(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6653952
(24)【登録日】2020年1月31日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】ケーブル保持部材およびそれとパネルとの固定構造
(51)【国際特許分類】
H05K 7/02 20060101AFI20200217BHJP
H05K 7/00 20060101ALI20200217BHJP
F16B 5/10 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
H05K7/02 Q
H05K7/00 H
F16B5/10 H
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-222644(P2015-222644)
(22)【出願日】2015年11月13日
(65)【公開番号】特開2017-92324(P2017-92324A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小出 章博
(72)【発明者】
【氏名】水上 実
【審査官】
梅本 章子
(56)【参考文献】
【文献】
実開平04−055173(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0243387(US,A1)
【文献】
特開平02−290096(JP,A)
【文献】
特開2011−249382(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0145838(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/00−7/02、7/18
F16B 5/10
H02G 3/22−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラック内に配線されるケーブルを纏めて保持するケーブル保持部材であって、
保持部材本体にフラットな固定面を備えた固定部を形成し、
この固定部には、ネジにより固定可能なネジ固定部と、ツールレスで固定可能なツールレス固定部を形成したケーブル保持部材において、
前記ツールレス固定部は、固定部の側部に形成されたパネル挿入用の溝部と、
固定部の側部から上方に向けて形成された弾性変形可能なロック部を備えており、
前記ロック部は溝部と独立して弾性変形するよう構成されていることを特徴とするケーブル保持部材。
【請求項2】
ロック部は、固定面と平行な方向で変形するものである請求項1に記載のケーブル保持部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載のケーブル保持部材と平板状のパネルとの固定構造であって、
パネルには、保持部材本体の固定部が挿入可能な孔部が形成されており、
この孔部は、少なくとも前記固定部の幅よりも大きい幅の幅広孔と固定部の幅よりも小さい幅の幅狭孔を有しているとともに、
前記パネルの外側には突出部が突設されており、
保持部材本体の固定部を幅広孔側に挿入後、幅狭孔側へスライドさせることにより、
溝部と幅狭孔が係合し、かつロック部の上端と突出部が係合して、
ケーブル保持部材がパネルに固定されていることを特徴とするケーブル保持部材とパネルとの固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラック内に収納された通信機器等の機器ユニットから引き出された多数本のケーブルを保持するためにラック内に配置されるケーブル保持部材およびそれとパネルとの固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラック内に収納された通信機器等の機器ユニットからは多数本のケーブルが引き出されているが、配線作業やメンテナンス作業等の点から、これらのケーブルを整然と配線することが必要である。このため多数本のケーブルを纏めて保持できるようにしたケーブル保持部材が利用されている。しかし、このケーブル保持部材はネジ止めによってラック等の所定箇所に固定するのが普通であり、固定するのにドライバー等のツールを必要とするうえに長時間要し作業性が悪いという問題があった。
【0003】
そこで本件出願人は、特許文献1に示すように固定用のツールが不要であり、かつ回動作業のみで簡単に取り付けることができるケーブル保持部材を先に提案し既に実用化している。
