(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1種ロボットと前記第2種ロボットとが協働して実行する作業が完了すると、前記第2種ロボットの駆動制御の担当が前記第1種コントロール部から前記第2種コントロール部に移行する請求項1に記載のロボットシステム。
前記第2種ロボットは、互いに直交する第1方向、第2方向および第3方向のうち前記第1方向へ自由度を持って前記対象物を前記第1方向に搬送するとともに、前記第2方向および前記第3方向へ自由度を持たず、
前記第1種ロボットは、前記対象物に作業を行うエンドエフェクターを有し、前記第2方向および前記第3方向へ自由度を持つとともに前記第1方向へ自由度を持たず、
前記第1種コントロール部は、前記第1種ロボットと前記第2種ロボットとが協働して行う作業において、前記対象物に対して前記エンドエフェクターを前記第1方向へ相対移動させる作業を前記第2種ロボットに実行させ、前記対象物に対して前記エンドエフェクターを前記第2方向および前記第3方向へ相対移動させる作業を前記第1種ロボットに実行させる請求項1または2に記載のロボットシステム。
前記第2種ロボットは、互いに直交する第1方向、第2方向および第3方向のうち前記第1方向および前記第2方向へ自由度を持って前記対象物を前記第1方向および前記第2方向へ搬送するとともに、前記第3方向へ自由度を持たず、
前記第1種ロボットは、前記対象物に作業を行うエンドエフェクターを有し、前記第3方向へ自由度を持つとともに前記第1方向および前記第2方向へ自由度を持たず、
前記第1種コントロール部は、前記第1種ロボットと前記第2種ロボットとが協働して行う作業において、前記エンドエフェクターに対して前記対象物を前記第1方向および前記第2方向へ相対移動させる作業を前記第2種ロボットに実行させ、前記対象物に対して前記エンドエフェクターを前記第3方向へ相対移動させる作業を前記第1種ロボットに実行させる請求項1または2に記載のロボットシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数のロボットが設けられた環境では、多様な内容の作業に対応するために、一のロボットに独立して作業を実行させる態様と、一のロボットと他のロボットとに協調して作業を実行させる態様とを簡便に切り換えられることが好適となる。そこで、特許文献1の技術を応用することが考えられる。つまり、これらのロボットのそれぞれに対応してコントロール部を設け、各コントロール部を通信ケーブルで接続する。そして、前者のモードでは、コントロール部が対応する一のロボットを制御することで、一のロボットに他のロボットから独立して作業を実行させる。一方、後者のモードでは、各コントロール部が通信ケーブルを介した通信に基づきそれぞれのロボットの制御タイミングを調整することで、一のロボットと他のロボットとに協調して作業を実行させる。
【0005】
しかしながら、実際のところ求められる精度や速度で、各コントロール部が相互間の通信に基づきロボットの制御タイミングを的確に調整して、一のロボットと他のロボットとの作業を協調させることは必ずしも容易ではない。したがって、特許文献1の技術を応用することは必ずしも適当ではなかった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、一のロボットが他のロボットから独立して作業を実行する態様と、一のロボットと他のロボットとが協調して作業を実行する態様とを簡便に切り換え可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るロボットシステムは、第1種ロボットと、第1種ロボットの駆動制御を担当する第1種コントロール部と、第2種ロボットと、第2種ロボットの駆動制御を担当する第2種コントロール部とを備え、第1種ロボットと第2種ロボットとが同一の対象物に協働して作業を行う場合には、第2種ロボットの駆動制御の担当が第2種コントロール部から第1種コントロール部に移行し、第1種コントロール部が第1種ロボットおよび第2種ロボットの駆動制御を担当する。
【0008】
本発明に係るロボットコントローラーは、第1種ロボットの駆動制御を担当する第1種コントロール部と、第2種ロボットの駆動制御を担当する第2種コントロール部とを備え、第1種ロボットと第2種ロボットとが同一の対象物に協働して作業を行う場合には、第2種ロボットの駆動制御の担当が第2種コントロール部から第1種コントロール部に移行し、第1種コントロール部が第1種ロボットおよび第2種ロボットの駆動制御を担当する。
【0009】
本発明に係るロボットコントロール方法は、第1種コントロール部が第1種ロボットの駆動制御を担当しつつ、第2種コントロール部が第2種ロボットの駆動制御を担当する工程と、第2種ロボットの駆動制御の担当を第2コントロール部から第1種コントロール部へ移行し、第1種コントロール部が第1種ロボットおよび第2種ロボットの駆動制御を担当することで、第1種ロボットと第2種ロボットとに同一の対象物への作業を協働して行わせる工程とを備える。
【0010】
本発明に係るロボットプログラムは、第1種コントロール部が第1種ロボットの駆動制御を担当しつつ、第2種コントロール部が第2種ロボットの駆動制御を担当する工程と、第2種ロボットの駆動制御の担当を第2コントロール部から第1種コントロール部へ移行し、第1種コントロール部が第1種ロボットおよび第2種ロボットの駆動制御を担当することで、第1種ロボットと第2種ロボットとに同一の対象物への作業を協働して行わせる工程とをコンピューターに実行させる。
【0011】
このように構成された本発明(ロボットシステム、ロボットコントローラー、ロボットコントロール方法、ロボットプログラム)では、第1種コントロール部が第1種ロボットの駆動制御を担当しつつ、第2種コントロール部が第2種ロボットの駆動制御を担当する。したがって、第1種コントロール部が第1種ロボットの駆動制御を実行することで、第1種ロボットに第2種ロボットから独立して作業を実行させることができる。あるいは、第2種コントロール部が第2種ロボットの駆動制御を実行することで、第2種ロボットに第1種ロボットから独立して作業を実行させることができる。また、第2種ロボットの駆動制御の担当を第2コントロール部から第1種コントロール部へ移行し、第1種コントロール部が第1種ロボットおよび第2種ロボットの駆動制御を担当することで、第1種ロボットと第2種ロボットとに同一の対象物への作業を協働して行わせることができる。つまり、第2種ロボットの駆動制御の担当を第2コントロール部から第1コントロール部へ切り換えることで、第1種ロボットと第2種ロボットとに協働して作業を実行させることができる。こうして、一のロボットが他のロボットから独立して作業を実行する態様と、一のロボットと他のロボットとが協調して作業を実行する態様とを簡便に切り換え可能となっている。
【0012】
