特許第6653903号(P6653903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6653903病者用食事の食品を決定するための装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6653903
(24)【登録日】2020年1月31日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】病者用食事の食品を決定するための装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/60 20180101AFI20200217BHJP
【FI】
   G16H20/60
【請求項の数】18
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-168818(P2016-168818)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2017-59228(P2017-59228A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2019年4月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-180547(P2015-180547)
(32)【優先日】2015年9月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507214108
【氏名又は名称】株式会社新明和
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 譲
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 喜子
(72)【発明者】
【氏名】山路 祐子
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 文
【審査官】 山内 裕史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−152016(JP,A)
【文献】 特開2013−178839(JP,A)
【文献】 特開2012−238200(JP,A)
【文献】 特開2007−159430(JP,A)
【文献】 特開2004−302967(JP,A)
【文献】 特表2006−527445(JP,A)
【文献】 特開平07−296088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 − 80/00
G06Q 10/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
病者用食事に配合又は添加するための食品を選択するための装置であって、
病者の病名に関する情報を入力して記憶するための、病名情報入力手段と、
病者の病名に関する情報から、病名を判定するための、病名判定手段と、
病名と、その病名の病気に対して効能を有する微量元素とを関連付けて記憶するための、病名及び微量元素リスト記憶部と、
病名に基づいて、病名及び微量元素リスト記憶部を検索し、その病名の病気に対して効能を有する微量元素を判定するための、微量元素判定手段と、
微量元素と、その微量元素が含まれる食品とを関連付けて記憶するための、微量元素及び好適食品リスト記憶部と、
その病名の病気に対して効能を有する微量元素に基づいて、微量元素及び好適食品リスト記憶部を検索し、その微量元素が含まれる食品を判定するための、好適食品判定手段と、
好適食品判定手段により判定された結果を表示するための、結果表示手段と、
を含む装置であって、
装置が、
酵素活性の測定結果を入力するための、酵素活性測定結果入力手段と、
酵素活性の測定結果に基づいて酵素活性が低下した酵素を特定するための、活性低下酵素判定手段と、
微量元素と、その微量元素の不足によって低下する所定の酵素活性を有する酵素とを関連付けて記憶するための、酵素及び微量元素リスト記憶部と、
をさらに含み、
微量元素判定手段が、酵素活性が低下した酵素に基づいて、酵素及び微量元素リスト記憶部を検索し、酵素の酵素活性の低下の原因となる微量元素を判定することを、さらに含む、装置
【請求項2】
装置が、
微量元素と、微量元素が体内に吸収されるために必要なビタミン類及びそのビタミン類が含まれる食品とを関連付けて記憶するための、微量元素及びビタミン類含有食品リスト記憶部と、
その病名の病気に対して効能を有する微量元素に基づいて、微量元素及びビタミン類含有食品リスト記憶部を検索し、そのビタミン類が含まれる食品を判定するための、ビタミン類含有食品判定手段と、をさらに含み、
結果表示手段が、ビタミン類含有食品判定手段により判定された結果を、さらに表示することを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
病者用食事に配合又は添加するための食品を選択するための装置であって、
病者の病名に関する情報を入力して記憶するための、病名情報入力手段と、
病者の病名に関する情報から、病名を判定するための、病名判定手段と、
病名と、その病名の病気に対して効能を有する微量元素とを関連付けて記憶するための、病名及び微量元素リスト記憶部と、
病名に基づいて、病名及び微量元素リスト記憶部を検索し、その病名の病気に対して効能を有する微量元素を判定するための、微量元素判定手段と、
微量元素と、その微量元素が含まれる食品とを関連付けて記憶するための、微量元素及び好適食品リスト記憶部と、
その病名の病気に対して効能を有する微量元素に基づいて、微量元素及び好適食品リスト記憶部を検索し、その微量元素が含まれる食品を判定するための、好適食品判定手段と、
好適食品判定手段により判定された結果を表示するための、結果表示手段と、
を含む装置であって、
装置が、
微量元素と、微量元素が体内に吸収されるために必要なビタミン類及びそのビタミン類が含まれる食品とを関連付けて記憶するための、微量元素及びビタミン類含有食品リスト記憶部と、
その病名の病気に対して効能を有する微量元素に基づいて、微量元素及びビタミン類含有食品リスト記憶部を検索し、そのビタミン類が含まれる食品を判定するための、ビタミン類含有食品判定手段と、をさらに含み、
結果表示手段が、ビタミン類含有食品判定手段により判定された結果を、さらに表示することを含む、装置
【請求項4】
病名及び微量元素リスト記憶部が、微量元素の必要摂取量をさらに記憶し、
微量元素判定手段が、微量元素の必要摂取量をさらに判定し、
微量元素及び好適食品リスト記憶部が、食品に含まれる微量元素の含有量をさらに記憶し、
好適食品判定手段が、微量元素の必要摂取量に基づいて、食品の必要量を判定することをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
病名情報入力手段が、
医師の診断書を入力するための診断書入力手段、及び
病者の氏名及び生年月日、病歴、病気の進行度に関する情報の中から選択される少なくとも一つの病状病歴等を入力して記憶するための、病状病歴等入力手段、
から選択される少なくとも1つである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
装置が、
病者に処方された少なくとも一つの処方薬品を入力して記憶するための、薬品入力手段と、
薬品と、その薬品に対する配合禁忌の食品とを関連付けて記憶するための、第1食品リスト記憶部と、
薬品と、その薬品に対して代替効果を期待する食品とを関連付けて記憶するための、第2食品リスト記憶部と、
薬品と、その薬品の効果を補完する食品とを関連付けて記憶するための、第3食品リスト記憶部と、
薬品と、その薬品の副作用を緩和する食品とを関連付けて記憶するための、第4食品リスト記憶部と、
をさらに含み、
好適食品判定手段が、処方薬品及び微量元素が含まれる食品に基づいて、第1食品リスト記憶部、第2食品リスト記憶部、第3食品リスト記憶部及び第4食品リスト記憶部の少なくとも1つを検索し、処方薬品に対して微量元素が含まれる食品が、配合禁忌の食品であるか否か、及び/又は好適配合の食品であるか否かを判定することを、さらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
管理栄養士が、病者用食事に配合又は添加するための食品を選択するための装置である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
微量元素が含まれる食品が、海洋腐植物質由来食品を含み、
海洋腐植物質由来食品が、海洋腐植物質を添加若しくは加工した食品、又は海洋腐植物質を用いて生育した植物の食品である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
海洋腐植物質由来食品が、海洋腐植物質を添加又は加工した食品であり、海洋腐植物質を添加又は加工した食品が、海洋腐植物質から抽出した物質を含む水溶液である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
病者用食事に配合又は添加するための食品をコンピュータにより決定するためのプログラムであって、
コンピュータが、
病名と、その病名の病気に対して効能を有する微量元素とを関連付けて記憶するための、病名及び微量元素リスト記憶部と、
微量元素と、その微量元素が含まれる食品とを関連付けて記憶するための、微量元素及び好適食品リスト記憶部と、
を有し、
コンピュータに対して、
病者の病名に関する情報を入力して記憶するための、病名情報入力処理と、
病者の病名に関する情報から、病名を判定するための、病名判定処理と、
病名に基づいて、病名及び微量元素リスト記憶部を検索し、その病名の病気に対して効能を有する微量元素を判定するための、微量元素判定処理と、
その病名の病気に対して効能を有する微量元素に基づいて、微量元素及び好適食品リスト記憶部を検索し、その微量元素が含まれる食品を判定するための、好適食品判定処理と、
好適食品判定処理により判定された結果を表示するための、結果表示処理と、
を実行させるプログラムであって、
コンピュータが、微量元素と、その微量元素の不足によって低下する所定の酵素活性を有する酵素とを関連付けて記憶するための、酵素及び微量元素リスト記憶部を、さらに含み、
プログラムが、コンピュータに対して、
酵素活性の測定結果を入力するための、酵素活性測定結果入力処理と、
酵素活性の測定結果に基づいて酵素活性が低下した酵素を特定するための、活性低下酵素判定処理と、
を実行させることを、さらに含み、
微量元素判定処理が、酵素活性が低下した酵素に基づいて、酵素及び微量元素リスト記憶部を検索し、酵素の酵素活性の低下の原因となる微量元素を判定することを、さらに含む、プログラム
【請求項11】
コンピュータが、微量元素と、微量元素が体内に吸収されるために必要なビタミン類及びそのビタミン類が含まれる食品とを関連付けて記憶するための、微量元素及びビタミン類含有食品リスト記憶部を、さらに含み、
プログラムが、コンピュータに対して、その病名の病気に対して効能を有する微量元素に基づいて、微量元素及びビタミン類含有食品リスト記憶部を検索し、そのビタミン類が含まれる食品を判定するための、ビタミン類含有食品判定処理を実行させることを、さらに含み、
結果表示処理が、ビタミン類含有食品判定処理により判定された結果を表示することを、さらに含む、請求項10に記載のプログラム。
【請求項12】
病者用食事に配合又は添加するための食品をコンピュータにより決定するためのプログラムであって、
コンピュータが、
病名と、その病名の病気に対して効能を有する微量元素とを関連付けて記憶するための、病名及び微量元素リスト記憶部と、
微量元素と、その微量元素が含まれる食品とを関連付けて記憶するための、微量元素及び好適食品リスト記憶部と、
を有し、
コンピュータに対して、
病者の病名に関する情報を入力して記憶するための、病名情報入力処理と、
病者の病名に関する情報から、病名を判定するための、病名判定処理と、
病名に基づいて、病名及び微量元素リスト記憶部を検索し、その病名の病気に対して効能を有する微量元素を判定するための、微量元素判定処理と、
その病名の病気に対して効能を有する微量元素に基づいて、微量元素及び好適食品リスト記憶部を検索し、その微量元素が含まれる食品を判定するための、好適食品判定処理と、
好適食品判定処理により判定された結果を表示するための、結果表示処理と、
を実行させるプログラムであって、
コンピュータが、微量元素と、微量元素が体内に吸収されるために必要なビタミン類及びそのビタミン類が含まれる食品とを関連付けて記憶するための、微量元素及びビタミン類含有食品リスト記憶部を、さらに含み、
プログラムが、コンピュータに対して、その病名の病気に対して効能を有する微量元素に基づいて、微量元素及びビタミン類含有食品リスト記憶部を検索し、そのビタミン類が含まれる食品を判定するための、ビタミン類含有食品判定処理を実行させることを、さらに含み、
