(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用する用語は、特に言及しない限り、当該技術分野で通常用いられる意味で用いることができる。
【0016】
(1)人工マッチ型miRNA
本発明の人工マッチ型miRNAは、前述のように、
X領域とY領域とを有する一本鎖核酸であり、
前記X領域の3’末端と前記Y領域の5’末端とが、非ヌクレオチド構造のリンカー領域を介して連結し、
前記X領域は、成熟miRNAのガイド鎖配列を含み、
前記Y領域は、前記X領域と完全に相補な配列を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の人工マッチ型miRNAは、例えば、標的遺伝子の発現を抑制できる。発現抑制とは、例えば、前記標的遺伝子の翻訳の抑制、すなわち、前記標的遺伝子がコードするタンパク質の翻訳の抑制を意味し、より詳細には、前記標的遺伝子のmRNAからの前記タンパク質の翻訳の抑制を意味する。前記標的遺伝子の発現抑制は、例えば、前記標的遺伝子からの転写産物の生成量の減少、前記転写産物の活性の減少、前記標的遺伝子からの翻訳産物の生成量の減少、または前記翻訳産物の活性の減少等によって確認できる。前記タンパク質は、例えば、成熟タンパク質、または、プロセシングもしくは翻訳後修飾を受ける前の前駆体タンパク質があげられる。
【0018】
本発明の人工マッチ型miRNAは、一本鎖の核酸分子であるため、例えば、成熟miRNAのように二本の一本鎖をアニーリングする必要もなく、安価に製造できる。さらに、本発明の人工マッチ型miRNAは、一本鎖の核酸分子であるため、例えば、自己免疫に関与するTLR3、RIG-I、MDA5等に認識されることも回避できる。
【0019】
本発明の人工マッチ型miRNAにおける前記X領域および前記Y領域の配置関係の概略を、
図1に示す。なお、
図1は、概略であって、例えば、各領域の長さ、形状等は、制限されない。本発明の人工マッチ型miRNAは、
図1に示すように、5’側に前記X領域が配置され、3’側に前記Y領域が配置され、前記X領域の3’末端と前記Y領域の5’末端とが、非ヌクレオチド構造のリンカー領域(図において「P」で表す)を介して連結している。
【0020】
本発明の人工マッチ型miRNAにおいて、前記Y領域は、前記X領域と完全に相補な配列を含むため、前記X領域と前記Y領域とは、例えば、分子内アニーリングする。分子内アニーリングとは、例えば、自己アニーリングともいう。本発明の人工マッチ型miRNAは、前記分子内アニーリングした領域において、二本鎖が形成されるともいう。
【0021】
本発明の人工マッチ型miRNAは、その5’末端と3’末端とが未連結である、線状一本鎖核酸分子ということもできる。本発明の人工マッチ型miRNAは、例えば、両末端の未結合の維持のため、5’末端が非リン酸基であることが好ましい。
【0022】
本発明の人工マッチ型miRNAにおいて、前記X領域は、前述のように、成熟miRNAのガイド鎖配列を含む。成熟miRNAのガイド鎖配列は、例えば、各種データベースに登録されている(例えば、http://www.mirbase.org/等)。したがって、例えば、これらの公知の成熟miRNAの情報に基づいて、前記X領域を設定できる。前記成熟miRNAのガイド鎖とは、RNA-induced silencing complex(RISC)のArgonaute(Ago)タンパク質に取り込まれ、ターゲットのmRNAに結合する鎖である。
【0023】
前記X領域は、例えば、前記ガイド鎖配列のみからなってもよいし、さらに付加配列を有してもよい。後者の場合、前記X領域は、例えば、前記ガイド鎖配列と前記付加配列とからなり、前記付加配列は、例えば、前記ガイド鎖配列の3’末端に連結している。
【0024】
本発明の人工マッチ型miRNAにおいて、前記Y領域は、前記X領域と前記Y領域とをアライメントした際、前記X領域と完全に相補な配列を含む。前記Y領域は、例えば、前記X領域と完全に相補的な配列のみからなってもよいし、前記相補的な配列の他に、さらにオーバーハングを有してもよい。すなわち、本発明の人工マッチ型miRNAは、例えば、前記Y領域と前記X領域とをアライメントした際に、前記Y領域が、3’末端にオーバーハングを有してもよい。ここで、前記Y領域のオーバーハングとは、例えば、前記Y領域と前記X領域とをアライメントした場合に、前記Y領域が前記X領域よりも過剰に有する末端の塩基である。オーバーハングの長さ(O)は、例えば、下記式で表すことができる。
オーバーハングの長さ(O)=[Y領域の全長の塩基数(Y)]−[X領域の全長の塩基数(X)]
【0025】
本発明の人工マッチ型miRNAにおいて、各領域の長さは、特に制限されない。以下に、条件を例示するが、本発明の人工マッチ型miRNAは、これらの記載には限定されない。また、本発明において、塩基の数値範囲は、その範囲に属する正の整数を全て開示するものであり、例えば、「1〜4塩基」との記載は、「1、2、3、4塩基」の全ての開示を意味する(以下、同様)。
【0026】
前記X領域において、前記ガイド鎖配列の長さは、特に制限されず、例えば、報告されている成熟miRNAにおけるガイド鎖配列の長さが例示できる。具体例として、下限が、例えば、19塩基長、20塩基長であり、上限が、例えば、25塩基長、24塩基長であり、範囲が、例えば、19〜25塩基長、20〜24塩基長である。
【0027】
前記X領域における前記付加配列の長さは、特に制限されず、下限が、例えば、0塩基長、1塩基長、2塩基長であり、上限が、例えば、5塩基長、4塩基長、3塩基長であり、範囲が、例えば、0〜5塩基長、1〜5塩基長、1〜4塩基長、2〜3塩基長、3〜5塩基長である。
【0028】
前記X領域の長さは、特に制限されず、下限が、例えば、19塩基長、21塩基長、23塩基長であり、上限が、例えば、
33塩基長、30塩基長、28塩基長、26塩基長であり、範囲が、例えば、
19〜33塩基長、19〜30塩基長、21〜28塩基長、23〜26塩基長である。
【0029】
前記Y領域における前記オーバーハングの長さは、特に制限されず、下限が、例えば、0塩基長、1塩基長であり、上限が、例えば、4塩基長、3塩基長であり、範囲が、例えば、0〜4塩基長、1〜3塩基長、2塩基長である。
【0030】
前記オーバーハングの配列は、特に制限されず、例えば、3’側から、UU、CU、GC、UA、AA、CC、UG、CG、AU、TT等が例示できる。前記オーバーハングは、例えば、TTとすることで、RNA分解酵素に対する耐性を付加できる。
【0031】
前記Y領域の長さは、特に制限されず、下限が、例えば、19塩基長、21塩基長、23塩基長であり、上限が、例えば、
35塩基長、32塩基長、30塩基長、28塩基長であり、範囲が、例えば、19〜32塩基長、
21〜35塩基長、21〜30塩基長、23〜28塩基長である。
【0032】
本発明の人工マッチ型miRNAの全長(T)は、特に制限されず、下限が、例えば、38塩基長、
40塩基長、42塩基長、46塩基長であり、上限が、例えば、62塩基長、58塩基長、54塩基長
、68塩基長であり、範囲が、例えば、38〜62塩基長、
40〜68塩基長、42〜58塩基長、46〜54塩基長である。
【0033】
本発明の人工マッチ型miRNAにおいて、前記成熟miRNAの種類は、特に制限されず、標的とする遺伝子の種類に応じて、適宜選択できる。
【0034】
前記成熟miRNAとしては、例えば、hsa−miR−34a(配列番号1)、hsa−let−7a(配列番号2)、hsa−let−7f(配列番号3)、hsa−miR−150(配列番号4)、hsa−miR−29b(配列番号5)等の成熟miRNAがあげられる。
hsa−miR−34a(配列番号1)
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGU
hsa−let−7a(配列番号2)
UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUU
hsa−let−7f(配列番号3)
UGAGGUAGUAGAUUGUAUAGUU
hsa−miR−150(配列番号4)
UCUCCCAACCCUUGUACCAGUG
hsa−miR−29b(配列番号5)
UAGCACCAUUUGAAAUCAGUGUU
ここで、各配列番号で示されるヌクレオチド配列は、ガイド鎖配列を示す。
【0035】
miR−34aのガイド鎖は、例えば、AXL、MET、CDK4、CDK6、SIRT1、CCND1、SIRT1、BCL−2等をターゲットとし、これらの標的遺伝子の発現抑制により、例えば、肺がん、大腸がん、胃がん、肝がん、乳がん等の疾患を予防または治療できる。
let−7aのガイド鎖は、例えば、HMGA2(high mobility group AT-hook 2)、KRAS、NRAS、HRAS、MYC、TLR4等をターゲットとし、これらの標的遺伝子の発現抑制により、例えば、肺がん、大腸がん、胃がん、肝がん、乳がん等の疾患を予防または治療できる。
let−7fのガイド鎖は、例えば、HMGA2(high mobility group AT-hook 2)、KRAS、NRAS、HRAS、MYC、TLR4等をターゲットとし、これらの標的遺伝子の発現抑制により、例えば、肺がん、大腸がん、胃がん、肝がん、乳がん等の疾患を予防または治療できる。
miR−150のガイド鎖は、例えば、COL1A1、COL4A4、SMAD2、SP1等をターゲットとし、これらの標的遺伝子の発現抑制により、例えば、肺線維症、肝線維症等の疾患を予防または治療できる。
miR−29bのガイド鎖は、例えば、COL1A1、MCL1、DNMT3A、DNMT3B、TCL1A、TGFb3等をターゲットとし、これらの標的遺伝子の発現抑制により、例えば、肺がん、大腸がん、胃がん、肝がん、乳がん、肺線維症、肝線維症等の疾患を予防または治療できる。
【0036】
本発明の人工マッチ型miRNAの構成単位は、特に制限されず、例えば、ヌクレオチド残基があげられる。前記ヌクレオチド残基は、例えば、リボヌクレオチド残基およびデオキシリボヌクレオチド残基があげられる。本発明の人工マッチ型miRNAにおいて、前記ヌクレオチド残基は、例えば、リボヌクレオチド残基が好ましい。前記ヌクレオチド残基は、例えば、修飾されていない非修飾ヌクレオチド残基および修飾された修飾ヌクレオチド残基があげられる。本発明の人工マッチ型miRNAは、例えば、前記修飾ヌクレオチド残基を含むことによって、ヌクレアーゼ耐性を向上し、安定性を向上可能である。また、本発明の人工マッチ型miRNAは、例えば、前記ヌクレオチド残基の他に、さらに、非ヌクレオチド残基を含んでもよい。
【0037】
本発明の人工マッチ型miRNAが、例えば、前記非修飾リボヌクレオチド残基の他に前記修飾リボヌクレオチド残基を含む場合、前記修飾リボヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1個もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1〜5個、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜3個、最も好ましくは1または2個である。前記非修飾リボヌクレオチド残基に対する前記修飾リボヌクレオチド残基は、例えば、リボース残基がデオキシリボース残基に置換された前記デオキシリボヌクレオチド残基であってもよい。本発明の人工マッチ型miRNAが、例えば、前記非修飾リボヌクレオチド残基の他に前記デオキシリボヌクレオチド残基を含む場合、前記デオキシリボヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1〜5個、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜3個、最も好ましくは1または2個である。
【0038】
前記ヌクレオチド残基は、例えば、構成要素として、糖、塩基およびリン酸を含む。前記リボヌクレオチド残基は、例えば、糖としてリボース残基を有し、塩基として、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)およびU(ウラシル)を有し、前記デオキシリボース残基は、例えば、糖としてデオキシリボース残基を有し、塩基として、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)およびチミン(T)を有する。
【0039】
前記非修飾ヌクレオチド残基は、前記各構成要素が、例えば、天然に存在するものと同一または実質的に同一であり、具体的には、例えば、人体において天然に存在するものと同一または実質的に同一である。
【0040】
前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、前記未修飾ヌクレオチド残基の構成要素のいずれが修飾されてもよい。前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、天然に存在するヌクレオチド残基、人工的に修飾したヌクレオチド残基等があげられる。
