【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
実施例1における調圧弁の制御装置は、油圧コントロールバルブユニットを備えるベルト式無段変速機に適用したものである。なお、ベルト式無段変速機は、例えば、エンジン車やハイブリッド車等の車両に搭載される。以下、実施例1の制御装置の構成を、「全体構成」と[異常時制御処理構成]に分けて説明する。
【0011】
[全体構成]
図1は、実施例1の調圧弁の制御装置が適用された油圧コントロールバルブユニットを備えるベルト式無段変速機の概略構成図示す。以下、
図1に基づいて、油圧コントロールバルブユニットを備えるベルト式無段変速機の全体構成を説明する。
ベルト式無段変速機CVTは、前進クラッチFCと、後退ブレーキRBと、油圧コントロールバルブユニット3と、オイルポンプO/P(オイル供給源)と、CVTコントロールユニット8(CVT CU、コントローラ)と、を有する。
【0012】
前記ベルト式無段変速機CVTは、プライマリプーリPriと、セカンダリプーリSecと、このプライマリプーリPriとセカンダリプーリSecの間に掛け渡されたプーリベルトVを有するベルト式無段変速機である。プライマリプーリPriとセカンダリプーリSecは、それぞれのプライマリ圧室1及びセカンダリ圧室2へ油圧が供給されることでプーリベルトVを挟持しつつプーリ幅を変更し、プーリベルトVを挟持する面の径を変更して変速比(プーリ比)を自在に制御する。
【0013】
前記前進クラッチFCと前記後退ブレーキRBは、摩擦締結要素である。前進クラッチFCと後退ブレーキRBは、ここでは油圧作動による湿式の多板摩擦クラッチ/ブレーキから構成される。前進走行時には、前進クラッチFCが締結され、後退走行時には、後退ブレーキRBが締結される。
【0014】
前記油圧コントロールバルブユニット3は、CVTコントロールユニット8からの制御指令に基づき、制御油圧を作り出す。この制御油圧により、ベルト式無段変速機CVTや前進クラッチFCや後退ブレーキRB等が制御される。この油圧コントロールバルブユニット3は、ライン圧調圧弁4(調圧弁)と、プライマリ圧調圧弁5と、前進クラッチ圧調圧弁6と、後退ブレーキ圧調圧弁7と、を有する。
【0015】
前記ライン圧調圧弁4は、オイルポンプO/Pからのポンプ吐出圧に基づき、ベルト式無段変速機CVTと前進クラッチFCと後退ブレーキRBへ供給するライン圧PLを調圧する。実施例1では、セカンダリ圧調圧弁を有さないので、ライン圧PLは、セカンダリ圧Psecと同圧になる。そのため、実施例1では、セカンダリ圧Psecをライン圧PLとする片調圧方式となっている。また、ライン圧調圧弁4は、ライン圧ソレノイド41(ソレノイド)と、ライン圧スプールバルブ42(スプールバルブ)を有する。
【0016】
前記ライン圧ソレノイド41は、パイロット圧Pp(一定圧)を元圧とし、電流の印加によりライン圧スプールバルブ42へのソレノイド圧Psol(指示圧、信号圧)を作り出す。印加される電流は、CVTコントロールユニット8からの電流指示値Iに基づく。このソレノイド圧Psolにより、ライン圧スプールバルブ42が動作される。また、ソレノイド圧Psolは、ライン圧ソレノイド41に印加される電流指示値Iが小さいほど大きくなり、ライン圧ソレノイド41に印加される電流指示値Iが大きいほど小さくなる形態である。即ち、電流指示値Iが最小で出力されるソレノイド圧Psolが最大になり、電流指示値Iが最大で出力されるソレノイド圧Psolが最小になる形態である。
【0017】
前記ライン圧スプールバルブ42は、ソレノイド圧Psolに基づき動作し、ライン圧PLを調圧する。ライン圧スプールバルブ42の一端側に、ソレノイド圧Psolが作用し、ライン圧スプールバルブ42の他端側に、スプリング力とPLフィードバック圧F/B(調圧されたライン圧のフィードバック圧)が作用する。ソレノイド圧Psolが変化し、ライン圧スプールバルブ42の一端側からの力が他端側からの力よりも大きいとき、ライン圧スプールバルブ42はA方向(一方向、油圧が増大する方向)へ移動する。これにより、ライン圧PLが増大する。また、ソレノイド圧Psolが変化し、ライン圧スプールバルブ42の他端側からの力が一端側からの力よりも大きいとき、ライン圧スプールバルブ42はA方向とは反対のB方向(反対方向、油圧が低下する方向)へ移動する。このため、余剰オイルがドレーンされる。これにより、ライン圧PLが低下する。このようなライン圧スプールバルブ42の移動により、ライン圧PLが調圧される。
【0018】
前記プライマリ圧調圧弁5は、ライン圧PLを元圧とし、プライマリ圧室1へ導くプライマリ圧Ppriを調圧する。例えば、最ハイ変速比のとき、プライマリ圧Ppriは、ライン圧PLとされ、ロー変速比側へ移行するほど低圧の変速圧とされる。
【0019】
前記前進クラッチ圧調圧弁6は、ライン圧PLを元圧とし、前進クラッチFCに供給される前進クラッチ圧Pfcを調圧する。例えば、前進クラッチFCを締結するとき(前進走行時)、前進クラッチ圧Pfcは高圧とされ、前進クラッチFCを解放するとき、前進クラッチ圧Pfcは低圧とされる。
【0020】
前記後退ブレーキ圧調圧弁7は、ライン圧PLを元圧とし、後退ブレーキRBに供給される後退ブレーキ圧Prbを調圧する。例えば、後退ブレーキRBを締結するとき(後退走行時)、後退ブレーキ圧Prbは高圧とされ、後退ブレーキRBを解放するとき、後退ブレーキ圧Prbは低圧とされる。
【0021】
