特許第6653970号(P6653970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6653970
(24)【登録日】2020年1月31日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】排気ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20200217BHJP
   F01N 13/18 20100101ALI20200217BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20200217BHJP
【FI】
   F01N3/28 301W
   F01N3/28 301V
   F01N13/18
   F01N13/08 E
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-73256(P2017-73256)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-173065(P2018-173065A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2019年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(74)【代理人】
【識別番号】100084124
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 一眞
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 道夫
(72)【発明者】
【氏名】多胡 知仁
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/115108(WO,A1)
【文献】 特開2010−216366(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/194201(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/28
F01N 13/08
F01N 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気系に連通接続される触媒コンバータを備えた排気ガス浄化装置であって、
前記内燃機関に接合され、前記排気系に連通する開口部を有するフランジ部材と、
該フランジ部材に接合され、前記開口部に連通する第1の開口端部を有すると共に、該第1の開口端部の端面に対し所定角度を成す端面を有し、前記触媒コンバータの上流側に接合される第2の開口端部を有する鈑金製のエルボ部材と
前記排気系から排出される排気ガスの成分を検出するセンサとを備え、
前記エルボ部材が、
前記触媒コンバータの上流側に接合される第1の嵌合部を有し、前記第1の開口端部を一方の側面に有すると共に、反対側の側面に第1の接合部を有する第1の分割部材と、
前記触媒コンバータの上流側に接合され、前記第2の開口端部を構成する第2の嵌合部を有すると共に、前記第1の接合部に接合される第2の接合部を有する第2の分割部材とを具備し、
前記第1及び第2の分割部材が、前記第1及び第2の接合部で接合された状態で、前記フランジ部材の開口部を含む面に対し前記第1及び第2の接合部の端面が平行となるように配置され、前記第1の開口端部が前記フランジ部材に接合されると共に、前記第1及び第2の嵌合部が前記触媒コンバータの上流側に接合されており、
前記第2の分割部材が、
前記センサを支持する台座面を有することを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記第2の分割部材は、
前記台座面と前記第2の接合部との間に、前記フランジ部材の開口部に対向する壁面を有することを特徴とする請求項記載の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記第1の分割部材は、
前記第1の開口端部の外面が前記フランジ部材の開口部の内面に密着して固定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の排気ガス浄化装置。
【請求項4】
前記第1の開口端部の端面に対する前記第2の開口端部の端面の所定角度が90度であることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の排気ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化装置に関し、特に、内燃機関の排気系に連通接続される触媒コンバータを備えた排気ガス浄化装置に係る。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気系から排出される排気ガスを高温の上流で処理すべく、触媒コンバータを排気ポート直下に配置され、極力短い管路で排気ポートに連通接続される排気ガス浄化装置が多用され、所謂マニバータとして知られている。この種の触媒コンバータが連通接続される排気系として、複数の排気マニホールドを単一の排気ポートに集合させたものや、ターボチャージャの排気ポートがあり、これらに連通する開口部を有するフランジ部材を介して触媒コンバータが接合されている。
【0003】
前者の一例として、下記の特許文献1には、排気ポート集合部または排気マニホールドの下流端に配置された直下型触媒により排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置が開示されており、その図10には、特許文献1が特徴とする圧力損失調整部材を備えていない直下型触媒の上流部が図示されている。また、後者の一例として、下記の特許文献2に、タービンハウジングと、これに接続されるコンバータとの接続構造が開示されており、コンバータは触媒エルボ及びフランジを介してタービンハウジングに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4475980号公報
