特許第6653821号(P6653821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6653821
(24)【登録日】2020年1月31日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
   A63F 5/04 20060101AFI20200217BHJP
【FI】
   A63F5/04 620
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-113964(P2015-113964)
(22)【出願日】2015年6月4日
(65)【公開番号】特開2017-185(P2017-185A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】591142507
【氏名又は名称】株式会社北電子
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高桑 暁
【審査官】 櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5688721(JP,B1)
【文献】 特開2016−140623(JP,A)
【文献】 「やじきた道中記乙」,パチスロ必勝ガイド2014年9月号,株式会社ガイドワークス,2014年 9月 1日,p.60-63
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F5/04、7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技者にとって有利な遊技結果を得るための報知を行う特別遊技状態を制御可能な遊技機において、
前記特別遊技状態を実行する権利を付与する権利付与手段と、
前記特別遊技状態を実行する権利が付与される確率が異なる複数の遊技状態を制御可能な制御手段と、を備え、
前記複数の遊技状態には、第1遊技状態と、前記第1遊技状態よりも前記特別遊技状態を実行する権利の付与される確率が高い第2遊技状態と、が含まれ、
前記制御手段は、
予め定められた特定ゲーム数が経過するまで遊技状態を前記第1遊技状態に制御した後、前記第2遊技状態に制御可能な第1制御手段と、
前記第1遊技状態における所定条件の成立に基づいて、前記特定ゲーム数の経過を待たずに、前記第2遊技状態に制御可能な第2制御手段と、を備え、
前記権利付与手段は、
前記特定ゲーム数よりも長いゲーム数であって、予め定められた規定ゲーム数が経過した場合、前記特別遊技状態を実行する権利を付与するとともに、
前記第2制御手段による制御が行われた場合には、当該第2制御手段による制御にかかわらず、前記規定ゲーム数が経過した場合、前記特別遊技状態を実行する権利を付与する
ことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
遊技者にとって有利な遊技結果を得るための報知を行う特別遊技状態を制御可能な遊技機において、
前記特別遊技状態を実行する権利を付与する権利付与手段と、
前記特別遊技状態を実行する権利が付与される確率が異なる複数の遊技状態を制御可能な制御手段と、
前記特別遊技状態を実行する権利の付与に関する報知を所定タイミングで実行可能な報知手段と、
を備え、
記複数の遊技状態には、第1遊技状態と、前記第1遊技状態よりも前記特別遊技状態を実行する権利の付与される確率が高い第2遊技状態と、が含まれ、
前記制御手段は、
予め定められた特定ゲーム数が経過するまで遊技状態を前記第1遊技状態に制御した後、前記第2遊技状態に制御可能な第1制御手段と、
前記第1遊技状態における所定条件の成立に基づいて、前記特定ゲーム数の経過を待たずに、前記第2遊技状態に制御可能な第2制御手段と、を備え
前記報知手段は、前記所定タイミングで前記第2制御手段による制御に関する報知を実行可能である
ことを特徴とする遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技者に有利な特別遊技状態への移行のしやすさが異なる複数の遊技状態を有する遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
AT(アシスト・タイム)又はART(アシスト・リプレイタイム)などの遊技者に有利な特別遊技状態への移行のしやすさが異なる複数の遊技状態を有する遊技機として、スロットマシンがある。
例えば、特許文献1記載のスロットマシンは、遊技者に不利な通常遊技状態において、特別遊技状態に移行しやすい高確率状態と、特別遊技状態に移行しにくい低確率状態とを有している。