前記CVTコントロールユニット8は、ベルト式無段変速機CVTの変速比制御等を行う。このCVTコントロールユニット8への入力センサとして、インヒビタースイッチ11、CVT油温センサ12、アクセル開度センサ13、CVT入力回転数センサ14、車速センサ15、プライマリ圧センサ16、セカンダリ圧センサ17等を備えている。さらに、CVTコントロールユニット8へは、他の車載コントローラ18からCAN通信線19を介して、制御に必要な情報がもたらされる。また、これらのセンサ等の情報に基づき、CVTコントロールユニット8は、ライン圧ソレノイド41への電流指示値Iを制御し、この電流指示値Iの制御により作り出されるソレノイド圧Psolでライン圧スプールバルブ42を動作させて、ライン圧PL(油圧)を制御する。このCVTコントロールユニット8は、異常時制御部81を有する。前記異常時制御部81は、セカンダリ圧センサ17から入力されるセカンダリ圧Psecの低下が検知された場合、ライン圧調圧弁4を制御する。
【0022】
[異常時制御処理構成]
図2は、実施例1の異常時制御部81にて実行されるセカンダリ圧Psec低下検知時の異常時制御処理の流れを示すフローチャートである(異常時制御)。
図3は、実施例1の異常時制御部81にて走行中に実行される電流指示値Iの走行中異常時制御である。
図4は、実施例1の異常時制御部81にて停車中に実行される電流指示値Iの停車中異常時制御のタイムチャートである。以下、セカンダリ圧Psec低下検知時の異常時制御処理構成をあらわす
図2の各ステップについて説明する。なお、この制御処理は、所定の制御周期(例えば、10msec)で繰り返し実行される。また、「セカンダリ圧Psecの低下が検知されていない場合(初期)」、フラグ(F)はゼロである(F=0)。
【0023】
ステップS1では、スタートでの「F=0」、ステップS6での「F=1」の設定、ステップS7での「走行中」との判断、ステップS9での「F=2」の設定、ステップS11での「F=3」の設定、或いは、ステップS13での「F=0」の設定に続き、走行中にセカンダリ圧Psec(SEC圧)の低下が検知されたか否かを判断する。YES(走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知されたと判断された場合)はステップS2へ進み、NO(走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知されないと判断された場合)はステップS13へ進む。なお、フラグがゼロより大きければ、YESと判断される。
ここで、走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知されたか否かは、下記の2つの条件を満たす場合に、「YES」と判断される。まず1つの条件は、指示油圧から実圧を引いた値が閾値以上の場合である(指示油圧−実圧≧閾値)。「実圧」は、セカンダリ圧センサ17から入力される。「閾値」とは、許容される制御誤差等が考慮された値である。もう1つの条件は、実圧が、ベルト式無段変速機CVTが滑りを発生せずに動力伝達可能な必要圧を下回った場合である。「必要圧」は、実験等により予め求めておく。
【0024】
ステップS2では、ステップS1での「走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知された」との判断に続き、フラグが3か否かを判断する。YES(F=3)の場合はステップS12へ進み、NO(F≠3)の場合はステップS3へ進む。
【0025】
ステップS3では、ステップS2での「F≠3」であるとの判断に続き、フラグが2か否かを判断する。YES(F=2)の場合はステップS10へ進み、NO(F≠2)の場合はステップS4へ進む。
【0026】
ステップS4では、ステップS3での「F≠2」であるとの判断に続き、フラグが1か否かを判断する。YES(F=1)の場合はステップS7へ進み、NO(F≠1)の場合はステップS5へ進む。
【0027】
ステップS5では、ステップS4での「F≠1」(即ち「F=0」)であるとの判断に続き、走行中異常時制御(キックチャージ、異常時制御)を実行し、ステップS6へ進む。
ここで、「走行中異常時制御」とは、
図3に示すように、電流指示値Iを制御する。即ち、電流指示値Iを上下させる。
図3について説明すると、時刻t1がステップS5の制御を開始する時である。その時刻t1では、電流指示値Iを、元電流(現在)から定数(最小域の値)まで低下させる。次いで、時刻t2では、電流指示値Iを、定数から元電流に上昇させる(時刻t1〜t3が1周期(チャージ電流周期))。次いで、時刻t3〜t5では、同様に電流指示値Iを1周期変化させる。この電流指示値Iの変化により、電流指示値Iを元電流から定数(最小域の値)まで低下させると、ソレノイド圧Psol及びライン圧PLが元圧の値(電流指示値Iが元電流のときの値)から最大域の値まで上昇し、電流指示値Iを定数から元電流まで上昇させると、ソレノイド圧Psol及びライン圧PLが最大域の値から元圧の値まで低下する。つまり、ソレノイド圧Psol及びライン圧PLが元圧の値から最大域の値まで上昇すると、A方向へのライン圧スプールバルブ42の移動距離が最大域の値で、ライン圧スプールバルブ42を動作させる。このように、ライン圧スプールバルブ42の移動方向をA方向とB方向に切り替え、ライン圧スプールバルブ42を繰り返し強制的に動作させる。続いて、時刻t5〜t6(チャージ間隔)では、電流指示値Iを元電流とする。この間で、ライン圧PLの変化により変速ショック等の影響が出ていないか確認する。次いで、時刻t6〜t11では、時刻t1〜t6と同様に電流指示値Iを変化させる。
ここで、「定数」とは、ライン圧スプールバルブ42の移動距離等から、実験等により予め求めておく。なお、時刻t1〜t6までが1セットであり、時刻t1〜t11が例えば約10secである。
【0028】
ステップS6では、ステップS5での走行中異常時制御の実行に続き、フラグをゼロから1に設定し(F=1)、ステップS1へ進む。
【0029】
