特許第6653933号(P6653933)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6653933
(24)【登録日】2020年1月31日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】希土類酸化物のナノ粒子製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 17/00 20200101AFI20200217BHJP
   C09K 11/78 20060101ALI20200217BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   C01F17/00 A
   C09K11/78CPB
   C09K11/08 AZNM
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-159208(P2015-159208)
(22)【出願日】2015年8月11日
(65)【公開番号】特開2017-36189(P2017-36189A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2018年8月10日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年月2月12日国立大学法人島根大学第48回卒業研究・修士論文発表会予稿集で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年月2月14日国立大学法人島根大学において開催された第48回卒業研究・修士論文発表会で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年月5月22日鹿児島市かごしま市民交流センターにおいて開催された第32回希土類討論会で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年月7月4日国立大学法人九州大学において開催された9th Mini Symposium on Liquidsで発表
(73)【特許権者】
【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
(74)【代理人】
【識別番号】100116861
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 義博
(72)【発明者】
【氏名】西山 桂
(72)【発明者】
【氏名】原田 聖
(72)【発明者】
【氏名】秋田 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】笹井 亮
(72)【発明者】
【氏名】冨田 恒之
【審査官】 若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−036384(JP,A)
【文献】 特表2002−507630(JP,A)
【文献】 特開2004−099383(JP,A)
【文献】 特開平05−147931(JP,A)
【文献】 KABIR, M. et al.,Co-precipitation synthesis of nano Y2O3:Eu3+ with different morphologies and its photoluminescence properties,Ceram. Int. ,英国,Elsevier Ltd. and Techna Group S.r.l.,2014年 5月27日,Vol. 40,pp. 10877-10885
【文献】 ANUPRIYA, K. et al.,Facile synthesis of ceria nanoparticles by precipitation route for UV blockers,J. Alloys Compd. ,NL,Elsevier B.V.,2013年12月21日,Vol. 590,pp. 406-410
【文献】 JADHAV, A. P. et al.,Effect of Different Additives on the Size Control and Emission Properties of Y2O3:Eu3+ nanoparticles Prepared through the Coprecipitation Method,J. Phys. Chem. ,米国,American Chemical Society,2009年 8月27日,Vol. 113,pp. 16652-16657
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 1/00−17/00
C09K 11/00−11/89
CAplus/REGISTRY(STN)
Scopus
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性界面活性剤の添加された、希土類イオンが溶解した水溶液について、
pHと温度とを調整することにより、
式(1)、(2)または(3)で表されるイオン性界面活性剤の親水基に希土類イオンが結合したミセルを形成させてこれを沈殿させ、
沈殿物を加熱焼結して有機物その他の不純物除去をおこない、
100nm以下の粒径の粒子が粒子数として95%以上を占める希土類酸化物粒子を得ることを特徴とする希土類酸化物のナノ粒子製造方法。

【数1】
【数2】

【数3】
【請求項2】
式(2)で表されるイオン性界面活性剤を用い、平均粒径が20nm〜40nmである希土類酸化物粒子を得ることを特徴とする請求項1に記載の希土類酸化物のナノ粒子製造方法。
【請求項3】
希土類が、Yと、発光希土類であるDy,Tb,Er,または,Euと、を含んだ希土類であることを特徴とする請求項1またはに記載の希土類酸化物のナノ粒子製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類酸化物のナノ粒子製造方法に関し、特に、バイオマーカー等への利用も可能なナノ粒子製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、希土類は機能性に富み、なかでも発光材料として様々な応用が可能であるため広く研究されている。
