【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、総務省、「再構成可能なインフラのためのスケーラブル・フレキシブル光通信技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リファレンス光のパワーの測定は、前記マルチコアファイバの端部から空間を介してカメラ、スクリーン又は複数の受光素子を配置して前記リファレンス光を撮影し、前記リファレンス光の撮影データ及び前記相関データから前記リファレンス光のパワーを推定することにより行うことを特徴とする請求項1に記載のマルチコアファイバのクロストーク測定方法。
前記マルチコアファイバに光を入射したコアの出射側の光路上に、遮光性を有する材料を配置することにより、前記リファレンス光をマスキングすることを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチコアファイバのクロストーク測定方法。
前記マルチコアファイバに光を入射したコアの出射側の光路上に、光を反射する材料を配置することにより、前記リファレンス光をマスキングすることを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチコアファイバのクロストーク測定方法。
前記マルチコアファイバに光を入射したコアの出射側の光路上に、光を拡散する材料を配置することにより、前記リファレンス光をマスキングすることを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチコアファイバのクロストーク測定方法。
前記クロストーク光の撮影データ及び前記相関データから前記クロストーク光のパワーを推定する工程において、前記クロストーク光の撮影データに対し、前記クロストーク光への前記リファレンス光の重なりを除去する画像処理を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のマルチコアファイバのクロストーク測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術1及び2では、被測定コアへの調心あるいは接続が必要となる。この場合、コア数が多いMCF(たとえば30コアMCF[非特許文献3])のXTを測定する際には、被測定コアへの調心あるいは接続が大きな手間となる。また、MCFの両端にファンイン/ファンアウト(Fi/Fo:Fan−in/Fan−out)のような入出力デバイスをあらかじめ接続することで調心せずにXTを測定できるが、測定するMCFのコア間距離およびコア配置に応じたFi/Foをその都度用意する必要がある。
【0008】
従来技術3では、MCFの両端の同じコアにダミーファイバを接続することでXTの測定が可能となるが、通常、非結合型のMCFではXTレベルが低い(<−25dB/伝送距離等)ため、XTが非測定ファイバの伝送損失よりもきわめて小さい場合は測定が困難になることが予想される。
【0009】
従来技術4でも、従来技術3と同様にファイバの両端の同じコアにダミーファイバを接続することで測定が可能となるが、単独コア内でのモード間干渉が起こらないことを前提としているため、各コアが数モード伝送する数モードMCF(Few−mode Multicore fiber:FM−MCF)のXT測定には適用できないと考えられる。
【0010】
さらに、従来技術3及び4では、隣接する複数のコア間におけるXTが測定される。したがって、コア配置が円環となる場合(特定の隣接する2コア間の組み合わせの数がコア数に等しい場合)のみ、連立一次方程式を解くことで、特定の隣接する2コア間のXTを求めることができる。しかし、それ以外のコア配置の場合(特定の隣接する2コア間の組み合わせの数がコア数より多い場合)は、特定の隣接する2コア間のXTを求めることができない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、マルチコアファイバの出射端の調心及び接続を行うことなくクロストークを測定することが可能なマルチコアファイバのクロストーク測定方法及び測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は、ダミーファイバの端部における出射パターンを撮影し、前記ダミーファイバに入射したパワーと前記出射パターンとの相関データを取得する準備工程と、前記ダミーファイバを介してマルチコアファイバに光を入射したコアから出射されるリファレンス光のパワーを測定する工程と、前記リファレンス光をマスキングした状態で、前記ダミーファイバを介して前記マルチコアファイバに光を入射したコアとは異なるコアから出射されるクロストーク光を撮影し、前記クロストーク光の撮影データ及び前記相関データから前記クロストーク光のパワーを推定する工程と、前記リファレンス光のパワー及び前記クロストーク光のパワーからクロストークを求める工程と、を有し、前記出射パターン及び前記クロストーク光の撮影は、前記マルチコアファイバの端部から、ダミーファイバを介さずに、空間を介してカメラ、スクリーン又は複数の受光素子を配置して行うことを特徴とするマルチコアファイバのクロストーク測定方法を提供する。
【0013】
前記リファレンス光のパワーの測定は、前記マルチコアファイバの端部から空間を介してカメラ、スクリーン又は複数の受光素子を配置して前記リファレンス光を撮影し、前記リファレンス光の撮影データ及び前記相関データから前記リファレンス光のパワーを推定することにより行うことができる。
前記マルチコアファイバに光を入射したコアの出射側の光路上に、遮光性を有する材料を配置することにより、前記リファレンス光をマスキングすることができる。
前記マルチコアファイバに光を入射したコアの出射側の光路上に、光を反射する材料を配置することにより、前記リファレンス光をマスキングすることができる。
前記マルチコアファイバに光を入射したコアの出射側の光路上に、光を拡散する材料を配置することにより、前記リファレンス光をマスキングすることができる。
【0014】
前記クロストーク光の撮影データ及び前記相関データから前記クロストーク光のパワーを推定する工程において、前記クロストーク光の撮影データに対し、前記クロストーク光への前記リファレンス光の重なりを除去する画像処理を行うことができる。
【0015】
また、本発明は、前記マルチコアファイバのクロストーク測定方法を行うマルチコアファイバのクロストーク測定装置であって、ダミーファイバに入射したパワーと前記ダミーファイバの端部における出射パターンとの相関データを取得する手段と、前記ダミーファイバを介して前記マルチコアファイバに光を入射したコアから出射されるリファレンス光のパワーを測定あるいは前記相関データから推定する手段と、前記リファレンス光をマスキングする手段と、前記ダミーファイバを介して前記マルチコアファイバに光を入射したコアとは異なるコアから出射されるクロストーク光を撮影する手段と、前記クロストーク光のパワーを前記相関データから推定する手段と、前記リファレンス光のパワーと前記クロストーク光のパワーとの比からクロストークを求める手段と、を有し、前記クロストーク光を撮影する手段は、前記マルチコアファイバの端部から空間を介して配置された、カメラ、スクリーン又は複数の受光素子を含むことを特徴とするマルチコアファイバのクロストーク測定装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、マルチコアファイバの出射端の調心及び接続を行うことなくクロストークを測定することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
【0019】
図1に、本発明の一実施形態による測定装置の一例を示す。
図1に示すように、本実施形態の測定装置10において、マルチコアファイバ11の入射端12は、ダミーファイバ13を介して光源14に接続されている。また、マルチコアファイバ11の出射端15に対しては、空間を介して、カメラ、スクリーン又は複数の受光素子を含む撮影手段17が配置されている。これにより、受光側ではマルチコアファイバ11と撮影手段17との間にダミーファイバを介する必要がなく、マルチコアファイバ11の出射端15を他の光ファイバに調心又は接続する作業が不要になる。また、一度に複数のコアのクロストークを測定することも可能になる。
【0020】
マルチコアファイバ11の出射端15と撮影手段17との間は、出射光16が空間光として伝搬される。撮影手段は、
図2(a)に示すように、出射端15に対して結像されたカメラ21であってもよい。
図2(b)に示すように、出射端15から空間を介してスクリーン22を配置し、スクリーン22に投影された出射光16のパターンをカメラ21で撮影してもよい。
【0021】
