(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平面視において、前記絶縁部は、前記第1センサ電極と前記第2センサ電極とを結ぶ線分に交差するように配置され、その長さは、前記絶縁部に沿うこれらのセンサ電極の長さ以上である、
請求項6または7に記載の電気化学センサユニット。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<1.第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態として、液状の被験試料中の所定成分の濃度を三電極法により測定する電気化学センサユニットについて、
図1〜
図4を参照しながら説明する。本実施形態では、尿中の尿酸の濃度を三電極法により測定する電気化学センサユニットを例に説明する。
【0010】
(1)電気化学センサユニットの構成例
図1は、本実施形態に係る電気化学センサユニットの分解斜視図である。
図4は、本実施形態に係る電気化学センサユニットを
図1の矢印A方向から見た側面図である。以下に説明するように、基材10とシート30は一部で接着されているが、
図1と
図4では便宜上これらを分離させて示している。また、配線11〜13は絶縁層Zに被覆されているが、
図1と
図2では便宜上これらを透視させて示している。また、
図1では、本実施形態に係る電気化学センサユニットとは別体の計測機構80の斜視図も示している。また、
図3(b)と
図4では、接着剤Bと絶縁層Zとを省略して示している。
【0011】
図1に示すように、電気化学センサユニット100(以下、センサユニット100と称する場合がある)は、基材10と、基材10の一方の主面上に設けられた第1センサ電極20と、第1センサ電極20を覆うように配置されたシート30と、を主に備えている。センサユニット100は、例えば、使い捨て可能に構成されている。
【0012】
基材10は、例えば、長手形状部(主部)と、後述の接続端子5が設けられた凸状部(挿入部)と、を有している。長手形状部の幅は、例えば、6mm以上12mm以下とし、長手形状部の長さは、例えば、95mm以上115mm以下とすることができる。凸状部の幅は、例えば、長手形状部の幅よりも2mmから4mm狭くすることができる。凸状部の長さは、例えば、5mm以上15mm以下とすることができる。長手形状部および凸状部の厚さは、それぞれ例えば、0.3mm以上2mm以下とすることができる。長手形状部の幅と凸状部の幅との相違によって生じる段差部(クランク部)は、後述するステップ1において、計測機構80にセンサユニット100を装着(挿入)する際に、その挿入長さを制限するストッパ構造4として機能する。ストッパ構造4は、長手形状部の厚さと凸状部の厚さとを異ならせることで実現してもよい。
【0013】
基材10の主面上には、その長手方向の中央付近から第1センサ電極20側の端部にわたる部位の外周縁部に、接着剤Bが連続的に隙間なく塗布されている。基材10と後述するシート30とは、接着剤Bを介して互いに接着される。
【0014】
基材10は、所定の硬さを有するリジット基板を用いることができる。基材10の材料は、絶縁性材料であれば特に限定されず、例えば、プラスチック、ガラスエポキシ樹脂、セラミック、ガラスを用いることができる。
【0015】
基材10の主面上には、基材10の一端側(第1センサ電極20が設けられている端部側とは反対側)に、接続端子5が設けられている。また、基材10の主面上には、接続端子5から基材10の他端側(第1センサ電極20が設けられている端部側)に向かって、3本の配線(導体配線)11、12、13が互いに離間して配設されている。基材10の主面上には、配線11〜13を被覆する絶縁層Zが設けられている。
【0016】
配線11〜13は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)等の金属を用いて形成することができる。配線11〜13は、例えば、基材10上に予め貼られた銅膜のうち、レジストで覆われていない不要な部分をエッチングにより除去して必要な導体パターン形成する、サブトラクティブ法を用いて形成することができる。また、サブトラクティブ法を用いて形成されたこれらの導体パターンに、例えば、金(Au)めっきや銀(Ag)めっきを施してもよい。
【0017】
