/16,27/18,27/30,
38/06
C08G 18/67,18/79
G02B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の凸部が可視光の波長以下のピッチで設けられる凹凸構造を表面に有する重合体層を備える防汚性フィルムの製造方法であって、
樹脂を基材の表面上に塗布するプロセス(1)と、
前記樹脂を間に挟んだ状態で前記基材を金型に押し当て、前記凹凸構造を前記樹脂の表面に形成するプロセス(2)と、
前記凹凸構造を表面に有する前記樹脂を硬化させ、前記重合体層を形成するプロセス(3)とを含み、
前記樹脂は、パーフルオロ(ポリ)エーテル基を有する化合物を含んでなる防汚剤と、前記防汚剤と相溶する相溶化剤とを含有し、
前記相溶化剤は、アミド基を有する単官能モノマーであり、
前記樹脂中の相溶化剤の含有率は、20重量%以上、40重量%以下であり、
前記金型の表面は、パーフルオロ(ポリ)エーテル基と、加水分解可能な基と、Si原子とを有する化合物を含んでなる離型剤で離型処理が施されていることを特徴とする防汚性フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記防汚剤は、成分(A)ジイソシアネートの三量体であるポリイソシアネートと成分(B)活性水素を有する化合物との反応物である炭素−炭素二重結合含有化合物を含んでなり、
前記成分(B)は、成分(B1)活性水素を有するパーフルオロポリエーテルと、成分(B2)炭素−炭素二重結合を含有する基及び活性水素を有するモノマーとを含み、
前記成分(B1)は、下記式(B1−i)及び(B1−ii)のうちの一方で表される少なくとも1種の化合物である
Rf−PFPE−Z−X (B1−i)
X−Z−PFPE−Z−X (B1−ii)
(前記式(B1−i)及び(B1−ii)中、Rfは、1つ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基である。PFPEは、下記式(D1)、(D2)、又は、(D3)で表される基である。
−(OCFCFCF− (D1)
(前記式(D1)中、bは、1〜200の整数である。)
−(OCFCFCFCF−(OCFCFCF−(OCFCF−(OCF− (D2)
(前記式(D2)中、a及びbは、各々独立して、0〜30の整数である。c及びdは、各々独立して、1〜200の整数である。a、b、c、又は、dを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、前記式(D2)中において任意である。)
−(OC−R− (D3)
(前記式(D3)中、Rは、OC、OC、又は、OCである。iは、2〜100の整数である。)
PFPEは、下記式(D4)又は(D5)で表される基である。
−(OCFCFCF− (D4)
(前記式(D4)中、bは、1〜200の整数である。)
−(OC−R− (D5)
(前記式(D5)中、Rは、OC、OC、又は、OCである。iは、2〜100の整数である。)
Zは、各々独立して、二価の有機基である。Xは、活性水素含有基である。)
ことを特徴とする請求項1に記載の防汚性フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂中の前記防汚剤の有効成分の含有率は、0.1重量%以上、10重量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の防汚性フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記成分(B)は、成分(B1)活性水素を有するパーフルオロポリエーテル、及び、成分(B2)炭素−炭素二重結合を含有する基及び活性水素を有するモノマーのみからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防汚性フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂は、紫外線によって硬化するものであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の防汚性フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記防汚性フィルムの表面に対して、水の接触角は130°以上であり、ヘキサデカンの接触角は30°以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の防汚性フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記防汚性フィルムの表面におけるフッ素原子濃度は、38atom%以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の防汚性フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記重合体層の厚みは、1μm以上、20μm以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の防汚性フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記ピッチは、20nm以上、400nm以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の防汚性フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記複数の凸部の高さは、各々、50nm以上、500nm以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の防汚性フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記複数の凸部のアスペクト比は、各々、0.13以上、25以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の防汚性フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚性フィルムの製造方法に関する。より詳しくは、ナノメートルサイズの凹凸構造を備える、防汚性を有するフィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノメートルサイズの凹凸構造(ナノ構造)を有するフィルムは、反射防止フィルムとして利用されることが知られている(例えば、特許文献1〜5参照)。このような凹凸構造によれば、空気層から基材にかけて屈折率が連続的に変化するために、反射光を劇的に減少させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−172808号公報
【特許文献2】特開2007−178724号公報
【特許文献3】特許第5005114号公報
【特許文献4】特開2014−153524号公報
【特許文献5】特開2005−97371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような反射防止フィルムとしては、例えば、凹凸構造を表面に有する重合体層が基材の表面上に配置される構成が挙げられる。しかしながら、従来の反射防止フィルムでは、防汚性が低いという問題があった。凹凸構造には汚れが入り込みやすく、乾いた布でその汚れを拭き取ることが困難であったため、例えば、専用のクリーナー液で汚れを浮き上がらせて拭き取っていた。そのため、クリーナー液との馴染み性の観点から、反射防止フィルムの親水性を高めることがあり、防汚性を高めにくかった。
【0005】
これに対して、本発明者らは、凹凸構造を表面に有する反射防止フィルムに防汚機能を付与することを検討する中で、ナノメートルサイズの凹凸構造の表面を撥水性及び撥油性の材料で形成すれば、その表面形状の効果によって、材料本来の撥水性及び撥油性と比較して、凹凸構造の表面で得られる撥水性及び撥油性が劇的に高まることを見出した。そこで、本発明者らは、ナノメートルサイズの凹凸構造を表面に有し、顕著な撥水性及び撥油性、すなわち、顕著な防汚性を示す機能性フィルム(防汚性フィルム)を実現するため、以下の3種類の方法を検討した。
【0006】
第一の方法として、重合体層の表面(基材とは反対側の表面)上に防汚膜を形成した。しかしながら、重合体層と防汚膜との間の密着性が不充分であり、耐擦性が低下することが分かった。
【0007】
第二の方法として、重合体層の表面(基材とは反対側の表面)に潤滑油を浸み込ませた。しかしながら、重合体層に付着した汚れを拭き取る際に、潤滑油も一緒に拭き取られてしまうため、潤滑油を定期的に供給しなければ、防汚性が低下する(維持できない)ことが分かった。
【0008】
第三の方法として、重合体層を構成する樹脂に防汚剤を添加し、ブリードアウトさせた。しかしながら、ブリードアウトの具合が不充分であり、防汚性が充分に得られないことが分かった。
【0009】
以上のように、従来の防汚性フィルムの製造方法については、防汚性及び耐擦性に優れた防汚性フィルムを実現する点で改善の余地があった。
【0010】
上記特許文献1には、凹凸構造の表面上にポリテトラフルオロエチレンからなる撥水被膜が形成された構成が記載されている。しかしながら、凹凸構造と撥水被膜との間の密着性が低いため、剥離しやすい。また、撥水被膜が薄いため、膜強度が弱く、拭き取りの際にポリテトラフルオロエチレンの濃度が低下しやすい。以上より、耐擦性を高める点で改善の余地があった。
【0011】
上記特許文献2には、基材と金型との間に、フッ素化合物を含む光硬化性樹脂組成物を供給し圧延した後、硬化させることで凹凸構造を形成する方法が記載されている。しかしながら、フッ素化合物としてパーフルオロアルキル系化合物が用いられており、凹凸構造の表面におけるフッ素化合物の濃度が不充分である。以上より、防汚性を高める点で改善の余地があった。
【0012】
上記特許文献3には、金型の表面を外部離型剤で処理した後、内部離型剤を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を基材と金型との間に挟み、硬化させることで凹凸構造を形成する方法が記載されている。しかしながら、内部離型剤が疎水性材料であり、ブリードアウトを利用する場合であっても、疎水性基の集まりが悪い。また、疎水性基が互いに結合していないため、安定性が低い。以上より、防汚性及び耐擦性を高める点で改善の余地があった。
【0013】
上記特許文献4には、凹凸構造の表面上にパーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸を含有するフッ素系潤滑剤による潤滑層が積層された構成が記載されている。しかしながら、凹凸構造と潤滑層との間の密着性が低いため、剥離しやすい。以上より、耐擦性を高める点で改善の余地があった。
【0014】
上記特許文献5には、フッ素含有化合物を含むフッ素含有樹脂組成物を用いて凹凸構造が形成された構成が記載されている。しかしながら、フッ素含有化合物としてパーフルオロアルキル系化合物が用いられており、凹凸構造の表面の滑り性が不充分である。以上より、耐擦性を高める点で改善の余地があった。
【0015】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、防汚性及び耐擦性に優れた防汚性フィルムの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、防汚性及び耐擦性に優れた防汚性フィルムの製造方法について種々検討したところ、上述した第三の方法を応用することに着目した。そして、重合体層を構成する樹脂として、所定のパーフルオロポリエーテル系化合物を含んでなる防汚剤を含有するものを用い、金型へ離型処理を施すための離型剤として、所定のパーフルオロポリエーテル系化合物を含んでなるものを用いる方法を見出した。以上により、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0017】
すなわち、本発明の一態様は、複数の凸部が可視光の波長以下のピッチで設けられる凹凸構造を表面に有する重合体層を備える防汚性フィルムの製造方法であって、樹脂を基材の表面上に塗布するプロセス(1)と、上記樹脂を間に挟んだ状態で上記基材を金型に押し当て、上記凹凸構造を上記樹脂の表面に形成するプロセス(2)と、上記凹凸構造を表面に有する上記樹脂を硬化させ、上記重合体層を形成するプロセス(3)とを含み、上記樹脂は、パーフルオロ(ポリ)エーテル基を有する化合物を含んでなる防汚剤を含有し、上記金型の表面は、パーフルオロ(ポリ)エーテル基と、加水分解可能な基と、Si原子とを有する化合物を含んでなる離型剤で離型処理が施されている防汚性フィルムの製造方法であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、防汚性及び耐擦性に優れた防汚性フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態の防汚性フィルムの製造方法を説明するための断面模式図である。
図2】炭素原子の数、酸素原子の数、及び、フッ素原子の数の合計数に対する各原子の数の比率を示すグラフであり、(a)は実施例6を示し、(b)は実施例7を示し、(c)は実施例8を示し、(d)は実施例9を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に実施形態を掲げ、本発明について図面を参照して更に詳細に説明するが、本発明はこの実施形態のみに限定されるものではない。また、実施形態の各構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。
【0021】
本明細書中、防汚性フィルムは、表面に付着した汚れを容易に除去することができるフィルムを意味する。
【0022】
本明細書中、「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0023】
本明細書中、活性水素は、イソシアネート基にプロトンとして供与され得る水素原子を意味する。
【0024】
本明細書中、活性水素含有基は、活性水素を含有する基を指し、例えば、−OH基、−C(=O)H基、−SH基、−SOH基、−SOH基、−SOH基、−NH基、−NH−基、−SiH基等が挙げられる。
【0025】
本明細書中、二価の有機基は、炭素を含有する二価の基を意味する。二価の有機基としては、特に限定されるものではないが、炭化水素基から更に1つの水素原子を脱離させた二価の基が挙げられる。
【0026】
本明細書中、炭化水素基は、炭素及び水素を含む基を意味する。炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1つ以上の置換基により置換されていてもよい、炭素数1〜20の炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分枝鎖状、及び、環状のうちのいずれであってもよく、飽和及び不飽和のうちのいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つ以上の環構造を含んでいてもよい。なお、炭化水素基は、その末端または分子鎖中に、1つ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有していてもよい。
【0027】
本明細書中、炭化水素基の置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、1つ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10の不飽和シクロアルキル基、5〜10員のヘテロシクリル基、5〜10員の不飽和ヘテロシクリル基、炭素数6〜10のアリール基、5〜10員のヘテロアリール基等が挙げられる。
【0028】
本明細書中、加水分解可能な基は、加水分解反応により、化合物の主骨格から脱離し得る基を指す。加水分解可能な基としては、アルコキシ基が挙げられる。具体的には、−OA、−OCOA、−O−N=C(A)、−N(A)、−NHA、ハロゲン(これらの式中、Aは、置換又は非置換の炭素数1〜3のアルキル基である。)等が挙げられる。
【0029】
本明細書中、数平均分子量は、19F−NMRにより測定される値を意味する。
【0030】
[実施形態]
実施形態の防汚性フィルムの製造方法について、図1を参照して以下に説明する。図1は、実施形態の防汚性フィルムの製造方法を説明するための断面模式図である。
【0031】
(a)樹脂の塗布(プロセス(1))
図1(a)に示すように、樹脂3を基材2の表面上に塗布する。一方、金型4を準備する。金型4の表面は、離型剤5で離型処理が施されている。
【0032】
樹脂3の塗布方法としては、例えば、スプレー方式、グラビア方式、スロットダイ方式等で塗布する方法が挙げられる。膜厚が容易に調製可能であり、かつ、装置コストを低減する観点からは、グラビア方式又はスロットダイ方式で塗布する方法が好ましい。
【0033】
(b)凹凸構造の形成(プロセス(2))
図1(b)に示すように、樹脂3を間に挟んだ状態で基材2を金型4に押し当てる。その結果、凹凸構造が樹脂3の表面(基材2とは反対側の表面)に形成される。
【0034】
(c)樹脂の硬化(プロセス(3))
図1(c)に示すように、凹凸構造を表面に有する樹脂3を硬化させ、重合体層6を形成する。
【0035】
樹脂3の硬化方法としては、例えば、活性エネルギー線の照射、加熱等による方法が挙げられるが、活性エネルギー線の照射による方法が好ましい。本明細書中、活性エネルギー線は、紫外線、可視光線、赤外線、プラズマ等を指す。樹脂3は、紫外線によって硬化するものであることが好ましい。活性エネルギー線の照射は、樹脂3の基材2側から行ってもよく、樹脂3の金型4側から行ってもよい。また、樹脂3に対する活性エネルギー線の照射回数は、1回のみであってもよいし、複数回であってもよい。樹脂3の硬化は、上述した樹脂3への凹凸構造の形成と同じタイミングで行ってもよい。