特別遊技状態への移行は、所定の小役等(例えば、レア小役)に当選した場合に行われる移行抽選の当選によって実行され、高確率状態と低確率状態とでは、移行抽選における当選確率が異なるものとされている。
【0003】
また、このような高確率状態と低確率状態は、例えば、0〜255ゲームの間は低確率状態、256ゲーム〜385ゲームの間は高確状態というように、通常遊技状態の継続するゲーム数に応じて区分けされている。
また、通常遊技状態はメダルが減少していく遊技状態であり、このような状態が長く続くと遊技者の負担が増大することから、通常遊技状態がある程度の継続した場合には、その後に必ず特別遊技状態に移行させる、いわゆる天井機能を設けることで、遊技者の負担を軽減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−198189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、このような従来の遊技機には、改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の遊技機は、遊技者にとって有利な遊技結果を得るための報知を行う特別遊技状態を制御可能な遊技機において、前記特別遊技状態を実行する権利を付与する権利付与手段と、前記特別遊技状態を実行する権利が付与される確率が異なる複数の遊技状態を制御可能な制御手段と、を備え、前記複数の遊技状態には、第1遊技状態と、前記第1遊技状態よりも前記特別遊技状態を実行する権利の付与される確率が高い第2遊技状態と、が含まれ、前記制御手段は、予め定められた特定ゲーム数が経過するまで遊技状態を前記第1遊技状態に制御した後、前記第2遊技状態に制御可能な第1制御手段と、前記第1遊技状態における所定条件の成立に基づいて、前記特定ゲーム数の経過を待たずに、前記第2遊技状態に制御可能な第2制御手段と、を備え、前記権利付与手段は、前記特定ゲーム数よりも長いゲーム数であって、予め定められた規定ゲーム数が経過した場合、前記特別遊技状態を実行する権利を付与するとともに、前記第2制御手段による制御が行われた場合には、当該第2制御手段による制御にかかわらず、前記規定ゲーム数が経過した場合、前記特別遊技状態を実行する権利を付与する構成としてある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】遊技機の外観を示す概略正面図である。
図2】遊技機の内部構成を示す概略斜視図である。
図3】遊技機の制御構成を示すブロック図である。
図4】遊技状態間の移行関係を示す図である。
図5】低確率状態の継続するゲーム数を短縮させる短縮処理を説明するためのタイムチャート図である。
図6】天井に至るまでの規定ゲーム数を短縮する場合(パターン1)と、規定ゲーム数を短縮しない場合(パターン2)それぞれの処理を説明するためのタイムチャート図である。
図7】表示器における表示例であって、(a)は短縮抽選当選時の表示例、(b)は次回高確率状態までのゲーム数を表示する表示例、(c)は高確率状態に突入することを報知するときの表示例、(d)はAT遊技状態に突入することを報知するときの表示例である。
図8】短縮抽選の結果に応じて低確率状態の継続するゲーム数を短縮させる遊技状態制御処理1を示すフローチャートである。
図9】短縮抽選の結果に応じて通常遊技状態の継続するゲーム数を短縮させる遊技状態制御処理2を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る遊技機の好ましい実施形態について、図1図9を参照して説明する。
【0009】
スロットマシン1は、本発明に係る遊技機の一実施形態であり、通常のスロットマシンと同様、前面に開口部を有する筐体1bと、開口部を開閉可能に覆う前扉1aとを備えている。
前扉1aは、変動表示手段の一例であるリール41a〜41cそれぞれに表された連続する3つの図柄(識別図柄)を機外から識別可能に構成されるとともに、遊技者により操作される複数の操作手段(2,2a,3,5)を備え、筐体1bは、リール41a〜41cを回転駆動させるドラムユニット4、メダルの払い出しを行うメダル払出装置7などの複数の装置、コンピュータとして動作する主制御部10、副制御部20などを備えている。
このようなスロットマシン1は、以下のようなスロットマシン遊技を実行可能に構成されている。
【0010】
ゲームの開始にあたり、掛け数の設定を行う。
掛け数の設定は、メダルをメダル投入口2から投入することにより行うことができ、投入されたメダルは、前扉1a裏面に設けられたメダルセレクタ2b(メダル検出手段)により検知され、所定数(例えば、3枚)のメダルの検知によりゲーム開始可能な状態となる。