ステップS7では、ステップS4での「F=1」であるとの判断に続き、停車中(停車状態)か否かを判断する。YES(停車中)の場合にはステップS8へ進み、NO(走行中)の場合にはステップS1へ進む。
ここで、停車中か否かは、インヒビタースイッチ11から入力されるレンジ位置(Dレンジ位置やRレンジ位置やNレンジ位置やLレンジ等)や、車速センサ15から入力される車速等から判断する。
【0030】
ステップS8では、ステップS7での「停車中」との判断に続き、停車中異常時制御(クリーンチャージ、異常時制御)を実行し、ステップS9へ進む。
ここで、「停車中異常時制御」とは、
図4に示すように、電流指示値Iを制御する。即ち、電流指示値Iを上下させる。
図4について説明すると、時刻t21がステップS8の制御を開始する時である。その時刻t21では、電流指示値Iを、元電流(現在)から最大値(MAX、最大域の値、例えば1A)まで上昇させる。次いで、時刻t22では、電流指示値Iを、最大値から最小値(最小域の値、0A)まで低下させる。次いで、時刻t23では、電流指示値Iを、ゼロから元電流まで上昇させる。(時刻t21〜t23が1周期(チャージ電流周期))。次いで、時刻t23〜t25では、同様に電流指示値を、元電流から最大値まで上昇させ、最大値から最小値まで低下させ、最小値から元電流まで上昇させる。この電流指示値Iの変化により、電流指示値Iを最大値まで上昇させると、ソレノイド圧Psol及びライン圧PLが最小値(最小域の値)まで低下する。電流指示値Iを最小値まで低下させると、ソレノイド圧Psol及びライン圧PLが最大値(最大域の値)まで上昇する。つまり、ソレノイド圧Psol及びライン圧PLが最小値まで低下すると、B方向へのライン圧スプールバルブ42の移動距離が最大値(最大域の値)となる。一方、ソレノイド圧Psol及びライン圧PLが最大値まで上昇すると、A方向へのライン圧スプールバルブ42の移動距離が最大値(最大域の値)となる。言い換えると、ライン圧スプールバルブ42の移動(動作)距離が、A方向及びB方向の両方向ともに最大値(最大域の値)となるので、フルストロークでライン圧スプールバルブ42を移動させることができる。このように、ライン圧スプールバルブ42の移動方向をA方向とB方向に切り替え、ライン圧スプールバルブ42を繰り返し強制的に動作させる。続いて、時刻t25〜t26(チャージ間隔)では、電流指示値Iを元電流とする。この間で、ライン圧PLの変化により変速ショック等の影響が出ていないか確認する。次いで、時刻t26〜t31では、時刻t21〜t26と同様に電流指示値Iを変化させる。なお、時刻t21〜t26までが1セットであり、時刻t21〜t31が例えば約10secである。
【0031】
ステップS9では、ステップS8での停車中異常時制御の実行に続き、フラグを1から2に設定し(F=2)、ステップS1へ進む。
【0032】
ステップS10では、ステップS3での「F=2」であるとの判断に続き、走行中異常時制御(キックチャージ、異常時制御)を実行し、ステップS11へ進む。走行中異常時制御は、ステップS5の走行中異常時制御と同様であるので、説明を省略する。
【0033】
ステップS11では、ステップS10での走行中異常時制御の実行に続き、フラグを2から3に設定し(F=3)、ステップS1へ進む。
【0034】
ステップS12では、ステップS2での「F=3」であるとの判断に続き、走行中のセカンダリ圧Psecの低下は異常(故障)であると確定(判定)して、故障コード(DTCコード)を出力(セット)し、エンドへ進む。
ここで、「故障コードを出力する」とは、例えば、タコメータ等が表示される車両用情報表示装置に記号や識別マーク等で表示される。なお、修理されると、故障コードは出力されなくなり、フラグが3からゼロにリセットされる。
【0035】
ステップS13では、「走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知されない」との判断に続き、フラグをゼロにリセットし、ステップS1へ進む。
【0036】
次に作用を説明する。
実施例1における調圧弁の制御装置における作用を、「異常時制御処理作用」と、「異常時制御作用」と、「調圧弁の制御装置の特徴作用」に分けて説明する。
【0037】
[異常時制御処理作用]
実施例1の異常時制御処理作用を、
図2に示すフローチャートに基づき説明する。
【0038】
「走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知されない」と判断される場合は、
図2のフローチャートにおいて、ステップS1「NO」からステップS13へ進み、ステップS13でフラグがゼロにリセットされる。そして、ステップS1において「NO」と判断される場合は、ステップS1「NO」→ステップS13の流れが繰り返される。
【0039】
「F=0」(走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知されていない状態)で、「走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知された」と判断される場合は、
図2のフローチャートにおいて、ステップS1「YES」→ステップS2「NO」→ステップS3「NO」→ステップS4「NO」→ステップS5へと進む。ステップS5では、走行中異常時制御が実行される。そして、ステップS5→ステップS6へ進み、ステップS6では、フラグがゼロから1に設定され、ステップS6からステップS1へと進む。
【0040】
次いで、ステップS5の走行中異常時制御が実行されても、「走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知された」と判断される場合は、