【特許文献2】特開2016−160806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の排気ガス浄化装置を構成するコンバータ容器、排気マニホールドや触媒エルボは、近時の軽量化、高耐熱性、低ヒートマス化の要請から、鋳物製に代わり、ステンレスに代表される鈑金製のものが用いられている。特に、特許文献2の図1に示された触媒エルボや特許文献1の図10等に示された上流側ケースは複雑な3次元曲面を有している。そして、特許文献2の図1から明らかなように、触媒エルボは複数の分割部材が接合されて形成されており、各部材の接合面も3次元形状とされている。上記の触媒エルボや上流側ケースは、触媒コンバータに接合されるエルボ部材ということができるが、このようなエルボ部材を鈑金製とするには、プレス加工や溶接作業が困難で、コストアップ要因となっている。
【0006】
そこで、本発明は、触媒コンバータに接合されるエルボ部材の設計要件を充足しつつ、プレス加工によって容易に成形し得ると共に、溶接によって容易に接合し得る鈑金製のエルボ部材を備えた排気ガス浄化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するため、本発明は、内燃機関の排気系に連通接続される触媒コンバータを備えた排気ガス浄化装置であって、前記内燃機関に接合され、前記排気系に連通する開口部を有するフランジ部材と、該フランジ部材に接合され、前記開口部に連通する第1の開口端部を有すると共に、該第1の開口端部の端面に対し所定角度を成す端面を有し、前記触媒コンバータの上流側に接合される第2の開口端部を有する鈑金製のエルボ部材と、前記排気系から排出される排気ガスの成分を検出するセンサとを備え、前記エルボ部材が、前記触媒コンバータの上流側に接合される第1の嵌合部を有し、前記第1の開口端部を一方の側面に有すると共に、反対側の側面に第1の接合部を有する第1の分割部材と、前記触媒コンバータの上流側に接合され、前記第2の開口端部を構成する第2の嵌合部を有すると共に、前記第1の接合部に接合される第2の接合部を有する第2の分割部材とを具備し、前記第1及び第2の分割部材が、前記第1及び第2の接合部で接合された状態で、前記フランジ部材の開口部を含む面に対し前記第1及び第2の接合部の端面が平行となるように配置され、前記第1の開口端部が前記フランジ部材に接合されると共に、前記第1及び第2の嵌合部が前記触媒コンバータの上流側に接合されており、前記第2の分割部材が、前記センサを支持する台座面を有する排気ガス浄化装置である。尚、上記の「平行」は実質的に平行であることを意味し、若干の角度を成すことを排除するものではない。
【0008】
上記の排気ガス浄化装置において前記第2の分割部材は、前記台座面と前記第2の接合部との間に、前記フランジ部材の開口部に対向する壁面を有するものとするとよい。
【0009】
一方、前記第1の分割部材は、前記第1の開口端部の外面が前記フランジ部材の開口部の内面に密着して固定されているものとするとよい。前記第1の開口端部の端面に対する前記第2の開口端部の端面の所定角度は、例えば90度とするとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、本発明は、内燃機関に接合され、排気系に連通する開口部を有するフランジ部材と、フランジ部材に接合され、前記開口部に連通する第1の開口端部を有すると共に、第1の開口端部の端面に対し所定角度を成す端面を有し、触媒コンバータの上流側に接合される第2の開口端部を有する鈑金製のエルボ部材と、排気系から排出される排気ガスの成分を検出するセンサとを備えエルボ部材が、触媒コンバータの上流側に接合される第1の嵌合部を有し、第1の開口端部を一方の側面に有すると共に、反対側の側面に第1の接合部を有する第1の分割部材と、触媒コンバータの上流側に接合され、第2の開口端部を構成する第2の嵌合部を有すると共に、第1の接合部に接合される第2の接合部を有する第2の分割部材とを具備し、第1及び第2の分割部材が、第1及び第2の接合部で接合された状態で、フランジ部材の開口部を含む面に対し第1及び第2の接合部の端面が平行となるように配置され、第1の開口端部がフランジ部材に接合されると共に、第1及び第2の嵌合部が触媒コンバータの上流側に接合されており、第2の分割部材が、センサを支持する台座面を有するものであるので、エルボ部材に形成される曲面部と、エルボ部材を構成する第1及び第2の分割部材の接合部とが確実に分離され、相互に干渉するおそれがなく、台座面を含む曲面部と第1及び第2の分割部材の接合部とを確実に分離することができるので、エルボ部材の形状の自由度が著しく向上する。また、第1及び第2の分割部材の接合部は実質的に平面とすることができるので、第1及び第2の分割部材をプレス加工によって容易に成形できると共に、溶接によって両分割部材を容易に接合することができる。
【0011】
更に、第2の分割部材が、台座面と第2の接合部との間に、フランジ部材の開口部に対向する壁面を有する構成とすれば、内燃機関の排気系からフランジ部材の開口部及びエルボ部材の第1の開口端部を介してエルボ部材内に導入される排気ガスは、上記の壁面に衝突し、強制的に第2の開口端部方向に変向され、センサ先端の検知部に確実に接触するので、センサの検知精度が向上する。そして、第2の開口端部方向に変向された排気流は触媒コンバータ内の触媒担体の上端面を指向することになるので、触媒担体の上端面に対し均一に供給され、浄化率が向上する。
【0012】
また、第1の分割部材は、第1の開口端部の外面がフランジ部材の開口部の内面に密着して固定されている構成とすれば、別途接続部材を必要とすることなく、第1の開口端部を介してフランジ部材に密着接合することができるので、エルボ部材の設計自由度が向上する。尚、上記エルボ部材における第1及び第2の開口端部の両端面間の所定角度としては、90度を含み種々の角度に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置の正面図である。