図2に示すように、配線11〜13の一端部には、この順に、作用電極21、対向電極22、参照電極23が接続されている。本明細書では、これらの3電極をまとめて第1センサ電極20とも称する。
【0018】
作用電極21は、配線11〜13のうち、配線12、13に挟まれるように配設された配線11の端部に接続されている。対向電極22は、作用電極21の外側を囲うように配置されている。対向電極22の電極面積は、作用電極21に比して大きいことが好ましい。参照電極23は、作用電極21の近傍に配置されている。
【0019】
作用電極21の材料は、測定対象の特定成分の種類に応じて適宜選択することができる。作用電極21としては、例えば、銀(Ag)、Au、白金(Pt)、Cuの金属で形成された電極、カーボン電極、ホウ素(B)をドープした導電性ダイヤモンド電極のうちいずれかを用いることができる。作用電極21の表面には、電気化学反応を促す酵素または抗体を含む機能性膜が固定されていてもよい。作用電極21は、例えば、上述のサブトラクティブ法を用いて配線11と一体に形成された導体パターンに所定のめっきを施して形成することができる。また、配線11と一体に形成された導体パターンに所定の材料を貼り付けて形成することもできる。
【0020】
対向電極22は、例えば、上述のサブトラクティブ法を用いて配線12と一体に形成することができる。
【0021】
参照電極23は、例えば、銀の表面を塩化銀で覆い、これを塩化物水溶液(例えば、飽和塩化カリウム水溶液)中に浸して作製した、銀/塩化銀(Ag/AgCl)電極等を用いることができる。参照電極23は、上述のサブトラクティブ法を用いて配線13と一体に形成された導体パターンに所定の材料(例えば、AgCl)を貼り付けて形成することができる。また、例えば、配線13と一体に形成された導体パターンに金めっき等を施して参照電極23として用いることもできる。
【0022】
図1に示すように、シート30は、撥水性を有する撥水紙35を有している。撥水紙35は、基材10の長手形状部の幅とほぼ一致する幅を有する長手形状等に形成されている。基材10と撥水紙35とは、上述したように、それらの長手方向の中央付近から第1センサ電極20側の端部にわたって、接着剤Bを介して接着されている。また、基材10と撥水紙35とは、それらの長手方向の中央付近から接続端子5側の端部にわたって非接着となっている。撥水紙35は、基材10の中央付近から接続端子5側に向かって、例えば、15mmから25mmの長さ分だけ突出するように配置するのが好ましい。この場合、撥水紙35が有するこの突出部分をつまんで非接着部分をめくることで、基材10の主面の一部、例えば、接続端子5を露出させることが可能となる。撥水紙35は、プラスチック、シリコン樹脂、テフロン(登録商標)樹脂等の撥水材料で表面をコーティングした紙を用いることができる。また、撥水紙35は、紙を用いず、シート状の樹脂等そのものでもよい。
【0023】
撥水紙35には、第1センサ電極20に対応する位置に、開口部50が設けられている。開口部50は、例えば、2mm以上5mm以下の直径の円形状に形成されている。撥水紙35の表面の開口部50の近傍には、開口部50の位置を示唆する印Mが示されている。
【0024】
図3および
図4に示すように、撥水紙35の裏面には、短冊形状の吸水紙40が、開口部50を塞ぐように接着剤Cを介して貼り付けられている。吸水紙40は、その長辺が撥水紙35の長手に沿うように配置され、その長手方向の中央Eが開口部50と重なるように貼り付けられている。接着剤Cは、開口部50から最も離れた吸水紙40の長手方向端部に塗布されている。
【0025】
吸水紙40の幅(短辺の大きさ)は、開口部50の直径よりも少し広く形成されており、例えば、4mm以上6mm以下とすることができる。吸水紙40の長さ(長辺の大きさ)は、例えば、開口部50の直径の2倍以上、すなわち4mm以上とすることができる。吸水紙40の長さの上限は特に限定されないが、例えば、開口部50の直径の5倍以下、すなわち25mm以下とすることができる。撥水紙35の厚さと吸水紙40の厚さは、それぞれ例えば、0.01mm以上0.3mm以下とすることができる。
【0026】
吸水紙40の材料は、天然繊維、パルプ繊維、再生繊維、合成繊維等を用いることができる。吸水紙40は、上記の1つまたは複数の繊維からなる集合体に吸水性ポリマ粒子等を加えて形成することができる。また、吸水紙40の代わりにスポンジ、珪藻土などの多孔質材料や、不織布等の繊維材料を用いてもよい。