また、第1種ロボットと第2種ロボットとが協働して実行する作業が完了すると、第2種ロボットの駆動制御の担当が第1種コントロール部から第2種コントロール部に移行するように、ロボットシステムを構成しても良い。これによって、第1種ロボットと第2種ロボットとが協働して実行する作業が完了すると、第2種コントロール部が第2種ロボットの制御を担当して、第2種ロボットに第1種ロボットから独立して作業を実行させることができる。
【0013】
また、第2種ロボットは、複数の第1種ロボットの間で対象物を搬送し、各第1種ロボットは、第2種ロボットが搬送してきた対象物に、第2種ロボットと協働して作業を実行し、第2種コントロール部は、異なる第1種ロボットの間で対象物を搬送する第2種ロボットの駆動制御を担当する一方、第2種ロボットが複数の第1種ロボットのうち対象物の搬送先である第1種ロボットと協働して作業を実行する場合には、搬送先である第1種ロボットの駆動制御を担当する第1種コントロール部に、第2種ロボットの駆動制御の担当が移行するように、ロボットシステムを構成しても良い。
【0014】
かかる構成では、第2種ロボットが複数の第1種ロボットの間で対象物を搬送し、各第1種ロボットは第2種ロボットが搬送してきた対象物に作業を実行する。こうして、複数の第1種ロボットを用いた流れ作業によって、対象物に効率的に作業を実行できる。また、各第1種ロボットは、第2種ロボットが搬送してきた対象物に第2種ロボットと協働して作業を実行する。このように第1種ロボットと第2種ロボットとを協働させることで、作業の実行にあたり第2種ロボットの自由度を有効活用できる。
【0015】
また、第2種ロボットは、互いに直交する第1方向、第2方向および第3方向のうち第1方向へ自由度を持って対象物を第1方向に搬送するとともに、第2方向および第3方向へ自由度を持たず、第1種ロボットは、対象物に作業を行うエンドエフェクターを有し、第2方向および第3方向へ自由度を持つとともに第1方向へ自由度を持たず、第1種コントロール部は、第1種ロボットと第2種ロボットとが協働して行う作業において、対象物に対してエンドエフェクターを第1方向へ相対移動させる作業を第2種ロボットに実行させ、対象物に対してエンドエフェクターを第2方向および第3方向へ相対移動させる作業を第1種ロボットに実行させるように、ロボットシステムを構成しても良い。
【0016】
かかる構成では、第1種ロボットのエンドエフェクターを対象物に対して相対移動させるにあたり、その搬送方向である第1方向に自由度を持つ第2種ロボットが第1方向への相対移動を分担し、第2方向および第3方向に自由度を持つ第1種ロボットが第2方向および第3方向への相対移動を分担する。こうして、第1種ロボットと第2種ロボットとで役割を分担しつつこれらに協働して作業を実行させることで、第1種ロボットおよび第2種ロボットそれぞれが持つ自由度(換言すれば軸数)を最小限に抑えることができ、構成の簡素化を図ることができる。
【0017】
また、第2種ロボットは、互いに直交する第1方向、第2方向および第3方向のうち第1方向および第2方向へ自由度を持って対象物を第1方向および第2方向へ搬送するとともに、第3方向へ自由度を持たず、第1種ロボットは、対象物に作業を行うエンドエフェクターを有し、第3方向へ自由度を持つとともに第1方向および第2方向へ自由度を持たず、第1種コントロール部は、第1種ロボットと第2種ロボットとが協働して行う作業において、エンドエフェクターに対して対象物を第1方向および第2方向へ相対移動させる作業を第2種ロボットに実行させ、対象物に対してエンドエフェクターを第3方向へ相対移動させる作業を第1種ロボットに実行させるように、ロボットシステムを構成しても良い。
【0018】
かかる構成では、第1種ロボットのエンドエフェクターを対象物に対して相対移動させるにあたり、その搬送方向である第1方向および第2方向に自由度を持つ第2種ロボットが第1方向および第2方向への相対移動を分担し、第3方向に自由度を持つ第1種ロボットが第3方向への相対移動を分担する。こうして、第1種ロボットと第2種ロボットとで役割を分担しつつこれらに協働して作業を実行させることで、第1種ロボットおよび第2種ロボットそれぞれが持つ自由度(換言すれば軸数)を最小限に抑えることができ、構成の簡素化を図ることができる。
【0019】
また、第2種ロボットは、互いに直交する第1方向、第2方向および第3方向のうち第1方向へ自由度を持って対象物を前記第1方向へ搬送し、第1種ロボットは、第1方向、第2方向および第3方向へ自由度を持ち、第1種コントロール部は、第1種ロボットと第2種ロボットとが協働して行う作業において、第1方向へ対象物を搬送させる作業を第2種ロボットに実行させ、対象物に対してエンドエフェクターを第1方向、第2方向および第3方向へ相対移動させる作業を第1種ロボットに実行させるように、ロボットシステムを構成しても良い。
【0020】
かかる構成では、第1種ロボットと第2種ロボットとが協働して行う作業において、第1方向へ対象物を搬送させる作業を第2種ロボットに実行させ、対象物に対してエンドエフェクターを第1方向、第2方向および第3方向へ相対移動させる作業を第1種ロボットに実行させる。したがって、対象物への作業中においても対象物が第1方向へ継続して搬送されるため、対象物の搬送を速やかに行って、タクトタイムの短縮化を図るのに有利となる。
【0021】
また、第3種ロボットと、第3種ロボットの駆動制御を担当する第3種コントロール部とをさらに備え、第1種ロボット、第2種ロボットおよび第3種ロボットが協働して作業を行う場合には、第3種ロボットの駆動制御の担当が第3種コントロール部から第1種コントロール部に移行し、第1種コントロール部が第1種ロボット、第2種ロボットおよび第3種ロボットの駆動制御を担当するように、ロボットシステムを構成しても良い。このように第3種ロボットをさらに備える場合には、第3種ロボットの駆動制御の担当を第3コントロール部から第1コントロール部へ切り換えることで、第1種ロボット、第2種ロボットおよび第3種ロボットに協働して作業を実行させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、一のロボットが他のロボットから独立して作業を実行する態様と、一のロボットと他のロボットとが協調して作業を実行する態様とを簡便に切り換え可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は本発明の第1実施形態に係るロボットシステムの構成を模式的に示す図であり、
図2は
図1のロボットシステムが備える電気的構成を示すブロック図である。なお、
図1および
図2では、ロボットシステム1Aで実行される互いに異なる工程S11、S12、S13が例示されている。また、
図1および以下の図面では、XY平面を水平面とし、Z方向を鉛直方向とするXYZ直交座標系を適宜示す。
【0025】
このロボットシステム1Aは、互いに同一の構成を具備する4台のYZロボット2を備える。なお、
