(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
フォークリフトにおいては、各部の操作のために複数の手動式の油圧切換弁が使用されている。この油圧切換弁を手動操作することで、フォークの上下動や傾動等を操作するようになっている。
この油圧切換弁では、操作によって作動油が流れだしてから負荷が変動し、その変動に応じて油圧ポンプが応答するため、どうしても操作から油圧ポンプの応答までにタイムラグが生じていた。このタイムラグは、フォークリフトの操作性がリニアでないという問題の原因となっていた。
【0003】
かかる問題を解消するために、油圧切換弁のスプールのストロークを検出するために、スプールに後付けでスイッチを設けることが行われていた。このスイッチは、スプールが操作はしているがまだ油圧ポンプが応答していない不感帯部分に設けられ、スプールが不感帯にある時点で先んじて油圧ポンプを作動するようにしている。
具体的には、スプールの不感帯に相当する部分を他の部分より細い細幅部として加工し、スイッチが不感帯を検出した時点で油圧ポンプを作動させるのである。
なお、前記スイッチにはマイクロスイッチが使用されている。
また、スプールのストローク量を検出するスプールセンサとして差動トランスを内蔵しているものもある。
さらに、スプールのストローク量を検出するために、スプールにワイヤを連結し、このワイヤを巻き取る巻回部の回動状態を検出するようにしたものもある(特開平11−336714号公報参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−336714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スイッチを後付け加工で取り付けるには、その取り付け、細幅部の加工等が必要になるととにも、その取付位置や細幅部の調整が個々の油圧切換弁に必要になり、非常に手間であった。
また、差動トランスをスプールセンサとして使用するタイプのものは、専用の発振回路及び検知回路が必要となり、コスト的な問題があるとともに、後付けに対応するものではない。
さらに、ワイヤを巻き取る巻回部の回動状態を検出するものも構造が複雑で、後付けに対応するものではない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたもので、既設の
手動式の油空圧切換弁に簡単に後付けでき、しかもその取付作業が容易で、かつ油空圧切換弁に加工を加える必要がないストロークセンサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るストロークセンサは、
既設の手動式の油空圧切換弁
に後付けしてスプールのストローク量を検出するスクロークセンサにおいて、既設の油空圧切換弁のスプールの外周を覆うように設置される固定側ケースと、この固定側ケース内にセットされるセンサと、前記固定側ケースに対してストローク可能に被せられる変位側ケースと、この変位側ケース内に
前記センサより内側にセットされ、前記センサに対応する磁石と、スプールと変位側ケースとを連結する連結部材とを具備しており、スプールのストローク量に応じて変位する磁石を前記センサで検知することでスプールのストローク量を
検出し、前記固定側ケースは、スプールが貫通する筒部と、この筒部に側面方向に沿うように形成されてセンサが格納されるセンサ格納部とが一体に形成されており、前記変位側ケースは、筒部を覆う筒用カバー部と、センサ格納部を覆うセンサ用カバー部とが一体に形成されており、固定側ケースを変位側ケースに被せると、センサは、センサ格納部とセンサ用カバーとによって覆われるようになっている。
また、
前記変位側ケースはスプールの先端の二股部がそれぞれ入り込む2つの突出部を有しており、この突出部には、スプールの先端に開設されたスプール側貫通孔に対応したカバー側貫通孔が開設されており、カバー側貫通孔とスプール側貫通孔とに連結部材を貫通させることでスプールと変位側ケースとを連結するようになっている。
【0008】
また、固定側ケースと変位側ケースとの間には、圧縮スプリングが介在されている。
【0009】
さらに、前記センサには、ホールIC素子が使用される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るストロークセンサは、既設の油空圧切換弁のスプールの外周を覆うように固定側ケースを配置し、その固定側ケースに対して変位側ケースをストローク可能に被せることで、既設の油空圧切換弁に簡単に後付けで取り付けることができる。しかも、既設の油空圧切換弁のスプールに対する加工や調整作業も容易である。