【0036】
(d)金型の剥離
図1(d)に示すように、金型4を重合体層6から剥離する。その結果、防汚性フィルム1が完成する。重合体層6の表面(基材2とは反対側の表面)に形成された凹凸構造は、複数の凸部(突起)7が可視光の波長以下のピッチ(隣接する凸部7の頂点間の距離)Pで設けられる構造、すなわち、モスアイ構造(蛾の目状の構造)に相当する。よって、防汚性フィルム1は、モスアイ構造による優れた反射防止性(低反射性)を示すことができる。防汚性フィルム1の用途は、その優れた防汚性を活用するものであれば特に限定されず、例えば、反射防止フィルム等の光学フィルムに限定されない。
【0037】
上述した製造プロセスにおいて、例えば、基材2をロール状にすれば、上記プロセス(1)〜(3)を連続的かつ効率的に行うことができる。
【0038】
続いて、防汚性フィルム1を製造する際に用いられる各材料について、以下に説明する。
【0039】
基材2の材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂が挙げられ、使用環境に応じて適宜選択すればよい。このような材料によれば、硬度が高く、透明性及び耐候性に優れた基材2が得られる。なお、基材2の表面(重合体層6側の表面)には易接着処理が施されていてもよく、例えば、易接着処理が施されたトリアセチルセルロースフィルムを用いることができる。また、基材2の表面(重合体層6側の表面)にはケン化処理が施されていてもよく、例えば、ケン化処理が施されたトリアセチルセルロースフィルムを用いることができる。基材2の材料として樹脂を用いる場合、その樹脂は着色されていてもよい。また、基材2の材料は、上述したような樹脂に限定されず、ガラス、金属、繊維、紙類(写真等の印刷物を含む)等であってもよい。
【0040】
基材2の厚みは、透明性及び加工性を確保する観点から、20μm以上、200μm以下であることが好ましく、40μm以上、100μm以下であることがより好ましい。
【0041】
樹脂3は、パーフルオロ(ポリ)エーテル基を有する化合物を含んでなる防汚剤を含有する。
【0042】
防汚剤は、パーフルオロ(ポリ)エーテル基及び硬化性部位(例えば、アクリレート基)を有する化合物を含んでなることが好ましい。具体的には、防汚剤は、成分(A)ジイソシアネートの三量体であるポリイソシアネートと成分(B)活性水素を有する化合物との反応物である炭素−炭素二重結合含有化合物(パーフルオロポリエーテル系化合物)を含んでなることが好ましい。
【0043】
成分(A)は、ジイソシアネートを三量体化することにより得ることができるポリイソシアネートである。ジイソシアネートの三量体であるポリイソシアネートは、これらが重合した重合体として存在していてもよい。
【0044】
成分(A)ジイソシアネートの三量体であるポリイソシアネートは、好ましくは、イソシアヌレート型ポリイソシアネートであり得る。イソシアヌレート型ポリイソシアネートは、これらが重合した重合体として存在していてもよい。すなわち、イソシアヌレート型ポリイソシアネートは、イソシアヌレート環を1つのみ有する単環式化合物であってもよく、この単環式化合物が重合して得られる多環式化合物であってもよく、これらの混合物であってもよい。イソシアヌレート型ポリイソシアネートのうち公知のものとしては、例えば、住友バイエルウレタン社製の「スミジュール(登録商標)N3300」が挙げられる。
【0045】
成分(A)ジイソシアネートの三量体であるポリイソシアネートを得るために用いられるジイソシアネートとしては、特に限定されないが、イソシアネート基が脂肪族基に結合したジイソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;イソシアネート基が芳香族基に結合したジイソシアネート、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートが挙げられる。
【0046】
成分(A)ジイソシアネートの三量体であるポリイソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、例えば、下記式(D6)、(D7)、(D8)、又は、(D9)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【0047】
【化1】
【0048】
上述したように、これらのポリイソシアネートは重合体として存在していてもよく、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネートである場合、下記式(D10)で表される構造を有する重合体として存在していてもよい。
【0049】
【化2】
【0050】
成分(B)は、成分(B1)活性水素を有するパーフルオロポリエーテルと、成分(B2)炭素−炭素二重結合を含有する基及び活性水素を有するモノマーとを含む。
【0051】
成分(B1)は、下記式(B1−i)及び(B1−ii)のうちの一方で表される少なくとも1種の化合物である。成分(B1)によれば、防汚性フィルム1の防汚性及び耐擦性(滑り性)が高まる。
Rf−PFPE−Z−X (B1−i)
X−Z−PFPE−Z−X (B1−ii)
【0052】
上記式(B1−i)及び(B1−ii)中、Rfは、1つ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16の(例えば、直鎖状又は分枝鎖状の)アルキル基であり、好ましくは、1つ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜3の直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基である。Rfは、直鎖状であることが好ましい。また、1つ以上のフッ素原子により置換されていてもよいアルキル基は、好ましくは、末端炭素原子がCFH−であり、かつ、他のすべての炭素原子がフッ素原子により全置換されているフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキル基であり、より好ましくはパーフルオロアルキル基であり、具体的には、−CF、−CFCF、又は、−CFCFCFである。
【0053】
上記式(B1−i)及び(B1−ii)中、PFPEは、下記式(D1)、(D2)、又は、(D3)で表される基である。
−(OCFCFCF− (D1)
(上記式(D1)中、bは、1〜200の整数であり、好ましくは5〜200の整数であり、より好ましくは10〜200の整数である。)
−(OCFCFCFCF−(OCFCFCF−(OCFCF−(OCF− (D2)
(上記式(D2)中、a及びbは、各々独立して、0〜30の整数である。c及びdは、各々独立して、1〜200の整数であり、好ましくは5〜200の整数、より好ましくは10〜200の整数である。a、b、c、又は、dを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、上記式(D2)中において任意である。)
−(OC−R− (D3)
(上記式(D3)中、Rは、OC、OC、又は、OCである。iは、2〜100の整数であり、好ましくは2〜50の整数である。)
【0054】
一態様において、上記式(B1−i)及び(B1−ii)中、PFPEは、上記式(D1)又は(D3)で表される基であってもよく、好ましくは、上記式(D1)で表される基である。このようなPFPEを含有することにより、防汚性フィルム1の防汚性がより高まる。
【0055】
上記式(B1−i)及び(B1−ii)中、PFPEは、下記式(D4)又は(D5)で表される基であり、好ましくは、下記式(D4)で表される基である。
−(OCFCFCF− (D4)
(上記式(D4)中、bは、1〜200の整数であり、好ましくは5〜200の整数であり、より好ましくは10〜200の整数である。)
−(OC−R− (D5)
(上記式(D5)中、Rは、OC、OC、又は、OCである。iは、2〜100の整数であり、好ましくは2〜50の整数である。)
【0056】
上記式(B1−i)及び(B1−ii)中、Zは、各々独立して、二価の有機基である。Zは、好ましくはRである。Rは、各々独立して、下記式(D11)で表される基である。
−(Y)−(CR− (D11)
【0057】
上記式(D11)中、Yは、二価の極性基である。二価の極性基としては、特に限定されないが、例えば、−COO−、−OCO−、−CONH−、−OCHCH(OH)CH−、−CHCH(OH)CHO−、−COS−、−SCO−、−O−等が挙げられ、好ましくは、−COO−、−CONH−、−CHCH(OH)CHO−、又は、−O−である。
【0058】
上記式(D11)中、Rは、各出現において、各々独立して、水素原子又はフッ素原子である。
【0059】
上記式(D11)中、fは、0〜50の整数であり、好ましくは0〜20の整数(例えば、1〜20の整数)である。jは、0〜100の整数であり、好ましくは0〜40の整数(例えば、1〜40の整数)である。f及びjの和は、1以上である。f及びjを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、上記式(D11)中において任意である。
【0060】
上記式(D11)で表されるRは、好ましくは、各々独立して、下記式(D12)で表される基である。
−(Y)−(CF−(CH− (D12)
【0061】
上記式(D12)中、Y及びfは、上記式(D11)中のY及びfと互いに同意義である。g及びhは、各々独立して、0〜50の整数であり、好ましくは0〜20の整数(例えば、1〜20の整数)である。f、g、及び、hの和は、1以上であり、好ましくは1〜10である。f、g、及び、hは、0〜2の整数であることがより好ましく、f=0又は1、g=2、h=0又は1であることが更に好ましい。また、f、g、及び、hを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、上記式(D12)中において任意である。
【0062】
上記式(B1−i)及び(B1−ii)中、Xは、活性水素含有基である。Xは、好ましくは、各々独立して、−OH基、−C(=O)H基、−SH基、−SOH基、−SOH基、−SOH基、−NH基、−NH−基、又は、−SiH基であり、より好ましくは、−OH基、又は、−NH基であり、更に好ましくは、−OH基である。
【0063】
成分(B1)は、好ましくは、下記式(B1−i’)及び(B1−ii’)のうちの一方で表される少なくとも1種の化合物であり、より好ましくは、下記式(B1−i’)で表される少なくとも1種の化合物である。成分(B1)が下記式(B1−i’)で表される少なくとも1種の化合物である場合、PFPEは、好ましくは、上記式(D1)で表される基である。下記式(B1−i’)で表される化合物によれば、防汚性フィルム1の耐擦性がより高まる。
Rf−PFPE−R−CHOH (B1−i’)
HOCH−R−PFPE−R−CHOH (B1−ii’)
【0064】
上記式(B1−i’)及び(B1−ii’)中、Rf、PFPE、及び、PFPEは、上記式(B1−i)及び(B1−ii)中のRf、PFPE、及び、PFPEと互いに同意義である。上記式(B1−i’)及び(B1−ii’)中、Rは、上記式(D11)で表されるRと同意義である。
【0065】
成分(B1)活性水素を有するパーフルオロポリエーテルは、パーフルオロポリエーテル基に加えて、1つの分子末端に1つの活性水素含有基(例えば、水酸基)を有する、又は、2つの分子末端の各々に1つの活性水素含有基水酸基を有する化合物である。パーフルオロポリエーテル基を有する化合物によれば、防汚性フィルム1の防汚性(例えば、撥水性、撥油性、指紋拭き取り性等)が高まる。
【0066】
成分(B1)活性水素を有するパーフルオロポリエーテルの数平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは500〜12000であり、より好ましくは1000〜10000であり、更に好ましくは1500〜8000である。
【0067】
成分(B2)炭素−炭素二重結合を含有する基及び活性水素を有するモノマーは、その分子末端に少なくとも1つ(好ましくは1つ)の活性水素含有基(好ましくは水酸基)を有する。
【0068】
成分(B2)炭素−炭素二重結合を含有する基及び活性水素を有するモノマーは、好ましくは、炭素−炭素二重結合を含有する基として、下記式(D13)で表される基を有する。
−OC(O)−CR=CH (D13)
【0069】
上記式(D13)中、Rは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又は、フッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基であり、好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくは水素原子又はメチル基である。ここで、Rが水素原子又はメチル基である基、すなわち、−OC(O)−CH=CH、又は、−OC(O)−CCH=CHは、総称して「(メタ)アクリレート基」とも称される。
【0070】
成分(B2)としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記の化合物:
HO(CHCHOCO(R)C=CH (D14)
(上記式(D14)中、Rは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又は、フッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基である。iは、2〜10の整数である。)、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;
CHCH(OH)CHOCO(R)C=CH (D15)
(上記式(D15)中、Rは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又は、フッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基である。)、例えば、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;
CHCHCH(OH)CHOCO(R)C=CH (D16)
(上記式(D16)中、Rは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又は、フッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基である。)、例えば、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;
OCHCH(OH)CHOCO(R)C=CH (D17)
(上記式(D17)中、Rは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又は、フッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基である。)、例えば、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート;
HOCHC(CHOCO(R)C=CH (D18)
(上記式(D18)中、Rは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又は、フッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基である。)、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート;
C(CHOCO(R)C=CHCHOCHC(CHOCO(R)C=CHCHOH (D19)
(上記式(D19)中、Rは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又は、フッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基である。)、例えば、ジペンタエリスリトールポリアクリレート;
HOCHCHOCOCOCOCHCHOCO(R)C=CH (D20)
(上記式(D20)中、Rは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又は、フッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基である。)、例えば、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸;
H(OCHCHOCO(R)C=CH (D21)
(上記式(D21)中、Rは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又は、フッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基である。nは、1〜30の整数である。)、例えば、ポリ(エチレングリコール)アクリレート;
H(OCH(CH)CHOCO(R)C=CH (D22)
(上記式(D22)中、Rは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又は、フッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基である。nは、1〜30の整数である。)、例えば、ポリ(プロピレングリコール)アクリレート;
アリルアルコール;
HO(CHCH=CH (D23)
(上記式(D23)中、kは2〜20の整数である。);
(CHSiCH(OH)CH=CH;及び、
スチリルフェノール
が挙げられる。
【0071】
一態様において、成分(B)は、成分(B1)及び成分(B2)からなっていてもよい。
【0072】
防汚剤に含まれる炭素−炭素二重結合含有化合物は、一分子のトリイソシアネートに、異なる種類の成分(B1)由来の基を有していてもよい。また、一分子のトリイソシアネートに、異なる種類の(例えば、異なる数の炭素−炭素二重結合を有する)成分(B2)由来の基を有していてもよい。