【0041】
前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、前記未修飾ヌクレオチドの代替物の残基であってもよい。前記代替物は、例えば、人工核酸モノマー残基があげられる。具体例として、例えば、PNA(ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)、ENA(2’−O,4’−C−Ethylenebridged Nucleic Acid)等があげられる。
【0042】
前記ヌクレオチド残基において、前記塩基は、特に制限されない。前記塩基は、例えば、天然の塩基でもよいし、非天然の塩基でもよい。前記塩基は、例えば、天然由来でもよいし、合成品でもよい。前記塩基は、例えば、一般的な塩基、その修飾アナログ等が使用できる。
【0043】
本発明の人工マッチ型miRNAにおいて、前記非ヌクレオチド構造のリンカー領域は、アミノ酸残基、ポリアミン残基、およびポリカルボン酸残基からなる群から選択される少なくとも一つを含むことが好ましい。前記リンカー領域は、アミノ酸残基、ポリアミン残基、およびポリカルボン酸残基以外の残基を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。例えば、前記リンカー領域は、ポリカルボン酸残基、テレフタル酸残基またはアミノ酸残基のいずれかを含むものであってよい。
【0044】
本発明において、「ポリアミン」は、アミノ基を複数(2つ、または3つ以上)含む任意の化合物をいう。前記「アミノ基」は、−NH
2基に限定されず、イミノ基(−NH−)も含む。本発明において、前記ポリアミンは、特に限定されないが、例えば、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン等が挙げられる。また、本発明において、「ポリカルボン酸」は、カルボキシ基を複数(2つ、または3つ以上)含む任意の化合物をいう。本発明において、前記ポリカルボン酸は、特に限定されないが、例えば、1,4−ジカルボキシベンゼン(テレフタル酸)、1,3−ジカルボキシベンゼン(イソフタル酸)、1,2−ジカルボキシベンゼン(フタル酸)等が挙げられる。また、本発明において、「アミノ酸」は、後述するように、分子中にアミノ基およびカルボキシ基をそれぞれ1つ以上含む任意の有機化合物をいう。前記「アミノ基」は、−NH
2基に限定されず、イミノ基(−NH−)も含む。
【0045】
本発明の人工マッチ型miRNAにおいて、前記アミノ酸残基は、複数のアミノ酸残基が連結したものであってもよい。なお、本発明において、複数のアミノ酸残基が連結したアミノ酸残基とは、例えば、ペプチド構造を含む残基をいう。より具体的には、前記複数のアミノ酸残基が連結したアミノ酸残基は、例えば、後述する化学式(I)のアミノ酸残基において、後述する化学式(Ia)がペプチド(例えば、グリシン二量体またはグリシン三量体等)であるアミノ酸残基をいう。
【0046】
本発明の人工マッチ型miRNAにおいて、前記アミノ酸残基は、グリシン残基、テレフタル酸アミド残基、プロリン残基またはリシン残基であってもよい。また、前記アミノ酸残基は、修飾アミノ酸残基またはアミノ酸の誘導体であってもよい。
【0047】
本発明の人工マッチ型miRNAにおいて、前記リンカー領域は、例えば、下記化学式(I−0)で表わされる。
【0049】
前記化学式(I−0)中、
Q11およびQ12は、それぞれ独立して、単結合、CH
2(メチレン基)、NH(イミノ基)、C=O(カルボニル基)、C=S(チオカルボニル基)、C=NH(イミノメチレン基)、O、またはSであり、
Q1およびQ2は、それぞれ独立して、単結合、CH
2(メチレン基)、NH(イミノ基)、C=O(カルボニル基)、C=S(チオカルボニル基)、C=NH(イミノメチレン基)、O、またはSであり、
Y
1およびY
2は、それぞれ独立して、単結合、CH
2、NH、OまたはSであり;
L
1は、n個の炭素原子を有するアルキレン鎖であり、アルキレン炭素原子上の水素原子は、OH、OR
a、NH
2、NHR
a、NR
aR
b、SH、もしくはSR
aで置換されても置換されていなくてもよく、または、
L1は、前記アルキレン鎖の一つ以上の炭素原子が、酸素原子で置換されたポリエーテル鎖であり、
ただし、Y
1が、NH、OまたはSの場合、Y
1に結合するL
1の原子は炭素であり、OR
1に結合するL
1の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接せず;
L
2は、m個の炭素原子を有するアルキレン鎖であり、アルキレン炭素原子上の水素原子は、OH、OR
c、NH
2、NHR
c、NR
cR
d、SHもしくはSR
cで置換されても置換されていなくてもよく、または、
L
2は、前記アルキレン鎖の一つ以上の炭素原子が、酸素原子で置換されたポリエーテル鎖であり、
ただし、Y
2が、NH、OまたはSの場合、Y
2に結合するL
2の原子は炭素であり、OR
2に結合するL
2の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接せず;
R
a、R
b、R
cおよびR
dは、それぞれ独立して、置換基または保護基であり;
mは、0〜30の範囲の整数であり;
nは、0〜30の範囲の整数であり;
前記X領域および前記Y領域は、それぞれ、−OR
1−または−OR
2−を介して、前記リンカー残基に結合し、
ここで、R
1およびR
2は、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、ヌクレオチド残基または前記構造(I−0)であり、
Aは、任意の原子団である。
【0050】
前記X領域および前記Y領域と、−OR
1−および−OR
2−との結合の組合せは、特に制限されず、例えば、以下のいずれかの条件があげられる。
条件(1)
前記X領域は、−OR
2−を介して、前記Y領域は、−OR
1−を介して、前記式(I)の構造と結合する。
条件(2)
前記X領域は、−OR
1−を介して、前記Y領域は、−OR
2−を介して、前記式(I)の構造と結合する。
【0051】
前記化学式(I−0)において、例えば、Q
11がC=O(カルボニル基)であり、Q
1がNH(イミノ基)であってもよい。また、例えば、Q
11がNH(イミノ基)であり、Q
1がC=O(カルボニル基)であってもよい。また例えば、Q
12がC=O(カルボニル基)であり、Q
2がNH(イミノ基)であってもよい。また、例えば、Q
12がNH(イミノ基)であり、Q
2がC=O(カルボニル基)であってもよい。
【0052】
前記化学式(I−0)中、Q
11およびQ
12は、例えば、それぞれカルボニル基であってもよい。この場合において、Q
1およびQ
2が、それぞれイミノ基であることが好ましい。また、この場合において、下記化学式(Iα)の構造が、下記化学式(Iα2)で表されることがより好ましい。
【0054】
前記化学式(Iα2)中、
R
100は、任意の置換基であり、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合は、1個でも複数でもよく、複数の場合は、互いに同一でも異なっていてもよい。R
100における前記任意の置換基としては、例えば、前記R
a、R
b、R
cおよびR
dにおいて例示する後述の置換基が挙げられ、より具体的には、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、カルボキシ、スルホ、ニトロ、カルバモイル、スルファモイル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、シリル、シリルオキシアルキル、ピロールイル、イミダゾリル、等があげられる。また、前記化学式(Iα2)の構造が、下記化学式(Iα3)で表されることがさらに好ましい。
【0056】
なお、Q
11およびQ
12がカルボニル基であり、かつQ
1およびQ
2がイミノ基である場合、前記化学式(I−0)のリンカー残基は、カルボン酸アミド残基であるということもできるが、カルボン酸残基であるということもできる。例えば、後述の実施例における「TPA」構造は、テレフタル酸アミド残基であるということもできるが、前記化学式(Iα3)で表されるテレフタル酸の残基であるということもできる。
【0057】
前記化学式(I−0)中、Q
11およびQ
12が、それぞれイミノ基であってもよい。この場合において、Q
1およびQ
2が、それぞれカルボニル基であることが好ましい。また、この場合において、下記化学式(Iβ)の構造が、下記化学式(Iβ2)で表されることがより好ましい。
【0059】
前記化学式(Iβ2)中、
R
100は、任意の置換基であり、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合は、1個でも複数でもよく、複数の場合は、互いに同一でも異なっていてもよい。具体的には、例えば、前記化学式(Iα2)中のR
100と同様である。また、前記化学式(Iβ2)の構造が、下記化学式(Iβ3)で表されることがさらに好ましい。
【0061】
本発明の人工マッチ型miRNAにおいて、前記リンカー残基が、アミノ酸残基である場合、前記アミノ酸残基は、例えば、下記化学式(I)で表わされる。なお、下記化学式(I)の構造は、前記化学式(I−0)で表される構造の一例である。
【0063】
前記式(I)中、例えば、X
1、X
2、Y
1、Y
2、L
1およびL
2は、前記と同様である。
前記microRNAの配列に対する相補的配列は、それぞれ、−OR
1−または−OR
2−を介して、前記アミノ酸残基に結合し、
ここで、R
1およびR
2は、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、ヌクレオチド残基または前記構造(I)であり、
Aは、任意の原子団であり、ただし、下記化学式(Ia)は、アミノ酸またはペプチドである。
【0065】
前記化学式(I)、(Iα)または(Ia)中の原子団Aは、例えば、鎖式原子団、脂環式原子団、芳香族性原子団、ヘテロ芳香族性原子団、およびヘテロ脂環式原子団からなる群から選択される少なくとも一つを含んでいても含んでいなくても良い。前記鎖式原子団は、特に限定されないが、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、シリル、シリルオキシアルキル等が挙げられる。前記脂環式原子団は、特に限定されないが、例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクリルアルキル等が挙げられる。前記芳香族性原子団は、特に限定されないが、例えば、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、縮環系アリール、縮環系アリールアルキル、縮環系アルキルアリール等が挙げられる。前記ヘテロ芳香族性原子団は、特に限定されないが、例えば、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリール、縮環系ヘテロアリール、縮環系ヘテロアリールアルキル、縮環系アルキルヘテロアリール等が挙げられる。また、前記化学式(I)、(Iα)または(Ia)中の原子団Aにおいて、前記各原子団は、さらに置換基または保護基を有していても有していなくても良い。前記置換基または保護基は、複数の場合は同一でも異なってもよい。前記置換基としては、例えば、前記R
a、R
b、R
cおよびR
dで例示した置換基が挙げられ、より具体的には、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、カルボキシ、スルホ、ニトロ、カルバモイル、スルファモイル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、シリル、シリルオキシアルキル、ピロールイル、イミダゾリル、等があげられる。前記保護基は、例えば、前記R
a、R
b、R
cおよびR
dで例示した保護基と同様である。
【0066】
本発明において、「アミノ酸」は、前述のとおり、分子中にアミノ基およびカルボキシ基をそれぞれ1つ以上含む任意の有機化合物をいう。前記「アミノ基」は、−NH
2基に限定されず、イミノ基(−NH−)も含む。例えば、プロリン、ヒドロキシプロリン等は、分子中に−NH
2基を含まず、イミノ基(−NH−)を含むが、本発明における「アミノ酸」の定義に含まれる。本発明において、前記「アミノ酸」は、後述するとおり、天然アミノ酸でもよいし、人工アミノ酸でもよい。例えば、後述する化学式(Ia2)または(Ia3)で表される化合物も、分子中にアミノ基およびカルボキシ基を含むため、本発明における「アミノ酸」の定義に含まれる。したがって、例えば、前記化学式(I)において、原子団Aが、後述の化学式(A2)または化学式(A2a)で表される構造は、本発明における「アミノ酸残基」の定義に含まれる。また、例えば、後述の実施例における「TPA」構造も、本発明における「アミノ酸残基」の定義に含まれる。また、本発明において、「ペプチド」は、2分子以上のアミノ酸がペプチド結合により結合した構造の有機化合物をいう。前記ペプチド結合は、酸アミド構造でも良いし、酸イミド構造でも良い。また、前記化学式(Ia)で表すアミノ酸またはペプチド分子中にアミノ基が複数存在する場合は、前記化学式(Ia)中に明示しているアミノ基は、いずれのアミノ基であっても良い。また、前記化学式(Ia)で表すアミノ酸またはペプチド分子中にカルボキシ基が複数存在する場合は、前記化学式(Ia)中に明示しているカルボキシ基は、いずれのカルボキシ基であっても良い。