また、本発明に係るストロークセンサには、ホールIC素子を用いるので、専用の回路等が不要になる。
【0011】
しかも、固定側ケースと変位側ケースとの間に介在された圧縮スプリングがあるので、なんらの外力が加えられていない状態では、変位側ケースを上方向に弾発付勢している。このため、スプールと変位側ケースとを連結する連結部材の遊びを解消している。
【0012】
さらに、センサにはホールIC素子が使用されるので、専用の回路等が不要となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係るストロークセンサ1000は、
既設の手動式の油空圧切換弁900
に後付けしてスプール920のストローク量を検出するスクロークセンサにおいて、既設の油空圧切換弁のスプール920の外周を覆うように設置される固定側ケース100と、この固定側ケース100内にセットされるセンサ400と、前記固定側ケース100に対してストローク可能に被せられる変位側ケース200と、この変位側ケース200内に
前記センサ400より内側にセットされ、前記センサ400に対応する磁石500と、スプール920と変位側ケース200とを連結する連結部材としてのピン960とを備えており、スプール920のストローク量に応じて変位する磁石500を前記センサ400で検知することでスプール920のストローク量を
検出し、前記固定側ケース100は、スプール920が貫通する筒部120と、この筒部120に側面方向に沿うように形成されてセンサ400が格納されるセンサ格納部130とが一体に形成されており、前記変位側ケース200は、筒部120を覆う筒用カバー部211と、センサ格納部130を覆うセンサ用カバー部212とが一体に形成されており、固定側ケース100を変位側ケース200に被せると、センサ400は、センサ格納部130とセンサ用カバー212とによって覆われるようになっている。
【0015】
まず、ストロークセンサ1000の詳細な説明の前に、このストロークセンサ1000が適用される油圧切換弁900について
図6を参照しつつ説明する。
この油圧切換弁900は、ダイキャスト製のボディ910に1又は複数の切換弁(図示省略)を内蔵しており、それぞれの切換弁を操作するためのスプール920がボディ910からストローク可能に突出している。
このスプール920を手動でストロークさせることにより、ボディ910に内蔵されている
切換弁が作動され、作動油の流れる方向や流れる量を制御するようになっている。なお、このスプール920は、
自然状態では中間位置にあり、自然状態からは上下両方向(伸縮両方向)にストローク可能になっている。
また、この略円柱形状のスプール920の先端は、操作用のレバー(図示省略)を連結するために、二股部921として形成されているとともに、二股部921のそれぞれには、操作用のレバー(図示省略)を連結するためのスプール側貫通孔921Aが横方向に開設されている。
なお、
図6に示す油圧切換弁900は、代表的なものであって、本発明に係るストロークセンサ1000が適用される油圧切換弁がこれに限定されるものでないことはいうまでもない。
【0016】
本発明の実施の形態に係る
ストロークセンサ1000を構成する固定側ケース100は、油圧切換弁900のスプール920を覆うようにしてボディ910に設置されるものである。この固定側ケース100は、油圧切換弁900のボディ910に接触するベース部110と、このベース部110から立設された略円筒形状の筒部120と、前記ベース部110に立設されかつ前記筒部120の側面方向に沿うようにして設けられたセンサ格納部130とが一体的に形成されたものである。
この固定側ケース100は、例えば、ガラス繊維強化ナイロン(ポリアミド樹脂)等の合成樹脂から構成されている。
【0017】
前記ベース部110は、筒部120及びセンサ格納部130よりも横方向に突出してフランジのように構成されたものであり、ボディ910に形成された2つの雌ねじ(図示省略)に対応した2つのねじ用貫通孔111が形成されている。
【0018】
また、前記筒部120は、スプール920が貫通する部分であって、スプール920より背低に形成されている。また、この筒部120は、スプール920より径大で、かつ後述する圧縮スプリング300がスプール920を取り囲むようにして配置されることができる程度の大きさに設定されている。
ベース部110には、この筒部120の内側においてスプール920が貫通するスプール用貫通孔112が開設されている。
また、この筒部120の上縁部には、後述する変位側ケース200の抜け止め防止に寄与する固定側爪部121が外側に向かって突出形成されている。
【0019】