【0027】
以上述べたように、シート30は、撥水紙35と吸水紙40とを有している。本明細書では、センサユニット100、すなわちシート30の平面視において、開口部50から視認できる吸水紙40に相当する領域を第1吸収領域X1といい、第1吸収領域X1を囲むようにして視認できる撥水紙35に相当する領域を非吸収領域Yという(
図3(a)参照)。
【0028】
(2)電気化学センサユニットを用いた尿酸濃度の測定方法例
上述のセンサユニット100を用い、電気化学測定を行って尿酸濃度を測定する方法を説明する。
【0029】
(ステップ1)
被験者は、センサユニット100を把持し、基材10を覆っているシート30の一部をめくって接続端子5を露出させ、センサユニット100を計測機構80に装着する。計測機構80は、プラスチック等から構成された箱状の筐体(ハウジング)75を備えている。筐体75の一面には、挿入口(スロット)Sが開設されており、挿入口S内に基材10の一端部(接続端子5が設けられた部分)を挿入するだけで、計測機構80と、センサユニット100が備える第1センサ電極20と、を電気的に接続できるように構成されている。このときの挿入長(挿入深さ)は、上述のストッパ構造4によって適正な長さ(深さ)に制限される。
【0030】
計測機構80は、不図示の電圧印加部、電流測定部、電位調整部、尿酸濃度算出部、表示部、無線通信部、記憶部等を有している。計測機構80が有する上記の各部は、それぞれデータ交換可能なように互いに接続されている。
【0031】
(ステップ2)
被験者は計測機構80を把持し、被験試料である尿をシート30に付着させる。開口部50内に浸入して吸水紙40に吸収された尿は、吸水紙40を透過して第1センサ電極20の表面に到達する。第1センサ電極20の表面に到達した尿は、吸水紙40により第1センサ電極20に接触した状態で保持される。
【0032】
(ステップ3)
第1センサ電極20に尿を接触させた状態で、電圧印加部から作用電極21と対向電極22との間に電圧を印加することで、作用電極21と対向電極22で酸化還元反応を生じさせる。酸化還元反応が生じることにより、作用電極21と対向電極22との間で電流が流れる。電位調整部により参照電極23に対する作用電極21の電位を特定の範囲で掃引し、それに応じて変化する電流値(応答電流値)を、電流測定部で測定する。
【0033】
(ステップ4)
尿酸濃度算出部は、ステップ3における電流値と電位から電流−電位曲線(サイクリックボルタモグラム)を作成し、作成したサイクリックボルタモグラムからピーク電流値を取得し、取得したピーク電流値に基づいて尿酸濃度を算出する。ピーク電流値と尿酸濃度は相関するので、作成済みのピーク電流値と尿酸濃度の相対データに基づいて取得したピーク反応電流値から尿酸濃度を定量することができる。
【0034】
表示部は、尿酸濃度算出部で算出した尿酸濃度を表示する。無線通信部は、無線で接続された外部装置(コンピュータ等)に、測定した電流の値や算出した尿酸濃度等のデータを送信する。被験者は基材10を計測機構80から抜き取り、シート30とともに基材10を廃棄する。
【0035】
(3)第1実施形態の効果
本実施形態によれば、以下に述べる一つまたは複数の効果を奏する。
【0036】
センサユニット100は、第1吸収領域X1、すなわち、供給された尿を吸収し第1センサ電極20に接触させる吸水紙40を有しているので、上述のステップ2、3においてセンサユニット100を動かしたり傾けたりしても、第1センサ電極20に接触させた尿を流れ落とすことなく維持することが可能となる。これにより、測定の安定性を高めることが可能となる。
【0037】
第1センサ電極20側において、基材10とシート30とを接着剤Bにより互いに接着させているので、基材10に対するシート30の相対的なずれを抑制することが可能となる。これにより、ステップ2、3において、尿を吸収させた吸水紙40を第1センサ電極20に確実に接触させることができ、測定の安定性を高めることができる。
【0038】
第1センサ電極20側において、基材10とシート30とを互いの外周縁部で接着剤Bにより隙間なく接着させているので、ステップ2、3において、基材10とシート30との隙間からセンサユニット100内への尿の浸入を防止することが可能となる。これにより、センサユニット100内での意図しない電気化学反応を抑制できるなど、測定の信頼性を高めることが可能となる。
【0039】
