【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、環境省、セルロースナノファイバー(CNF)等の次世代素材活用推進事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記脱液部の上方には、前記脱液部に前記懸濁液が供給される位置よりも前記懸濁液供給部に対して前記透液性シートの第二端部側に離れた位置に上部脱液部が設けられており、
該上部脱液部は、
その下面と前記脱液面との間に懸濁液を挟むように設けられた上部透液性シートを備えており、
該上部透液性シートは、
前記透液性シートと同じ方向に移動するようになっている
ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の微細繊維脱液装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態の微細繊維脱液装置は、セルロースナノファイバーなどの微細なセルロースを含んだ懸濁液を脱液する装置であって、効率よく脱液できるようにしたことに特徴を有している。
【0014】
<懸濁液>
まず、本実施形態の微細繊維脱液装置1を説明する前に、本実施形態の微細繊維脱液装置1によって脱液される懸濁液について簡単に説明する。
本実施形態の微細繊維脱液装置1によって脱液される懸濁液は、ナノファイバー等の微細なセルロースなどの微細繊維(以下単に微細セルロースという場合がある)が液体に懸濁したスラリーなどである。この懸濁液を構成する液体は、水や、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール、アセトニトリル、ヘキサン等を挙げることができるが、上述したような微細セルロースを分散させることができるものであればよい。
【0015】
上述した微細セルロースは、繊維径が約3nm〜1000nm、繊維長が約500μm以下のものであり、セルロースナノファイバー(微細セルロース)も含まれている。セルロースナノファイバーは、一般的に、「直径(繊維幅)が3〜100nmであって、長さ(繊維長)が直径の100倍以上の繊維状物質」と定義されるものである。
【0016】
本実施形態の微細繊維脱液装置1によって脱液される懸濁液は、例えば、微細セルロースを製造する過程で生成された懸濁液や微細セルロースを水等に分散させたものであるが、微細セルロースを含有する液体であればとくに限定されない。
【0017】
例えば、微細セルロースを得る場合には、原料となる繊維を機械的処理や化学的処理によって微細化するが、この機械的処理や化学的処理の過程において得られる微細セルロースが水に分散した液体を、本実施形態の微細繊維脱液装置1によって脱液される懸濁液として使用できる。
【0018】
<本実施形態の微細繊維脱液装置1>
つぎに、図面に基づいて本発明の実施形態の微細繊維脱液装置1を説明する。
図1に示すように、本実施形態の微細繊維脱液装置1は、懸濁液Kを脱液する脱液部2と、脱液部2に懸濁液Kを供給する懸濁液供給部30と、脱液部2との間に懸濁液Kを挟む上部脱液部40と、を備えている。
【0019】
<脱液部2>
脱液部2は、脱液シート10と、この脱液シート10を駆動する駆動部20と備えており、脱液シート10と駆動部20によってコンベア状に形成されている。
【0020】
<脱液シート10>
脱液シート10は透液性を有するシートであり、透液性シート11と多孔性シート12とから構成されている。
【0021】
<透液性シート11>
透液性シート11は、駆動部20の駆動部21によって周回移動するように設けられた無端ベルトである。具体的には、透液性シート11は、第一端部FE(
図1では右端部)および第二端部SE(
図1では左端部)で折り返されてループ状になっており、両端部間の部分(透液性シート11の上面11a)が略平坦面になるように複数の案内ローラ21bや後述する駆動部22の複数の案内ローラ22bによって支持されている。そして、透液性シート11は、駆動部20の駆動部21によって、その上面11aが第一端部FEから第二端部SEに向かって移動するように設けられている。なお、「透液性シートの上面11aが略平坦面になっている」とは、透液性シート11の上面11aに若干の波うちや凹凸があってもよいが、意図的な凹凸が設けられていない状態を意味している。例えば、駆動部21の案内ローラ21b等によって透液性シート11が意図的に曲げられているような状態ではないことを意味している。