カメラ21は、レンズ等の空間光学系を備えることが好ましい。空間光学系は、単レンズから構成されてもよく、複合レンズやレンズ列(複数のレンズ)を備えてもよい。空間光学系は、鏡筒を有してもよく、鏡筒を有しなくてもよい。鏡筒内の反射(迷光)がクロストーク光の撮影に影響する場合は、反射を抑制するか、鏡筒の一部又は全部を省略することが好ましい。レンズは、反射防止(AR)を施してもよい。空間光学系は、空間フィルタや偏光子等の光を減衰する部品を備えてもよい。光を減衰する部品は、鏡筒内に配置してもよく、鏡筒外に配置してもよい。空間フィルタとマルチコアファイバの出射端との間に対物レンズを配置してもよい。空間フィルタと出射端との間で、対物レンズの周囲の鏡筒を省略すると、鏡筒内反射の影響を抑制することができる。また、カメラ21の代わりに、複数の受光素子を面内に並列してもよい。複数の受光素子が並列される面は、マルチコアファイバ11の出射端15から延長した線上に垂直な面が好ましい。
【0022】
図4に、比較例として、従来技術1に準じた測定装置を示す。この測定装置では、マルチコアファイバ11の出射端15と、パワーメータ44に接続されたダミーファイバ41の入射端42との間は、調心又は接続43を必要とする。このため、マルチコアファイバ11のコア数が多い場合には、各コアのクロストークの測定に必要な作業が煩雑である。
【0023】
本実施形態の測定装置によれば、従来技術1と同様に、マルチコアファイバ11における伝送損失及び単独コアにおけるモード間干渉の影響を受けない(モード間干渉の影響をクロストーク評価に用いない)ため、低いクロストーク(例えば−25dB以下)の測定及びFM−MCFのコア間のクロストーク測定も可能である。ただし、従来技術1とは異なり、本実施形態によれば、クロストーク光のモードフィールドの形も確認でき、同時に複数のクロストークも測定可能である。また、本実施形態では、従来技術1と同様に特定のコア間のクロストークも測定可能である。
【0024】
マルチコアファイバ11の入射端12をダミーファイバ13に接続する箇所は、マルチコアファイバ11の1つのコアのみをダミーファイバ13の1つのコアに接続すればよいため、融着等によりファイバ同士を接続するとしても、接続作業が容易である。マルチコアファイバ11とダミーファイバ13との接続手法は特に限定されず、融着接続、コネクタ接続、スプライス接続、突き合わせ接続(バットジョイント)等が例示される。
【0025】
次に、本実施形態の測定方法について説明する。
【0026】
(第1工程)
第1工程は、ダミーファイバの端部における出射パターンを撮影し、ダミーファイバに入射したパワーと出射パターンとの相関データを取得する準備工程である。
【0027】
図3に、準備工程を行う装置の一例を示す。光源31には、アッテネータ33を有する光ファイバ32及びダミーファイバ36が接続されている。光源31としては、任意の波長帯の波長可変光源が好ましい。光源31の波長は、クロストークを測定したい波長に合わせることが望ましい。また、波長帯としては、Cバンド(1530〜1565nm)、Lバンド(1565〜1625nm)、これらの両方及びこれらの一部が挙げられる。
【0028】
光ファイバ32及びダミーファイバ36の間は、コネクタ34,35により接続されている。ダミーファイバ36の出射端36aは、空間中に配置されたレンズ37を介して、カメラ39の鏡筒38に対向している。レンズ37の外周部は支持具(図示せず)により支持されてもよいが、ダミーファイバ36の出射端36a及び鏡筒38とレンズ37との間は、光が空間中を伝搬するように所定の距離をあけている。レンズ37は対物レンズであり、鏡筒38は結像レンズを含む。
【0029】
カメラ39は、ダミーファイバ36の出射端36aにおける出射パワーを推定するための画像(データ)を撮影する。具体的には、ダミーファイバ36から出射した近視野像を、レンズなどの結像素子を用いてカメラ39の受光素子面に結像させることで画像が撮影される。鏡筒38は、無限補正光学系又は有限補正光学系を備えていてもよい。また、鏡筒38を使用せずに、専用の支持具によりレンズなどの結像素子を固定してもよい。カメラ39は近赤外カメラでもよい。適切な画像が撮影できるように、カメラ39の露光時間を調整してもよい。
【0030】
さらに、