また、ベットボタン2aなどの掛け数設定手段を操作することで、掛け数を設定することもできる。ベットボタン2aの押下操作により、内部的に記憶したクレジットメダルからデータ形式のメダルが操作に応じて投入され、所定数(例えば、3枚)のメダルの投入により、ゲーム開始可能な状態となる。
【0011】
このゲーム開始可能な状態では、スタートレバー3(開始操作手段)を操作することができる。スタートレバー3が操作されると、ゲームが開始され、複数の図柄(識別図柄)の表されたリール41a〜41cが変動を開始するとともに、再遊技、小役などの複数の役(ハズレを含む)の中から今回ゲームの抽選結果を決定する当選役抽選処理が実行される。
【0012】
変動開始後、各リール41が定速回転に達すると、各リール41a〜41cに対応して設けられ、停止操作手段の一例である停止ボタン5a〜5cが押下操作可能な状態(停止ボタン5操作の有効化)となる。それぞれの停止ボタン5が操作されると、その操作タイミングと当選役抽選処理の抽選結果とに応じた図柄の組合せで停止するように、各リール41a〜41cが停止制御される。
【0013】
各リール41a〜41cが停止すると、各リール41それぞれに表された上下方向に連続する3つの図柄の停止態様に基づいて入賞の有無が判定される。
入賞の判定は、所定の入賞ライン上に停止した図柄の組合せに基づいて判定され、例えば、上・中・下段3つのラインと斜め2つのラインの計5ラインいずれかの入賞ライン上に導出される図柄の組合せを判定し、判定の結果、図柄の組合せに応じた特典が付与される。
【0014】
例えば、小役に対応する図柄の組合せの導出により、メダル払出装置7が駆動制御され、メダルの貯留されたホッパー7aからメダル払出口7bを介して所定数のメダルが払い出される。
また、再遊技に対応する図柄の組合せの導出により、次回ゲームにおいてメダルの投入を行うことなく遊技可能な状態となる。
【0015】
このような一連の動作を1ゲームとするスロットマシン遊技は、図3に示すように、主制御部10がベットボタン2a、メダルセレクタ2b、スタートレバー3、停止ボタン5などの各入力手段からの入力に基づいて、リール41a〜41cやこれらを回転駆動させるパルスモータなどを備えるドラムユニット4、メダル払出装置7などの出力手段を制御することにより実現される。
【0016】
また、スロットマシン1では、このようなスロットマシン遊技に同期した遊技演出も行われる。例えば、AT遊技状態への移行を示す画像演出(図7(d)参照)、ファンファーレ音、及びランプ演出などがそれぞれ、液晶TVなどの表示器8、スピーカ9、及びLED等の発光手段を備えるランプ11などの出力手段を介して出力される。
このような出力手段は、副制御部20により制御される。また、副制御部20は、主制御部10から所定の遊技タイミングごとに受信する制御コマンドに基づいてこれらを制御する。
【0017】
スロットマシン1は、このような通常のスロットマシンと同様の構成に加えて、以下のような特徴的な構成を備えている。
【0018】
[遊技状態]
スロットマシン1は、図4に示すように、移行可能な複数の遊技状態を有している。
大別すると、通常遊技状態と特別遊技状態とがあり、通常遊技状態はメダル投入数に対してメダル払出数が下回る期間の継続する遊技者に不利な遊技状態となっており、特別遊技状態はメダル投入数に対してメダル払出数が上回る期間の継続する遊技者に有利な遊技状態となっている。
【0019】
本実施形態の特別遊技状態は、例えば、各停止ボタン5に対する操作順序(以下、押し順という)を報知することにより、当選役抽選処理の抽選結果に対応する図柄の組合せの導出をアシストするAT(アシスト・タイム)遊技状態となっている。
例えば、当選役抽選処理において抽選される小役や再遊技の中には、対応する図柄の組合せが停止ボタン5a〜5cに対して行う6通りの押し順それぞれに対応して導出可能な押し順指定の当選役があり、AT遊技状態では、これらの小役や再遊技に当選したときに、遊技者にとって有利な遊技結果が得られるように、それぞれに対応する押し順を表示器8などの出力手段を介して報知する。
これにより、AT遊技状態では、メダル投入数に対してメダル払出数が上回ることになり、遊技者にとって有利な遊技状態となる。一方、通常遊技状態は、押し順指定の小役や再遊技に当選したとしても対応する押し順を報知しないことから、メダル投入数に対してメダル払出数が下回る遊技者に不利な遊技状態となる。
【0020】
また、通常遊技状態は、さらに、図4に示すように複数の状態に細分化される。
例えば、通常遊技状態は、低確率状態と高確率状態に細分化される。
低確率状態と高確率状態はそれぞれ第1遊技状態と第2遊技状態の一例であって、これらの違いはAT遊技状態への移行をかけたAT遊技移行抽選における当選確率の違いである。例えば、低確率状態では、第1確率でAT遊技移行抽選に当選し、高確率状態では、第1確率よりも高い第2確率でAT遊技移行抽選に当選するようになっている。