【0022】
<多孔性シート12>
多孔性シート12は、駆動部20の駆動部22によって周回移動するように設けられた無端ベルトである。この多孔性シート12も、第一端部FEおよび第二端部SEで折り返されてループ状になっている。この多孔性シート12は、周回移動する透液性シート11の内方に、一部が透液性シート11と重なるように配設されている。具体的には、多孔性シート12は、その両端部間の部分(多孔性シート12の上面12a)が透液性シート11の下面11bに接触するように設けられている。しかも、多孔性シート12は、駆動部20の駆動部22によって、透液性シート11と同じ方向、つまり、その上面12aが第一端部FEから第二端部SEに向かって移動するように設けられている。
【0023】
また、多孔性シート12の第一端部FEと第二端部SEとの間の部分は、その全体が透液性シート11に重なっておらず、第一端部FE近傍では、透液性シート11から離間した部分が形成されるように配置されている。具体的には、透液性シート11の上面11aが略平坦面となる開始部分(
図1では矢印aの部分)よりも第二端部SE側に位置する部分(
図1では矢印bの部分)で多孔性シート12の上面12aが透液性シート11の下面11bに接触するように、多孔性シート12は設けられている。この
図1における矢印aと矢印bの間の部分が前縁部FAであり、この前縁部FAでは、多孔性シート12は、第二端部SEに向かうに従って透液性シート11に接近するように(言い換えれば透液性シート11との距離が小さくなるように)なっている。なお、多孔性シート12は、第二端部SE近傍でも、透液性シート11から離間した部分が形成されるように配置されていてもよい。
【0024】
<駆動部20>
駆動部20は、透液性シート11を駆動する駆動部21と、多孔性シート12を駆動する駆動部22と、を備えている。
駆動部21は、駆動ローラ21aと複数の案内ローラ21bとを備えている。駆動ローラ21aは、モータなどによって回転駆動されるものであり、回転すると透液性シート11が複数の案内ローラ21bおよび案内ローラ22bに案内されて周回移動するようになっている。例えば、駆動ローラ21aと透液性シート11との間の摩擦力によって透液性シート11が駆動するようになっていてもよい。また、駆動ローラ21aにスプロケット等を設けて、透液性シート11にスプロケットの歯と係合する部分(例えば係合孔など)を設ければ、駆動ローラ21aが回転すると透液性シート11を移動させることができる。
駆動部22は、実質的には、駆動部21と同様の構造を有しており、駆動ローラ22aと複数の案内ローラ22bとを備えている。駆動ローラ22aは、モータなどによって回転駆動されるものであり、回転すると多孔性シート12が複数の案内ローラ22bに案内されて周回移動するようになっている。
なお、駆動部20は、駆動部21と駆動部22の両方を有していてもよいが、何れか一方の駆動部だけを有していてもよい。この場合でも、透液性シート11の下面11bと多孔性シート12の上面12aとの間の摩擦が大きければ、一方の駆動部によって一方のシートを移動させれば、他方のシートも移動させることができる。
【0025】
<懸濁液供給部30>
脱液部2の第一端部FEの上方には、懸濁液供給部30が設けられている。この懸濁液供給部30は、脱液部2の透液性シート11の上面11a(言い換えれば脱液面)に、脱液する懸濁液Kを供給するものである。具体的には、懸濁液供給部30は、透液性シート11の幅方向に沿ってある程度の長さを有しかつある程度の厚みを有するように、懸濁液Kを透液性シート11の上面11aに連続して供給するものである。
なお、透液性シート11の上面11aの走行方向において(
図1では左右方向)において、透液性シート11の上面11aに懸濁液供給部30が懸濁液Kを供給する位置はとくに限定されない。懸濁液Kの性質や透液性シート11の走行速度等に応じて、懸濁液Kの脱液効率が高くなる位置に供給するようになっていればよい。例えば、
図1に示すよう、前縁部FAに位置する透液性シート11の上面11aに懸濁液Kを供給するように懸濁液供給部30を配設してもよい。つまり、透液性シート11のみが存在している部分に懸濁液Kを供給するように懸濁液供給部30を配設してもよい(
図3(A)参照)。
【0026】
<上部脱液部40>