前記センサ格納部130は、前記筒部120の側面方向に沿うようにしてベース部110に立設されている。このセンサ格納部130は、センサ400が実装されたセンサ基板410とこのセンサ基板410から延出されたリード線420とを格納する部分である。かかるセンサ格納部130は、センサ基板410に実装されたセンサ400が後述するように磁石500に対して向かい合うように設置される。
また、このセンサ格納部130の両サイドの外面には、後述するセンサ側爪部212Aに対応した凹溝131が形成されている。
さらに、前記ベース部110には、このセンサ格納部130からのリード線420を外部に導出できるようにリード線用切欠き113が設けられている。
【0020】
前記センサ400は、磁場の強さに応じて変動する電圧を出力することで、磁石500の直線的な移動を連続的に検知することができるホールIC素子が使用される。このホールIC素子は、電圧出力のための専用回路が一体化されているので、特別な回路を構成する必要がない。
【0021】
一方、上述した固定側ケース100にストローク可能に被せられる変位側ケース200は、固定側ケース100の筒部120及びセンサ格納部130をカバーするカバー部210と、このカバー部210の上面から突出する二股状の連結部220とが一体に形成されたものである。
この変位側ケース200は、例えば、ガラス繊維強化ナイロン(ポリアミド樹脂)等の合成樹脂から構成されている。
【0022】
前記カバー部210は、筒部120に対応した筒用カバー部211と、センサ格納部130に対応したセンサ用カバー部212と、磁石500を格納する磁石格納部213とを有している。
前記筒用カバー部211の内側には、内側にスプール920が入り込み、前記筒部120の内側に位置することになる内筒部211Aが形成されている。
一方、前記センサ用カバー部212は、センサ格納部130を覆うようになっている。このセンサ用カバー部212と筒用カバー部211との間に磁石格納部213が設けられている。この磁石格納部213は、コイン形の磁石500を固定的に格納する部分であって、前記内筒部211Aよりもセンサ用カバー部212側の壁面213Aとセンサ用カバー部212の一部の壁面213Bとで構成されている。両壁面213A、213Bの間に磁石500を固定的に格納するのである。
【0023】
なお、前記筒用カバー部211の外側壁の下端には、
図2に示すように、前記固定側爪部121に対応した変位側爪部211Bが内側に向かって突出形成されている。変位側ケース200が最も上側にまで変位すると、この
変位側爪部211Bと前記固定側爪部121とが係合し、その結果、変位側ケース200が固定側ケース100から
不用意に抜けないように作用する。
また、センサ用カバー部212の下端には、内側に向かって突出したセンサ側爪部212Aが形成されている。このセンサ側爪部212Aは、上述した
凹溝131と対応して、変位側ケース200が固定側ケース100から
不用意に抜けないようにするためのものである。
【0024】
前記カバー部210の上面から突出する連結部220は、平面視略半円状の2つの突出部221が円弧側を外側にした状態で一定の間隔をもって向かいあっているように構成される。この2つの突出部221には、スプール920の先端の二股部921が
それぞれ入り込むようになっている。しかも、この突出部221には、スプール920の二股部921が入り込んだ状態で、前記スプール側貫通孔921Aと対応する位置にカバー側貫通孔222が開設されている。従って、スプール920にこのストロークセンサ1000を取り付ける際に、スプール920の先端の二股部921に開設された
スプール側貫通孔921Aと、ストロークセンサ1000側のカバー側貫通孔222とは一直線上に位置させることができる。
【0025】
前記圧縮スプリング300は、固定側ケース100と変位側ケース200との間であって、かつ内側にスプール920が嵌まり込むような位置に設置されている。この圧縮スプリング300は、変位側ケース200に対して常に上方向の力を与えている。
すなわち、この圧縮スプリング300は、なんらの外力が加えられていない状態では、変位側ケース200を上方向に弾発付勢していることになる。この圧縮スプリング300が変位側ケース200を上方向に弾発付勢することで、スプール920と変位側ケース200とを連結する連結部材としてのピン960の遊びを解消している。
【0026】
また、前記磁石500は、永久磁石であって、略コイン状に形成されている。かかる磁石500は、前記磁石格納部213に格納された状態で、固定側ケース100に変化側ケース200を嵌め込み、かつ外力が加えられていない状態、すなわち圧縮スプリング300になんらの外力が加えられていない自然長の状態にあると、固定側ケース100のセンサ400と向かい合うようになっている。なお、この磁石500とセンサ400とが向かいあった状態が初期状態となる。
