特許第6653909号(P6653909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6653909
(24)【登録日】2020年1月31日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】三次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/105 20060101AFI20200217BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20200217BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20200217BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20200217BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20200217BHJP
   B29C 64/371 20170101ALI20200217BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20200217BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20200217BHJP
【FI】
   B22F3/105
   B22F3/16
   B33Y10/00
   B33Y50/02
   B33Y40/00
   B29C64/371
   B29C64/393
   B29C64/153
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-124176(P2019-124176)
(22)【出願日】2019年7月3日
【審査請求日】2019年7月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146087
【氏名又は名称】株式会社松浦機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100084696
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 直人
(72)【発明者】
【氏名】天谷 浩一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光慶
(72)【発明者】
【氏名】冨田 誠一
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 朗
(72)【発明者】
【氏名】西川 旺成
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−052778(JP,A)
【文献】 特開2016−181990(JP,A)
【文献】 特開2006−153426(JP,A)
【文献】 特表2016−519711(JP,A)
【文献】 特開2017−048408(JP,A)
【文献】 特開2002−106939(JP,A)
【文献】 特開2001−124382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/105
B22F 3/16
B29C 64/00−64/40
B33Y 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバー内に配置されている造形テーブル上におけるスキージによる粉末の散布、当該散布によって形成された粉末層に対するレーザビーム又は電子ビームによる照射に基づく造形領域の形成工程を採用している三次元造形物の製造方法であって、前記照射を原因として、前記粉末層から発生するヒュームを捕集するヒュームコレクタ内において当該ヒュームを除去するフィルタ、チャンバーの内外にて不活性ガスを含む気体を循環させる送風機、当該送風機に連通している風計を設置した上で、以下のステップによって、チャンバー内外を循環する前記気体の単位時間当りの循環量を制御している三次元造形物の製造方法。
1 風計を通過する前記気体の単位時間当りの循環量を左右する風速につき、前記三次元造形物の製造工程が正常に作動するために必要な風速の上限値及び当該風速の下限値並びに前記上限値及び前記下限値の範囲内にあり、かつ制御の指標となる風速の基準値を設定した上で、前記気体の循環を開始する段階にて、送風機を構成するファンにおいて、風速を前記上限値及び前記下限値の範囲内にある回転数を選択する。
風速を所定の時間間隔毎に測定し、以下のような制御を行う。
(1)測定値が上限値及び下限値の範囲内にある場合には、送風機におけるファンの回転数を維持する。
(2)フィルタにおける目詰まりを原因として測定値が下限値を下回った場合には、送風機におけるファンの回転数を増加した上で、測定値が前記基準値に至った段階における回転数を維持する。
3 前記気体の循環が終了するまで前記2の制御を繰り返す。
【請求項2】
前記ステップ2(1)、(2)に追加して、以下のステップによる測定及び制御を採用していることを特徴とする請求項1記載の三次元造形物の製造方法。
(3)測定値が上限値を上回った場合には、送風機におけるファンの回転数を減少した上で、測定値が前記基準値に至った段階における回転数を維持する。
【請求項3】