図1および
図2では、4台のYZロボット2を区別するために、異なる符号2A〜2Dが併記されている。各YZロボット2は、エンドエフェクター21を有し、Y方向とZ方向に自由度を持つ。つまり、YZロボット2は、Y方向およびZ方向にそれぞれ対応して2軸のモーターを内蔵し、これらのモーターによってエンドエフェクター21をY方向およびZ方向それぞれに移動させることができる。なお、エンドエフェクター21の具体的な種類は種々想定される。例えば、対象物Wに対して描画を行う場合には、エンドエフェクター21は、ペンあるいは塗布用のノズルとなる。また、対象物Wに対して部品の実装を行う場合には、エンドエフェクター21は部品を吸着するノズルあるいは部品を把持する把持装置となる。
【0026】
さらに、ロボットシステム1Aは1台のXロボット3を備える。このXロボット3は、対象物Wを支持するテーブル31を有し、X方向に自由度を有する。具体的には、ロボットシステム1Aでは、X方向に平行に設けられたネジを内蔵するリニアガイド30が配置され、Xロボット3のテーブル31に取り付けられたナットがリニアガイド30のネジに螺合してボールネジを構成する。そして、Xロボット3は内蔵するモーター(例えば中空モーター)でナットを回転させることで、テーブル31を伴って一体的にX方向へ移動する。こうして、Xロボット3は対象物Wを支持するテーブル31をX方向に移動させることができる。なお、このXロボット3はリニアガイド30に対して着脱自在であり、Xロボット3は、X方向の一端からリニアガイド30に入り込んだり、X方向の他端からリニアガイド30から抜け出したりできる。なお、テーブル31をX方向へ移動させるための機構は、上述した機構に限定されるものではなく、ナットおよびネジを用いない例えばリニアモーターを使用しても良い。この場合、リニアモーターの可動子をテーブル31に、リニアモーターの固定子をリニアガイド30に、それぞれ取り付けても良い。
【0027】
4台のYZロボット2はリニアガイド30に隣接してX方向に沿って並び、Xロボット3はテーブル31をX方向へ移動させることで、4台のYZロボット2の間でX方向に対象物Wを搬送する。そして、各YZロボット2は、搬送されてきた対象物Wに作業を行う。この際、YZロボット2とXロボット3とが協働して対象物Wに対する作業を実行する。例えば、対象物Wに円形のマークを描く描画作業を実行する場合、YZロボット2はエンドエフェクター21をZ方向に下降させてXロボット3のテーブル31上の対象物Wに接触させる。続いて、YZロボット2がエンドエフェクター21をY方向に単振動させつつ、Xロボット3がエンドエフェクター21の単振動と逆位相でテーブル31をX方向へ単振動させる。これによって、対象物Wに円形のマークが描かれる。この描画作業が完了すると、YZロボット2がエンドエフェクター21をZ方向に上昇させるとともに、Xロボット3がテーブル31をX方向へ移動させて、対象物Wを別のYZロボット2にまで搬送する。そして、このYZロボット2がXロボット3と協働して新たな作業を対象物Wに実行する。
【0028】
かかるロボットシステム1Aは、各YZロボット2およびXロボット3の駆動を制御するためのロボットコントローラー8を備える。そして、ロボットシステム1Aに実行させる作業を規定したロボットプログラムPをロボットコントローラー8が実行することで、例えば上述の作業が対象物Wに実行される。なお、ロボットプログラムPは、ユーザーによって作成されて、ロボットコントローラー8に予めロードされる。
【0029】
このロボットコントローラー8はCPU(Central Processing Unit)やメモリーを搭載したコンピューターである。そして、ロボットコントローラー8は搭載されたメモリーに格納されたロボットプログラムPを実行することで、作業コントロールモジュール82および搬送コントロールモジュール83を仮想的に構築する。作業コントロールモジュール82はYZロボット2毎に生成され、4台のYZロボット2に一対一で対応して4個の作業コントロールモジュール82が生成される。そして、各作業コントロールモジュール82は対応するYZロボット2のモーターの駆動制御を担当する。また、搬送コントロールモジュール83はXロボット3のモーターの駆動制御を担当する。
【0030】
なお、
図2では、4個の作業コントロールモジュール82を区別するために、異なる符号82A〜82Dが併記されている。また、
図2は、各コントロールモジュール82、83それぞれが結線されたロボット2、3の駆動制御を担当することを示す。
【0031】
このロボットシステム1Aは、ロボットプログラムPの内容に応じて各種の動作を実行可能である。ここでは、4台のYZロボット2に対して左から順にXロボット3が対象物Wを搬送しつつ、各YZロボット2とXロボット3とが協働して対象物Wに作業を実行する例について説明する。
【0032】
ステップS11では、YZロボット2AにXロボット3が対象物Wを搬送した状態にある。この状態に際しては、作業コントロールモジュール82AがYZロボット2AとXロボット3とのドッキングを要求する。これによって、YZロボット2AとXロボット3とが仮想的にドッキングして1台のXYZロボットとして機能する。具体的には、ロボットコントローラー8は、Xロボット3の駆動制御の担当を搬送コントロールモジュール83から作業コントロールモジュール82Aに移行し、作業コントロールモジュール82AがYZロボット2Aの駆動制御とXロボット3の駆動制御とを担当する(
図2のステップS11)。そして、作業コントロールモジュール82AはロボットプログラムPに規定された規定作業を実行するためのモーションをYZロボット2AおよびXロボット3それぞれにつき演算により作成する。そして、作業コントロールモジュール82Aが、YZロボット2Aのモーションの実行とXロボット3のモーションの実行を同期させる。これによって、YZロボット2AおよびXロボット3が協働して、対象物Wに対して規定作業を実行する。
【0033】
YZロボット2AおよびXロボット3がこの規定作業を完了すると、作業コントロールモジュール82Aは、YZロボット2AからのXロボット3の離脱を要求する。これによって、Xロボット3とYZロボット2Aとが離脱して、それぞれ独立して作業可能となる。具体的には、
図2のステップS12に示すように、ロボットコントローラー8は、Xロボット3の駆動制御の担当を作業コントロールモジュール82Aから搬送コントロールモジュール83に移行し、搬送コントロールモジュール83がXロボット3の駆動制御を担当する。搬送コントロールモジュール83はロボットプログラムPに規定された搬送作業を実行するためのモーションを演算により作成する。そして、搬送コントロールモジュール83からの指令を受けて、Xロボット3はそのモーションを実行することで、対象物WをYZロボット2AからYZロボット2Bに移動させる(
図1のステップS12)。このように、搬送コントロールモジュール83は、異なるYZロボット2の間で対象物Wを搬送するXロボット3の駆動制御を担当する。
