特許第6653965号(P6653965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6653965
(24)【登録日】2020年1月31日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】建設機械の組立方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/26 20060101AFI20200217BHJP
   B66C 23/687 20060101ALI20200217BHJP
   E21B 15/00 20060101ALI20200217BHJP
   E21B 3/02 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   B66C23/26 C
   B66C23/687
   E21B15/00
   E21B3/02 A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-87917(P2016-87917)
(22)【出願日】2016年4月26日
(65)【公開番号】特開2017-197316(P2017-197316A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年3月4日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日:平成28年2月24日、販売した場所:株式会社栄光(千葉県佐倉市吉見833)
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】冨田 庸公
(72)【発明者】
【氏名】高山 浩司
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−050014(JP,U)
【文献】 特開2014−167198(JP,A)
【文献】 米国特許第05484069(US,A)
【文献】 特開平08−048495(JP,A)
【文献】 特開2014−167197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/26
B66C 23/687
E21B 3/02
E21B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械におけるベースマシンの上部旋回体に起伏可能に装着された伸縮ブームを、上部旋回体後方のガントリを介して繰り出される起伏ワイヤに設けられているミドルシーブに着脱可能に連結されたペンダントロープによって起伏させる建設機械の組立方法において、短縮状態にある伸縮ブームを前記上部旋回体に起伏可能に連結した後、上部旋回体上の輸送位置に配置されているミドルシーブと、伸縮ブームに取り付けられているペンダントロープとを連結する際に、輸送位置にあるミドルシーブと伸縮ブームの上に配置されたペンダントロープとを補助ロープで連結する段階と、伸縮ブームを伸長させながら起伏ワイヤを巻き出してミドルシーブを前記輸送位置から前記伸縮ブームの上の連結位置に移動させる段階と、前記補助ロープを取り外す段階と、伸縮ブームを短縮させてペンダントロープの連結具をミドルシーブの連結部に連結する位置に移動させる段階と、ペンダントロープの連結具とミドルシーブの連結部とを連結する段階とを順に行うことを特徴とする建設機械の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の組立方法に関し、詳しくは、上部旋回体に、起伏ワイヤで起伏する伸縮ブームを装着した建設機械の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型のクローラクレーンやアースドリルといった建設機械は、下部走行体及び上部旋回体からなるベースマシンの上部旋回体にブームを着脱可能に装着しており、輸送時には、上部旋回体からブームを取り外してベースマシンとは別々に輸送するようにしている。輸送前後にブームを着脱する際には、通常、重量物であるブームを大型クレーンで保持した状態でブームフートと上部旋回体のブームブラケットとを連結するフートピンを着脱することにより行われている。また、上部旋回体に伸縮ブームを着脱する方法として、特定のブームサポートを使用することで、大型クレーンを必要とせずに伸縮ブームを上部旋回体に着脱可能とした方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−124491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上部旋回体に伸縮ブームを着脱する際、上部旋回体後方のガントリを介して繰り出される起伏ワイヤの先端に設けられているミドルシーブと、伸縮ブームに設けられているペンダントロープとを連結する際には、ミドルシーブを、上部旋回体後方の輸送位置と上部旋回体前方の連結位置とにそれぞれ移動させる必要がある。