【0021】
このようなAT遊技移行抽選は、主制御部10がスタートレバー3の操作を検出することにより実行する。
また、このAT遊技移行抽選は、当選役抽選において所定の当選役(例えば、チェリーなどのレア小役)が決定されたときに実行することもでき、この場合、低確率状態では当選役ごとの当選確率が設定された低確率抽選テーブル(第1確率)を参照して抽選が行われ、高確率状態では当選役ごとの当選確率又は平均確率が低確率抽選テーブルよりも高く設定された高確率抽選テーブル(第2確率)を参照して抽選が行われる。
【0022】
[遊技状態の移行制御]
このような複数の遊技状態間の移行は、主制御部10が権利付与手段及び制御手段の一例として動作することにより移行の制御が行われる。
例えば、通常遊技状態から特別遊技状態へは(ルートc、ルートe)、AT遊技移行抽選の当選を条件として、当選ゲーム以降のゲームから移行する。
また、通常遊技状態の継続するゲーム数が、例えば1000ゲームなどの規定(天井)ゲーム数(Y)に達すると、いわゆる天井となり、その後、通常遊技状態から特別遊技状態に移行する(図5参照)。なお、この移行の際には、所定の前兆演出や所定の準備状態(特別遊技状態がART遊技の場合のAT遊技状態からART遊技状態に至るまでの状態)を経てから特別遊技状態に移行させることができる。
また、特別遊技状態から通常遊技状態へは(ルートd、ルートf)、AT遊技状態中に実行されるゲーム数が所定ゲーム数等に達したことを条件に移行する。
【0023】
また、低確率状態と高確率状態の間の移行制御は(ルートa、ルートb)、それぞれの状態の継続するゲーム数が予め定められたゲーム数に達することによって相互に移行する。
本実施形態では、例えば、図5に示すように、通常遊技状態を低確率状態と高確率状態とにゲーム数ごとに区分した状態遷移タイムチャートを有している。
【0024】
[状態遷移タイムチャート]
状態遷移タイムチャートは、電源投入時やAT遊技状態終了時(X)から規定(天井)ゲーム数(Y)までの低確率状態及び高確率状態それぞれの組合せと、各状態の継続する予定ゲーム数とを定めたスケジュールデータであり、例えば、電源投入時やAT遊技状態終了時(X)を0ゲーム(以下、「ゲーム」を「G」と称することもある)とすると、その後の300Gを低確率状態1とし、低確率状態1が300G継続すると、その後の50Gを高確率状態1とするというように、それぞれの状態の継続するゲーム数が予め定められた予定ゲーム数に達することによって遊技状態を相互に移行させるための基準(参考)データとなっている。
そして、本実施形態では、このような状態遷移タイムチャートにおいて、主制御部10が第1制御手段として動作することにより、低確率状態の継続する特定ゲーム数(例えば、300G)が経過すると、高確率状態に移行させるようになっている。
【0025】
状態遷移タイムチャート上における低確率状態及び高確率状態それぞれの状態の継続するゲーム数は、任意の数に設定可能であり、例えば、高確率状態が、定期的(例えば、図5に示す低確率状態300Gごと)に出現するように設定することもできるし、不定期に出現するように設定することもできる。また、高確率状態の継続するゲーム数は、固定数(例えば、図5に示す50G)でもよく、任意な数に設定してもよいし、抽選により決定してよい。
また、状態遷移タイムチャートは、高確率状態から始まるように設定することもできる。
さらに、状態遷移タイムチャート上における低確率状態及び高確率状態それぞれの状態において、AT遊技移行抽選に当選したときには、AT遊技状態に移行し、その後のAT遊技状態の終了により、再び通常遊技状態に移行することになるが、このときには、状態遷移タイムチャート上のX(0ゲームに戻る)に戻ることになる。そして、戻り先となる状態遷移タイムチャートは、前回と同じ状態遷移タイムチャートでもよいし、低確率状態と高確率状態それぞれの継続するゲーム数の組合せが異なる新たな状態遷移タイムチャートでもよい。
【0026】
[低確率状態短縮制御]
このような状態遷移タイムチャート上において、スロットマシン1は、低確率状態が継続する予定の最長(特定)ゲーム数を短縮させる短縮手段(特定ゲーム数短縮手段)を備えている。
例えば、主制御部10が第2制御手段(短縮手段)として動作することにより、以下に示すように、低確率状態の継続するゲーム数を短縮させる。
【0027】
低確率状態の継続する特定ゲーム数の短縮は、例えば、主制御部10において行われる短縮抽選の当選を契機に実行することができる。