結果表示処理が、ビタミン類含有食品判定処理により判定された結果を表示することを、さらに含む、プログラム
【請求項13】
病名及び微量元素リスト記憶部が、微量元素の必要摂取量をさらに記憶し、
微量元素及び好適食品リスト記憶部が、食品に含まれる微量元素の含有量をさらに記憶し、
微量元素判定処理が、微量元素の必要摂取量をさらに判定し、
好適食品判定処理が、微量元素の必要摂取量に基づいて、食品の必要量を判定することをさらに含む、請求項10〜12のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項14】
病名情報入力処理が、
医師の診断書を入力するための診断書入力処理、及び
病者の氏名及び生年月日、病歴、病気の進行度に関する情報の中から選択される少なくとも一つの病状病歴等を入力して記憶するための、病状病歴等入力処理、
から選択される少なくとも1つである、請求項10〜13のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項15】
プログラムが、コンピュータに対して、
病者に処方された少なくとも一つの処方薬品を入力して記憶するための、薬品入力処理を実行させることを、さらに含み、
コンピュータが、
薬品と、その薬品に対する配合禁忌の食品とを関連付けて記憶するための、第1食品リスト記憶部と、
薬品と、その薬品に対して代替効果を期待する食品とを関連付けて記憶するための、第2食品リスト記憶部と、
薬品と、その薬品の効果を補完する食品とを関連付けて記憶するための、第3食品リスト記憶部と、
薬品と、その薬品の副作用を緩和する食品とを関連付けて記憶するための、第4食品リスト記憶部と、
をさらに含み、
適合食品判定処理が、処方薬品及び微量元素が含まれる食品に基づいて、第1食品リスト記憶部、第2食品リスト記憶部、第3食品リスト記憶部及び第4食品リスト記憶部の少なくとも1つを検索し、処方薬品に対して微量元素が含まれる食品が、配合禁忌の食品であるか否か、及び/又は好適配合の食品であるか否かを判定することを、さらに含む、請求項10〜14のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項16】
管理栄養士が、病者用食事に配合又は添加するための食品をコンピュータにより決定するためのプログラムである、請求項10〜15のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項17】
微量元素が含まれる食品が、海洋腐植物質由来食品を含み、
海洋腐植物質由来食品が、海洋腐植物質を添加若しくは加工した食品、又は海洋腐植物質を用いて生育した植物の食品である、請求項10〜16のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項18】
海洋腐植物質由来食品が、海洋腐植物質を添加又は加工した食品であり、海洋腐植物質を添加又は加工した食品が、海洋腐植物質から抽出した物質を含む水溶液である、請求項17に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病者に提供すべき病者用食事に配合するための食品を決定するための装置及びその食品をコンピュータにより決定するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、先進国における主な死因として生活習慣病から派生する内臓疾患と多発性癌疾患が挙げられ、特に飽食と運動不足によって生じる過栄養素を基盤に増加している循環器疾患の重要性が再確認されている。高騰する医療費の解決の重要課題として、医療現場での生活習慣からくる疾病の重症化防止と、適格な治療効果を求めている。
【0003】
特許文献1には、利用者に提供すべきサプリメントの配合を決定する配合決定装置及び利用者に提供すべきサプリメントの配合を決定するプログラムが開示されている。
【0004】
特許文献2には、病者に提供すべき病者用食事に配合又は添加するための食品を選択するための装置が開示されている。特許文献2には、その装置が、病者に処方された少なくとも一つの処方薬品及びその薬品の処方投与量を入力して記憶するための、薬品入力手段と、食品を入力して記憶するための、食品入力手段と、薬品と、その薬品に対する配合禁忌の食品とを関連付けて記憶するための、第1食品リスト記憶部と、処方薬品及び食品に基づいて、第1食品リスト記憶部を検索し、食品と、処方薬品とが、配合禁忌であるか否かを判定するための、適合食品判定手段と、判定結果を表示するための、結果表示手段と、を備えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3895746号公報
【特許文献2】特開2012−238200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、医療現場では技術進歩により近代化が急速に進んでいる。また、高度医療に対応するため、医療に従事する多種多様なスタッフが高い専門性を前提に、目的を共有し、業務を分担しつつもお互いに連携、補完し合っている。そのような状況の中、患者(病者)の状況に適格に対応した医療を提供するチーム医療体制を構築するために、看護師、薬剤師、臨床検査技師らともに管理栄養士の参加が求められている。
【0007】
現在の医療現場の実態を検証すると、医師による医薬品の処方及び投与についての情報は、医師、薬剤師及び看護師の共通の言語で形成されたプロトコールにより交換されているため、医師の指示が薬剤師及び看護師に対して的確に伝えられている。それに対して、管理栄養士の扱う食品は、多種多様な動植物細胞で構成され、多くの食品を組み合わせて病者に提供する食事(病者用食事)の調理を指示して作られているため、特定の効果を示すエビデンスが得られていない。そのため、医師の医療に対する信頼を築けないのが現状である。
【0008】
医療現場には、病者に提供する食事(病者用食事)の重要性は概念的な理解はあるものの、治療食のような病者用食事が急性治療には直接寄与しないとの認識がある。そのため、治療行為から見た病者用食事に対する関心度も低く、病者用食事の担当者は、他の直接治療に関与しているグループとの交流も阻害されがちで、チーム医療が実施されても傍流の存在から脱却できない。
【0009】
急性疾患の治療に関する医薬品についてのエビデンスについては、薬剤師と医師とは共通の知識を共有し、その上に共通の言語が形成され、事前のプロトコールで医師の指示が伝えられている。これに対して、管理栄養士が扱う病者用食品(病者用食事に配合する食品)は、治療の速効的効果から見られず、病者用食品による人体の特定疾患の治療としての機能性を特定できないため、エビデンスの構築ができない。また、病者用食事の重要性については概念的な理解はあるものの、病者用食事に対する医師の関心度も薄く、日常の賄いの延長と見られやすい。
【0010】
病院において、管理栄養士は、基礎栄養学と臨床栄養学とを基に、疾病の未然防止、疾病の早期回復、重症化の防止を業務として、医師のクリティカルパスといわれる包括的指導の元に、独立した給食部門を主体に担当している。一般的に、管理栄養士は、個々の患者(病者)の対応でなく、大枠の疾病対応の集団給食的色彩の多い医療食(病者用食事)の供給にあたっている。管理栄養士は、概念的に、病者用食品を含む病者用食事が健康維持に重要であることは理解しているが、医療の中心である医師とは治療に関する直接的な対話があまりない。
【0011】
さらに病院以外の場所においても、病者用食事の重要性は理解されているものの、どのようなメニューの病者用食事を摂取することが必要なのかが明確ではない。また、管理栄養士が病者用食事を扱う場合であっても、どのような食品を選択すればよいのかが明確ではない。
【0012】
医療現場における患者に対する病者用食事の供給の実態は、食材そのものが多数の細胞素材で構成されているため、薬のように薬事効果を特定するためのエビデンスが取れない。治療食等の病者用食事は、また薬品と異なり遅遅効性のため、病者用食事の重要性は認識されているものの、医師と管理栄養士との間で疾病治療効果の協議が行われることはほとんど見られない。
【0013】
医学と栄養学は、長い歴史の中で人体の健康を維持するために、互いに努力されてきたが、薬と食品の効果が、即効性と遅効性からくるエビデンスの取り方、認識の違いから神学的論争に終始し、未だに相互不信がある。医学では理論と臨床との検証は厳しく、栄養学の経験則からくる効果認証とは開きがある。そのため、このままでは緊急の整備が求められている在宅医療と療養に必要な介護食のような病者用食事が適切に供給されることが困難になる。さらに、このままでは緊急に求められている病院と介護が一体になった、病者用食事を通しての地域医療の実現が危ぶまれる事態を招いている。
【0014】
医学と栄養学では、よって立つ研究基盤が異なるために、医師の診断内容を管理栄養士に具体的に伝える言語を策定するのは甚だ難しい。それは食物が人体に与える栄養の評価について、その重要性についての概念的な認識があるものの、その価値観の評価には大きな差異があるという実態があるためである。
【0015】
近年、疾病と、微量元素との関係が明らかにされつつある。そのため、病者用食事に含まれ、病者に摂取される微量元素の種類及び含有量を制御することは重要である。しかしながら、病者である患者が、医師から所定の微量元素を摂取することを指示されることはまれである。また、仮に病者が医師から所定の微量元素を摂取することを指示されたとしても、病者がどのような病者用食事を摂取すればよいかは明確ではない。
【0016】
本発明は、上述のような病者用食事のおかれている状況を踏まえてなされた発明である。すなわち、本発明は、病者が所定の微量元素を摂取するために、病者に提供すべき病者用食事へ配合するための適切な食品を決定するための装置を提供することを目的とする。また、本発明は、病者が所定の微量元素を摂取するために、病者に提供すべき病者用食事に配合するための適切な食品をコンピュータにより決定するプログラムを提供することを目的とする。
【0017】
特に、本発明は、管理栄養士が、病者に対して所定の微量元素を摂取させるために、病者に提供すべき病者用食事へ配合するための適切な食品を決定するための装置を提供することを目的とする。また、特に、本発明は、管理栄養士が、病者に対して所定の微量元素を摂取させるために、病者に提供すべき病者用食事に配合するための適切な食品をコンピュータにより決定するプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、以下の構成を有する。本発明は、下記の構成1〜9の装置、下記の構成10〜18のプログラムである。
【0019】
(構成1)
本発明の構成1は、病者用食事に配合又は添加するための食品を選択するための装置であって、
病者の病名に関する情報を入力して記憶するための、病名情報入力手段と、
病者の病名に関する情報から、病名を判定するための、病名判定手段と、
病名と、その病名の病気に対して効能を有する微量元素とを関連付けて記憶するための、病名及び微量元素リスト記憶部と、
病名に基づいて、病名及び微量元素リスト記憶部を検索し、その病名の病気に対して効能を有する微量元素を判定するための、微量元素判定手段と、
微量元素と、その微量元素が含まれる食品とを関連付けて記憶するための、微量元素及び好適食品リスト記憶部と、
その病名の病気に対して効能を有する微量元素に基づいて、微量元素及び好適食品リスト記憶部を検索し、その微量元素が含まれる食品を判定するための、好適食品判定手段と、
好適食品判定手段により判定された結果を表示するための、結果表示手段と、
を含む装置である。
【0020】
本発明の構成1によれば、病者が所定の微量元素を摂取するために、病者に提供すべき病者用食事へ配合するための適切な食品を決定するための装置を提供することができる。
【0021】
(構成2)
本発明の構成2は、病名及び微量元素リスト記憶部が、微量元素の必要摂取量をさらに記憶し、
微量元素判定手段が、微量元素の必要摂取量をさらに判定し、
微量元素及び好適食品リスト記憶部が、食品に含まれる微量元素の含有量をさらに記憶し、
好適食品判定手段が、微量元素の必要摂取量に基づいて、食品の必要量を判定することをさらに含む、構成1に記載の装置である。
【0022】
本発明の構成2によれば、微量元素の必要摂取量に対応する、食品の必要量を判定することのできる装置を提供することができる。
【0023】
(構成3)
本発明の構成3は、装置が、
酵素活性の測定結果を入力するための、酵素活性測定結果入力手段と、
酵素活性の測定結果に基づいて酵素活性が低下した酵素を特定するための、活性低下酵素判定手段と、
微量元素と、その微量元素の不足によって低下する所定の酵素活性を有する酵素とを関連付けて記憶するための、酵素及び微量元素リスト記憶部と、
をさらに含み、
微量元素判定手段が、酵素活性が低下した酵素に基づいて、酵素及び微量元素リスト記憶部を検索し、酵素の酵素活性の低下の原因となる微量元素を判定することを、さらに含む、構成1又は2に記載の装置である。
【0024】