しかし、大型のクレーンやアースドリルの場合は、重量物であるミドルシーブを移動させるために、別のクレーンなどが必要になるという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、ミドルシーブを、上部旋回体後方の輸送位置と上部旋回体前方の連結位置とに、別のクレーンなどを必要とせずに、移動させることができる建設機械の組立方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の建設機械の組立方法は、建設機械におけるベースマシンの上部旋回体に起伏可能に装着された伸縮ブームを、上部旋回体後方のガントリを介して繰り出される起伏ワイヤに設けられているミドルシーブに着脱可能に連結されたペンダントロープによって起伏させる建設機械の組立方法において、短縮状態にある伸縮ブームを前記上部旋回体に起伏可能に連結した後、上部旋回体上の輸送位置に配置されているミドルシーブと、伸縮ブームに取り付けられているペンダントロープとを連結する際に、輸送位置にあるミドルシーブと伸縮ブームの上に配置されたペンダントロープとを補助ロープで連結する段階と、伸縮ブームを伸長させながら起伏ワイヤを巻き出してミドルシーブを前記輸送位置から前記伸縮ブームの上の連結位置に移動させる段階と、前記補助ロープを取り外す段階と、伸縮ブームを短縮させてペンダントロープの連結具をミドルシーブの連結部に連結する位置に移動させる段階と、ペンダントロープの連結具とミドルシーブの連結部とを連結する段階とを順に行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の建設機械の組立方法によれば、重量物であるミドルシーブを、補助ロープを使用し、伸縮ブームの伸縮及び起伏ワイヤの巻出しを利用して輸送位置から連結位置に移動させるので、別のクレーンなどを使用せずにミドルシーブを輸送位置から連結位置に移動させることができる。また、各段階を逆に行うことにより、ペンダントロープから切り離したミドルシーブを連結位置から輸送位置に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の建設機械の組立方法の一形態例を示すもので、上部旋回体に伸縮ブームを装着する準備段階を示す側面図である。
図2】同じく上部旋回体に伸縮ブームを装着した段階を示す側面図である。
図3】同じく上部旋回体のガントリを起立させた段階を示す側面図である。
図4】同じく輸送位置にあるミドルシーブと伸縮ブームの基部に配置されたペンダントロープとを補助ロープで連結した段階を示す側面図である。
図5】同じくミドルシーブを輸送位置から連結位置に移動させた段階を示す側面図である。
図6】同じく補助ロープを取り外した段階を示す側面図である。
図7】同じく伸縮ブームを短縮させてペンダントロープの連結具をミドルシーブの連結部との連結位置に移動させてペンダントロープの連結具とミドルシーブの連結部とを連結部材で連結した段階を示す側面図である。
図8】起伏ワイヤを巻き上げて伸縮ブームを起立させた建設機械の作業状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1乃至図8は、建設機械の一つである大型のアースドリルに本発明を適用した一形態例を示している。本形態例に示すアースドリル11は、図8に示すように、クローラを備えた下部走行体12の上部に上部旋回体13を旋回可能に設けたベースマシン14と、前記上部旋回体13の前部に起伏可能に設けられたテレスコピック式の伸縮ブーム15と、伸縮ブーム15の先端部に装着されたトップシーブブロック16から垂下した主ワイヤ17にスイベル18を介して回転可能に吊持されたケリーバ19と、前記伸縮ブーム15の下部からフロントフレーム20やシリンダ21a,21bなどによって支持されたケリーバ回転駆動装置22と、伸縮ブーム15の後部側に設けられたバックストッパ23と、ケリーバ19の下端部に装着された掘削バケットや拡底バケット24とを備えている。
【0010】
伸縮ブーム15の2段目最上部には、ペンダントロープ25の上端が連結されており、該ペンダントロープ25の下端には、ミドルシーブ26の連結部26aが着脱可能に連結される連結具25aが設けられている。ミドルシーブ26には、上部旋回体13に設置された起伏ウインチから巻き出された起伏ワイヤ27がガントリ28を介して巻回されている。また、トップシーブブロック16には、部材吊り上げ用の副ワイヤ29が掛け回されている。
【0011】
アースドリル11による縦穴の形成は、起伏ウインチで起伏ワイヤ27を操作して伸縮ブーム15を所定角度に立ち上げるとともに、ケリーバ回転駆動装置22を所定位置に配置した状態で、ケリーバ回転駆動装置22でケリーバ19を回転させることによって掘削バケットや拡底バケット24を回転させながら地中に押し込んで掘削する工程と、掘削バケットや拡底バケット24を主ワイヤ17で引上げて掘削した土砂を掘削バケットや拡底バケット24から排出する工程とを交互に繰り返すことによって行われる。
【0012】
このようなアースドリル11を輸送する際には、重量や大きさに応じて複数に分解されてトレーラなどの複数の輸送車にそれぞれ積載される。重量物である伸縮ブーム15は、短縮状態にして上部旋回体13から取り外され、前記主副ワイヤ17,29や油圧配管などを取り外した状態で、トレーラの荷台上にブーム支持装置31を介して積載されて輸送される。ブーム支持装置31は、長方形状のベースフレーム32の四隅部に伸縮ブーム33をそれぞれ設けるとともに、ベースフレーム32の適宜な位置に伸縮ブーム15を固定するための固定部34a,34bを複数箇所に設けている。
【0013】
図1に示すように、ブーム支持装置31によって伸縮ブーム15を輸送する際には、伸縮ブーム15の基端に設けられているブームフート15aをブーム支持装置31の後方に突出させた状態にする。さらに、ケリーバ回転駆動装置22から切り離したフロントフレーム20及びシリンダ21a,21bは、適宜な固定部34a,34bによってブーム支持装置31に固定し、上部旋回体13から切り離したバックストッパ23は、伸縮ブーム15の所定位置に固定する。
