特許第6654060号(P6654060)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654060
(24)【登録日】2020年1月31日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】ダイヤフラム弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/12 20060101AFI20200217BHJP
【FI】
   F16K7/12 B
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-29400(P2016-29400)
(22)【出願日】2016年2月18日
(65)【公開番号】特開2017-145925(P2017-145925A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115831
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 隆浩
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 友和
(72)【発明者】
【氏名】鍋井 立視
(72)【発明者】
【氏名】中村 雪恵
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 紗弓
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05112027(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0238497(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0140524(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/00− 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータによって駆動されるダイヤフラムバルブであって、
第1の流路の開口部と、前記開口部の周囲を囲む位置に形成されている第1の当接面と、前記第1の当接面の周囲を囲む位置に形成されている環状凹部とが形成されている第1のバルブハウジングと、
前記第1の当接面に対向する第2の当接面と、前記第2の当接面を囲む位置に形成されている封止部とが形成されているダイヤフラムと、
前記アクチュエータによって駆動されることによって、前記ダイヤフラムに対して前記第1の当接面とは反対側に配置され、前記反対側から前記ダイヤフラムを押圧することによって前記第2の当接面を前記第1の当接面に当接させて前記開口部を閉鎖する駆動部材と、
前記駆動部材を押圧する方向に移動可能に保持し、前記封止部を前記第1のバルブハウジングとの間に挟持することによって、前記開口部と連通可能な流路空間を封止する第2のバルブハウジングと、
を備え、
前記ダイヤフラムは、前記第2の当接面と前記封止部とを連結し、前記第2の当接面が前記封止部に対して前記第1のバルブハウジング側に移動できるように弾性変形する弾性連結部を有し、
前記弾性連結部は、前記第2のバルブハウジング側に凹となる曲面形状を有する凹曲面を有し、
前記第2のバルブハウジングは、前記凹曲面に対向する位置におい前記弾性連結部側に凸となる曲面形状を有する第2の凸曲面を有する支持部を有するダイヤフラムバルブ。
【請求項2】
請求項1に記載のダイヤフラムバルブであって
前記第1の当接面の外径は、前記環状凹部の外径の40%以上であり、前記開口部の口
元径は、前記環状凹部の外径の20%以下である形状を有しているダイヤフラムバルブ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダイヤフラムバルブであって、
前記第2の凸曲面の外径は、前記環状凹部の外径よりも小さいダイヤフラムバルブ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のダイヤフラムバルブであって
前記弾性連結部は、前記第1のバルブハウジング側に凸となる曲面形状を有する第1の
凸曲面を有し、
前記第1の凸曲面は、開弁時において前記凹曲面と前記第2の凸曲面との間の第2の隙
間が生じている領域で前記第1のバルブハウジング側に凸となる曲面形状を有しているダ
イヤフラムバルブ。
【請求項5】
請求項4に記載のダイヤフラムバルブであって、
前記第2の隙間は、前記封止部側よりも前記駆動部材側において大きな隙間を有するダ
イヤフラムバルブ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のダイヤフラムバルブであって