また、この磁石500は、図2に示すように、変位側変位側ケース200内において、前記センサ400より内側にセットされている。
【0027】
このように構成されたストロークセンサ1000は、以下の手順で組み立てられる。
まず、固定側ケース100のセンサ格納部130にセンサ400をセットする。それとともに、変位側ケース200の磁石格納部213に磁石500をセットする。
センサ400がセットされた固定側ケース100の筒部120内に圧縮スプリング300を配置する。この際、圧縮スプリング300は、スプール用貫通孔112の真上に位置させておく。
次に、磁石500がセットされた変位側ケース200を固定側ケース100に圧縮スプリング300を圧縮させつつ被せる。
なお、このストロークセンサ1000は、固定側ケース100と変位側ケース200とが組み合わせられ、かつ圧縮スプリング300が内蔵された状態で出荷される。
【0028】
このように構成されたストロークセンサ1000は以下のようにして油圧切換弁900に取り付けられる。
スプール用貫通孔112からスプール920をストロークセンサ1000の内部に挿入する。そして、固定側ケース100の2つのねじ用貫通孔111とボディ910の2つの雌ねじとを一致させ、雄ねじ970でストロークセンサ1000を油圧切換弁900のボディ910に固定する。
【0029】
次に、変位側ケース200を圧縮スプリング300の弾性力に抗しつつ下方に押し込んで、スプール920の二股部921を変位側ケース200の連結部220内に嵌め込む。 すなわち、スプール920のスプール側貫通孔921Aと、変位側ケース200のカバー側貫通孔222とが、一直線上に位置するまで変位側ケース200を押し込む。
【0030】
次に、前記スプール側貫通孔921Aと、カバー側貫通孔222とが一直線上に位置した状態で、連結部220の
2つの突出部221の間の隙間を介してスプール920の二股部921の間にリンク側貫通孔951が
両端に開設された平板状のリンク材950を挿入する(
図3参照)。そして、カバー側貫通孔222、スプール側貫通孔921A、一方のリンク側貫通孔(この一方のリンク側貫通孔は
図3には表れない)を貫通するようにピン960を挿入する。これで、スプール920と変位側ケース200とが連結され、その結果両者が一緒にストロークするようになる。
これで、ストロークセンサ1000は、既設の油圧切換弁900に後付けで組付けられた。
前記リンク材950には、
油圧切換弁900を操作する操作用のレバー(図示省略)が外側に出ているリンク側貫通孔951を介して連結される。従って、
図示しない操作用のレバーの操作に応じて、スプール920が上下方向にストロークし、スプール920と連動して変位側ケース200が上下方向にストロークするようになる。
なお、固定側ケース100に変位側ケース200を被せることで、固定側ケース100のセンサ格納部130に格納されているセンサ400は、固定側ケース100のセンサ格納部130のみならず、変位側ケース200のセンサ用カバー部212によっても覆われるようになる。
【0031】
スプール920の上下方向の
ストローク量は、そのまま変位側ケース200の上下方向の
ストローク量と等しい。変位側ケース200の上下方向のストロークにつれて、変位側ケース200にセットされた磁石500と、固定側ケース100にセットされたセンサ400との位置関係が初期状態から変化する。この位置関係の変化は、センサ400が出力する電圧にリニアに対応している。このセンサ400が出力する電圧から、スプール920のストローク量が検知され、この検知結果に基づいて油圧ポンプを作動させる。
【0032】
スプール920が僅かにストロークされた際、すなわち不感帯においても先んじて油圧ポンプを作動させるようにしておけば、従来では問題になっていたタイムラグを発生させることがないようにすることができる。
【0033】
なお、上述した実施の形態では、本発明の実施の形態に係るストロークセンサ1000が後付けされるものは油圧切換弁900としたが、本発明に係るストロークセンサはこれに限定されるものではなく、空圧切換弁であってもよいことはいうまでもない。
また、上述した実施の形態では、固定側ケース100と変位側ケース200とが予め組み付けられた状態で出荷され、その状態で油圧切換弁900に後付けされるとしたが、固定側ケース100と変位側ケース200とに分解された状態で出荷され、固定側ケース100を油圧切換弁900のボディ910に取り付けた後、その固定側ケース100に変位側ケース200を組み付けるようにすることも可能である。