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すケーブル保持部材の場合は、回動作業のみで取り付け可能とするためマウントフレーム側に特殊な構造の受け部材を取り付けておく必要があった。しかも、前記特殊な構造の受け部材は矩形の筒体内部に嵌め込む構造であり、平板上には取り付けることができないという問題があった。また、特許文献1に示すケーブル保持部材の場合は、回転固定部が飛び出しているため、フラットな平面に対してネジ固定することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−115165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような問題点を解決して、ケーブルを整然と配線することができ、取り付け手段として、ネジ固定とツールレス固定の双方に対応でき、しかもツールレス固定の場合は簡単かつ確実に取付作業を行うことができるケーブル保持部材およびそれとパネルとの固定構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明のケーブル保持部材は、ラック内に配線されるケーブルを纏めて保持するケーブル保持部材であって、
保持部材本体にフラットな固定面を備えた固定部を形成し、
この固定部には、ネジにより固定可能なネジ固定部と、ツールレスで固定可能なツールレス固定部を形成した
ケーブル保持部材において、
前記ツールレス固定部は、固定部の側部に形成されたパネル挿入用の溝部と、
固定部の側部から上方に向けて形成された弾性変形可能なロック部を備えており、
前記ロック部は溝部と独立して弾性変形するよう構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、その他の好ましい実施形態によれば、前記ロック部は、固定面と平行な方向で変形するものが好ましい。
【0010】
更に、本発明のケーブル保持部材と平板状のパネルとの固定構造は、パネルには、保持部材本体の固定部が挿入可能な孔部が形成されており、
この孔部は、上から順に少なくとも前記固定部の幅よりも大きい幅の幅広孔と固定部の幅よりも小さい幅の幅狭孔を有しでいるとともに、
前記パネルの外側には突出部が突設されており、
保持部材本体の固定部を幅広孔側に挿入後、幅狭孔側へスライドさせることにより、
溝部と幅狭孔が係合し、かつロック部の上端と突出部が係合して、
ケーブル保持部材がパネルに固定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のケーブル保持部材では、保持部材本体を平板状のパネルに取り付ける場合に、ネジにより固定可能なネジ固定部と、ツールレスで固定可能なツールレス固定部が形成されているので、保持部材本体の取り付け手段として、前記ネジ固定部とツールレス固定部の双方に対応可能となる。
【0012】
また、前記ツールレス固定部は、固定部の側部に形成したパネル挿入用の溝部と、該溝部と固定面の間に位置するように固定部の側部に形成した弾性変形可能なロック部を備えているものとした場合は、ツールレスで保持部材本体をパネルに対して簡単かつ確実に取り付けることができる。
【0013】
また、前記ロック部は、固定面と平行な方向で変形するものとした場合は、ロック部が固定面から垂直に突出しないため、フラットな面に対して確実にネジ固定することが可能となる。
【0014】
更に、前記ケーブル保持部材と平板状のパネルとの固定構造として、パネルには、保持部材本体の固定部が挿入可能な孔部が形成されており、この孔部は、上から順に少なくとも前記固定部の幅よりも大きい幅の幅広孔と固定部の幅よりも小さい幅の幅狭孔を有しでいるとともに、前記パネルの外側には突出部が突設されており、保持部材本体の固定部を幅広孔側に挿入後、幅狭孔側へスライドさせることにより、溝部と幅狭孔が係合し、かつロック部の上端と突出部が係合して、ケーブル保持部材がパネルに固定されているものとした場合は、ケーブル保持部材をパネルに簡単かつ確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るケーブル保持部材の実施の形態を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係るケーブル保持部材とパネルとの固定構造を示す斜視図である。
【
図4】本発明に係るケーブル保持部材の溝部を示す拡大した平面断面図である。
【
図5】本発明に係るケーブル保持部材のロック部を示す拡大縦断面図である。
【