上部脱液部40は、透液性シート11の上面11aに載せられている懸濁液Kを上方にも脱液するために設けられている。この上部脱液部40は、駆動ローラ44aと案内ローラ44bとを有する駆動部44によって周回移動するように設けられた無端ベルトである上部透液性シート41を有している。この上部透液性シート41は、その下面が脱液部2の透液性シート11の上面11aとの間に一定の隙間を有するように配設されている。この上部脱液部40は、上部透液性シート41の下面が透液性シート11の上面11aと接近している部分(つまり隙間を形成している部分)において、上部透液性シート41と透液性シート11とが同じ方向に移動するように設けられている。
図1では、上記部分では、透液性シート11、多孔性シート12、上部透液性シート41が、いずれも右から左方向に移動するように設けられている。
【0027】
また、上部脱液部40は、上部透液性シート41が透液性シート11の上面11aと接近している部分が、ある程度第一端部FEよりも第二端部SE側に寄った位置(
図1では左側に寄った位置)に配設されている。具体的には、透液性シート11の上面11aに懸濁液供給部30から懸濁液Kが供給される位置よりも懸濁液供給部30に対して第二端部SE側に離れた位置に上部脱液部40は設けられている。つまり、透液性シート11の上面11aに懸濁液Kが供給されても、ある程度の期間は懸濁液Kが上部透液性シート41と透液性シート11とに挟まれないように上部脱液部40が設けられている。
【0028】
しかも、上部透液性シート41と透液性シート11と懸濁液Kが挟まれた状態でも、ある程度の期間は懸濁液Kが加圧されないように上部脱液部40が設けられている。
【0029】
上述したように、透液性シート11の上面11aに懸濁液Kが供給されても、ある程度の期間、懸濁液Kが挟まれずしかも加圧されないようにするのは、以下の理由による。
脱液初期では、透液性シート11の上面11aにおいて微細なセルロース繊維が絡み合った繊維の層が形成されていない。このため、脱液初期に透液性シート11の上面11aの懸濁液Kが挟まれたり加圧されたりした場合には、懸濁液K中の微細なセルロース繊維が容易に透液性シート11を抜けてしまう恐れがある。
したがって、透液性シート11の上面11aに懸濁液Kが供給された後、初期段階では上部脱液部40と透液性シート11とに懸濁液Kが挟まれず、また、上部脱液部40と透液性シート11とによって懸濁液Kが挟まれても一定の期間は懸濁液Kが加圧されない状態となるように上部脱液部40を配設することが望ましい。そして、前段から後段にかけて(第一端部FE側から第二端部SE側に向かって)徐々に懸濁液Kが加圧され、その加圧力が強くなるように上部脱液部40を設けることが望ましい。
【0030】
<本実施形態の微細繊維脱液装置1による脱液>
本実施形態の微細繊維脱液装置1が以上のような構造を有しているので、以下のように、懸濁液Kを連続して脱液することができる。
【0031】
まず、脱液部2の脱液シート10の透液性シート11および多孔性シート12と、上部脱液部40の上部透液性シート41を移動させながら、懸濁液供給部30から懸濁液Kを連続して透液性シート11の上面11aに供給する。
【0032】
透液性シート11および多孔性シート12がいずれも透液性を有しているので、懸濁液Kに含まれる液体は透液性シート11および多孔性シート12を透過するように移動する一方、懸濁液Kの固形分(微細セルロース)の大部分は透液性シート11および多孔性シート12を通過せず透液性シート11上に留まる。
【0033】
やがて、懸濁液Kは上部脱液部40の上部透液性シート41と透液性シート11との間に挟まれて加圧されて脱液される。このときにも、懸濁液Kから脱液された液体だけが透液性シート11および多孔性シート12を通して下方に落下し、懸濁液Kに含まれている微細セルロースは透液性シート11および多孔性シート12を通過せず透液性シート11上に留まる(
図1の丸囲み参照)。
【0034】
上記のように懸濁液Kは脱液されながら、上部脱液部40の上部透液性シート41と透液性シート11との間に挟まれた状態で第二端部SEまで移動する。この間、懸濁液Kの脱液が進行し、懸濁液Kの状態から固形分濃度が高くなった微細セルロースを含む物質(以下脱液微細セルロースという)が第二端部SEから排出される。例えば、供給される懸濁液Kの固形分濃度が2重量%程度であれば、脱液微細セルロースは、固形分濃度が9重量%以上(脱液率77.8%以上)まで脱液することができる。
【0035】
