(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定部は、前記強度測定部で測定された前記第2の信号の受信強度の測定値が、使用可能範囲を逸脱する場合は、前記比較処理の結果によらず、前記リレーアタックを判定することを特徴とする請求項4または5記載のリレーアタック判定装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るリレーアタック判定装置の概要図である。
図1に示すように、キーレスエントリーシステムは、車両Vに設けられた車載機1と、車両Vの使用者が所持する携帯機3とを有する。車載機1と携帯機3は、無線通信を行って、車両Vと携帯機3の対応関係の認証を行う。車載機1と携帯機3はキーレスエントリーシステムを構成すると共に、車両Vに対するリレーアタックを判定する、リレーアタック判定装置を構成する。リレーアタックの詳細については後述する。
【0010】
車載機1は携帯機3にリクエスト信号Sを送信し、携帯機3はリクエスト信号Sに応答するアンサー信号を送信する。車載機1は、アンサー信号を用いて車両Vと携帯機3の対応関係の認証を行い、ドアロックの施錠または開錠の制御を行う。車載機1は、リクエスト信号Sを、例えば125−135KHzのLF信号として送信する。携帯機3は、例えばUHF帯のRF信号をアンサー信号として送信する。なお、キーレスエントリーシステムの制御対象としては、ドアロックに限られず、エンジン始動やステアリングロック等の他の車載機器が含まれるが、詳細な説明は省略する。実施の形態ではドアロックの制御について、特に開錠の制御について説明する。
【0011】
図2は車載機1の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、車載機1は、リクエストスイッチ5、キーレスコントローラ10、送信アンテナ7、受信アンテナ8およびドアロックアクチュエータ9を備える。
【0012】
リクエストスイッチ5は車体のドアやトランクに設置され、使用者の開錠要求を受け付ける。例えば、
図1に示すように、リクエストスイッチ5は、運転席ドア、助手席ドアおよびトランクにそれぞれ設置されたスイッチ5a、5b、5cを備える。リクエストスイッチ5は、例えばスイッチボタンとすることができる。スイッチボタンは、使用者がプッシュするまたは触れる等の操作を行うことによって、開錠要求を受け付ける。
【0013】
送信アンテナ7はいずれかのリクエストスイッチ5a、5b、5cが操作されると、リクエスト信号SをLF信号として送信する。なお、
図1の例では送信アンテナ7を車体の後部に配置しているが、送信アンテナ7の位置は特に限定されず、別の箇所に配置しても良い。
【0014】
受信アンテナ8は、携帯機3からアンサー信号を受信する。アンサー信号は、携帯機3がリクエスト信号Sへの返信として送信するものである。ドアロックアクチュエータ9は、運転席ドア、助手席ドアおよびバックドアを開錠および施錠する。
【0015】
キーレスコントローラ10は、リクエストスイッチ5、送信アンテナ7、受信アンテナ8およびドアロックアクチュエータ9のそれぞれに接続する。キーレスコントローラ10は、リクエストスイッチ5の操作に応じてリクエスト信号Sを生成し、送信アンテナ7から携帯機3に送信させる。キーレスコントローラ10は、受信アンテナ8を介して、リクエスト信号Sに対するアンサー信号を受信して認証を行う。キーレスコントローラ10は、アンサー信号の認証結果に応じて、ドアロックアクチュエータ9の駆動を制御して、ドアの開錠を行う。
【0016】
キーレスコントローラ10は、CPU11、LF送信部13、RF受信部14、メモリ12およびアクチュエータ駆動回路15を備える。LF送信部13は送信回路等から構成され、送信アンテナ7に接続し、CPU11で生成したリクエスト信号Sのデジタルアナログ変換等の処理を行い、LF電波として送信アンテナ7から送信させる。RF受信部14は受信回路等から構成され、受信アンテナ8に接続し、アンサー信号を受信させ、受信したアンサー信号のアナログデジタル変換等の処理を行う。アクチュエータ駆動回路15は、CPU11の入力に従って、ドアロックアクチュエータ9を駆動させる回路である。
【0017】
メモリ12は、キーレスコントローラ10の制御プログラムや、キーレスコントローラ10の処理に必要な情報を格納する。メモリ12はまた、CPU11の処理において生成される諸データを一時的に記憶する。メモリ12は、一例として、携帯機3のIDを格納する。
【0018】
図2に示すように、CPU11は、制御部20、スイッチ判別部21、信号生成部22、および暗号処理部23を備える。制御部20は、不図示のタイマを備える。
特に記載しないが、CPU11の各部は、処理結果を一時的にメモリ12に記憶させ、必要なデータや処理対象をメモリ12から読み出し、処理終了後に一時的に記憶させたデータをリセットする。
【0019】
スイッチ判別部21はリクエストスイッチ5a、5b、5cのいずれが操作されたかを判別し、判別結果を制御部20に入力する。
制御部20はCPU11全体の制御を行う。制御部20は、リクエスト信号Sの送信に関して、乱数などの暗号Cを生成する。制御部20は、生成した暗号Cを処理指令と共に暗号処理部23に入力する。制御部20は、また、生成した暗号Cを信号生成指令と共に信号生成部22に入力する。
【0020】
暗号処理部23は、制御部20の処理指令に従って、制御部20が生成した暗号Cを、所定の計算プロセスで計算処理する。所定の計算プロセスは、メモリ12に記憶させた携帯機3のIDを組み込んでいる。暗号処理部23は、処理結果を車載機側処理結果としてメモリ12に記憶させる。この車載機側処理結果は、携帯機3からアンサー信号を受信したときに使用する。
【0021】
信号生成部22は、制御部20の信号生成指令に従って、リクエスト信号Sを生成し、LF送信部13に出力する。信号生成部22は、LF送信部13を制御して、送信アンテナ7からリクエスト信号Sを出力させる。
【0022】
LF送信部13は、リクエスト信号Sにデジタルアナログ変換等の処理を行い、電磁波であるLF送信波に変換して送信アンテナ7に出力する。送信アンテナ7が周囲に磁界を形成し、携帯機3が形成された磁界を検出することで、車載機1から携帯機3にリクエスト信号Sが送信される。
【0023】
実施の形態において、LF送信部13は、2つのリクエスト信号を生成して送信アンテナ7から出力する。以降の説明においては、最初に送信するリクエスト信号Sを「リクエスト信号S1」とし、次に送信するリクエスト信号Sを「リクエスト信号S2」として区別する。LF送信部13は、リクエスト信号S1、S2のそれぞれ磁界の強度を異ならせて出力する。LF送信部13は、リレーアタックの判定のために出力強度を異ならせたリクエスト信号S1、S2を送信するが、リレーアタックの判定の詳細については後述する。なお、ここでは、リクエスト信号S2の出力強度をリクエスト信号S1の出力強度より低くする例を説明するが、リクエスト信号S2の出力強度をリクエスト信号S1の出力強度より高くしても良い。
【0024】
図3は、リクエスト信号S1、S2の構成を示す図である。