前記ステップ2(2)において、ファンの回転数を増加する程度を、測定値と下限値との差に比例するように設定することを特徴とする請求項1記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項4】
チャンバー内に配置されている造形テーブル上におけるスキージによる粉末の散布、当該散布によって形成された粉末層に対するレーザビーム又は電子ビームによる照射に基づく造形領域の形成工程を採用している三次元造形物の製造方法であって、前記照射を原因として、前記粉末層から発生するヒュームを捕集するヒュームコレクタ内において当該ヒュームを除去するフィルタ、チャンバーの内外にて不活性ガスを含む気体を循環させる送風機、当該送風機に連通している風計を設置した上で、以下のステップによって、チャンバー内外を循環する前記気体の単位時間当りの循環量を制御している三次元造形物の製造方法。
1 風計を通過する前記気体の単位時間当りの循環量を左右する風速につき、前記三次元造形物の製造工程が正常に作動するために必要な風速の上限値及び当該風速の下限値並びに前記上限値及び前記下限値の範囲内にあり、かつ制御の指標となる風速の基準値を設定した上で、前記気体の循環を開始する段階にて、送風機を構成するファンにおいて、風速を前記上限値及び前記下限値の範囲内にある回転数を選択する。
風速を連続して測定し、以下のような制御を行う。
(1)測定値が上限値及び下限値の範囲内にある場合には、送風機におけるファンの回転数を維持する。
(2)フィルタにおける目詰まりを原因として測定値が下限値を下回った場合には、送風機におけるファンの回転数を増加した上で、測定値が前記基準値に至った段階における回転数を維持する。
3 前記気体の循環が終了するまで前記2の制御を繰り返す。
【請求項5】
前記ステップ2(1)、(2)に追加して、以下のステップによる測定及び制御を採用していることを特徴とする請求項4記載の三次元造形物の製造方法。
(3)測定値が上限値を上回った場合には、送風機におけるファンの回転数を減少した上で、測定値が前記基準値に至った段階における回転数を維持する。
【請求項6】
所定の時間間隔を基準として、測定された単位時間当りの循環量が下限値を下回る頻度が大きいほど、ステップ2(2)における送風機のファンの回転数を増加する程度を大きく設定することを特徴とする請求項4記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項7】
ステップ2(2)における基準値が、上限値及び下限値の相加平均値又は相乗平均値以上であることを特徴とする請求項1、4の何れか一項に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項8】
ステップ2(2)の制御において、送風機におけるファンの回転数の増加に際し、時間の経過と共に単位時間当たり増加する数値を順次小さくすることを特徴とする請求項1、4の何れか一項に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項9】
ヒュームを捕集するフィルタを2個以上並列に配置する一方、送風機におけるファンの回転数の最大値を設定し、ステップ2の段階又はステップ2より後の段階において、前記ファンの回転数を測定すると共に、ステップ2によって測定された単位時間当りの循環量を実現している前記ファンの回転数が前記最大値以上の回転数に至った場合には、現に作動しているフィルタを切替弁の作動を介して他のフィルタに交換することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8の何れか一項に記載の三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形に際し、スキージの走行によって形成された粉末層に対するレーザビーム又は電子ビームの照射に伴って発生し、かつチャンバー内を漂流するヒュームの量を所定範囲とするためにチャンバーの内外を循環し、かつ不活性ガスを含む気体の単位時間当りの循環量を制御している三次元造形物の製造方法を対象としている。
【背景技術】
【0002】
スキージによって平坦化された粉末層に対し、レーザビーム又は電子ビームを照射する三次元造形においては、当該照射に伴って煙露状のヒュームが必然的に発生する。
【0003】
三次元造形用のチャンバーは、送風機(大抵の場合、チャンバーの外部に設置されている)によって不活性ガスを含む気体の循環が行われているが、チャンバー内を漂流するヒュームの量は、気体の単位時間当りの循環量が少ないほど大きい状態にあり、逆に、当該循環量が多いほど小さい状態にある。
【0004】
前記の関係は、気体の単位時間当りの循環量が小さいほどヒュームが漂流によってヒュームコレクタに移動する時間が長いこと、及びその逆の関係も成立することによって容易に察知し得るところである。
【0005】
ヒュームは、三次元造形チャンバーの外部に設置されているヒュームコレクタ内のフィルタによって捕集されているが、当該フィルタは、ヒュームの捕集に伴って順次目詰まりが生ずる。
【0006】
このような目詰まりは、前記気体の循環による流通に対する抵抗の増加を意味している。
然るに、従来技術においては、このような目詰まりに対し格別の対策を講じていないため、前記気体の単位時間当りの循環量が順次減少し、ひいては、チャンバー内を漂流するヒュームの量も増加することを免れることができない。
【0007】