平面視において、第1吸収領域X1を囲むように非吸収領域Yが構成されているので、センサユニット100内のうち第1センサ電極20に対応しない領域への尿の浸入を防止することが可能となる。これにより、センサユニット100内での意図しない電気化学反応を抑制できるなど、測定の信頼性を高めることが可能となる。
【0040】
シート30の長さを基材10の長さよりも長くし、シート30を、基材10の中央付近から接続端子5側に向かって所定の長さ分だけ突出させた場合、ステップ2、3において、計測機構80の挿入口Sや被験者の指を、シート30により覆うことができる。これにより、計測機構80内への尿の浸入を防止することができ、測定の信頼性等を高めることが可能となる。また、被験者の指への尿の付着を防止することが可能となる。
【0041】
撥水紙35の表面の開口部50の近傍には、開口部50の位置を示唆する印Mが示されているので、ステップ2において、被験者は、印Mを開口部50に尿を注入する際の目印とすることができる。
【0042】
接着剤Cが開口部50から充分離れて配置されるので、吸水紙40内に吸水された尿と接着剤Cとの接触を回避することが可能となる。これにより、測定の精度を維持することが可能となる。
【0043】
基材10は、凸状部の幅よりも広い幅、または、凸状部の厚さよりも大きい厚さを有するストッパ構造4を有しているので、接続端子5を計測機構80の挿入口Sに挿入させると、ストッパ構造4が筐体75に干渉することにより、基材10のそれ以上の挿入を制限することができる。
【0044】
<2.第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態として、液状の被験試料中の所定成分の濃度を三電極法により測定する電気化学センサユニットについて、
図5〜
図8を参照しながら説明する。本実施形態では、複数種類の特定成分の濃度を測定する一例として、尿中の尿酸の濃度に加えてクレアチニンの濃度も三電極法により測定する電気化学センサユニットの構成を説明する。なお、以下では、第1実施形態と重複する内容については詳細な説明を省略し、主に第1実施形態と異なる点について説明する。
【0045】
(1)電気化学センサユニットの構成例
図5は、本実施形態に係る電気化学センサユニットの分解斜視図である。
図8は、本実施形態に係る電気化学センサユニットを
図5の矢印F方向から見た側面図である。配線11〜13と配線31、32、33とは絶縁層Zにより被覆されているが、
図5と
図6では、便宜上これらを透視させて示している。また、
図7(b)、
図8および
図10、
図11では、接着剤Bと絶縁層Zとを省略して示している。
【0046】
図5、
図6等に示すように、基材10の主面上には、第1センサ電極20に加えて、第2センサ電極25が新たに配置されている。第2センサ電極25は、第1センサ電極20と同様に、3つの電極、すなわち、作用電極41、対向電極42、および参照電極43を有している。これらは、一例として、電極21〜23と略同様に構成することができる。各電極41〜43の材料は、測定対象の特定成分の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、電極21〜23と同様の材料、或いは、異なる材料を用いることができる。
【0047】
電極41〜43には、第1センサ電極20と同様に、3つの配線、すなわち、配線31〜33がこの順に設けられている。配線31〜33の端部(電極41〜43とは反対側の端部)には、接続端子6が設けられている。配線31〜33や接続端子6は、それぞれ、配線11〜13や接続端子5と同様に構成することができる。
【0048】
シート30すなわち撥水紙35には、開口部50に加えて、第2開口部60が、第2センサ電極25に対応する位置に新たに開設されている。第2開口部60は、開口部50と重複しない程度に近接した距離をあけて形成されている。開口部50の外周部と第2開口部60の外周部との間の距離、すなわち、2つの開口部50,60の間に存在してこれらを互いに分離する撥水紙35の幅は、例えば、1mm以上4mm以下とすることができる。第2開口部60の大きさや形状は、測定対象の特定成分の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、開口部50と略同様に構成することができる。
【0049】