前記ダイヤフラムは、PTFEで構成されているダイヤフラムバルブ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のダイヤフラムバルブであって
前記第1のバルブハウジングは、さらに第2の流路を有し、
前記支持部は、前記駆動部材の移動により、前記第2の当接面が前記第1の当接面から離れて前記開口部を開放することによって前記第1の流路と前記第2の流路とを連通させる開弁時に流体圧力が加わると、前記第2の凸曲面が前記凹曲面に当接するように構成されているダイヤフラムバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムに関し、特に高圧流体の供給制御を行うダイヤフラムバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
フォトレジスト液等の薬液の流通を制御するバルブとして、ダイヤフラムバルブが用いられている。ダイヤフラムバルブは、可撓性膜であるダイヤフラムを使用するバルブである。ダイヤフラムバルブは、可撓性膜の弾性変形を利用して機能するので、高圧流体の制御においては過度の弾性変形に起因する耐久性の低下が問題となっていた。具体的には、高圧流体の制御に起因してダイヤフラムの一部が永久変形して(延びて)しまうという問題があった。このような問題対して、ダイヤフラムの変形部をバックアップで支持する技術も提案されている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−237039号公報
【特許文献2】特開2010−164130号公報
【特許文献3】特開2006−189117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本願発明者は、ダイヤフラムの永久変形の本質的な原因を見直し、高圧の液圧に起因するダイヤフラムの変形を荷重の流れや応力への変換形態の工夫を行った。これにより、本願発明者は、ダイヤフラムバルブが制御対象とできる圧力範囲を高圧側に大きく拡大することに成功した。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ダイヤフラムバルブが制御対象とできる圧力範囲を高圧側に拡大する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ダイヤフラムバルブを提供する。本ダイヤフラムバルブは、第1の流路の開口部と、前記開口部の周囲を囲む位置に形成されている第1の当接面と、前記第1の当接面の周囲を囲む位置に形成されている環状凹部とが形成されている第1のバルブハウジングと、前記第1の当接面に対向する第2の当接面と、前記第2の当接面を囲む位置に形成されている封止部とが形成されているダイヤフラムと、前記ダイヤフラムに対して前記第1の当接面とは反対側に配置され、前記反対側から前記ダイヤフラムを押圧することによって前記第2の当接面を前記第1の当接面に当接させて前記開口部を閉鎖する駆動部材と、前記押圧する方向に移動可能に保持し、前記封止部を前記第1のバルブハウジングとの間に挟持することによって、前記開口部と連通可能な流路空間を封止する第2のバルブハウジングとを備える。前記ダイヤフラムは、前記第2の当接面と前記封止部とを連結し、前記第2の当接面が前記封止部に対して前記第1のバルブハウジング側に移動できるように弾性変形する弾性連結部を有する。前記弾性連結部は、前記第2のバルブハウジング側に凹となる曲面形状を有する凹曲面を有する。前記第2のバルブハウジングは、前記凹曲面に対向する位置において前記弾性連結部側に凸となる曲面形状を有する第2の凸曲面を有する支持部を有する。
【0007】
上記ダイヤフラムバルブにおいて、前記第1の当接面の外径は、前記環状凹部の外径の40%以上であり、前記開口部の口元径は、前記環状凹部の外径の20%以下である形状を有するようにしてもよい。
【0008】
上記ダイヤフラムバルブにおいて、前記第2の凸曲面の外径は、前記環状凹部の外径よりも小さくなるようにしてもよい。
【0009】
上記ダイヤフラムバルブにおいて、前記弾性連結部は、前記第1のバルブハウジング側に凸となる曲面形状を有する第1の凸曲面を有し、前記第1の凸曲面は、開弁時において前記第2の隙間が生じている領域で前記第1のバルブハウジング側に凸となる曲面形状を有するようにしてもよい。
【0010】
上記ダイヤフラムバルブにおいて、前記第2の隙間は、前記封止部側よりも前記駆動部材側において大きな隙間を有するようにしてもよい。
【0011】
上記ダイヤフラムバルブにおいて、前記ダイヤフラムは、PTFEで構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のダイヤフラムバルブによれば、ダイヤフラムバルブが制御対象とできる圧力範囲を高圧側に拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るダイヤフラムバルブ10の一部の断面を示す部分断面図である。