図2のフローチャートにおいて、ステップS1「YES」→ステップS2「NO」→ステップS3「NO」→ステップS4「YES」→ステップS7へと進む。ステップS7において、「走行中」と判断される場合には、ステップS7「NO」からステップS1へ進み、ステップS1「YES」→ステップS2「NO」→ステップS3「NO」→ステップS4「YES」→ステップS7「NO」の流れが繰り返される。そして、ステップS7において、「停車中」と判断される場合、ステップS7「YES」からステップS8へ進む。ステップS8では、停車中異常時制御が実行される。そして、ステップS8→ステップS9へと進み、ステップS9では、フラグが1から2に設定され、ステップS9からステップS1へ進む。
【0041】
次いで、ステップS5の走行中異常時制御が実行されると共に、ステップS8の停車中異常時制御が実行されても、「走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知された」と判断される場合は、
図2のフローチャートにおいて、ステップS1「YES」→ステップS2「NO」→ステップS3「YES」→ステップS10へと進む。ステップS10では、ステップS5と同様の走行中異常時制御が実行される。そして、ステップS10→ステップS11へ進み、ステップS11では、フラグが2から3に設定され、ステップS11からステップS1へと進む。
【0042】
続いて、ステップS5とステップS8の異常時制御が実行されると共に、ステップS10の走行中異常時制御が実行されても、「走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知された」と判断される場合は、
図2のフローチャートにおいて、ステップS1「YES」→ステップS2「YES」→ステップS12へ進む。ステップS12では、走行中のセカンダリ圧Psecの低下は故障であると判定すると共に、故障コードを出力する。そして、ステップS12からエンドへ進む。
【0043】
ここで、ステップS5の走行中異常時制御の実行後、ステップS8の停車中異常時制御の実行後、または、ステップS10の走行中異常時制御の実行後に、ステップS1において、「走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知されない」と判断される場合には、ステップS1「NO」からステップS13へ進み、ステップS13でフラグがゼロにリセットされる。そして、ステップS1において「NO」と判断される場合は、ステップS1「NO」→ステップS13の流れが繰り返される。つまり、異常時制御の実行後に、ステップS1において「NO」と判断される場合は、コンタミによる可逆故障である異常状態から正常状態に復帰したことを意味する。
【0044】
[異常時制御作用]
図5は、比較例の異物除去制御の動作例を示す。
図6は、実施例1の異常時制御の動作例を示す。以下、先に、比較例の異物除去制御の動作例を説明し、後に実施例1の異常時制御の動作例を説明する。また、
図6のタイムチャートに基づき、異常時制御処理構成の各ステップについて説明する。
【0045】
(比較例の異物除去制御の動作例)
比較例の車両の制御装置においては、クラッチへの供給油圧を調圧弁で制御する。その車両の制御装置において、走行中または停車中に、この調圧弁により制御されるクラッチ圧(油圧)の低下を検知した場合、停車状態(停車中)にて、ソレノイドからの調圧弁への信号圧を変化させ、調圧弁内に設けられたスプールバルブを移動させる(異物除去制御)。この停車状態における異物除去制御について、以下、
図5のタイムチャートに基づき説明する。
【0046】
時刻t50のとき、車両が停車状態から走行を開始する。この時刻t50のとき及び時刻t50〜t51の間において、クラッチ圧の低下が検知されない。
【0047】
時刻t51のとき、走行中に、クラッチ圧の低下が検知される。しかしながら、比較例では、走行中には、異物除去制御が実行されない。また、時刻t51〜t53の間、走行中であるので、異物除去制御が実行されない。このため、走行中に、クラッチ圧の低下を防止することができない。
【0048】
時刻t53のとき、車両が停止され、異物除去制御が開始される。また、時刻t53〜t54の間は、異物除去制御が実行される。
【0049】
時刻t54のとき、異物除去制御が終了されると共に、車両の走行が開始される。そして、車両走行中に、クラッチ圧の低下が検知される。また、時刻t54〜t56の間は、走行中であるため、時刻t51〜t53の間と同様に、異物除去制御が実行されない。
【0050】
時刻t56のとき、車両が停止され、再び異物除去制御が開始される。また、時刻t56より後は、時刻t53〜t54の間と同様に、異物除去制御が実行される。即ち、比較例では、クラッチ圧の低下が検知されると、走行中には異物除去制御が実行されず、停車中に異物除去制御が実行される。
【0051】
このように、比較例では、異物除去制御、すなわち、スプールの移動を停車状態にて行っている。このため、スプールの動作方向は、クラッチ圧が低下する側であっても、増大する側であってもよい。これにより、調圧弁に混入したコンタミ(「コンタミネーション」の略称)を排出することが可能である。また、比較例のように停車状態で異物除去制御が実行される理由は、例えば、クラッチ圧の低下によりクラッチが解放されても、また、クラッチ圧の増大によりクラッチ面圧が過大となっても、走行への影響がないからである。
【0052】
(実施例1の異常時制御の動作例)
次に、
図6のタイムチャートに示す動作例に基づき、実施例1の異常時制御の動作例を説明する。
【0053】
時刻t60のとき、車両が停車状態から走行を開始する。例えば、この時刻t60のときに、
図2のフローチャートが開始される。この時刻t60のとき及び時刻t60〜t61の間において、
図6に示すように、走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知されない。この時刻t60のとき及び時刻t60〜t61の間は、「F=0」であり、