本発明の構成3の装置によれば、酵素活性の測定結果に基づいて、不足している微量元素を判定することができる。そのため、病名情報入力手段からの情報により判定された不足している微量元素以外にも不足している微量元素がある場合、酵素活性の測定結果に基づいて、不足している微量元素を判定することができる。
【0025】
(構成4)
本発明の構成4は、装置が、
微量元素と、微量元素が体内に吸収されるために必要なビタミン類及びそのビタミン類が含まれる食品とを関連付けて記憶するための、微量元素及びビタミン類含有食品リスト記憶部と、
その病名の病気に対して効能を有する微量元素に基づいて、微量元素及びビタミン類含有食品リスト記憶部を検索し、そのビタミン類が含まれる食品を判定するための、ビタミン類含有食品判定手段と、をさらに含み、
結果表示手段が、ビタミン類含有食品判定手段により判定された結果を、さらに表示することを含む、構成1〜3のいずれかに記載の装置である。
【0026】
本発明の構成4の装置によれば、所定の微量元素の体内への吸収を補助するビタミン類を含む食品を判定することができる。そのため、所定の微量元素を、そのビタミン類が含まれる食品とともに摂取することにより、所定の微量元素の体内への摂取を促進することができる。
【0027】
(構成5)
本発明の構成5は、病名情報入力手段が、
医師の診断書を入力するための診断書入力手段、及び
病者の氏名及び生年月日、病歴、病気の進行度に関する情報の中から選択される少なくとも一つの病状病歴等を入力して記憶するための、病状病歴等入力手段、
から選択される少なくとも1つである、構成1〜4のいずれかに記載の装置である。
【0028】
本発明の構成5の装置によれば、病名情報入力手段には、医師の診断書及び病状病歴等のいずれかにより入力されるので、例えば医師の診断書がない場合であっても、病者の病名情報を得ることができる。
【0029】
(構成6)
本発明の構成6は、装置が、
病者に処方された少なくとも一つの処方薬品を入力して記憶するための、薬品入力手段と、
薬品と、その薬品に対する配合禁忌の食品とを関連付けて記憶するための、第1食品リスト記憶部と、
薬品と、その薬品に対して代替効果を期待する食品とを関連付けて記憶するための、第2食品リスト記憶部と、
薬品と、その薬品の効果を補完する食品とを関連付けて記憶するための、第3食品リスト記憶部と、
薬品と、その薬品の副作用を緩和する食品とを関連付けて記憶するための、第4食品リスト記憶部と、
をさらに含み、
好適食品判定手段が、処方薬品及び微量元素が含まれる食品に基づいて、第1食品リスト記憶部、第2食品リスト記憶部、第3食品リスト記憶部及び第4食品リスト記憶部の少なくとも1つを検索し、処方薬品に対して微量元素が含まれる食品が、配合禁忌の食品であるか否か、及び/又は好適配合の食品であるか否かを判定することを、さらに含む、構成1〜5のいずれかに記載の装置である。
【0030】
本発明の構成6の装置によれば、微量元素が含まれる食品の判定に加え、さらに、食品及び処方薬品が配合禁忌であるか否か、薬品の代替効果を期待する食品か、薬品の効果を補完する食品か、薬品の副作用を緩和する薬品か、食品及び処方薬品が配合禁忌であるか否かのいずれかのグループから適合する食品を適切に選定することができる。そのため、微量元素が含まれる食品であることのみならず、病者に提供すべき病者用食事に配合又は添加するための適切な食品を決定することができる。
【0031】
(構成7)
本発明の構成7は、管理栄養士が、病者用食事に配合又は添加するための食品を選択するための装置である、構成1〜6のいずれかに記載の装置である。
【0032】
本発明の構成7によれば、本発明の装置が、管理栄養士が病者用食事に配合又は添加するための食品を選択するための装置であることにより、病者が所定の微量元素を摂取するために、病者に提供すべき病者用食事へ配合するための適切な食品を、より適切に決定することができる。
【0033】
(構成8)
本発明の構成8は、微量元素が含まれる食品(商品)が、海洋腐植物質由来食品を含み、
海洋腐植物質由来食品が、海洋腐植物質を添加若しくは加工した食品、又は海洋腐植物質を用いて生育した植物の食品である、構成1〜7のいずれか1項に記載の装置である。
【0034】
海洋腐植物質には、海洋から進化発生したとされる哺乳類等の生体内の微量元素や必要なビタミンが海洋腐植物質からのフルボ酸溶出液から生体と類似した比率で微量元素が含まれている。そのため、本発明の構成8によれば、病者用食事に配合又は添加するための食品として、海洋腐植物質由来食品を選択することにより、病者が所定量の適切な微量元素を摂取することができる食品を決定することができる。なお、海洋腐植物質に含有される微量元素は、ヒトの正常な生体に存在する微量元素比率に近い。そのため、海洋腐植物質から抽出した物質を含む水溶液としては、安定した微量元素を含む海洋腐植物質由来のフルボ酸を溶融させた水溶液であることが好ましい。また、その水溶液により調理した食品を、海洋腐植物質由来食品とすることができる。
【0035】
(構成9)
本発明の構成9は、海洋腐植物質由来食品が、海洋腐植物質を添加又は加工した食品であり、海洋腐植物質を添加又は加工した食品が、海洋腐植物質から抽出した物質を含む水溶液(フルボ酸水溶液)である、構成8に記載の装置である。
【0036】
本発明の構成9によれば、海洋腐植物質を添加又は加工した食品が、海洋腐植物質から抽出した物質を含む水溶液であることにより、病者用食事に対して、簡便に微量元素及びその必須ビタミンを配合又は添加することができる。また、海洋腐植物質を加工した食品が、海洋腐植物質を含むフルボ酸水溶液であることにより、医学的エビデンスを高めることができる。
【0037】
本発明は、下記の構成10〜18であることを特徴とするプログラムである。
【0038】
(構成10)
本発明の構成10は、病者用食事に配合又は添加するための食品をコンピュータにより決定するためのプログラムであって、
コンピュータが、
病名と、その病名の病気に対して効能を有する微量元素とを関連付けて記憶するための、病名及び微量元素リスト記憶部と、
微量元素と、その微量元素が含まれる食品とを関連付けて記憶するための、微量元素及び好適食品リスト記憶部と、
を有し、
コンピュータに対して、
病者の病名に関する情報を入力して記憶するための、病名情報入力処理と、
病者の病名に関する情報から、病名を判定するための、病名判定処理と、
病名に基づいて、病名及び微量元素リスト記憶部を検索し、その病名の病気に対して効能を有する微量元素を判定するための、微量元素判定処理と、
その病名の病気に対して効能を有する微量元素に基づいて、微量元素及び好適食品リスト記憶部を検索し、その微量元素が含まれる食品を判定するための、好適食品判定処理と、
好適食品判定処理により判定された結果を表示するための、結果表示処理と、
を実行させるプログラムである。
【0039】
本発明の構成10のプログラムによれば、病者が所定の微量元素を摂取するために、病者に提供すべき病者用食事へ配合するための適切な食品を決定することができる。
【0040】
(構成11)
本発明の構成11は、病名及び微量元素リスト記憶部が、微量元素の必要摂取量をさらに記憶し、
微量元素及び好適食品リスト記憶部が、食品に含まれる微量元素の含有量をさらに記憶し、
微量元素判定処理が、微量元素の必要摂取量をさらに判定し、
好適食品判定処理が、微量元素の必要摂取量に基づいて、食品の必要量を判定することをさらに含む、構成11に記載のプログラムである。
【0041】
本発明の構成11のプログラムによれば、微量元素の必要摂取量に対応する、食品の必要量を判定することができる。
【0042】
(構成12)
本発明の構成12のプログラムは、コンピュータが、微量元素と、その微量元素の不足によって低下する所定の酵素活性を有する酵素とを関連付けて記憶するための、酵素及び微量元素リスト記憶部を、さらに含み、
プログラムが、コンピュータに対して、
酵素活性の測定結果を入力するための、酵素活性測定結果入力処理と、
酵素活性の測定結果に基づいて酵素活性が低下した酵素を特定するための、活性低下酵素判定処理と、
を実行させることを、さらに含み、
微量元素判定処理が、酵素活性が低下した酵素に基づいて、酵素及び微量元素リスト記憶部を検索し、酵素の酵素活性の低下の原因となる微量元素を判定することを、さらに含む、構成10又は11に記載のプログラムである。
【0043】
本発明の構成12のプログラムによれば、酵素活性の測定結果に基づいて、不足している微量元素を判定することができる。そのため、病名情報入力処理からの情報により判定された不足している微量元素以外にも不足している微量元素がある場合、酵素活性の測定結果に基づいて、不足している微量元素を判定することができる。
【0044】
(構成13)
本発明の構成13は、コンピュータが、微量元素と、微量元素が体内に吸収されるために必要なビタミン類及びそのビタミン類が含まれる食品とを関連付けて記憶するための、微量元素及びビタミン類含有食品リスト記憶部を、さらに含み、
プログラムが、コンピュータに対して、その病名の病気に対して効能を有する微量元素に基づいて、微量元素及びビタミン類含有食品リスト記憶部を検索し、そのビタミン類が含まれる食品を判定するための、ビタミン類含有食品判定処理を実行させることを、さらに含み、
結果表示処理が、ビタミン類含有食品判定処理により判定された結果を表示することを、さらに含む、構成10〜12のいずれかに記載のプログラムである。
【0045】
本発明の構成13のプログラムによれば、所定の微量元素の体内への吸収を補助するビタミン類を含む食品を判定することができる。そのため、所定の微量元素を、そのビタミン類が含まれる食品とともに摂取することにより、所定の微量元素の体内への摂取を促進することができる。
【0046】
(構成14)
本発明の構成14は、病名情報入力処理が、
医師の診断書を入力するための診断書入力処理、及び
病者の氏名及び生年月日、病歴、病気の進行度に関する情報の中から選択される少なくとも一つの病状病歴等を入力して記憶するための、病状病歴等入力処理、
から選択される少なくとも1つである、構成10〜13のいずれかに記載のプログラムである。
【0047】
本発明の構成14のプログラムによれば、病名情報入力処理として、医師の診断書及び病状病歴等のいずれかにより入力されるので、例えば医師の診断書がない場合であっても、病者の病名情報を得ることができる。
【0048】
(構成15)
本発明の構成15は、プログラムが、コンピュータに対して、
病者に処方された少なくとも一つの処方薬品を入力して記憶するための、薬品入力処理を実行させることを、さらに含み、
コンピュータが、
薬品と、その薬品に対する配合禁忌の食品とを関連付けて記憶するための、第1食品リスト記憶部と、
薬品と、その薬品に対して代替効果を期待する食品とを関連付けて記憶するための、第2食品リスト記憶部と、
薬品と、その薬品の効果を補完する食品とを関連付けて記憶するための、第3食品リスト記憶部と、
薬品と、その薬品の副作用を緩和する食品とを関連付けて記憶するための、第4食品リスト記憶部と、
をさらに含み、
適合食品判定処理が、処方薬品及び微量元素が含まれる食品に基づいて、第1食品リスト記憶部、第2食品リスト記憶部、第3食品リスト記憶部及び第4食品リスト記憶部の少なくとも1つを検索し、処方薬品に対して微量元素が含まれる食品が、配合禁忌の食品であるか否か、及び/又は好適配合の食品であるか否かを判定することを、さらに含む、構成10〜14のいずれかに記載のプログラムである。
【0049】
本発明の構成15のプログラムによれば、微量元素が含まれる食品の判定に加え、さらに、食品及び処方薬品が配合禁忌であるか否か、薬品の代替効果を期待する食品か、薬品の効果を補完する食品か、薬品の副作用を緩和する薬品か、食品及び処方薬品が配合禁忌であるか否かのいずれかのグループから適合する食品を適切に選定することができる。そのため、微量元素が含まれる食品であることのみならず、病者に提供すべき病者用食事に配合又は添加するための適切な食品を決定することができる。
【0050】
(構成16)
本発明の構成16は、管理栄養士が、病者用食事に配合又は添加するための食品をコンピュータにより決定するためのプログラムである、構成10〜15のいずれかに記載のプログラムである。
【0051】
本発明の構成16のプログラムが、管理栄養士が病者用食事に配合又は添加するための食品を選択するためのプログラムであることにより、病者が所定の微量元素を摂取するために、病者に提供すべき病者用食事へ配合するための適切な食品を、より適切に決定することができる。
【0052】
(構成17)
本発明の構成8は、微量元素が含まれる食品(商品)が、海洋腐植物質由来食品を含み、
海洋腐植物質由来食品が、海洋腐植物質を添加若しくは加工した食品、又は海洋腐植物質を用いて生育した植物の食品である、構成10〜16のいずれか1項に記載のプログラムである。
【0053】
海洋腐植物質には、生体に必要な豊富な微量元素が含まれている。そのため、本発明の構成17によれば、病者用食事に配合又は添加するための食品として、海洋腐植物質由来食品を選択することにより、病者が所定量の適切な微量元素を摂取することができる食品を決定することができる。
【0054】
(構成18)