【0014】
また、ミドルシーブ26から取り外したペンダントロープ25は、伸縮ブーム15の上面に連結具25aを固定した状態にする。一方、上部旋回体13では、ガントリ28を折り畳んで固定ロッド28aで固定するとともに、ミドルシーブ26は、ガントリ28の前脚基端部に設けられているミドルシーブ固定部35にピンなどの固定部材を介して上部旋回体13の上に固定した状態にする。
【0015】
輸送後に、上部旋回体13に伸縮ブーム15を連結する際には、ベースマシン14を伸縮ブーム15との連結位置に移動させ、上部旋回体13の油圧回路とブーム支持装置31の油圧回路とを油圧ホース36で接続した状態で伸縮ブーム33のシリンダを操作し、伸縮ブーム15を支持したブーム支持装置31をトレーラの荷台から降ろす。そして、下部走行体12の走行操作によって前後位置、上部旋回体13の旋回操作によって左右位置、伸縮ブーム33のシリンダ伸縮操作によって上下位置をそれぞれ調整してブームフート15aと上部旋回体13に設けたブラケット13aとを連結ピンによって起伏可能な状態に連結する。さらに、図2に示すように、バックストッパ23の先端を上部旋回体13に連結する。
【0016】
次に、図3に示すように、ガントリ28を起立させた後、図4に示すように、ミドルシーブ固定部35に固定されて輸送位置に配置されているミドルシーブ26の連結部26aと、伸縮ブーム15の上面の基部に配置されているペンダントロープ25の連結具25aとを補助ロープ37で連結する。また、伸縮ブーム操作用の油圧配管(図示せず)も接続する。
【0017】
そして、図5に示すように、伸縮ブーム15を伸長させながら、起伏ウインチを操作して起伏ワイヤ27を巻き出し、伸縮ブーム15の基部上面に設けられている連結用支持部15bの上の連結位置にミドルシーブ26を移動させる。このとき、伸縮ブーム15の伸長操作と起伏ウインチによる起伏ワイヤ27の巻出し操作とを連携させて行うことにより、ミドルシーブ26を確実に連結位置に移動させることができ、ミドルシーブ26が落下したりするような事故を防止できる。
【0018】
次に、図6に示すように、ミドルシーブ26とペンダントロープ25との間から補助ロープ37を取り外した後、伸縮ブーム15を短縮させてペンダントロープ25の連結具25aをミドルシーブ26の連結部26aに対して連結可能な位置に移動させる。最後に、図7に示すように、ペンダントロープ25の連結具25aとミドルシーブ26の連結部26aとを連結ピンによって連結することにより、起伏ワイヤ27と伸縮ブーム15とを、ミドルシーブ26及びペンダントロープ25を介して連結した状態にすることができる。
【0019】
最後に、前記主副各ワイヤ17,29や油圧配管などを取り付け、ブーム支持装置31と伸縮ブーム15との固定状態を解除した後、起伏ウインチによって起伏ワイヤ27を巻き上げることにより、伸縮ブーム15を起立させることができる。さらに、主ワイヤ17や副ワイヤ29を使用してケリーバ回転駆動装置22などを取り付け、フロントフレーム20やシリンダ21a,21bを取り付けることにより、アースドリル11を、図8に示す作業状態にすることができる。
【0020】
アースドリル11を輸送状態にする際におけるミドルシーブ26の輸送位置への移動は、前記組立手順を逆に行えばよい。すなわち、ケリーバ回転駆動装置22や各ワイヤ17,29などを取り外し、起伏ワイヤ27を巻き出して短縮状態の伸縮ブーム15を倒してブーム支持装置31に支持させた後、更に起伏ワイヤ27を巻き出してミドルシーブ26を連結用支持部15bに降ろした状態にする。次に、ミドルシーブ26とペンダントロープ25との連結を解除し、伸縮ブーム15を適当量伸長させてからミドルシーブ26とペンダントロープ25とを補助ロープ37で連結する。
【0021】
そして、起伏ワイヤ27を巻き上げながら伸縮ブーム15を短縮させることにより、ミドルシーブ26を伸縮ブーム15上の連結位置から上部旋回体13の上の輸送位置に移動させることができる。その後、補助ロープ37を取り外してミドルシーブ26及びペンダントロープ25を所定位置にそれぞれ固定した後、ブーム支持装置31の伸縮ブーム33を操作して伸縮ブーム15を上部旋回体13から取り外す。
【0022】
このように、伸縮ブーム15の上部旋回体13への着脱に伴うミドルシーブ26とペンダントロープ25との連結や解除を、他のクレーンなどを必要とせずに、安全かつ容易に行うことが可能となる。
【0023】
なお、本発明は、前記アースドリルに限らず、伸縮ブームを起伏ワイヤで起伏させる構成を備えた各種建設機械に適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
11…アースドリル、12…下部走行体、13…上部旋回体、13a…ブラケット、14…ベースマシン、15…伸縮ブーム、15a…ブームフート、15b…連結用支持部、16…トップシーブブロック、17…主ワイヤ、18…スイベル、19…ケリーバ、20…フロントフレーム、21a,21b…シリンダ、22…ケリーバ回転駆動装置、23…バックストッパ、24…拡底バケット、25…ペンダントロープ、25a…連結具、26…ミドルシーブ、26a…連結部、27…起伏ワイヤ、28…ガントリ、28a…固定ロッド、29…副ワイヤ、31…ブーム支持装置、32…ベースフレーム、33…伸縮ブーム、34a,34b…固定部、35…ミドルシーブ固定部、36…油圧ホース、37…補助ロープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8