短縮抽選は、低確率状態において行われる低確率状態の継続するゲーム数の短縮をかけた抽選処理であり、例えば、スタートレバー3の操作タイミングで実行される。また、この短縮抽選は、当選役抽選において所定の当選役(例えば、チェリーなどのレア小役)が決定されたときに実行することもできる。
この短縮抽選により、短縮の有無の決定とともに、短縮ありが決定されたときには、例えば、5ゲーム、10ゲーム、30ゲーム、50ゲーム、100ゲーム、150ゲーム、200ゲーム、300ゲーム、400ゲーム、500ゲーム、1000ゲームなど短縮されるゲーム数のそれぞれ異なる複数の短縮ゲーム数の中から一のゲーム数が選択される。
また、短縮ありが決定されたときには、上記のように短縮ゲーム数を選択する場合のみならず、次回高確率状態に直接移行させる場合も選択可能とする。
【0028】
選択されたゲーム数は、その短縮抽選が行われたゲームやそれ以降のゲームにおいて以下のように反映される。
例えば、図5に示すパターンAは、A1、A2、A3においてそれぞれ短縮抽選に当選した例を示している。
【0029】
A1は、例えば80Gのときに100Gの短縮抽選に当選した例であり(第1条件の成立)、これにより、状態遷移タイムチャート上において、80Gから180Gにワープ(ジャンプ)したのと同様な効果を付与する。これにより、高確率状態1に至るまでのゲーム数は、短縮抽選を行った80Gの時点では220Gあったものの、短縮抽選の当選により180Gにワープしたことで120Gに短縮され、その結果、低確率状態1の継続する予定の特定ゲーム数300Gよりも少ないゲーム数が経過したときに高確率状態1に移行することになる。
また、このときには表示器8を報知手段として動作させ、短縮抽選が行われたゲームにおいて、例えば、図7(a)に示すように、100Gの短縮抽選に当選した旨を示すメッセージや、図7(b)に示すように、次回高確率状態に至るまでの残りゲーム数を示すメッセージを表示することができる。また、この例において、100Gの短縮抽選に当選した旨を示すメッセージを表示させるのではなく、当選したゲームでは、50Gの短縮抽選に当選した旨を示すメッセージを表示し、次のゲームでさらに50Gの短縮抽選に当選した旨を示すメッセージを表示するなど、短縮ゲーム数(100G)を小分けにして段階的に表示させることもできる。
【0030】
また、A2は、例えば500Gのときに200Gの短縮抽選に当選した例であり(第2条件の成立)、これにより状態遷移タイムチャート上において、500Gから650Gにワープ(ジャンプ)したのと同様な効果を付与する。この場合、200Gの短縮に当選したにもかかわらず、700Gではなく650Gにワープするのは高確率状態2の特典を余すことなく享受させるためである。その結果、遊技状態は、低確率状態2の継続する特定ゲーム数300Gの経過を待たずに、低確率状態2から高確率状態2に移行することになる。
また、このときには表示器8において、例えば、図7(c)に示すように、高確率状態への移行を示すメッセージを表示することができる。
なお、A2では、200Gの短縮抽選に当選した例としたが、150Gでもよく、また、ゲーム数を短縮させるのではなく、次回高確率状態への直接移行が選択(第2条件の成立)された例としてもよい。
【0031】
また、A3は、例えば850Gのときに150Gの短縮抽選に当選した例であり、これにより状態遷移タイムチャート上において、850Gから1000Gにワープ(ジャンプ)したのと同様な効果を付与する。その結果、状態遷移タイムチャート全体で見ると通常遊技状態が短縮されることになり、通常遊技状態の継続する予定の規定ゲーム数1000Gよりも少ないゲーム数が経過したときに、低確率状態3から天井状態、すなわちAT遊技状態に移行することになる。
また、このときには表示器8において、例えば、図7(d)に示すように、AT遊技状態への移行を示すメッセージを表示することができる。
【0032】
また、上記A2及びA3の例において、高確率状態2又は天井状態への移行に満たない短縮ゲーム数に当選したように見せかける演出を一旦行った後、さらに高確率状態2又は天井状態への移行確定を示す演出を行うという連続又は段階演出を行うこともできる。
例えば、A2において、200Gの短縮に当選したにもかかわらず、図7(a)に示す100Gの短縮当選メッセージを表示し、その後(当選ゲームの次ゲーム以降でもよい)、図7(c)に示す高確率状態への移行メッセージを表示する。
また、例えば、A3において、150Gの短縮に当選したにもかかわらず、図7(a)に示す100Gの短縮当選メッセージを表示し、その後、図7(d)に示すAT遊技状態への移行メッセージを表示する。
このような連続又は段階演出を行うことにより、たとえ高確率状態2又は天井状態への移行に満たない短縮ゲーム数に当選したとしても、遊技者の期待を演出の最後まで持続させることができる。