本発明の構成18は、海洋腐植物質由来食品が、海洋腐植物質を添加又は加工した食品であり、海洋腐植物質を添加又は加工した食品が、海洋腐植物質から抽出した物質を含む水溶液である、構成17に記載のプログラムである。
【0055】
本発明の構成18によれば、海洋腐植物質を添加又は加工した食品が、海洋腐植物質から抽出した物質を含む水溶液であることにより、病者用食事に対して、簡便に微量元素を配合又は添加することができる。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、病者が所定の微量元素を摂取するために、病者に提供すべき病者用食事へ配合するための適切な食品を決定するための装置を提供することができる。また、本発明によれば、病者が所定の微量元素を摂取するために、病者に提供すべき病者用食事に配合するための適切な食品をコンピュータにより決定するプログラムを提供することができる。
【0057】
特に、本発明によれば、管理栄養士が、病者に対して所定の微量元素を摂取させるために、病者に提供すべき病者用食事へ配合するための適切な食品を決定するための装置を提供することができる。また、特に、本発明によれば、管理栄養士が、病者に対して所定の微量元素を摂取させるために、病者に提供すべき病者用食事に配合するための適切な食品をコンピュータにより決定するプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】本発明の装置の一例を示す図である。
図2】本発明の装置の別の一例を示す図である。
図3】本発明のプログラムの一例を示す図である。
図4】本発明のプログラムの別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明は、病者用食事に配合又は添加するための、微量元素を含む食品を選択するための装置に関する。
【0060】
本明細書において、「病者」とは、所定の病気を有する人間のことをいう。「病者用食品」とは、病者用食事に含まれる食品のことをいう。
【0061】
本明細書において、「微量元素」とは、生体にとって微量で活性を持つ元素であり、Fe及びFeより生体中の含有量が低い元素のことをいう。具体的には、本明細書において、「微量元素」とは、F、Si、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Se、Sr、Mo、Sn及びI等の元素をいう。なお、本明細書において、微量元素とは、栄養学的に「ミネラル」といわれる成分を含むことができる。
【0062】
本明細書において、「記憶する」とは、本発明の装置のメモリー及びハードディスク等、ローカルネットワークやインターネット等の通信回線により接続された他の装置の内部等の「記憶部」に対して、入力された情報を、少なくとも本発明の装置による所定の処理が終わるまで、読み出し可能なようにその情報を書き込み、その情報を記憶することをいう。
【0063】
本明細書において、「記憶部」とは、メモリー及びハードディスク等のように、入力された情報を読み出し可能なように書き込むことのできるものをいう。記憶部は、所定の装置の内部に配置することができる。また、記憶部は、ローカルネットワークやインターネット等の通信回線により接続された他の装置の内部に存在することができる。
【0064】
本明細書において、「コンピュータ」とは、単体の情報処理装置を意味するだけでなく、ローカルネットワークやインターネット等の通信回線により接続された他の装置を連結した形態の情報処理をするためのネットワークの概念を含む。
【0065】
本発明者らは、まず、病者の病気を取り扱う医師、及び管理栄養士等の病者の病気を取り扱う者がよって立つ学術的根拠は別として、概念的に必要と認めている病者用食事の中で、学術的認識は異なっても、医師にも管理栄養士も納得し理解できる共通の言語を策定する方法ができないかを検討した。
【0066】
土壌又は海水から吸収した食材中に含む微量元素は、食事として適切に摂取することが必要である。微量元素は、栄養学ではミネラルと呼ばれ、ビタミンなどと同じ栄養素として取り扱っている。一方、医学では、体内で発生する活性酸素を消去する酵素活性に必要な微量元素として、Cu、Zn、Mn及びSeなどの微量元素を扱っている。医学と栄養学とでは、微量元素に対する評価認識の差は埋められないほど大きい。
【0067】
医学では、微量元素の生体内における酵素活性の研究において、例えば、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)及びグルタチオンペルオキシダーゼ(GSH−Px)で取り扱うZn、Cu及びSeは酵素活性に関与する。これらの微量元素の触媒機能により、活性酸素(O等)が過酸化水素(H)になり、それが細胞内のFeによりOHラジカルになり、Seの充足による酵素活性化によりHOになって無害化される、という流れを化学反応の理論に置き換えて理解される。
【0068】
一方、栄養学では、ビタミン及びミネラル(微量元素)は、体外から食品を通じて摂取するものであると考えられている。ビタミンは生命の複雑な化学反応の流れをコントロールするのに必要な特有で微量な有機化合物である。鉄、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウムなどのミネラルも、ビタミンと連携して酵素を活性させ、生命活動を支えることにより、健康を維持すると考えられている。
【0069】
医学は疾病の治療を最大の目的とし、栄養学は生命活働の維持に重点をおいており、どちらも、大枠で同じ役割を担いながら、基本姿勢が異なっている。
【0070】
微量元素の中で、鉄、亜鉛及び銅などは摂取レベルによる影響に大きな個人差が認められ、セレン、マンガン、ヨウ素及びモリブテンは摂取レベルによる影響は個人差が少ない。その中で、ビタミン及び微量元素の相関性の例を見ると、亜鉛の摂取レベルでは、食事の多価不飽和脂肪酸摂取レベルに依存するが、ビタミンEの投与により亜鉛欠乏症の症状が改善されることが知られている。また、必須ミネラル(微量元素)には1日の必要量があり、必要量よりさらに量が多くなれば、過剰症(中毒)が見られる。微量元素の摂取の過剰及び欠乏には体内の常恒性機能維持機構の課題があり、ここに医学、栄養学の共通の研究課題があることが理解できる。
【0071】
医師が患者に必要であると判断する微量元素に関する情報を、管理栄養士が活用し、必要な微量元素を、病者用食事で供給するためのレシピーで表現できるシステム(装置及び方法)をいかにして構築できるかが重要である。
【0072】
そこで、例えば、野菜等の食品を粉末化し、粉末化した野菜等の食品に含まれる微量元素を分析し分類して保管し、コンピュータ等の記憶装置に微量元素等の分析情報を登録し、管理栄養士が病者用食事のためのレシピー作成のために活用することができる。この場合、所定の装置及びプログラムを用いることにより、医師の調整又は投薬の指示書から、自動的に病気(疾病)の病名を見出し、その病気の患者に対して必要な微量元素を自動的に抽出し、その微量元素が含まれる食品を選択することができる。すなわち、管理栄養士が医師と共通の言語により、病者用食事のレシピーに必要な、所定の微量元素が含まれる食材を選択することで、病者用食事を通じて医師が要求する微量元素を体内に取り込むことができ、患者の病状を改善することができる。
【0073】
現在、農水省、消費者庁で進められている病者のための病者用食事は、在宅における食機能が低下した高齢者の介護食のみが対象であり、病院から早期退院を求められた大半の疾病治療者(患者)、及び薬剤を医師の指示で服用している高齢者の疾病に対する病者用食事は対象にされていない。また、食品に対して、疾病に効果の機能性を表示し販売することを禁止されている。一方、病院サイドが病院給食の延長で在宅療養食(病者用食事)を供給する体制は整備されておらず、このままでは、退院後の高齢者やクリニックで投薬されている高齢者は、安心して療養生活が送れない状態が続いている。
【0074】
少しでも健康で長生きさせることは、国の目標であり、医療費の高騰を少しでも軽減できるにもかかわらず、疾病の悪化を座視しながら、病者用食事で高齢者の健康を回復させ健康体にして、医療費の削減に寄与させることもできないでいる。確かにこの分野については、一般食品業界の過剰広告を見ても、薬との配合禁忌の立場から医療が関与すべきであるという政策も、理解はできる。であるならば、早急に医療の機能を活用しながら、在宅での病者用食事の供給環境を整備する必要がある。
【0075】
高齢者が自宅において安心して療養生活を送れるためには、見守りと食事(病者用食事)が供給されていることが必要であるが、それに加え、医師がいないと不安であることも事実である。地域医療には地域病院として介護、療養には従来の病院と異なった仕組みが必要であると指摘され、新たな地域病院のあり方が論議されている。しかし、現在大半の病院で行われている施術後の病者用食事では、医師の指示が管理栄養士にクリティカルパスで伝えられた概略の症状に合わせた集団給食的レシピーが作成されているにすぎない。病者である患者個々の病状に合わせた調理が行われないまま、病者用食事が患者の元に届けられているのが現状である。さらに、その延長線上で適切な在宅給食体制が取れるかというと、それは不可能に近い。
【0076】
薬を服用している多くの在宅患者が、症状改善ための病者用食事を受けられるには、管理栄養士の協力体制を整備する必要がある。病院の内外を問わず、医師の診断内容が、在宅患者の近くにいる管理栄養士を通して、病者用食事の調理関係者に伝わることが望ましい。しかし、医師の診断内容に関する情報は患者のプライバシーにかかわり、外部に漏洩させることは厳に慎む必要がある。とすれば、医療の外郭ではあるが、管理栄養士は、国家資格を有し、秘守義務に関する理解もあるので、管理栄養士に最前線で病者用食事の指導を当たらせることが望ましい。
【0077】
先述の通り、医師及び管理栄養士では、よって立つ学問が異なるため、従来から意思の疎通ができていない。そのため、ここで共通の情報伝達方法を同定し、伝達する手段を確立する必要がある。医師と管理栄養士は、患者の療養という共通の目的を持つ。
【0078】
栄養素のミネラル(微量元素)は、栄養学として地位が既に確立されている。老化によって起こる動脈硬化、糖尿病、消化器疾患、慢性疾患、アルコール依存症などの生活習慣病等の発症は、ビタミン及びミネラルの不足、又は両者のバランスを崩すことに関連していることを、管理栄養士は十分理解している。
【0079】
一方の医療サイドでは、栄養学的にはミネラルとし捉えられている微量元素(Fe,Mn、Zu、Cu及びSe等)は、体内で発生する活性酸素の消去のためSOD、GSH−Pxの酵素活性の低下を防止するための必須元素として医学的に解明されて、メカニズムもほぼ解明された治療法として医師間では認知されている。そのメカニズムは栄養学的見解とは全く異なる。例えば、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)は亜鉛及び銅の微量元素の補充による酵素活性化により体内で発生した活性酸素(O等)を過酸化水素(H)として無害化されるが、このHは細胞膜を簡単に通過するため細胞内のFeと反応しヒドロキシルラジカルOHとなり、DNAを切断し、多くの生活習慣病を発生させたり、癌を発生させたりすることが知られている。この現象は、細胞内にあるグルタチオンペルオキシダーゼ(GSH−Px)内のセレンSe濃度が低下したときに起こる。一方、セレン(Se)が充足され酵素活性が高まると、OHラジカルがセレンSeと反応し、HOとして無害化され、疾病発症を防止したり予防したりすることが知られている。
【0080】
Fe、Cu、Zn、Mn及びSe等の微量元素は、食品内に存在する。微量元素を食品から採取することは、生体内の恒常性維持機構のため、過剰を防ぎ、摂取量の増減を調整可能であるという利点を有する手段である。
【0081】
所定の食品にCu、Zn、Mn及びSe等の微量元素が含まれることにより、所定の食品摂取により、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)と、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH−Px)とによる活性酸素消去が期待できる。そのため、医師が疾病治療のために所定の食品摂取を指示することが考えられる。また、管理栄養士は、ミネラル(微量元素)の不足を防止するため、食品中にミネラルを添加することが考えられる。したがって、医師及び管理栄養士が、共通の目的を共有できる。そのため、管理栄養士が、微量元素に関する情報を医師と共有し、レシピーで正確に選択することができる環境を整備することが必要である。
【0082】
以上の状況を鑑み、本発明者らは、以下に述べる装置及びプログラムを想到した。
【0083】
まず、本発明の装置について、図面を参照し、具体的に説明する。
【0084】