図2】一実施形態に係るダイヤフラムバルブ10の構成を分解して示す分解図である。
図3】一実施形態に係るバルブ機構部100の開閉作動の様子を示す断面図である。
図4】一実施形態に係る弾性連結部114の変形状態を示す断面図である。
図5】一実施形態に係る弾性連結部114の変形状態を示す断面図である。
図6】一実施形態に係るアクチュエータロッド410の変位と薬液荷重の関係を概念的に示すグラフである。
図7】一実施形態に係る弾性連結部114の応力状態を示す断面図である。
図8】一実施形態に係る弾性連結部114の応力状態を示す断面図である。
図9】変形例に係るバルブ機構部の開閉作動の様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照して以下の順序で説明する。
A.ダイヤフラムバルブの構成:
B.ダイヤフラムバルブの作動:
C.ダイヤフラムの変形状態と駆動荷重:
D.ダイヤフラムの応力状態:
E.変形例:
【0015】
A.ダイヤフラムバルブの構成及び作動:
図1は、本発明の一実施形態に係るダイヤフラムバルブ10の一部の断面を示す部分断面図である。図2は、一実施形態に係るダイヤフラムバルブ10の構成を分解して示す分解図である。ダイヤフラムバルブ10は、本実施形態では、一例として薬液の供給をオンオフ制御するものとしている。薬液の供給をオンオフ制御するダイヤフラムバルブは、従来は、一般的に500kPa程度までの流体圧力の供給制御が仕様上の限界とされていたが、本実施形態では、数MPa程度の流体圧力の制御を可能とする。
【0016】
ダイヤフラムバルブ10は、バルブ機構部100と、ベースハウジング200(第1のバルブハウジングとも呼ばれる。)と、トップハウジング300(第2のバルブハウジングとも呼ばれる。)と、アクチュエータ400とを備えている。バルブ機構部100は、ダイヤフラム弁体110と、駆動部材120と、付勢部130とを備えている。
【0017】
ベースハウジング200には、入口側流路210(第1の流路とも呼ばれる。)と、出口側流路220(第2の流路とも呼ばれる。)とが形成されている。ダイヤフラムバルブ10は、バルブ機構部100の駆動によって入口側流路210から出口側流路220への薬液の流れをオンオフ制御するように構成されている。
【0018】
ベースハウジング200は、薬液が流通する入口側流路210と出口側流路220とが形成されているので、耐薬品性を有する樹脂であるポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone, PEEK)で形成されている。ポリエーテルエーテルケトンは、熱可塑性樹脂としては非常に高い耐熱性を有し、耐磨耗性や寸法安定性、耐疲労性、加工性といった性質にも優れる。
【0019】
ベースハウジング200は、円柱形状の外形を有している。ベースハウジング200の内部には、トップハウジング300を格納するための第1円柱凹部240が形成されている。第1円柱凹部240は、ベースハウジング200を挟持するためのハウジング挟持当接面241を有している。第1円柱凹部240の底面には、さらに第2円柱凹部250が形成されている。
【0020】
第2円柱凹部250には、その中心軸位置に入口側流路210の入口開口部211(単に開口部とも呼ばれる。)が形成されている。入口開口部211の周囲を囲む位置には、環状の平面である環状当接面213(第1の当接面とも呼ばれる。)が形成されている。環状当接面213の周囲を囲む位置には、環状の凹部である環状凹部260が形成されている。環状凹部260の周囲を囲む位置には、環状の平面である弁体挟持面217が形成されている。環状凹部260には、出口側流路220の出口開口部221が形成されている。
【0021】
環状当接面213は、弁体当接面113の当接による過剰な応力に起因する永久変形を抑制するために第1の当接面213の外径は、環状凹部260の外径(半径R1)の40%以上であり、開口部211の口元径(第1の当接面213側の端部の径)は、環状凹部260の外径の20%以下である形状を有することが好ましい。第1の当接面213の外径は、環状凹部260の外径の46%以上であることがさらに好ましく、開口部(211)口元径は、環状凹部260の外径の13%以下である形状を有することがさらに好ましい。
【0022】
ダイヤフラム弁体110は、たとえば可撓性を有するフッ素樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene:PTFE)を切削加工することによって形成することができる。ポリテトラフルオロエチレンは、耐熱性、耐薬品性に優れ、強い腐食性をもつフッ化水素酸にも溶けない材料である。ポリテトラフルオロエチレンは、さらに極めて摩擦係数が小さいという特性を有している。
【0023】