撥水紙35の裏面には、吸水紙40に加えて、第2吸水紙45が、第2開口部60を塞ぐように接着剤Cを介して貼り付けられている。第2吸水紙45の形状、材質、大きさ、厚さのそれぞれは、測定対象の特定成分の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、吸水紙40と略同様に構成することができる。この場合、第2吸水紙45においても、吸水紙40と同様に、接着剤Cは、第2開口部60から最も離れた第2吸水紙45の長手方向端部に塗布されている。第2吸水紙45は、吸水紙40と接触しない程度の距離をあけて配置されている。吸水紙40、第2吸水紙45がそれぞれ吸収可能な尿の容量は、対応する開口部50、第2開口部60のそれぞれの容積よりも大きくなるように構成するのが好ましい。
【0050】
以上述べたように、シート30は、撥水紙35と吸水紙40、45とを有している。本明細書では、センサユニット100、すなわちシート30の平面視において、開口部50から視認できる吸水紙40に相当する領域を第1吸収領域X1といい、第2開口部60から視認できる第2吸水紙45に相当する領域を第2吸収領域X2といい、第1吸収領域X1と第2吸収領域X2とを囲むようにして視認できる撥水紙35に相当する領域を非吸収領域Yという(
図7参照)。
【0051】
さらに、基材10の主面上であって、第1センサ電極20と第2センサ電極25との間には、長手形状の絶縁部70が新たに配置されている。平面視において、絶縁部70は、その長手方向の中央部分が、第1センサ電極20と第2センサ電極25とを結ぶ一点鎖線で示す線分Dに交差するように配置されている(
図6参照)。絶縁部70の長さLは、特に限定されないが、絶縁部70に沿うこれらのセンサ電極20、25の長さL1、L2以上とすることが好ましい。絶縁部70の長さLは、例えば、センサ電極20、25の長さL1とL2の1.5倍以上5倍以下とすることができる(
図5参照)。また、絶縁部70は、その長手方向の両端部がそれぞれ、センサ電極20、25の両端部の外側にはみ出るように配置されていることが好ましい。基材10の主面からの絶縁部70の上端までの高さHは、特に限定されないが、基材10の主面から第1センサ電極20の上端までの高さH1以上とし、また、第2センサ電極25の上端までの高さH2以上とすることが望ましい(
図8参照)。なお、絶縁部70には、その上部に互いに向かい合う第1傾斜面と第2傾斜面とを設け、これらの傾斜面の交差部を頂点とする山型形状を形成するようにしてもよい。絶縁部70は、撥水性および絶縁性を有する材料、例えば、ポリイミド、エポキシ、レジスト樹脂を用いて形成することができる。
【0052】
(2)電気化学センサユニットを用いた尿酸濃度とクレアチニン濃度の測定方法例
上述のセンサユニット100を用い、電気化学測定を行って尿中の尿酸濃度とクレアチニン濃度とをそれぞれ測定する方法を説明する。なお、以下では、第1実施形態と重複する内容については詳細な説明を省略し、主に第1実施形態と異なる点について説明する。
【0053】
(ステップ1)
第1実施形態のステップ1と同様に、被験者は、センサユニット100を把持し、基材10を覆っているシート30の一部をめくって接続端子5,6のそれぞれを露出させ、筐体に75に開設された挿入口S内に基材10の一端部(接続端子5,6が設けられた部分)を挿入する。これにより、計測機構80と、センサユニット100が備える第1センサ電極20および第2センサ電極25のそれぞれとを、電気的に接続することができる。
【0054】
(ステップ2)
第1実施形態のステップ2と同様に、被験試料である尿をシート30に付着させる。開口部50内に浸入して吸水紙40に吸収された尿は、吸水紙40を透過して第1センサ電極20の表面に到達する。第1センサ電極20の表面に到達した尿は、吸水紙40により第1センサ電極20に接触した状態を保持している。また、第2開口部60に注入され第2吸水紙45に吸収された尿は、第2吸水紙45を透過して第2センサ電極25の表面に到達する。第2センサ電極25の表面に到達した尿は、第2吸水紙45により第2センサ電極25に接触した状態を保持している。
【0055】
(ステップ3)