一方で、希土類であるか否かに限らず、ナノ粒子はバルクとは全く異なる物理的性質や化学的物性を示す場合もあるため、ナノ粒子の製造技術の開発も進んでいる。
【0003】
したがって、希土類酸化物等のナノ粒子は、発光材料としてはもとより希土類ナノ粒子の基礎研究をおこなう上でも重要である。
【0004】
しかしながら、ナノ粒子に関する既存材料や製造技術には次のような問題点があった。
(1)合成手法としてソルボサーマル法や水熱法を使用するので、高圧(10気圧〜100気圧)に耐える反応容器が必要となる。
(2)仕込み原料や、反応圧力、温度に依存して、ナノ構造体が、ナノ粒子、ナノロッドと変化する。すなわち、条件制御のパラメータが多く、得たい粒径のナノ粒子のみを効率よく合成する条件を探索することが非常に難しい。
(3)ソルボサーマル法では、反応に有機溶媒を必要とするので、廃液処理が必要であることに加えて、反応進行中に発生する気化した有機溶媒を適切に処理する必要がある。すなわち、取扱いに注意を要する後処理等をも考慮した製造設計が必要となる。
(4)発光材料としてよく用いられる既存の量子ドットは、カドミウム(Cd)やセレン(Se)、テルル(Te)等の毒劇物に指定された原料を用いるので、合成従事者においても、使用者においても、取扱いには細心の注意が必要である。
【0005】
なお、本願発明者らの発明により、劇毒物等を用いず簡便に希土類酸化物粒子を得る方法も知られている(特許文献1)。しかしながら、この技術では、粒径が大きく、ナノ粒子の基礎的研究に資することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−36384号公報
【特許文献2】特開2000−58951号公報
【特許文献3】特表2002−540247号公報
【特許文献4】特表2002−540247号公報
【特許文献5】特開2009−249507号公報
【特許文献6】特開2006−207027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、高圧反応環境が不要であって有機溶媒も用いない、希土類ナノ粒子の簡便な製造方法を提供することを目的とする。
また、高圧反応環境が不要であって有機溶媒も用いない、発光希土類ナノ粒子の簡便な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の希土類酸化物のナノ粒子製造方法は、イオン性界面活性剤の添加された、希土類イオンが溶解した水溶液について、pHと温度とを調整することにより、 式(1)、(2)または(3)で表されるイオン性界面活性剤の親水基に希土類イオンが結合したミセルを形成させてこれを沈殿させ、沈殿物を加熱焼結して有機物その他の不純物除去をおこない、100nm以下の粒径の粒子が粒子数として95%以上を占める希土類酸化物粒子を得ることを特徴とする。
【数1】

【数2】

【数3】
【0009】
なお、ここにいう希土類は、請求項のように複数の希土類から構成されていることを妨げない。
希土類イオンが溶解した、とは、希土類塩の水溶液の態様を挙げることができるが、可溶性であれば、酸化物等を原料としてもよく、特に限定されるものではない。
粒子数として95%以上とは、100nmを超える粒径の粒子が5%未満であることを意味する。すなわち、粒子数比として、100nm以下の粒径の粒子数:100nmを超える粒径の粒子数=95以上:5未満、であることをいう。
【0010】
焼成温度は、不純物除去の観点からピーク温度を600℃以上とするのが好ましい。
【0012】
請求項に記載の希土類酸化物のナノ粒子製造方法は、請求項1に記載の希土類酸化物のナノ粒子製造方法において、式(2)で表されるイオン性界面活性剤を用い、平均粒径が20nm〜40nmである希土類酸化物粒子を得ることを特徴とする。
【0013】
請求項に記載の希土類酸化物のナノ粒子製造方法は、請求項1またはに記載の希土類酸化物のナノ粒子製造方法において、希土類が、Yと、発光希土類であるDy,Tb,Er,または,Euと、を含んだ希土類であることを特徴とする。
【0014】
Yは主材料ないし母材と表現することができ、発光希土類は添加剤ないしドーパントと表現することもできる。
ここで、発光希土類は、その仕込み比に応じてYのナノ粒子に取り込まれる。
UV照射により、Dyは青および黄緑,Tbは緑,Erは緑,Euは橙に発光するので、可視光域の単色発光はもとより、発光希土類の配合比を変化させることによっても、また、励起光の波長制御によっても、色相設計(中間色設計)が容易な発光ナノ材料を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高圧反応環境が不要であって有機溶媒も用いない、希土類ナノ粒子の簡便な製造方法を提供することができる(請求項1、2)
また、高圧反応環境が不要であって有機溶媒も用いない、発光希土類ナノ粒子の簡便な製造方法を提供することができる(請求項)。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】イオン性界面活性剤の鎖長と得られる粒子との関係を示した電子顕微鏡写真である。
図2】イオン性界面活性剤の鎖長と得られる粒子の粒径分布との関係を示したグラフである。
図3】イオン性界面活性剤の鎖長とユウロピウムの発光スペクトルの関係を示した図である。
図4】焼成温度と酸化イットリウムの形成との関係を示した回折グラフである。
図5】Eu@Yが細胞壁内への取り込まれた様子を示すUV発光の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<合成概要>
合成の概要は次の通りである。ここでは、イオン性界面活性剤として式(2)においてM=Na、すなわちオクチル硫酸ナトリウムを用いる例について説明する。なお、オクチル硫酸ナトリウムの化学式は次の通りである。
【数4】
【0018】
1.
オクチル硫酸ナトリウム(Alfa Aesar社製:型番A11786 日本国内での取扱:和光純薬工業株式会社)、希土類化合物の粉末、必要に応じてドープする発光希土類化合物の粉末、を、水溶液中に分散させる。希土類化合物は、硝酸塩や酸化物を挙げることができる。
2.