図1に、本発明の装置の一つの態様を示す。本発明の装置は、病者用食事に配合又は添加するための食品を選択するための装置である。本発明の装置は、病名情報入力手段と、病名判定手段と、病名及び微量元素リスト記憶部と、微量元素判定手段と、微量元素及び好適食品リスト記憶部と、好適食品判定手段と、結果表示手段とを含む。本発明の装置によれば、病者が所定の微量元素を摂取するために、病者に提供すべき病者用食事へ配合するための適切な食品を決定するための装置を提供することができる。
【0085】
病名情報入力手段は、病者の病名に関する情報を入力して記憶するように構成される。
【0086】
病者の病名に関する情報は、医師により診断された病名そのものであることができる。また、処方薬品及びその薬品の処方投与量は、病気の種類及びその進行度に応じて、医師により処方される。したがって、処方薬品及びその薬品の処方投与量も病名に関する情報の一種である。
【0087】
図2に示すように、病名情報入力手段は、医師の診断書を入力するための診断書入力手段、及び病状病歴等入力手段から選択される少なくとも1つであることができる。なお、病状病歴等入力手段とは、病者の氏名及び生年月日、病歴、病気の進行度に関する情報の中から選択される少なくとも一つの病状病歴等を入力して記憶するための手段である。本態様では、医師の診断書及び病状病歴等のいずれかが入力されるので、例えば医師の診断書がない場合であっても、病者の病名情報を得ることができる。病状病歴等は、例えば、医師又は看護師が有している所定の患者の情報を用いることができる。
【0088】
なお、病名に関する情報を入力するための入力手段としては、キーボード、音声入力及びマウス等のポインティングデバイスによるプルダウンメニュー等からの選択等、公知の入力装置を入力手段として用いることができる。その他の入力手段についても同様である。
【0089】
病名判定手段は、病者の病名に関する情報から、病名を判定するように構成される。病者の病名に関する情報が、医師により診断された病名そのものである場合には、医師により診断された病名を、そのまま病名として判定することができる。病者の病名に関する情報が、医師の診断書である場合には、医師の診断書から病名を抽出することにより、病名を判定することができる。同様に、病者の病名に関する情報が、病状病歴等である場合には、病状病歴等の中から病名を抽出し、病名を判定することができる。
【0090】
病名及び微量元素リスト記憶部は、病名と、その病名の病気に対して効能を有する微量元素とを関連付けて記憶するように構成される。病名及び微量元素リスト記憶部は、基本的には、病名から、その病名の病気に対して効能を有する微量元素を検索することが可能なように作られて記憶されたリストである。
【0091】
病名と、その病名の病気に対して効能を有する微量元素とは、例えば、亜鉛と、癌、免疫不全及び発育障害の組み合わせを挙げることができる。亜鉛が欠乏することにより、癌、免疫不全及び発育障害という病気が発生することが知られているためである。同様に、病名と、その病名の病気に対して効能を有する微量元素との例として、銅と、高血圧症、高脂血症、味覚低下及び行動障害との組み合わせ、セレンと、癌、脳老化及び高血圧症との組み合わせ、クロムと、糖尿病、動脈硬化及び免疫不全との組み合わせ等を挙げることができる。
【0092】
本発明の装置では、病名及び微量元素リスト記憶部が、微量元素の必要摂取量をさらに記憶することをさらに含むことが好ましい。病名及び微量元素リスト記憶部が、微量元素の必要摂取量をさらに記憶することを含むことにより、本発明の装置は、最終的に、微量元素の必要摂取量に対応する、食品の必要量を判定することができる。所定の必要摂取量については、医学的な研究結果から決定することができる。例えば、1日の必要摂取量は、銅の場合には2〜3mg、セレンの場合には50〜200μg、マンガンの場合には2.5〜5mg、ヨウ素の場合には150μg程度、及びモリブテンの場合には150〜500μgである。
【0093】
微量元素判定手段は、病名に基づいて、病名及び微量元素リスト記憶部を検索し、その病名の病気に対して効能を有する微量元素を判定するように構成される。
【0094】
微量元素判定手段は、微量元素の必要摂取量をさらに判定することをさらに含むことが好ましい。病名及び微量元素リスト記憶部が、微量元素の必要摂取量を記憶している場合には、微量元素の種類のみならず、その微量元素の必要摂取量も判定することができる。この結果、本発明の装置は、最終的に、微量元素の必要摂取量に対応する、食品の必要量を判定することができる。
【0095】
微量元素及び好適食品リスト記憶部は、微量元素と、その微量元素が含まれる食品とを関連付けて記憶するように構成される。微量元素及び好適食品リスト記憶部は、基本的には、所定の微量元素の種類から、その微量元素が含まれる食品を検索することが可能なように作られて記憶されたリストである。
【0096】
微量元素及び好適食品リスト記憶部は、食品に含まれる微量元素の含有量をさらに記憶することをさらに含むことが好ましい。微量元素及び好適食品リスト記憶部が、食品に含まれる微量元素の含有量を記憶している場合には、最終的に、微量元素の必要摂取量に対応する、食品の必要量を判定することのできる装置を得ることができる。
【0097】
食品に含まれる微量元素の含有量は、測定により得ることが好ましい。同じ食品、例えば野菜であっても、栽培地域及び時期によって、微量元素の含有量が異なることがあるからである。また、食品は、乾燥させて粉末状の形態で保存することが好ましい。この場合、調理の際に微量元素の必要添加量を有する粉末を配合すればよいので、微量元素の必要添加量の配合が容易になる。
【0098】
好適食品判定手段は、その病名の病気に対して効能を有する微量元素に基づいて、微量元素及び好適食品リスト記憶部を検索し、その微量元素が含まれる食品を判定するように構成される。微量元素及び好適食品リスト記憶部には、微量元素と、その微量元素が含まれる食品とを関連付けて記憶されている。そのため、好適食品判定手段により、微量元素に基づいて、その微量元素が含まれる食品を判定することが可能である。
【0099】
好適食品判定手段は、微量元素の必要摂取量に基づいて、食品の必要量を判定することをさらに含むことが好ましい。そのため、本発明の装置は、微量元素の必要摂取量に対応する、食品の必要量を判定することのできる装置であることができる。微量元素及び好適食品リスト記憶部が、食品に含まれる微量元素の含有量を記憶している場合には、好適食品判定手段による判定の際に、その微量元素が含まれる食品の種類のみならず、その食品の必要量を判定することが可能である。
【0100】
なお、好適食品判定手段は、所定の食品と、処方薬品とが配合禁忌であるかどうかを判定することができる。この場合、本発明の装置は、後述する薬品入力手段及び第1食品リスト記憶部をさらに含む必要がある。
【0101】
結果表示手段は、好適食品判定手段により判定された結果を表示するように構成される。
【0102】
図1に示すように、本発明の装置は、判定結果を表示するための、結果表示手段を含む。上述の好適食品判定手段により判定した判定結果を、結果表示手段により表示することができる。病者に対して適切な病者用食事のメニューを決定する人、例えば管理栄養士は、この判定結果を参考にして、食品を選択することができる。また、結果表示手段では、その表示結果を適宜選択することができる。すなわち、上記判定手段によって判定された選択された食品のみを表示することもできるし、選択された食品及びその必要量を表示することもできる。また、好適食品判定手段が、所定の食品と、処方薬品とが配合禁忌であるかどうかを判定することができる場合には、その判定結果を表示することができる。
【0103】
なお、結果表示手段としては、ディスプレイ、印刷装置、音声出力装置及びローカルネットワークやインターネット等の通信回線による外部への出力等、公知の表示手段を用いることができる。
【0104】
図2に、本発明の装置の別の実施形態を示す。図2に示すように、本発明の装置は、酵素活性測定結果入力手段、活性低下酵素判定手段、酵素及び微量元素リスト記憶部をさらに含むことが好ましい。本実施形態の装置によれば、酵素活性の測定結果に基づいて、不足している微量元素を判定することができる。そのため、病名情報入力手段からの情報により判定された不足している微量元素以外にも不足している微量元素がある場合、酵素活性の測定結果に基づいて、不足している微量元素を判定することができる。
【0105】
酵素活性測定結果入力手段は、酵素活性の測定結果を入力するように構成される。酵素活性の測定は、公知の方法で行うことができる。
【0106】
活性低下酵素判定手段は、酵素活性の測定結果に基づいて酵素活性が低下した酵素を特定するように構成される。
【0107】
酵素及び微量元素リスト記憶部は、微量元素と、その微量元素の不足によって低下する所定の酵素活性を有する酵素とを関連付けて記憶するように構成される。酵素の例として、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)を挙げることができる。したがって、酵素及び微量元素リスト記憶部では、SODが、銅、亜鉛及びマンガンに関連付けて記憶される。酵素及び微量元素リスト記憶部は、基本的には、所定の微量元素の不足によって低下する所定の酵素活性を有する酵素から、その微量元素を検索することが可能なように作られて記憶されたリストである。
【0108】
酵素活性の測定結果に基づいて、不足している微量元素を判定するために、微量元素判定手段は、酵素活性が低下した酵素に基づいて、酵素及び微量元素リスト記憶部を検索し、酵素の酵素活性の低下の原因となる微量元素を判定することを、さらに含むことが好ましい。
【0109】
酵素がスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)の場合には、酵素及び微量元素リスト記憶部に、SODが、銅、亜鉛及びマンガンに関連付けて記憶されている。SODは、その種類により、銅、亜鉛及びマンガンを含む。したがって、本実施形態の装置において、微量元素判定手段は、SODの酵素活性の測定結果に基づいて、微量元素である銅、亜鉛及びマンガンが不足しているか否かを判定することができる。
【0110】
図2に示すように、本発明の装置は、微量元素及びビタミン類含有食品リスト記憶部と、ビタミン類含有食品判定手段とをさらに含むことが好ましい。本実施形態の装置によれば、所定の微量元素の体内への吸収を補助するビタミン類を含む食品を判定することができる。そのため、所定の微量元素を、そのビタミン類が含まれる食品とともに摂取することにより、所定の微量元素の体内への摂取を促進することができる。
【0111】
微量元素及びビタミン類含有食品リスト記憶部は、微量元素と、微量元素が体内に吸収されるために必要なビタミン類及びそのビタミン類が含まれる食品とを関連付けて記憶するように構成される。微量元素及びビタミン類含有食品リスト記憶部は、基本的には、微量元素から、その微量元素が体内に吸収されるために必要なビタミン類及びそのビタミン類が含まれる食品を検索することが可能なように作られて記憶されたリストである。
【0112】
所定の微量元素の体内への吸収を補助するビタミン類として、例えば、ビタミンA及びZn、葉酸及びZn、アスコルビン酸及びZn、並びにビタミンE及びSeの組み合わせを挙げることができる。すなわち、例えば、ビタミンAの吸収には、Znが必要であるとの研究結果がある。
【0113】
また、所定の微量元素を、所定のビタミン類とともに摂取することにより、所定の微量元素の過剰摂取を防止し、適正な量の微量元素を体内に摂取することができる。例えば、微量元素が亜鉛(Zn)である場合、ビタミンAとともに摂取することにより、亜鉛の過剰摂取を防止し、適正な量の亜鉛を体内に摂取することができる。同様に、微量元素がセレン(Se)である場合、ビタミンEとともに摂取することにより、セレンの過剰摂取を防止し、適正な量のセレンを体内に摂取することができる。
【0114】
ビタミン類含有食品判定手段は、その病名の病気に対して効能を有する微量元素に基づいて、微量元素及びビタミン類含有食品リスト記憶部を検索し、そのビタミン類が含まれる食品を判定するように構成される。所定の微量元素の体内への吸収を補助するビタミン類が含まれる食品を判定し、選択することにより、所定の微量元素の吸収を促進する食品を判定することができる。また、所定の微量元素と、所定のビタミン類をともに摂取することにより、適正な量の所定の微量元素を体内に摂取することも可能である。
【0115】
結果表示手段は、ビタミン類含有食品判定手段により判定された結果を、さらに表示することを含むことが好ましい。この結果、所定の微量元素の体内への吸収を補助するビタミン類を含む食品を表示することができる。
【0116】
図2に示すように、本発明の装置は、薬品入力手段と、第1食品リスト記憶部と、第2食品リスト記憶部と、第3食品リスト記憶部と、第4食品リスト記憶部とをさらに含むことが好ましい。本実施態様の装置によれば、微量元素が含まれる食品の判定に加え、さらに、食品及び処方薬品が配合禁忌であるか否か、薬品の代替効果を期待する食品か、薬品の効果を補完する食品か、薬品の副作用を緩和する薬品か、食品及び処方薬品が配合禁忌であるか否かのいずれかのグループから適合する食品を適切に選定することができる。そのため、微量元素が含まれる食品であることのみならず、病者に提供すべき病者用食事に配合又は添加するための適切な食品を決定することができる。