図3に示すように、始めに送信するリクエスト信号S1は、ウエイクアップ信号W、データ信号Dおよびバースト信号Bを含む。データ信号Dは、たとえば、リクエスト信号S1およびリクエスト信号S2全ての送信が完了する時間(送信完了時間)T1と暗号Cとを含む。バースト信号Bは、携帯機3側でリレーアタック判定用の受信強度を測定するための信号である。2番目に送信されるリクエスト信号S2は、バースト信号Bのみを含む。なお、
図3のリクエスト信号S1、S2の構成はあくまで一例であり、通信の目的に応じて適宜変更可能である。
また、前記したような、リクエスト信号S1の出力強度をリクエスト信号S2の出力強度よりも低く設定するような場合には、ウエイクアップ信号Wおよびデータ信号Dの部分は出力強度を高くし、バースト信号Bのみ出力強度を低くするように、同じ信号内でも出力強度を調整しても良い。
【0025】
制御部20(
図2参照)は、携帯機3からのアンサー信号の受信に関して、アンサー信号の認証を行う。詳細は後述するが、アンサー信号は、リクエスト信号Sが含む暗号Cの、携帯機3での処理結果(以降、「携帯機側処理結果」という)を含む。制御部20は、携帯機側処理結果を、メモリ12に記憶させた車載機側処理結果と照合する。携帯機3は車載機1の暗号処理部23と同じ計算プロセスで計算処理を行っているため、アンサー信号が対応する携帯機3から送信されたものであれば、処理結果は同一となる。携帯機側処理結果と車載機側処理結果が同一であれば、制御部20はアンサー信号が対応する携帯機3からのものである旨を認証する。制御部20はアンサー信号を認証すると、駆動指令をアクチュエータ駆動回路15に出力する。アクチュエータ駆動回路15はドアロックアクチュエータ9を駆動させてドアを開錠する。
【0026】
図4は携帯機3の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、携帯機3は、リモートコントローラ30、受信アンテナ32および送信アンテナ33を備えている。
【0027】
受信アンテナ32は、車載機1が送信するリクエスト信号Sを受信し、送信アンテナ33は、アンサー信号をRF信号として送信する。受信アンテナ32は、LF送信波であるリクエスト信号Sの磁界を検出することで、リクエスト信号Sを受信する。前記したように、リクエスト信号S1、S2は、それぞれ順番に送信されるため、受信アンテナ32もそれぞれの信号を順番に受信する。
【0028】
リモートコントローラ30は、受信アンテナ32を介して受信したリクエスト信号Sに対して後述する処理を行い、アンサー信号を生成する。リモートコントローラ30は、生成したアンサー信号を送信アンテナ33から車載機1に送信させる。
【0029】
リモートコントローラ30は、CPU35、LF受信部37、強度測定部38、RF送信部39、およびメモリ36を備える。
【0030】
LF受信部37は、受信アンテナ32に接続した受信回路である。
図5は、LF受信部37の構成を示す図である。
図5に示すように、LF受信部37は、増幅器51、52、利得調整器53、ピーク検出器54およびA/D変換器55を備えている。
増幅器51、52は、受信アンテナ32で受信したリクエスト信号Sを増幅する。使用する増幅器51、52を切り替えることで、リクエスト信号Sを増幅する際の利得を変更することができる。
【0031】
利得調整器53は、後述するCPU35の利得決定部41からの制御信号に従って、増幅器51、52を制御することで、リクエスト信号Sの増幅を行う際の利得を調整する。
ピーク検出器54は、増幅器51、52から出力されたリクエスト信号Sの最大振幅を検出する。
A/D変換器55は、増幅器51、52で増幅されたリクエスト信号Sを、アナログ信号からデジタル信号に変換する。
【0032】
強度測定部38は、例えば、RSSI(Received Signal Strength Indication)回路等から構成される。強度測定部38は、LF受信部37のA/D変換器55でデジタル信号に変換されたリクエスト信号Sの受信強度を測定する。具体的には、強度測定部38は、リクエスト信号S1、S2のそれぞれに含まれるバースト信号Bの受信強度を測定する。強度測定部38は、測定したリクエスト信号S1、S2の受信強度をメモリ36に格納する。
【0033】
図6の(a)は、強度測定部38による受信強度の測定の態様を説明する図であり、
図6の(b)は、リクエスト信号S1、S2の各回の受信強度の測定値の一例を示すグラフである。
図6の(a)に示すように、強度測定部38は、リクエスト信号S1、S2のそれぞれに対して、複数回ずつ測定を行う。測定回数および測定間隔は予め設定することができるが、例えば各信号に対して1ms間隔で20回ずつ測定を行うようにしても良い。
【0034】
図4に戻り、RF送信部39は、アンサー信号をRF信号として送信アンテナ33から出力させる。メモリ36は、リモートコントローラ30の制御プログラムや、リモートコントローラ30の処理に必要な情報を格納する。メモリ36は、一例として、携帯機3のIDを格納する。
【0035】
CPU35は、リモートコントローラ30の統括的な制御を行うが、特にリクエスト信号Sに対する処理を行う機能構成として、利得決定部41、ばらつき演算部42、平均値算出部43、比較部44、暗号処理部45、および信号生成部46を備える。
【0036】
車載機1と同様に、CPU35の各部は、処理結果を一時的にメモリ36に記憶させ、必要なデータや処理対象をメモリ36から読み出し、処理終了後に一時的に記憶させたデータをリセットする。例えば、前記したようにメモリ36には強度測定部38が測定した受信強度が格納されるが、受信したリクエスト信号Sに応答するアンサー信号の送信が完了すると、CPU35は受信強度をメモリ36から消去する。
【0037】
なお、詳細な説明は省略するが、携帯機3はコントロールスイッチを備えるようにしても良い。使用者がコントロールスイッチを操作することで、遠隔から車両のドアを施錠または開錠させたり、エンジンを始動させたりすることができる。
【0038】
利得決定部41は、リクエスト信号S1、S2のそれぞれについて、LF受信部37の増幅器51、52での利得を決定する。前記したように、LF受信部37のピーク検出器54は、リクエスト信号S1、S2を受信した際に、それぞれの最大振幅を検出する。利得決定部41は、検出された最大振幅に基づいて、リクエスト信号S1、S2のそれぞれの利得を決定し、利得調整器53に制御信号を入力する。利得決定部41は、例えば、受信したリクエスト信号Sの最大振幅が小さければ利得を大きくし、最大振幅が大きければ利得を小さくする。なお、利得決定部41が決定した利得によってリクエスト信号S1、S2が増幅された後に、前記した強度測定部38において受信強度の測定が行われる。
【0039】
ばらつき演算部42、平均値算出部43および比較部44は、リクエスト信号S1、S2に対してリレーアタックの判定処理を行う。
ばらつき演算部42は、リクエスト信号S2について、強度測定部38で複数回ずつ測定された受信強度のばらつきを演算する。
平均値算出部43は、強度測定部38で測定されたリクエスト信号S1、S2の各回の測定値を取得して、それぞれの平均値V1、V2を算出する。