溶液温度を40℃に、pHを9に、それぞれ保ちながら72時間攪拌する。pH調整には尿素(和光純薬工業株式会社製:型番219−00175)を用いた。均一沈殿法により、ミセルが形成される。なお、オクチル硫酸ナトリウムの臨界ミセル濃度(CMC)は133.3m mol dm−3である。
3.
不純物をろ過したのち、ろ液を乾燥する(沈殿が促進される)。
4.
乾燥したものを電気炉で室温から4時間かけて800℃まで昇温し、800℃で2時間焼成し、4時間かけて室温まで降温する。これにより、希土類酸化物のナノ粒子が得られる。
【0019】
なお、希土類元素は、互いに物理的、化学的性質が近似しているので、発光希土類を添加するとその仕込比に応じた希土類酸化物のナノ粒子が得られる。
また、疎水基の鎖長をかえた式(1)や式(3)で表されるイオン性界面活性剤を用いても同様に合成可能である(鎖長を表す炭素数Cnについては、適宜、式1ではCn=7、式2ではCn=8、式3ではCn=9と表すものとする)。

【0020】
<実験例1:鎖長と粒径>
イオン性界面活性剤の鎖長Cnの違い(Cn=16,12,10,8)による希土類酸化物のナノ粒子の粒径を調べる実験をおこなった。用いたイオン性界面活性剤は、Cn=18についてはヘキサデシル硫酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製:型番324−35045)であり、Cn=12についてはドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製:型番151−21−3)であり、Cn=10についてはデシル硫酸ナトリウム(Alfa Aesar社製:型番A16299、日本国内での取扱:和光純薬工業株式会社)である。なお、Cn=8については前述のオクチル硫酸ナトリウム(Alfa Aesar社製:型番A11786)である。
また、溶解液に分散させる希土類化合物としては、硝酸イットリウム(III)n水和物(和光純薬工業株式会社製:型番255−00551。以下、適宜「硝酸イットリウム」と記述。)を用いた。
【0021】
具体的には、次の通りとした。
界面活性剤(ヘキサデシル硫酸ナトリウムの場合は、0.86g、ドデシル硫酸ナトリウムの場合は1.5g、デシル硫酸ナトリウムの場合は0.40g、オクチル硫酸ナトリウムの場合は0.40g)、尿素50g、硝酸イットリウム2.00gを量り取り、水50cmに分散させた。なお、界面活性剤濃度は臨界ミセル濃度を上回っている。
次に、水溶液を温度40℃、pH=9に、それぞれ保ちながら72時間攪拌を行った。
さらに、不純物を除去したのち溶液を乾燥させ、電気炉で焼成およびさらなる不純物除去をおこない、酸化イットリウムのナノ粒子を作成した。
【0022】
加熱に際しては、乾燥したものを電気炉で室温(25℃)から4時間かけて800℃まで昇温し、800℃で2時間焼成し、4時間かけて室温まで降温した。これにより、希土類酸化物のナノ粒子が得られた。
【0023】
得られた粉末を、FE−SEM(フィールドエミッション型電子顕微鏡)を使用して形態観察するとともに、XRD(X線回折)により、有機物等の不純物が除去された純粋な酸化イットリウムであると同定できた。なお、以降では、必要に応じて、EDX(エネルギー分散型X線分光法)、ICP−AES(誘導結合型プラズマ発光分光分析法)も用いて同定した。
【0024】
生成物(ナノ粒子)の電子顕微鏡写真を図1に示した(Cn=8については、スケールをかえたものも示している)。また、粒径分布について図2に示した。
【0025】
図から明らかなように、Cn=16である場合には粒径は一定とならず、Cn=12のとき平均粒径は500nm、Cn=10のとき平均粒径は200nm、Cn=8のとき平均粒径は35nmであった。特に、Cnが10未満となると粒径は急激に小さくなり、ナノ粒子が得られることが確認できる。
【0026】
なお、鎖長が短くなると粒径分布も狭くなり、Cn=8では100nm以下の粒径の粒子が粒子数として全体の95%以上を占める。鎖長と粒径分布を考慮すれば、Cn=9では平均粒径は100nm程度以下、Cn=7では、20nm程度以下の粒径が得られるといえる。
【0027】
特に、バイオマーカーとして利用する場合には細胞壁や細胞膜を通過する条件として粒径100nm以下であることが一つの目安となり、得られたナノ粒子は好適であるといえる。また、希土類酸化物のナノ粒子自体の研究基礎材料としても好適であるといえる。
【0028】
<実験例2:発光希土類のドープ>
次に、発光希土類をドープした場合に、同様のナノ粒子が得られるかを確認した。