なお、脱液微細セルロースの固形分濃度は、供給される懸濁液Kの固形分濃度や、透液性シート11および多孔性シート12、上部脱液部40の上部透液性シート41の構成、また、これらのシートの移動速度等によって変化するが、供給される懸濁液Kの固形分濃度に対して、3倍以上の固形分濃度とすることが可能である。また、懸濁液Kに代えて脱液微細セルロースを本実施形態の微細繊維脱液装置1によって脱液すれば、より固形分濃度の高い脱液微細セルロースを得ることも可能である。
【0036】
<透液性シート11、上部透液性シート41>
透液性シート11や上部透液性シート41は、表裏を貫通するような孔や流路を有する通液性を有するものであればよく、とくに限定されない。例えば、金網やプラスチックワイヤー、多数の貫通孔を有するシート(例えばパンチングシートなど)を使用することができる。
この透液性シート11はその厚さはとくに限定されないが、例えば0.1〜1mm程度のものを使用することができる。
また、透液性シート11は上面12aと下面との間を貫通する孔が形成されている場合、その目開きは、0.01〜0.5mm程度となるものが望ましい。
【0037】
<多孔性シート12>
多孔性シート12は、不織布、毛布などによって形成されたものなどのように、一般的な抄紙機に使用されるフェルトシートを使用することができる。つまり、多孔性シート12に液体が接すると、毛細管現象によって液体をシート内に引き込むことができるような構造を有するものが望ましい。また、多孔性シート12は、耐摩耗性、緻密構造を有し、懸濁液側に液体の再吸収を小さくするなどの性質を有していればより好ましい。
【0038】
(吸引装置15)
脱液部2の脱液性を向上させる上では、脱液シート10に対して上部脱液部40と反対側に吸引装置15を設けて、懸濁液Kの液体を吸引してもよい。かかる吸引装置15を設ければ、加圧と毛細管現象だけで水等の液体分を除去する場合に比べて、液体除去を迅速に実施できる。
【0039】
例えば、
図1に示すように、多孔性シート12の下方に、第一端部FEから第二端部に向かって並ぶように複数の吸引部16を設ける。この吸引部16は、多孔性シート12の下面12b側に下面12bと対向する開口(つまり吸引口16h)を有している。この複数の吸引部16は、配管15p等を介して真空ポンプやブロア等の吸引機器17に接続されている。
【0040】
かかる吸引装置15を設けておけば、吸引機器17を作動させることによって、透液性シート11の上面11aに配置されている懸濁液Kの液体を吸引して懸濁液Kを脱液することができる。
【0041】
なお、吸引部16は一つでもよいが、複数の吸引部16を設けて、各吸引部16で発生する負圧を調整できるようにしておくことが望ましい。かかる構成とすれば、透液性シート11の上面11aに配置されている懸濁液Kから液体を吸引する状態を調整できる。つまり、懸濁液Kの脱液状態を調整できるので、懸濁液Kに合わせて適切な脱液を実施することができる。
【0042】
なお、吸引装置15は、透液性シート11の上面11aに配置されている懸濁液Kから液体を吸引できるものであれば、どのようなものでも採用することができる。例えば、一般的な抄紙機に使用されているサクションボックス等と同等の構造を有するものを採用することができる。
【0043】
<上部脱液部40について>
上部脱液部40は、上述したように、上部透液性シート41と透液性シート11の上面11aとの間に懸濁液Kを挟むように設けるだけでもよい。あるいは、上部脱液部40が、上部透液性シート41の上面、つまり、透液性シート11と反対側に吸引装置42を設けてもよい。上部透液性シート41と透液性シート11の上面11aとの間に懸濁液Kを挟んだ場合、一部の液体は上部透液性シート41を通過して上部透液性シート41の上方に透液する場合がある。上部透液性シート41の上方に吸引装置42を設けておけば、この上部透液性シート41の上方に透液した液体が懸濁液Kに戻ることを防止できるので、脱液効率を向上させることができる。この場合、吸引装置42の吸液力は上部透液性シート41を通して懸濁液K中の微細セルロースを直接吸い込まない程度の吸引力に調整されていることが望ましい。より確実に微細セルロースが吸引されることを防止する上では、上部透液性シート41と吸引装置42との間に、上述した多孔性シート12と同様の機能を有する上部多孔性シート(例えばフェルトシート等)を配置しておくことが望ましい。かかる上部透液性シート41を設ける方法はとくに限定されない。例えば、上部多孔性シートが上部透液性シート41と重ねられた状態で周回移動するようになっていてもよい。また、上述した脱液シート10と同様に、上部透液性シート41と上部多孔性シートとがそれぞれ別々のループを形成するように構成し、上部透液性シート41と透液性シート11とが懸濁液Kを挟む位置で、上部多孔性シートと上部透液性シート41とが重なるようになっていてもよい。