【0034】
対象物WがYZロボット2Bに移動してくると(
図1のステップS13)、作業コントロールモジュール82BがYZロボット2BとXロボット3とのドッキングを要求する。これによって、
図2のステップS13に示すように、Xロボット3とYZロボット2Bとが仮想的にドッキングして1台のXYZロボットとして機能する。そして、上述と同様の要領で、YZロボット2BとXロボット3とが協働して、対象物Wに対して規定作業を実行する。
【0035】
YZロボット2BおよびXロボット3がこの規定作業を完了すると、上述と同様の要領で、Xロボット3が対象物WをX方向に搬送し、YZロボット2CおよびYZロボット2Dのそれぞれと、対象物Wに対する規定作業を協働して実行する。これによって、ロボットシステム1Aでの対象物Wに対する全規定作業が完了する。
【0036】
以上に説明した第1実施形態では、作業コントロールモジュール82がYZロボット2の駆動制御を担当しつつ、搬送コントロールモジュール83がXロボット3の駆動制御を担当する。したがって、搬送コントロールモジュール83がXロボット3の駆動制御を実行することで、YZロボット2から独立してXロボット3に対象物Wの搬送作業を実行させることができる。また、Xロボット3の駆動制御の担当を搬送コントロールモジュール83から作業コントロールモジュール82へ移行し、作業コントロールモジュール82がYZロボット2およびXロボット3の駆動制御を担当することができる。具体的には、作業コントロールモジュール82は、YZロボット2およびXロボット3それぞれのモーションの実行を同期させ、YZロボット2とXロボット3とに同一の対象物Wへの規定作業を協働して行わせることができる。このように、Xロボット3の駆動制御の担当を搬送コントロールモジュール83から作業コントロールモジュール82へ切り換えることで、YZロボット2とXロボット3とに協働して規定作業を実行させることができる。こうして、Xロボット3がYZロボット2から独立して作業を実行する態様と、Xロボット3とYZロボット2とが協調して作業を実行する態様とを簡便に切り換え可能となっている。
【0037】
特に、通信ケーブルを介して通信上で各ロボットの同期を取るのではなく、CPUおよびメモリーにより仮想的に構築したコントロールモジュール82、83の間でXロボット3の駆動制御の担当を切り換えることで、YZロボット2およびXロボット3の各モーションを同期させている。したがって、通信上の制約を受けることなく、YZロボット2とXロボット3とを同期させて、YZロボット2とXロボット3との同期を高速かつ高精度に実行することが可能となる。その結果、ロボットプログラムPに規定される各規定作業を速やかに完了して、タクトタイム(すなわち、対象物Wに対する全規定作業の完了に要する時間)を短縮化できる。
【0038】
また、YZロボット2とXロボット3とが協働して実行する規定作業が完了すると、Xロボット3の駆動制御の担当が作業コントロールモジュール82から搬送コントロールモジュール83に移行する。これによって、YZロボット2から独立してXロボット3に搬送作業を開始させることができる。
【0039】
また、Xロボット3が複数のYZロボット2の間で対象物Wを搬送し、各YZロボット2はXロボット3が搬送してきた対象物Wに規定作業を実行する。こうして、複数のYZロボット2を用いた流れ作業によって、対象物Wに効率的に作業を実行できる。また、各YZロボット2は、Xロボット3が搬送してきた対象物WにXロボット3と協働して作業を実行する。このようにYZロボット2とXロボット3とを協働させることで、規定作業の実行にあたりXロボット3の自由度を有効活用できる。
【0040】
つまり、YZロボット2のエンドエフェクター21を対象物Wに対して相対移動させるにあたり、その搬送方向であるX方向に自由度を持つXロボット3がX方向への相対移動を分担し、Y方向およびZ方向に自由度を持つYZロボット2がY方向およびZ方向への相対移動を分担する。こうして、YZロボット2とXロボット3とで役割を分担しつつこれらに協働して規定作業を実行させることで、YZロボット2およびXロボット3それぞれが持つ自由度(換言すれば軸数)を最小限(2軸+1軸=3軸)に抑えることができ、ロボットシステム1Aの構成の簡素化が図られている。
【0041】
図3は本発明の第2実施形態に係るロボットシステムの構成を模式的に示す図であり、
図4は
図3のロボットシステムが備える電気的構成を示すブロック図である。なお、
図3および
図4では、ロボットシステム1Bで実行される互いに異なる工程S21、S22、S23が例示されている。以下では、上記実施形態との差異点について主に説明することとし、共通点については相当符号を付して適宜説明を省略する。ただし、上記実施形態と共通する構成を備えることで、同様の効果を奏することは言うまでも無い。
【0042】
このロボットシステム1Bは、互いに同一の構成を具備する4台のZロボット4を備える。なお、
図3および
図4では、4台のZロボット4を区別するために、異なる符号4A〜4Dが併記されている。各Zロボット4は、エンドエフェクター41を有し、Z方向に自由度を持つ。つまり、Zロボット4はZ方向に対応して1軸のモーターを内蔵し、このモーターによってエンドエフェクター41をZ方向に移動させることができる。
【0043】
さらに、ロボットシステム1Bは1台のXYロボット5を備える。このXYロボット5は、対象物Wを支持するテーブル51を有し、X方向およびY方向に自由度を有する。つまり、XYロボット5はX方向およびY方向にそれぞれに対応して2軸のモーターを内蔵し、これらのモーターによってテーブル51をX方向およびY方向それぞれに移動させることができる。より具体的には、XYロボット5は、Y方向に設けられたYガイド5Yと、Yガイド5Yの上でX方向に設けられたXガイド5Xと、Xガイド5Xの上に設けられたテーブル51とを有し、Yガイド5YにY軸モーターが内蔵されるとともに、Xガイド5XにX軸モーターが内蔵されている。そして、Xガイド5Xは、Y軸モーターによる駆動力を受けてYガイド5Yに沿ってY方向に移動自在であり、テーブル51は、X軸モーターによる駆動力を受けてXガイド5Xに沿ってX方向に移動自在である。こうして、Yガイド5YおよびXガイド5Xが協働して対象物Wの搬送を実行する。
【0044】
4台のZロボット4はXYロボット5のテーブル51の可動範囲内に配置され、XYロボット5はテーブル51をX方向およびY方向に移動させることで、4台のZロボット4の間で対象物Wを搬送する。そして、各Zロボット4は、搬送されてきた対象物Wに作業を行う。この際、Zロボット4とXYロボット5とが協働して対象物Wに対する作業を実行する。例えば、対象物Wに円形のマークを描く描画作業を実行する場合、Zロボット4はエンドエフェクター41をZ方向に下降させてXYロボット5のテーブル51上の対象物Wに接触させる。続いて、XYロボット5がテーブル51に円運動させる。これによって、対象物Wに円形のマークが描かれる。この描画作業が完了すると、Zロボット4はエンドエフェクター41をZ方向に上昇させ、XYロボット5は、テーブル51をX方向あるいはY方向へ移動させて、対象物Wを別のZロボット4にまで搬送する。そして、このZロボット4がXYロボット5と協働して新たな作業を対象物Wに実行する。