比較部44は、平均値算出部43が算出した、リクエスト信号S1の平均値V1とリクエスト信号S2の平均値V1、V2の比較を行う。
ただし、比較部44は、ばらつき演算部42で演算したリクエスト信号S2のばらつきが、閾値TH1よりも大きかった場合には、比較を行わずに処理を終了する。
【0040】
前記したように、車載機1は、送信アンテナ7から、リクエスト信号S1、S2の出力強度を異ならせて送信している。そのため、車載機1から携帯機3に適切に信号が送信された場合は、携帯機3でのリクエスト信号S1、S2の受信強度も異なったものとなる。
図6の(b)に示すように、高い出力強度で送信されたリクエスト信号S1の受信強度の測定値は、低い出力強度で送信されたリクエスト信号S2の受信強度の測定値よりも高くなる。
【0041】
一方、リクエスト信号S1、S2がリレーアタックを行う中継器により中継された場合には、2つのリクエスト信号S1、S2の受信強度は同じとなる可能性が高い。
図7は、リレーアタックの仕組みを説明する図である。
図7に示すように、車両Vのドアの不正開錠を試みる第三者は、携帯機3を所持するユーザが車両Vの遠方に居るときに、リクエストスイッチ5aを操作する。リクエストスイッチ5aの操作に応じて車載機1はリクエスト信号Sを送信する。携帯機3と車両Vの間に設置され、それぞれにアンテナを備えた複数の中継器が、このリクエスト信号Sを中継して、遠方にある携帯機3に受信させる。
【0042】
このような中継器によって送信されたリクエスト信号Sに携帯機3がアンサー信号を返信すれば、ドアが不正開錠されてしまう。このようなリレーアタックの対策のため、車載機1は送信アンテナ7から出力強度を異ならせたリクエスト信号S1、S2を送信する。携帯機3はリクエスト信号S1、S2の受信強度の比較処理を行う。車載機1から携帯機3に直接的にリクエスト信号S1、S2が送信されていれば、
図6の(b)に示すようにそれぞれの受信強度は異なったものとなる。一方、中継器は中継するリクエスト信号S1、S2の出力強度に差をつけないため、
図7に示すように、携帯機3側でのリクエスト信号S1、S2の受信強度は同じとなる。
【0043】
よって、比較部44の比較処理の結果、リクエスト信号S1、S2の強度が同じと判断される場合はリレーアタックを判定し、携帯機3は車載機1にアンサー信号を返信しないようにすることで、車両Vのドアの不正解錠を防止する。
なお、1回の測定では、ノイズ等の影響で実際の強度との誤差が出る可能性があるので、実際の強度に近い値となるように、複数回の測定を行い、その平均値V1、V2を算出する。
また、同様にノイズ等の影響で、適切に送信された場合でも、リクエスト信号S1、S2の強度の平均値V1、V2の間にも、若干の差が生じることがあるため、比較部44では、2つの強度の差が同じと判断できる程度のものであれば、リレーアタックを判定する。
【0044】
ただし、例えば、中継器の性能によっては、強度の低い信号は断続的に中継される可能性がある。
図8の(a)は、リクエスト信号S2が中継器で断続的に中継される態様を示した図であり、
図8の(b)は、断続的に中継されたリクエスト信号S2の受信強度の測定値を示す図である。
【0045】
図8の(a)に示すように、リクエスト信号S1のように強度の高い信号は、中継器は途切れさせることなく中継しやすい。一方、リクエスト信号S2の強度が、中継器の検波範囲に入るか入らないかという強度であった場合、中継器はリクエスト信号S2を断続的に受信することになる。中継器は、断続的に受信したリクエスト信号S2を、そのまま携帯機3に送信する。これによって、携帯機3がリクエスト信号S2を受信する際には、信号の入力が有る状態と、信号の入力が途切れた状態が交互に繰り返される形となる。
【0046】
前記したように、携帯機3の強度測定部38は、リクエスト信号S1、S2についてそれぞれ複数回ずつの受信強度の測定を行う。
図8の(b)に示すように、リクエスト信号S1については、各回の測定において信号の入力が途切れることが無いため、受信強度が適切に測定され、複数回の測定値に大きなばらつきはなく、均一的になる。
【0047】
一方、断続的に中継されたリクエスト信号S2については、信号の入力が有るときに測定が行われる場合と、信号の入力が途切れているときに測定が行われる場合がある。そのため、複数回の測定値は、大きなばらつきが生じることがある。
【0048】
もし、リクエスト信号S2の測定値にばらつきが生じたままの状態で、平均値V2を算出すると、平均値V2は、中継器が送信したリクエスト信号S2の実際の強度から乖離したものとなる可能性がある。これによって、リクエスト信号S1の平均値V1とリクエスト信号S2の平均値V2の比較処理が適切に行えなくなる可能性がある。
【0049】
この対策として、実施の形態では、ばらつき演算部42が、リクエスト信号S2の受信強度の測定値のばらつきを演算する。そして、比較部44は、ばらつきの大きさが、通信異常、すなわちリレーアタックによる断続中継の可能性を示す場合には、受信強度の比較処理によらずにリレーアタックを判定する。
平均値算出部43、ばらつき演算部42および比較部44の処理の詳細については、フローチャートを用いて後述する。
【0050】
図4に戻り、比較部44の比較処理の結果、アンサー信号を送信可能と判定された場合は、暗号処理部45がリクエスト信号S1のデータ信号Dに含まれる暗号C(
図3参照)を、所定の計算プロセスで計算処理する。所定の計算プロセスは、携帯機3のIDを組み込んだものであり、車載機1の暗号処理部23と同じ計算プロセスである。暗号処理部45は、携帯機側処理結果を信号生成部46に入力する。
【0051】
信号生成部46は、携帯機側処理結果を含むアンサー信号を生成して、RF送信部39に送る。RF送信部39は、アンサー信号をRF信号として送信アンテナ33から出力する。
【0052】
以下、キーレスエントリーシステムの処理を、車載機1側と携帯機3側に分けて説明する。
図9は、車載機1の処理を示すフローチャートである。
図9に示すように、使用者によりリクエストスイッチ5a、5b、5cのいずれかが操作されると(ステップS11:Yes)、スイッチ判別部21が、どのスイッチが操作されたのかを判別して、メモリ12に記憶させる。
【0053】
制御部20は、リクエスト信号Sに含ませる暗号Cを生成する(ステップS12)。制御部20は、生成した暗号Cと共に処理指令を暗号生成部に入力する。制御部20は、暗号Cと共に、信号生成指令を信号生成部22に入力する。
【0054】
暗号処理部23は、処理指令に従い、暗号Cを所定の計算プロセスで計算処理し、車載機側処理結果をメモリ12に記憶させる(ステップS13)。
【0055】
信号生成部22は、信号生成指令に従ってリクエスト信号Sを生成し、LF送信部13を制御して、送信アンテナ7から、リクエスト信号S1、S2を送信させる(ステップS14)。
【0056】
制御部20は、リクエスト信号S1、S2の送信が完了すると、携帯機3からのアンサー信号を待ち受ける(ステップS15)。なお、制御部20は、タイマを参照して、予め設定した応答待ち時間が経過してもアンサー信号を受信しなかった場合は、処理を終了する。
【0057】