また、上記の連続又は段階演出は、AT遊技移行抽選にも適用することができ、例えば、AT遊技移行抽選に当選したにもかかわらず、図7(a)に示す100Gの短縮当選メッセージを表示し、その後、図7(d)に示すAT遊技状態への移行メッセージを表示することもできる。
【0033】
また、選択されたゲーム数の反映の仕方は、パターンAの例に限らず、パターンBに示す例でもよい。
例えば、パターンBは、B1、B2においてそれぞれ短縮抽選に当選した例を示している。
【0034】
B1は、例えば200Gのときに200Gの短縮抽選に当選した例であり、短縮ゲーム数200Gを100Gずつに分割してそれぞれを反映させる例を示している。
この例では、最初の100G分を、200Gから300Gにワープ(ジャンプ)したのと同様な効果を付与するために反映させる。その結果、遊技状態は、低確率状態1の継続する特定ゲーム数300Gの経過を待たずに、低確率状態1から高確率状態1に移行することになる。
そして、高確率状態1から低確率状態2に移行するタイミングで、残り100G分を350Gから450Gにワープ(ジャンプ)したのと同様な効果を付与するために反映させる。
これにより、短縮ゲーム数を余すことなく有効に反映させることができる。
【0035】
B2は、例えば600Gのときに400Gの短縮抽選に当選した例であり、高確率状態2を飛び越えて天井状態に移行させる例を示している。
この例では、まずは遊技者の利益を優先して、600Gから1000Gにワープ(ジャンプ)したのと同様な効果を付与する。その結果、遊技状態は、低確率状態2から天井状態、すなわちAT遊技状態に直接移行することになる。これにより、AT遊技状態への移行という遊技者の期待する最大の利益が優先されるものの、高確率状態2の利益が享受できないことになる。そこで、AT遊技状態の終了後は、本来、低確率状態1(X)に移行するところであるが、このような高確率状態の飛び越しが行われたときには、高確率状態2に移行させ、その後に低確率状態1(X)に移行させることもできる。
これにより、短縮ゲーム数を余すことなく有効に反映させることができる。
なお、飛び越した高確率状態が複数あるときには、AT遊技状態の終了後において、飛び越した高確率状態を連続的に出現させることが好ましい。
【0036】
また、B2において、400Gの短縮に当選したにもかかわらず、図7(a)に示す100G(50G未満でも可)の短縮当選メッセージを表示し、さらに図7(c)に示す高確率状態への移行メッセージを表示し、その後、図7(d)に示すAT遊技状態への移行メッセージを表示することもできる。
【0037】
このような主制御部10の第2制御手段(短縮手段)としての動作は、主制御部10が記憶・管理する状態移行Gカウンタ及び天井Gカウンタの更新に基づいて行われる。
状態移行Gカウンタは、各低確率状態における現在(現ゲーム)の位置を特定するためのカウンタであり、天井Gカウンタは、状態遷移タイムチャートにおける現在(現ゲーム)の位置を特定するためのカウンタであり、主制御部10はそれぞれのカウンタに基づいて以下のような制御を行う。
【0038】
例えば、状態遷移タイムチャートにおいて500Gのときに200Gの短縮抽選に当選したA2の例で説明すると、短縮抽選を行う前では、状態移行Gカウンタは低確率状態2の中では150Gを示し、天井Gカウンタは状態遷移タイムチャートにおいて500Gを示している。
そして、短縮抽選に当選したときには、各カウンタが200Gプラス更新され、状態移行Gカウンタは350Gとなり、天井Gカウンタは700Gとなる。
主制御部10は更新されたカウンタそれぞれを予め定められた上限値と比較する。
【0039】
具体的には、状態移行Gカウンタを低確率状態2の継続する特定ゲーム数と比較し、状態移行Gカウンタが特定ゲーム数以上であれば、高確率状態に移行させる。この比較において状態移行Gカウンタが特定ゲーム数よりも大きく余りがあるときには、この余り分を高確率状態2終了後に移行する低確率状態3を短縮させるゲーム数に反映することが好ましい。
また、天井Gカウンタを通常遊技状態の継続する規定ゲーム数と比較し、天井Gカウンタが規定ゲーム数(1000G)以上であれば、AT遊技状態に移行させる。また、高確率状態及びAT遊技状態への移行が同時に成立したときには、AT遊技状態への移行を優先させることが好ましい。
なお、短縮抽選に当選しなかった場合、いずれのカウンタも1ゲームの実行を条件にプラス1更新されることになる。
【0040】
また、主制御部10が第2制御手段(短縮手段)としての動作を行うにあたり、以下のように、天井Gカウンタの更新制御方法に違いを設けることで、ゲーム性にバリエーションを持たせることができる。