図2】本発明の一実施形態におけるフランジ部材及びエルボ部材の断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置の一部の左側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置の一部の右側面図である。
図5】本発明の一実施形態における第1の開口端部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の望ましい実施形態について図面を参照して説明する。図1乃至図4は本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置を示すもので、触媒コンバータ10、フランジ部材20及びエルボ部材30を備えている。触媒コンバータ10は、従前のものと同様、筒状の本体部10a内に触媒担体11が内蔵されており、上流側の端部10bは本体部10aと同径で最大径部となっているが、下流側の端部10cは縮径されて円錐形状となっており、その最小径部(直管部)には、排気管(図示せず)に接合されるフランジ部材50が固定されている。尚、本体部10aには装着用のブラケット12、13が固着されている。
【0015】
本実施形態のフランジ部材20は鉄又はステンレス製の板材で、内燃機関(図示せず)の排気系に連通する開口部20aを有し、内燃機関のシリンダヘッド(図示せず)又はターボハウジング(図示せず)に接合される。一方、エルボ部材30はステンレスの鈑金製で、フランジ部材20の開口部20aに連通する第1の開口端部30aを有すると共に、第1の開口端部30aの端面に対し所定角度(本実施形態では実質的に90度)を成す端面を有し、触媒コンバータ10の上流側に接合される第2の開口端部30bを有する。
【0016】
本実施形態のエルボ部材30は、第1の分割部材31及び第2の分割部材32が接合されて成る。第1の分割部材31は、触媒コンバータ10の上流側に接合される第1の嵌合部31bを有し、第1の開口端部30aを一方の側面に有すると共に、反対側の側面に第1の接合部31aを有する。第2の分割部材32は、触媒コンバータ10の上流側に接合され、第2の開口端部30bを構成する第2の嵌合部32bを有すると共に、第1の接合部31aに接合される第2の接合部32aを有する。
【0017】
そして、図2に示すように、第1及び第2の分割部材31及び32が、第1及び第2の接合部31a及び32aで接合された状態で、フランジ部材20の開口部20aを含む面に対し第1及び第2の接合部31a及び32aの端面が実質的に平行となるように配置され、第1の開口端部30aがフランジ部材20に接合されると共に、第1及び第2の嵌合部31b及び32bが触媒コンバータ10の上流側の端部10bに接合されている。本実施形態においては、第1及び第2の分割部材31及び32は、図2に示すように重合され、第1及び第2の接合部31a及び32aの端面が夫々、本体部10aの中心軸CLを含む面の近傍で平行となるように接合され、重合部が溶接(図2にwで示す)されている。従って、第1及び第2の分割部材31及び32をプレス加工する際には負角が形成されることなく、容易且つ円滑に成形することができる。
【0018】
而して、図2に示すように、エルボ部材30に形成される曲面部と、第1及び第2の分割部材31及び32の接合部とが確実に分離され、相互に干渉するおそれがないので、エルボ部材の形状の自由度が著しく向上する。また、第1及び第2の分割部材31及び32の接合部は実質的に平面とすることができるので、第1及び第2の分割部材31及び32をプレス加工によって容易に成形できると共に、溶接によって両分割部材を容易に接合することができる。
【0019】
一方、第1の分割部材31は、第1の開口端部30aの外面がフランジ部材20の開口部20aの内面に密着するように配設され、第1の開口端部30aの先端部で溶接(図2にwで示す)されて固定されている。特に、第1の開口端部30aは、図5に拡大して示すように、第1の分割部材31の一般面から起設させたバーリング部の先端部分であり、この部分が従前の接続部材として機能する。そして、第1の開口端部30aは、その先端面がフランジ部材20の開口部20aの軸方向中間部に位置するように配置され、第1の開口端部30aの全周と開口部20aの内面が隅肉溶接(図5にwで示す)されて固定されている。而して、別途接続部材を必要とすることなく、第1の開口端部30aを介してフランジ部材20に密着接合することができるので、エルボ部材30の設計自由度が大幅に向上する。
【0020】
更に、排気系から排出される排気ガスの成分を検出するセンサ(図示せず)を備えており、第2の分割部材32は台座面32cを有し、これにセンサ用の台座40が接合されている。これにより、台座面32cを含む曲面部と第1及び第2の分割部材31及び32の接合部とを確実に分離することができるので、エルボ部材30の形状の自由度が著しく向上する。尚、台座面32cにはセンサ挿通用の開口32eが形成されており、図2及び図3に示すように、開口32eに台座40が嵌合され、その段部で開口32eの周縁部に係止されるように構成されている。
【0021】
また、第2の分割部材32は、図1及び図2に示すように、台座面32cと第2の接合部32aとの間に、フランジ部材20の開口部20aに対向する壁面32dを有する。而して、内燃機関の排気系からフランジ部材20の開口部20a及びエルボ部材30の第1の開口端部30aを介してエルボ部材30内に導入される排気ガスは、壁面32dに衝突し、強制的に第2の開口端部30b方向に変向され、センサ先端の検知部に確実に接触するので、センサの検知精度が向上する。そして、第2の開口端部30b方向に変向された排気流は触媒コンバータ10内の触媒担体11の上端面を指向することになり、触媒担体11の上端面に対し均一に供給されるので、その浄化率が向上する。
【符号の説明】
【0022】
10 触媒コンバータ
11 触媒担体
20 フランジ部材
20a 開口部
30 エルボ部材
30a 第1の開口端部
31 第1の分割部材
31a 第1の接合部
31b 第1の嵌合部
32 第2の分割部材
32a 第2の接合部
32b 第2の嵌合部
32c 台座面
32d 壁面
32e 開口
40 台座
図1
図2
図3
図4
図5