【0073】
防汚剤は、1種以上の炭素−炭素二重結合含有化合物を含んでいてもよい。例えば、防汚剤は、成分(A)と、成分(B1)としての化合物B1及び成分(B2)としての化合物B2とを反応させた化合物、並びに、成分(A)と、成分(B1)としての化合物B1’及び成分(B2)としての化合物B2’とを反応させた化合物の混合物であってもよい。これらの化合物は同時に合成されてもよく、別個に合成され、その後混合してもよい。
【0074】
防汚剤のうち公知のものとしては、例えば、ダイキン工業社製の「オプツール(登録商標)DAC」及び「オプツールDAC−HP」、信越化学工業社製の「KY−1203」及び「KNS5300」、DIC社製の「メガファック(登録商標)RS−75」、「メガファックRS−72−K」、「メガファックRS−76−E」、「メガファックRS−76−NS」、「メガファックRS−90」、「ディフェンサ(登録商標)TF3028」、「ディフェンサTF3001」、及び、「ディフェンサTF3000」、新中村化学工業社製の「SUA1900L10」及び「SUA1900L6」、ソルベイ社製の「フルオロリンク(登録商標)P56」、「フルオロリンクP54」、「フルオロリンクF10」、「フルオロリンクA10P」、「フルオロリンクAD1700」、「フルオロリンクMD700」、及び、「フルオロリンクE10H」等が挙げられる。
【0075】
樹脂3中の防汚剤の有効成分の含有率は、好ましくは0.1〜10重量%であり、より好ましくは0.5〜5重量%である。樹脂3中の防汚剤の有効成分の含有率が0.1重量%未満である場合、重合体層6の表面(基材2とは反対側の表面)における防汚剤の有効成分の量が少なくなり過ぎてしまい、防汚性が不充分となり、更に、耐擦性が低下する懸念がある。樹脂3中の防汚剤の有効成分の含有率が10重量%よりも高い場合、重合体層6の表面(基材2とは反対側の表面)における防汚剤の有効成分の量が多くなり過ぎてしまうため、重合体層6(凸部7)の弾性が不足し、重合体層6の表面(基材2とは反対側の表面)を擦ると、倒れた凸部7が起き上がりにくくなる(復元しにくくなる)。その結果、耐擦性が低下する懸念がある。
【0076】
樹脂3は、更に、上述した防汚剤と相溶する相溶化剤を含んでいてもよい。相溶化剤によれば、樹脂3において、防汚剤が多量に含有される場合であっても、白濁の発生を防止することができる。
【0077】
相溶化剤としては、例えば、N−アクリロイルモルホリン(例えば、KJケミカルズ社製の「ACMO(登録商標)」)、N,N−ジエチルアクリルアミド(例えば、KJケミカルズ社製の「DEAA(登録商標)」)、N,N−ジメチルアクリルアミド(例えば、KJケミカルズ社製の「DMAA(登録商標)」)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(例えば、大阪有機化学工業社製の「ビスコート#150」)、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(例えば、大阪有機化学工業社製の「ビスコート#200」)、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート(例えば、日本化成社製の「4HBA」)、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタアエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、グリシジルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−ビニルピロリドン、ジメチルアミノエチル(メタ)クリレートシリコン系のアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、3−メチルブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチル−n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)(メタ)アクリルレート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。相溶化剤としては、アミド基、エーテル基、水酸基等の極性基を有する単官能モノマーが好ましい。樹脂3において、相溶化剤は、防汚剤に含まれていてもよく、防汚剤以外の成分に含まれていてもよく、両者に含まれていてもよい。
【0078】
樹脂3中の相溶化剤の含有率は、好ましくは10〜40重量%であり、より好ましくは20〜30重量%である。樹脂3中の相溶化剤の含有率が10重量%未満である場合、防汚剤の相溶化剤への溶解性が低下する懸念がある。樹脂3中の相溶化剤の含有率が40重量%よりも高い場合、重合体層6が軟らかく、弾性が低くなる懸念がある。その結果、防汚性フィルム1の耐擦性が低下する懸念がある。
【0079】
樹脂3としては、1種類若しくは2種類以上の硬化性樹脂、1種類若しくは2種類以上の硬化性モノマー、又は、硬化性樹脂と硬化性モノマーとの混合物を用いることができる。
【0080】
硬化性樹脂は、耐熱性及び強度を有する樹脂であれば特に限定されず、光硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂のうちのいずれであってもよく、紫外線硬化性樹脂であることが好ましい。
【0081】
硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、環状ポリオレフィン系ポリマー、フッ素含有ポリオレフィン系ポリマー(PTFE等)、フッ素含有環状非結晶性ポリマー等が挙げられる。凹凸構造の形成(上記プロセス(2))後に紫外線照射による硬化等の処理を行う場合、硬化性樹脂は透明性を有する樹脂であることが好ましい。
【0082】
硬化性樹脂としては、具体的には、例えば、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、酢酸ビニル、ビニルピバレート、各種(メタ)アクリレート類:フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタアエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリオキシエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−ビニルピロリドン、ジメチルアミノエチルメタクリレートシリコン系のアクリレート、無水マレイン酸、ビニレンカーボネート、鎖状側鎖ポリアクリレート、環状側鎖ポリアクリレートポリノルボルネン、ポリノルボルナジエン、ポリカーボネート、ポリスルホン酸アミド、フッ素含有環状非結晶性ポリマー(例えば、サイトップ(登録商標)、テフロン(登録商標)AF等)等が挙げられる。
【0083】
硬化性モノマーは、光硬化性モノマー及び熱硬化性モノマーのうちのいずれであってもよく、紫外線硬化性モノマーであることが好ましい。
【0084】
硬化性モノマーとしては、例えば、(a)ウレタン(メタ)アクリレート、(b)エポキシ(メタ)アクリレート、(c)ポリエステル(メタ)アクリレート、(d)ポリエーテル(メタ)アクリレート、(e)シリコン(メタ)アクリレート、(f)(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。
【0085】
硬化性モノマーとしては、具体的には、以下の例が挙げられる。
【0086】
(a)ウレタン(メタ)アクリレートは、分子中にウレタン結合及び(メタ)アクリロイル基を有するものである。(a)ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートに代表されるポリ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]イソシアヌレート等が挙げられる。
【0087】
(b)エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ基に(メタ)アクリロイル基を付加したものであり、出発原料としてビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、脂環化合物等を用いたものが一般的である。
【0088】
(c)ポリエステル(メタ)アクリレートは、多価アルコール及び多塩基酸からなるエステル樹脂に(メタ)アクリレートを付加したものであってもよい。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。多塩基酸としては、例えば、フタル酸、アジピン酸、マレイン酸、トリメリット酸、イタコン酸、コハク酸、テレフタル酸、アルケニルコハク酸等が挙げられる。
【0089】
(d)ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ジオールのポリエーテル樹脂に(メタ)アクリレートを付加したものである。(d)ポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0090】
(e)シリコン(メタ)アクリレートは、分子量が1000〜10000であるジメチルポリシロキサンの少なくとも一方の末端を(メタ)アクリロイル基で変性したものであり、例えば、下記式(D24)、(D25)、又は、(D26)で表される化合物が挙げられる。
【0091】
【化3】
【0092】
(f)(メタ)アクリレートモノマーは、単官能又は多官能のアルキル(メタ)アクリレート、500mPa・s(25℃)以下の低粘度ポリエーテル(メタ)アクリレート等である。(f)(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、3−メチルブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチル−n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)(メタ)アクリルレート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。
【0093】
硬化性樹脂及び硬化性モノマーのうち公知で好ましいものとしては、以下のものが挙げられる。
【0094】
硬化性樹脂としては、シリコン樹脂類(例えば、東洋合成工業社製の「PAK−01」、「PAK−02」)、ナノインプリント樹脂(例えば、旭硝子社製の「NIFシリーズ」、東京応化工業社製の「OCNLシリーズ」、ダイセル化学工業社製の「NIAC2310」)、エポキシアクリレート樹脂類(例えば、共栄社化学社製の「EH−1001」、「ES−4004」、「EX−C101」、「EX−C106」、「EX−C300」、「EX−C501」、「EX−0202」、「EX−0205」、「EX−5000」)、ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート類、イソシアヌレート型ポリイソシアネート類(例えば、住友バイエルウレタン社製の「スミジュールN−75」、「スミジュールN3200」、「スミジュールHT」、「スミジュールN3300」、「スミジュールN3500」)等が挙げられる。
【0095】
硬化性モノマーのうち、シリコンアクリレート系樹脂類としては、例えば、JNC社製の「サイラプレーン(登録商標)FM−0611」;「サイラプレーンFM−0621」;「サイラプレーンFM−0625」;両末端型(メタ)アクリル系の「サイラプレーンFM−7711」、「サイラプレーンFM−7721」、「サイラプレーンFM−7725」;「サイラプレーンFM−0411」;「サイラプレーンFM−0421」;「サイラプレーンFM−0428」;「サイラプレーンFM−DA11」;「サイラプレーンFM−DA21」;「サイラプレーン−DA25」;片末端型(メタ)アクリル系の「サイラプレーンFM−0711」、「サイラプレーンFM−0721」、「サイラプレーンFM−0725」、「サイラプレーンTM−0701」、「サイラプレーンTM−0701T」等が挙げられる。
【0096】
硬化性モノマーのうち、多官能アクリレート類としては、例えば、新中村化学工業社製の「U−10HA」、「U−10PA」、「UA−33H」、「UA−53H」、「UA−1100H」、「UA−7000」、「UA−7100」、「ATM−4E」、「ATM−35E」、「A−DPH」、「A−9300」、「A−9300−1CL」、「A−GLY−9E」、「A−GLY−20E」、「A−TMM−3」、「A−TMM−3L」、「A−TMM−3LM−N」、「A−TMPT」、及び、「A−TMMT」、共栄社化学社製の「UA−306H」、「UA−53T」、「UA−510H」、「ライトアクリレートPE−3A」、及び、「ライトアクリレートDPE−6A」、第一工業製薬社製の「PET−3」等が挙げられる。
【0097】
硬化性モノマーのうち、多官能メタクリレート類としては、例えば、新中村化学工業社製の「TMPT」等が挙げられる。
【0098】
硬化性モノマーのうち、アルコキシシラン基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン(別名:(トリイソプロポキシシリル)プロピルメタクリレート(TISMA)、及び、(トリイソプロポキシシリル)プロピルアクリレート)、3−(メタ)アクリルオキシイソブチルトリクロロシラン、3−(メタ)アクリルオキシイソブチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシイソブチルトリイソプロポキ3−(メタ)アクリルオキシイソブチルトリメトキシシランシシラン等が挙げられる。
【0099】
硬化性樹脂又は硬化性モノマーの配合量は、樹脂3の全量を100質量部とすると、好ましくは5〜99質量部であり、より好ましくは10〜99質量部であり、更に好ましくは50〜99質量部である。このような配合量であれば、相分離しない均一な組成物が得られる。
【0100】
樹脂3は、更に、架橋触媒を含有していてもよい。架橋触媒としては、例えば、重合開始剤、酸発生剤等が挙げられる。
【0101】
重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤等を用いることができる。樹脂3は、重合開始剤を1種類含有していてもよく、複数種類含有していてもよい。
【0102】
ラジカル重合開始剤は、熱、光等によりラジカルを発生する化合物である。ラジカル重合開始剤としては、ラジカル熱重合開始剤、ラジカル光重合開始剤等が挙げられ、ラジカル光重合開始剤が好ましい。
【0103】
ラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類、等のパーオキシド化合物、及び、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル発生性アゾ化合物等が挙げられる。
【0104】
ラジカル光重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ジアセチル等の−ジケトン類、ベンゾイン等のアシロイン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸等のチオキサントン類、ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2,2’−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン類、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン類、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル等のアミノ安息香酸類、フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン等のハロゲン化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス−(2、6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物、及び、これらの混合物が挙げられる。これらの中でも、重合体層6が黄変しにくいという耐光性の観点から好ましいものは、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、及び、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドである。
【0105】
ラジカル光重合開始剤のうち公知のものとしては、下記のものが挙げられる。
BASF社製の「IRGACURE(登録商標) 651」:2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、
BASF社製の「IRGACURE 184」:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、
BASF社製の「IRGACURE 2959」:1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、
BASF社製の「IRGACURE 127」:2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、
BASF社製の「IRGACURE 907」:2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、
BASF社製の「IRGACURE 369」:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−−ブタノン
BASF社製の「IRGACURE 379」:2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、