【0117】
薬品入力手段は、病者に処方された少なくとも一つの処方薬品を入力して記憶するように構成される。
【0118】
病者に処方された少なくとも一つの処方薬品及びその薬品の処方投与量は、病気の種類及びその進行度に応じて、医師により処方される。処方された所定量の薬品は、薬剤師により調合される。本実施態様の装置では、医師により処方された処方薬品及びその薬品の処方投与量の情報から、病気の種類及びその進行度を判定することもできる。
【0119】
なお、入力手段としては、キーボード、音声入力及びマウス等のポインティングデバイスによるプルダウンメニュー等からの選択等、公知の入力装置を入力手段として用いることができる。
【0120】
第1食品リスト記憶部は、薬品と、その薬品に対する配合禁忌の食品とを関連付けて記憶するように構成される。
【0121】
「薬品に対する配合禁忌の食品」とは、ある薬品に対して、物理的又は化学的反応によって、薬効変化、有毒物生成など種々の不都合を生じるため、ある薬品とともに摂取することができない食品のことをいう。具体的には、薬品「ワーファリン」と、食品「セイヨウオウトギリ草のセント・ジョーズ・ワート」とをともに摂取する場合には化学的反応による不都合が生じるので、「セント・ジョーズ・ワート」は「ワーファリン(血液凝固抑止剤)、ジゴキシン(強心剤)(商標)」に対する配合禁忌の食品である。
【0122】
第1食品リスト記憶部は、検索可能なように、薬品と、その薬品に対する配合禁忌の食品とを関連付けて記憶するための記憶部である。
【0123】
第2食品リスト記憶部は、薬品と、その薬品に対して代替効果を期待する食品とを関連付けて記憶するように構成される。
【0124】
図2に示す本発明の装置は、薬品と、その薬品に対して代替効果を期待する食品とを関連付けて記憶するための、第2食品リスト記憶部を含む。
【0125】
「第2食品リスト記憶部」は、薬品と、その薬品に対して代替効果を期待する食品とを関連付けて記憶するための記憶部である。本発明の装置は、第2食品リスト記憶部を有するので、患者に処方された薬品と、場合によりその薬品の投与量とに基づいて、第2食品リスト記憶部を検索するならば、その薬品に対して代替効果を期待する食品を見出すことができる。
【0126】
「薬品に対する代替効果を期待する食品」とは、ある食品を摂取することによって、ある薬品と同様な効果を期待できるために、薬品を摂取する替わりにその食品を摂取できることが判明している食品のことをいう。具体的には、薬品「塩酸トラゾドン(トリアゾロビリジン系抗うつ薬」と同様な効果を、食品「イチョウ葉エキス」を摂取することにより期待できるので、食品「イチョウ葉エキス」は、薬品「塩酸トラゾドン」に対する代替効果を期待する食品である。
【0127】
図2に示す本発明の装置は、第3食品リスト記憶部を含む。第3食品リスト記憶部は、薬品と、その薬品の効果を補完する食品とを関連付けて記憶するように構成される。
【0128】
「第3食品リスト記憶部」とは、薬品と、その薬品の効果を補完する食品とを関連付けて記憶するための記憶部である。本発明の装置は、第3食品リスト記憶部を有するので、患者に処方された薬品と、場合によりその薬品の投与量とに基づいて、第3食品リスト記憶部を検索するならば、その薬品の効果を補完する食品を見出すことができる。
【0129】
図2に示す本発明の装置は、第4食品リスト記憶部を含む。第4食品リスト記憶部は、薬品と、その薬品の副作用を緩和する食品とを関連付けて記憶するように構成される。
【0130】
「第4食品リスト記憶部」とは、薬品と、その薬品の副作用を緩和する食品とを関連付けて記憶するための記憶部である。本発明の装置は、第4食品リスト記憶部を有するので、患者に処方された薬品と、場合によりその薬品の投与量とに基づいて、第4食品リスト記憶部を検索するならば、その薬品の副作用を緩和する食品を見出すことができる。
【0131】
好適食品判定手段は、処方薬品及び微量元素が含まれる食品に基づいて、第1食品リスト記憶部、第2食品リスト記憶部、第3食品リスト記憶部及び第4食品リスト記憶部の少なくとも1つを検索し、処方薬品に対して微量元素が含まれる食品が、配合禁忌の食品であるか否か、及び/又は好適配合の食品であるか否かを判定することを、さらに含むことが好ましい。この結果、微量元素が含まれる食品の判定に加え、さらに、食品及び処方薬品が配合禁忌であるか否か、薬品の代替効果を期待する食品か、薬品の効果を補完する食品か、薬品の副作用を緩和する薬品か、食品及び処方薬品が配合禁忌であるか否かのいずれかのグループから適合する食品を適切に選定することができる。
【0132】
具体的には、図2に示す本発明の実施形態では、好適食品判定手段が、次のように動作するように構成されることが好ましい。すなわち、図2に示す本発明の装置の好適食品判定手段は、下記構成(1)〜(4)を含むことが好ましい。
(1)食品と、処方薬品とが、配合禁忌であるか否かを判定するように構成される。
(2)薬品入力手段により入力された薬品に応じて第2食品リスト記憶部を検索し、食品が、その薬品に対して代替効果を期待する食品であるか否かを判定するように構成される。
(3)薬品入力手段により入力された薬品に応じて第3食品リスト記憶部を検索し、食品が、その薬品の効果を補完する食品であるか否かを判定するように構成される。
(4)薬品入力手段により入力された薬品に応じて第4食品リスト記憶部を検索し、食品が、その薬品の副作用を緩和する食品であるか否かを判定するように構成される。
【0133】
図2に示す本発明の装置は、好適食品判定手段が、薬品入力手段により入力された薬品に基づいて、第1食品リスト記憶部を検索し、食品と、処方薬品とが、配合禁忌であるか否かを判定するように構成されることを含むことが好ましい。そのため、好適食品判定手段により、入力された食品と、処方薬品とが配合禁忌であるかどうかを判定することができる。
【0134】
図2に示す本発明の装置は、好適食品判定手段が、薬品入力手段により入力された薬品に応じて第2食品リスト記憶部を検索し、食品が、その薬品に対して代替効果を期待する食品であるか否かを判定するように構成されることを含むことが好ましい。医師のプロトコールが、特定の患者に対して、ある薬品に対して代替効果を期待する食品を摂取するように指示している場合には、その薬品に対して代替効果を期待する食品を、第2食品リスト記憶部の中から見出すことができる。
【0135】
図2に示す本発明の装置は、好適食品判定手段が、薬品入力手段により入力された薬品に応じて第3食品リスト記憶部を検索し、食品が、その薬品の効果を補完する食品であるか否かを判定するように構成されることを含むことが好ましい。医師のプロトコールが、特定の患者に対して、ある薬品の効果を補完する食品を摂取するように指示している場合には、その薬品の効果を補完する食品を、第3食品リスト記憶部の中から見出すことができる。
【0136】
図2に示す本発明の装置は、好適食品判定手段が、薬品入力手段により入力された薬品に応じて第4食品リスト記憶部を検索し、食品が、その薬品の副作用を緩和する食品であるか否かを判定するように構成されることを含むことが好ましい。医師のプロトコールが、特定の患者に対して、ある薬品の副作用を緩和する食品を摂取するように指示している場合には、その薬品の副作用を緩和する食品を、第4食品リスト記憶部の中から見出すことができる。
【0137】
図2に示すように、本発明の装置は、判定結果を表示するための、結果表示手段を含む。上述の好適食品判定手段により、入力された食品と、処方薬品とが配合禁忌であるかどうかを判定した判定結果、入力された食品が、その薬品に対して代替効果を期待する食品であるかどうかを判定した判定結果、入力された食品が、その薬品の効果を補完する食品であるかどうかを判定した判定結果、及び、入力された食品が、その薬品の副作用を緩和する食品であるかどうかを判定した判定結果を、結果表示手段により表示することができる。また、さらに、対病気好適食品判定手段による、病者の病気に対して好適に適合する食品を判定した判定結果を結果表示手段により表示することができる。管理栄養士等の病者用食事を用意する人は、これらの判定結果の表示を参考にして、病者に提供すべき病者用食事に配合又は添加するための適切な食品を選択することができる。
【0138】
また、本発明の装置は、食品のエビデンスに関する付帯情報記憶部を含むことができる。
【0139】
食品のエビデンスに関する付帯情報記憶部とは、上述の、薬品に対する配合禁忌の食品、薬品に対する代替効果を期待する食品、薬品の効果を補完する食品及び薬品の副作用を緩和する食品に関して、その科学的根拠を示す情報であり、例えば、薬品に対する配合禁忌の食品等に関する学術文献等の書誌的事項及びその記載内容等に関する情報である。食品のエビデンスに関する付帯情報は、対応する第1食品リスト記憶部、第2食品リスト記憶部、第3食品リスト記憶部、第4食品リスト記憶部と関連付けて、治験など食品のエビデンスに関する付帯情報記憶部に記憶することができる。医師等は、プロトコールによる食品の選択にあたって、その証拠を確認することが必要な場合がある。そのため、本発明の装置では、医師等が、所定の食品のエビデンスに関する付帯情報を必要とするときは、検索により食品のエビデンスに関する付帯情報記憶部から、その情報を読み出して表示するように構成されることが好ましい。さらにNST(栄養サポートチーム)グループの看護師、薬剤師、管理栄養士も医師と同様の情報を共有すること好ましい。
【0140】
本発明の装置においては、病者用食品が、特別用途食品、個別評価型病者用食品、許可基準型病者用食品又は医師や医療関係者により十分エビデンスがあると認められた食品であることが好ましい。病者用食品が、特別用途食品、個別評価型病者用食品、許可基準型病者用食品又は医師や医療関係者により十分エビデンスがあると認められた食品である場合には、食品の効果、関与する成分等に関する科学的根拠が比較的明確であるためである。
【0141】
特別用途食品は病者用食品、妊産婦、授乳婦養粉乳、乳児用調整粉乳、及び嚥下困難者用食品にかかるものを許可基準として次のような基準がある。
(1)低たんぱく質食品
(2)アレルゲン除去食品
(3)無乳糖食品
(4)総合栄養食品
【0142】
許可基準型病者用食品は、以下の基準により判断されるものである。すなわち、基本的許可基準として次のような基準がある。
(1)食品の栄養組成を加減し、又は特殊な加工を施したものであって、医学的、栄養学的見地から見て特別の栄養的配慮を必要とする病者に適当な食品であることが認められるものであること。
(2)特別の用途を示す表示が、病者用の食品としてふさわしいものであること。
(3)適正な試験法によって成分又は特性が確認されるものであること。
【0143】
さらに、特別用途食品、許可基準型病者用食品は、概括的許可基準として次のような基準がある。
(1)指示された使用方法を遵守したときに効果的であり、しかもその使用方法が簡明であること。
(2)品質が通常の食品に劣らないものであること。
(3)利用対象者が相当程度に広範囲のものであるか、又は病者にとって特に必要とされるものであること。
【0144】
個別評価型病者用食品は、個別に科学的な評価を行うことにより病者用食品としての表示を認め、特定の疾病を持つ病者に対し適切な情報提供を行えるようにすることが適当であるとの観点から、個別評価による病者用食品としての表示許可を行うものである。病者用食品が個別評価型病者用食品であることの表示の許可については、以下の(1)〜(10)に規定するすべての要件を満たすものを個別に評価するものである。
(1)特定の疾病のための食事療法の目的の達成に資するための効果が期待できるものであること。
(2)食品又は関与する成分について、食事療法上の効果の根拠が医学的、栄養学的に設定できるものであること。
(3)食品又は関与する成分について、病者の食事療法にとって適切な使用方法が医学的、栄養学的に設定できるものであること。
(4)食品又は関与する成分は、食経験等から見て安全なものであること。(食品衛生上問題がない食品であることはもとより、これまでも人による食経験があるものであるとともに、その摂取量、摂取方法等から見て過剰摂取による健康障害、栄養のアンバランス等を生じないものであること。)
(5)関与する成分は、次に掲げる事項が明らかにされていること。
ア 物理学的、化学的及び生物学的性状並びにその試験方法
イ 定性及び定量試験方法
(6)同種の食品の喫食形態と著しく異なったものではないこと。(病者用食品は食事療法として日常の食事の中で継続的に食するものであり、食事様式を大きく変えることなく、今まで食べていたものと置き換えることにより食事療法を容易にするために必要な要件であること。)
(7)まれにしか食されないものでなく、日常的に食される食品であること。
(8)原則として、錠剤型、カプセル型等をしていない通常の形態の食品であること。
(9)食品又は関与する成分は、「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年6月1日薬発第476号薬務局長通知)別紙「医薬品の範囲に関する基準」の別添2「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に含まれるものではないこと。