ダイヤフラム弁体110は、中心軸位置に円盤状の形状を有する弁体板111を備えている。弁体板111には、弁閉時に環状当接面213に当接する平面である弁体当接面113(第2の当接面とも呼ばれる。)が形成されている。弁体当接面113は、弁開時には環状当接面213から離れて流路としての隙間空間を形成する。弁体板111には、螺合部118が連結されている。螺合部118には、後述する駆動部材120が螺合される。
【0024】
ダイヤフラム弁体110の外周位置には、環状形状を有する板部材である環状封止部117が形成されている。環状封止部117は、ベースハウジング200の弁体挟持面217に当接することによって出口開口部221に連通する流路部分を封止している。環状封止部117は、ベースハウジング200側に凸型のアーチ状の断面を有し、環状形状を有する弾性連結部114を介して弁体板111に連結されている。弾性連結部114には、環状凹部260に対向する側に凸となる曲面形状を有する凸曲面116(第1の凸曲面とも呼ばれる。)を有し、その反対側に凹となる曲面形状を有する凹曲面115を有しアーチ状の断面形状を有している。
【0025】
トップハウジング300は、たとえばステンレス鋼を機械加工することによって製造される。トップハウジング300は、円盤状の形状を有するトップハウジング本体部340を有している。トップハウジング本体部340には、ダイヤフラム弁体110側に突出する環状の形状を有する環状凸部330が形成されている。環状凸部330の中心側には、ダイヤフラム弁体110側に凸型の環状形状を有し、凸曲面を有する環状支持面315(第2の凸曲面とも呼ばれる。)を有する支持部が形成されている。環状支持面315の内側には、貫通孔360が形成されている。
【0026】
トップハウジング300には、ダイヤフラム弁体110とは反対側に突出する環状の形状を有する環状凸部350が形成されている。環状凸部350の内側には、付勢部130(たとえばコイルスプリング)が格納されるための円筒状の溝部322が形成されている。
【0027】
駆動部材120は、たとえばステンレス鋼を機械加工することによって製造される。駆動部材120は、円柱状の形状を有する駆動軸部126と、駆動軸部126に連結されている円盤状の形状を有するフランジ部124とを有している。フランジ部124には、トップハウジング300側に付勢部130が当接するための付勢部当接面125が形成されている。フランジ部124には、さらに、アクチュエータ400側にアクチュエータ400の開弁方向の駆動ストロークを規定するための環状形状を有する平面である開弁ストローク規定面123が形成されている。
【0028】
駆動部材120において、開弁ストローク規定面123の内側には、アクチュエータ400からの駆動力を受ける駆動当接面121が形成されている。駆動軸部126の中心軸位置には、螺合部118が螺合される螺合孔128が形成されている。
【0029】
バルブ機構部100は、トップハウジング300に対して、ダイヤフラム弁体110と、駆動部材120と、付勢部130とを組み付けることによって構成されている。トップハウジング300に対して、先ず、付勢部130が組み付けられる。付勢部130は、溝部322に格納される。
【0030】
次に、駆動部材120の駆動軸部126は、トップハウジング300の貫通孔360に挿入される。貫通孔360には、駆動軸部126の円滑な作動を確保するために、駆動部材120との摺動部にグリスが塗布される。なお、グリスの塗布の代わりにブッシュを装備する構成としてもよい。挿入の際には、トップハウジング300の溝部322に格納されている付勢部130が、駆動部材120のフランジ部124の付勢部当接面125に当接する。
【0031】
駆動軸部126は、さらに挿入されて、フランジ部124が当接面323に当接面に当接した状態において治具(図示せず)に固定すると、トップハウジング300の貫通孔360から螺合孔128が突出する状態となる。螺合孔128には、ダイヤフラム弁体110の螺合部118が螺合される。
【0032】
これにより、バルブ機構部100は、トップハウジング300上に組み立てられ、バルブ機構組立100,300が構成されたことになる。バルブ機構組立100,300では、駆動部材120は、ダイヤフラム弁体110の押圧方向に移動可能に組み付けられ、保持されている。
【0033】
このように、駆動部材120は、ダイヤフラム弁体110に対して環状当接面213とは反対側に配置され、反対側からダイヤフラム弁体110を押圧することによって弁体当接面113を環状当接面213に当接させて入口開口部211を閉鎖することができる。
【0034】
バルブ機構組立100,300は、以下のようにベースハウジング200に組み付けられる。ベースハウジング200の第2円柱凹部250には、ダイヤフラム弁体110と環状凸部330とが格納される。ベースハウジング200の第1円柱凹部240には、トップハウジング本体部340が格納される(図1参照)。
【0035】