【0044】
かかる吸引装置42の構成はとくに限定されず、上部透液性シート41の上方に透液した液体を吸引できたり、また、上部透液性シート41を通して懸濁液K中の液体を吸引できたりするものであればよい。例えば、
図1に示すように、上部透液性シート41側に開口を有する吸引部42aと、この吸引部42aに配管等を介して連通された真空ポンプやブロア等の吸引機器42bによって吸引装置42を構成することができる。
【0045】
なお、吸引装置42を配置する位置はとくに限定されないが、上部脱液部40の上部透液性シート41の第一端部FE側の端部から少し離れた位置に配置することが望ましい。つまり、上部透液性シート41により懸濁液Kを加圧のみしている領域(第一脱液部)と、第一脱液部よりも下流側に上部透液性シート41による懸濁液Kの加圧と吸引装置42による吸引を実施する領域(第二脱液部)と、が設けられていることが望ましい。かかる構成とすれば、第1加圧部では毛細管現象による懸濁液からワイヤーへの液体の移行があり、第2加圧部ではワイヤーに移行した液体を円滑に吸引できる点で好ましい。なお、上述したように、第一脱液部の上流側の一部や第一脱液部よりも上流側の部分に、懸濁液Kを加圧しない領域を設けておけば、懸濁液K中の微細セルロースの損失を抑制することができる。
【0046】
図2に示すように、上部脱液部40は、透液性を有する上部透液性シート41による加圧だけでなく、透液性を有しないシート(不透液性シート45)による加圧を行う領域(第三脱液部)を設けてもよい。かかる第三脱液部を、第二脱液部よりも第二段部SE側に設ければ、加圧による脱液を効果的に実施できるので、脱液効率を高めることができる。
【0047】
かかる第三脱液部の構成はとくに限定されない。
例えば、透液性を有しない不透液性シート45をループ状の無端ベルトとして、周回移動するように設ける。しかも、不透液性シート45を、脱液部2の透液性シート11の上面11aとの間に一定の隙間を有するように配設する。そして、不透液性シート45が透液性シート11の上面11aと接近している部分(つまり隙間を形成している部分)において、不透液性シート45と透液性シート11とが同じ方向に移動するように設ける。すると、不透液性シート45と透液性シート11の上面11aとの間に懸濁液Kを連続して挟んで加圧脱液、さらには吸引装置15による脱液効率を改善することができる。
【0048】
なお、不透液性シート45と透液性シート11の上面11aとの間に形成される隙間D2はとくに限定されないが、隙間D2は、上部透液性シート41と透液性シート11の上面11aとの間に形成される隙間D1よりも小さくなるように設定することが望ましい。例えば、隙間D1が1〜10mmであれば、隙間D2は0.5〜5mmとすることが望ましい。なお、隙間D1と隙間D2の関係は、第一脱液部および第二脱液部を通過するまでの脱液率や懸濁液供給部30から供給される懸濁液Kの厚さなどに応じて適切に設定すればよい。
【0049】
<懸濁液供給部30について>
懸濁液供給部30は、透液性シート11の上面11aにある程度均一な厚さとなるように懸濁液Kを供給できるようになっていればよく、とくに限定されない。懸濁液供給部30に以下のような構造を採用すれば、透液性シート11の上面11aに懸濁液Kを均一な厚さで供給しやすくなるという利点が得られる。
【0050】
図3に示すように、懸濁液供給部30は中空な貯留空間31hを有する箱状の懸濁液貯留部31を有している。この懸濁液貯留部31には、貯留空間31h内に懸濁液Kを供給する流入口31sが形成されており、この流入口31sに配管32p等を介して懸濁液Kを懸濁液貯留部31の貯留空間31hに供給する供給装置32が接続されている。また、懸濁液貯留部31の先端部(
図3では左側)には、懸濁液Kを排出する懸濁液供給口31dが形成されている。この懸濁液供給口31dは、透液性シート11の幅方向に沿って延びた略長方形状の開口であり、クリアランスCがほぼ一定になるように形成されている。
【0051】
そして、懸濁液貯留部31は、流入口31sと懸濁液供給口31d以外は外部から液密に遮断された状態となるようになっている。しかも、供給装置32から例えば0.8MPa程度に加圧された懸濁液Kが供給されても、懸濁液供給口31d以外からは漏れが生じないように構成されている。