(10)製造方法、製品管理方法が明示されているものであること。
【0145】
なお、上記の揚合の「食事療法」とは、疾病の治療及び再発や悪化の防止を目的として、医師の指示により医学的、栄養学的知見に基づき、栄養素等を管理した食事を摂取することをいい、「関与する成分」とは、食事療法を実施するに当たり、疾病の治療等に関与する食品成分をいう。
【0146】
さらに、個別評価型病者用食品の許可の適否は、専門の学識経験者の意見を聴き判断することが好ましい。
【0147】
「医師により十分エビデンスがあると認められた食品」とは、学術文献等により、薬品に対する配合禁忌の食品、薬品に対する代替効果を期待する食品、薬品の効果を補完する食品及び薬品の副作用を緩和する食品であることが確認され、医師によりその情報に関するエビデンスが十分であると認められた食品である。このような食品については、個別評価型病者用食品及び許可基準型病者用食品と同様に、本発明の装置において処理される食品として、食品リスト記憶部等の記憶部に記憶しておくことが好ましい。
【0148】
医師及び医療関係者により十分エビデンスがあると認められた食品に関するエビデンスの情報とは、保健機能食品制度の枠組みによって「栄養機能食品」と「特定保健用食品」によって認められた食品の中から選ばれた食品のエビデンスに関する付帯情報記憶部に記憶しておくことが好ましい。医師等が、プロトコールによる食品の選択にあたって、そのエビデンスの情報を確認することが必要な場合があるためである。
【0149】
本発明の装置は、管理栄養士が、病者用食事に配合又は添加するための食品を選択するための装置であることが好ましい。本発明の装置が、管理栄養士が病者用食事に配合又は添加するための食品を選択するための装置であることにより、病者が所定の微量元素を摂取するために、病者に提供すべき病者用食事へ配合するための適切な食品を、より適切に決定することができる。なお、本発明の装置は、管理栄養士以外の者が、病者用食事に配合又は添加するための食品を選択するためにも、用いることも可能である。
【0150】
次に、本発明のプログラムについて、図3及び図4を参照し、具体的に説明する。
【0151】
本発明のプログラムをコンピュータにより実行させることによって、病者が所定の微量元素を摂取するために、病者に提供すべき病者用食事へ配合するための適切な食品を決定することができる。
【0152】
図3に示すように、本発明のプログラムを実行するためのコンピュータは、病名及び微量元素リスト記憶部と、微量元素及び好適食品リスト記憶部とを有する。病名及び微量元素リスト記憶部、及び微量元素及び好適食品リスト記憶部は、上述の本発明の装置について説明したものと同様である。
【0153】
図3に示すように、本発明のプログラムは、コンピュータに対して、病名情報入力処理と、病名判定処理と、微量元素判定処理と、好適食品判定処理と、結果表示処理とを実行させる。
【0154】
病名情報入力処理では、病者の病名に関する情報を入力して記憶するように、本発明のプログラムがコンピュータに対して処理を実行させる。
【0155】
病者の病名に関する情報は、医師により診断された病名そのものであることができる。また、病者に処方された少なくとも一つの処方薬品及びその薬品の処方投与量は、病気の種類及びその進行度に応じて、医師により処方される。したがって、処方薬品及びその薬品の処方投与量も病名に関する情報の一種である。
【0156】
図4に示すように、本発明のプログラムは、病名情報入力処理が、医師の診断書を入力するための診断書入力処理、及び病者の氏名及び生年月日、病歴、病気の進行度に関する情報の中から選択される少なくとも一つの病状病歴等を入力して記憶するための、病状病歴等入力処理から選択される少なくとも1つであることが好ましい。本態様では、医師の診断書及び病状病歴等のいずれかにより入力されるので、例えば医師の診断書がない場合であっても、病者の病名情報を得ることができる。病状病歴等は、例えば、医師又は看護師が有している所定の患者の情報を用いることができる。
【0157】
病名判定処理では、病者の病名に関する情報から、病名を判定するように、本発明のプログラムがコンピュータに対して処理を実行させる。病者の病名に関する情報が、医師により診断された病名そのものである場合には、医師により診断された病名を、そのまま病名とすることができる。病者の病名に関する情報が、医師の診断書である場合には、医師の診断書から病名を抽出することができる。同様に、病者の病名に関する情報が、病状病歴等である場合には、病状病歴等の中から病名を抽出することができる。
【0158】
微量元素判定処理では、病名に基づいて、病名及び微量元素リスト記憶部を検索し、その病名の病気に対して効能を有する微量元素を判定するように、本発明のプログラムがコンピュータに対して処理を実行させる。
【0159】
好適食品判定処理では、その病名の病気に対して効能を有する微量元素に基づいて、微量元素及び好適食品リスト記憶部を検索し、その微量元素が含まれる食品を判定するように、本発明のプログラムがコンピュータに対して処理を実行させる。微量元素及び好適食品リスト記憶部には、微量元素と、その微量元素が含まれる食品とを関連付けて記憶されている。そのため、好適食品判定処理により、微量元素に基づいて、その微量元素が含まれる食品を判定することが可能である。
【0160】
なお、好適食品判定処理は、所定の食品と、処方薬品とが配合禁忌であるかどうかを判定することができる。この場合、本発明のプログラムは、後述する薬品入力処理及び第1食品リスト記憶部をさらに含む必要がある。
【0161】
結果表示処理では、好適食品判定処理により判定された結果を表示するように、本発明のプログラムがコンピュータに対して処理を実行させる。
【0162】
図3に示すように、本発明のプログラムは、判定結果を表示するための、結果表示処理を含む。上述の好適食品判定手段により判定した判定結果を、結果表示処理により表示することができる。病者に対して適切な食事のメニューを決定する人、例えば管理栄養士は、この判定結果を参考にして、食品を選択することができる。また、結果表示処理では、その表示結果を適宜選択することができる。すなわち、上記判定処理によって判定された選択された食品のみを表示することもできるし、選択された食品及びその必要量を表示することもできる。また、好適食品判定処理が、所定の食品と、処方薬品とが配合禁忌であるかどうかを判定することができる場合には、その判定結果を表示することができる。
【0163】
なお、結果表示処理としては、ディスプレイ、印刷装置、音声出力装置及びローカルネットワークやインターネット等の通信回線による外部への出力等、公知の表示手段に対して結果を表示することができる。
【0164】
本発明のプログラムは、微量元素の必要摂取量に対応する、食品の必要量を判定することができることが好ましい。
【0165】
本発明のプログラムが、微量元素の必要摂取量に対応する、食品の必要量を判定するために、本発明のプログラムに用いられるコンピュータの病名及び微量元素リスト記憶部が、微量元素の必要摂取量をさらに記憶することが好ましい。また、コンピュータの微量元素及び好適食品リスト記憶部が、食品に含まれる微量元素の含有量をさらに記憶することが好ましい。病名及び微量元素リスト記憶部、並びに微量元素及び好適食品リスト記憶部については、上述の本発明の装置と同様である。
【0166】
本発明のプログラムが、微量元素の必要摂取量に対応する、食品の必要量を判定するために、本発明のプログラムの微量元素判定処理が、微量元素の必要摂取量をさらに判定することが好ましい。病名及び微量元素リスト記憶部が、微量元素の必要摂取量を記憶している場合には、微量元素の種類のみならず、その微量元素の必要摂取量も判定することができる。この結果、本発明のプログラムは、最終的に、微量元素の必要摂取量に対応する、食品の必要量を判定することができる。
【0167】
本発明のプログラムが、微量元素の必要摂取量に対応する、食品の必要量を判定するために、本発明のプログラムの好適食品判定処理が、微量元素の必要摂取量に基づいて、食品の必要量を判定することが好ましい。微量元素及び好適食品リスト記憶部が、食品に含まれる微量元素の含有量を記憶している場合には、最終的に、微量元素の必要摂取量に対応する、食品の必要量を判定することのできるプログラムを得ることができる。
【0168】
図4に示すように、本発明のプログラムを実行させるコンピュータは、微量元素と、その微量元素の不足によって低下する所定の酵素活性を有する酵素とを関連付けて記憶するための、酵素及び微量元素リスト記憶部を、さらに含むことが好ましい。また、本発明のプログラムが、コンピュータに対して、酵素活性測定結果入力処理と、活性低下酵素判定処理とを実行させることを、さらに含むことが好ましい。本実施形態のプログラムによれば、酵素活性の測定結果に基づいて、不足している微量元素を判定することができる。そのため、病名情報入力処理からの情報により判定された不足している微量元素以外にも不足している微量元素がある場合、酵素活性の測定結果に基づいて、不足している微量元素を判定することができる。
【0169】
酵素及び微量元素リスト記憶部は、上述の本発明の装置について説明したものと同様である。
【0170】
酵素活性測定結果入力処理では、酵素活性の測定結果を入力するように、本発明のプログラムがコンピュータに対して処理を実行させる。
【0171】
活性低下酵素判定処理では、酵素活性の測定結果に基づいて酵素活性が低下した酵素を特定するように、本発明のプログラムがコンピュータに対して処理を実行させる。
【0172】
本実施態様のプログラムでは、微量元素判定処理が、酵素活性が低下した酵素に基づいて、酵素及び微量元素リスト記憶部を検索し、酵素の酵素活性の低下の原因となる微量元素を判定することを、さらに含むことが好ましい。本実施形態のプログラムにおいて、微量元素判定処理は、例えば、SODの酵素活性の測定結果に基づいて、微量元素である銅、亜鉛及びマンガンが不足しているか否かを判定することができる。
【0173】
本実施態様のプログラムによれば、酵素活性の測定結果に基づいて、不足している微量元素を判定することができる。そのため、病名情報入力処理からの情報により判定された不足している微量元素以外にも不足している微量元素がある場合、酵素活性の測定結果に基づいて、不足している微量元素を判定することができる。
【0174】
図4に示すように、本発明のプログラムは、コンピュータが、微量元素及びビタミン類含有食品リスト記憶部をさらに含み、コンピュータに対して、ビタミン類含有食品判定処理を実行させることをさらに含むことが好ましい。本実施形態のプログラムによれば、所定の微量元素の体内への吸収を補助するビタミン類を含む食品を判定することができる。そのため、所定の微量元素を、そのビタミン類が含まれる食品とともに摂取することにより、所定の微量元素の体内への摂取を促進することができる。
【0175】
図3に示すように、本発明のプログラムを実行させるコンピュータは、コンピュータが、微量元素と、微量元素が体内に吸収されるために必要なビタミン類及びそのビタミン類が含まれる食品とを関連付けて記憶するための、微量元素及びビタミン類含有食品リスト記憶部を、さらに含む。微量元素及びビタミン類含有食品リスト記憶部は、上述の本発明の装置について説明したものと同様である。
【0176】
ビタミン類含有食品判定処理では、その病名の病気に対して効能を有する微量元素に基づいて、微量元素及びビタミン類含有食品リスト記憶部を検索し、そのビタミン類が含まれる食品を判定するように、本発明のプログラムがコンピュータに対して処理を実行させる。所定の微量元素の体内への吸収を補助するビタミン類が含まれる食品を判定し、選択することにより、所定の微量元素の吸収を促進する食品を判定することができる。
【0177】
本実施態様のプログラムでは、結果表示処理が、ビタミン類含有食品判定処理により判定された結果を表示することを、さらに含む。この結果、所定の微量元素の体内への吸収を補助するビタミン類を含む食品を表示することができる。
【0178】
図4に示すように、本発明のプログラムは、コンピュータに対して、薬品入力処理を実行させることをさらに含み、本発明のプログラムを実行させるためのコンピュータが、第1食品リスト記憶部と、第2食品リスト記憶部と、第3食品リスト記憶部と、第4食品リスト記憶部とをさらに含むことが好ましい。
【0179】
第1食品リスト記憶部、第2食品リスト記憶部、第3食品リスト記憶部、第4食品リスト記憶部は、上述の本発明の装置について説明したものと同様である。
【0180】
薬品入力処理では、病者に処方された少なくとも一つの処方薬品を入力して記憶するように、本発明のプログラムがコンピュータに対して処理を実行させる。薬品入力処理は、本発明の装置の薬品入力手段が行うことと同様な処理を行うことができる。
【0181】