ダイヤフラム弁体110の環状封止部117は、ベースハウジング200の弁体挟持面217と環状凸部330とによって挟持される。ベースハウジング200に対するトップハウジング300の位置は、ハウジング挟持当接面241によって規定される。これにより、環状封止部117の厚みと環状凸部330の高さの和と、第2円柱凹部250の深さの差が環状封止部117の圧縮変形量として規定されることになる。
【0036】
アクチュエータ400は、アクチュエータロッド410と、アクチュエータハウジング420とを備えている。アクチュエータロッド410は、アクチュエータハウジング420に対して軸線方向に往復移動するように駆動される。駆動方法は、たとえば電磁力であってもよいし、流体圧力によって駆動する方式でもよい。アクチュエータロッド410は、駆動当接面121を介して駆動部材120に駆動力を伝達するための駆動当接面411を有している。
【0037】
アクチュエータハウジング420には、ベースハウジング200の第1円柱凹部240に嵌合する形状を有する環状の凸部である環状凸部421を有している。環状凸部421には、トップハウジング300側に対向する平面である位置基準当接面422が形成されている。位置基準当接面422は、トップハウジング本体部340と当接してトップハウジング300に対するアクチュエータ400の軸線方向に位置を規定する。アクチュエータハウジング420には、さらに、開弁状態を規定するために開弁ストローク規定面123と当接するストローク基準当接面423が形成されている。
【0038】
アクチュエータ400は、第1円柱凹部240に嵌合し、位置基準当接面422がトップハウジング本体部340と当接し、バルブ機構組立100,300をアクチュエータ400とベースハウジング200の間に挟んだ状態において、図示しない締結部材(たとえばボルト等)で締結される。このようにして、ダイヤフラムバルブ10は、組み立てることができる。
【0039】
B.ダイヤフラムバルブの作動:
図3は、一実施形態に係るバルブ機構部100の開閉作動の様子を示す断面である。図3(a)は、バルブ機構部100による閉弁状態を示している。図3(b)は、バルブ機構部100による開弁状態を示している。閉弁状態では、入口側流路210の入口開口部211は、ダイヤフラム弁体110の弁体当接面113とベースハウジング200の環状当接面213とが当接することによって閉鎖され、出口側流路220から切り離されている。開弁状態では、入口側流路210は、弁体当接面113と環状当接面213との間に形成されている流路空間を介して出口側流路220に連通されている。
【0040】
閉弁状態では、アクチュエータ400は、アクチュエータロッド410をベースハウジング200側に移動させて駆動部材120を介してダイヤフラム弁体110を押圧している。ダイヤフラム弁体110の弁体当接面113は、入口開口部211においてアクチュエータ400の側に液圧を受けるとともに、ベースハウジング200の環状当接面213からの当接圧力を受けている。当接圧力は、入口開口部211を閉鎖して封止するためのアクチュエータロッド410から荷重の反作用として発生する圧力である。
【0041】
閉弁状態から開弁状態の遷移においては、アクチュエータ400は、アクチュエータロッド410の駆動荷重をゼロ(あるいは減少させる。)にする。駆動部材120は、付勢部130の付勢荷重と、入口開口部211における液圧と、環状当接面213からの当接圧力に起因する荷重とによってアクチュエータロッド410をアクチュエータ400側に移動を開始する。
【0042】
弁体当接面113が環状当接面213から離れると、駆動部材120は、環状当接面213からの当接圧力の代わりに、弁体当接面113と環状当接面213との間の隙間(第1の隙間とも呼ばれる。)の流路空間に流れ込んだ薬液の液圧に起因する荷重を受けることになる。駆動部材120は、その開弁ストローク規定面123がアクチュエータハウジング420のストローク基準当接面423に当接するまで移動し、その当接に応じて停止する。開弁状態では、その状態が維持されることになる。
【0043】
開弁状態から閉弁状態の遷移においては、アクチュエータ400は、アクチュエータロッド410の駆動荷重をオンにする。駆動部材120は、付勢部130の付勢荷重と、ダイヤフラム弁体110が受ける液圧とに対抗してダイヤフラム弁体110の弁体当接面113を環状当接面213側に移動させ、当接させることによって入口開口部211を閉鎖して封止する。閉弁状態では、その状態が維持されることになる。
【0044】
C.ダイヤフラムの変形状態と駆動荷重:
図4及び図5は、一実施形態に係る弾性連結部114の変形状態を示す断面図である。図4(a)は、閉弁状態における弾性連結部114の変形状態を示している。弾性連結部114は、閉弁状態においては、環状支持面315との間にクリアランスC1〜C3を有している。クリアランスC1〜C3は、弁体板111のアクチュエータ400側への移動を可能とするために弾性連結部114を変形できるように設けられている。クリアランスC1〜C3は、弁体板111に近い側のクリアランスC1が大きく、弁体板111から離れた側のクリアランスC3が小さくなっている。クリアランスC1とクリアランスC3の間のクリアランスC2は、その中間的な大きさを有している。クリアランスC1〜C3は、第2の隙間とも呼ばれる。