【0045】
また、例えば対象物Wに電子部品等の部品を実装する場合、あるいは対象物Wに塗布材料を塗布する場合、XYロボット5がテーブル51をX方向あるいはY方向へ移動させることで、対象物Wにおいて部品を実装する箇所、あるいは塗布材料を塗布する箇所をエンドエフェクター41の下方に位置させる。そして、Zロボット4はエンドエフェクター41をZ方向に下降させることで、保持している部品を実装位置に実装する、あるいは塗布材料を塗布位置に塗布する。この作業が完了するとZロボット4はエンドエフェクター41をZ方向に上昇させ、XYロボット5はテーブル51をX方向あるいはY方向に移動させて、対象物Wを別のZロボット4にまで搬送する。そして、このZロボット4がXYロボット5と協働して新たな作業を対象物Wに実行する。
【0046】
また、Zロボット4およびXYロボット5の駆動を制御するために、ロボットコントローラー8はロボットプログラムPを実行することで、作業コントロールモジュール84および搬送コントロールモジュール85を仮想的に構築する。作業コントロールモジュール84はZロボット4毎に生成され、4台のZロボット4に一対一で対応して4個の作業コントロールモジュール84が生成される。そして、各作業コントロールモジュール84はZロボット4のモーターの駆動制御を担当する。また、搬送コントロールモジュール85はXYロボット5のモーターの駆動制御を担当する。なお、
図4では、4個の作業コントロールモジュール84を区別するために、異なる符号84A〜84Dが併記されている。
【0047】
このロボットシステム1Bは、ロボットプログラムPの内容に応じて各種の動作を実行可能である。ここでは、4台のZロボット4に対して左上から順に時計回りでXYロボット5が対象物Wを搬送しつつ、各Zロボット4とXYロボット5とが協働して対象物Wに作業を実行する例について説明する。
【0048】
ステップS21では、Zロボット4AにXYロボット5が対象物Wを搬送した状態にある。この状態に際しては、作業コントロールモジュール84AがZロボット4AとXYロボット5とのドッキングを要求する。これによって、Zロボット4AとXYロボット5とが仮想的にドッキングして1台のXYZロボットとして機能する。具体的には、ロボットコントローラー8は、XYロボット5の駆動制御の担当を搬送コントロールモジュール85から作業コントロールモジュール84Aに移行し、作業コントロールモジュール84AがZロボット4Aの駆動制御とXYロボット5の駆動制御とを担当する(
図4のステップS21)。そして、作業コントロールモジュール84Aは、ロボットプログラムPに規定された規定作業を実行するためのモーションをZロボット4AおよびXYロボット5それぞれにつき演算により作成する。そして、作業コントロールモジュール84Aは、Zロボット4のモーションの実行と、XYロボット5のモーションの実行とを同期させる。これによって、Zロボット4AおよびXYロボット5が協働して、対象物Wに対して規定作業を実行する。
【0049】
Zロボット4AおよびXYロボット5がこの規定作業を完了すると、作業コントロールモジュール84Aは、Zロボット4AからのXYロボット5の離脱を要求する。これによって、Zロボット4AとXYロボット5とが離脱して、それぞれ独立して作業可能となる。具体的には、
図4のステップS22に示すように、ロボットコントローラー8は、XYロボット5の駆動制御の担当を作業コントロールモジュール84Aから搬送コントロールモジュール85に移行し、搬送コントロールモジュール85がXYロボット5の駆動制御を担当する。搬送コントロールモジュール85はロボットプログラムPに規定された搬送作業を実行するためのモーションを演算により作成する。そして、搬送コントロールモジュール85からの指令を受けて、XYロボット5はそのモーションを実行することで、対象物WをZロボット4AからZロボット4Bに移動させる(
図1のステップS22)。このように、搬送コントロールモジュール85は、異なるZロボット4の間で対象物Wを搬送するXYロボット5の駆動制御を担当する。
【0050】
対象物WがZロボット4Bに移動してくると(
図3のステップS23)、作業コントロールモジュール84BがZロボット4BとXYロボット5とのドッキングを要求する。これによって、
図4のステップS23に示すように、XYロボット5とZロボット4Bとが仮想的にドッキングして1台のXYZロボットとして機能する。そして、上述と同様の要領で、Zロボット4BとXYロボット5とが協働して、対象物Wに対して規定作業を実行する。
【0051】
Zロボット4BおよびXYロボット5がこの規定作業を完了すると、上述と同様の要領で、XYロボット5が対象物Wを搬送し、Zロボット4CおよびZロボット4Dのそれぞれと、対象物Wに対する規定作業を協働して実行する。これによって、ロボットシステム1Bでの対象物Wに対する全規定作業が完了する。
【0052】
以上に説明した第2実施形態では、XYロボット5の駆動制御の担当を搬送コントロールモジュール85から作業コントロールモジュール84へ切り換えることで、Zロボット4とXYロボット5とに協働して規定作業を実行させることができる。こうして、XYロボット5がZロボット4から独立して作業を実行する態様と、XYロボット5とZロボット4とが協調して作業を実行する態様とを簡便に切り換え可能となっている。
【0053】
また、Zロボット4とXYロボット5とが協働して実行する規定作業が完了すると、XYロボット5の駆動制御の担当が作業コントロールモジュール84から搬送コントロールモジュール85に移行する。これによって、Zロボット4から独立してXYロボット5に搬送作業を開始させることができる。
【0054】
また、XYロボット5が複数のZロボット4の間で対象物Wを搬送し、各Zロボット4はXYロボット5が搬送してきた対象物Wに規定作業を実行する。こうして、複数のZロボット4を用いた流れ作業によって、対象物Wに効率的に作業を実行できる。また、各Zロボット4は、XYロボット5が搬送してきた対象物WにXYロボット5と協働して作業を実行する。このようにZロボット4とXYロボット5とを協働させることで、規定作業の実行にあたりXYロボット5の自由度を有効活用できる。
【0055】
つまり、Zロボット4のエンドエフェクター41を対象物Wに対して相対移動させるにあたり、その搬送方向であるX方向およびY方向に自由度を持つXYロボット5がX方向およびY方向への相対移動を分担し、Z方向に自由度を持つZロボット4がZ方向への相対移動を分担する。こうして、Zロボット4とXYロボット5とで役割を分担しつつこれらに協働して規定作業を実行させることで、Zロボット4およびXYロボット5それぞれが持つ自由度(換言すれば軸数)を最小限(1軸+2軸=3軸)に抑えることができ、ロボットシステム1Bの構成の簡素化が図られている。