図2のフローチャートにおいて、ステップS1「NO」→ステップS13の繰り返しに相当する。
【0054】
時刻t61のとき、「F=0」で、「走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知された」と判断される。このため、時刻t61のとき、走行中異常時制御が開始され、時刻t61〜t62の間は、走行中異常時制御が実行される。この時刻t61のときは、
図2のフローチャートにおいて、ステップS1「YES」→ステップS2「NO」→ステップS3「NO」→ステップS4「NO」→ステップS5に相当する。また、時刻t61〜t62の間は、ステップS5に相当する。
【0055】
時刻t62のとき、走行中異常時制御が終了され、フラグがゼロから1に設定される。そして、車両が走行中に、「F=1」で、再び「走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知された」と判断される。この時刻t62のときは、
図2のフローチャートにおいて、ステップS5→ステップS6→ステップS1「YES」→ステップS2「NO」→ステップS3「NO」→ステップS4「YES」→ステップS7「NO」に相当する。また、時刻t62〜t63の間は、車両が走行中である。このため、時刻t62〜t63の間は、
図2のフローチャートにおいて、ステップS1「YES」→ステップS2「NO」→ステップS3「NO」→ステップS4「YES」→ステップS7「NO」の繰り返しに相当する。
【0056】
時刻t63のとき、車両が停止され、「走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知された」と判断されているので、停車中異常時制御が開始される。また、時刻t63〜t64の間は、停車中異常時制御が実行される。この時刻t63のときは、
図2のフローチャートにおいて、ステップS1「YES」→ステップS2「NO」→ステップS3「NO」→ステップS4「YES」→ステップS7「YES」→ステップS8に相当する。また、時刻t63〜t64の間は、ステップS8に相当する。
【0057】
時刻t64のとき、停車中異常時制御が終了されると共に、車両の走行が開始され、フラグが1から2に設定される。そして、車両走行中に、「F=2」で、再び「走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知された」と判断される。このため、時刻t64のとき、走行中異常時制御が開始され、時刻t64〜t65の間は、走行中異常時制御が実行される。この時刻t64のときは、
図2のフローチャートにおいて、ステップS8→ステップS9→ステップS1「YES」→ステップS2「NO」→ステップS3「YES」→ステップS10に相当する。また、時刻t64〜t65の間は、ステップS10に相当する。
【0058】
時刻t65のとき、走行中異常時制御が終了され、フラグが2から3に設定される。そして、車両走行中に、「F=3」で、再び「走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知された」と判断される。このため、時刻t65のとき、走行中のセカンダリ圧Psecの低下は故障であると判定されると共に、故障コードが出力される。この時刻t65のときは、
図2のフローチャートにおいて、ステップS10→ステップS11→ステップS1「YES」→ステップS2「YES」→ステップS12→エンドに相当する。なお、故障コードが出力されたことにより、
図6の動作例において、時刻t65より後は、走行中であっても、時刻t66のときに車両が停車しても、走行中/停車中異常時制御は実行されない。
【0059】
このように、実施例1の異常時制御では、比較例の異物除去制御と異なり、走行中に、異常時制御が実行される。このため、走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知された場合であっても、走行中、ソレノイド圧Psolをセカンダリ圧Psecの低下が検知された際のソレノイド圧Psolより増大させることができる。これにより、実施例1の異常時制御では、走行中に、走行中のセカンダリ圧Psecの低下を抑制することができる。また、実施例1の異常時制御では、比較例の異物除去制御と異なり、走行中に、ライン圧スプールバルブ42の移動方向を、A方向とB方向(元の位置への方向)との間で切り替え、繰り返しライン圧スプールバルブ42を移動させる。これにより、走行中に、コンタミの排出が促される。
【0060】
[調圧弁の制御装置の特徴作用]
比較例の車両の制御装置にあっては、停車状態にてスプールを移動してコンタミを排出している(
図5の時刻t53〜t54)ため、例えば、走行中に調圧弁内にコンタミが混入したことにより、クラッチ圧が低下した場合、走行中に、走行中のクラッチ圧の低下を防止することができない。また、仮に、比較例の異物除去制御を走行中に行うと、例えば、調圧弁の吐出圧が低下する側にスプールを移動させた場合、調圧弁より下流の油圧が低下してしまい、クラッチやベルト等への供給油圧が不足するといった、走行状態に影響を及ぼすことになる。このように、比較例の車両の制御装置にあっては、走行中にクラッチ圧が低下した場合、走行状態に影響を及ぼすことなく、走行中のクラッチ圧の低下を防止することができない、という課題がある。
【0061】
これに対し、実施例1では、異常時制御部81により、走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知された場合(
図2のステップS1や