具体的には、図6に示すように、短縮抽選に当選したときに、天井Gカウンタを短縮ゲーム数分プラス更新するか、それとも短縮ゲーム数分プラス更新せずにあくまでも1ゲームの実行のみを条件にプラス1更新するかの2つのパターンのうちのいずれかのパターンを予め選択することができることとする。
【0041】
パターン1は、天井Gカウンタを短縮ゲーム数分プラス更新する例であり、この場合、天井に至るまでのゲーム数は、規定ゲーム1000Gから短縮当選1及び2それぞれにおいて決定された短縮ゲーム数k及びn分が差し引かれた数となる。その結果、規定ゲーム1000Gよりも少ないゲーム数が経過したときに天井状態となる。
これにより、低確率状態の短縮のみならず天井に至るまでのゲーム数も短縮されるので、遊技者は一の短縮当選により同時の二つの恩恵を受けることができる。
【0042】
一方、パターン2は、短縮ゲーム数分プラス更新せずにあくまでも1ゲームの実行のみを条件にプラス1更新する例であり、この場合、天井に至るまでのゲーム数は、短縮当選1及び2それぞれにおいて決定された短縮ゲーム数k及びnにかかわらず、1ゲームの実行ごとに差し引かれる数となる。その結果、パターン2では、あくまでも規定ゲーム1000Gが経過したときに天井状態となる。
これにより、AT遊技状態への移行の契機を、短縮抽選のみに偏重させるのではなく、AT移行抽選などにも分散させることができ、バランスのとれたゲーム性を創出することができる。
【0043】
また、パターン2では、短縮当選1及び2によって、天井Gカウンタは短縮ゲーム数分更新されないものの、状態移行Gカウンタは更新される。そうすると、状態遷移タイムチャート上において予め区分された遊技状態が足りなくなることがある。
例えば、パターン2において、短縮当選1による状態移行Gカウンタの短縮ゲーム数k分の更新によって、高確率状態1が短縮ゲーム数k分前倒しされる(近づく又は移行する)効果が付与されるものの、天井Gカウンタは短縮当選1によっては更新されないことから、状態遷移タイムチャート上における天井の位置は変化しない。そうすると、低確率状態3の後は天井状態となるように予め定めたものの、低確率状態3が短縮ゲーム数k分前倒しされることになるので、短縮ゲーム数k分の空白の遊技状態が出現することになる。
【0044】
そこで、この空白の遊技状態が出現する度に、新たな遊技状態を創設することにする。新たな遊技状態は、低確率状態と高確率状態とが交互に出現するように設定し、それぞれの状態の継続するゲーム数は任意又は予め定められた数とする。
これにより、例えば、短縮当選1によって低確率状態3の後に高確率状態3(図6中の(a)参照)が出現し、さらに、短縮当選2によって高確率状態3の後に低確率状態4(図6中の(b)参照)が出現するというサイクルを繰り返すことができ、天井に至るまで途切れることなく低確率状態と高確率状態とが交互に出現する状態を継続させることができる。
【0045】
以上説明したようなスロットマシン1において行われる特徴的な動作は、以下のようなフローチャートに基づいて実行される。
例えば、低確率状態の継続するゲーム数の短縮制御は、図8に示す遊技状態制御処理1に基づいて実行される。
【0046】
遊技状態制御処理1は低確率状態で行われる処理であり、この処理では、まず、短縮抽選の当否が判定される(S1)。当選が判定されたときには(S1−Yes)、状態移行Gカウンタが短縮G数分プラス更新される(S2)。
一方、短縮抽選に当選しなかったときには(S1−No)、状態移行Gカウンタがプラス1更新される(S3)。
続いて、状態移行カウンタが低確率状態の継続する特定ゲーム数以上か否かの判定を行う。
状態移行カウンタが特定ゲーム数以上のときは(S4−Yes)、高確率状態に移行させ(s5)、その後処理を終了し、特定ゲーム数以上でないとき(S4−No)、低確率状態を維持すべく、そのまま処理を終了する。
【0047】
また、天井状態への移行制御は、図9に示す遊技状態制御処理2に基づいて実行される。
遊技状態制御処理2は通常遊技状態で行われる処理であり、この処理では、まず、短縮抽選の当否が判定される(S11)。当選が判定されたときには(S11−Yes)、天井Gカウンタが短縮G数分プラス更新される(S12)。
一方、短縮抽選に当選しなかったときには(S11−No)、天井Gカウンタがプラス1更新される(S13)。
続いて、天井Gカウンタが通常遊技状態の継続する規定ゲーム数以上か否かの判定を行う。
天井Gカウンタが規定ゲーム数以上のときは(S14−Yes)、AT遊技状態に移行させ(S15)、その後処理を終了し、規定ゲーム数以上でないとき(S14−No)、通常遊技状態を維持すべく、そのまま処理を終了する。
