特許第6653948号(P6653948)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6653948
(24)【登録日】2020年1月31日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】定着体の残存緊張力評価装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/80 20060101AFI20200217BHJP
   G01L 1/24 20060101ALI20200217BHJP
   G01B 11/22 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   E02D5/80 Z
   G01L1/24 A
   G01B11/22 G
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-166523(P2015-166523)
(22)【出願日】2015年8月26日
(65)【公開番号】特開2017-43949(P2017-43949A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000184687
【氏名又は名称】小松マテーレ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502012705
【氏名又は名称】伸興電線株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390029012
【氏名又は名称】株式会社エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 智基
(72)【発明者】
【氏名】藤原 優
(72)【発明者】
【氏名】林 豊
(72)【発明者】
【氏名】水谷 康男
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 春佳
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−279424(JP,A)
【文献】 特開2004−125587(JP,A)
【文献】 特開昭57−190237(JP,A)
【文献】 特開2000−345565(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01980712(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/80
G01L 1/24
G01B 11/00
G01B 11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設されるアンカー体と、地上に突出するアンカー頭部と、前記アンカー体と前記アンカー頭部とを連結する引張り部とを有し、アンカー頭部と地上面との間には支圧板を介在させてなるグランドアンカーを備え、
前記支圧板には、前記引張り部が貫挿する貫挿孔が設けられ、該貫挿孔の内周面には、FBG光ファイバセンサが設けられた光ファイバケーブルが
下り勾配あるいは上り勾配をなして螺旋状に配置され、
前記FBG光ファイバセンサによって前記支圧板の圧縮歪みの違いを検知可能とした、
ことを特徴とする定着体の残存緊張力評価装置。
【請求項2】
前記支圧板は、FRP製で形成した、
ことを特徴とする請求項1記載の定着体の残存緊張力評価装置。
【請求項3】
前記貫挿孔の内周面に螺旋状の凹溝を形成し、該凹溝内に前記FBG光ファイバセンサが設けられた光ファイバケーブルを収納してなる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の定着体の残存緊張力評価装置。
【請求項4】
前記FBG光ファイバセンサが設けられた光ファイバケーブルによる支圧板の圧縮歪みの違い検知は、前記支圧板の貫挿孔内周面に2回線以上の光ファイバケーブルの回線を配置して検知する、
ことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の定着体の残存緊張力評価装置。
【請求項5】
前記FBG光ファイバセンサは前記凹溝内に複数個配置され、複数個のFBG光ファイバセンサで検知された支圧板の圧縮歪み値を平均化し、支圧板に生じる歪みを平均的歪みとして計測する、
ことを特徴とする請求項3記載の定着体の残存緊張力評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着体、特にグランドアンカーの残存緊張力評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グランドアンカーの構築は、例えば、斜面の安定化を図るなどの目的で従来より大量に法面あるいは擁壁面などにおいて実施、施工されている。
しかるに、近年、その供用から数十年が経過し、グランドアンカーの残存緊張力の低下やグランドアンカー内部の引張り部(テンドン)の破壊によるアンカーの引き抜けなどの事例が多数報告されるに至っている。
【0003】