【0056】
図5は本発明の第3実施形態に係るロボットシステムの構成を模式的に示す図であり、
図6は
図5のロボットシステムが備える電気的構成を示すブロック図である。なお、
図5および
図6では、ロボットシステム1Cで実行される互いに異なる工程S31、S32、S33が例示されている。以下では、上記実施形態との差異点について主に説明することとし、共通点については相当符号を付して適宜説明を省略する。ただし、上記実施形態と共通する構成を備えることで、同様の効果を奏することは言うまでも無い。
【0057】
このロボットシステム1Cは、互いに同一の構成を具備する4台のスカラロボット6を備える。なお、
図5および
図6では、4台のスカラロボット6を区別するために、異なる符号6A〜6Dが併記されている。各スカラロボット6は、エンドエフェクター61を有し、X方向、Y方向およびZ方向に自由度を持つ。具体的には、スカラロボット6は、Z方向に延設された基軸62と、基軸62の上端に取り付けられた回転関節63と、回転関節63から水平方向に延設されたアーム64と、アーム64の先端に取り付けられた回転関節65と、回転関節65から水平方向に延設されたアーム66とを備え、アーム66の先端にエンドエフェクター61が取り付けられている。回転関節63、65はそれぞれZ方向に平行な回転軸を中心に回転自在であるとともに、エンドエフェクター61はZ方向に昇降自在である。そして、回転関節63を回転させるR3モーターが基軸62に内蔵され、回転関節65を回転させるR5モーターがアーム64に内蔵され、エンドエフェクター61を昇降させるZモーターがアーム66に内蔵されている。したがって、R3モーターにより回転関節63を回転させつつ、R5モーターにより回転関節65を回転させることでエンドエフェクター61をX方向およびY方向に移動させることができる。さらに、Zモーターによりエンドエフェクター61をZ方向に移動させることができる。つまり、スカラロボット6は、X方向、Y方向およびZ方向のそれぞれにエンドエフェクター61を移動させることができる。なお、エンドエフェクター61は、アーム66に内蔵されたR61モーターによる駆動力を受けて回転(自転)することも可能である。さらに、ロボットシステム1Cは、これら4台のスカラロボット6の他に、第1実施形態で説明した構成を有するXロボット3を備える。
【0058】
4台のスカラロボット6はリニアガイド30に隣接してX方向に沿って並び、Xロボット3はテーブル31をX方向へ移動させることで、4台のスカラロボット6の間でX方向に対象物Wを搬送する。そして、各スカラロボット6は、搬送されてきた対象物Wに作業を行う。この際、スカラロボット6とXロボット3とが協働して対象物Wに対する作業を実行する。例えば、対象物Wに円形のマークを描く描画作業を実行する場合は次の通りである。
【0059】
Xロボット3は、スカラロボット6Bへ向けてX方向へのテーブル31の移動を継続する。これに対して、スカラロボット6は、エンドエフェクター61をZ方向に下降させてエンドエフェクター61を対象物Wに接触させた後、テーブル31の直線運動に円運動を合成した運動をXY面内でエンドエフェクター61に実行させる。これによって、X方向に移動中の対象物Wに円形のマークが描かれる。この描画作業が完了すると、スカラロボット6はエンドエフェクター61をZ方向に上昇させる一方、Xロボット3はテーブル31のX方向への移動を継続して、対象物Wを別のスカラロボット6にまで搬送する。そして、このスカラロボット6がXロボット3と協働して新たな作業を対象物Wに実行する。この際、Xロボット3は、スカラロボット6Aと協働して作業を実行している間のテーブル31の移動速度よりも速い速度で、スカラロボット6Aからスカラロボット6Bにテーブル31を移動させる。これによって、スカラロボット6BとXロボット3とによる作業を迅速に開始することができる。
【0060】
また、各スカラロボット6およびXロボット3の駆動を制御するために、ロボットコントローラー8はロボットプログラムPを実行することで、作業コントロールモジュール86および搬送コントロールモジュール83を仮想的に構築する。作業コントロールモジュール86はスカラロボット6毎に生成され、4台のスカラロボット6に一対一で対応して4個の作業コントロールモジュール86が生成される。そして、各作業コントロールモジュール86は対応するスカラロボット6のモーターの駆動制御を担当する。また、搬送コントロールモジュール83はXロボット3のモーターの駆動制御を担当する。なお、
図6では、4個の作業コントロールモジュール86を区別するために、異なる符号86A〜86Dが併記されている。
【0061】
このロボットシステム1Cは、ロボットプログラムPの内容に応じて各種の動作を実行可能である。ここでは、4台のスカラロボット6に対して左から順にXロボット3が対象物Wを搬送しつつ、各スカラロボット6とXロボット3とが協働して対象物Wに作業を実行する例について説明する。
【0062】
ステップS31では、スカラロボット6AにXロボット3が対象物Wを搬送した状態にある。この状態に際しては、作業コントロールモジュール86Aがスカラロボット6AとXロボット3とのドッキングを要求する。これによって、スカラロボット6AとXロボット3とが仮想的にドッキングして1台のロボットとして機能する。具体的には、ロボットコントローラー8は、Xロボット3の駆動制御の担当を搬送コントロールモジュール83から作業コントロールモジュール86Aに移行し、作業コントロールモジュール86Aがスカラロボット6Aの駆動制御とXロボット3の駆動制御とを担当する(
図6のステップS31)。そして、作業コントロールモジュール86AはロボットプログラムPに規定された規定作業を実行するためのモーションをスカラロボット6AおよびXロボット3それぞれにつき演算により作成する。
【0063】
この規定作業は、テーブル31をX方向へ継続的に移動させつつ、エンドエフェクター61を動作させるものである。つまり、作業コントロールモジュール86Aは、スカラロボット6B(すなわち、搬送方向Xの下流側)へ向けてテーブル31を移動させるモーションをXロボット3について作成する。また、作業コントロールモジュール86は、静止する対象物Wに対して規定作業を実行する際のエンドエフェクター61の運動にテーブル31の直線運動を合成したモーションをスカラロボット6Aについて作成する。そして、作業コントロールモジュール86Aは、スカラロボット6Aのモーションの実行と、Xロボット3のモーションの実行とを同期させる。これによって、スカラロボット6AおよびXロボット3が協働して、対象物Wに対して規定作業を実行する。
【0064】