しかしながら、そのような帰結は、積層された粉末を照射するレーザビーム又は電子ビームによる焼結エネルギーの低下、更には焼結密度不均一という無視することができない弊害が発生することを意味している。
【0008】
チャンバー内におけるヒュームの漂流の影響を考慮した公知技術は、少なからず存在する。
【0009】
例えば、特許文献1においては、既に行われたレーザビームの照射による焼結時間又は照射面積に基づいて、ヒュームがチャンバー内から流出する待機時間を算出した上で、当該待機時間を経過した後にレーザビームの照射開始命令を行う構成を開示している(請求項1)。
【0010】
しかしながら、このような待機時間を設定すること自体、効率的な三次元造形に対する多大な弊害とならざるを得ない。
【0011】
特許文献2においては、チャンバーの内外を循環する不活性ガスの循環量、具体的には、循環における単位時間当りの風量を増加することによって、ヒュームを効率的に回収することを開示している(段落[0009])。
【0012】
しかしながら、不活性ガスが循環する場合の単位時間当りの風量を所定の基準以上に設定したところで、ヒュームコレクタにおけるフィルタの目詰まりによって、次第に前記気体の単位時間当りの循環量が減少するという根本的弊害を免れることは客観的に不可能である。
【0013】
このように、従来技術においては、ヒュームコレクタにおけるフィルタの目詰まりを考慮した上で、チャンバー内を漂流するヒュームの量を所定の範囲内とするような制御に基づく構成を全く開示及び示唆していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第5948462(B1)号公報
【特許文献2】特許第5982046(B1)号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、ヒュームコレクタにおけるフィルタの目詰まりを原因としてチャンバーの内外を循環する不活性ガスを含む気体における単位時間当りの循環量の低下を防止し得る三次元造形物の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するため、本発明は、以下の基本構成a及びbからなる。
a チャンバー内に配置されている造形テーブル上におけるスキージによる粉末の散布、当該散布によって形成された粉末層に対するレーザビーム又は電子ビームによる照射に基づく造形領域の形成工程を採用している三次元造形物の製造方法であって、前記照射を原因として、前記粉末層から発生するヒュームを捕集するヒュームコレクタ内において当該ヒュームを除去するフィルタ、チャンバーの内外にて不活性ガスを含む気体を循環させる送風機、当該送風機に連通している風計を設置した上で、以下のステップによって、チャンバー内外を循環する前記気体の単位時間当りの循環量を制御している三次元造形物の製造方法。
1 風計を通過する前記気体の単位時間当りの循環量を左右する風速につき、前記三次元造形物の製造工程が正常に作動するために必要な風速の上限値及び当該風速の下限値並びに前記上限値及び前記下限値の範囲内にあり、かつ制御の指標となる風速の基準値を設定した上で、前記気体の循環を開始する段階にて、送風機を構成するファンにおいて、風速を前記上限値及び前記下限値の範囲内にある回転数を選択する。
風速を所定の時間間隔毎に測定し、以下のような制御を行う。
(1)測定値が上限値及び下限値の範囲内にある場合には、送風機におけるファンの回転数を維持する。
(2)フィルタにおける目詰まりを原因として測定値が下限値を下回った場合には、送風機におけるファンの回転数を増加した上で、測定値が前記基準値に至った段階における回転数を維持する。
3 前記気体の循環が終了するまで前記2の制御を繰り返す。
b チャンバー内に配置されている造形テーブル上におけるスキージによる粉末の散布、当該散布によって形成された粉末層に対するレーザビーム又は電子ビームによる照射に基づく造形領域の形成工程を採用している三次元造形物の製造方法であって、前記照射を原因として、前記粉末層から発生するヒュームを捕集するヒュームコレクタ内において当該ヒュームを除去するフィルタ、チャンバーの内外にて不活性ガスを含む気体を循環させる送風機、当該送風機に連通している風計を設置した上で、以下のステップによって、チャンバー内外を循環する前記気体の単位時間当りの循環量を制御している三次元造形物の製造方法。
1 風計を通過する前記気体の単位時間当りの循環量を左右する風速につき、前記三次元造形物の製造工程が正常に作動するために必要な風速の上限値及び当該風速の下限値並びに前記上限値及び前記下限値の範囲内にあり、かつ制御の指標となる風速の基準値を設定した上で、前記気体の循環を開始する段階にて、送風機を構成するファンにおいて、風速を前記上限値及び前記下限値の範囲内にある回転数を選択する。
風速を連続して測定し、以下のような制御を行う。
(1)測定値が上限値及び下限値の範囲内にある場合には、送風機におけるファンの回転数を維持する。
(2)フィルタにおける目詰まりを原因として測定値が下限値を下回った場合には、送風機におけるファンの回転数を増加した上で、測定値が前記基準値に至った段階における回転数を維持する。
3 前記気体の循環が終了するまで前記2の制御を繰り返す。
【発明の効果】
【0017】