BASF社製の「IRGACURE 819」:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、
BASF社製の「IRGACURE 784」:ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、
BASF社製の「IRGACURE OXE 01」:1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、
BASF社製の「IRGACURE OXE 02」:エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(−アセチルオキシム)、
BASF社製の「IRGACURE 261」、
BASF社製の「IRGACURE 369」、
BASF社製の「IRGACURE 500」、
BASF社製の「IRGACURE TPO」:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、
BASF社製の「DAROCUR(登録商標) 1173」:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、
BASF社製の「DAROCUR1116」、
BASF社製の「DAROCUR2959」、
BASF社製の「DAROCUR1664」、
BASF社製の「DAROCUR4043」、
BASF社製の「IRGACURE 754」:オキシフェニル酢酸と、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸と、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルとの混合物、
BASF社製の「IRGACURE 500」:BASF社製の「IRGACURE 184」とベンゾフェノンとの混合物(重量比1:1)、
BASF社製の「IRGACURE 1300」:BASF社製の「IRGACURE 369」と、BASF社製の「IRGACURE 651」との混合物(重量比3:7)、
BASF社製の「IRGACURE 1800」:BASF社製の「CGI403」と、BASF社製の「IRGACURE 184」との混合物(重量比1:3)、
BASF社製の「IRGACURE 1870」:BASF社製の「CGI403」と、BASF社製の「IRGACURE 184」との混合物(重量比7:3)、
BASF社製の「DAROCUR 4265」:BASF社製の「IRGACURE TPO」と、BASF社製の「DAROCUR 1173」との混合物(重量比1:1)
【0106】
架橋触媒としてラジカル光重合開始剤を用いる場合、増感剤として、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン等を併用してもよく、重合促進剤として、BASF社製の「DAROCUR EDB」(エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート)、BASF社製の「DAROCUR EHA」(2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート)等を併用してもよい。
【0107】
増感剤を用いる場合、増感剤の配合量は、樹脂3中の硬化性樹脂又は硬化性モノマー100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部であり、より好ましくは0.1〜2質量部である。
【0108】
重合促進剤を用いる場合、重合促進剤の配合量は、樹脂3中の硬化性樹脂又は硬化性モノマー100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部であり、より好ましくは0.1〜2質量部である。
【0109】
酸発生剤は、熱、光等により酸を発生する材料である。酸発生剤としては、熱酸発生剤、光酸発生剤等が挙げられ、光酸発生剤が好ましい。
【0110】
熱酸発生剤としては、例えば、ベンゾイントシレート、ニトロベンジルトシレート(特に、4−ニトロベンジルトシレート)、他の有機スルホン酸のアルキルエステル等が挙げられる。
【0111】
光酸発生剤は、光を吸収する発色団と分解後に酸となる酸前駆体とにより構成されている。このような構造を有する光酸発生剤に特定波長の光を照射することで、光酸発生剤が励起し、酸前駆体部分から酸が発生する。
【0112】
光酸発生剤としては、例えば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、CFSO、p−CHPhSO、p−NOPhSO(これらの式中、Phはフェニル基を表す。)等の塩、有機ハロゲン化合物、オルトキノン−ジアジドスルホニルクロリド、スルホン酸エステル、2−ハロメチル−5−ビニル−1,3,4−オキサジアゾール化合物、2−トリハロメチル−5−アリール−1,3,4−オキサジアゾール化合物、2−トリハロメチル−5−ヒドロキシフェニル−1,3,4−オキサジアゾール化合物等が挙げられる。なお、有機ハロゲン化合物は、ハロゲン化水素酸(例えば、塩化水素)を形成する化合物である。
【0113】
光酸発生剤のうち公知のものとしては、下記のものが挙げられる。
和光純薬工業社製の「WPAG−145」:ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、
和光純薬工業社製の「WPAG−170」:ビス(t−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、
和光純薬工業社製の「WPAG−199」:ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、
和光純薬工業社製の「WPAG−281」:トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
和光純薬工業社製の「WPAG−336」:ジフェニル−4−メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
和光純薬工業社製の「WPAG−367」:ジフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、
BASF社製の「IRGACURE PAG103」:(5−プロピルスルホニルオキシミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、
BASF社製の「IRGACURE PAG108」:(5−オクチルスルホニルオキシミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、
BASF社製の「IRGACURE PAG121」:(5−p−トルエンスルホニルオキシミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、
BASF社製の「IRGACURE PAG203」、
BASF社製の「CGI725」、
三和ケミカル社製の「TFE−トリアジン」:2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン]、
三和ケミカル社製の「TME−トリアジン」:2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、
三和ケミカル社製の「MP−トリアジン」:2−(メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、
三和ケミカル社製の「ジメトキシトリアジン」:2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン
【0114】
架橋触媒の配合量は、樹脂3中の硬化性樹脂又は硬化性モノマー100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは0.3〜5質量部であり、更に好ましくは0.5〜2質量部である。架橋触媒の配合量がこのような範囲である場合、樹脂3を充分に硬化させることができる。
【0115】
架橋触媒として酸発生剤を用いる場合、酸捕捉剤を必要に応じて添加することにより、酸発生剤から発生する酸の拡散を制御してもよい。
【0116】
酸捕捉剤としては、樹脂3の昇華及び性能を劣化させないものであれば特に限定されないが、アミン(特に、有機アミン)、塩基性のアンモニウム塩、塩基性のスルホニウム塩等の塩基性化合物が好ましく、有機アミンが特に好ましい。
【0117】
酸捕捉剤としては、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、4−ジメチルアミノピリジン、1−ナフチルアミン、ピペリジン、ヘキサメチレンテトラミン、イミダゾール類、ヒドロキシピリジン類、ピリジン類、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ピリジニウムp−トルエンスルホナート、2,4,6−トリメチルピリジニウムp−トルエンスルホナート、テトラメチルアンモニウムp−トルエンスルホナート、テトラブチルアンモニウムラクテート、トリエチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。これらの中でも、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、4−ジメチルアミノピリジン、1−ナフチルアミン、ピペリジン、ヘキサメチレンテトラミン、イミダゾール類、ヒドロキシピリジン類、ピリジン類、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の有機アミンが好ましい。
【0118】
酸捕捉剤の配合量は、酸発生剤100質量部に対して、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは0.1〜10質量部であり、更に好ましくは0.5〜5質量部である。
【0119】
樹脂3は、必要に応じて、溶剤(特に、水溶性有機溶剤、有機溶剤(特に、油溶性有機溶剤)、水)を含有していてもよい。
【0120】
水溶性有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコール、3−メトキシブチルアセテート(MBA)、1,3−ブチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノールアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、カルビトールアセテート、乳酸エチル、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等が挙げられる。
【0121】
有機溶剤としては、例えば、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−又はi−プロパノール、n−、sec−、又は、t−ブタノール、ベンジルアルコール、オクタノール等)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ジブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル又はエーテルエステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル等)、エーテル(例えば、EGモノメチルエーテル(メチルセロソロブ)、EGモノエチルエーテル(エチルセロソロブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソロブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、メチレンジクロライド、エチレンジクロライド等)、石油系溶剤(石油エーテル、石油ナフサ等)、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノメチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルアセテート、クロロホルム、HCFC141b、HCHC225、ハイドロフルオロエーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン等が挙げられる。
【0122】
樹脂3は、溶剤を1種類含有していてもよく、複数種類含有していてもよい。溶剤としては、樹脂3中の成分の溶解性、安全性の観点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及び、3−メトキシブチルアセテートが好ましい。
【0123】
樹脂3が溶剤を含有する場合、樹脂3中の溶剤の含有率は、好ましくは30〜95質量%であり、より好ましくは50〜90質量%である。
【0124】
樹脂3は、上述したように、溶剤を必要に応じて含有していてもよいが、溶剤を含有していないことが好ましい。すなわち、樹脂3は、無溶剤系の樹脂であることが好ましい。無溶剤系の樹脂によれば、溶剤の使用に係るコスト、及び、環境面での負荷(使用時の臭気等)を低減することができる。更に、溶剤を除去するための装置が不要であり、装置コストを低減することができる。一方、樹脂3が溶剤を含有する場合、防汚剤が混ざり過ぎて、重合体層6の表面(基材2とは反対側の表面)におけるフッ素原子の濃度が低下する懸念がある。また、樹脂3の揮発性が高くなるため、塗布性が低下する懸念がある。
【0125】
樹脂3は、更に、架橋剤を含有していてもよい。
【0126】
架橋剤は、単官能化合物、又は、好ましくは2個以上の官能基を有する多官能化合物である。架橋剤は、ラジカル重合反応により硬化するものであることが好ましく、カチオン重合反応により硬化するものであってもよい。ラジカル重合反応により硬化する架橋剤は、不飽和二重結合基であるアクリロイル基、ビニル基等の官能基を有する。カチオン重合反応により硬化する架橋剤は、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基等の官能基を有する。
【0127】
架橋剤としては、例えば、(a)ウレタン(メタ)アクリレート、(b)エポキシ(メタ)アクリレート、(c)ポリエステル(メタ)アクリレート、(d)ポリエーテル(メタ)アクリレート、(e)シリコン(メタ)アクリレート、(f)(メタ)アクリレートモノマー、(g)エポキシ系モノマー、(h)ビニルエーテル系モノマー、(i)オキセタン系モノマー等が挙げられる。これらの架橋剤のうち、(a)〜(f)はラジカル重合反応により硬化するものであり、(g)〜(i)はカチオン重合反応により硬化するものである。
【0128】
架橋剤(a)〜(e)は、樹脂に(メタ)アクリロイル基を付加したものであり、オリゴマー、ベースレジン、プレポリマー等と表記されることが多い。
【0129】
(a)ウレタン(メタ)アクリレートは、分子中にウレタン結合及び(メタ)アクリロイル基を有するものである。(a)ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートに代表されるポリ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]イソシアヌレート等が挙げられる。イソシアヌレートは、三官能のイソシアネート化合物である。これらのイソシアネートのうちの1つは、アルキル基(炭素数1〜20)、フルオロアルキル基(炭素数1〜6)、又は、パーフルオロポリエーテル基(分子量1000〜50000)と、水酸基を一分子中に含有する化合物と、ウレタン結合を形成していてもよい。
【0130】
(b)エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ基に(メタ)アクリロイル基を付加したものであり、出発原料としてビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、脂環化合物等を用いたものが一般的である。
【0131】
(c)ポリエステル(メタ)アクリレートは、多価アルコール及び多塩基酸からなるエステル樹脂に(メタ)アクリレートを付加したものであってもよい。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。多塩基酸としては、例えば、フタル酸、アジピン酸、マレイン酸、トリメリット酸、イタコン酸、コハク酸、テレフタル酸、アルケニルコハク酸等が挙げられる。
【0132】
(d)ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ジオールのポリエーテル樹脂に(メタ)アクリレートを付加したものである。(d)ポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0133】
(e)シリコン(メタ)アクリレートは、分子量が1000〜10000であるジメチルポリシロキサンの少なくとも一方の末端を(メタ)アクリロイル基で変性したものであり、例えば、下記式(D24)、(D25)、又は、(D26)で表される化合物が挙げられる。
【0134】
【化4】
【0135】
(f)(メタ)アクリレートモノマーは、単官能又は多官能のアルキル(メタ)アクリレート、500mPa・s(25℃)以下の低粘度ポリエーテル(メタ)アクリレート等である。(f)(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、3−メチルブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチル−n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)(メタ)アクリルレート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。
【0136】