図6の時刻t61等)、走行中、ライン圧ソレノイド41からライン圧スプールバルブ42へのソレノイド圧Psolを、セカンダリ圧Psecの低下が検知された際のソレノイド圧Psolより増大させる異常時制御が実行される(
図2のステップS5とステップS10、
図3の時刻t1〜t2と時刻t3〜t4、時刻t6〜t7、時刻t8〜t9、及び、
図6の時刻t61〜t62と時刻t64〜t65)構成とした(
図2〜
図3と
図6)。
即ち、走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知された場合であっても、走行中、ソレノイド圧Psolをセカンダリ圧Psecの低下が検知された際のソレノイド圧Psolより増大させるので、ライン圧スプールバルブ42がA方向へ移動する。これにより、セカンダリ圧Psecが増大するので、ライン圧調圧弁4より下流の油圧(例えば、プライマリ圧Ppri等)が低下することを抑制することができる。このため、他の部位において油圧(例えば、プライマリ圧Ppri等)が低下して走行状態に影響を及ぼすことが抑制される。
この結果、走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知された場合であっても、走行への影響代が低減されつつ、走行中、セカンダリ圧Psecの低下が抑制される。加えて、走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知された場合であっても、走行中、ソレノイド圧Psolをセカンダリ圧Psecの低下が検知された際のソレノイド圧Psolより増大させるので、ライン圧調圧弁4内に混入したコンタミを排出することが可能である。
【0062】
実施例1では、異常時制御部81により、ライン圧ソレノイド41からライン圧スプールバルブ42へのソレノイド圧Psolを、最大域の値とする(
図2のステップS5とステップS10、
図3の時刻t1〜t2と時刻t3〜t4、時刻t6〜t7、時刻t8〜t9、及び、
図6の時刻t61〜t62と時刻t64〜t65)構成とした(
図2〜
図3と
図6)。
即ち、ソレノイド圧Psolが最大域の値とされるので、ライン圧スプールバルブ42のA方向への移動距離が最大域の値となる。
従って、走行中、ライン圧調圧弁4内に混入したコンタミが確実に排出される。加えて、ライン圧スプールバルブ42へのソレノイド圧Psolを最大域の値としても、ライン圧調圧弁4より下流の油圧(例えば、プライマリ圧Ppri等)は低下することはなく、走行状態に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0063】
実施例1では、異常時制御部81により、走行中にて、ライン圧ソレノイド41からライン圧スプールバルブ42へのソレノイド圧Psolの増大と低下を繰り返す(
図3の時刻t1〜t5と時刻t6〜t10)構成とした(
図2〜
図3と
図6)。
即ち、ライン圧スプールバルブ42の移動方向が、A方向とB方向(元の位置へ戻る)との間で切り替えられ、繰り返しライン圧スプールバルブ42を移動させる。
従って、走行中に、コンタミの排出が、より促進される。
【0064】
実施例1では、異常時制御部81により、走行中における異常時制御の実行後(
図2のステップS5及び
図6の時刻t61〜t62)、ライン圧調圧弁4により制御されるセカンダリ圧Psecの低下が検知された場合(
図2のステップS1及び
図6の時刻t62)、停車状態にて、ライン圧ソレノイド41からライン圧スプールバルブ42へのソレノイド圧Psolを、セカンダリ圧Psecの低下が検知された際のソレノイド圧Psolより低下させる(
図2のステップS8、
図4の時刻t21〜t22と時刻t23〜t24、時刻t26〜t27、時刻t28〜t29、及び、
図6の時刻t63〜t64)構成とした(
図2と
図4と
図6)。
即ち、走行中には、走行状態に影響を及ぼすおそれがあったので、ソレノイド圧Psolをセカンダリ圧Psecの低下が検知された際のソレノイド圧Psolより低下させられなかった。このため、走行状態への影響が少ない停車状態にて、ソレノイド圧Psolをセカンダリ圧Psecの低下が検知された際のソレノイド圧Psolより低下させ、走行中にライン圧スプールバルブ42を移動させることができなった領域(元の位置よりもB方向の領域)へ移動させる。
従って、停車状態にて、走行中におけるライン圧スプールバルブ42のA方向への移動にて排出することができなかったコンタミを排出することが可能である。
【0065】
実施例1では、異常時制御部81により、ライン圧ソレノイド41からライン圧スプールバルブ42へのソレノイド圧Psolを、最小域の値とする(
図2のステップS8、
図4の時刻t21〜t22と時刻t23〜t24、時刻t26〜t27、時刻t28〜t29、及び、
図6の時刻t63〜t64)構成とした(
図2と
図4と
図6)。
即ち、ソレノイド圧Psolが最小域の値とされるので、ライン圧スプールバルブ42のB方向への移動距離が最大域の値となる。
従って、停車状態にて、ライン圧調圧弁4内に混入したコンタミが確実に排出される。
【0066】
実施例1では、異常時制御部81により、停車状態にて、ライン圧ソレノイド41からライン圧スプールバルブ42へのソレノイド圧Psolの増大と低下を繰り返す(
図4の時刻t21〜t25と時刻t26〜t30)構成とした(
図2と
図4と
図6)。
即ち、ライン圧スプールバルブ42の移動方向が、A方向とB方向との間で切り替えられ、繰り返しライン圧スプールバルブ42を移動させる。
従って、停車状態にて、コンタミの排出が、より促進される。
【0067】
実施例1では、異常時制御部81により、停車状態にてライン圧ソレノイド41からライン圧スプールバルブ42へのソレノイド圧Psolを低下する停車中異常時制御の実施後(
図2のステップS8及び