図3の装置からカメラ39を外して、ダミーファイバ36からの出射パワーを、パワーメータ等のパワー測定装置を用いて測定する。異なる2以上の出射パワーを得るためには、アッテネータ33を調整して、ダミーファイバ36に入射するパワーを変化させることができる。なお、アッテネータ33を用いる代わりに、ダミーファイバ36を直接光源31に接続し、ダミーファイバ36の曲げ等により光を損失させることでも出射パワーを変化させることもできる。また、損失の異なるダミーファイバ36を複数用いることもできる。
【0031】
次に、カメラ39により撮影した画像の積分値(各画素の受光強度の和)を求め、ダミーファイバ36の出射パワーと対応させて、出射パワーと受光強度との相関データを取得する。
図5に、波長1550nmにおける相関データの測定例を示す。
図5の横軸は出射パワーとカメラの露光時間の積であり、縦軸は各画素の受光強度の和である。これより、横軸と縦軸の関係はほぼ線形であると分かる。したがって、この相関データを線形近似して得られる関係式を用いることで、各画素の受光強度の和Y及び露光時間Tから出射パワーPを推定することができる。
具体的には、関係式をY=f(P・T)とすると、出射パワーPは、P=f
−1(Y)/Tとして求められる。ここで、f
−1はfの逆関数である。
【0032】
なお、第1工程により取得される相関データは、ダミーファイバ36の出射端36a以降の測定系(レンズ37、鏡筒38、カメラ39等)を組み替えない限り有効であると考えられるため、第1工程を毎回行わなくてもよい。また、ダミーファイバ36は、
図1のダミーファイバ13と異なるファイバでもよい。
【0033】
図3に示す装置は、
図1の撮影手段17として、レンズ37、鏡筒38、カメラ39を備えた例である。相関データの測定に用いる撮影手段は、クロストークの測定に用いる撮影手段と同一の構成とすることが好ましい。また、
図3のダミーファイバ36の出射端36aとカメラ39との位置関係(距離、方向等)は、
図1のマルチコアファイバ11の出射端15と撮影手段17との位置関係と同一にすることが好ましい。
【0034】
(第2工程)
次に、
図1に示す測定装置10を構成して、マルチコアファイバ11から出射されるリファレンス光のパワーを測定する。
図1の光源14及びダミーファイバ13は、
図3の光源31及びダミーファイバ36と同一でもよい。第2工程では、光源14からダミーファイバ13を介してマルチコアファイバ11の特定のコア(参照コア)に光を入射し、このコアから出射される光のパワーをリファレンス光のパワーとして測定する。
【0035】
リファレンス光のパワーの測定は、マルチコアファイバ11の参照コアから出射するリファレンス光のパワーを、パワーメータ等のパワー測定装置を用いて測定する方法でもよい。ここでは、後述する第3工程と同様に、マルチコアファイバ11の出射光を撮影手段17により撮影し、得られた画像データから第1工程により取得される相関データを用いてリファレンス光のパワーを推定する方法について説明する。
【0036】
マルチコアファイバ11の出射端15から空間を介して配置された撮影手段17により、リファレンス光を撮影する。撮影により得られた画像データから、リファレンス光が照射された画素を抽出し、これらの画素の受光強度の和を求める。求めた和の値を、相関データの縦軸に当てはめると、リファレンス光に対応する出射パワー×露光時間の積が推定される。さらに、リファレンス光を撮影したときの露光時間を除算して得られる出射パワーが、リファレンス光のパワーの推定値である。
【0037】
なお、第2工程においてもパワーの調整をしやすくするため、ダミーファイバ13と光源14との間に、
図3のようにアッテネータなどを入れてもよい。
撮影の際、NDフィルタや偏光子等の光を減衰する部品を用いてもよい。これにより、リファレンス光が明るすぎるためにカメラが故障することを防ぐことができる。減衰部品は、例えばマルチコアファイバ11の出射端15と撮影手段17との間に配置することができる。
【0038】
マルチコアファイバ11のクロストークが十分低い(たとえば、−25dB/ファイバ長)と予想される場合には、撮影するリファレンス光のパワーレベルはできるだけ大きい方が望ましい(たとえば、−15dBm以上)。
マルチコアファイバ11のクロストークが十分低い(たとえば、−25dB/ファイバ長)と予想される場合には、マルチコアファイバ11の出射端15を直接パワーメータ等に接続してリファレンス光のパワーを測定してもよい。
【0039】
実施例1として、
図6に示すデュアルコアファイバ(DCF)を用いたリファレンス光の測定を説明する。DCFは、2つのコアを有するマルチコアファイバである。