(g)エポキシ系モノマーとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール類のグリシジルエーテル;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸のグリシジルエステル等のエポキシモノマー、これらのオリゴマー又は脂環型エポキシド、等が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールAグリシジルエーテルモノマー又はオリゴマーが好ましい。具体的には、三菱化学社製の「エピコート828」(分子量380)、「エピコート834」(分子量470)、「エピコート1001」(分子量900)、「エピコート1002」(分子量1060)、「エピコート1055」(分子量1350)、「エピコート1007」(分子量2900)等が例示される。
【0137】
(h)ビニルエーテル系モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル、シス−1,1,3−トリメチル−5−ビニルオキシシクロヘキサン、トランス−1,1,3−トリメチル−5−ビニルオキシシクロヘキサン、1−イソプロピル−4−メチル−2−ビニルオキシシクロヘキサン、2−ビニルオキシ−7−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−6−オン、2−メチル−2−ビニルオキシアダマンタン、2−エチル−2−ビニルオキシアダマンタン、1,3−ビス(ビニルオキシ)アダマンタン、1−ビニルオキシアダマンタノール、3−ビニルオキシ−1−アダマンタノール、1,3,5−トリス(ビニルオキシ)アダマンタン、3,5−ビス(ビニルオキシ)−1−アダマンタノール、5−ビニルオキシ−1,3−アダマンタンジオール、1,3,5,7−テトラキス(ビニルオキシ)アダマンタン、3,5,7−トリス(ビニルオキシ)−1−アダマンタノール、5,7−ビス(ビニルオキシ)−1,3−アダマンタンジオール、7−ビニルオキシ−1,3,5−アダマンタントリオール、1,3−ジメチル−5−ビニルオキシアダマンタン、1,3−ジメチル−5,7−ビス(ビニルオキシ)アダマンタン、3,5−ジメチル−7−ビニルオキシ−1−アダマンタノール、1−カルボキシ−3−ビニルオキシアダマンタン、1−アミノ−3−ビニルオキシアダマンタン、1−ニトロ−3−ビニルオキシアダマンタン、1−スルホ−3−ビニルオキシアダマンタン、1−t−ブチルオキシカルボニル−3−ビニルオキシアダマンタン、4−オキソ−1−ビニルオキシアダマンタン、1−ビニルオキシ−3−(1−メチル−1−ビニルオキシエチル)アダマンタン、1−(ビニルオキシメチル)アダマンタン、1−(1−メチル−1−ビニルオキシエチル)アダマンタン、1−(1−エチル−1−ビニルオキシエチル)アダマンタン、1,3−ビス(1−メチル−1−ビニルオキシエチル)アダマンタン、1−(1−(ノルボルナン−2−イル)−1−ビニルオキシエチル)アダマンタン、2,5−ビス(ビニルオキシ)ノルボルナン、2,3−ビス(ビニルオキシ)ノルボルナン、5−メトキシカルボニル−2−ビニルオキシノルボルナン、2−(1−(ノルボルナン−2−イル)−1−ビニルオキシエチル)ノルボルナン、2−(ビニルオキシメチル)ノルボルナン、2−(1−メチル−1−ビニルオキシエチル)ノルボルナン、2−(1−メチル−1−ビニルオキシペンチル)ノルボルナン、3−ヒドロキシ−4−ビニルオキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、3,4−ビス(ビニルオキシ)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、3−ヒドロキシ−8−ビニルオキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、3,8−ビス(ビニルオキシ)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、3−メトキシカルボニル−8−ビニルオキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、3−メトキシカルボニル−9−ビニルオキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、3−(ビニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、3−ヒドロキシメチル−8−ビニルオキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、3−ヒドロキシメチル−9−ビニルオキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、8−ヒドロキシ−3−(ビニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、9−ヒドロキシ−3−(ビニルオキシメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、8−ビニルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,5−ジオン、4−ビニルオキシ−11−オキサペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン−10,12−ジオン、α−ビニルオキシ−γ,γ−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α,γ,γ−トリメチル−α−ビニルオキシ−γ−ブチロラクトン、γ,γ−ジメチル−β−メトキシカルボニル−α−ビニルオキシ−γ−ブチロラクトン、8−ビニルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン、9−ビニルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン、8,9−ビス(ビニルオキシ)−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン、4−ビニルオキシ−2,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3,6−ジオン、5−ビニルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、5−メチル−5−ビニルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、9−メチル−5−ビニルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、6−ビニルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン、6,8−ビス(ビニルオキシ)−3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン、6−ヒドロキシ−8−ビニルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン、8−ヒドロキシ−6−ビニルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン、及び、これらに対応するイソプロペニルエーテル類等が挙げられる。
【0138】
(i)オキセタン系モノマーとしては、例えば、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]エチル}ベンゼン(例えば、東亞合成社製の「アロンオキセタン(登録商標)OXT−121」)、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(例えば、東亞合成社製の「アロンオキセタンOXT−101」)等が挙げられる。
【0139】
樹脂3は、架橋触媒として酸発生剤を含有する場合、架橋剤として酸架橋剤を含有していてもよい。
【0140】
酸架橋剤は、酸性基と、架橋する複数(例えば、2〜10)の反応基(例えば、カルボン酸、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、N−メチロール基、アルキルエーテル化したN−メチロール基、エポキシ基等)とを一分子中に有する化合物、又は、酢酸の多価金属塩である。酸架橋剤としては、例えば、アミノ樹脂、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、酢酸アルミニウム等が挙げられる。
【0141】
アミノ樹脂としては、例えば、メラミン系化合物、グアナミン系化合物、尿素系化合物等のアミノ基の少なくとも一部をヒドロキシメチル化した化合物、又は、このヒドロキシメチル化した化合物の水酸基の少なくとも一部をメタノール、エタノール、n−ブチルアルコール、2−メチル−1−プロパノール等でエーテル化した化合物が挙げられる。具体的には、例えば、ヘキサメトキシメチルメチロールメラミンが挙げられ、公知のものとしては、日本サイテックインダストリーズ社製のアルキル型、メチロール型、又は、イミノ型の各種アミノ樹脂等が挙げられる。
【0142】
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル類;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル等の脂環式エポキシ樹脂;ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート、ジグリシジルフタレート等のグリシジルエステル類;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール等のグリシジルアミン類;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂、等が挙げられる。
【0143】
オキサゾリン化合物としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン等の重合性モノマーの共重合体が挙げられる。
【0144】
樹脂3は、酸架橋剤を熱架橋剤として含有していてもよい。熱架橋剤は、ポストベーク時に膜の架橋性を向上させる目的で配合される架橋剤である。熱架橋剤の架橋密度を向上させるために、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ケイ皮酸等の酸無水物を、熱架橋剤と併用してもよい。
【0145】
架橋剤と、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチレート)等の多官能チオールとを併用すると、樹脂3の硬化速度が上昇する。この場合、多官能チオールの配合量は、架橋剤100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部であり、より好ましくは1〜10質量部である。
【0146】
金型4としては、例えば、下記の方法で作製されるものを用いることができる。まず、アルミニウム製の基材(ロール状)上に、絶縁材料としての二酸化ケイ素(SiO)と、純アルミニウムとを順に成膜する。次に、成膜された純アルミニウムの層に対して、陽極酸化及びエッチングを交互に繰り返すことによって、モスアイ構造の雌型(金型4)を作製することができる。この際、陽極酸化を行う時間、及び、エッチングを行う時間を調整することによって、金型4の凹凸構造を変化させることができる。
【0147】
金型4の表面は、パーフルオロ(ポリ)エーテル基と、加水分解可能な基(例えば、アルコキシ基)と、Si原子とを有する化合物を含んでなる離型剤5で離型処理が施されている。これにより、金型4を重合体層6から容易に剥離することができる。また、金型4の表面エネルギーが低くなるため、上記プロセス(2)において、基材2を金型4に押し当てる際に、樹脂3の防汚剤中のフッ素原子を樹脂3の表面(基材2とは反対側の表面)に効率良く配向させることができる。更に、樹脂3を硬化させる前に、フッ素原子が樹脂3の表面(基材2とは反対側の表面)から離れてしまうことを防止することができる。その結果、防汚性フィルム1において、フッ素原子を重合体層6の表面(基材2とは反対側の表面)に効率良く配向させることができる。
【0148】
パーフルオロ(ポリ)エーテル基と、加水分解可能な基と、Si原子とを有する化合物としては、具体的には、以下の式(1a)、(1b)、(2a)、(2b)、(3a)、及び、(3b)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物(パーフルオロポリエーテル系化合物)が挙げられる。
【0149】
まず、下記式(1a)、(1b)、(2a)、及び、(2b)で表される化合物(フッ素シラン含有化合物)について説明する。
【0150】
【化5】
【0151】
【化6】
【0152】
上記式(1a)、(1b)、(2a)、及び、(2b)中、Rf及びRfは、1つ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16の(例えば、直鎖状又は分枝鎖状の)アルキル基であり、好ましくは、1つ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜3の直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基である。また、1つ以上のフッ素原子により置換されていてもよいアルキル基は、好ましくは、末端炭素原子がCFH−であり、かつ、他のすべての炭素原子がフッ素により全置換されているフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキル基であり、より好ましくはパーフルオロアルキル基であり、具体的には、−CF、−CFCF、又は、−CFCFCFである。
【0153】
上記式(1a)、(1b)、(2a)、及び、(2b)中、パーフルオロポリエーテル基は、−(OC−(OC−(OC−(OCF−で表される部分である。a、b、c、及び、sは、各々、ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロポリエーテルの4種の繰り返し単位数を表わす。a、b、c、及び、sは、互いに独立して0〜200の整数(例えば、1〜200の整数)である。a、b、c、及び、sの和は1以上であり、好ましくは20〜100であり、より好ましくは30〜50であり、代表的には約40である。a、b、c、又は、sを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、上記式(1a)、(1b)、(2a)、及び、(2b)中において任意である。これらの繰り返し単位のうち、−(OC)−は、−(OCFCFCFCF)−、−(OCF(CF)CFCF)−、−(OCFCF(CF)CF)−、−(OCFCFCF(CF))−、−(OC(CFCF)−、−(OCFC(CF)−、及び、−(OCF(CF)CF(CF))−のうちのいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCFCFCF)−である。−(OC)−は、−(OCFCFCF)−、−(OCF(CF)CF)−、及び、−(OCFCF(CF))−のうちのいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCFCF)−である。−(OC)−は、−(OCFCF)−、及び、−(OCF(CF))−のうちのいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCF)−である。パーフルオロポリエーテル基を有する化合物によれば、防汚性フィルム1の防汚性(例えば、撥水性、撥油性、指紋拭き取り性等)が高まる。
【0154】
上記式(1a)、(1b)、(2a)、及び、(2b)中、d及びfは、0又は1である。e及びgは、0〜2の整数である。h及びjは、1又は2である。i及びkは、2〜20の整数である。
【0155】
上記式(1a)、(1b)、(2a)、及び、(2b)中、Xは、水素原子又はハロゲン原子である。ハロゲン原子は、好ましくは、ヨウ素原子、塩素原子、フッ素原子であり、更に好ましくはヨウ素原子である。
【0156】
上記式(1a)、(1b)、(2a)、及び、(2b)中、Yは、水素原子又は低級アルキル基である。低級アルキル基は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基である。
【0157】
上記式(1a)、(1b)、(2a)、及び、(2b)中、Zは、フッ素原子又は低級フルオロアルキル基である。低級フルオロアルキル基は、例えば、炭素数1〜3のフルオロアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であり、より好ましくは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基であり、更に好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0158】
上記式(1a)、(1b)、(2a)、及び、(2b)において、特に限定されるものではないが、Rf及びRfは炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であり、b=0、c=0、d=1、f=1であり、Zがフッ素原子であることが好ましい。このような構成によれば、耐擦性が高まる。また、aを付して括弧でくくられた繰り返し単位−(OC)−が、−(OCFCFCF)−であり、a=40であることがより好ましい。このような構成によれば、パーフルオロポリエーテル基は直鎖状構造を有するため、分枝鎖状構造を有する場合と比較して、より高い耐擦性が得られ、合成が容易になる。
【0159】
上記式(1a)、(1b)、(2a)、及び、(2b)中、R、R、及び、Tは、Siに結合する基である。nは、1〜3の整数である。
【0160】