第1センサ電極20および第2センサ電極25のそれぞれに尿を接触させた状態で、電圧印加部から、作用電極21と対向電極22との間、および、作用電極41と対向電極42との間のそれぞれに所定の電圧を印加することで、作用電極21と対向電極22で酸化還元反応を生じさせるとともに、作用電極41と対向電極42で酸化還元反応を生じさせる。これらで酸化還元反応が生じることにより、作用電極21と対向電極22との間、および、作用電極41と対向電極42との間のそれぞれで電流が流れる。このとき、電位調整部により、参照電極23に対する作用電極21の電位、および、参照電極43に対する作用電極41の電位のそれぞれを特定の範囲で掃引し、それらに応じて変化する電流値(応答電流値)を電流測定部でそれぞれ測定する。
【0056】
なお、2つのセンサ電極20,25に対する掃引操作は、順番に進行させてもよいが、同時に進行させてもよい。これは、第1センサ電極20に接触させている尿成分と、第2センサ電極25に接触させている尿成分とが、センサユニット100の各部が備える上述の構成によって、混ざり合うことなく互いに分離するためである。尿成分が分離できていれば、2つのセンサ電極20,25に対して同時に掃引操作を行っても、互いの測定結果には電気的な悪影響が及ばない。すなわち、後述する測定精度は、掃引操作を同時進行させた際においても低下しなくなる。
【0057】
(ステップ4)
尿酸濃度算出部およびクレアチニン濃度算出部は、それぞれ、ステップ3における電流値と電位から電流−電位曲線(サイクリックボルタモグラム)を作成し、作成したサイクリックボルタモグラムからピーク電流値を取得し、取得したピーク電流値に基づいて尿酸濃度やクレアチニン濃度を算出する。ピーク電流値と各種物質の濃度とは相関するので、作成済みのピーク電流値と各種物質の濃度の相対データに基づいて取得したピーク反応電流値から尿酸濃度やクレアチニン濃度を定量することができる。
【0058】
表示部は、尿酸濃度算出部で算出した尿酸濃度、および、クレアチニン濃度算出部で算出したクレアチニン濃度をそれぞれ表示する。無線通信部は、無線で接続された外部装置(コンピュータ等)に、測定した電流の値や算出した各種物質の濃度等のデータを送信する。その後、第1実施形態と同様に、被験者は基材10を計測機構80から抜き取り、シート30とともに基材10を廃棄する。
【0059】
(3)第2実施形態の効果
本実施形態によれば、以下に述べる一つまたは複数の効果を奏する。
【0060】
センサユニット100は2つのセンサ電極20、25を有しているので、尿酸とクレアチニンのような異なる2つの特定成分の濃度を1つのセンサユニット100を用いて測定することができる。
【0061】
開口部50と第2開口部60とは、近接して設けられているので、尿をシート30に1回付着させれば、開口部50と第2開口部60との両方に尿を注入させることができる。
【0062】
吸水紙40と第2吸水紙45とは離間して配置されているので、吸水紙40と第2吸水紙45に吸収された尿とを分離し、電気的な干渉を抑制することが可能となる。これにより、掃引操作を同時に実行することもでき、トータルでの測定時間を短くすることができる。
【0063】
第1センサ電極20と第2センサ電極25との間に絶縁部70が設けられているので、基材10側において、第1センサ電極20に接触させた尿と第2センサ電極25に接触させた尿との分離をより確実にすることが可能となり、測定の信頼性をより高めることが可能となる。
【0064】
絶縁部70の長さLは、第1センサ電極20の長さL1、第2センサ電極25の長さL2よりも短くても充分だが、L1とL2よりも長いとより好ましく、この場合は、上述の尿の分離をより確実にすることが可能となり、測定の信頼性をより高めることが可能となる。
【0065】
基材10の主面からの絶縁部70の上端までの高さHは、基材10の主面から第1センサ電極20の上端までの高さH1と第2センサ電極25の上端までの高さH2よりも低くても充分だが、H1とH2以上であればより好ましく、この場合には、上述の尿の分離をより確実にすることが可能となり、測定の信頼性をより高めることが可能となる。
【0066】
絶縁部70の上部を第1傾斜面と第2傾斜面の交差部を頂点とする山型形状とした場合には、上述の尿の分離をより確実にすることが可能となり、測定の信頼性をより高めることが可能となる。
【0067】
吸水紙40と第2吸水紙45との少なくともいずれかを、吸水性ポリマ粒子を加えて形成し、逆流防止機能を付加した場合には、上述の尿の分離をより確実にすることが可能となり、測定の信頼性をより高めることが可能となる。
【0068】