そこで、近年、各所に点在する多数のグランドアンカーの効率的な維持管理装置及び維持管理方法の構築が求められている。
現状の維持管理における前記アンカー機能の評価は、点検および健全性調査によって行われている。
このうち、点検は主に目視点検によって実施され、アンカー機能の外観からの評価として行われる。一方で、点検結果から更に健全性調査が必要と判断された場合、主にリフトオフ試験(実際に油圧ジャッキを現地のアンカー個々に設置し、その引張試験により、荷重-変位関係を描き、屈曲点を利用して残存緊張力を推定する手法)によるアンカーの残存緊張力の測定が実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−63956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述したリフトオフ試験は大規模な試験装置を用い、高コストかつ長時間を要することから、多数施工されたグランドアンカーの一部に実施されるにとどまる。このように現状のアンカーの機能評価は多数のグランドアンカーに対して充分に実施されているとはいえず、簡便かつ安価に多くのグランドアンカーの残存緊張力を評価できる装置や手法が要請されるに至っている。
【0006】
かくして、本発明は前記従来の課題に対処すべく創案されたものであって、簡便かつ安価に多くのグランドアンカーの残存緊張力を評価できる装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
地中に埋設されるアンカー体と、地上に突出するアンカー頭部と、前記アンカー体と前記アンカー頭部とを連結する引張り部とを有し、アンカー頭部と地上面との間には支圧板を介在させてなるグランドアンカーを備え、
前記支圧板には、前記引張り部が貫挿する貫挿孔が設けられ、該貫挿孔の内周面には、FBG光ファイバセンサが設けられた光ファイバケーブルが
下り勾配あるいは上り勾配をなして螺旋状に配置され、
前記FBG光ファイバセンサによって前記支圧板の圧縮歪みの違いを検知可能とした、
ことを特徴とし、
または、
前記支圧板は、FRP製で形成した、
ことを特徴とし、
または、
前記貫挿孔の内周面に螺旋状の凹溝を形成し、該凹溝内に前記FBG光ファイバセンサが設けられた光ファイバケーブルを収納してなる、
ことを特徴とし、
または、
前記FBG光ファイバセンサが設けられた光ファイバケーブルによる支圧板の圧縮歪みの違い検知は、前記支圧板の貫挿孔内周面に2回線以上の光ファイバケーブルの回線を配置して検知する、
ことを特徴とし、
または、
前記FBG光ファイバセンサは前記凹溝内に複数個配置され、複数個のFBG光ファイバセンサで検知された支圧板の圧縮歪み値を平均化し、支圧板に生じる歪みを平均的歪みとして計測する、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡便かつ安価に多くのグランドアンカーの残存緊張力を評価できる装置を提供できるとの優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。
【0010】
図1に本発明の実施例を示す。
本発明で使用されるグランドアンカー1は、地中2に埋設されるアンカー体3と、地上に突出するアンカー頭部5と、前記アンカー体3と前記アンカー頭部5とを連結する引張り部6とを有して構成されている。そして、本発明では、アンカー頭部5と地上面4との間には支圧板7を介在させている。
【0011】
図1から理解されるように、アンカー体3は、地盤との摩擦抵抗若しくは支圧抵抗を地盤に伝達する為に設置される抵抗部分であり、一般的にグラウトにより造成されている。
引張り部6は、アンカー頭部5からの引張り力をアンカー体3に伝達させる部分をいい、テンドンとも称される。
アンカー頭部5は、支圧板7からの力を引張り力として引張り部6に伝達させるための部分である。
【0012】
尚、前記の如く、本発明では、アンカー頭部5と地上面4との間に支圧板7を介在させている。支圧板7は、例えば、所定の厚みを有する略方形状の板体として構成され、その材質は炭素繊維形成板などで、腐食せず、軽量な複合材料が用いられる。具体的にはFRPなどで形成される。
【0013】
支圧板7には、前記引張り部6が貫挿する貫挿孔8が上下面を貫通して設けられ、該貫挿孔8の内周面には、内周面の上下方向に亘って、FBG光ファイバセンサ9が取り付けられた光ファイバケーブル10が下り勾配あるいは上り勾配をなして螺旋状に旋回して配置されている。
【0014】
具体的には、貫挿孔8の内周面に螺旋状に旋回する凹溝11を形成し、該凹溝11内に前記FBG光ファイバセンサ9が間隔をあけて複数取り付けられた光ファイバケーブル10を収納して配置することが考えられる。尚、凹溝11内への光ファイバケーブル10の収納後の固定には接着材による凹溝11内固定が考えられる。
【0015】
ここで、FBG光ファイバセンサ9は、図4から理解されるように、光ファイバケーブル10の一部に紫外線を照射して一定周期のグレーティング(回折格子)を加工したもので、このFiber Bragg Grating、すなわち、FBGに光を入射させると、グレーティング周期に応じた特定波長の反射光が戻ってくる。ここで、FBG近傍の光ファイバに軸方向歪みが発生し、FBGのグレーティング周期が変化すると反射光の波長がシフトする性質を有する。本発明では、そのシフトする性質を利用して軸方向の歪みを計測するのである。