【0067】
本発明の人工マッチ型miRNAの前記アミノ酸残基において、前記アミノ酸は、例えば、前述のとおり、天然アミノ酸でも良いし、人工アミノ酸であっても良い。なお、本発明において、「天然アミノ酸」は、天然に存在する構造のアミノ酸またはその光学異性体をいう。前記天然アミノ酸の製造方法は特に限定されず、例えば、天然から抽出しても良いし、合成しても良い。また、本発明において、「人工アミノ酸」は、天然に存在しない構造のアミノ酸をいう。すなわち、前記人工アミノ酸は、アミノ酸すなわちアミノ基を含むカルボン酸誘導体(分子中にアミノ基およびカルボキシ基をそれぞれ1つ以上含む有機化合物)であって、天然に存在しない構造のカルボン酸誘導体をいう。前記人工アミノ酸は、例えば、ヘテロ環を含まないことが好ましい。前記アミノ酸は、例えば、タンパク質を構成するアミノ酸であっても良い。前記アミノ酸は、例えば、グリシン、α−アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、ヒドロキシリシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、チロシン、バリン、プロリン、4−ヒドロキシプロリン、トリプトファン、β−アラニン、1−アミノ−2−カルボキシシクロペンタン、アミノ安息香酸、アミノピリジンカルボン酸および下記化学式(Ia2)で表されるアミノ酸からなる群から選択される少なくとも1種類であっても良く、さらに置換基または保護基を有していても有していなくても良い。前記置換基としては、例えば、前記Ra、Rb、RcおよびRdで例示した置換基が挙げられ、より具体的には、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、カルボキシ、スルホ、ニトロ、カルバモイル、スルファモイル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、シリル、シリルオキシアルキル、ピロールイル、イミダゾリル、等があげられる。前記保護基は、例えば、前記Ra、Rb、RcおよびRdで例示した保護基と同様である。また、前記化学式(Ia)のペプチドでないアミノ酸に、光学異性体、幾何異性体、立体異性体等の異性体が存在する場合は、いずれの異性体でも良い。
【0069】
前記化学式(Ia2)中、
R100は、任意の置換基であり、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合は、1個でも複数でもよく、複数の場合は、互いに同一でも異なっていてもよい。R100における前記任意の置換基としては、例えば、前記Ra、Rb、RcおよびRdで例示した置換基が挙げられ、より具体的には、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、カルボキシ、スルホ、ニトロ、カルバモイル、スルファモイル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、シリル、シリルオキシアルキル、ピロールイル、イミダゾリル、等があげられる。また、前記化学式(Ia2)の構造は、例えば、下記化学式(Ia3)であってもよい。
【0071】
なお、前記化学式(Ia)の構造が、前記化学式(Ia2)である場合、前記化学式(I)中の原子団Aの構造は、下記化学式(A2)で表される。下記化学式(A2)中のR100は、前記化学式(Ia2)中のR100と同じである。また、前記化学式(Ia)の構造が、前記化学式(Ia3)である場合、前記化学式(I)中の原子団Aの構造は、下記化学式(A2a)で表される。
【0073】
前記化学式(I)の構造は、例えば、下記化学式(I−1)〜(I−7)が例示でき、下記化学式(I−1)〜(I−7)において、nおよびmは、前記化学式(I)と同じである。
【0075】
前記化学式(I−1)〜(I−7)において、nおよびmは、特に制限されず、前述の通りである。具体例として、前記化学式(I−1)においてn=11およびm=12、または、n=5およびm=4と、前記化学式(I−4)においてn=5およびm=4と、前記化学式(I−6)において、n=4およびm=4と、前記化学式(1−7)においてn=5およびm=4とがあげられる。その構造を、下記化学式(I−1a)、(I−1b)(I−4a)、(I−6a)および(I−7a)に示す。
【0077】
あるいは、本発明の人工マッチ型miRNAにおいて、前記リンカー領域は、例えば、下記式(II)で表わされる。
【化13】
【0078】
前記式(II)中、例えば、
X
1およびX
2は、それぞれ独立して、H
2、O、SまたはNHであり;
Y
1およびY
2は、それぞれ独立して、単結合、CH
2、NH、OまたはSであり;
R
3は、環A上のC−3、C−4、C−5またはC−6に結合する水素原子または置換基であり、
L
1は、n個の原子からなるアルキレン鎖であり、ここで、アルキレン炭素原子上の水素原子は、OH、OR
a、NH
2、NHR
a、NR
aR
b、SH、もしくはSR
aで置換されても置換されていなくてもよく、または、
L
1は、前記アルキレン鎖の一つ以上の炭素原子が、酸素原子で置換されたポリエーテル鎖であり、
ただし、Y
1が、NH、OまたはSの場合、Y
1に結合するL
1の原子は炭素であり、OR
1に結合するL
1の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接せず;
L
2は、m個の原子からなるアルキレン鎖であり、ここで、アルキレン炭素原子上の水素原子は、OH、OR
c、NH
2、NHR
c、NR
cR
d、SHもしくはSR
cで置換されても置換れていなくてもよく、または、
L
2は、前記アルキレン鎖の一つ以上の炭素原子が、酸素原子で置換されたポリエーテル鎖であり、
ただし、Y
2が、NH、OまたはSの場合、Y
2に結合するL
2の原子は炭素であり、OR
2に結合するL
2の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接せず;
R
a、R
b、R
cおよびR
dは、それぞれ独立して、置換基または保護基であり;
lは、1または2であり;
mは、0〜30の範囲の整数であり;
nは、0〜30の範囲の整数であり;
環Aは、前記環A上のC−2以外の1個の炭素原子が、窒素、酸素、硫黄で置換されてもよく、
前記環A内に、炭素−炭素二重結合または炭素−窒素二重結合を含んでもよく、
前記X領域および前記Y領域は、それぞれ、−OR
1−または−OR
2−を介して、前記非ヌクレオチド構造に結合し、
ここで、R
1およびR
2は、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、ヌクレオチド残基または前記構造(II)である。
【0079】
前記式(II)中、X
1およびX
2は、例えば、それぞれ独立して、H
2、O、SまたはNHである。前記式(II)中において、X
1がH
2であるとは、X
1が、X
1の結合する炭素原子とともに、CH
2(メチレン基)を形成することを意味する。X
2についても同様である。
【0080】
前記式(II)中、Y
1およびY
2は、それぞれ独立して、単結合、CH
2、NH、OまたはSである。
【0081】
前記式(II)中、環Aにおいて、lは、1または2である。l=1の場合、環Aは、5員環であり、例えば、前記ピロリジン骨格である。前記ピロリジン骨格は、例えば、プロリン骨格、プロリノール骨格等があげられ、これらの二価の構造が例示できる。l=2の場合、環Aは、6員環であり、例えば、前記ピペリジン骨格である。環Aは、環A上のC−2以外の1個の炭素原子が、窒素、酸素または硫黄で置換されてもよい。また、環Aは、環A内に、炭素−炭素二重結合または炭素−窒素二重結合を含んでもよい。環Aは、例えば、L型およびD型のいずれでもよい。
【0082】
前記式(II)中、R
3は、環A上のC−3、C−4、C−5またはC−6に結合する水素原子または置換基である。R
3が前記置換基の場合、置換基R
3は、1でも複数でも、存在しなくてもよく、複数の場合、同一でも異なってもよい。
【0083】
置換基R
3は、例えば、ハロゲン、OH、OR
4、NH
2、NHR
4、NR
4R
5、SH、SR
4またはオキソ基(=O)等である。
【0084】
R
4およびR
5は、例えば、それぞれ独立して、置換基または保護基であり、同一でも異なってもよい。前記置換基は、例えば、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリールアルキル、シリル、シリルオキシアルキル等があげられる。以下、同様である。置換基R
3は、これらの列挙する置換基であってもよい。
【0085】
前記保護基は、例えば、反応性の高い官能基を不活性に変換する官能基であり、公知の保護基等があげられる。前記保護基は、例えば、文献(J. F. W. McOmie, 「Protecting Groups in Organic Chemistry」 Prenum Press, London and New York, 1973)の記載を援用できる。前記保護基は、特に制限されず、例えば、tert−ブチルジメチルシリル基(TBDMS)、ビス(2−アセトキシエチルオキシ)メチル基(ACE)、トリイソプロピルシリルオキシメチル基(TOM)、1−(2−シアノエトキシ)エチル基(CEE)、2−シアノエトキシメチル基(CEM)およびトリルスルフォニルエトキシメチル基(TEM)、ジメトキシトリチル基(DMTr)等があげられる。R
3がOR
4の場合、前記保護基は、特に制限されず、例えば、TBDMS基、ACE基、TOM基、CEE基、CEM基およびTEM基等があげられる。この他にも、シリル含有基もあげられる。以下、同様である。
【0086】
前記式(II)中、L
1は、n個の原子からなるアルキレン鎖である。前記アルキレン炭素原子上の水素原子は、例えば、OH、OR
a、NH
2、NHR
a、NR
aR
b、SH、もしくはSR
aで置換されてもよいし、置換されていなくてもよい。または、L
1は、前記アルキレン鎖の1つ以上の炭素原子が酸素原子で置換されたポリエーテル鎖でもよい。前記ポリエーテル鎖は、例えば、ポリエチレングリコールである。なお、Y
1が、NH、OまたはSの場合、Y
1に結合するL
1の原子は炭素であり、OR
1に結合するL
1の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接しない。つまり、例えば、Y
1がOの場合、その酸素原子とL
1の酸素原子は隣接せず、OR
1の酸素原子とL
1の酸素原子は隣接しない。
【0087】
前記式(II)中、L
2は、m個の原子からなるアルキレン鎖である。前記アルキレン炭素原子上の水素原子は、例えば、OH、OR
c、NH
2、NHR
c、NR
cR
d、SHもしくはSR
cで置換されてもよいし、置換されていなくてもよい。または、L
2は、前記アルキレン鎖の1つ以上の炭素原子が酸素原子で置換されたポリエーテル鎖でもよい。なお、Y
2が、NH、OまたはSの場合、Y
2に結合するL
2の原子は炭素であり、OR
2に結合するL
2の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接しない。つまり、例えば、Y
2がOの場合、その酸素原子とL
2の酸素原子は隣接せず、OR
2の酸素原子とL
2の酸素原子は隣接しない。
【0088】
L
1のnおよびL
2のmは、特に制限されず、それぞれ、下限は、例えば、0であり、上限も、特に制限されない。nおよびmは、例えば、前記非ヌクレオチド構造の所望の長さに応じて、適宜設定できる。nおよびmは、例えば、製造コストおよび収率等の点から、それぞれ、0〜30が好ましく、より好ましくは0〜20であり、さらに好ましくは0〜15である。nとmは、同じでもよいし(n=m)、異なってもよい。n+mは、例えば、0〜30であり、好ましくは0〜20であり、より好ましくは0〜15である。
【0089】
R
a、R
b、R
cおよびR
dは、例えば、それぞれ独立して、置換基または保護基である。前記置換基および前記保護基は、例えば、前述と同様である。
【0090】
前記式(II)において、水素原子は、例えば、それぞれ独立して、Cl、Br、FおよびI等のハロゲンに置換されてもよい。
【0091】
前記X領域および前記Y領域は、例えば、それぞれ、−OR
1−または−OR
2−を介して、前記非ヌクレオチド構造に結合する。ここで、R
1およびR
2は、存在しても存在しなくてもよい。R