吸水紙40、第2吸水紙45の吸収可能な尿の容量を、対応する開口部50、第2開口部60の容積より大きくした場合には、吸水紙40、45から開口部50、60側への尿の逆流を抑制でき、上述の尿の分離をより確実にすることが可能となり、測定の信頼性をより高めることが可能となる。
【0069】
<3.他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。但し、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0070】
上述の実施形態では、撥水紙と吸水紙との複数枚の紙を用いてシートを構成する例を説明したが、これに限定されない。例えば、吸水紙を1枚用意し、その表面の一部を撥水性の樹脂等でコーティングして非吸収領域Yとし、残りの領域をコーティングせずに吸収領域X1、X2としてシート30を構成してもよい(
図11参照)。このような形態でも上述の実施形態と同様の効果を得られる。
【0071】
上述の実施形態では、リジット基板を用いた基材10を例に説明したが、これに限定されない。基材10は、例えば、フレキシブル基板でもよい(
図12(a)、
図12(b)参照)。例えば、センサユニット100に尿を直接かけることが困難なペットや、病人から容器等に採取した尿をシート30に付着させるときに、フレキシブル基板であれば、容易に折り曲げることができるので、便利に使用することができる。
【0072】
上述の実施形態では、基材10の長手形状部が矩形状のものを例に説明したが、これに限定されず、長手形状部の先端部は丸く形成されていてもよい(
図9参照)。このような構成であれば、被験者がセンサユニット100を扱うときに安全に使用することができる。
【0073】
上述の実施形態では、吸水紙を撥水紙に固定する手段として接着剤Cを例に説明したが、これに限定されない。接着剤を用いずに、例えば、撥水紙に2つの切り込み部K、Lを設け、吸水紙を切り込み部K、Lに差し込むことにより、撥水紙で吸水紙を挟んで固定してもよい(
図10参照)。なお、切り込み部は、K、Lのうちの1つだけでもよい。また、切り込み部を設けずに、例えば、吸水紙の一端部、または両端部を引っ掛けることができるように、または、挟み込むことができるように構成された挟持構造を撥水紙の裏面側に設けることにより、吸水紙を撥水紙に固定してもよい。
【0074】
上述の実施形態では、尿中の特定成分として、尿酸やクレアチニンを例示したが、例えば、尿糖、尿塩分、尿蛋白、尿ケトン体等の他の成分であってもよい。また、液状の被験試料として尿を例示したが、これに限定されず、涙、鼻水、唾液、汗、血液等であってもよい。また、被験試料は人間由来のものに限定されず、犬など動物由来のものでもよい。
【0075】
上述の実施形態では、被験試料中の所定成分の濃度を測定する方法として三電極法を例に説明したが、これに限定されず、二電極法を用いて測定してもよい。
【0076】
上述の実施形態では、1または2つのセンサ電極が基材10に設けられている場合を例に説明したが、これに限定されず、センサ電極は3つ以上設けられていてもよい。
【0077】
シート30は、環境または取り扱い等の観点から可燃性材料、生分解性材料、または水溶性の材料で構成されていることが好ましい。
【0078】
基材10は、環境または取り扱い等の観点から水溶性材料、生分解性材料、または可燃性材料で構成されることが好ましい。
【0079】
<4.本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0080】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
基材と、
前記基材が有する2つの主面のうちいずれか一方の面上に設けられた第1センサ電極と、
前記第1センサ電極を覆うように配置されたシートと、を備え、
前記シートは、液状の被験試料を保持する第1吸収領域を、前記第1センサ電極に対応する位置に有しており、
被験試料を前記シートに付着させると、前記第1吸収領域で被験試料が吸収され、前記第1センサ電極に被験試料が接触するように構成されている、
電気化学センサユニットが提供される。
【0081】
(付記2)
好ましくは、
前記シートには、被験試料を吸収しない非吸収領域が、前記第1吸収領域を囲むように設けられている、
付記1に記載の電気化学センサユニットが提供される。
【0082】
(付記3)
好ましくは、