制御部20は、アンサー信号を受信すると(ステップS15:Yes)、アンサー信号が含む携帯機側処理結果をメモリ12に記憶させておいた車載機側処理結果と照合する(ステップS16)。制御部20は、携帯機側処理結果と車載機側処理結果が一致しなかった場合は(ステップS16:No)、処理を終了する。制御部20は、携帯機側処理結果と車載機側処理結果が一致した場合(ステップS16:Yes)、アクチュエータ駆動回路15に駆動指令を出力する。アクチュエータ駆動回路15はドアロックアクチュエータ9を駆動させ(ステップS17)、ドアロックを開錠する。
【0058】
図10は、携帯機3における処理を示すフローチャートである。
携帯機3のリモートコントローラ30は、コントロールスイッチが操作されたときを除き、リクエスト信号Sを受信するまではスリープモードにある。
図10に示すように、リモートコントローラ30は、リクエスト信号S1に含まれウエイクアップ信号Wを受信すると(ステップS21:Yes)、スリープモードを解除する。
【0059】
リモートコントローラ30は、リクエスト信号S1のデータ信号Dに含まれる送信完了時間T1を参照して、送信完了時間T1内に送信されるリクエスト信号S1と、リクエスト信号S2の受信処理を行う(ステップS22)。
【0060】
図11は、リクエスト信号S1、S2の受信処理の詳細を示すフローチャートである。
リクエスト信号S1が受信アンテナ32において受信されると、LF受信部37のピーク検出器54(
図5参照)が、リクエスト信号S1の最大振幅を検出する。
図11に示すように、CPU35の利得決定部41は、リクエスト信号S1の最大振幅に基づいて、増幅器51、52の利得を決定する(ステップS221)。
利得調整器53は、利得決定部41からの制御信号に応じて増幅器51、52を制御し、リクエスト信号S1を利得決定部41で決定された利得で増幅させる。
【0061】
強度測定部38は、増幅器51、52で増幅され、A/D変換器55でアナログ信号からデジタル信号に変換されたリクエスト信号S1の受信強度を測定する(ステップS222)。
強度測定部38は、予め設定した回数、リクエスト信号S1の受信強度を測定し、各回の測定値をメモリ36に順次記憶させる。
【0062】
強度測定部38は、設定回数の測定を終了すると(ステップS223:Yes)、続いて、リクエスト信号S2の受信処理を行う。
【0063】
リクエスト信号S2が受信アンテナ32において受信されると、ピーク検出器54が、リクエスト信号S2の最大振幅を検出する。
CPU35の利得決定部41は、リクエスト信号S2の最大振幅に基づいて、増幅器51、52の利得を決定し(ステップS224)、利得調整器53に制御信号を入力する。
利得調整器53は、利得決定部41からの制御信号に応じて増幅器51、52を制御し、リクエスト信号S2を利得決定部41で決定された利得で増幅させる。
【0064】
強度測定部38は、増幅器51、52で増幅され、A/D変換器55でアナログ信号からデジタル信号に変換されたリクエスト信号S2の受信強度を測定する(ステップS225)。
強度測定部38は、予め設定した回数、リクエスト信号S2の受信強度を測定するが、各回の測定値をメモリ36に順次記憶させる。
さらに、ばらつき演算部42は、リクエスト信号S2の各回の測定値を取得するごとに、測定値の中の最大値MAXおよび最小値MINの更新を行う(ステップS226)。
【0065】
前記したように、ばらつき演算部42は、リレーアタックによって強度の低いリクエスト信号S2が断続中継された可能性を判断するために、測定値のばらつきを演算する。ばらつきの具体的な演算方法は特定のものに限定されないが、一例として、測定値の中の最大値MAXと最小値MINの差は、測定値のばらつきの大きさを示す指標となる。そのため、実施の形態では、ばらつき演算部42は、強度測定部38の測定値を取得して、最大値MAXと最小値MINの記録を行う。
【0066】
ばらつき演算部42は、強度測定部38によって新たな測定値がメモリ36に記憶されると、その測定値を取得し、既に記録されている最大値MAXおよび最小値MINと比較する。新たに取得した測定値が最大値MAXより大であれば、最大値MAXをその測定値に更新する。新たに取得した測定値が、最小値MINより小であれば、最小値MINをその測定値に更新する。
【0067】
なお、実施の形態の例では、ばらつき演算部42は、出力強度が低く断続中継されやすいリクエスト信号S2のみばらつきを演算することで、処理効率を向上させているが、出力強度の高いリクエスト信号S1も断続中継される可能性はあるので、リクエスト信号S1についてもばらつき演算を行うようにしても良い。
【0068】
強度測定部38は、設定回数の測定を終了すると(ステップS227:Yes)、リクエスト信号S2の受信処理を終了する。
【0069】
図10に戻り、ばらつき演算部42は、メモリ36に記憶されているリクエスト信号S2の受信強度の測定値の最大値MAXおよび最小値MINを取得し、これらの比MAX/MINを演算する(ステップS23)。比MAX/MINは、測定値の最大値MAXと最小値MINの差を示すものであり、すなわちリクエスト信号S2の測定値のばらつきの大きさを示す指標となる。比MAX/MINが大きければ、リクエスト信号S2がリレーアタックを行う中継器によって断続中継された可能性が高いと判断することができる。ばらつき演算部42は、演算結果を比較部44に入力する。
【0070】
なお、他のばらつきの演算方法として、例えば、測定値の最大値MAXと平均値V2の比を演算する方法、最小値MINと平均値V2の比を演算する方法、測定値の二乗平均平方根σを演算する方法等を行っても良く、複数の演算方法を組み合わせても良い。
【0071】
比較部44は、ばらつき演算部42が演算した比MAX/MINを、閾値TH1と比較する(ステップS24)。閾値TH1は、受信強度の測定値のばらつきが、通信異常、すなわちリレーアタックによる断続中継の可能性を示すものであるかを判断する基準値である。
【0072】
閾値TH1は、試験やシミュレーションによって適宜設定することができるが、例えば、携帯機3を所持するユーザがリクエストスイッチ5(
図1参照)を操作する際の、携帯機3と車載機1の送信アンテナ7との距離に応じて設定することができる。この距離は、例えば車両が大きくなるほど長くなる傾向がある。距離が長くなるほど、適切に車載機1から携帯機3にリクエスト信号S1、S2が送信された場合でもばらつきが起きやすくなるため、閾値TH1を大きく設定する。
【0073】
比較部44は、比MAX/MINが閾値TH1以上であれば(ステップS24:Yes)、測定値のばらつきが大きく、リレーアタックの中継器によって断続中継された可能性が高いため、アンサー信号を返信せずに処理を終了する。
【0074】
比較部44は、比MAX/MINが閾値未満であれば(ステップS24:No)、比較結果を平均値算出部43に入力する。
平均値算出部43は、リクエスト信号S1およびリクエスト信号S2の各測定値から、それぞれの平均値V1、V2を算出する(ステップS25)。
【0075】
平均値算出部43は、リクエスト信号S1およびリクエスト信号S2の各測定値から、それぞれの平均値V1、V2を算出する(ステップS25)。平均値算出部43は、算出結果を比較部44に入力する。
【0076】