図6】ケーブル保持部材をその他の形態のパネルに取り付ける工程を示す斜視図である。
【
図7】ケーブル保持部材をその他の形態のパネルに取り付ける工程を示す斜視図である。
【
図8】ケーブル保持部材をその他の形態のパネルに取り付ける工程を示す斜視図である。
【
図9】本発明のケーブル保持部材をマウントフレームに取り付けた状態を示す全体正面図である。
【
図11】ケーブル保持部材がマウントフレームにねじ止めされている状態を示す斜視図である。
【
図12】本発明のケーブル保持部材を垂直方向に積み上げる場合を示す分解斜視図である。
【
図13】本発明のケーブル保持部材を垂直方向に積み上げる例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
本発明のケーブル保持部材は、ラック内に収納された通信機器等の機器ユニットから引き出された多数本のケーブルを纏めるために用いるものである。
図9は、一例として、ラック20のマウントフレーム21にスプライスユニット22を取り付けた場合を示しており、スプライスユニット22の前面から引き出された出た複数本のケーブル23を複数個のケーブル保持部材を用いて纏める構造となっている。なお、前記ケーブル23は光ケーブルである。
【0017】
図10に示されるように、前記スプライスユニット22の上下方向に隣接してパネル24が取り付けられている。そして、このパネル24にはケーブル23を纏めるのに必要な個数だけケーブル保持部材が取り付けられている。
図10では、ケーブル保持部材はスプライスユニット22の前面に平行して水平方向に所定間隔を隔てて複数個並べてある。なお図中、1は保持部材本体、30はケーブル保持部材の端部を覆うカバーである。
【0018】
図1、
図2に示すように、前記保持部材本体1はケーブル23を保持するための上下一対の腕部3、3を備えている。この腕部3は、保持部材本体1の基部2の上下端部からそれぞれ水平方向に突出するよう形成されている。
【0019】
前記基部2の裏面側(腕部が延設されるのと逆の方向)には、保持部材本体1をパネル24に取り付けるためのフラットな固定面4を備えた固定部5が形成されている。また、この固定部5には、保持部材本体1を平板状のパネル24に取り付ける場合に、ツールレスで固定可能なツールレス固定部8と、マウントフレーム21に取り付ける場合に、ネジによりマウントフレーム21に形成した固定孔31に固定可能なネジ固定部7が形成されている。これにより、前記保持部材本体1の取り付け手段として、前記ネジ固定部7とツールレス固定部8の双方に対応できる構成となっている。
【0020】
ネジ固定部7は、固定部5及び基部2の中央の位置に、固定部5及び基部2を貫通して形成されている。ネジ固定部7はその他に、固定部5の上端と下端に半円状に切欠いた形状に形成されている。
更には、
図12に示されるように、複数個の保持部材本体1を垂直方向に積み上げて、隣接する保持部材本体同士を連結部材32により連結することも可能である。この連結部材32は、全体が略長方形の板状体からなり、中央にネジ固定部33が形成されていて、上下部をそれぞれ挿入片部34,34とされている。この挿入片部34は、保持部材本体1の基部2の上下両端に形成された案内孔部35に挿入することで、隣接する保持部材本体同士をしっかりと連結するものである。これにより、使用状況に応じて保持部材本体1を垂直方向に積み上げて増設することが可能となる。
なお、前記保持部材本体1は機器ユニットの最小単位の縦幅(1ユニット)に形成されているので、1ユニットごとにケーブル23を腕部3を介して横方向から上下方向に配線する場合に、必要な数だけの保持部材本体1を垂直方向に連結させて使用すればよい。
前記連結部材32のネジ固定部33は、保持部材本体同士を連結した場合に固定部5の上下端に形成したネジ固定部7と一致するものであり、1本のボルトで両者を締結できるよう構成されている。また、
図13に示されるように、例えば4個の保持部材本体1を連結した場合に、全てのネジ固定部をボルト固定しなくても、最上段と最下段の保持部材本体1のネジ固定部7のみをボルト6で締結すれば、中間に位置する2段目と3段目の保持部材本体1はネジ止めしなくても連結部材32の介在によりしっかりと連結固定されることとなり、ボルト固定する箇所を大幅に削減できて作業性が向上することとなる。
また、固定面4をフラットに形成しているので、ケーブル保持部材をマウントフレーム21の平板状の面にネジ固定することが可能である。
【0021】
以下に、ツールレス固定部8を利用して取り付ける場合について説明する。