実験には、イオン性界面活性剤としてオクチル硫酸ナトリウム、母材としてイットリウム、発光希土類としてユウロピウムを用いた。
【0029】
具体的には、次の通りとした。
界面活性剤所定量、尿素50g、硝酸イットリウム1.96g、硝酸ユウロピウムn水和物(和光純薬工業株式会社:053−08373。以下、適宜「硝酸ユウロピウム」と記述)0.04gを量り取り、水50cmに分散させた。これは、硝酸イットリウムと硝酸ユウロピウムの質量比が98:2となるように仕込んだものである。
界面活性剤は、Cn=12のドデシル硫酸ナトリウムを用いる場合は1.5g、Cn=10のデシル硫酸ナトリウムを用いる場合は0.40g、Cn=8のオクチル硫酸ナトリウムを用いる場合は0.40gとした。これらの界面活性剤濃度は臨界ミセル濃度を上回っている。
次に、水溶液を温度40℃、pH=9に、それぞれ保ちながら72時間攪拌を行った。
さらに、不純物を除去したのち溶液を乾燥させ、電気炉で焼成およびさらなる不純物除去をおこない、硝酸ユウロピウムがドープされた酸化イットリウムのナノ粒子を作成した。
【0030】
まず、得られた粉末の粒度分布や平均粒径を測定したところ、母材のみの場合(実験例1)と同様であった。すなわち、添加される発光希土類に本発明のナノ粒子製造方法は依存しないことが確認できた。
【0031】
次に、紫外線(UVA領域)を照射すると、ユウロピウム特有の発光(橙色)が確認できた。また、この粉末(ナノ粒子)をICP−AESで分析したところ、母材と発光希土類の原料の仕込比に応じた希土類重量比となっていることを確認した。このことから、本発明は、発光希土類を用いたナノ粒子の調光設計を容易とする合成方法であるともいえる。
【0032】
なお、鎖長Cnをかえた場合のUV励起の発光強度について調べた。結果を図3に示す。図示したように、Cnをかえても、発光希土類はほぼ同様のスペクトルを示すことを確認した。すなわち、本発明は、得られるナノ粒子の発色はそのままに、イオン性界面活性剤の鎖長に応じて、粒径を制御できる合成方法であるともいえる。
【0033】
<実験例3:焼成温度>
次に焼成温度について検討した。実験1と同様の実験系で、ピーク温度を100℃〜900℃まで変化させたときに、どのように酸化イットリウムが形成されるかの実験をおこなった。結果を図4に示す。図から明らかなように、ピーク温度が500℃までは、酸化イットリウムが形成されていないかまたは不純物が残存することがわかる。しかしながら600℃を以上であると、酸化イットリウムのみが合成される(不純物が蒸散するなどして除去されている)ことが確認できる。なお、図示は省略するが、顕微鏡写真からナノ粒子が形成されていることも確認した。
【0034】
<実験例4:発光バイオマーカー>
実験例2で得られたユウロピウムがドープされた酸化イットリウムナノ粒子(平均粒径=35nm)を用いて、バイオマーカーとしての使用可否確認をおこなった。この粒子をEu@Yと表記することとする。
【0035】
イネを水耕栽培し、根から、Eu@Yを吸収させた。その断面を光顕観察したところ、UV励起により発光を確認した。すなわち、細胞壁の内側にEu@Yが取り込まれていることを確認した。励起の有無の光顕像を図5に示す。
なお、Cn=12とした平均粒径500nmのEu@Yを用いて同様の実験をおこなったが、植物細胞内には取り込まれていないことを確認した。
【0036】
本発明のナノ粒子製造方法は、劇毒物を用いず、また、有機物も焼結の際に除去されるので、得られるナノ粒子は安全性が高いものといえる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、発光希土類をその仕込比に応じてナノ粒子に取り込ませることが可能である。これを応用して微量の元素を取り込ませて、発光マーカー自体をサードパーティメーカ品と区別させることも可能となる。
【0038】
また、得られるナノ粒子を細胞やバクテリア等に注入し、植物の機能発現部位や病斑部に選択的に付着させ、紫外線照射によって当該部位を視覚化できる。ドープする発光希土類:Ln3+の選択により発光波長制御が容易なので、異なる部位に付着させたマーカーを異なる色で発光させることもできる。
【0039】
このほか、得られるナノ粒子は、可視光の多様な波長で発光させることもできるので照明材料、装飾品としても利用できる。
【0040】
さらに、有価証券やクレジットカードに付着、印刷することにより偽造防止等のセキュリティ材料としても利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5