1およびR
2が存在する場合、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、ヌクレオチド残基または前記式(II)の構造である。R
1および/またはR
2が前記ヌクレオチド残基の場合、前記非ヌクレオチド構造は、例えば、ヌクレオチド残基R
1および/またはR
2を除く前記式(II)の構造からなる前記非ヌクレオチド残基と、前記ヌクレオチド残基とから形成される。R
1および/またはR
2が前記式(II)の構造の場合、前記非ヌクレオチド構造は、例えば、前記式(II)の構造からなる前記非ヌクレオチド残基が、2つ以上連結された構造となる。前記式(II)の構造は、例えば、1個、2個、3個または4個含んでもよい。このように、前記構造を複数含む場合、前記(II)の構造は、例えば、直接連結されてもよいし、前記ヌクレオチド残基を介して結合してもよい。他方、R
1およびR
2が存在しない場合、前記非ヌクレオチド構造は、例えば、前記式(II)の構造からなる前記非ヌクレオチド残基のみから形成される。
【0092】
前記X領域および前記Y領域と、−OR
1−および−OR
2−との結合の組合せは、特に制限されず、例えば、以下のいずれかの条件があげられる。
条件(1)
前記X領域は、−OR
2−を介して、前記Y領域は、−OR
1−を介して、前記式(II)の構造と結合する。
条件(2)
前記X領域は、−OR
1−を介して、前記Y領域は、−OR
2−を介して、前記式(II)の構造と結合する。
【0093】
前記式(II)の構造は、例えば、下記式(II−1)〜式(II−9)が例示でき、下記式において、nおよびmは、前記式(II)と同じである。下記式において、qは、0〜10の整数である。
【化14】
【0094】
前記式(II−1)〜(II−9)において、n、mおよびqは、特に制限されず、前述の通りである。具体例として、前記式(II−1)において、n=8、前記(II−2)において、n=3、前記式(II−3)において、n=4または8、前記(II−4)において、n=7または8、前記式(II−5)において、n=3およびm=4、前記(II−6)において、n=8およびm=4、前記式(II−7)において、n=8およびm=4、前記(II−8)において、n=5およびm=4、前記式(II−9)において、q=1およびm=4があげられる。前記式(II−4)の一例(n=8)を、下記式(II−4a)に、前記式(II−8)の一例(n=5、m=4)を、下記式(II−8a)に示す。
【化15】
【0095】
本発明において、「アルキル」は、例えば、直鎖状または分枝状のアルキル基を含む。前記アルキルの炭素数は、特に制限されず、例えば、1〜30であり、好ましくは、1〜6であり、より好ましくは、1〜4である。前記アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ぺンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル等があげられる。好ましくは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ぺンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル等があげられる。
【0096】
本発明において、「アルケニル」は、例えば、直鎖状または分枝状のアルケニルを含む。前記アルケニルは、前記アルキルにおいて、1個または複数の二重結合を有するもの等があげられる。前記アルケニルの炭素数は、特に制限されず、例えば、前記アルキルと同様であり、好ましくは2〜8である。前記アルケニルは、例えば、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1,3−ブタジエニル、3−メチル−2−ブテニル等があげられる。
【0097】
本発明において、「アルキニル」は、例えば、直鎖状または分枝状のアルキニルを含む。前記アルキニルは、前記アルキルにおいて、1個または複数の三重結合を有するもの等があげられる。前記アルキニルの炭素数は、特に制限されず、例えば、前記アルキルと同様であり、好ましくは2〜8である。前記アルキニルは、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル等があげられる。前記アルキニルは、例えば、さらに、1個または複数の二重結合を有してもよい。
【0098】
本発明において、「アリール」は、例えば、単環芳香族炭化水素基および多環芳香族炭化水素基を含む。前記単環芳香族炭化水素基は、例えば、フェニル等があげられる。前記多環芳香族炭化水素基は、例えば、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、1−フェナントリル、2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリル、9−フェナントリル等があげられる。好ましくは、例えば、フェニル、1−ナフチルおよび2−ナフチル等のナフチル等があげられる。
【0099】
本発明において、「ヘテロアリール」は、例えば、単環芳香族複素環式基および縮合芳香族複素環式基を含む。前記ヘテロアリールは、例えば、フリル(例:2−フリル、3−フリル)、チエニル(例:2−チエニル、3−チエニル)、ピロリル(例:1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル)、イミダゾリル(例:1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル)、ピラゾリル(例:1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル)、トリアゾリル(例:1,2,4−トリアゾール−1−イル、1,2,4−トリアゾール−3−イル、1,2,4−トリアゾール−4−イル)、テトラゾリル(例:1−テトラゾリル、2−テトラゾリル、5−テトラゾリル)、オキサゾリル(例:2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル)、イソキサゾリル(例:3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル)、チアゾリル(例:2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル)、チアジアゾリル、イソチアゾリル(例:3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル)、ピリジル(例:2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル)、ピリダジニル(例:3−ピリダジニル、4−ピリダジニル)、ピリミジニル(例:2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル)、フラザニル(例:3−フラザニル)、ピラジニル(例:2−ピラジニル)、オキサジアゾリル(例:1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)、ベンゾフリル(例:2−ベンゾ[b]フリル、3−ベンゾ[b]フリル、4−ベンゾ[b]フリル、5−ベンゾ[b]フリル、6−ベンゾ[b]フリル、7−ベンゾ[b]フリル)、ベンゾチエニル(例:2−ベンゾ[b]チエニル、3−ベンゾ[b]チエニル、4−ベンゾ[b]チエニル、5−ベンゾ[b]チエニル、6−ベンゾ[b]チエニル、7−ベンゾ[b]チエニル)、ベンズイミダゾリル(例:1−ベンゾイミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、4−ベンゾイミダゾリル、5−ベンゾイミダゾリル)、ジベンゾフリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、キノキサリル(例:2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、6−キノキサリニル)、シンノリニル(例:3−シンノリニル、4−シンノリニル、5−シンノリニル、6−シンノリニル、7−シンノリニル、8−シンノリニル)、キナゾリル(例:2−キナゾリニル、4−キナゾリニル、5−キナゾリニル、6−キナゾリニル、7−キナゾリニル、8−キナゾリニル)、キノリル(例:2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、5−キノリル、6−キノリル、7−キノリル、8−キノリル)、フタラジニル(例:1−フタラジニル、5−フタラジニル、6−フタラジニル)、イソキノリル(例:1−イソキノリル、3−イソキノリル、4−イソキノリル、5−イソキノリル、6−イソキノリル、7−イソキノリル、8−イソキノリル)、プリル、プテリジニル(例:2−プテリジニル、4−プテリジニル、6−プテリジニル、7−プテリジニル)、カルバゾリル、フェナントリジニル、アクリジニル(例:1−アクリジニル、2−アクリジニル、3−アクリジニル、4−アクリジニル、9−アクリジニル)、インドリル(例:1−インドリル、2−インドリル、3−インドリル、4−インドリル、5−インドリル、6−インドリル、7−インドリル)、イソインドリル、フェナジニル(例:1−フェナジニル、2−フェナジニル)またはフェノチアジニル(例:1−フェノチアジニル、2−フェノチアジニル、3−フェノチアジニル、4−フェノチアジニル)等があげられる。
【0100】
本発明において、「シクロアルキル」は、例えば、環状飽和炭化水素基であり、炭素数は、例えば、3〜15である。前記シクロアルキルは、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、橋かけ環式炭化水素基、スピロ炭化水素基等があげられ、好ましくは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、橋かけ環式炭化水素基等があげられる。
【0101】
本発明において、「橋かけ環式炭化水素基」は、例えば、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチルおよびビシクロ[3.2.1]オクチル、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプチル、ビシクロ[3.3.1]ノナン、1−アダマンチル、2−アダマンチル等があげられる。
【0102】
本発明において、「スピロ炭化水素基」は、例えば、スピロ[3.4]オクチル等があげられる。
【0103】
本発明において、「シクロアルケニル」は、例えば、環状の不飽和脂肪族炭化水素基を包み、炭素数は、例えば、3〜7個である。前記シクロアルケニルは、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル等があげられ、好ましくは、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等である。前記シクロアルケニルは、例えば、環中に不飽和結合を有する橋かけ環式炭化水素基およびスピロ炭化水素基も含む。
【0104】
本発明において、「アリールアルキル」は、例えば、ベンジル、2−フェネチル、およびナフタレニルメチル等があげられ、「シクロアルキルアルキル」または「シクリルアルキル」は、例えば、シクロヘキシルメチル、アダマンチルメチル等があげられ、「ヒドロキシアルキル」は、例えば、ヒドロキシメチルおよび2−ヒドロキシエチル等があげられる。
【0105】
本発明において、「アルコキシ」は、例えば、前記アルキル−O−基を含み、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、およびn−ブトキシ等があげられ、「アルコキシアルキル」は、例えば、メトキシメチル等があげられ、「アミノアルキル」は、例えば、2−アミノエチル等があげられる。
【0106】
本発明において、「ヘテロシクリル」は、例えば、1−ピロリニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、ピロリジノン、1−イミダゾリニル、2−イミダゾリニル、4−イミダゾリニル、1−イミダゾリジニル、2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、イミダゾリジノン、1−ピラゾリニル、3−ピラゾリニル、4−ピラゾリニル、1−ピラゾリジニル、3−ピラゾリジニル、4−ピラゾリジニル、ピペリジノン、ピペリジノ、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニル、ピペラジノン、2−モルホリニル、3−モルホリニル、モルホリノ、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル等があげられる。
【0107】
本発明において、「ヘテロシクリルアルキル」は、例えば、ピペリジニルメチル、ピペラジニルメチル等があげられ、「ヘテロシクリルアルケニル」は、例えば、2−ピペリジニルエテニル等があげられ、「ヘテロアリールアルキル」は、例えば、ピリジルメチルおよびキノリン−3−イルメチル等があげられる。