スカラロボット6AおよびXロボット3がこの規定作業を完了すると、作業コントロールモジュール86Aは、スカラロボット6AからのXロボット3の離脱を要求する。これによって、Xロボット3とスカラロボット6Aとが離脱して、それぞれ独立して作業可能となる。具体的には、
図6のステップS32に示すように、ロボットコントローラー8は、Xロボット3の駆動制御の担当を作業コントロールモジュール86Aから搬送コントロールモジュール83に移行し、搬送コントロールモジュール83がXロボット3の駆動制御を担当する。搬送コントロールモジュール83はロボットプログラムPに規定された搬送作業を実行するためのモーションを演算により作成する。そして、搬送コントロールモジュール83からの指令を受けて、Xロボット3はそのモーションを実行することで、対象物Wをスカラロボット6Aからスカラロボット6Bに移動させる(
図5のステップS32)。このように、搬送コントロールモジュール83は、異なるスカラロボット6の間で対象物Wを搬送するXロボット3の駆動制御を担当する。
【0065】
対象物Wがスカラロボット6Bに移動してくると(
図5のステップS33)、作業コントロールモジュール86Bがスカラロボット6BとXロボット3とのドッキングを要求する。これによって、
図6のステップS33に示すように、Xロボット3とスカラロボット6Bとが仮想的にドッキングして1台のロボットとして機能する。そして、上述と同様の要領で、スカラロボット6BとXロボット3とが協働して、対象物Wに対して規定作業を実行する。
【0066】
スカラロボット6BおよびXロボット3がこの規定作業を完了すると、上述と同様の要領で、Xロボット3が対象物WをX方向に搬送し、スカラロボット6Cおよびスカラロボット6Dのそれぞれと、対象物Wに対する規定作業を協働して実行する。これによって、ロボットシステム1Cでの対象物Wに対する全規定作業が完了する。
【0067】
以上に説明した第3実施形態では、Xロボット3の駆動制御の担当を搬送コントロールモジュール83から作業コントロールモジュール86へ切り換えることで、スカラロボット6とXロボット3とに協働して規定作業を実行させることができる。こうして、Xロボット3がスカラロボット6から独立して作業を実行する態様と、Xロボット3とスカラロボット6とが協調して作業を実行する態様とを簡便に切り換え可能となっている。
【0068】
また、スカラロボット6とXロボット3とが協働して実行する規定作業が完了すると、Xロボット3の駆動制御の担当が作業コントロールモジュール86から搬送コントロールモジュール83に移行する。これによって、スカラロボット6から独立してXロボット3に搬送作業を実行させることができる。
【0069】
また、スカラロボット6とXロボット3とが協働して行う規定作業において、X方向へ対象物Wを搬送させる作業をXロボット3に実行させ、対象物Wに対してエンドエフェクター61をX方向、Y方向およびZ方向へ相対移動させる作業をスカラロボット6に実行させる。したがって、対象物Wへの作業中においても対象物WがX方向へ継続して搬送されるため、対象物Wの搬送を速やかに行って、タクトタイムの短縮化を図るのに有利となる。
【0070】
図7は本発明の第4実施形態に係るロボットシステムの構成を模式的に示す図であり、
図8は
図7のロボットシステムが備える電気的構成を示すブロック図である。なお、
図7および
図8では、ロボットシステム1Dで実行される互いに異なる工程S41、S42、S43が例示されている。以下では、上記実施形態との差異点について主に説明することとし、共通点については相当符号を付して適宜説明を省略する。ただし、上記実施形態と共通する構成を備えることで、同様の効果を奏することは言うまでも無い。
【0071】
このロボットシステム1Dは、4台のスカラロボット6(6A〜6D)と、Xロボット3を備える。4台のスカラロボット6はリニアガイド30に隣接してX方向に沿って並び、Xロボット3はテーブル31をX方向へ移動させることで、4台のスカラロボット6の間でX方向に対象物Wを搬送する。そして、各スカラロボット6は、搬送されてきた対象物Wに作業を行う。特にこの実施形態では、2台のスカラロボット6A、6Bが対象物Wに対して協働して作業を実行した後に、2台のスカラロボット6C、6Dが対象物Wに対して協働して作業を実行する。ちなみに、ここの例では、スカラロボット6A、6Cのそれぞれが本発明の「第1種ロボット」の一例として機能し、スカラロボット6C、6Dのそれぞれが本発明の「第3種ロボット」の一例として機能する。
【0072】
つまり、作業コントロールモジュール86および搬送コントロールモジュール83を仮想的に構築する。作業コントロールモジュール86はスカラロボット6毎に生成され、4台のスカラロボット6に一対一で対応して4個の作業コントロールモジュール86(86A〜86D)が生成される。そして、各作業コントロールモジュール86は対応するスカラロボット6のモーターの駆動制御を担当する。また、搬送コントロールモジュール83はXロボット3のモーターの駆動制御を担当する。
【0073】
ステップS41では、スカラロボット6A、6BにXロボット3が対象物Wを搬送した状態にある。この状態に際しては、作業コントロールモジュール86Aがスカラロボット6Aに対するXロボット3およびスカラロボット6Bのドッキングを要求する。これによって、スカラロボット6AとXロボット3とが仮想的にドッキングするとともに、スカラロボット6Aとスカラロボット6Bとが仮想的にドッキングし、スカラロボット6A、6BおよびXロボット3が1台のロボットとして機能する。具体的には、ロボットコントローラー8は、Xロボット3の駆動制御の担当を搬送コントロールモジュール83から作業コントロールモジュール86Aに移行し、さらにスカラロボット6Bの駆動制御の担当を作業コントロールモジュール86Bから作業コントロールモジュール86Aに移行する。その結果、作業コントロールモジュール86Aがスカラロボット6A、6Bの駆動制御とXロボット3の駆動制御とを担当する(
図8のステップS41)。そして、作業コントロールモジュール86AはロボットプログラムPに規定された規定作業を実行するためのモーションをスカラロボット6A、6BおよびXロボット3それぞれにつき演算により作成する。そして、作業コントロールモジュール86Aは,スカラロボット6A、6BおよびXロボット3それぞれのモーションの実行を同期させる。これによって、スカラロボット6A、6BおよびXロボット3が協働して、対象物Wに対して規定作業を実行する。
【0074】
スカラロボット6A、6BおよびXロボット3がこの規定作業を完了すると、作業コントロールモジュール82Aは、スカラロボット6AからのXロボット3およびスカラロボット6Bの離脱を要求する。これによって、Xロボットとスカラロボット6A、6Bとが互いに離脱して、それぞれ独立して作業可能となる。具体的には、