なお、遊技状態制御処理2は、天井Gカウンタを短縮ゲーム数分プラス更新するパターン1の例を示しているが、S13以降の処理は、短縮ゲーム数分プラス更新せずにあくまでも1ゲームの実行のみを条件にプラス1更新するパターン2の例に適用できる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態のスロットマシン1は、低確率状態の継続するゲーム数を短縮させる短縮手段を備えているので、AT当選があまり期待できない低確率状態を積極的に短縮させつつ、AT当選の期待が高い高確率状態の利益を余すことなく享受することができる。また、低確率状態の継続するゲーム数の短縮に基づいて天井状態に至るまでの規定ゲーム数を短縮することもできるので、遊技者の期待をさらに高揚させることができる。
また、低確率状態の継続するゲーム数の短縮に基づいて天井状態に至るまでの規定ゲーム数を短縮させないこともできるので、遊技のバリエーションを増やすことができる。
【0049】
一方、従来のスロットマシンでは、天井状態に至るまでの規定ゲーム数を短縮するものの、短縮により、高確率状態が実行されることなく高確率状態を飛び越えてしまうことがある。そうすると、例えば、高確率状態に至る直前に短縮が実行されると、高確率状態が省略されて、かつ、天井に至るまでに多くのゲーム数が残っていることもあり、このようなときには、遊技者の遊技意欲を減退させることになる。
本実施形態のスロットマシン1によれば、従来のスロットマシンが改善すべきこのような課題の全部又は一部などを解決することができる。
【0050】
以上、本発明の遊技機の好ましい実施形態について説明したが、本発明に係る遊技機は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【0051】
例えば、本実施形態では、本発明をスロットマシンに適用したがパチンコ(例えば、玉スロ)などその他の遊技機に適用することもできる。
また、メダル、遊技球等の現物の遊技媒体を用いることなく、データ形式の擬似遊技媒体を用いてゲームを実行可能な、いわゆる封入式遊技機にも、本発明を適用することができる。
【0052】
また、リール制御などのスロットマシン遊技の制御、当選役抽選、短縮抽選、AT移行抽選などの各種抽選処理、演出の制御、遊技状態の移行制御などは、主制御部10が単独で行うこともできるし、副制御部20が単独で行うこともできる。さらに、主制御部10と副制御部20とが協働して制御することもできる。
【0053】
また、本実施形態では、図柄の変動表示手段としてモータにより駆動制御されるリールを用いたが、これに代えて又はこれに加えて、液晶表示器などの表示器にリール等の図柄が変動する画像を表示させることにより、表示器を図柄の変動表示手段として用いることもできる。
【0054】
また、遊技者に有利な特別遊技状態は、AT遊技状態に限らず、ART遊技状態、ボーナス遊技状態などの他の遊技状態であってもよい。
また、通常遊技状態において存在する遊技状態は、低確率状態、高確率状態の2つの遊技状態に限らず、3つ又はそれ以上の遊技状態があってもよい。この場合には、遊技者に有利でない遊技状態(例えば、高確率状態以外の遊技状態)を短縮させることが好ましい。
【0055】
また、当選役抽選処理における各役の当選確率やAT遊技移行抽選における当選確率について、一部又は全部の確率を、複数段階(例えば、6段階)の状態のいずれかに設定変更可能な設定変更機能を搭載する場合において、現在の設定値を短縮ゲーム数によって示唆させることもできる(例えば、66ゲーム短縮当選ならば、設定6など)。
【0056】
また、本実施形態では、状態遷移タイムチャート上において、天井を1つのみ設定したが複数設定することもでき、これにより、ゲーム数が短縮したときの飛び先が天井となる可能性が広がることから、遊技者の期待を高めることができる。
【0057】
また、本実施形態では、予め定められた状態遷移タイムチャートに基づいて低確率状態と高確率状態を交互に出現させたが、低確率状態の中に新たな高確率状態を出現させることもできる。新たな高確率状態の出現は、所定の抽選を契機とすることができ、例えば、低確率状態の当選役抽選において所定の当選役(例えば、チェリーなどのレア小役)が決定されたときに所定の抽選を実行することもできる。これにより、予め定められた低確率状態の中にもかかわらず、この当選に係るゲーム以降、所定のゲーム数等に亘って高確率状態が出現することになる。
【符号の説明】
【0058】
1 スロットマシン
3 スタートレバー
5 停止ボタン
8 表示器(報知手段)
10 主制御部(制御手段、権利付与手段、第1制御手段、第2制御手段)
20 副制御部
41 リール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9