比較部44は、比較処理として、リクエスト信号S1、S2の受信強度の差(V1−V2)を、閾値TH2と比較する(ステップS26)。具体的には、比較部44は、平均値算出部43から入力された平均値V1、V2の差を、受信強度の差(V1−V2)として算出する。
【0077】
前記したように、リクエスト信号S1、S2が中継器によって中継された場合でも、ノイズ等の影響で、双方の強度に若干の誤差が生じる場合もある。さらに、リクエスト信号S1、S2が適切に車載機1から携帯機3に送信された場合でも、ノイズ等の誤差で、出力強度の差よりも受信強度の差が小さくなる場合がある。閾値TH2は、これらの誤差を考慮した値を設定すると良い。
【0078】
比較部44は、差(V1−V2)が閾値TH2未満であれば(ステップS26:No)、リレーアタックの中継器によって中継された可能性が高いため、アンサー信号を返信せずに処理を終了する。
【0079】
比較部44は、差(V1−V2)が閾値TH2以上であれば(ステップS26:Yes)、処理結果を暗号生成部に入力する。
【0080】
暗号処理部45は、比較部44から処理結果が入力されると、リクエスト信号S1のデータ信号Dに含まれる暗号Cを取得し、所定の計算プロセスで計算処理し(ステップS27)、算出した携帯機側処理結果を信号生成部46に入力する。信号生成部46は、携帯機側処理結果を含むアンサー信号を生成する。信号生成部46は、RF送信部39を制御して、アンサー信号を送信アンテナ33から送信させる(ステップS28)。
【0081】
リモートコントローラ30は、アンサー信号の返信後、通常動作状態からスリープ状態に戻り、処理を終了する。
【0082】
以上の通り、実施の形態のリレーアタック判定装置は、
(1)車載機1と携帯機3との無線通信が中継器によって中継される、いわゆるリレーアタックを判定するものである。
リレーアタック判定装置は、車載機1に設けられ、リクエスト信号S1(第1の信号)と、リクエスト信号S1と出力強度(出力条件)を異ならせたリクエスト信号S2(第2の信号)を送信するLF送信部13(送信部)と、
携帯機3に設けられ、リクエスト信号S1およびリクエスト信号S2を受信するLF受信部37(受信部)と、
LF受信部37が受信したリクエスト信号S1およびリクエスト信号S2のそれぞれについて、複数回ずつ受信強度の測定を行う強度測定部38と、
強度測定部38が測定した受信強度の平均値V1、V2を用いて、リクエスト信号S1およびリクエスト信号S2の比較処理を行い、
当該比較処理の結果に基づいて、リレーアタックを判定する比較部44(比較部、判定部)と、
リクエスト信号S1、S2のうち、受信強度の低い信号について、リクエスト信号S2について、強度測定部38で複数回ずつ測定された受信強度のばらつきを演算するばらつき演算部42と、を備える。
比較部44は、リクエスト信号S2において、受信強度のばらつきが、通信異常を示す閾値TH1を超えた場合、比較処理の結果によらず、リレーアタックを判定する。
【0083】
キーレスエントリーシステムにおいてリレーアタックを判定する一つの方法として、車載機1側で強度を異ならせたリクエスト信号S1、S2を送信し、携帯機3側で受信したリクエスト信号S1、S2のそれぞれの受信強度を測定して比較する。リクエスト信号S1、S2が車載機1から携帯機3に直接送信されたものであれば、リクエスト信号S1、S2の受信強度は異なったものとなる。一方、リクエスト信号S1、S2がリレーアタックの中継器を介して携帯機3に送信された場合には、2つのリクエスト信号S1、S2の受信強度は同じとなる。そこで、リレーアタック判定装置では、リクエスト信号S1、S2の受信強度の比較処理によってリレーアタックを判定することができる。
【0084】
ところが、中継器の性能によっては、強度の低いリクエスト信号S2が断続的に中継される可能性がある。携帯機3では、リクエスト信号S1、S2のそれぞれに対して複数回の強度の測定を行い、測定値の平均値V1、V2を算出して比較処理に用いる。ここで、強度の低いリクエスト信号S1、S2が断続中継された場合、複数回の測定において測定値にばらつきがでる可能性がある。ばらつきが出た測定値から平均値V1、V2を算出すると、中継器が中継したにも関わらず、平均値V1、V2の差が大きくなり、適切な比較処理が行えない可能性がある。
【0085】
そこで、実施の形態では、ばらつき演算部42が、強度の低いリクエスト信号S2について、各回の測定値のばらつきを演算する。ばらつきが大きければ、通信異常、すなわちリレーアタックによる断続中継の可能性が高いため、比較部44は比較処理の結果によらずリレーアタックを判定する。これによって、キーレスエントリーシステムのセキュリティを高めることができる。
【0086】
(2)LF送信部13は、リクエスト信号S1より出力強度を低くしたリクエスト信号S2を送信し、ばらつき演算部42は、リクエスト信号S2の受信強度のばらつきを演算する。
出力強度が低い方が断続中継されやすいため、ばらつきが出やすいため、出力強度を低く設定したリクエスト信号S2のみ受信強度のばらつきを演算することで、処理効率を向上させることができる。なお、リクエスト信号S1の方の出力強度を低く設定した場合には、リクエスト信号S1のばらつきを演算しても良い。
【0087】
(3)ばらつき演算部42は、
強度測定部38で複数回ずつ測定された受信強度の最大値MAXと最小値MINの差を示す比MAX/MINを、受信強度のばらつきとして演算する。
【0088】
ばらつきの演算は様々な方法が考えられるが、最大値MAXと最小値MINの比MAX/MINは、演算が容易で処理にかかる時間も少ない。さらに、測定値を取得するごとに最小値MINと最大値MAXの更新処理を行えばメモリ36の消費量も低減することができる。
なお、実施の形態では、最大値MAXと最小値MINの差を示すものとして、比MAX/MINを演算しているが、例えば、RSSI値を対数スケールで出力するRSSI回路を用いる場合等は、最大値MAXと最小値MINの差を直接的に受信強度のばらつきを示す指標として用いても良い。
【0089】
[変形例1]
実施の形態では、リクエスト信号S1、S2の受信強度の測定値のばらつきの大きさから、リレーアタックによる断続中継の可能性を判定する態様を説明した。変形例1では、この態様に加えて、増幅器51、52の出力を基準として断続中継の可能性を判定する。
【0090】
図12は、変形例1に係るリレーアタック判定装置のLF受信部37の構成を説明する図である。
図12に示すように、変形例1において、LF受信部37は、実施の形態と同じ構成に加えて、オーバーフロー/アンダーフロー検出器56を備えている。オーバーフロー/アンダーフロー検出器56は、増幅器51、52からの出力レベルが所定範囲の上限を飽和するオーバーフローと、下限を下回るアンダーフローを検出する。変形例1のその他の構成は実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0091】
変形例1では、携帯機3は、リクエスト信号S1、S2を受信する際に、オーバーフロー/アンダーフロー検出器56が増幅器51、52からの出力のオーバーフローまたはアンダーフローを検出した場合は、リレーアタックによる断続中継を判定する。
【0092】