【0108】
本発明において、「シリル」は、化学式R
3Si−で表される基を含み、Rは、独立して、前記アルキル、アリールおよびシクロアルキルから選択でき、例えば、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等があげられ、「シリルオキシ」は、例えば、トリメチルシリルオキシ基等があげられ、「シリルオキシアルキル」は、例えば、トリメチルシリルオキシメチル等があげられる。
【0109】
本発明において、「アルキレン」は、例えば、メチレン、エチレン、およびプロピレン等があげられる。
【0110】
本発明において、前述した各種基は、置換されてもよい。前記置換基は、例えば、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホ、ハロゲン、ハロゲン化アルキル(ハロアルキル、例:CF
3、CH
2CF
3、CH
2CCl
3)、ニトロ、ニトロソ、シアノ、アルキル(例:メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル)、アルケニル(例:ビニル)、アルキニル(例:エチニル)、シクロアルキル(例:シクロプロピル、アダマンチル)、シクロアルキルアルキル(例:シクロヘキシルメチル、アダマンチルメチル)、シクロアルケニル(例:シクロプロペニル)、シクリルアルキル、ヒドロキシアルキル(例:ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル)、アルコキシアルキル(例:メトキシメチル、エトキシメチル、エトキシエチル)、アリール(例:フェニル、ナフチル)、アリールアルキル(例:ベンジル、フェネチル)、アルキルアリール(例、p−メチルフェニル)、ヘテロアリール(例:ピリジル、フリル)、ヘテロアリールアルキル(例:ピリジルメチル)、ヘテロシクリル(例:ピペリジル)、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキル(例:モルホリルメチル)、アルコキシ(例:メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ)、ハロゲン化アルコキシ(例:OCF
3)、アルケニルオキシ(例:ビニルオキシ、アリルオキシ)、アリールオキシ(例:フェニルオキシ)、アルキルオキシカルボニル(例:メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル)、アリールアルキルオキシ(例:ベンジルオキシ)、アミノ[アルキルアミノ(例:メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ)、アシルアミノ(例:アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、アリールアルキルアミノ(例:ベンジルアミノ、トリチルアミノ)、ヒドロキシアミノ]、アミノアルキル(例:アミノメチル)、アルキルアミノアルキル(例:ジエチルアミノメチル)、カルバモイル、スルファモイル、オキソ、シリル、シリルオキシアルキル等があげられる。
【0111】
本発明の人工マッチ型miRNAは、例えば、標識物質を含み、前記標識物質で標識化されてもよい。前記標識物質は、特に制限されず、例えば、蛍光物質、色素、同位体等があげられる。前記標識物質は、例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3色素、Cy5色素等の蛍光団があげられ、前記色素は、例えば、Alexa488等のAlexa色素等があげられる。前記同位体は、例えば、安定同位体および放射性同位体があげられ、好ましくは安定同位体である。また、前記安定同位体は、例えば、標識した化合物の物性変化がなく、トレーサーとしての性質にも優れる。前記安定同位体は、特に制限されず、例えば、
2H、
13C、
15N、
17O、
18O、
33S、
34Sおよび
36Sがあげられる。
【0112】
本発明の人工マッチ型miRNAは、前述のように、前記標的遺伝子の発現抑制ができる。このため、本発明の人工マッチ型miRNAは、例えば、遺伝子が原因となる疾患の治療剤として使用できる。本発明の人工マッチ型miRNAが、例えば、前記疾患に関与する遺伝子の発現を抑制する成熟miRNAのガイド鎖配列を有する場合、例えば、前記標的遺伝子の発現抑制により、前記疾患を治療できる。本発明において、「治療」は、例えば、前記疾患の予防、疾患の改善、予後の改善の意味を含み、いずれでもよい。前記疾患は、特に制限されず、例えば、目的の疾患に応じて前記発現抑制配列を適宜設定できる。前記疾患としては、例えば、乳がん、肺がん、胃がん、大腸がん、肝がん、膵がん、食道がん、前立腺がん、胆嚢がん、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん、骨肉腫、白血病等のがん、肺線維症、肝線維症等の疾患があげられる。
【0113】
本発明の人工マッチ型miRNAの使用方法は、特に制限されず、例えば、前記標的遺伝子を有する投与対象に、前記人工マッチ型miRNAを投与すればよい。
【0114】
前記投与対象は、例えば、細胞、組織または器官があげられる。前記投与対象は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト哺乳類等の非ヒト動物があげられる。前記投与は、例えば、
in vivoでも
in vitroでもよい。前記細胞は、特に制限されず、例えば、HeLa細胞、293細胞、NIH3T3細胞、COS細胞等の各種培養細胞、ES細胞、造血幹細胞等の幹細胞、初代培養細胞等の生体から単離した細胞等があげられる。
【0115】
本発明において、発現抑制の対象となる前記標的遺伝子は、特に制限されず、所望の遺伝子を設定できる。そして、前述のように、前記標的遺伝子の種類に応じて、前記成熟miRNAを選択すればよい。
【0116】
本発明の人工マッチ型miRNAの使用に関しては、後述する本発明の組成物、発現抑制方法および治療方法等の記載を参照できる。
【0117】
本発明の人工マッチ型miRNAは、前述のように、標的遺伝子の発現を抑制可能であることから、例えば、医薬品、診断薬および農薬、ならびに、農学、医学、生命科学等の研究ツールとして有用である。
【0118】
本発明の人工マッチ型miRNAの合成方法は、特に制限されず、従来公知の核酸の製造方法が採用できる。前記合成方法は、例えば、遺伝子工学的手法による合成法、化学合成法等があげられる。遺伝子工学的手法は、例えば、インビトロ転写合成法、ベクターを用いる方法、PCRカセットによる方法があげられる。前記ベクターは、特に制限されず、プラスミド等の非ウイルスベクター、ウイルスベクター等があげられる。前記化学合成法は、特に制限されず、例えば、ホスホロアミダイト法およびH−ホスホネート法等があげられる。前記化学合成法は、例えば、市販の自動核酸合成機を使用可能である。前記化学合成法は、一般に、アミダイトが使用される。前記アミダイトは、特に制限されず、市販のアミダイトとして、例えば、RNA Phosphoramidites(2’−O−TBDMSi、商品名、三千里製薬)、ACEアミダイトおよびTOMアミダイト、CEEアミダイト、CEMアミダイト、TEMアミダイト等があげられる。
【0119】
(2)組成物
本発明の発現抑制用組成物は、前述のように、標的遺伝子の発現を抑制するための組成物であって、前記本発明の人工マッチ型miRNAを含むことを特徴とする。本発明の組成物は、前記本発明の人工マッチ型miRNAを含むことが特徴であり、その他の構成は、何ら制限されない。本発明の発現抑制用組成物は、例えば、発現抑制用試薬ということもできる。
【0120】
本発明によれば、例えば、前記標的遺伝子が存在する対象に投与することで、前記標的遺伝子の発現抑制を行うことができる。
【0121】
また、本発明の薬学的組成物は、前述のように、前記本発明の人工マッチ型miRNAを含むことを特徴とする。本発明の組成物は、前記本発明の人工マッチ型miRNAを含むことが特徴であり、その他の構成は何ら制限されない。本発明の薬学的組成物は、例えば、医薬品ということもできる。
【0122】
本発明によれば、例えば、遺伝子が原因となる疾患の患者に投与することで、前記遺伝子の発現を抑制し、前記疾患を治療することができる。本発明において、「治療」は、前述のように、例えば、前記疾患の予防、疾患の改善、予後の改善の意味を含み、いずれでもよい。
【0123】
本発明において、治療の対象となる疾患は、特に制限されず、例えば、遺伝子の発現が原因となる疾患があげられる。前記疾患の種類に応じて、その疾患の原因となる遺伝子を前記標的遺伝子に設定し、さらに、前記標的遺伝子に応じて、前記成熟miRNAのガイド鎖配列を選択すればよい。
【0124】
本発明の発現抑制用組成物および薬学的組成物(以下、組成物という)は、その使用方法は、特に制限されず、例えば、前記標的遺伝子を有する投与対象に、前記人工マッチ型miRNAを投与すればよい。
【0125】
前記投与対象は、例えば、細胞、組織または器官があげられる。前記投与対象は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト哺乳類等の非ヒト動物があげられる。前記投与は、例えば、
in vivoでも
in vitroでもよい。前記細胞は、特に制限されず、例えば、HeLa細胞、293細胞、NIH3T3細胞、COS細胞等の各種培養細胞、ES細胞、造血幹細胞等の幹細胞、初代培養細胞等の生体から単離した細胞等があげられる。
【0126】
前記投与方法は、特に制限されず、例えば、投与対象に応じて適宜決定できる。前記投与対象が培養細胞の場合、例えば、トランスフェクション試薬を使用する方法、エレクトロポレーション法等があげられる。
【0127】
本発明の組成物は、例えば、本発明の人工マッチ型miRNAのみを含んでもよいし、さらにその他の添加物を含んでもよい。前記添加物は、特に制限されず、例えば、薬学的に許容された添加物が好ましい。前記添加物の種類は、特に制限されず、例えば、投与対象の種類に応じて適宜選択できる。
【0128】
本発明の組成物において、前記人工マッチ型miRNAは、例えば、前記添加物と複合体を形成してもよい。前記添加物は、例えば、複合化剤ということもできる。前記複合体形成により、例えば、前記人工マッチ型miRNAを効率よくデリバリーすることができる。
【0129】
前記複合化剤は、特に制限されず、ポリマー、シクロデキストリン、アダマンチン等があげられる。前記シクロデキストリンは、例えば、線状シクロデキストリンコポリマー、線状酸化シクロデキストリンコポリマー等があげられる。
【0130】
前記添加剤は、この他に、例えば、担体、標的細胞への結合物質、縮合剤、融合剤、賦形剤等があげられる。
【0131】
(3)発現抑制方法
本発明の発現抑制方法は、前述のように、標的遺伝子の発現を抑制する方法であって、前記本発明の人工マッチ型miRNAを使用することを特徴とする。本発明の発現抑制方法は、前記本発明の人工マッチ型miRNAを使用することが特徴であって、その他の工程および条件は、何ら制限されない。
【0132】
本発明の発現抑制方法において、前記標的遺伝子の発現抑制のメカニズムは、特に制限されず、例えば、成熟miRNAによる発現抑制があげられる。
【0133】
本発明の発現抑制方法は、例えば、前記標的遺伝子が存在する対象に、前記人工マッチ型miRNAを投与する工程を含む。前記投与工程により、例えば、前記投与対象に前記人工マッチ型miRNAを接触させる。前記投与対象は、例えば、細胞、組織または器官があげられる。前記投与対象は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト哺乳類等の非ヒト動物があげられる。前記投与は、例えば、
in vivoでも
in vitroでもよい。
【0134】
本発明の発現抑制方法は、例えば、前記人工マッチ型miRNAを単独で投与してもよいし、前記人工マッチ型miRNAを含む前記本発明の組成物を投与してもよい。前記投与方法は、特に制限されず、例えば、投与対象の種類に応じて適宜選択できる。
【0135】
(4)治療方法
本発明の疾患の治療方法は、前述のように、前記本発明の人工マッチ型miRNAを、患者に投与する工程を含み、前記人工マッチ型miRNAにおける前記ガイド鎖配列が、前記疾患に関与する遺伝子の発現を抑制する成熟miRNAのガイド鎖配列であることを特徴とする。本発明の治療方法は、前記本発明の人工マッチ型miRNAを使用することが特徴であって、その他の工程および条件は、何ら制限されない。
【0136】
本発明の治療方法は、例えば、前記本発明の発現抑制方法等を援用できる。前記投与方法は、特に制限されず、例えば、経口投与および非経口投与のいずれでもよい。
【0137】
(5)人工マッチ型miRNAの使用
本発明の使用は、前記標的遺伝子の発現抑制のための、前記本発明の人工マッチ型miRNAの使用である。