本実施態様のプログラムでは、適合食品判定処理が、処方薬品及び微量元素が含まれる食品に基づいて、第1食品リスト記憶部、第2食品リスト記憶部、第3食品リスト記憶部及び第4食品リスト記憶部の少なくとも1つを検索し、処方薬品に対して微量元素が含まれる食品が、配合禁忌の食品であるか否か、及び/又は好適配合の食品であるか否かを判定することを、さらに含むことが好ましい。この結果、微量元素が含まれる食品の判定に加え、さらに、食品及び処方薬品が配合禁忌であるか否か、薬品の代替効果を期待する食品か、薬品の効果を補完する食品か、薬品の副作用を緩和する薬品か、食品及び処方薬品が配合禁忌であるか否かのいずれかのグループから適合する食品を適切に選定することができる。
【0182】
具体的には、図4に示す本発明のプログラムの実施形態では、好適食品判定処理が、次のように動作するように構成されることが好ましい。すなわち、図4に示す本発明のプログラムの実施形態の好適食品判定処理では、コンピュータに、下記(1)〜(4)を実施させることが好ましい。
(1)食品と、処方薬品とが、配合禁忌であるか否かを判定する。
(2)薬品入力処理により入力された薬品に応じて第2食品リスト記憶部を検索し、食品が、その薬品に対して代替効果を期待する食品であるか否かを判定する。
(3)薬品入力処理により入力された薬品に応じて第3食品リスト記憶部を検索し、食品が、その薬品の効果を補完する食品であるか否かを判定する。
(4)薬品入力処理により入力された薬品に応じて第4食品リスト記憶部を検索し、食品が、その薬品の副作用を緩和する食品であるか否かを判定する。
【0183】
図4に示す本発明のプログラムの実施形態では、好適食品判定処理において、薬品入力処理により入力された薬品に基づいて、第1食品リスト記憶部を検索し、食品と、処方薬品とが、配合禁忌であるか否かを判定することが好ましい。そのため、好適食品判定処理により、入力された食品と、処方薬品とが配合禁忌であるかどうかを判定することができる。
【0184】
図4に示す本発明のプログラムの実施形態では、好適食品判定処理において、薬品入力処理により入力された薬品に応じて第2食品リスト記憶部を検索し、食品が、その薬品に対して代替効果を期待する食品であるか否かを判定することが好ましい。医師のプロトコールが、特定の患者に対して、ある薬品に対して代替効果を期待する食品を摂取するように指示している場合には、その薬品に対して代替効果を期待する食品を、第2食品リスト記憶部の中から見出すことができる。
【0185】
図4に示す本発明のプログラムの実施形態では、好適食品判定処理において、薬品入力処理により入力された薬品に応じて第3食品リスト記憶部を検索し、食品が、その薬品の効果を補完する食品であるか否かを判定することが好ましい。医師のプロトコールが、特定の患者に対して、ある薬品の効果を補完する食品を摂取するように指示している場合には、その薬品の効果を補完する食品を、第3食品リスト記憶部の中から見出すことができる。
【0186】
図4に示す本発明のプログラムの実施形態では、好適食品判定処理において、薬品入力処理により入力された薬品に応じて第4食品リスト記憶部を検索し、食品が、その薬品の副作用を緩和する食品であるか否かを判定することが好ましい。医師のプロトコールが、特定の患者に対して、ある薬品の副作用を緩和する食品を摂取するように指示している場合には、その薬品の副作用を緩和する食品を、第4食品リスト記憶部の中から見出すことができる。
【0187】
図4に示す本発明のプログラムの実施形態は、判定結果を表示するための、結果表示処理を含む。上述の好適食品判定処理により、入力された食品と、処方薬品とが配合禁忌であるかどうかを判定した判定結果、入力された食品が、その薬品に対して代替効果を期待する食品であるかどうかを判定した判定結果、入力された食品が、その薬品の効果を補完する食品であるかどうかを判定した判定結果、及び、入力された食品が、その薬品の副作用を緩和する食品であるかどうかを判定した判定結果を、結果表示処理により表示することができる。また、さらに、対病気好適食品判定処理による、病者の病気に対して好適に適合する食品を判定した判定結果を結果表示処理により表示することができる。管理栄養士等の病者用食事を用意する人は、これらの判定結果の表示を参考にして、病者に提供すべき病者用食事に配合又は添加するための適切な食品を選択することができる。
【0188】
また、本発明の装置は、食品のエビデンスに関する付帯情報記憶部を含むことができる。食品のエビデンスに関する付帯情報記憶部については、本発明の装置について説明したものと同様である。
【0189】
本発明のプログラムは、管理栄養士が、病者用食事に配合又は添加するための食品をコンピュータにより決定するためのプログラムであることが好ましい。
【0190】
本発明のプログラムが、管理栄養士が病者用食事に配合又は添加するための食品を選択するためのプログラムであることにより、病者が所定の微量元素を摂取するために、病者に提供すべき病者用食事へ配合するための適切な食品を、より適切に決定することができる。なお、本発明のプログラムは、管理栄養士以外の者が、病者用食事に配合又は添加するための食品を選択するためにも、用いることも可能である。
【0191】
食品の人体に対する効果を検証するため、食品の臨床実験においてプラセボで、薬と同様の比較検証をして、論理的エビデンスを取るために、野菜などで栄養学的効果実験を検証したところ、医師の関心と理解度を高まることが実証された。具体的には、野菜などの食品をあらかじめ粉末にし、微量元素の含有量をあらかじめ測定し、保管したものを、食事に添加した。粉末中の微量元素の含有量は、コンピュータ等の記憶装置に記憶した。すなわち、これら野菜等を粉末にした食材で、すべての調理食品を作るのではなく、従来の管理栄養士が策定してきたレシピーに、医師の指示する微量元素を付加するように所定の微量元素が含有する食品の粉末を添加することにより、食事を調理した。これにより、食品の粉末中の微量元素の含有量をコンピュータ等の記憶装置に記憶することが可能になった。この結果、医師と栄養士との共通の言語の策定が可能になった。
【0192】
例えば、野菜を生産するための土壌、海産物を採集する海洋などの環境により、食材に含まれる微量元素が異なる。そのため、所定の食品に含まれる微量元素の種類及び含有量を特定する必要がある。そのための手段として、食品を粉末化することにより、食品に含まれる微量元素の種類及び含有量を測定し、粉末食品を貯蔵し、特定のコード化し、それを所定の記憶部に記憶させることができる。
【0193】
本発明により、各病院や薬局などの医療関係に管理栄養士を配置することで、在宅の患者の疾病に合わせた療養食(病者用食事)のレシピーの情報を配布するシステムが完成することができる。なお、本発明は、管理栄養士に限られることはなく、病者用食事の調理に携わる多くの人々、地域の企業の人々、及び地域のNPOの人々などに対して食品の微量元素に関する情報を提供することができる。その結果、病者用食事の調理への人々の参加の機会が増え、地域の活性化とともに地域医療の充実を実現することができる。
【0194】
管理栄養士などが作成した調理指示書を受けた調理現場では、貯蔵された食材粉末(直品粉末)から選択し、添加調理することで、所定の疾病防止、予防、及び疾病治療のための病者用食事を提供することが可能になる。当然、食品の衛生管理は重要であるが、環境菌制御はHACCPとしての技術は既に確立している。多くの人々が調理に参画する機会を提供することで、在宅療養で実現できなかった課題、即ち見守りと食事の提供という必須条件をクリアするばかりか、在宅の主婦の労働力を活用でき、緊急の課題とされている地方都市の活性化と再生を容易に解決できる。これは個々の問題の解決では実現できない課題を、本発明の装置及びプログラムを活用することにより解決できるのである。本発明の装置及びプログラムにより、医療という最高度の技術情報を、調理という技術と連結して、療養中の高齢者の健康回復、健康維持という、社会貢献度の高い仕事に地域住民が参加するためのシステムを構築することができる。
【0195】
上述の本発明の装置及びプログラムにおいて、微量元素及び好適食品リスト記憶部に記憶される食品が、ヒトの生体内の微量元素類似含有の海洋腐植物質由来食品を含むことが好ましい。本明細書において、「海洋腐植物質由来食品」とは、海洋腐植物質を添加若しくは加工した食品、又は海洋腐植物質を用いて生育した植物の食品である。海洋腐植物質には、微量元素が含まれているため、海洋腐植物質由来食品も微量元素を含む。病者に提供する食品の治療の効果のエビデンス性を高めるために、通常の食品の調理する方法に付加して、海洋腐植物質由来食品、例えば海洋腐植物質由来の水溶液で加工した食品又は腐植土を用いて生育した植物の食品を用いることが好ましい。また海洋腐植物質溶融水で調理することで、適量の微量元素が含まれているため、海洋腐植物質由来食品の微量元素を含ませることができる。
【0196】
腐植物質とは、一般的には、例えば、落ち葉や倒木などの植物が、それをエネルギー源とする土壌微生物によって分解されてゆく数百万年の過程の中でできる暗色で不定形の有機物の総称である。特に海洋腐植物質は、海洋において主として海洋プランクトンや海藻類が堆積することにより生成した腐植物質である。そのため海洋腐植物質の微量元素の比率は、海洋から進化した歴史を持つ哺乳類の生体内微量元素の比率に類似する。
【0197】
最近では農業の近代化に伴う食物工場生産で水耕人工栽培が多く見られる。これらの実態を見ると、土中に含まれる微量元素を植物が取り込むのとは異なり、特定植物が自然に取り込む微量元素が供給されていない場合が多く見られるようになった。それらを一つずつ分析することは困難である。これらの課題を解決するために、通常、亜鉛を必要とする場合には、海中で養殖するカキの身の部分を乾燥粉末にして取り入れることが試みられている。特に、昆布などの海中植物は微量元素を多く含み、微量元素補給植物としても採用することができる。もともと生物の発祥は海水中であり、長い年月をかけて進化を続けてきたものである。生物は、陸上の山岳部から海に流れてきた土壌に含まれる微量元素、海藻や海中の動植物が生死を繰り返しながら水中に溶け込んだ栄養素を、新しく生成した生物が、生体に取り組み、現在の生体系を造って生きた歴史がある。そして、海洋には、最近、注目を浴びている海洋腐植物質がある。
【0198】
本発明者の見解としては、長年の微量元素学会の研究の成果を鑑みるならば、多岐にわたる症状の改善に成果からみて、海洋腐植物質由来食品が、SODやGHPxの酵素活性に対して効果的であることは証明されており、投薬の医薬品効果を補完する食品の1つとして位置付けることができるといえる。そのため、本発明の装置及びプログラムにおいて、海洋腐植物質由来食品を、微量元素及び好適食品リスト記憶部中の微量元素が含まれる食品として用いることができる。
【0199】
海洋腐植物質は、一般的に、湿地帯や海底から得られ、藻類の一種である珪藻が数百万年前に堆積して鉱物化した珪藻土層より採取される。海洋腐植物質を添加又は加工した食品である海洋腐植物質由来水溶液は、海洋腐植物質から抽出した物質を含む水溶液であり、海洋腐植物質を自然水に溶解させたものである。海洋腐植物質由来水溶液からは、栄養素としてのタンパク質、脂質、糖質はいずれも検出されず、当然熱量も0kalである。海洋腐植物質由来水溶液中の無機質の微量元素としては、例えば、水溶液中、ナトリウム(Na)103ppm、カルシウム(Ca)283ppm、カリウム5.28ppm、マグネシウム(Mg)89.9ppm、リン(P)0.5ppm、鉄(Fe)131ppm、亜鉛(Zn)0.58ppm、銅(Cu)1.01ppm、マンガン(Mn)6.62ppm、及びセレン(Se)0.5ppmなどが含まれており、アミノ酸ではアラニン107ppm、アスパラギン酸159ppm、グルタミン酸212ppm及びグリシン44ppmなどが含まれており、そのほか微量のビタミンB、及びビタミンEを含有する場合がある。これらの微量元素の比率はヒトの生体内に存在する微量元素比率に類似している。海洋腐植物質由来水溶液を調理水に使用したり、濃度を人体適応濃度に希釈して病者が摂取することができる。そのため、本発明の装置及びプログラムにおいて、海洋腐植物質由来水溶液を、微量元素及び好適食品リスト記憶部中の微量元素が含まれる食品として用いることができる。
【0200】
また、人工栽培や農薬で劣化した土壌の野菜などの課題を解決するために、海洋腐植物質の鉱物を乾燥し水道水で抽出した水溶液を用いて野菜などの植物を生育した食品(海洋腐植物質由来食品)には、海洋腐植物質を由来とする微量元素が含まる。そのため、本発明の装置及びプログラムにおいて、海洋腐植物質を用いて生育した植物の食品を、微量元素及び好適食品リスト記憶部中の微量元素が含まれる食品として用いることができる。
【0201】
海洋腐植物質には、Cu、Zn、Mn及びSe等の微量元素が含まれているので、海洋腐植物質由来食品を摂取することにより、特に医学的に解明されているメカニズム、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)と、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH−Px)とによる活性酸素消去が期待できる。
図1
図2
図3
図4