所定の時間間隔において、不活性ガスを含む気体の単位時間当りの循環量を測定し得る基本構成a、及び連続して不活性ガスを含む気体の単位時間当りの循環量を測定し得る基本構成bにおいては、フィルタの目詰まりを原因として、予め設定した三次元造形物の製造方法が正常に作動するために必要な下限値を外れたとしても、速やかにこのような外れた状態を是正し、チャンバー内の気体の単位時間当りの循環量を左右する風速につき、前記三次元造形物の製造工程が正常に作動するために必要な風速の上限値及び当該風速の下限値の範囲内にあり、かつ制御の指標となる風速の基準値を設定することによって、ヒュームのチャンバー内における単位時間当りの漂流量についても所定の範囲内とし、フィルタによる目詰まりを原因とするチャンバー内におけるヒュームの漂流量の増加という弊害を是正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】基本構成a及びb、更には実施例の作動状況を説明するフローチャートである。
図2】基本構成a及びb、更には実施例において、風速が上限値を上回る場合に、送風機のファンの回転数を減少させるような制御をも採用可能である実施形態の作動の順序を説明するフローチャートである。
図3】基本構成a及びb、更には実施例を実現する装置に関するブロック図である。尚、白線矢印は、不活性ガスを含む気体の循環方向を示しており、直線矢印は、制御方向を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明においては、チャンバー1内外を循環する不活性ガスを含む気体の風速を風計2によって測定し、かつ送風機3におけるファンの回転数につき、制御装置5を介した制御を行っているが、各ステップ1記載のように、基本構成aにおいては、所定の時間間隔毎に測定を行っており、基本構成bにおいては、連続して測定を行っている。
【0020】
前記風速の測定においては、プロペラ、又は風車が使用されている。
【0021】
基本構成aの時間間隔は、チャンバー1の大きさ及び前記気体における単位時間当りの循環量、更にはレーザビーム又は電子ビーム6の照射量によって相違するが、通常、10分〜30分と設定することによって、基本構成aにおける前記効果を達成することができる。
【0022】
基本構成bの連続した測定は、間断なく測定値を検出するという本来のアナログ方式と、コンピュータの個別の作動単位による時間間隔に立脚しているデジタル方式、即ち準アナログ方式の何れをも採用することができる。
【0023】
基本構成bの場合には、連続した測定によって風速が上限値を上回るか下限値を下回る状態を検出することができ、速やかにステップ2(2)の制御を行い得る点において、基本構成aの場合よりも優れている。
但し、基本構成aは、測定を所定の時間間隔毎に行えば済む一方、当該時間間隔を10分〜30分等に設定した場合には、ステップ2(2)の場合のように、風速が下限値を下回るということが例外的であることを考慮するならば、基本構成aは、制御の方法が基本構成bよりもシンプルである。
【0024】
基本構成aと基本構成bとは、ステップ2において前記循環量が上限値及び下限値の範囲内にあるか否かの判断が所定の時間間隔毎に行われるか又は連続して行われるか否かにおいて相違するも、図1のフローチャート及び図3のブロック図に示すように、以下のステップに立脚している。
1 風計を通過する前記気体の単位時間当りの循環量として前記三次元造形物の製造工程が正常に作動するために必要な風速の上限値及び当該風速の下限値並びに前記上限値及び前記下限値の範囲内にあり、かつ制御の指標となる風速の基準値を設定した上で、前記気体の循環を開始する段階にて、送風機におけるファンにおいて、風速を前記上限値及び当該下限値の範囲内となるような回転数を選択する。
風速を所定の時間間隔毎に測定し、以下のような制御を行う。
(1)測定値が上限値及び下限値の範囲内にある場合には、送風機におけるファンの回転数を維持する。
(2)フィルタにおける目詰まりを原因として測定値が下限値を下回った場合には、送風機におけるファンの回転数を増加した上で、測定値が前記基準値に至った段階における回転数を選択し、かつ維持する。
3 前記気体の循環が終了するまで前記2の制御を繰り返す。
【0025】
ステップ1において、気体の風速につき、特定の基準値ではなく、上限値及び下限値の範囲内にあり、かつ制御の指標となる風速の基準値を設定しているのは、適切な循環量を左右する風速が所定の数値幅によって設定可能である一方、特定の基準値に限定した場合には、2(2)のような制御を頻繁に行うことを必要とし、安定した制御が極めて困難とならざるを得ないことに由来している。
更には、ステップ1において、前記気体の循環の当初、送風機3におけるファンの回転数につき、前記上限値及び前記下限値の範囲内にある単位時間当りの循環量を実現する数値を選択することによって、循環の作動当初において適切な循環が実現されることに帰する。
【0026】
フィルタ41の目詰まりによる前記気体における単位時間当りの循環量の減少を制御の原因としていることから、ステップ2(2)のように、単位時間当りの循環量が下限値を下回る場合に、前記2(2)の制御に限定している。
【0027】
ステップ2(2)の制御において、送風機3のファンの回転数につき、上限値と下限値との間の調整値を基準として調整するのは、このような調整値に基づく単位時間当りの循環量の選択及び維持によって、ステップ2(1)の場合と同様に適切な単位時間当りの循環量を実現し得ることに由来している。
但し、送風機3及びフィルタ41は常に正常に作動している訳ではない。
【0028】