【0138】
本発明の一本鎖核酸は、疾患の治療に使用するための一本鎖核酸であって、前記一本鎖核酸は、前記本発明の人工マッチ型miRNAであり、前記人工マッチ型miRNAにおける前記ガイド鎖配列が、前記疾患に関与する遺伝子の発現を抑制する成熟miRNAのガイド鎖配列であることを特徴とする。
【0139】
以下、実施例等により、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0140】
(実施例1)
成熟miR−34aのガイド鎖に基づいて、本発明の人工マッチ型miRNAを合成し、H1299細胞の増殖の抑制を確認した。
【0141】
(1)miRNAの合成
ポジティブコントロールのmiRNAとして、以下に示すガイド鎖(配列番号1)およびパッセンジャー鎖(配列番号6)からなるヒト成熟miR−34aを合成した。また、ネガティブコントロールとして、前記ガイド鎖の塩基組成をスクランブルにしたガイド鎖スクランブル(配列番号7)とそれに対するパッセンジャー鎖(配列番号8)とからなる成熟miR−34aスクランブルを合成した。
【0142】
実施例の人工マッチ型miRNAとして、前記ガイド鎖(配列番号1)と付加配列とからなるX領域と、前記X領域に完全に相補的な配列とオーバーハングとからなるY領域とが、下記式のプロリン誘導体の非ヌクレオチド構造(配列において[P]で表す)を介して連結しているマッチ型miR−34aを合成した。下記配列において、下線部が、前記ガイド鎖に対応する。前記マッチ型miRNAにおける前記非ヌクレオチド構造は、下記式で表され、前記マッチ型miRNAの合成において、L−プロリンジアミドアミダイト(WO2012/017919参照)を使用することにより導入した。また、人工マッチ型miRNAに対するネガティブコントロールとして、前記ガイド鎖の塩基組成をスクランブルにしたガイド鎖とそれに対応するパッセンジャー鎖とからなるマッチ型miR−34aスクランブルを合成した。
【0143】
【化16】
【0144】
これらのmiRNAの配列および構造を、以下に示す。下記において、下線部で示す配列が、ガイド鎖に相当する。
成熟miR−34a
ガイド鎖(配列番号1)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGU-3’
パッセンジャー鎖(配列番号6)
5’-CAAUCAGCAAGUAUACUGCCCU-3’
成熟miR−34aスクランブル
ガイド鎖(配列番号7)
5’-
UGUAUCGUUAUCGGGUCGGUUG-3’
パッセンジャー鎖(配列番号8)
5’-CAACCGACCCGAUAACGAUACA-3’
マッチ型miR−34a(配列番号9)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGUUCC-[P]-GGAACAACCAGCUAAGACACUGCCAUA-3’
マッチ型miR−34aスクランブル(配列番号10)
5’-
UGUAUCGUUAUCGGGUCGGUUGUCC-[P]-GGACAACCGACCCGAUAACGAUACAUA-3’
【0145】
【化17】
【0146】
(2)肺がん由来細胞に対する人工マッチ型miRNAの影響
前記人工マッチ型miRNAを、ヒト非小細胞性肺がん細胞株(NCI−H1299)に導入し、前記細胞への影響を確認した。
【0147】
(2−1)トランスフェクション
前記miRNAを、注射用蒸留水(大塚製薬、以下同様)で溶解し、100μmol/LのmiRNA溶液を調製した。培地は、10%FBSを含むRPMI−1640(Invitrogen)を使用し、培養条件は、37℃、5%CO
2下とした。
【0148】
まず、細胞を、前記培地中で培養し、その培養液を、24穴プレートに、500μLずつ、1×10
4細胞/ウェルとなるように分注した。さらに、前記ウェル中の細胞を24時間培養した後、前記miRNAをトランスフェクション試薬RNAi MAX Transfection Reagent(商品名、Life Technologies社)を用い、添付プロトコールに従って、トランスフェクションした。トランスフェクションは、前記ウェルあたりの組成を以下のように設定した。下記組成において、(B)は、Opti−MEM(商品名、Invitrogen)であり、(C)は、前記RNA溶液であり、両者をあわせて49μL添加した。なお、前記ウェルにおいて、前記miRNAの最終濃度は、100nmol/Lとした。トランスフェクション後、前記ウェル中の細胞を3日間培養した。そして、前記3日間の培養後、培養細胞について、以下に示す確認を行った。
【0149】
【表1】
【0150】
(2−2)細胞数のカウント
培養後の培養細胞について、ウェルあたりの細胞数をカウントした。この結果を、
図2に示す。
図2は、ウェルあたりの細胞数を示すグラフである。
図2において、「Normal」は、未処理の細胞、「Mock」は、トランスフェクション試薬のみを導入した細胞、「Scramble」は、ネガティブコントロールのmiR−34aスクランブル、「miR-34a」は、ポジティブコントロールの成熟miR−34a、「Scramble match」は、ネガティブコントロールのマッチ型miR−34aスクランブル、「miR-34a match」は、実施例のマッチ型miR−34aの結果を示す(以下、同様)。
図2に示すように、実施例のマッチ型miR−34aは、ポジティブコントロールの成熟miR−34aと同程度に、細胞数を減少できた。
【0151】
(2−3)MTTアッセイ
培養後の培養細胞について、市販の試薬キット(商品名 Cell Count Reagent SF、ナカライテスク社)を用いてMTTアッセイを行い、細胞増殖を評価した。細胞増殖の評価は、Normal(無処置)の結果を1として、相対値により表した。この結果を、
図3に示す。
図3は、細胞増殖の相対値を示すグラフである。
図3に示すように、実施例のマッチ型miR−34aは、ポジティブコントロールの成熟miR−34aと同程度に、細胞数を減少できた。
【0152】
(2−4)アポトーシス
培養後の培養細胞について、市販の試薬キット(商品名Annexin V:PE Apoptosis Detection Kit、BD Biosciences社)を用いてアポトーシスの検出を行った。この結果を、
図4に示す。
図4は、早期アポトーシス(%)と後期アポトーシス(%)とを示すグラフである。
図4に示すように、実施例のマッチ型miR−34aは、ポジティブコントロールの成熟miR−34aと同程度に、アポトーシスを亢進できた。
【0153】
(2−5)mRNAの発現抑制
培養後の培養細胞について、ISOGEN reagent(商品名、ニッポンジーン)を用い、添付のプロトコールに従って、RNAを回収した。
【0154】
次に、逆転写酵素(商品名M−MLV reverse transcriptase、Invitrogen)を用い、添付のプロトコールに従って、前記RNAからcDNAを合成した。そして、合成した前記cDNAを鋳型として定量PCRを行い、AXL cDNAの量およびMET cDNAの量を測定した。また、GAPDH cDNAを内部コントロールとし、そのcDNAの量をあわせて測定した。
【0155】
前記定量PCRは、試薬として、FastStart Universal SYBR Green Master(商品名、Roche)、サーモサイクラーとしてMX3000P(商品名、Stratagene)、解析機器としてMxPro(商品名、Stratagene)を用いた(以下、同様)。前記AXL cDNA、前記MET cDNAおよび前記GAPDH cDNAの増幅には、それぞれ、下記プライマーセットを使用した。反応液の全量は25μLとして、それぞれ3回測定した。
【0156】
AXL プライマーセット
5’-CTCAACCAGGACGACTCCAT-3’ (配列番号11)
5’-AGACCGCTTCACTCAGGAAA-3’ (配列番号12)
MET プライマーセット
5’-CAGGCAGTGCAGCATGTAGT-3’ (配列番号13)
5’-TGTCCAACAAAGTCCCATGA-3’ (配列番号14)
GAPDH プライマーセット
5’-ATGGGGAAGGTGAAGGTCG-3’ (配列番号15)
5’-GGGTCATTGATGGCAACAATATC-3’ (配列番号16)
【0157】
そして、miRNA未添加のコントールにおけるAXL mRNAまたはMET mRNAを1とした場合における、各トランスフェクション細胞でのAXL mRNAおよびMET mRNAの相対値を算出した。これらの結果を、
図5に示す。
図5(A)は、AXL mRNAの結果、
図5(B)は、MET mRNAの結果である。
【0158】
図5に示すように、実施例のマッチ型miR−34aは、ポジティブコントロールの成熟miR−34aと同程度に、AXL mRNAの量およびMET mRNAの量が減少した。このため、前記人工マッチ型miRNAにより、AXL mRNAおよびMET mRNAがそれぞれコードするタンパク質の翻訳も、抑制されているといえる。
【0159】
これらの結果から、実施例のマッチ型miR−34aは、AXL mRNAおよびMET mRNA等の発現を抑制し、H1299細胞の増殖の抑制およびアポトーシスの亢進を可能とすることがわかった。
【0160】
前記人工マッチ型miRNAは、二本鎖の成熟miR−34aとは異なり、一本鎖の核酸分子であるため、使用時に各一本鎖をアニーリングする必要がなく、また、自然免疫に関与するTLR3等に認識されることも回避できる。
【0161】
(実施例2)
実施例1のマッチ型miR−34aについて、X領域の付加配列およびY領域のオーバーハングの短縮化を行った。
【0162】
(1)miRNAの合成
以下に示すように、マッチ型miR−34aは、X領域の3’側に四角で囲んだ3塩基長の付加配列(J)を有し、Y領域の5’側に四角で囲んだ2塩基長のオーバーハング(O)を有している。そこで、前記付加配列を3’側から1塩基ずつ欠失させ且つそれに対応するY領域側の配列を5’側から1塩基ずつ欠失させた分子、オーバーハングを3’側から1塩基ずつ欠失させた分子、および、前記付加配列とオーバーハングとを1塩基ずつ欠失させた分子を合成し、前記実施例1と同様にして、AXL mRNAおよびMET mRNAの発現抑制を確認した。下記配列において、[P]の5’側領域がX領域であり、前記X領域において、下線部は前記ガイド鎖配列であり、その他が、前記付加配列であり、[P]の3’側領域がY領域であり、前記Y領域において、四角で囲んだ領域がオーバーハングである。
【0163】
【化18】
【0164】
【化19】
【0165】
これらの結果を、
図6および
図7に示す。
図6は、AXL mRNAの結果であり、
図7は、MET mRNAの結果である。
図6および
図7に示すように、前記X領域における付加配列および前記Y領域におけるオーバーハングを短縮させても、発現抑制の効果は維持された。
【0166】
(実施例3)
マッチ型miR−34aについて、リンカーの非ヌクレオチド構造の改変およびX領域の付加配列の増減を行い、AXL mRNAおよびMET RNAの発現抑制効果を調べた。
【0167】
(1)miRNAの合成
以下に示すように、実施例1のマッチ型miR−34aから、オーバーハング部分の塩基配列を改変したマッチ型miR−34a(PH−0039)を合成した。さらに、PH−0039の付加配列およびそれに対応するY領域側の配列を欠失させた分子(PH−0037)、付加配列およびそれに対応するY領域側の配列を5塩基長に延長した分子(PH−0093)を合成した。
また、PH−0037、PH−0039およびPH−0093のリンカー領域を、下記式のテレフタル酸誘導体の非ヌクレオチド構造(配列において[TP]で表す)にそれぞれ置換した分子(XH−0016、XH−0025およびXH−0027)を合成した。該非ヌクレオチド構造は、テレフタル酸アミダイト(WO2013/133221参照)を使用することにより導入した。
【0168】
【化20】
【0169】
さらに、PH−0037およびPH−0039のリンカー領域を、下記式のグリシン誘導体の非ヌクレオチド構造(配列において[Gly]で表す)にそれぞれ置換した分子(XH−0012およびXH−0028)、
【0170】
【化21】
【0171】
PH−0037およびPH−0039のリンカー領域を、下記式のグリシルグリシン誘導体の非ヌクレオチド構造(配列において[GlyGly]で表す)にそれぞれ置換した分子(XH−0014およびXH−0029)、
【0172】
【化22】
【0173】
前記化学式(G2)中のGlyGlyは、下記化学式(GlyGly)で表される原子団であり、ただし、下記化学式(GlyGly)中の末端のカルボニル炭素は、上記化学式(G2)中のN原子に結合しており、下記化学式(GlyGly)中の末端の窒素原子は、上記化学式(G2)のカルボニル炭素に結合している。
【0174】
【化23】
【0175】