【0052】
かかる構成の懸濁液供給部30を採用すれば、隙間の幅Wが一定の懸濁液供給口31dから懸濁液Kを加圧した状態で透液性シート11の上面11aに供給できる。すると、透液性シート11の上面11aに、均一な厚さとなるように懸濁液Kを供給できるので、透液性シート11の上面11aの位置や時間による脱液状態の変動を小さくできる。したがって、均質な脱液微細セルロースを得ることができる。
【0053】
<懸濁液供給口31dのクリアランスCの調整>
懸濁液貯留部31に設けられている懸濁液供給口31dは単なる開口であってもよいし、クリアランスCを調整できる構造となっていてもよい。クリアランスCが調整できるようになっていれば、供給装置32から供給される懸濁液Kの濃度や粘度の状態に合わせて、透液性シート11の上面11aに供給する懸濁液Kの厚さを調整することができる。つまり、所望の脱液状態を得ることができるように、透液性シート11の上面11aに供給する懸濁液Kの厚さを調整することができる。
【0054】
例えば、
図3に示すように、懸濁液貯留部31の貯留空間31hの内底面を懸濁液供給口31dに向かって下傾する傾斜面31bとしておく。また、貯留空間31hにおいて、傾斜面31bの上方に、その基端側を支点として先端(懸濁液供給口31d側の端部)が揺動可能なフラップ31fを設けておく。そして、フラップ31fが揺動すると、フラップfの先端が傾斜面31bの先端(懸濁液供給口31d側の端部)に対して接近離間するように設けておく。
【0055】
かかる構造の場合、フラップfの先端縁と傾斜面31bの先端縁との間に懸濁液供給口31dの開口を形成できる。すると、フラップ31fの揺動を調整すると、フラップfの先端縁と傾斜面31bの先端縁との距離、つまり、懸濁液供給口31dのクリアランスCを変化させることができるので、透液性シート11の上面11aに供給する懸濁液Kの厚さを調整することができる。
【0056】
<供給装置32>
供給装置32は、懸濁液Kをある程度加圧して懸濁液貯留部31の貯留空間31hに供給できるものであればよくとくに限定されない。例えば、加圧空気を供給可能なホッパー上の密閉容器を供給装置32として使用することができる。この場合、加圧空気の圧力によって加圧された懸濁液Kを懸濁液貯留部31の貯留空間31hに供給できる。また、懸濁液Kを貯留する容器とこの容器内の懸濁液Kを圧送可能なポンプを備えた装置を供給装置32として使用することも可能である。
【0057】
<回収装置46>
透液性シート11上で脱液された脱液微細セルロースは回収装置46によって回収される。例えば、
図1に示すように、脱液部2の透液性シート11の第二端部SEに、スクレーパーのような形状の回収装置46を設ければ、回収装置46によって透液性シート11からシート状の状態を維持したまま脱液微細セルロースを剥がすことができる。すると、脱液微細セルロースをシート状の状態で回収することができる。なお、回収装置46の構造や透液性シート11から脱液微細セルロースを透液性シート11からシート状のまま回収する方法はとくに限定されない。例えば、透液性シート11上の脱液微細セルロースに鏡面ロール等を接触させて、鏡面ロールの表面に脱液微細セルロースを転写させてから回収することもできる。また、湿潤状態の脱液微細セルロースは透液性シート11等から比較的剥がしやすいため、透液性シート11の第二端部SE近傍において、透液性シート11の裏面側からエアーを吹き付けてもよい。かかる構成とすれば、湿潤状態の脱液微細セルロースを透液性シート11から浮かせることができる。すると、スクレーパーや鏡面ロール等によって脱液微細セルロースを回収しやすくなるので、脱液微細セルロースの回収効率を向上させることができる。このようにして透液性シート11等から剥がした湿潤状態の脱液微細セルロースを乾燥させれば、乾燥した微細セルロースのシートを得ることも可能である。
【解決手段】微細なセルロースを含有する懸濁液Kを脱液するための装置であって、脱液面に載せられた懸濁液Kを脱液する脱液部2と、脱液部2に懸濁液Kを供給する懸濁液供給部30と、を備えており、脱液部2が、上面11aが脱液面を形成する透液性シート11と、透液性シート11の下面11bに接触するように配設された多孔性シート12と、を備えており、透液性シート11および多孔性シート12は、懸濁液供給部30から懸濁液Kが供給される第一端部FEから第一端部FEに対して反対側に位置する第二端部SEに向かって移動するように設けられている。