【0016】
すなわち、FBG光ファイバセンサ9によって支圧板7の圧縮歪みの違い、例えば、グランドアンカー1の残存緊張力が低下していない状態の圧縮歪みの値と残存緊張力が低下した状態の圧縮歪みの値とを検知出来るようにしたのである。
【0017】
この様に、支圧板7に圧縮歪みが測定可能なFBG光ファイバセンサ9を埋設することで、支圧板7の板厚方向(貫挿孔内周面の上下方向)に発生する歪みを計測でき、グランドアンカー1の残存緊張力の低下を常時あるいは、定期的に監視できるものとなる。
【0018】
ここで、光ファイバケーブル10は、ファイバの皮膜材に樹脂が使われるため、FRP材料で形成されている支圧板7との相性が良く、さらに光ファイバケーブル10は細径であり、支圧板7の貫挿孔8内周面に設けられた螺旋状に旋回する凹溝11内への設置が容易で、また長寿命で、比較的外的環境影響を受けにくい特徴を有している。よって、FRP製支圧板7と相まっての長期モニタリング装置としては最適なセンシング技術であると言える。
【0019】
すなわち、グランドアンカー1は、アンカーに作用する引張力を地盤に伝達するためのシステムであり、このグランドアンカー1に残存緊張力の低下が生じた場合、地盤との接触面に設置された支圧板7のアンカー頭部5周囲に生じる板厚方向の歪み量が低下するからである。
【0020】
本発明では、この特性に着目し、前記貫挿孔8の内周面凹溝11内に螺旋状にFBG光ファイバセンサ9を複数個配置出来るよう光ファイバケーブル10を収納し、アンカー頭部5周囲における支圧板7の板厚方向の平均的な圧縮歪みを常時あるいは、定期的に計測できる構造としたのである。
【0021】
本発明により、光ファイバ計測機器を用い、現地で簡易的、且つ長期的に支圧板7の圧縮歪みからグランドアンカー1の残存緊張力を計測できるモニタリングシステムを提供できるものとなった。
【0022】
尚、FBG光ファイバセンサ9は線上の歪み、すなわち軸方向の圧縮歪みを計測するものであり、前記の軸方向に対し直角方向からの圧縮歪みを計測できるものではない。
【0023】
よって、本発明では、支圧板7の内周面に螺旋状に旋回すべく、斜め方向に下り勾配あるいは上り勾配を持たせて配置し、線上に歪みを発生させる工夫を施しているのである。
【0024】
また、支圧板7とアンカー頭部5端部との接触、換言すれば支圧板7の貫挿孔8周辺部に対する圧縮力は一様ではない。つまり、支圧板7とアンカー頭部5端部とはリング状には接しているが、リング状に均等な応力分布とはならないのである。よって、貫挿孔8の内周面に亘って複数箇所に配置された複数のFBG光ファイバセンサ9からの複数の圧縮歪みを計測し、これらの圧縮歪みを平均化することで、平均的な応力(荷重)が測定できるものとなっている。
【0025】
次に、本発明では、図から明らかなように、前記FBG光ファイバセンサ9が設けられた光ファイバケーブル10による支圧板7の圧縮歪みの違い検知は、前記支圧板7の貫挿孔8の内周面に2回線以上の光ファイバケーブルの回線を配置して検知するものとしている。
【0026】
この様に、2回線以上光ファイバケーブル10を配置することにより、たとえ1回線に不慮の断線などの障害が発生し、圧縮歪みが検知出来なくなった場合でも、残りの1回線により歪み検知が行える等のメリットがある。
【0027】
尚、2回線以上の光ファイバケーブル10を支圧板7の貫挿孔8内周面凹溝11内に配置する場合、決して光ファイバケーブル10同士が交差しないように配置しなければならない。
【0028】
そのため本発明では、交差しない様工夫した光ファイバケーブル10の配置方法を図5乃至図7のように創出している。
【産業上の利用可能性】
【0029】
さらに、本装置、手法はグランドアンカーのみに限定されず、端部が固定されるPC鋼棒(内部に圧縮力を与える鋼棒)定着材にも使用できることから、その範囲は地盤のなみならず、建築・土木分野のPC構造物にも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の構成を説明する構成説明図である。
図2】支圧板の貫挿孔内周面に螺旋状にして配置された光ファイバケーブルを示す説明図(1)である。
図3】支圧板の貫挿孔内周面に螺旋状にして配置された光ファイバケーブルを示す説明図(2)である。
図4】FBG光ファイバセンサの構成を説明する説明図である。
図5】支圧板貫挿孔内周面の凹溝内に配置された光ファイバケーブルの角度を変えた状態で示す配置詳細図(1)である。
図6】支圧板貫挿孔内周面の凹溝内に配置された光ファイバケーブルの角度を変えた状態で示す配置詳細図(2)である。
図7】支圧板貫挿孔内周面の凹溝内に配置された光ファイバケーブルの角度を変えた状態で示す配置詳細図(3)である。
【符号の説明】
【0031】
1 グランドアンカー
2 地中
3 アンカー体
4 地上面
5 アンカー頭部
6 引張り部
7 支圧板
8 貫挿孔
9 光ファイバセンサ
10 光ファイバケーブル
11 凹溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7