並びに、PH−0037およびPH−0039のリンカー領域を、下記式のリシン誘導体の非ヌクレオチド構造(配列において[K]で表す)にそれぞれ置換した分子(KH−0007およびKH−0011)を合成した。
【0176】
【化24】
【0177】
前記グリシン誘導体の非ヌクレオチド構造は、グリシンアミドアミダイト(WO2013/103146参照)を、前記グリシルグリシン誘導体の非ヌクレオチド構造は、グリシルグリシンアミドアミダイト(WO2013/133221参照)を、リシン誘導体の非ヌクレオチド構造は、L−リシンアミドアミダイト(WO2013/103146参照)を、それぞれ使用することにより導入した。
【0178】
【化25】
【0179】
下記配列において、各リンカーの5’側領域がX領域であり、前記X領域において、下線部は前記ガイド鎖配列であり、その他が、前記付加配列であり、各リンカーの3’側領域がY領域である。
PH−0037(配列番号28)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGU-[P]-ACAACCAGCUAAGACACUGCCACU-3’
PH−0039(配列番号29)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGUUCC-[P]-GGAACAACCAGCUAAGACACUGCCACU-3’
PH−0093(配列番号30)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGUUCCGG-[P]-CCGGAACAACCAGCUAAGACACUGCCACU-3’
XH−0016(配列番号28)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGU-[TP]-ACAACCAGCUAAGACACUGCCACU-3’
XH−0025(配列番号29)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGUUCC-[TP]-GGAACAACCAGCUAAGACACUGCCACU-3’
XH−0027(配列番号30)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGUUCCGG-[TP]-CCGGAACAACCAGCUAAGACACUGCCACU-3’
XH−0012(配列番号28)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGU-[Gly]-ACAACCAGCUAAGACACUGCCACU-3’
XH−0028(配列番号29)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGUUCC-[Gly]-GGAACAACCAGCUAAGACACUGCCACU-3’
XH−0014(配列番号28)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGU-[GlyGly]-ACAACCAGCUAAGACACUGCCACU-3’
XH−0029(配列番号29)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGUUCC-[GlyGly]-GGAACAACCAGCUAAGACACUGCCACU-3’
KH−0007(配列番号28)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGU-[K]-ACAACCAGCUAAGACACUGCCACU-3’
KH−0011(配列番号29)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGUUCC-[K]-GGAACAACCAGCUAAGACACUGCCACU-3’
また、ネガティブコントロールとして、核酸データベース上で登録されているすべての配列に相補性を有さない配列からなるガイド鎖とそれに対応するパッセンジャー鎖とからなるマッチ型miRNA(PH−0000)を合成した。
PH−0000(配列番号31)
5’-
UACUAUUCGACACGCGAAGUUCC-[P]-GGAACUUCGCGUGUCGAAUAGUAUU-3’
ポジティブコントロールとして、成熟miR−34aのガイド鎖とパッセンジャー鎖を天然型pre−miRNAのループ部分でつないだ分子(NM−0004)および成熟miRNAのガイド鎖とそれに完全相補的な配列とをアニーリングさせた二本鎖マッチ型RNA(NI−0209)を合成した。
【0180】
【化26】
【0181】
NM−0004(配列番号32)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGUUGUGAGCAAUAGUAAGGAAGCAAUCAGCAAGUAUACUGCCCU-3’
NI−0209
ガイド鎖(配列番号1)/パッセンジャー鎖(配列番号33)
5’-UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGU-3’/5’-AACCAGCUAAGACACUGCCACU-3’
【0182】
(2)AXL遺伝子の発現量の測定
前記各RNAを、4μmol/Lとなるように、注射用蒸留水(大塚製薬)に溶解し、RNA溶液を調製した。
【0183】
細胞は、H1299細胞(ATCC)を使用した。培地は、10%FBSを含むRPMIMedium 1640(Life Technologies)を使用した。培養条件は、37℃、5%CO
2下とした。
【0184】
まず、細胞を、前記培地中で培養し、その培養液を、24穴プレートに、400μLずつ、4×10
4細胞/ウェルとなるように分注した。さらに、前記RNAをトランスフェクション試薬Lipofectamine RNAiMAX(Life Technologies)を用い、前記トランスフェクション試薬の添付プロトコールに従って、トランスフェクションした。具体的には、前記ウェルあたりの組成を以下のように設定し、トランスフェクションを行った。下記組成において、(B)は、Opti−MEM(Life Technologies)、(C)は、4μmol/L 前記RNA溶液であり、両者をあわせて98.5μL添加した。なお、前記ウェルにおいて、前記RNAの最終濃度は、2nmol/Lとした。
【0185】
【表2】
【0186】
トランスフェクション後、前記ウェル中の細胞を24時間培養した後、RNeasy Mini Kit(Qiagen、オランダ)を用い、添付のプロトコールに従って、RNAを回収した。次に、トランスクリプターファーストストランドcDNA合成キット(Roche)を用い、添付のプロトコールに従って、前記RNAからcDNAを合成した。そして、以下に示すように、合成した前記cDNAを鋳型としてPCRを行い、AXLおよびMET遺伝子の発現量および内部標準であるGAPDH遺伝子の発現量を測定した。前記AXLおよびMET遺伝子の発現量は、前記GAPDH遺伝子の発現量により補正した。
【0187】
前記PCRは、試薬としてLightCycler 480 SYBR Green I Master(商品名、Roche)、機器としてLightCycler 480 Instrument II(商品名、Roche)を用いた(以下、同様)。前記AXL、METおよびGAPDH遺伝子の増幅には、それぞれ、以下のプライマーセットを使用した。
AXL遺伝子用PCRプライマーセット
(配列番号11) 5’-CTCAACCAGGACGACTCCAT-3’
(配列番号12) 5’-AGACCGCTTCACTCAGGAAA-3’
MET遺伝子用PCRプライマーセット
(配列番号13) 5’-CAGGCAGTGCAGCATGTAGT-3’
(配列番号14) 5’-TGTCCAACAAAGTCCCATGA-3’
GAPDH遺伝子用プライマーセット
(配列番号15) 5’-ATGGGGAAGGTGAAGGTCG-3’
(配列番号16) 5’-GGGTCATTGATGGCAACAATATC-3’
【0188】
なお、コントロール1として、前記培養液に前記(B)液100μLのみを添加した細胞についても、遺伝子発現量を測定した(−)。また、コントロール2として、トランスフェクションにおいて、前記RNA溶液を未添加とし、前記(A)1.5μLと前記(B)とを合計100μL添加した以外は、同様にして処理した細胞についても、遺伝子発現量を測定した(mock)。
【0189】
補正後のAXLおよびMET遺伝子の発現量について、コントロール(mock)の細胞における発現量を1として、各RNAを導入した細胞での発現量の相対値を求めた。
【0190】
(3)結果
図8および9に示すように、リンカー領域の非ヌクレオチド構造を改変しても、また、X領域の付加配列を欠失もしくは延長しても、AXL mRNAおよびMET RNAの発現抑制効果は維持された。
【0191】
(実施例4)
成熟let−7aのガイド鎖に基づいて、種々の本発明の人工マッチ型miRNAを合成し、標的遺伝子であるHMGA2 mRNAの発現抑制効果を調べた。
【0192】
(1)miRNAの合成
ポジティブコントロールとして、成熟let−7aのガイド鎖(配列番号2)とパッセンジャー鎖(配列番号34)を天然型pre−let−7aのループ部分でつないだ分子(NM−0003)および成熟let−7aのガイド鎖とそれに完全相補的な配列とをアニーリングさせた二本鎖マッチ型RNA(NI−0207)を合成した。
【0193】
【化26】
【0194】
下記配列において、下線部は前記ガイド鎖配列を示す。
NM−0003(配列番号35)
5’-
UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUUUUAGGGUCACACCCACCACUGGGAGAUAACUAUACAAUCUACUGUCUUUC-3’
NI−0207
ガイド鎖(配列番号2)/パッセンジャー鎖(配列番号34)
5’-
UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUU-3’/5’-CUAUACAACCUACUACCUCAUC-3’
【0195】
以下に示すように、成熟let−7aのガイド鎖配列およびその3’側の付加配列(0、3または5塩基長)からなるX領域と、該X領域に完全相補的で、かつ5’側に2塩基長のオーバーハングを有するY領域との間に、実施例3と同様、プロリン誘導体([P])、テレフタル酸誘導体([TP])、グリシン誘導体([Gly])、グリシルグリシン誘導体([GlyGly])およびリシン誘導体([K])のリンカーを導入した、種々の人工マッチ型let−7aを合成した。
【0196】
【化27】
【0197】
下記配列において、各リンカーの5’側領域がX領域であり、前記X領域において、下線部は前記ガイド鎖配列であり、その他が、前記付加配列であり、各リンカーの3’側領域がY領域である。
PH−0013(配列番号36)
5’-
UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUU-[P]-AACUAUACAACCUACUACCUCAUC-3’
PH−0015(配列番号37)
5’-
UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUUUCC-[P]-GGAAACUAUACAACCUACUACCUCAUC-3’
PH−0094(配列番号38)
5’-
UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUUUCCGG-[P]-CCGGAAACUAUACAACCUACUACCUCAUC-3’
XH−0010(配列番号36)
5’-
UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUU-[TP]-AACUAUACAACCUACUACCUCAUC-3’
XH−0030(配列番号37)
5’-
UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUUUCC-[TP]-GGAAACUAUACAACCUACUACCUCAUC-3’
XH−0031(配列番号38)
5’-
UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUUUCCGG-[TP]-CCGGAAACUAUACAACCUACUACCUCAUC-3’
XH−0008(配列番号36)
5’-
UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUU-[Gly]-AACUAUACAACCUACUACCUCAUC-3’
XH−0032(配列番号37)
5’-
UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUUUCC-[Gly]-GGAAACUAUACAACCUACUACCUCAUC-3’
XH−0009(配列番号36)
5’-
UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUU-[GlyGly]-AACUAUACAACCUACUACCUCAUC-3’