図8のステップS42に示すように、ロボットコントローラー8は、Xロボット3の駆動制御の担当を作業コントロールモジュール86Aから搬送コントロールモジュール83に移行するとともに、スカラロボット6Bの駆動制御の担当を作業コントロールモジュール86Aから作業コントロールモジュール86Bに移行する。これによって、搬送コントロールモジュール83がXロボット3の駆動制御を担当し、作業コントロールモジュール86Bがスカラロボット6Bの駆動制御を担当する。続いて、搬送コントロールモジュール83はロボットプログラムPに規定された搬送作業を実行するためのモーションを演算により作成する。そして、搬送コントロールモジュール83からの指令を受けて、Xロボット3はそのモーションを実行することで、対象物Wをスカラロボット6A、6Bからスカラロボット6C、6Dに移動させる(
図7のステップS42)。このように、搬送コントロールモジュール83は、異なるスカラロボット6の間で対象物Wを搬送するXロボット3の駆動制御を担当する。
【0075】
対象物Wがスカラロボット6C、6Dに移動してくると(
図7のステップS43)、作業コントロールモジュール86Cがスカラロボット6Cに対するXロボット3およびスカラロボット6Dのドッキングを要求する。これによって、
図8のステップS43に示すように、スカラロボット6CとXロボット3とが仮想的にドッキングするとともに、スカラロボット6Cとスカラロボット6Dとが仮想的にドッキングし、スカラロボット6C、6DおよびXロボット3が1台のロボットとして機能する。そして、上述と同様の要領で、スカラロボット6C、6DとXロボット3とが協働して、対象物Wに対して規定作業を実行する。これによって、ロボットシステム1Dでの対象物Wに対する全規定作業が完了する。
【0076】
以上に説明した第4実施形態では、Xロボット3の駆動制御の担当を搬送コントロールモジュール83から作業コントロールモジュール86Aへ切り換えるとともに、スカラロボット6Bの駆動制御の担当を作業コントロールモジュール86Bから作業コントロールモジュール86Aに切り換えることで、スカラロボット6A、6BとXロボット3とに協働して規定作業を実行させることができる。こうして、Xロボット3がスカラロボット6A、6Bから独立して作業を実行する態様と、Xロボット3とスカラロボット6A、6Bとが協調して作業を実行する態様とを簡便に切り換え可能となっている。また、Xロボット3とスカラロボット6C、6Dについても同様の制御が実行可能である。
【0077】
また、スカラロボット6とXロボット3とが協働して実行する規定作業が完了すると、Xロボット3の駆動制御の担当が作業コントロールモジュール86から搬送コントロールモジュール83に移行する。これによって、スカラロボット6から独立してXロボット3に搬送作業を実行させることができる。
【0078】
このように上記の実施形態では、ロボットシステム1A〜1Dのそれぞれが本発明の「ロボットシステム」の一例に相当し、ロボットコントローラー8が本発明の「ロボットコントローラー」の一例に相当し、ロボットプログラムPが本発明の「ロボットプログラム」の一例に相当し、対象物Wが本発明の「対象物」の一例に相当する。また、第1実施形態では、YZロボット2が本発明の「第1種ロボット」の一例に相当し、エンドエフェクター21が本発明の「エンドエフェクター」の一例に相当し、Xロボット3が本発明の「第2種ロボット」の一例に相当し、作業コントロールモジュール82が本発明の「第1種コントロール部」の一例に相当し、搬送コントロールモジュール83が本発明の「第2種コントロール部」の一例に相当し、X方向が本発明の「第1方向」の一例に相当し、Y方向およびZ方向が本発明の「第2方向」および「第3方向」に相当する。第2実施形態では、Zロボット4が本発明の「第1種ロボット」の一例に相当し、エンドエフェクター41が本発明の「エンドエフェクター」の一例に相当し、XYロボット5が本発明の「第2種ロボット」の一例に相当し、作業コントロールモジュール84が本発明の「第1種コントロール部」の一例に相当し、搬送コントロールモジュール85が本発明の「第2種コントロール部」の一例に相当し、X方向およびY方向が本発明の「第1方向」および「第2方向」の一例に相当し、Z方向が本発明の「第3方向」の一例に相当する。第3実施形態では、スカラロボット6が本発明の「第1種ロボット」の一例に相当し、エンドエフェクター61が本発明の「エンドエフェクター」の一例に相当し、Xロボット3が本発明の「第2種ロボット」の一例に相当し、作業コントロールモジュール86が本発明の「第1種コントロール部」の一例に相当し、搬送コントロールモジュール83が本発明の「第2種コントロール部」の一例に相当し、X方向が本発明の「第1方向」の一例に相当し、Y方向およびZ方向が本発明の「第2方向」および「第3方向」の一例に相当する。また、第4実施形態では、スカラロボット6A、6Cが本発明の「第1種ロボット」の一例に相当し、Xロボット3が本発明の「第2種ロボット」の一例に相当し、スカラロボット6B、6Dが本発明の「第3種ロボット」の一例に相当し、作業コントロールモジュール86A、86Cが本発明の「第1種コントロール部」の一例に相当し、搬送コントロールモジュール83が本発明の「第2種コントロール部」の一例に相当し、作業コントロールモジュール86B、86Dが本発明の「第3種コントロール部」の一例に相当する。
【0079】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、垂直多関節型ロボットあるいはパラレルリンク機構を用いたロボットに対しても本発明を適用可能である。
【0080】
また、例えば、上記実施形態では、リニアガイド30に対して1台のXロボット3が装着されていた。しかしながら、複数台のXロボット3をリニアガイド30に装着しても良い。このように構成した場合、ロボットコントローラー8は、複数のXロボット3に一対一で対応して複数の搬送コントロールモジュール83を構築し、各搬送コントロールモジュール83が対応するXロボット3の駆動制御を担当する。また、各Xロボット3がYZロボット2やスカラロボット6と協働して規定作業を実行する場合には、上述と同様にしてこれらをドッキングする。
【0081】
ロボットプログラムPに従ってロボットをドッキングさせる態様についても適宜変更が可能である。したがって、例えばYZロボット2、Zロボット4あるいはスカラロボット6に隣接して近接センサーを設けておき、この近接センサーが対象物Wの接近を検知すると、例えばYZロボット2、Zロボット4あるいはスカラロボット6と、Xロボット3あるいはXYロボット5とをドッキングするように、ロボットプログラムPを構成しても良い。
【0082】
また、YZロボット2、Zロボット4あるいはスカラロボット6の台数は上記の例に限られず、適宜変更が可能である。
【0083】
さらに、Xロボット3やXYロボット5の具体的な構成も適宜変更が可能であり、例えばリニアモーター等によってこれらを構成しても良い。