図13の(a)は、携帯機3が断続中継されたリクエスト信号S2を受信する際に、増幅器51、52においてオーバーフローが起こる一例を示し、
図13の(b)は、アンダーフローが起こる一例を示す図である。
前記したように、携帯機3がリクエスト信号S1、S2を受信する際には、まず、CPU35の利得決定部41(
図4参照)が、ピーク検出器54で検出した最大振幅に基づいて、増幅器51、52での利得を決定する。ところが、強度の低いリクエスト信号S2が中継器で断続中継された場合には、
図13の(a)に示すように、利得決定時にはリクエスト信号S2の入力が途切れた状態となることがある。
【0093】
このような場合、ピーク検出部が検出する最大振幅が小さくなるため、利得決定部41は、リクエスト信号S2を増幅する利得を大きく設定する。しかしながら、利得決定後にリクエスト信号S2の入力があると、増幅器51、52によって、リクエスト信号S2は大きく設定された利得で増幅されるため、増幅器51、52からの出力レベルがオーバーフローとなる可能性がある。
【0094】
一方、
図13の(b)に示すように、断続中継では、利得決定時にはリクエスト信号S2の入力が有るが、その後に入力が途切れた状態となることがある。この場合は、ピーク検出部が検出する最大振幅は大きくなるため、利得決定部41は、リクエスト信号S2を増幅する利得を小さく設定する。しかしながら、利得決定後にリクエスト信号S2の入力が途切れると、増幅器51、52からの出力レベルがアンダーフローとなる可能性がある。
【0095】
このように、リクエスト信号S2がリレーアタックの中継器によって断続中継された場合に、利得決定時とその後で信号の入力状態が変化することで、増幅器51、52からの出力レベルがオーバーフローまたはアンダーフローとなる現象が発生することがある。そこで、変形例1では、LF受信部37にオーバーフロー/アンダーフロー検出器56を設け、増幅器51、52のオーバーフローまたはアンダーフローを検出することによって、リレーアタックによる断続中継の可能性を判定する。
【0096】
図14は、変形例1に係る携帯機3の処理を示すフローチャートである。
図14に示すように、変形例1では、ウエイクアップ信号Wを受信すると(ステップS31:Yes)、実施の形態と同様に、リクエスト信号S1、S2の受信処理を行う(ステップS32)。変形例1では、オーバーフロー/アンダーフロー検出器56が増幅器51、52のオーバーフローまたはアンダーフローを検出した場合(ステップS33:Yes)、比較部44は、ステップS34〜S39を行わずに、処理を終了する。これによって、オーバーフローまたはアンダーフローが検出された場合には、ばらつき演算、平均値算出および強度の比較処理を行わずにリレーアタックを判定できるため、速やかな判定が可能となる。
【0097】
オーバーフロー/アンダーフロー検出器56において、増幅器51、52のオーバーフローまたはアンダーフローが検出されなかった場合(ステップS33:No)は、実施の形態と同様に、ステップS34〜S39の処理を行う。なお、ステップS34〜S39の処理は、実施の形態のステップS23〜S28(
図10参照)と同じであるため、説明は省略する。
【0098】
以上の通り、変形例1のリレーアタック判定装置は、
(4)リクエスト信号S1及びリクエスト信号S2の最大振幅を検出するピーク検出器54(ピーク検出部)と、
最大振幅に基づいて、リクエスト信号S1およびリクエスト信号S2のそれぞれの利得を決定する利得決定部41と、
利得決定部41が決定した利得でリクエスト信号S1及びリクエスト信号S2を増幅する増幅器51、52と、を備え、
強度測定部38は、増幅器51、52で増幅されたリクエスト信号S1およびリクエスト信号S2の受信強度を測定する。
さらに、リレーアタック判定装置は、増幅器51、52の出力のオーバーフローまたはアンダーフローを検出するオーバーフロー/アンダーフロー検出器56(検出部)を備える。比較部44は、リクエスト信号S2の受信強度の測定時に、検出部によって増幅器51、52のオーバーフローまたはアンダーフローが検出された場合は、比較処理の結果によらず、リレーアタックを判定する。
【0099】
強度の低いリクエスト信号S2が中継器に断続中継され、利得決定時とその後の信号の入力状態が変化することによって、増幅器51、52の出力がオーバーフローまたはアンダーフローすることがある。そのような場合にはリレーアタックを判定することで、実施の形態の処理に加えて、キーレスエントリーシステムのセキュリティをさらに向上させることができる。また、ばらつき演算や比較処理を行う前にリレーアタックを判定して処理を終了させることができるため、携帯機3での処理負荷を低減することができる。
【0100】
[変形例2]
変形例2では、利得決定時とその後の強度測定時の信号の入力状態の変化によって、強度測定部38の測定値が使用可能範囲を逸脱することに着目し、変形例1と同様に、リレーアタックの判定手法を実施の形態に追加する。
【0101】
図15は、変形例2に係り、利得決定時と強度測定時の信号の入力状態の変化を示す図である。
図15の(a)は、強度の低いリクエスト信号S2が中継器で断続中継され、利得決定時にリクエスト信号S2の入力が途切れているが、利得決定後の強度測定時にはリクエスト信号S2の入力が有る状態を示している。
【0102】
変形例1でも説明したが、利得決定時に入力が途切れている場合、リクエスト信号S2の利得は大きい値に設定される。そして、強度測定部38の測定時に入力されるリクエスト信号S2は、設定された利得によって大きく増幅される。
【0103】
ここで、RSSI回路等で構成される強度測定部38は、平均値算出やばらつき演算に使用可能な、正確な受信強度を測定できる範囲(以下、「使用可能範囲」という)に限りがある。そのため、増幅器51、52から出力されたリクエスト信号S2の受信強度が使用可能範囲を逸脱していた場合、実際の受信強度に即した正確な測定値が示されない可能性がある。その場合、測定値は、例えば誤差のある値となったり、あるいは使用可能範囲の上限または下限に張り付いた状態となってしまう。
【0104】
図15の(a)では、大きく増幅されたリクエスト信号S2の実際の受信強度が、使用可能範囲を上回ったため、測定値が使用可能範囲の上限に張り付いた状態を示している。
【0105】
一方、
図15の(b)では、利得決定時にはリクエスト信号S2の入力が有るが、利得決定後の強度測定時にはリクエスト信号S2の入力が途切れた状態を示している。
【0106】
このような場合、リクエスト信号S2の利得は小さく設定されるが、強度測定時にはリクエスト信号S2の入力が途切れている。そのため、増幅器51、52から出力されるリクエスト信号S2の受信強度は、強度測定部38の使用可能範囲を下回るほど低くなることがある。この場合は、
図15の(b)に示すように、測定値は使用可能範囲の下限に張り付いた状態となる。
【0107】