前記基材は、前記第1センサ電極とは異なる第2センサ電極を、前記第1センサ電極が設けられた側の面上に有している、
付記2に記載の電気化学センサユニットが提供される。
【0083】
(付記4)
好ましくは、
前記シートは、液状の被験試料を保持する第2吸収領域を、前記第2センサ電極に対応する位置に有しており、
前記第1吸収領域と前記第2吸収領域との間は、前記非吸収領域によって互いに分離されている、
付記3に記載の電気化学センサユニットが提供される。
【0084】
(付記5)
好ましくは、
前記基材は、前記第1センサ電極と前記第2センサ電極との間に絶縁部を有しており、
前記第1センサ電極に付着した被験試料と、前記第2センサ電極に付着した被験試料とは、前記基材の主面上で前記絶縁部により分離される、
付記3または付記4に記載の電気化学センサユニットが提供される。
【0085】
(付記6)
好ましくは、
平面視において、前記絶縁部は、前記第1センサ電極と前記第2センサ電極とを結ぶ線分に交差するように配置され、その長さは、前記絶縁部に沿うこれらのセンサ電極の長さ以上である、
付記5に記載の電気化学センサユニットが提供される。
【0086】
(付記7)
好ましくは、
側面視において、前記基材から前記絶縁部の上端までの高さは、前記基材から前記第1センサ電極および前記第2センサ電極それぞれの上端までの高さ以上である、
付記5または付記6に記載の電気化学センサユニットが提供される。
【0087】
(付記8)
好ましくは、
前記絶縁部は、互いに向かい合う第1傾斜面と第2傾斜面とを有し、これらの傾斜面の交差部を頂点とする山型形状に形成されている、
付記5から付記7のいずれか1つに記載の電気化学センサユニットが提供される。
【0088】
(付記9)
好ましくは、
前記絶縁部は、撥水材料で構成されている、
付記5から付記8のいずれか1つに記載の電気化学センサユニットが提供される。
【0089】
(付記10)
好ましくは、
前記シートは、撥水紙と吸水紙とを有し、
前記撥水紙には、前記第1センサ電極および前記第2センサ電極に対応する位置に開口部がそれぞれ設けられており、
前記吸水紙は、前記第1センサ電極側および前記第2センサ電極側から前記開口部を塞ぐように、配置されている、
付記4から付記9のいずれか1つに記載の電気化学センサユニットが提供される。
【0090】
(付記11)
好ましくは、
前記吸水紙は、被験試料を前記第1センサ電極および前記第2センサ電極の各表面へ供給しつつ、被験試料の前記開口部側への逆流を抑制するように構成されている、
付記10に記載の電気化学センサユニットが提供される。
【0091】
(付記12)
好ましくは、
1の前記吸水紙が吸収可能な被験試料の容量は、1の前記開口部の容積より大きい、
付記10または付記11に記載の電気化学センサユニットが提供される。
【0092】
(付記13)
好ましくは、
前記吸水紙は、短冊形状に形成されており、前記開口部から離間した位置に塗布された接着剤を介して前記撥水紙に接着されている、
付記10から付記12のいずれか1つに記載の電気化学センサユニットが提供される。
【0093】
(付記14)
好ましくは、
前記吸水紙は、前記撥水紙に設けられた挟持構造により挟持されることで、前記撥水紙に固定されている、
付記10から付記12のいずれか1つに記載の電気化学センサユニット。
【0094】
(付記15)
好ましくは、
前記挟持構造は、撥水紙の一部を切り込んだ構造を備える切り込み部を有している、
付記14に記載の電気化学センサユニット。
【0095】
(付記16)
好ましくは、
前記電気化学センサユニットは、前記被験試料を計測する計測機構に接続されて用いられ、
前記基材は、接続端子とストッパ構造とを有しており、
前記計測機構は、挿入口が開設された筐体を有しており、
前記接続端子を前記挿入口内に挿入すると、前記ストッパ構造が前記筐体に干渉することで前記基材の挿入長を制限するように構成されている、
付記1から付記15のいずれか1つに記載の電気化学センサユニット。
【解決手段】基材10と、基材10が有する2つの主面のうちいずれか一方の面上に設けられた第1センサ電極20と、第1センサ電極20を覆うように配置されたシート30と、を備え、シート30は、液状の被験試料を保持する第1吸収領域X1を、第1センサ電極20に対応する位置に有しており、被験試料をシート30に付着させると、第1吸収領域X1で被験試料が吸収され、第1センサ電極20に被験試料が接触するように構成されている。