上記式(1a)、(1b)、(2a)、及び、(2b)中、R及びRは、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数1〜22のアルコキシ基、又は、水酸基であり、好ましくは、炭素数1〜22のアルキル基、又は、炭素数1〜22のアルコキシ基であり、より好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基、又は、炭素数1〜3のアルコキシ基である。水酸基は、特に限定されないが、加水分解可能な基(例えば、炭素数1〜22のアルコキシ基)が加水分解して生じたものであってよい。
【0161】
上記式(1a)、(1b)、(2a)、及び、(2b)中、Tは、水酸基又は加水分解可能な基である。
【0162】
上記式(1a)、(1b)、(2a)、及び、(2b)中、m及びlは、1〜10の整数であり、好ましくは2〜6の整数である。
【0163】
上記式(1a)、(1b)、(2a)、及び、(2b)で表される化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは5×10〜1×10であり、より好ましくは2000〜30000であり、更に好ましくは3000〜10000であり、特に好ましくは3000〜8000である。数平均分子量が上記範囲である場合、高い摩擦耐久性が得られ、金型4への処理が容易になる。一方、数平均分子量が小さ過ぎると、摩擦耐久性が高まらない懸念があり、大き過ぎると金型4への処理方法が限定される懸念がある。
【0164】
上記式(1a)、(1b)、(2a)、及び、(2b)で表される化合物の製造方法について、以下に例示するが、これに限定されない。
【0165】
上記式(1a)及び(1b)のうちの一方で表される化合物に関して、まず、原料として、下記式(1a−ii)及び(1b−ii)のうちの一方で表される少なくとも1種の化合物を準備する。
【0166】
【化7】
【0167】
上記式(1a−ii)及び(1b−ii)中、X’は、ハロゲン原子であり、好ましくはヨウ素原子である。上記式(1a−ii)及び(1b−ii)中、X’以外の記号は、上記式(1a)及び(1b)中の記号と同意義である。
【0168】
上記式(1a−ii)及び(1b−ii)で表される化合物は、例えば、下記式(1a−i)及び(1b−i)のうちの一方で表される少なくとも1種の化合物をハロゲン化(例えば、ヨウ素化)反応させることによって得られるが、これに限定されない。
【0169】
【化8】
【0170】
上記式(1a−i)及び(1b−i)中の記号は、上記式(1a)及び(1b)中の記号と同意義である。
【0171】
そして、上記式(1a−ii)及び(1b−ii)のうちの一方で表される少なくとも1種の化合物を、下記式(E3)又は(E4)で表される化合物と反応させる。その結果、上記式(1a)及び(1b)のうちの一方で表される少なくとも1種の化合物が得られる。
CH=CY−(CH−SiX’’3−n及びT−H (E3)
CH=CY−(CH−SiT3−n (E4)
(上記式(E3)及び(E4)中、X’’は、ハロゲン原子である。上記式(E3)及び(E4)中、X’’以外の記号は、上記式(1a)及び(1b)中の記号と同意義である。)
【0172】
上記式(2a)及び(2b)のうちの一方で表される化合物に関して、まず、原料として、下記式(2a−i)及び(2b−i)のうちの一方で表される少なくとも1種の化合物を準備する。
【0173】
【化9】
【0174】
上記式(2a−i)及び(2b−i)中の記号は、上記式(2a)及び(2b)中の記号と同意義である。
【0175】
次に、上記式(2a−i)又は(2b−i)で表される少なくとも1種の化合物を、遷移金属(好ましくは、白金又はロジウム)の存在下で、下記式(E5)で表される化合物を用いてヒドロシリル化反応させる。
HSiX3−n (E5)
(上記式(E5)中、Xは、ハロゲン原子であり、好ましくは塩素原子である。X以外の記号は、上記式(2a)及び(2b)中の記号と同意義である。)
その結果、下記式(2a−ii)及び(2b−ii)のうちの一方で表される少なくとも1種の化合物が得られる。
【0176】
【化10】
【0177】
上記式(2a−ii)及び(2b−ii)中の記号は、上記式(2a)、(2b)、及び、(E5)中の記号と同意義である。
【0178】
そして、上記式(2a−ii)及び(2b−ii)のうちの一方で表される少なくとも1種の化合物を、下記式(E6)で表される化合物により脱ハロゲン化反応させる。その結果、上記式(2a)及び(2b)のうちの一方で表される少なくとも1種の化合物が得られる。
TH (E6)
(上記式(E6)中、Tは、上記式(2a)及び(2b)中のTと、水酸基を除いて同意義である。)
【0179】
以上において、上記式(1a)、(1b)、(2a)、及び、(2b)で表される化合物について説明したが、これらの化合物は、上述した方法によって製造されるものに限定されない。
【0180】
次に、下記式(3a)及び(3b)で表される化合物(フッ素シラン含有化合物)について説明する。
A−Rf−X−SiQ3−k (3a)
3−kSi−X−Rf−X−SiQ3−k (3b)
【0181】
上記式(3a)及び(3b)中、Aは、1つ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基である。1つ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基における「炭素数1〜16のアルキル基」は、直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1〜16のアルキル基であり、好ましくは、直鎖状または分枝鎖状の炭素数1〜6、特に炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくは直鎖状の炭素数1〜3のアルキル基である。
【0182】
上記式(3a)及び(3b)中、Aは、好ましくは、1つ以上のフッ素原子により置換されている炭素数1〜16のアルキル基であり、より好ましくはCFH−C1−15パーフルオロアルキレン基であり、更に好ましくは炭素数1〜16のパーフルオロアルキル基である。
【0183】
炭素数1〜16のパーフルオロアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1〜16のパーフルオロアルキル基であり、好ましくは、直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1〜6、特に炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖状の炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基(具体的には、−CF、−CFCF、又は、−CFCFCF)である。
【0184】
上記式(3a)及び(3b)中、Rfは、下記式(E1)で表される基であり、パーフルオロポリエーテル基に該当する。
−(OC−(OC−(OC−(OCF− (E1)
【0185】
上記式(E1)中、a、b、c、及び、dは、各々独立して0以上の整数であり、各々の和は1以上である。a、b、c、及び、dは、好ましくは、各々独立して0〜200の整数(例えば、1〜200の整数)であり、より好ましくは、各々独立して0〜100の整数(例えば、1〜100の整数)である。更に好ましくは、a、b、c、及び、dの和は、10以上(好ましくは20以上)、200以下(好ましくは100以下)である。a、b、c、又は、dを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、上記式(E1)中において任意である。これらの繰り返し単位のうち、−(OC)−は、−(OCFCFCFCF)−、−(OCF(CF)CFCF)−、−(OCFCF(CF)CF)−、−(OCFCFCF(CF))−、−(OC(CFCF)−、−(OCFC(CF)−、−(OCF(CF)CF(CF))−、−(OCF(C)CF)−、及び、−(OCFCF(C))−のうちのいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCFCFCF)−である。−(OC)−は、−(OCFCFCF)−、−(OCF(CF)CF)−、及び、−(OCFCF(CF))−のうちのいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCFCF)−である。また、−(OC)−は、−(OCFCF)−、及び、−(OCF(CF))−のうちのいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCF)−である。
【0186】
一態様において、上記式(3a)及び(3b)中のRfは、下記式(E7)で表される基であってもよく、好ましくは下記式(E8)で表される基である。
−(OC− (E7)
(上記式(E7)中、bは、1〜200の整数であり、好ましくは10〜100の整数である。)
−(OCFCFCF− (E8)
(上記式(E8)中のbは、上記式(E7)中のbと同意義である。)
【0187】
別の一態様において、上記式(3a)及び(3b)中のRfは、下記式(E9)で表される基であってもよく、好ましくは下記式(E10)で表される基である。
−(OC−(OC−(OC−(OCF− (E9)
(上記式(E9)中、a及びbは、各々独立して0〜30の整数であり、好ましくは0〜10の整数である。c及びdは、各々独立して1〜200の整数であり、好ましくは10〜100の整数である。a、b、c、及び、dの和は、10以上(好ましくは20以上)、200以下(好ましくは100以下)である。a、b、c、又は、dを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、上記式(E9)中において任意である。)
−(OCFCFCFCF−(OCFCFCF−(OCFCF−(OCF− (E10)
(上記式(E10)中、a、b、c、及び、dは、上記式(E9)中のa、b、c、及び、dと互いに同意義である。)
【0188】
上記式(3a)及び(3b)中、Xは、二価の有機基である。上記式(3a)及び(3b)で表される化合物において、Xは、主に撥水性及び滑り性を付与するパーフルオロポリエーテル部(A−Rf−部、又は、−Rf−部)と、加水分解して金型4との結合能を付与するシラン部(−SiQ3−k部)とを連結するリンカーと解される。したがって、このXは、上記式(3a)及び(3b)で表される化合物が安定的に存在し得るものであれば、いずれの二価の有機基であってもよい。
【0189】
上記式(3a)及び(3b)中のXとしては、特に限定されるものではないが、例えば、下記式(E11)で表される基が挙げられる。
−(R−(X−R− (E11)
(上記式(E11)中、Rは、−(CH−、又は、o−、m−、若しくは、p−フェニレン基であり、好ましくは−(CH−である。Rは、−(CH−、又は、o−、m−、若しくは、p−フェニレン基であり、好ましくは−(CH−である。Xは、−(X−である。Xは、各出現において、各々独立して、−O−、−S−、o−、m−、若しくは、p−フェニレン基、−C(O)O−、−CONR−、−O−CONR−、−NR−、−Si(R−、−(Si(RO)−Si(R−、又は、−(CH−である。Rは、各出現において、各々独立して、フェニル基又は炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。Rは、各出現において、各々独立して、水素原子、フェニル基、又は、炭素数1〜6のアルキル基(好ましくはメチル基)である。mは、各出現において、各々独立して、1〜100の整数であり、好ましくは1〜20の整数である。vは、各出現において、各々独立して、1〜20の整数であり、好ましくは1〜6の整数であり、より好ましくは1〜3の整数である。sは、1〜20の整数であり、好ましくは1〜6の整数であり、より好ましくは1〜3の整数であり、更に好ましくは1又は2である。tは、1〜20の整数であり、好ましくは2〜6の整数であり、より好ましくは2〜3の整数である。rは、1〜10の整数であり、好ましくは1〜5の整数であり、より好ましくは1〜3の整数である。pは、0又は1である。qは、0又は1である。)
【0190】
上記式(3a)及び(3b)中のXは、好ましくは、炭素数1〜20のアルキレン基、下記式(E12)で表される基、又は、下記式(E13)で表される基であり、より好ましくは、炭素数1〜20のアルキレン基、下記式(E14)で表される基、又は、下記式(E15)で表される基である。
−R−X−R− (E12)
−X−R− (E13)
(上記式(E12)及び(E13)中、R及びRは、上記式(E11)中のR及びRと互いに同意義である。)
−(CH−X−(CH− (E14)
−X−(CH− (E15)
(上記式(E14)及び(E15)中、s及びtは、上記式(E11)中のs及びtと互いに同意義である。)
【0191】
上記式(E12)及び(E14)中、Xは、−O−、−S−、−C(O)O−、−CONR−、−O−CONR−、−Si(R−、−(Si(RO)−Si(R−、−O−(CH−(Si(RO)−Si(R−、−CONR−(CH−(Si(RO)−Si(R−、−CONR−(CH−N(R)−、又は、−CONR−(o−、m−、又は、p−フェニレン)−Si(R−である(R、R、m、及び、vは、上記式(E11)中のR、R、m、及び、vと互いに同意義である。uは、1〜20の整数であり、好ましくは2〜6の整数、より好ましくは2〜3の整数である。)。Xは、好ましくは−O−である。
【0192】
上記式(E13)及び(E15)中、Xは、−S−、−C(O)O−、−CONR−、−CONR−(CH−(Si(RO)−Si(R−、−CONR−(CH−N(R)−、又は、−CONR−(o−、m−、又は、p−フェニレン)−Si(R−である(R、R、m、及び、vは、上記式(E11)中のR、R、m、及び、vと互いに同意義である。uは、1〜20の整数であり、好ましくは2〜6の整数、より好ましくは2〜3の整数である。)。
【0193】
上記式(3a)及び(3b)中のXは、更に好ましくは、炭素数1〜20のアルキレン基、下記式(E16)で表される基、下記式(E17)で表される基、又は、下記式(E18)で表される基である。
−(CH−O−(CH− (E16)
−(CH−(Si(RO)−Si(R−(CH− (E17)
−(CH−O−(CH−(Si(RO)−Si(R−(CH− (E18)
(上記式(E16)、(E17)、及び、(E18)中の各記号は、上記式(E12)、(E13)、(E14)、及び、(E15)中の各記号と互いに同意義である。)
【0194】
上記式(3a)及び(3b)中のXは、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、及び、炭素数1〜3のフルオロアルキル基(好ましくは、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基)からなる群より選択される少なくとも1つの置換基により置換されていてもよい。
【0195】
上記式(3a)及び(3b)中、Yは、水酸基、加水分解可能な基、又は、炭化水素基である。水酸基は、特に限定されないが、加水分解可能な基(例えば、炭素数1〜22のアルコキシ基)が加水分解して生じたものであってもよい。
【0196】
上記式(3a)及び(3b)中のYは、好ましくは、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、フェニル基、又は、下記式(E19)で表される基であり、より好ましくは、−OCH、−OCHCH、−OCH(CHである。これらの基は、例えば、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、及び、炭素数2〜6のアルキニル基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基により置換されていてもよい。
−O(R) (E19)
(上記式(E19)中、Rは、炭素数1〜12のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。)
【0197】
上記式(3a)及び式(3b)中、Qは、下記式(E2)で表される基である。
−Z−SiR3−n (E2)
【0198】
上記式(E2)中、Zは、各出現において、各々独立して、二価の有機基である。
【0199】
上記式(E2)中のZは、好ましくは、上記式(3a)又は(3b)における分子主鎖の末端のSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。
【0200】
上記式(E2)中のZは、好ましくは、炭素数1〜6のアルキレン基、下記式(E20)で表される基、又は、下記式(E21)で表される基であり、より好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基である。これらの基は、例えば、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、及び、炭素数2〜6のアルキニル基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基により置換されていてもよい。
−(CHs’−O−(CHt’− (E20)
(上記式(E20)中、s’は、1〜6の整数である。t’は、1〜6の整数である。)
−フェニレン−(CHu’− (E21)
(上記式(E21)中、u’は、0〜6の整数である。)
【0201】
上記式(E2)中、Rは、各出現において、各々独立して、水酸基又は加水分解可能な基である。
【0202】
上記式(E2)中のRは、好ましくは、下記式(E22)で表される基である。
−OR (E22)
(上記式(E22)中、Rは、置換又は非置換の炭素数1〜3のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。)
【0203】