このように、リクエスト信号S2がリレーアタックの中継器によって断続中継された場合に、利得決定時と強度測定時で信号の入力状態が変化することで、強度測定部38の測定値が、使用可能範囲を逸脱することがある。そこで、変形例2では、比較部44は、強度測定部38の測定値の中で使用可能範囲を逸脱するものがあれば、リレーアタックによる断続中継の可能性を判定する。測定値の使用可能範囲については、予め試験またはシミュレーションを行って設定し、メモリ36に記憶させておく。例えば、強度測定部38が、測定値として10ビット分の0〜1023を取得可能な場合、測定値の使用可能範囲を100〜800として設定することができる。
【0108】
図16は、変形例2に係る携帯機3の処理を示すフローチャートである。
図16に示すように、変形例2では、ウエイクアップ信号Wを受信すると(ステップS41:Yes)、実施の形態と同様に、リクエスト信号S1、S2の受信処理を行う(ステップS42)。受信処理の終了後、比較部44は、リクエスト信号S2の各測定値を参照して、使用可能範囲を逸脱するものがあれば(ステップS43:Yes)、比較部44は、リレーアタックを判定して、ステップS44〜S49を行わずに、処理を終了する。
【0109】
測定値の「使用可能範囲の逸脱」を判定する具体的な処理は、強度測定部38の性能または仕様に応じて決定される。例えば、受信強度が使用可能範囲を逸脱した場合、強度測定部38の測定値が使用可能範囲の上限または下限に張り付く仕様であれば、比較部44は、測定値が上限または下限を示していれば、リレーアタックを判定する。例えば、強度測定部38の測定値の使用可能範囲が100〜800である場合、測定値が100または800を示していれば、リレーアタックを判定する。
【0110】
あるいは、強度測定部38が、使用可能範囲外の値も出力するものであれば、比較部44は、測定値が使用可能範囲外の値を示していれば、リレーアタックを判定する。例えば、強度測定部38の測定値の使用可能範囲が100〜800である場合、比較部44は測定値が使用可能範囲外の95または901等の値を示していれば、リレーアタックを判定する。
【0111】
このように、リクエスト信号S2の参照処理を行うことによって、測定値が使用可能範囲を逸脱している場合には、ばらつき演算、平均値算出および強度の比較処理を行う前にリレーアタックを判定できるため、速やかな判定が可能となる。
【0112】
なお、ステップS43では、強度の低く断続中継されやすいリクエスト信号S2の測定値のみを参照しているが、強度の高いリクエスト信号S1も断続中継される可能性はあるので、リクエスト信号S1の測定値も参照しても良い。
【0113】
ステップS44〜S49の処理は、実施の形態のステップS23〜S28(
図10参照)と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0114】
以上の通り、変形例2のリレーアタック判定装置において、
(5)比較部44は、強度測定部38で測定されたリクエスト信号S2の受信強度の測定値が、使用可能範囲を逸脱する場合、比較処理の結果によらず、リレーアタックを判定する。
【0115】
強度の低いリクエスト信号S2が中継器に断続中継され、利得決定時とその後の強度測定時とで信号の入力状態が変化することによって、受信強度が使用可能範囲を逸脱することがある。そのような場合にはリレーアタックを判定することで、実施の形態の処理に加えて、セキュリティをさらに向上させることができる。また、ばらつき演算や比較処理を行う前にリレーアタックを判定して処理を終了させることができるため、携帯機3での処理負荷を低減することができる。
【0116】
なお、変形例2は、変形例1に適用しても良い。すなわち、変形例2のリレーアタック判定装置にオーバーフロー/アンダーフロー検出器56を設ける。比較部44は、増幅器51、52のオーバーフローまたはアンダーフローが検出されるか、測定値が使用可能範囲を逸脱した場合には、リレーアタックを判定するようにしても良い。
【0117】
[変形例3]
変形例2では、断続中継によってリクエスト信号S2の利得決定時と強度測定時の入力状態が変化した場合、測定値が使用可能範囲を逸脱することから、ばらつき演算および比較処理の前に、受信強度の測定値を参照する処理を行ってリレーアタックの判定を追加した。
変形例3では、参照処理を別途行う代わりに、比較処理の際に用いる閾値を変更することで、測定値が使用可能範囲を逸脱した場合に、比較処理においてリレーアタックを判定することができる。
【0118】
図17は、変形例3に係る携帯機3の処理を示すフローチャートである。
変形例3の処理は、ステップS56以外は、実施の形態と同じ処理を行うため、他の処理については説明を省略する。
変形例3では、
図17に示すように、比較部44は、比較処理として、受信強度の差(V1−V2)が、所定の数値範囲PR内であるかを判定する(ステップS56)。
所定の数値範囲PRは、閾値TH2を下限とし、閾値TH3を上限とする範囲である。閾値TH2は実施の形態で用いた閾値TH2と同じとすることができ、車載機1側でのリクエスト信号S1、S2の送信時の出力強度の差に基づいて、誤差を考慮した値とすることができる。
【0119】
閾値TH3は、リクエスト信号S2の受信強度が測定範囲を逸脱し、測定値が上限または下限に張り付いた場合の、リクエスト信号S1との受信強度の差に基づいて設定される。
【0120】
図18は、変形例3の処理を説明する図である。
図18は、様々なケースで送信されたリクエスト信号S2の、リクエスト信号S1との受信強度の差と、それぞれに応じた処理を説明したものである。
図18では、リクエスト信号S1を黒塗りの丸で示し、リレーアタック時に、非断続的に中継されたリクエスト信号S2を白抜きの三角で示している。正常に車載機1から携帯機3に送信されたリクエスト信号S2を黒塗りの三角で示している。さらに、リレーアタック時に断続中継され、測定値の使用可能範囲の下限に張り付いたリクエスト信号S2を白抜きの四角で示している。
【0121】
まず、リクエスト信号S2が正常に送信された場合、リクエスト信号S1との受信強度の差(V1−V2)は、出力強度の差に応じて決定された閾値TH2よりも大きくなる。
リクエスト信号S2が、リレーアタック時に、リクエスト信号S2が非断続的に中継された場合は、同じ中継器を介することによって、リクエスト信号S1との受信強度の差(V1−V2)は小さくなり、0から閾値TH2の間に位置する。この場合、比較部44はリレーアタックを判定する。
【0122】
一方、リクエスト信号S2が、リレーアタック時に断続中継され、受信強度の測定値が使用可能範囲を逸脱した場合、正常に送信された場合よりも、受信強度の差(V1−V2)は大きくなる。
そこで、変形例3では、閾値TH2より大きい閾値TH3を設定し、閾値TH2を下限とし閾値TH3を上限とする所定の数値範囲PRを設定する。閾値TH3は、事前の試験またはシミュレーションで決定することができる。そして、比較部44は、受信強度の差(V1−V2)が所定の数値範囲PR内の場合のみアンサー信号を生成し、所定の数値範囲PRを逸脱する場合には、リレーアタックを判定する。
【0123】
これによって、リレーアタックの断続中継によって、利得決定時と強度測定時で入力状態が変化した場合でも、比較部44が行う比較処理においてリレーアタックを判定することができる。
【0124】
以上の通り、変形例3において
(6)比較部44は、比較処理として、リクエスト信号S1およびリクエスト信号S2のそれぞれの受信強度の平均値V1、V2の差(V1−V2)を演算し、差(V1−V2)を所定の数値範囲PRと比較する。