即ち、送風機3又はフィルタ41機能のアクシデントによって、例外的に単位時間当りの循環量が上限値を上回る場合が例外的に生じ得ることから、基本構成a及びbのステップ2においては、(1)及び(2)だけでなく、以下のステップによる測定及び制御をも追加し得る実施形態も採用可能である。
(3)測定値が上限値を上回った場合には、送風機3におけるファンの回転数を減少した上で、測定値が調整値に至った段階における回転数を選択し、かつ維持する。
【0029】
通常、上限値と下限値との相加平均値又は相乗平均値以上の調整値を実現するような回転数が選択されている。
【0030】
平均値自体ではなく、平均値以上の循環量を選択するのは、通常、フィルタ41の目詰まりが継続し、ステップ2(2)の制御を行った後に実現された単位時間当りの循環量が次第に低下する場合が圧倒的に多いことに由来している。
【0031】
従って、前記調整値としては、上限値近傍の数値に至るような単位時間当りの循環量も選択可能である。
【0032】
基本構成a及びbにおいては、2(2)の制御において、送風機3のファンの回転数の増加に際し、時間の経過と共に単位時間当たり増加する数値を順次小さくする実施形態を採用することができる。
【0033】
このような実施形態の場合には、最初に速やかにファンの回転数を減少又は増加させた上で、目標とし、かつ制御の指標となる風速の基準値を正確に実現するような回転数を選択することができる。
【0034】
基本構成aにおいては、前記ステップ2(2)において、送風機3におけるファンの回転数を増加する程度を、測定値と下限値との差に比例するように設定することを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0035】
このような実施形態の場合には、前記差の程度如何に拘らず、前記循環量を速やかに調整値に至るような制御を実現することができる。
【0036】
基本構成bにおいては、所定の時間間隔を基準として測定された単位時間当りの循環量が下限値を下回る頻度が大きいほど、ステップ2(2)における送風機3のファンの回転数を増加する程度を大きく設定することを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0037】
上記実施形態の場合には、速やかな制御と安定した制御とを両立させることができる。
【0038】
以下、実施例に即して説明する。
【実施例】
【0039】
基本構成a及びbにおいては、フィルタ41の目詰まりを原因として、ステップ2(2)のように、前記ファンの回転数を増加しているが、このような増加が累積した場合には、次第に前記ファンの回転数は順次上昇することに帰する。
【0040】
しかも、フィルタ41の目詰まりが限度に近い状態に至った場合には、ファンの回転数も目詰まりが生じていない当初の段階に比し、相当高い回転数に至っている。
【0041】
実施例においては、図1図2のフローチャート及び図3のブロック図に示すように、ヒュームを捕集するフィルタ41を2個以上並列に配置する一方、送風機3におけるファンの回転数の最大値を設定し、基本構成a及びbのステップ2の段階又はステップ2より後の段階において、前記ファンの回転数を測定する共に、ステップ2によって測定された単位時間当りの循環量を実現している前記ファンの回転数が前記最大値以上の回転数に至った場合には、現に作動しているフィルタ41を切替弁42の作動を介して他のフィルタ41に交換することを特徴としている。
尚、図1図2のフローチャートは、ステップ2の段階より後の段階において、測定及び交換を行う場合を示す。
【0042】
このような実施例においては、目詰まりを原因とするフィルタ41の交換が自動的に実現され、フィルタ41の交換を原因とする三次元造形による作業の中断を避けることができる。
【0043】
最高回転速度は、限度に近い目詰まりの程度によって左右されるが、当該最高回転速度を、通常のファンの回転速度の範囲内に設定した場合には、安定した状態にて、順次フィルタ41を自動的に交換し、かつ円滑な三次元造形を実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、チャンバー内における不活性ガスを含む前記気体における単位時間当りの循環量を適切な範囲に設定することによって、チャンバー内を漂流するヒュームの量をも所定の範囲内に設定し、かつレーザビーム又は電子ビームの均一な焼結を実現している点において画期的であり、その利用範囲は絶大である。
【符号の説明】
【0045】
1 チャンバー
2 風
3 送風機
4 ヒュームコレクタ
41 フィルタ
42 切替弁
5 制御装置
6 レーザビーム又は電子ビーム
【要約】
【課題】チャンバー内における気体の循環量を所定の範囲内とする三次元造形物の製造方法を提供すること。
【解決手段】
以下のステップによって、前記課題を達成している三次元造形物の製造方法。
1 風計2を通過する前記循環量を左右する風速につき、前記三次元造形物の製造工程が正常に作動するために必要な風速の上限値及び当該風速の下限値並びに前記上限値及び前記下限値の範囲内にあり、かつ制御の指標となる風速の基準値の設定。
風速を測定し、以下のような制御を行う。
(1)測定値が上限値及び下限値の範囲内にある場合には、送風機3におけるファンの回転数を維持。
(2)フィルタ41の目詰まりを原因として測定値が下限値を下回った場合には、前記ファンの回転数を増加した上で、測定値が前記基準値に至った段階における回転数の維持。
【選択図】図1
図1
図2
図3