図6の時刻t63〜t64)、ライン圧調圧弁4により制御されるセカンダリ圧Psecの低下が検知された場合(
図2のステップS1及び
図6の時刻t65)、故障であると判定する(
図2のステップS12及び
図6の時刻t65)構成とした(
図2と
図6)。
即ち、セカンダリ圧Psecの低下の原因がライン圧調圧弁4内に混入したコンタミによるものではない、と判定される。
従って、セカンダリ圧Psecの低下は故障であると判定される。加えて、故障コードが出力されるので、故障コードが出力されない場合よりも、原因分析が容易となる。
【0068】
実施例1では、調圧弁は、ベルト式無段変速機CVTの油圧コントロールバルブユニット3に備えられるライン圧調圧弁4である。このライン圧調圧弁4は、ライン圧ソレノイド41とライン圧スプールバルブ42を有する。また、ライン圧調圧弁4によって調圧されたライン圧PLをセカンダリ圧PsecとするセカンダリプーリSecを有する。そして、異常時制御部81により、セカンダリプーリSecのセカンダリ圧Psecの低下が検知された場合、ライン圧調圧弁4を制御する構成とした(
図1)。
即ち、ライン圧調圧弁4が制御されることにより、セカンダリ圧Psecの低下が検知された場合であっても、セカンダリ圧Psecの低下が抑制される。
従って、セカンダリ圧Psecの低下の抑制に加え、ライン圧調圧弁4よりも下流の油圧低下も抑制される。
【0069】
次に、効果を説明する。
実施例1の調圧弁の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0070】
(1)ソレノイド(ライン圧ソレノイド41)とスプールバルブ(ライン圧スプールバルブ42)を有する調圧弁(ライン圧調圧弁4)と、
ソレノイド(ライン圧ソレノイド41)への電流指示値Iを制御することにより作り出される指示圧(ソレノイド圧Psol)でスプールバルブ(ライン圧スプールバルブ42)を動作させて、油圧(セカンダリ圧Psec)を制御するコントローラ(CVTコントロールユニット8)と、
を備える調圧弁の制御装置において、
コントローラ(CVTコントロールユニット8)は、走行中に油圧(セカンダリ圧Psec)の低下が検知された場合、走行中、ソレノイド(ライン圧ソレノイド41)からスプールバルブ(ライン圧スプールバルブ42)への指示圧(ソレノイド圧Psol)を、油圧(セカンダリ圧Psec)の低下が検知された際の指示圧(ソレノイド圧Psol)より増大させる異常時制御を実行する異常時制御部81を有する。
このため、走行中に油圧(セカンダリ圧Psec)の低下が検知された場合であっても、走行への影響代を低減しつつ、走行中、油圧(セカンダリ圧Psec)の低下を抑制することができる調圧弁の制御装置を提供することができる。
【0071】
(2)異常時制御部81は、ソレノイド(ライン圧ソレノイド41)からスプールバルブ(ライン圧スプールバルブ42)への指示圧(ソレノイド圧Psol)を、最大域の値とする。
このため、(1)の効果に加え、走行中、調圧弁(ライン圧調圧弁4)内に混入したコンタミを確実に排出することができる。
【0072】
(3)異常時制御部81は、走行中にて、ソレノイド(ライン圧ソレノイド41)からスプールバルブ(ライン圧スプールバルブ42)への指示圧(ソレノイド圧Psol)の増大と低下を繰り返す。
このため、(1)または(2)の効果に加え、走行中に、コンタミの排出を、より促進することができる
【0073】
(4)異常時制御部81は、走行中における異常時制御の実行後、調圧弁(ライン圧調圧弁4)により制御される油圧(セカンダリ圧Psec)の低下が検知された場合、停車状態にて、ソレノイド(ライン圧ソレノイド41)からスプールバルブ(ライン圧スプールバルブ42)への指示圧(ソレノイド圧Psol)を、油圧(セカンダリ圧Psec)の低下が検知された際の指示圧(ソレノイド圧Psol)より低下させる。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、停車状態にて、走行中におけるスプールバルブ(ライン圧スプールバルブ42)の一方向(A方向)への移動にて排出することができなかったコンタミを排出することが可能である。
【0074】
(5)異常時制御部81は、ソレノイド(ライン圧ソレノイド41)からスプールバルブ(ライン圧スプールバルブ42)への指示圧(ソレノイド圧Psol)を、最小域の値とする。
このため、(4)の効果に加え、停車状態にて、調圧弁(ライン圧調圧弁4)内に混入したコンタミを確実に排出することができる。
【0075】
(6)異常時制御部81は、停車状態にて、ソレノイド(ライン圧ソレノイド41)からスプールバルブ(ライン圧スプールバルブ42)への指示圧(ソレノイド圧Psol)の増大と低下を繰り返す。
このため、(4)または(5)の効果に加え、停車状態にて、コンタミの排出を、より促進することができる。
【0076】
(7)異常時制御部81は、停車状態にてソレノイド(ライン圧ソレノイド41)からスプールバルブ(ライン圧スプールバルブ42)への指示圧(ソレノイド圧Psol)を低下する異常時制御の実施後、調圧弁(ライン圧調圧弁4)により制御される油圧(セカンダリ圧Psec)の低下が検知された場合、故障であると判定する。
このため、(4)〜(6)の効果に加え、油圧(セカンダリ圧Psec)の低下は故障であると判定することができる。
【0077】
(8)調圧弁は、無段変速機(ベルト式無段変速機CVT)の油圧コントロールバルブユニット3に備えられるライン圧調圧弁4であり、
ライン圧調圧弁4は、ライン圧ソレノイド41とライン圧スプールバルブ42を有し、
ライン圧調圧弁4によって調圧されたライン圧PLをセカンダリ圧PsecとするセカンダリプーリSecを有し、
異常時制御部81は、セカンダリプーリSecのセカンダリ圧Psecの低下が検知された場合、ライン圧調圧弁4を制御する。