【0045】
環状支持面315は、弁体板111の近傍と環状封止部117の近傍とで比較的に小さな曲率を有し、その間の中間領域で比較的に大きな曲率の曲面形状を有する凸曲面を有している。環状支持面315は、ダイヤフラムバルブ10の用途や液圧といった様々な仕様に応じて、サイクロイドや曲率が相互に相違する複数の円を組み合わせた形状といった様々な曲面の断面形状を有する凸曲面を採用することができる。
【0046】
図4(b)は、中間状態における弾性連結部114の変形状態を示している。中間状態とは、閉弁状態と開弁状態の間の中間的な状態である。弾性連結部114は、中間状態においては、環状支持面315との間にクリアランスC1aを有している。クリアランスC1aは、閉弁状態におけるクリアランスC1の位置のクリアランスである。クリアランスC2,C3の位置では、クリアランスが消滅し、弾性連結部114は、環状支持面315との当接によって支持されている状態である。
【0047】
弾性連結部114は、中間状態においては、薬液の圧力pを受ける一方、クリアランスC2,C3の領域において、環状支持面315から支持力を受けている。支持力は、薬液の圧力pに対する反作用としての抗力(圧力r)として発生している。反作用としての抗力(圧力r)は、半径R1の円から半径R2の円を除いた環状の領域において発生している。一方、圧力rに起因するアクチュエータロッド410の荷重は、薬液の圧力pを受圧する半径R1の円において発生している。
【0048】
半径R1は、ダイヤフラム弁体110の中心位置から環状封止部117と環状凹部260とが当接する境界位置までの距離である。半径R2及び半径R3は、ダイヤフラム弁体110の中心位置から弾性連結部114と環状支持面315が当接する境界位置までの距離である。
【0049】
弾性連結部114は、開弁状態においては、薬液の圧力pを受ける面積が変化しないが、環状支持面315から支持力を受ける範囲が拡大している。すなわち、反作用としての抗力(圧力r)は、半径R1の円から半径R3(半径R3<半径R2)の円を除いた環状の領域において発生する。弾性連結部114は、開弁状態においては、環状支持面315との間にクリアランスC1aよりもさらに小さいクリアランスC1bを有している。クリアランスC1bは、閉弁状態におけるクリアランスC1の位置のクリアランスである。
【0050】
図6は、一実施形態に係るアクチュエータロッド410の変位と薬液荷重の関係を概念的に示すグラフである。横軸は、ロッド変位量であり、縦軸は、薬液荷重Lである。ロッド変位量は、アクチュエータロッド410の変位量、すなわち、ダイヤフラム弁体110の弁体板111の移動量である。薬液荷重Lは、アクチュエータロッド410が薬液から受ける荷重である。
【0051】
薬液荷重Lは、概念的には、図6中の式(1)によって表される荷重である。式(1)において、荷重Fは、付勢部130による変動荷重(変動量は、ストロークに応じて微少)であり、圧力pは、薬液の圧力であり、Rxは、ダイヤフラム弁体110の中心位置から弾性連結部114と環状支持面315が当接する境界位置までの距離である(たとえばR2やR3)。
【0052】
薬液荷重は、ロッド変位量が開弁位置に近づく位置に相当する量に近づくに従って小さくなることが分かる。ロッド変位量が開弁位置に近づくに従って環状支持面315からの抗力としての圧力rの重圧面積が大きくなるからである。これにより、開弁操作時における弁体板111の開弁位置方向への加速度が減殺されるので、開弁時(開弁ストローク規定面123のストローク基準当接面423への当接時)の衝撃を小さくすることができる。
【0053】
この衝撃は、薬液の流れの運動量が圧力に変換されるウォーターハンマー現象(圧力の急上昇)の原因となる。よって、本構成は、開弁時のウォーターハンマー現象を減殺させることができることになる。さらに、本構成では、弾性連結部114は、開弁時において環状支持面315によって多くの部分が支持されているので、この点においてもウォーターハンマー現象に起因する弾性連結部114のダメージを緩和することができる。
【0054】
D.ダイヤフラムの応力状態:
図7及び図8は、一実施形態に係る弾性連結部114の応力状態を示す断面図である。図7(a)は、閉弁状態における弾性連結部114の応力状態を示している。弾性連結部114は、閉弁状態においては、環状凹部260に連通する出口側流路220の背圧を受けている状態である。
【0055】