上記式(E2)中、Rは、各出現において、各々独立して、炭素数1〜22のアルキル基、又は、Q’である。Q’は、上記式(3a)及び式(3b)中のQと同意義である。
【0204】
上記式(E2)中、nは、上述した各Q及びQ’において、各々独立して、0〜3の整数であり、nの総和は1以上である。各Q又はQ’において、nが0である場合、そのQ又はQ’中のSiは、水酸基及び加水分解可能な基を有さないことになる。したがって、nの総和は、1以上でなければならない。
【0205】
上記式(E2)中のnは、パーフルオロポリエーテル基を有する分子主鎖の末端のSi原子に結合する、−Q−Q’0−5鎖の末端のQ’において、好ましくは2であり、より好ましくは3である。
【0206】
上記式(E2)で表されるQにおいて、Rの少なくとも1つがQ’である場合、Zを介して直鎖状に連結されるSi原子が2つ以上存在する。このようなZを介して直鎖状に連結されるSi原子の数は、最大で5つである。なお、「Q中のZを介して直鎖状に連結されるSi原子の数」は、直鎖状に連結される−Z−Si−の繰り返し数と等しくなる。
【0207】
QにおいてZを介してSi原子が連結された構成の一例を、下記式(E23)に示す。
【0208】
【化11】
【0209】
上記式(E23)において、「*」は、主鎖のSiに結合する部位を意味する。「…」は、ZSi以外の所定の基が結合していること、すなわち、Si原子の3本の結合手がすべて「…」である場合、ZSiの繰り返しの終了箇所を意味する。また、Siの右肩(上付き)の数字は、「*」から数えたZを介して直鎖状に連結されたSiの出現数を意味する。すなわち、SiでZSi繰り返しが終了している鎖は、「Q中のZを介して直鎖状に連結されるSi原子の数」が2個であり、同様に、Si、Si、及び、SiでZSi繰り返しが終了している鎖は、各々、「Q中のZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数」が3、4、及び、5つである。なお、上記式(E23)から明らかなように、Q中には、ZSi鎖が複数存在するが、これらはすべて同じ長さである必要はなく、各々任意の長さであってもよい。
【0210】
「Q中のZを介して直鎖状に連結されるSi原子の数」は、下記式(E24)及び(E25)に示すように、すべての鎖において、1つ(下記式(E24))又は2つ(下記式(E25))であることが好ましい。
【0211】
【化12】
【0212】
一態様において、「Q中のZを介して直鎖状に連結されるSi原子の数」は、1つ(すなわち、Q中にSi原子は1つのみ存在する)又は2つであってもよく、好ましくは1つである。
【0213】
上記式(3a)及び(3b)中、kは、1〜3の整数であり、好ましくは2〜3の整数であり、より好ましくは3である。kが3である場合、金型4との結合が強固となり、高い摩擦耐久性が得られる。
【0214】
一態様において、上記式(3a)及び(3b)で表される化合物は、上記式(E2)で表されるQにおけるRが炭素数1〜22のアルキル基であってもよい。
【0215】
別の一態様において、上記式(3a)及び(3b)で表される化合物は、上記式(E2)で表されるQにおけるRの少なくとも1つがQ’であってもよい。
【0216】
上記式(3a)及び(3b)で表される化合物において、「A−Rf−」部分の数平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは500〜30000であり、より好ましくは1500〜10000であり、更に好ましくは3000〜8000である。
【0217】
上記式(3a)及び(3b)で表される化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、高い摩擦耐久性を得る観点からは、好ましくは5×10〜1×10であり、より好ましくは1500〜30000であり、更に好ましくは2500〜10000であり、特に好ましくは3000〜8000である。
【0218】
上記式(3a)及び(3b)で表される化合物の製造方法について、以下に例示するが、これに限定されない。
【0219】
上記式(3a)又は(3b)で表される化合物に関して、まず、下記式(3a−1)又は(3b−1)で表される化合物を準備する。
A−Rf−X’−CH=CH (3a−1)
CH=CH−X’−Rf−X’−CH=CH (3b−1)
(上記式(3a−1)及び(3b−1)中、A及びRfは、上記式(3a)及び(3b)中のA及びRfと互いに同意義である。X’は二価の有機基である。)
【0220】
次に、上記式(3a−1)又は(3b−1)で表される化合物を、下記式(E26)で表される化合物と反応させる。
HSiM (E26)
(上記式(E26)中、Mは、各々独立して、ハロゲン原子又は炭素数1〜6のアルコキシ基である。)
その結果、下記式(3a−2)又は(3b−2)で表される化合物が得られる。
A−Rf−X’−CH−CH−SiM (3a−2)
Si−CH−CH−X’−Rf−X’−CH−CH−SiM (3b−2)
(上記式(3a−2)及び(3b−2)中、A及びRfは、上記式(3a)及び(3b)中のA及びRfと互いに同意義である。X’は、上記式(3a−1)及び(3b−1)中のX’と同意義である。Mは、上記式(E26)中のMと同意義である。)
【0221】
次に、上記式(3a−2)又は(3b−2)で表される化合物を、下記式(E27)で表される化合物、及び、所望により、下記式(E28)で表される化合物と反応させる。
Hal−J−Z’−CH=CH (E27)
(上記式(E27)中、Z’は、結合又は二価のリンカー基である。Jは、Mg、Cu、Pd、又は、Znである。Halは、ハロゲン原子である。)
L (E28)
(上記式(E28)中、Yは、上記式(3a)及び(3b)中のYと同意義である。Lは、Yと結合可能な基である。hは、1〜3の整数である。)
その結果、下記式(3a−3)又は(3b−3)で表される化合物が得られる。
A−Rf−X’−CH−CH−Si(Y3−k’)(−Z’−CH=CHk’ (3a−3)
(CH=CH−Z’−)k’(Y3−k’)Si−CH−CH−X’−Rf−*
*X’−CH−CH−Si(Y3−k’)(−Z’−CH=CHk’ (3b−3)
(上記式(3a−3)及び(3b−3)中、A、Rf、及び、Yは、上記式(3a)及び(3b)中のA、Rf、及び、Yと互いに同意義である。X’は、上記式(3a−1)及び(3b−1)中のX’と同意義である。Z’は、上記式(E27)中のZ’と同意義である。k’は、1〜3の整数である。)
【0222】
そして、上記式(3a−3)又は(3b−3)で表される化合物を、上記式(E26)で表される化合物、並びに、所望により、下記式(E29)で表される化合物、及び、下記式(E30)で表される化合物のうちの少なくとも一方と反応させる。その結果、上記式(3a)又は(3b)で表される化合物が得られる。
L’ (E29)
(上記式(E29)中、Rは、上記式(E2)中のRと同意義である。L’は、Rと結合可能な基である。iは、1〜3の整数である。)
2’L’’ (E30)
(上記式(E30)中、R2’は、炭素数1〜22のアルキル基である。L’’は、R2’と結合可能な基である。jは、1〜3の整数である。)
【0223】
上記式(1a)、(1b)、(2a)、(2b)、(3a)、及び、(3b)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物(パーフルオロポリエーテル系化合物)のうち公知のものとしては、例えば、ダイキン工業社製の「オプツールDSX」及び「オプツールDSX−E」、「オプツールUD100」、信越化学工業社製の「KY−164」及び「KY−108」等が挙げられる。
【0224】
離型剤5は、上記式(1a)、(1b)、(2a)、(2b)、(3a)、及び、(3b)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物(パーフルオロポリエーテル系化合物)に加えて、パーフルオロアルキル系化合物を含んでいてもよい。
【0225】
パーフルオロアルキル系化合物としては、例えば、C17CHCHSi(OMe)3、13CHCHSi(OMe)3、CHCHSi(OMe)等が挙げられる。
【0226】
重合体層6の厚みQは、1μm以上、20μm以下であることが好ましく、3μm以上、10μm以下であることがより好ましい。重合体層6の厚みQが1μm未満である場合、金型4に所望の凹凸構造以外の局所的な歪み、異物等が存在すると、防汚性フィルム1で欠陥(金型4から転写された歪み、異物等)が視認されやすくなる懸念がある。重合体層6の厚みQが20μmよりも大きい場合、樹脂3の硬化収縮に起因して防汚性フィルム1のカール等が発生する懸念がある。重合体層6の厚みQは、図1(d)に示すように、基材2側の表面から凸部7の頂点までの距離を指す。
【0227】
凸部7の形状としては、例えば、柱状の下部と半球状の上部とによって構成される形状(釣鐘状)、錐体状(コーン状、円錐状)等の、先端に向かって細くなる形状(テーパー形状)が挙げられる。図1(d)中、隣接する凸部7の間隙の底辺は傾斜した形状となっているが、傾斜せずに水平な形状であってもよい。
【0228】
隣接する凸部7間のピッチPは、可視光の波長(780nm)以下であれば特に限定されないが、20nm以上、400nm以下であることが好ましく、50nm以上、300nm以下であることがより好ましい。隣接する凸部7間のピッチPが20nm未満である場合、凸部7の機械的強度が不充分となり、防汚性フィルム1の耐擦性が低下する懸念がある。隣接する凸部7間のピッチPが400nmよりも大きい場合、凹凸構造に起因する不要な回折、散乱等によって、防汚性フィルム1の外観上の問題が発生する懸念がある。本明細書中、隣接する凸部間のピッチは、走査型電子顕微鏡で撮影された平面写真における、任意の隣接する凸部間の距離(凸部の頂点間の距離)の平均値として決定される。例えば、まず、走査型電子顕微鏡で凹凸構造の平面写真(倍率:2万倍)を撮影し、その平面写真の数μm角の領域内の200個程度の凸部において、隣接する凸部間の距離が短い3個の凸部の組み合わせを選択する。そして、3個の凸部間の各距離を測定し、それらの平均値を算出することによって、隣接する凸部間のピッチ(隣接する凸部間の平均距離)が決定される。
【0229】
凸部7の高さは、50nm以上、500nm以下であることが好ましく、100nm以上、400nm以下であることがより好ましい。凸部7の高さが50nm未満である場合、防汚性フィルム1の反射防止性能が不充分となる懸念がある。凸部7の高さが500nmよりも大きい場合、凸部7の機械的強度が不充分となり、防汚性フィルム1の耐擦性が低下する懸念がある。
【0230】
凸部7のアスペクト比は、0.13以上、25以下であることが好ましく、0.3以上、8以下であることがより好ましい。本明細書中、凸部のアスペクト比は、隣接する凸部間のピッチと凸部の高さとの比(高さ/ピッチ)を指す。凸部7の好ましいアスペクト比は、機械的強度(耐擦性)と光学性能(反射防止性能、及び、不要な回折、散乱等の防止性能)とを考慮した上で、隣接する凸部7間のピッチPの好ましい範囲と凸部7の高さの好ましい範囲とで定められる。
【0231】
凸部7は、ランダムに配置されていても、規則的(周期的)に配置されていてもよい。凸部7の配置には周期性があってもよいが、その周期性に起因する不要な回折光が発生しない等の利点から、凸部7の配置には周期性がない(ランダムである)ことが好ましい。
【0232】
以上より、実施形態の防汚性フィルムの製造方法によれば、樹脂3としてパーフルオロ(ポリ)エーテル基を有する化合物を含んでなる防汚剤を含有するものを用い、離型剤5としてパーフルオロ(ポリ)エーテル基と、加水分解可能な基と、Si原子とを有する化合物を含んでなるものを用いているため、両者の親和性を高めることができる。その結果、樹脂3中の防汚剤を効率良くブリードアウトさせることができるため、防汚性及び耐擦性に優れた防汚性フィルム1を製造することができる。防汚性フィルム1は防汚性に優れているため、付着した汚れが乾拭き可能である。また、耐擦性にも優れているため、ティッシュペーパー等で強く擦っても、凹凸構造の形状が崩れない。更に、スティッキングも発生しないため、凸部7を高くすることが可能であり、超低反射性を実現することができる。
【0233】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0234】
[評価1:防汚剤の種類による評価]
防汚剤の種類を変化させて、防汚性フィルムの評価を行った。
【0235】
防汚性フィルムを製造するために用いた材料は以下の通りである。
【0236】
(基材2)
富士フイルム社製の「フジタック(登録商標)TD−60」を用い、その厚みは60μmであった。
【0237】
(樹脂3)
表1に示すような組成の樹脂A1〜A5、a1、及び、a2を用いた。各樹脂の材料名の略記は、以下の通りである。表1には、各樹脂における防汚剤の有効成分の含有率も示した。
【0238】
<防汚剤>
防汚剤として、以下の4種類の化合物を用いた。
【0239】
(1)「防汚剤A」
防汚剤Aは、下記の方法で作製されたものであり、パーフルオロポリエーテル系化合物を含むものであった。まず、反応器において、住友バイエルウレタン社製の「スミジュールN3300」(ヘキサメチレンジイソシアナートの環状三量体、NCO基の含有率:21.9%)57gを、日本ゼオン社製の「ゼオローラ(登録商標)H」1000gに溶解させ、和光純薬工業社製のジブチルスズジラウレート(一級試薬)0.1gを添加した。その後、室温で撹拌しながら、「CFCFO−(CFCFCFO)11−CFCFCHOH」244gを日本ゼオン社製の「ゼオローラH」300gに溶解させた溶液を滴下し、室温で終夜撹拌し続けた。その後、加温し、ヒドロキシエチルアクリレート24.4gを滴下して撹拌した。反応の終点は、IRによってNCOの吸収が完全に消失した時点とした。その結果、防汚剤Aが得られた。防汚剤A中の有効成分の含有率は、20重量%であった。
【0240】
(2)「防汚剤B」
防汚剤Bは、下記の方法で作製されたものであり、パーフルオロポリエーテル系化合物を含むものであった。まず、上述した方法で作製した防汚剤Aに4−アクリロイルモルホリン1300gを添加した。その後、減圧下で加温しながら日本ゼオン社製の「ゼオローラH」を留去した。そして、19F−NMRにて日本ゼオン社製の「ゼオローラH」のピークが検出限界以下になったことを確認した。その結果、防汚剤Bが得られた。防汚剤B中の有効成分の含有率は、20重量%であった。
【0241】
(3)「防汚剤C」
防汚剤Cは、4−アクリロイルモルホリンの添加量を650gに変更したこと以外、防汚剤Bと同様にして作製されたものであり、パーフルオロポリエーテル系化合物を含むものであった。防汚剤C中の有効成分の含有率は、40重量%であった。
【0242】
(4)「防汚剤D」
ユニマテック社製の「CHEMINOX(登録商標) FAAC−6」
防汚剤Dは、パーフルオロアルキル系化合物であった。
【0243】
<モノマー>
・「ATM」:新中村化学工業社製の「ATM−35E」
・「TMM」:新中村化学工業社製の「A−TMM−3LM−N」
・「AC」:KJケミカルズ社製の「ACMO」
【0244】
<重合開始剤>
・「TPO」:BASF社製の「IRGACURE TPO」
【0245】
【表1】
【0246】
(金型4)
下記の方法で作製したものを用いた。まず、金型4の材料となるアルミニウムを、10cm角のガラス基板上にスパッタリング法によって成膜した。成膜されたアルミニウムの層の厚みは、1.0μmであった。次に、成膜されたアルミニウムの層に対して、陽極酸化及びエッチング(陽極酸化の直後)を交互に繰り返すことによって、多数の微小な穴(隣り合う穴(凹部)の底点間の距離が可視光の波長以下)が設けられた陽極酸化層を形成した。具体的には、陽極酸化、エッチング、陽極酸化、エッチング、陽極酸化、エッチング、陽極酸化、エッチング、及び、陽極酸化を順に行う(陽極酸化:5回、エッチング:4回)ことによって、凹凸構造を有する金型4を作製した。このように陽極酸化及びエッチングを交互に繰り返すことによれば、形成される微小な穴(凹部)は、金型の内部に向かって細くなる形状(テーパー形状)となる。陽極酸化は、シュウ酸(濃度:0.6重量%)を用いて、液温5℃、印加電圧80Vの条件下で行った。1回の陽極酸化を行う時間は、20秒とした。エッチングは、リン酸(濃度:1mol/l)を用いて、液温30℃の条件下で行った。1回のエッチングを行う時間は、25分とした。金型4を走査型電子顕微鏡で観察したところ、隣接する凹部間のピッチ(底点間の距離)は約180nm、凹部の深さは約180nmであった。なお、各凹部の形状は、円錐型であった。
【0247】
(離型剤5)
・「離型剤A」:ダイキン工業社製の「オプツールDSX」
【0248】
(実施例1)
実施例1の防汚性フィルムを、実施形態の防汚性フィルムの製造方法によって作製した。
【0249】
(a)樹脂の塗布(プロセス(1))
樹脂3を基材2の表面上に、バーコーターで塗布した。樹脂3としては、上述した樹脂A1を用い、その厚みは7μmであった。
【0250】
一方、金型4を準備した。金型4の表面には、離型剤5が塗布され、離型処理が施されていた。具体的には、まず、離型剤5をフロロテクノロジー社製の「S−135」で希釈した希釈液を作製した。希釈液中の離型剤5の濃度は0.1%であった。次に、金型4の表面に対して、Oアッシングを200Wで20分間行った。そして、離型剤5の希釈液を3分間浸漬させることによって、金型4の表面に塗布した。その後、離型剤5が表面に塗布された金型4に対して、100℃で1時間アニールを行い、フロロテクノロジー社製の「S−135」で3分間リンスした。
【0251】
(b)凹凸構造の形成(プロセス(2))
樹脂3を間に挟んだ状態で基材2を金型4に押し当てた。その結果、凹凸構造が樹脂3の表面(基材2とは反対側の表面)に形成された。
【0252】
(c)樹脂の硬化(プロセス(3))
凹凸構造を表面に有する樹脂3に、HERAEUS社製のUVランプ「LIGHT HANMAR6J6P3」を用いて、基材2側から紫外線(照射量:1J/cm)を照射して硬化させ、重合体層6を形成した。重合体層6の厚みQは、7μmであった。