前記ツールレス固定部8は、固定部5の側部に形成したパネル挿入用の溝部9と、固定部6の側部上方に形成した弾性変形可能なロック部10を備えたものである。
図1、2に示すようにロック部10は固定面4と溝部9の間に位置する。
図3はケーブル保持部材とパネル24との固定構造を説明する斜視図、
図4は溝部9を示す拡大した平面断面図、
図5はロック部10を示す拡大縦断面図である。
【0022】
前記溝部9は、パネル24に形成された孔部25の端縁を挿入してパネルを固定するとともに、保持部材本体1のパネルからの抜けを防止するものである(
図4を参照)。また、ロック部10は突出部26と係合して保持部材本体1がパネルの上方向へ抜けるのを防止するものである(
図5を参照)。
【0023】
なおロック部10は、前記固定部5の側部上方に形成される弾性変形可能なものであり、固定面4と平行な方向で変形可能とされている。また、ロック部10は、前記固定部5の側部から上方に向けて末広がりに形成され、上端部は固定部5の幅よりも大きくなるように形成されている。
【0024】
図3に示すものでは、前記パネル24には、保持部材本体1の固定部が上方から挿入可能な孔部25が形成されており、この孔部25は、前記固定部5の幅よりも大きい幅の幅広孔25aと固定部5の幅よりも小さい幅の幅狭孔25bを有しでいる。また、幅広孔25aの外側には突出部26が突設されている。
【0025】
このように構成したものでは、保持部材本体1の固定部5を上方から幅広孔25a側に挿入後、幅狭孔25b側へスライド移動させると、前記幅狭孔25bの端縁が溝部9に挿入されてパネル24を確実に固定するとともに、保持部材本体1がパネル24の孔部25から抜けるのを防止することとなる(
図4を参照)。
また、前記ロック部10は弾性変形可能なものであり、前記固定部5の側部から上方に向けて末広がりに形成され、上端部は固定部5の幅よりも大きくなるように形成されているので、下方へスライド移動中は突出部26の端部26aに押されて縮径する方向に縮んでスムーズに移動し、所定位置まで下がると突出部26の規制がなくなり元の状態に復帰する。この結果、ロック部10の上端はパネルの外側に突設されている突出部26と係合して、保持部材本体1がパネル24の上方向へ抜けるのを防止することとなる(
図5を参照)。
【0026】
次に、ケーブル保持部材をその他の形態のパネルに取り付ける場合につき、
図6〜
図8に基づいて説明する。
図6に示すものでは、パネル24の孔部25は上から順に前記固定部25の幅よりも大きい幅の幅広孔25a、固定部25の幅と等しい幅の中間孔25c、固定部の幅よりも小さい幅の幅狭孔25bで構成されているとともに、前記中間孔25cの外側には突出部26が突設された構造となっている。
【0027】
このように構成したものでは、保持部材本体1の固定部5をパネル24の孔部25の幅広孔25a、および中間孔25cに向けて水平に押し込む(
図6、
図7を参照)。次いで、保持部材本体1を下方に向けてスライド移動させると、前記幅狭孔25bの端縁が溝部9に挿入されてパネル24を確実に固定する。また、ロック部10は下方へスライド移動中は突出部26に押されて縮径する方向に縮んでスムーズに移動し、所定位置まで下がると突出部26の規制がなくなり元の状態に復帰する。この結果、ロック部10の上端はパネルの外側に突設されている突出部26と係合して、保持部材本体1がパネル24の上方向へ抜けるのを防止することとなる(
図5を参照)。
【0028】
以上の説明からも明らかなように、本発明のケーブル保持部材では、保持部材本体にフラットな固定面を備えた固定部を形成し、この固定部には、保持部材本体を平板状のパネルに取り付ける場合に、ツールレスで固定可能なツールレス固定部と、マウントフレームに取り付ける場合に、ネジによりマウントフレームに形成した固定孔に固定可能なネジ固定部が形成されているので、保持部材本体の取り付け手段として、前記ネジ固定とツールレス固定の双方に対応できることとなる。また、ツールレス固定の場合はドライバー等のツールを使用することなく、ワンタッチ式で簡単かつ確実に取り付けることが可能となる。
【符号の説明】
【0029】
1 保持部材本体
2 基部
3 腕部
4 固定面
5 固定部
6 ボルト
7 ネジ固定部
8 ツールレス固定部
9 溝部
10 ロック部
20 システムラック
21 マウントフレーム
22 スプライスユニット
23 ケーブル
24 パネル
25 孔部
25a 幅広孔
25b 幅狭孔
25c 中間孔
26 突出部
26a 端部
30 カバー
31 固定孔
32 連結部材
33 ネジ固定部
34 挿入片部
35 案内孔部