図7(b)は、中間状態における弾性連結部114の応力状態を示している。弾性連結部114は、中間状態においては、弁体当接面113と環状当接面213の隙間の流路を介して入口側流路210からの高圧の薬液の圧力pを受けている状態である。弾性連結部114は、ベースハウジング200側に突出する凸となる曲面形状を有する凸曲面を有し、アーチ状の形状を有している。さらに、弾性連結部114は、凸曲面の頂点又は頂点付近から駆動部材120側及び封止部117に向かって厚さ寸法がゆるやかに増加する形状を有している。
【0056】
これにより、薬液の圧力pは、弾性連結部114において引っ張り応力ではなく、圧縮応力Lcを発生させることになる。圧縮応力Lcは、弾性連結部114と環状支持面315との間にクリアランスが存在するアーチ状の領域で受圧する圧力pによって発生する。一方、圧縮応力Lcは、クリアランスが存在せず環状支持面315に当接する領域では発生しない。
【0057】
図8(a)は、開弁状態における弾性連結部114の応力状態を示している。弾性連結部114は、開弁状態においては、中間状態よりも広い領域で環状支持面315の支持を受けているので、圧縮応力Lcaも小さくなっている。
【0058】
このように、本実施形態に係るダイヤフラムバルブ10では、ダイヤフラム弁体110の弁体板111は、弾性連結部114の弾性変形によって移動することができる。弾性連結部114は、少なくとも中間状態から開弁状態における弾性変形の際に環状支持面315で支持されるので、開弁操作にいて薬液の高圧に起因する弾性連結部114の変形量を小さくすることができる。この結果、ダイヤフラムバルブ10は、数MPa程度の高圧の流体圧力の薬液の流通制御を実現することができる。
【0059】
D.変形例:
本発明は、上記実施形態だけでなく、以下のような変形例でも実施することができる。
【0060】
変形例1:上記実施形態では、弾性連結部114は、環状支持面315との間において、弁体板111に近い側に大きなクリアランスC1を有し、弁体板111から離れた側に小さなクリアランスを有するように構成されているが、このようなクリアランスに限定されず、たとえば略一定のクリアランスを有するようにしてもよい。
【0061】
変形例2:上記実施形態では、弾性連結部114は、弁体板111から離れた側から環状支持面315との当接部位が広がるように変形しているが、このような変形形態に限定されない。具体的には、たとえば図8(b)に示される変形例のように、複数(この変形例では2個)のアーチ状の形状のアーチ部A1,A2が形成され、弁体板111から離れた側にクリアランスが発生しても良い。
【0062】
この場合、アーチ部A1は、環状支持面315のアーチ支持領域315aと弁体板111とによって支持され、その間の領域で受ける液圧に応じて弾性連結部114内に圧縮応力が発生する。一方、アーチ部A2は、環状支持面315のアーチ支持領域315aと環状封止部117とによって支持され、その間の領域で受ける液圧に応じて弾性連結部114内に圧縮応力が発生する。アーチ部A1及びアーチ部A2は、それぞれ液圧を受ける領域が小さなアーチを形成し、弁体板111や環状封止部117によって支持されるので、このような変形が生じても薬液の圧力pに起因して過大な応力を発生させることはない。
【0063】
なお、閉弁状態と開弁状態の間の遷移において、アーチ支持領域315aの移動(すべり)が発生するように弾性連結部114や環状支持面315を構成してもよい。また、環状支持面315の領域は、たとえばポリテトラフルオロエチレンの環状部品をトップハウジング300にはめ込むような構成とし、弾性連結部114との滑りをよくするように構成してもよい。また、弾性連結部114と環状支持面315との間に、変形可能な弾性素材を挟む構成としてもよい。
【0064】
変形例3:上記実施形態のダイヤフラム弁体110では、弾性連結部114には、環状凹部260に対向する側に凸となる曲面形状を有する凸曲面116が形成されているが、必ずしも凸曲面である必要はない。具体的には、図9に変形例として示されるように、たとえば弾性連結部は、閉弁時において弁体当接面113と連なった平面形状116aを有するように構成されていてもよい。
【0065】
変形例4:上記実施形態では、ダイヤフラムバルブ10は、薬液のオンオフ制御に利用されているが、オンオフ制御に限られず、流量制御等の他の制御にも利用可能である。
【0066】
変形例5:上記実施形態では、ダイヤフラムバルブ10は、薬液の供給に利用されるバルブであるが、これに限られず、本発明は、広く一般にダイヤフラムを利用するバルブに適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 ダイヤフラムバルブ
100 バルブ機構部
110 ダイヤフラム弁体
114 弾性連結部
115 凹曲面
116 凸曲面
117 環状封止部
120 駆動部材
130 付勢部
200 ベースハウジング
211 入口開口部
213 環状当接面
300 トップハウジング
400 アクチュエータ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9