比較部44は、差(V1−V2)が所定の数値範囲PRを逸脱する場合は、リレーアタックを判定する。
所定の数値範囲PRの下限である閾値TH2は、車載機1のLF送信部13での送信時のリクエスト信号S1及びリクエスト信号S2の受信強度の差に基づいて決定され、
所定の数値範囲PRの上限である閾値TH3は、車載機1のLF送信部13での送信時のリクエスト信号S1の受信強度と、強度測定部38における使用可能範囲の上限または下限との差に基づいて決定される。
【0125】
変形例3では、処理の追加や構成要素の追加を伴わず、比較処理における所定の数値範囲PRの設定によってリレーアタックの判定精度を高めることができ、セキュリティをさらに向上させることができる。
【0126】
なお、前記した例では、リクエスト信号S1およびリクエスト信号S2の受信強度の差(V1−V2)を直接的に用いたが、受信強度の比V1/V2も、2つの信号の受信強度の差を示すものであるため、これを用いても良い。
【0127】
[その他の変形例]
前記した実施の形態では、リレーアタックの判定に相当する処理を携帯機3側で行う例を説明したが、これに限られず、車載機1側でリレーアタックの判定を行っても良い。
例えば、携帯機3は、リクエスト信号S1、S2の受信強度の測定のみを行い、測定値をアンサー信号に含めて車載機1に送信しても良い。車載機1は、受信した測定値に基づいて、ばらつき演算、平均値算出および比較処理等行ってリレーアタックを判定し、判定結果に応じてドアロック等の車載機器の動作を制御しても良い。
【0128】
あるいは、携帯機3がばらつき演算まで行ったり、平均値算出までを行ったりしても良い。携帯機3は、演算結果等のデータをアンサー信号に含めて車載機1に送信し、車載機1が比較処理を行って最終的なリレーアタックの判定を行うようにしても良い。すなわち、比較部44、判定部およびばらつき演算部42の機能構成は、車載機1のCPU11と携帯機3のCPU35のいずれに実現しても良い。
【0129】
車載機1は、リレーアタックを判定した場合は、ドアロックの開錠は行わずに処理を終了しても良い。あるいは、車載機1にブザーやランプ等の警報装置を設け、リレーアタックを判定した場合はこれらの装置から警報を出力しても良い。
【0130】
前記した実施の形態では、車載機1の一つの送信アンテナ7から、出力強度を異ならせたリクエスト信号S1、S2を送信し、携帯機3側での受信強度を比較することで、リレーアタックを判定する例を説明した。しかしながら、リクエスト信号Sは、リレーアタックを判定できるように出力条件を異ならせたものを複数送信すれば良く、送信態様は適宜変更可能である。
【0131】
「出力条件を異ならせる」とは、例えば、実施の形態のように出力強度を異ならせることのほかに、「出力方向を異ならせる」ことや、「出力位置を異ならせる」ことや「出力タイミングを異ならせる」ことも含まれる。
【0132】
「出力方向を異ならせる」場合には、送信アンテナ7から、リクエスト信号S1とS2を、それぞれ磁界の向きを変えて送信しても良い。「出力位置を異ならせる」場合には、2つの送信アンテナを車両Vの異なる位置に配置し、それぞれからリクエスト信号S1、S2を送信しても良い。出力方向や出力位置を異ならせることによっても、携帯機3側での受信強度が2つの信号で異なったものとなるため、受信強度の比較処理を行うことでリレーアタックを判定することができる。
【0133】
なお、これらの送信態様では、携帯機3側でのリクエスト信号S1およびS2のいずれの受信強度が低くなるかは確定しないため、ばらつき演算部42は、リクエスト信号S1およびS2の両方のばらつきを演算しても良く、あるいはそれぞれの受信強度を参照して、受信強度の低いリクエスト信号Sを選択してばらつきを演算しても良い。その際は、受信強度の最大値MAXまたは最小値MINを参照しても良く、あるいは中央値を参照しても良い。
【0134】
また、リクエスト信号Sの送信回数は2回に限られず、3回以上送信しても良い。あるいは、リクエスト信号Sを連続して出力した状態で、途中で強度を異ならせたり磁界の向きを変えたりしても良い。
【0135】
また、近年では、リレーアタックの態様として、リクエスト信号Sを中継する際に中継器を振ることで出力方向を異ならせ、携帯機3での受信強度比を変えようとするものがある。そのような態様への更なる対策として、車載機1の送信アンテナ7a、7bからリクエスト信号S1、S2をそれぞれ送信した後に、送信アンテナ7aからリクエスト信号S1と同じ強度のリクエスト信号S3をさらに出力する。すなわち、「出力タイミングを異ならせて」リクエスト信号Sを送信する。
【0136】
リクエスト信号Sが携帯機3に適切に受信された場合、リクエスト信号S1、S2の強度比は違ったものとなり、リクエスト信号S1、S3の強度比は同じとなる。一方、中継器を振りながら中継した場合、リクエスト信号S1、S2、S3の強度比全てが異なるため、リレーアタックを判定することができる。
【0137】
また、携帯機3の受信アンテナ32を、異なる方向を向いた複数の軸を有するアンテナ、例えば3軸アンテナとし、各軸での受信強度を測定するようにしても良い。
さらに、リレーアタックを判定するための比較処理は、前記した受信強度の比較処理に限定されず、他の比較処理を併せて行っても良い。例えば、受信アンテナ32として3軸アンテナを用いた場合、各軸の受信強度からリクエスト信号Sのベクトルの向きを示す強度比を演算し、これらの比較処理を行っても良い。
【0138】
3軸アンテナを用いる場合には、各軸において受信強度のばらつきを演算し、いずれかの軸でばらつきが大きければ、通信異常であると判定しても良い。この場合、1軸でもばらつきが大きければ、リレーアタックの可能性があるとして処理を終了しても良い。
あるいは、ばらつきの大きい軸を無効軸として除外し、有効軸のみで強度比を演算するようにしてもよい。その際、有効軸の数が強度比を演算可能な数を下回れば、リレーアタックの可能性があるとして処理を終了する。
【0139】
なお、前記した閾値TH1、TH2を用いた比較処理において、比較対象が「閾値以上」または「閾値未満」か、を基準としているが、閾値TH1、TH2の設定に応じて、比較対象が「閾値より大きい」または「閾値以下」か、を基準としても良い。すなわち、「閾値以上」または「閾値未満」は厳密に適用する必要は無く、設定によって閾値となる値を含まない場合または含む場合の両方を包含するものである。
【解決手段】リレーアタック判定装置の強度測定部38は、携帯機3に設けられ、車載機1から受信したリクエスト信号S1およびリクエスト信号S2のそれぞれについて、複数回ずつ受信強度の測定を行う。比較部44は、強度測定部38が測定した受信強度の平均値V1、V2を用いて、リクエスト信号S1およびリクエスト信号S2の比較処理を行い、比較処理の結果に基づいて、リレーアタックを判定する。ばらつき演算部42は、リクエスト信号S2について、強度測定部38で複数回ずつ測定された受信強度のばらつきを演算する。比較部44は、リクエスト信号S2において、受信強度のばらつきが、通信異常を示す閾値TH1を超えた場合、比較処理の結果によらず、リレーアタックを判定する。