このため、(1)〜(7)の効果に加え、ライン圧調圧弁4よりも下流の油圧低下を抑制することができる。
【0078】
以上、本発明の調圧弁の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、実施例1に限られるものではなく、請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0079】
実施例1では、走行中異常時制御と停車中異常時制御において、ソレノイド圧Psolの増大と低下を繰り返す例を示した。しかし、これに限られない。例えば、
図3において、ソレノイド圧Psolの増大と低下を繰り返さず、時刻t1のとき、電流指示値Iを元電流から定数まで低下させ、時刻t1〜t10の間、電流指示値Iを定数に維持しても良い。そして、時刻t10のとき、電流指示値Iを定数から元電流へ戻す。即ち、時刻t1〜t10の間、ソレノイド圧Psolの増大を維持しても良い。
また、
図4において、ソレノイド圧Psolの増大と低下を繰り返さず、時刻t21〜t30の間、電流指示値Iを最大域の値に維持しても良い。そして、時刻t30のとき、電流指示値Iを最大値から元電流へ戻す。即ち、時刻t21〜t30の間、ソレノイド圧Psolの低下を維持しても良い。
要するに、走行中にセカンダリ圧Psecの低下が検知された場合、セカンダリ圧Psecの低下が検知された際のソレノイド圧Psolより増大させれば良い。また、ライン圧調圧弁4により制御されるセカンダリ圧Psecの低下が検知された場合、停車状態にて、ライン圧ソレノイド41からライン圧スプールバルブ42へのソレノイド圧Psolを、セカンダリ圧Psecの低下が検知された際のソレノイド圧Psolより低下させれば良い。
【0080】
実施例1では、走行中異常時制御において、電流指示値Iを元電流から定数まで低下させ、ソレノイド圧Psolを最大域の値にまで増大させる例を示した。しかし、これに限られない。例えば、電流指示値Iを元電流から最小値(0A)まで低下させ、ソレノイド圧Psolを最大値にまで増大させても良い。
【0081】
実施例1では、停車中異常時制御において、電流指示値Iを元電流から最大値まで上昇させ、ソレノイド圧Psolを最小値に低下させる例を示した。また、電流指示値Iを最大値から最小値まで低下させ、ソレノイド圧Psolを最大値に増大させる例を示した。しかし、これに限られない。例えば、電流指示値Iを元電流から最大域の値まで上昇させ、ソレノイド圧Psolを最小域の値に低下させても良い。また、電流指示値Iを最大域の値から最小域の値まで低下させ、ソレノイド圧Psolを最大域の値に増大させても良い。
【0082】
実施例1では、走行中異常時制御と停車中異常時制御において、ソレノイド圧Psolの増大と低下を2回ほど繰り返し、これを1セットとし、一度の走行中異常時制御または停車中異常時制御のそれぞれにおいて2セット実行する例を示した。しかし、これに限られない。例えば、ソレノイド圧Psolの増大と低下の繰り返しを1回または3回以上繰り返し、これを1セットとし、一度の走行中異常時制御または停車中異常時制御のそれぞれにおいて1セットまたは3セット以上実行しても良い。
【0083】
実施例1では、走行中異常時制御を、停車中異常時制御の前後で1回ずつ実行する例を示した。しかし、これに限られない。例えば、停車中異常時制御の実行後に、走行中異常時制御を実行しなくても良い。
【0084】
実施例1では、低下が検知された油圧を、セカンダリ圧Psecとする例を示した。しかし、これに限られない。例えば、低下が検知された油圧を、プライマリ圧Ppriとしても良い。この場合、異常時制御部81により、プライマリ圧Ppriを調圧しているライン圧調圧弁4及びプライマリ圧調圧弁5の両方を、異常時制御すれば良い。要するに、低下が検知された油圧を調圧している上流の調圧弁全てを、異常時制御部81により異常時制御にすれば良い。
【0085】
実施例1では、調圧弁を、ライン圧PLを調圧するライン圧調圧弁4とする例を示した。しかし、これに限られない。例えば、調圧弁を、プライマリ圧Ppriやセカンダリ圧Psecやパイロット圧Ppやクラッチ圧やブレーキ圧等を調圧する各調圧弁としても良い。
【0086】
実施例1では、セカンダリ圧Psecをライン圧PLとする片調圧方式の例を示した。しかし、これに限られず、プライマリ圧Ppriとセカンダリ圧Psecを調圧する両調圧方式としても良い。即ち、プライマリ圧調圧弁5と同様に、セカンダリ圧調圧弁を設けるようにしても良い。
【0087】
実施例1では、本発明の調圧弁の制御装置を、油圧コントロールバルブユニット3を備えるベルト式無段変速機CVTに適用する例を示した。しかし、本発明の調圧弁の制御装置は、油圧コントロールバルブユニットを備えるステップATと呼ばれる自動変速機やその他の無段変速機に対しても適用することができる。要するに、本発明の調圧弁の制御装置は、調圧弁を有する油圧機器に対して適用することができる。例えば、本発明の調圧弁の制御装置は、駆動系に設けられる4WDクラッチやLSD(Limited Slip Differential)クラッチ等に対しても適用することができる。
【0088】
実施例1では、コンタミを原因とするセカンダリ圧Psecの低下が検知されたことを前提とし、ソレノイド圧Psolに従ってコンタミが排出されることにより、セカンダリ圧Psecの実圧が増大する例を示した。しかし、本発明の異常時制御におけるスプールバルブへのソレノイド圧Psolの増大と低下は、調圧弁内のスプールバルブを移動させることが目的であって、調圧弁により調圧される油圧(例えば、ライン圧やセカンダリ圧やプライマリ圧やクラッチ圧やブレーキ圧等)の実圧を増大・低下させる必要はない。本発明の異常時制御の結果、調圧弁により調圧される油圧の実圧が増加・低下してしまうことは許容される。