【0253】
(d)金型の剥離
金型4を重合体層6から剥離した。その結果、防汚性フィルム1が完成した。防汚性フィルム1の表面仕様は、下記の通りであった。防汚性フィルム1の表面仕様の評価は、日立ハイテクノロジーズ社製の走査型電子顕微鏡「S−4700」を用いて行われた。なお、評価時には、メイワフォーシス社製のオスミウムコーター「Neoc−ST」を用いて、重合体層6の基材2とは反対側の表面上に和光純薬工業社製の酸化オスミウムVIII(厚み:5nm)が塗布されていた。
凸部7の形状:釣鐘状
隣接する凸部7間のピッチP:約180nm
凸部7の高さ:約180nm
凸部7のアスペクト比:1.0
【0254】
(実施例2〜5、及び、比較例1、2)
表2に示すような組成に変更したこと以外、実施例1と同様にして、各例の防汚性フィルムを作製した。
【0255】
(評価内容及び評価結果)
実施例1〜5、及び、比較例1、2の防汚性フィルムについて、防汚性と、耐擦性と、基材と重合体層との間の密着性(以下、単に、密着性とも言う。)とを評価した。結果を表2に示す。
【0256】
<防汚性>
防汚性としては、撥水性及び撥油性を評価した。
【0257】
撥水性としては、各例の防汚性フィルムの表面(重合体層の基材とは反対側の表面)に対する水の接触角を評価した。具体的には、各例の防汚性フィルムの表面(重合体層の基材とは反対側の表面)に対して水を滴下し、滴下直後の接触角を測定した。
【0258】
撥油性としては、各例の防汚性フィルムの表面(重合体層の基材とは反対側の表面)に対するヘキサデカンの接触角を評価した。具体的には、各例の防汚性フィルムの表面(重合体層の基材とは反対側の表面)に対してヘキサデカンを滴下し、滴下直後、及び、10秒後の接触角を測定した。
【0259】
水及びヘキサデカンの接触角は、協和界面科学社製のポータブル接触角計「PCA−1」を用いて、θ/2法(θ/2=arctan(h/r)、θ:接触角、r:液滴の半径、h:液滴の高さ)で測定された、3箇所の接触角の平均値を示す。ここで、1箇所目の測定点としては、各例の防汚性フィルムの中央部分を選択し、2箇所目及び3箇所目の測定点としては、1箇所目の測定点から20mm以上離れ、かつ、1箇所目の測定点に対して互いに点対称な位置にある2点を選択した。
【0260】
<耐擦性>
耐擦性は、下記の方法によって評価された。まず、各例の防汚性フィルムの表面(重合体層の基材とは反対側の表面)をティッシュペーパーで2〜3回擦った。その後、ティッシュペーパーで擦った部分の白化度合いを、照度100lx(蛍光灯)の環境下で浅い角度から目視観察した。判定基準は、下記の通りとした。
○:全く変化しなかった(全く白化して見えなかった)。
△:わずかに白化して見えた。
×:明らかに白化して見えた。
ここで、評価結果が○又は△である場合を、許容可能なレベル(耐擦性が優れている)と判断した。
【0261】
<密着性>
密着性は、下記の方法によって評価された。まず、各例の防汚性フィルムの表面(重合体層の基材とは反対側の表面)に対して、カッターナイフで、碁盤目状に縦11本、横11本の切り込みを1mm間隔で入れて、100個の正方形状の升目(1mm角)を刻んだ。そして、日東電工社製のポリエステル粘着テープ「No.31B」を升目部分に圧着した後、粘着テープを升目部分の表面に対して90°の方向に、100mm/sの速度で剥がした。その後、基材上の重合体層の剥離状態を目視観察し、基材上の重合体層が剥がれずに残った升目の個数を数えた。結果を、「X」で示した(Xは、基材上の重合体層が剥がれずに残った升目の個数)。
【0262】
【表2】
【0263】
表2に示すように、実施例1〜5はいずれも、比較例1、2と比較して、防汚性(特に、撥油性)に優れていた。実施例3は、他の実施例と比較して、耐擦性が若干劣っていた。これは、防汚剤に含まれるN−アクリロイルモルホリン(「ACMO」)の量が実施例3で最も多く、重合体層6の架橋密度が低下し、弾性が低いためである。この場合、重合体層6の表面(基材2とは反対側の表面)をティッシュペーパーで擦ると、凸部7は倒れた後、起き上がりにくい(白化して見える)。実施例4は、他の実施例と比較して、密着性が劣っていた。これは、実施例4で用いた樹脂A4中の防汚剤Aに含まれる溶剤成分が基材と重合体層との間の界面に残存しており、その界面における基材と重合体層との相互作用が低下したためであると推定される。以上より、水及びヘキサデカンの接触角(経時変化を含む)も考慮すると、実施例5が性能面で最も優れていた。防汚性フィルム1の表面に対して、水の接触角は130°以上であり、ヘキサデカンの接触角は30°以上であることが好ましい。なお、防汚剤としてパーフルオロ(ポリ)エーテル基を有する化合物を用いて、その樹脂中の有効成分の含有率を0.5重量%とした場合についても検証を行い、防汚性が優れていることを確認した。
【0264】
[評価2:樹脂中の防汚剤の有効成分の含有率による評価]
評価1の結果を踏まえた上で、実施例5で用いた防汚剤(防汚剤C)について、樹脂中の防汚剤の有効成分の含有率を変化させて防汚性を評価した。
【0265】
防汚性フィルムを製造するために用いた材料は、樹脂以外、実施例5と同様である。
【0266】
(樹脂3)
表3に示すような組成の樹脂A6〜A9を用いた。各樹脂の材料名の略記は、以下の通りである。表3には、各樹脂における防汚剤の有効成分の含有率も示した。
【0267】
<防汚剤>
・「防汚剤C」
【0268】
<モノマー>
・「UA」:共栄社化学社製の「UA−510H」
・「ATM」:新中村化学工業社製の「ATM−35E」
・「DPE」:共栄社化学社製の「ライトアクリレートDPE−6A」
・「DM」:KJケミカルズ社製の「DMAA」
【0269】
<重合開始剤>
・「819」:BASF社製の「IRGACURE 819」
【0270】
【表3】
【0271】
(実施例6〜9)
表4に示すような組成に変更したこと以外、実施例5と同様にして、各例の防汚性フィルムを作製した。
【0272】
(評価内容及び評価結果)
実施例6〜9の防汚性フィルムについて、防汚性を評価した。結果を表4に示す。防汚性としては、評価1と同様にして、撥水性(水の接触角)、及び、撥油性(ヘキサデカンの接触角)を評価した。
【0273】
【表4】
【0274】
表4に示すように、実施例6、実施例7、実施例8、及び、実施例9の順に、樹脂中の防汚剤の有効成分の含有率が増加すると、防汚性が同等以上になることが分かった。
【0275】
次に、実施例6〜9の防汚性フィルムに対して、ガスクラスターイオンビーム(GCIB:Gas Cluster Ion Beam)によって凹凸構造をエッチングしながら、X線光電子分光法(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)による測定を行った。測定装置としては、アルバック・ファイ社製のX線光電子分光分析装置(製品名:PHI 5000 VersaProbe II)に、同社製のアルゴンガスクラスタースパッタイオン銃(製品名:06−2000)を搭載したものを用いた。
【0276】
X線光電子分光法による測定条件は、下記の通りであった。
・X線ビーム径:100μm(25W、15kV)
・分析面積:1000μm×500μm
・光電子の取り出し角度:45°
・パスエネルギー:46.95eV
【0277】
ガスクラスターイオンビームによるスパッタリング条件、及び、帯電中和条件は、下記の通りであった。
<スパッタリング条件>
・イオン源:アルゴンガスクラスターイオンビーム
・加速電圧:10kV(15mA Emission)
・試料電流:30nA
・ラスター領域:4mm×3mm
・Zalar回転:未使用
・スパッタリング時間:81分間(1.5分×2サイクル、3分×8サイクル、及び、6分×9サイクルの合計時間)
・スパッタリングレート(エッチングレート):27nm/分(ポリヒドロキシスチレン換算)
<帯電中和条件>
・電子銃:Bias 1.0V(20μA Emission)
・イオン銃:3V(7mA Emission)
【0278】
図2は、炭素原子の数、酸素原子の数、及び、フッ素原子の数の合計数に対する各原子の数の比率を示すグラフであり、(a)は実施例6を示し、(b)は実施例7を示し、(c)は実施例8を示し、(d)は実施例9を示す。図2に示すように、実施例6〜9の防汚性フィルムにおいては、フッ素原子がごく表層に高濃度で偏在していることが分かった。具体的には、防汚性フィルムの表面(エッチング時間:0分)におけるフッ素原子濃度は、実施例6で38.6atom%、実施例7で45.1atom%、実施例8で45.0atom%、実施例9で45.6atom%であった。防汚性フィルムの表面におけるフッ素原子濃度は、好ましくは38atom%以上であり、より好ましくは45atom%以上である。
【0279】
[評価3:離型剤の種類による評価]
離型剤の種類を変化させて、防汚性フィルムの評価を行った。
【0280】
防汚性フィルムを製造するために用いた材料は、離型剤以外、実施例5と同様である。
【0281】
(離型剤5)
離型剤として、以下の4種類の化合物を用いた。各離型剤名の略記は、以下の通りである。
【0282】
(1)「離型剤A」
ダイキン工業社製の「オプツールDSX」
【0283】
(2)「離型剤B」
ダイキン工業社製の「オプツールUD100」
【0284】
(3)「離型剤C」
ダイキン工業社製の「オプツールDSX」とC13CHCHSi(OMe)との混合物(重量比1:1)
【0285】
(4)「離型剤D」
13CHCHSi(OMe)
【0286】
(実施例10〜12、及び、比較例3)
表5に示すような組成に変更したこと以外、実施例5と同様にして、各例の防汚性フィルムを作製した。
【0287】
(評価内容及び評価結果)
実施例10〜12、及び、比較例3の防汚性フィルムについて、防汚性を評価した。結果を表5に示す。防汚性としては、評価1と同様にして、撥水性(水の接触角)を評価した。
【0288】
【表5】
【0289】
表5に示すように、実施例10〜12はいずれも、比較例3と比較して、水の接触角が高く、防汚性に優れていた。よって、樹脂としてパーフルオロポリエーテル系化合物を含んでなる防汚剤を含有するものを用いる場合、実施例10〜12のように、離型剤としてパーフルオロポリエーテル系化合物を含んでなるものを用いれば、防汚性を高めることができる。
【0290】
[付記]
本発明の一態様は、複数の凸部が可視光の波長以下のピッチで設けられる凹凸構造を表面に有する重合体層を備える防汚性フィルムの製造方法であって、樹脂を基材の表面上に塗布するプロセス(1)と、上記樹脂を間に挟んだ状態で上記基材を金型に押し当て、上記凹凸構造を上記樹脂の表面に形成するプロセス(2)と、上記凹凸構造を表面に有する上記樹脂を硬化させ、上記重合体層を形成するプロセス(3)とを含み、上記樹脂は、パーフルオロ(ポリ)エーテル基を有する化合物を含んでなる防汚剤を含有し、上記金型の表面は、パーフルオロ(ポリ)エーテル基と、加水分解可能な基と、Si原子とを有する化合物を含んでなる離型剤で離型処理が施されている防汚性フィルムの製造方法であってもよい。この態様によれば、防汚性及び耐擦性に優れた防汚性フィルムを製造することができる。
【0291】
上記防汚剤は、成分(A)ジイソシアネートの三量体であるポリイソシアネートと成分(B)活性水素を有する化合物との反応物である炭素−炭素二重結合含有化合物を含んでなり、上記成分(B)は、成分(B1)活性水素を有するパーフルオロポリエーテルと、成分(B2)炭素−炭素二重結合を含有する基及び活性水素を有するモノマーとを含み、上記成分(B1)は、下記式(B1−i)及び(B1−ii)のうちの一方で表される少なくとも1種の化合物であってもよい。このような構成によれば、上記防汚剤を効果的に利用することができる。
Rf−PFPE−Z−X (B1−i)
X−Z−PFPE−Z−X (B1−ii)
(上記式(B1−i)及び(B1−ii)中、Rfは、1つ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基である。PFPEは、下記式(D1)、(D2)、又は、(D3)で表される基である。
−(OCFCFCF− (D1)
(上記式(D1)中、bは、1〜200の整数である。)
−(OCFCFCFCF−(OCFCFCF−(OCFCF−(OCF− (D2)
(上記式(D2)中、a及びbは、各々独立して、0〜30の整数である。c及びdは、各々独立して、1〜200の整数である。a、b、c、又は、dを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、上記式(D2)中において任意である。)
−(OC−R− (D3)
(上記式(D3)中、Rは、OC、OC、又は、OCである。iは、2〜100の整数である。)
PFPEは、下記式(D4)又は(D5)で表される基である。
−(OCFCFCF− (D4)
(上記式(D4)中、bは、1〜200の整数である。)
−(OC−R− (D5)
(上記式(D5)中、Rは、OC、OC、又は、OCである。iは、2〜100の整数である。)
Zは、各々独立して、二価の有機基である。Xは、活性水素含有基である。)
【0292】
上記離型剤は、下記式(1a)、(1b)、(2a)、(2b)、(3a)、及び、(3b)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含んでなるものであってもよい。このような構成によれば、上記離型剤を効果的に利用することができる。
【0293】
【化13】
【0294】
【化14】
【0295】
上記式(1a)、(1b)、(2a)、及び、(2b)中、Rf及びRfは、1つ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基である。a、b、c、及び、sは、互いに独立して0〜200の整数であり、各々の和は1以上である。a、b、c、又は、sを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、上記式(1a)、(1b)、(2a)、及び、(2b)中において任意である。d及びfは、0又は1である。e及びgは、0〜2の整数である。h及びjは、1又は2である。i及びkは、2〜20の整数である。Xは、水素原子又はハロゲン原子である。Yは、水素原子又は低級アルキル基である。Zは、フッ素原子又は低級フルオロアルキル基である。R及びRは、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数1〜22のアルコキシ基、又は、水酸基である。Tは、水酸基又は加水分解可能な基である。nは、1〜3の整数である。m及びlは、1〜10の整数である。
【0296】
A−Rf−X−SiQ3−k (3a)
3−kSi−X−Rf−X−SiQ3−k (3b)
(上記式(3a)及び(3b)中、Aは、1つ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基である。Rfは、下記式(E1)で表される基である。
−(OC−(OC−(OC−(OCF− (E1)
(上記式(E1)中、a、b、c、及び、dは、各々独立して0以上の整数であり、各々の和は1以上である。a、b、c、又は、dを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、上記式(E1)中において任意である。)
Xは、二価の有機基である。Yは、水酸基、加水分解可能な基、又は、炭化水素基である。Qは、下記式(E2)で表される基である。
−Z−SiR3−n (E2)
(上記式(E2)中、Zは、各出現において、各々独立して、二価の有機基である。Rは、各出現において、各々独立して、水酸基又は加水分解可能な基である。Rは、各出現において、各々独立して、炭素数1〜22のアルキル基、又は、Q’である。Q’は、Qと同意義である。nは、各Q及びQ’において、各々独立して、0〜3の整数であり、nの総和は1以上である。)
kは、1〜3の整数である。)
【0297】
上記樹脂中の上記防汚剤の有効成分の含有率は、0.1重量%以上、10重量%以下であってもよい。このような構成によれば、上記防汚性フィルムの防汚性及び耐擦性が充分に高まる。
【0298】
上記樹脂は、紫外線によって硬化するものであってもよい。このような構成によれば、上記樹脂を効果的に利用することができる。
【0299】
上記防汚性フィルムの表面に対して、水の接触角は130°以上であり、ヘキサデカンの接触角は30°以上であってもよい。このような構成によれば、上記防汚性フィルムの防汚性が充分に高まる。
【0300】
上記防汚性フィルムの表面におけるフッ素原子濃度は、38atom%以上であってもよい。このような構成によれば、上記防汚性フィルムの防汚性が充分に高まる。
【0301】
上記重合体層の厚みは、1μm以上、20μm以下であってもよい。このような構成によれば、上記防汚性フィルムで欠陥(上記金型から転写された歪み、異物等)が視認されやすくなることが防止される。更に、上記樹脂の硬化収縮に起因する上記防汚性フィルムのカール等の発生が防止される。
【0302】
上記ピッチは、20nm以上、400nm以下であってもよい。このような構成によれば、上記防汚性フィルムの耐擦性の低下が防止され、外観上の問題の発生も防止される。
【0303】
上記複数の凸部の高さは、各々、50nm以上、500nm以下であってもよい。このような構成によれば、上記防汚性フィルムの反射防止性能が不充分となることが防止される。更に、上記複数の凸部の機械的強度が不充分となり、上記防汚性フィルムの耐擦性が低下することを防止することができる。
【0304】
上記複数の凸部のアスペクト比は、各々、0.13以上、25以下であってもよい。このような構成によれば、上記防汚性フィルムの機械的強度(耐擦性)と光学性能(反射防止性能、及び、不要な回折、散乱等の防止性能)とを高い水準で両立することができる。
【符号の説明】
【0305】
1:防汚性フィルム
2:基材
3:樹脂
4:金型
5:離型剤
6:重合体層
7:凸部
P:ピッチ
Q:重合体層の厚み
図1
図2