XH−0033(配列番号37)
5’-
UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUUUCC-[GlyGly]-GGAAACUAUACAACCUACUACCUCAUC-3’
KH−0005(配列番号36)
5’-
UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUU-[K]-AACUAUACAACCUACUACCUCAUC-3’
KH−0012(配列番号37)
5’-
UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUUUCC-[K]-GGAAACUAUACAACCUACUACCUCAUC-3’
また、ネガティブコントロールとして、実施例3で合成したPH−0000を使用した。
【0198】
(2)HMGA2遺伝子の発現量の測定
前記各RNAを、0.4μmol/Lとなるように、注射用蒸留水(大塚製薬)に溶解し、RNA溶液を調製した。
【0199】
細胞は、A549細胞(DSファーマバイオメディカル)を使用した。培地は、10%FBSを含むDMEM(Life Technologies)を使用した。培養条件は、37℃、5%CO
2下とした。
【0200】
まず、細胞を、前記培地中で培養し、その培養液を、24穴プレートに、400μLずつ、4×10
4細胞/ウェルとなるように分注した。さらに、前記RNAをトランスフェクション試薬Lipofectamine RNAiMAX(Life Technologies)を用い、前記トランスフェクション試薬の添付プロトコールに従って、トランスフェクションした。具体的には、前記ウェルあたりの組成を以下のように設定し、トランスフェクションを行った。下記組成において、(B)は、Opti−MEM(Life Technologies)、(C)は、0.4μmol/L 前記RNA溶液であり、両者をあわせて98.5μL添加した。なお、前記ウェルにおいて、前記RNAの最終濃度は、0.2nmol/Lとした。
【0201】
【表3】
【0202】
トランスフェクション後、前記ウェル中の細胞を24時間培養した後、RNeasy Mini Kit(Qiagen、オランダ)を用い、添付のプロトコールに従って、RNAを回収した。次に、トランスクリプターファーストストランドcDNA合成キット(Roche)を用い、添付のプロトコールに従って、前記RNAからcDNAを合成した。そして、以下に示すように、合成した前記cDNAを鋳型としてPCRを行い、HMGA2遺伝子の発現量および内部標準であるGAPDH遺伝子の発現量を測定した。前記HMGA2遺伝子の発現量は、前記GAPDH遺伝子の発現量により補正した。
【0203】
前記PCRは、試薬としてLightCycler 480 SYBR Green I Master(商品名、Roche)、機器としてLightCycler 480 Instrument II(商品名、Roche)を用いた(以下、同様)。前記HMGA2遺伝子およびGAPDH遺伝子の増幅には、それぞれ、以下のプライマーセットを使用した。
HMGA2遺伝子用PCRプライマーセット
(配列番号39) 5’-GAAGCCACTGGAGAAAAACG-3’
(配列番号40) 5’-CTTCGGCAGACTCTTGTGAG-3’
GAPDH遺伝子用プライマーセット
(配列番号15) 5’-ATGGGGAAGGTGAAGGTCG-3’
(配列番号16) 5’-GGGTCATTGATGGCAACAATATC-3’
【0204】
なお、コントロール1として、前記培養液に前記(B)液100μLのみを添加した細胞についても、遺伝子発現量を測定した(−)。また、コントロール2として、トランスフェクションにおいて、前記RNA溶液を未添加とし、前記(A)1.5μLと前記(B)とを合計100μL添加した以外は、同様にして処理した細胞についても、遺伝子発現量を測定した(mock)。
【0205】
補正後のHMGA2遺伝子の発現量について、コントロール(mock)の細胞における発現量を1として、各RNAを導入した細胞での発現量の相対値を求めた。
【0206】
(3)結果
図10に示すように、実施例のマッチ型let−7aは、ポジティブコントロールの成熟let−7aや二本鎖マッチ型let−7aと同程度もしくはそれ以上に、HMGA2 mRNAの発現を抑制した。また、リンカー領域の非ヌクレオチド構造や、X領域の付加配列の塩基長を改変しても、HMGA2 mRNAの発現抑制効果は維持された。
【0207】
(実施例5)
成熟miR−29bのガイド鎖に基づいて、種々の本発明の人工マッチ型miRNAを合成し、標的遺伝子であるCOLA1 mRNAの発現抑制効果を調べた。
【0208】
(1)miRNAの合成
ポジティブコントロールとして、成熟miR−29bのガイド鎖(配列番号5)とパッセンジャー鎖(配列番号41)を天然型pre−miR−29bのループ部分でつないだ分子(NM−0005)および成熟miR−29bのガイド鎖とそれに完全相補的な配列とをアニーリングさせた二本鎖マッチ型RNA(NI−0211)を合成した。
【0209】
【化28】
【0210】
下記配列において、下線部は前記ガイド鎖配列を示す。
NM−0005(配列番号42)
5’-GCUGGUUUCAUAUGGUGGUUUAGAUUUAAAUAGUGAUUGUC
UAGCACCAUUUGAAAUCAGUGUU-3’
NI−0211
パッセンジャー鎖(配列番号41)/ガイド鎖(配列番号5)
5’-CACUGAUUUCAAAUGGUGCUAGA-3’/5’-
UAGCACCAUUUGAAAUCAGUGUU-3’
【0211】
以下に示すように、成熟miR−29bのガイド鎖配列およびその3’側の付加配列(0、3または5塩基長)からなるX領域と、該X領域に完全相補的で、かつ5’側に2塩基長のオーバーハングを有するY領域との間に、実施例3と同様、プロリン誘導体([P])、テレフタル酸誘導体([TP])、グリシン誘導体([Gly])、グリシルグリシン誘導体([GlyGly])およびリシン誘導体([K])のリンカーを導入した、種々の人工マッチ型miR−29bを合成した。
【0212】
【化29】
【0213】
下記配列において、各リンカーの5’側領域がX領域であり、前記X領域において、下線部は前記ガイド鎖配列であり、その他が、前記付加配列であり、各リンカーの3’側領域がY領域である。
PH−0071(配列番号43)
5’-
UAGCACCAUUUGAAAUCAGUGUU-[P]-AACACUGAUUUCAAAUGGUGCUAGA-3’
PH−0073(配列番号44)
5’-
UAGCACCAUUUGAAAUCAGUGUUUCC-[P]-GGAAACACUGAUUUCAAAUGGUGCUAGA-3’
PH−0095(配列番号45)
5’-
UAGCACCAUUUGAAAUCAGUGUUUCCGG-[P]-CCGGAAACACUGAUUUCAAAUGGUGCUAGA-3’
XH−0034(配列番号43)
5’-
UAGCACCAUUUGAAAUCAGUGUU-[TP]-AACACUGAUUUCAAAUGGUGCUAGA-3’
XH−0035(配列番号44)
5’-
UAGCACCAUUUGAAAUCAGUGUUUCC-[TP]-GGAAACACUGAUUUCAAAUGGUGCUAGA-3’
XH−0036(配列番号45)
5’-
UAGCACCAUUUGAAAUCAGUGUUUCCGG-[TP]-CCGGAAACACUGAUUUCAAAUGGUGCUAGA-3’
XH−0037(配列番号43)
5’-
UAGCACCAUUUGAAAUCAGUGUU-[Gly]-AACACUGAUUUCAAAUGGUGCUAGA-3’
XH−0038(配列番号44)
5’-
UAGCACCAUUUGAAAUCAGUGUUUCC-[Gly]-GGAAACACUGAUUUCAAAUGGUGCUAGA-3’
XH−0039(配列番号43)
5’-
UAGCACCAUUUGAAAUCAGUGUU-[GlyGly]-AACACUGAUUUCAAAUGGUGCUAGA-3’
XH−0040(配列番号44)
5’-
UAGCACCAUUUGAAAUCAGUGUUUCC-[GlyGly]-GGAAACACUGAUUUCAAAUGGUGCUAGA-3’
KH−0013(配列番号43)
5’-
UAGCACCAUUUGAAAUCAGUGUU-[K]-AACACUGAUUUCAAAUGGUGCUAGA-3’
KH−0014(配列番号44)
5’-
UAGCACCAUUUGAAAUCAGUGUUUCC-[K]-GGAAACACUGAUUUCAAAUGGUGCUAGA-3’
また、ネガティブコントロールとして、実施例3で合成したPH−0000を使用した。
【0214】
(2)COL1A1遺伝子の発現量の測定
前記各RNAを、1μmol/Lとなるように、注射用蒸留水(大塚製薬)に溶解し、RNA溶液を調製した。
【0215】
細胞は、A549細胞(DSファーマバイオメディカル)を使用した。培地は、10%FBSを含むDMEM(Life Technologies)を使用した。培養条件は、37℃、5%CO
2下とした。
【0216】
まず、細胞を、前記培地中で培養し、その培養液を、24穴プレートに、400μLずつ、4×10
4細胞/ウェルとなるように分注した。さらに、前記RNAをトランスフェクション試薬Lipofectamine RNAiMAX(Life Technologies)を用い、前記トランスフェクション試薬の添付プロトコールに従って、トランスフェクションした。具体的には、前記ウェルあたりの組成を以下のように設定し、トランスフェクションを行った。下記組成において、(B)は、Opti−MEM(Life Technologies)、(C)は、1μmol/L 前記RNA溶液であり、両者をあわせて98.5μL添加した。なお、前記ウェルにおいて、前記RNAの最終濃度は、0.5nmol/Lとした。
【0217】
【表4】
【0218】
トランスフェクション後、前記ウェル中の細胞を24時間培養した後、RNeasy Mini Kit(Qiagen、オランダ)を用い、添付のプロトコールに従って、RNAを回収した。次に、トランスクリプターファーストストランドcDNA合成キット(Roche)を用い、添付のプロトコールに従って、前記RNAからcDNAを合成した。そして、以下に示すように、合成した前記cDNAを鋳型としてPCRを行い、COL1A1遺伝子の発現量および内部標準であるGAPDH遺伝子の発現量を測定した。前記COL1A1遺伝子の発現量は、前記GAPDH遺伝子の発現量により補正した。
【0219】
前記PCRは、試薬としてLightCycler 480 SYBR Green I Master(商品名、Roche)、機器としてLightCycler 480 Instrument II(商品名、Roche)を用いた(以下、同様)。前記COL1A1遺伝子およびGAPDH遺伝子の増幅には、それぞれ、以下のプライマーセットを使用した。
COL1A1遺伝子用PCRプライマーセット
(配列番号46) 5’-CCCAAGGACAAGAGGCATGT-3’
(配列番号47) 5’-CCGCCATACTCGAACTGGAA-3’
GAPDH遺伝子用プライマーセット
(配列番号15) 5’-ATGGGGAAGGTGAAGGTCG-3’
(配列番号16) 5’-GGGTCATTGATGGCAACAATATC-3’
【0220】
なお、コントロール1として、前記培養液に前記(B)液100μLのみを添加した細胞についても、遺伝子発現量を測定した(−)。また、コントロール2として、トランスフェクションにおいて、前記RNA溶液を未添加とし、前記(A)1.5μLと前記(B)とを合計100μL添加した以外は、同様にして処理した細胞についても、遺伝子発現量を測定した(mock)。
【0221】
補正後のCOL1A1遺伝子の発現量について、コントロール(mock)の細胞における発現量を1として、各RNAを導入した細胞での発現量の相対値を求めた。
【0222】
(3)結果
図11に示すように、実施例のマッチ型miR−29bは、ポジティブコントロールの成熟miR−29bや二本鎖マッチ型miR−29bと同程度もしくはそれ以上に、COLA1 mRNAの発現を抑制した。また、リンカー領域の非ヌクレオチド構造や、X領域の付加配列の塩基長を改変しても、COLA1 mRNAの発現抑制効果は維持された。
【0223】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。 ここで述べられた特許および特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、ここに引用されたことによって、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
【0224】
本出願は、2013年12月27日付で日本国に出願された特願2013-273033を基礎としており、ここで言及することによりその内容は全て本明細書に包含される。