図6のDCFは、ファイバ中心に配置された中心コアと、中心から外れた位置に配置された外側コアを有する。
【0040】
(DCFのパラメータ)
中心コアの比屈折率差Δ:0.47%
外側コアの比屈折率差Δ:0.47%
中心コアのコア半径:4.6μm
外側コアのコア半径:4.1μm
中心コアのケーブルカットオフ波長:1.46μm
外側コアのケーブルカットオフ波長:1.33μm
コア間距離:30.3μm
クラッド径:163.1μm
条長:1.3km
曲げ半径:105mm
【0041】
光学濃度(OD)3.0(減衰量30dB)のNDフィルタを用いてリファレンス光を撮影し、
図5の相関データ(線形近似)からパワーを推定したところ、受光パワーは−43.8dBmと推定された。これより、リファレンス光の出射パワーは、−13.8dBmと推定される。
【0042】
(第3工程)
第3工程は、リファレンス光をマスキングした状態で、ダミーファイバ13を介してマルチコアファイバ11に光を入射したコアとは異なるコアから出射されるクロストーク光を撮影し、クロストーク光のパワーを推定する工程である。マルチコアファイバ11の特定のコア(入射コア)に光を入射することにより入射コアを励振したとき、入射コアから出射する光がリファレンス光であり、他のコアから出射する光がクロストーク光である。本実施例では、DCFを用いたため、クロストーク光が出射されるコア数は1であるが、MCFのコア数が多い場合、2以上のコアから出射されるクロストーク光を同時に撮影することも可能である。
【0043】
なお、第2工程と第3工程の順序は任意である。所定の減衰量を有するNDフィルタ等によりリファレンス光を減光しながら、リファレンス光及びクロストーク光を同時に撮影できる場合、第2工程と第3工程を同時に実施することも可能である。
【0044】
クロストーク光の測定は、第2工程に説明した
図1に示す測定装置10と同様の構成で行うことができる。しかし、クロストークがリファレンス光に対して非常に小さい(たとえば、ファイバ長に対して−25dB以下)場合、撮影の際にカメラの画素のダイナミックレンジが小さいためクロストーク光がリファレンス光に埋もれたり、リファレンス光が明るすぎるためにカメラが故障するおそれがある。したがって、クロストーク光を撮影するために、リファレンス光のみをマスキングするようなフィルタ等を用いる。
【0045】
一例として、カメラ用フィルタの一部分を遮光性のテープ(減衰量が50dB程度)で覆い、カメラの受光素子の直前に配置することが挙げられる。このとき、遮光性のテープの減衰量はできるだけ大きい方が望ましい(例えば、減衰量≧40dB)。遮光性のテープ及び鏡筒は内部の反射を抑えることが望ましい(例えば、反射減衰量≧20dBなど)。遮光性の材料は、光が受光素子で検出されない程度に光を阻止又は減衰させる性質を有するが好ましい。
【0046】
マスキング手段としては、遮光性の材料に限らず、リファレンス光のみを反射する部品(プリズム等)、リファレンス光のみを拡散させる光部品(レンズ等)、リファレンス光のみを減衰させるような仕組みを持つ部品(NDフィルタ、偏光子、波長板の組み合わせなど)を用いてもよい。プリズム等の部品で反射した光は、吸収体で減衰させるか、鏡筒外に放出することが好ましい。
【0047】
他のマスキング手段として、中心に位相の特異点を持たせるようなフィルタ等の部品(非特許文献4参照)、リファレンス光を位相の特異点部分に透過させることで、リファレンス光のみを減衰させてもよい。マスキング手段は、2以上を併用することもできる。
他のマスキング手段として、リファレンス光をカメラの受光素子の外側で結像させることによって、リファレンス光を撮影しないようにしてもよい。
上記のフィルタ等のマスキング手段は、光路上の任意の空間(例えば、マルチコアファイバ11の出射端15と対物レンズとの間、対物レンズと結像レンズとの間、結像レンズと受光素子との間など)に配置してもよい。
【0048】
クロストーク光の撮影及びクロストーク光のパワーの推定は、第2工程と同様に行うことができる。このとき、リファレンス光が、第2工程で撮影又は測定したパワーとほぼ同じパワー(たとえば、±1dB以内)で出射していることが望ましい。また、リファレンス光の大部分が、マスキングによって受光素子に映らない状態になっていることが望ましい。
【0049】
図7に、実施例1として
図6のDCFを使用してクロストーク光を撮影して得られた画像の一例を示す。なお、DCFの中心コアを励振し、中心コアから外側コアへのクロストークを測定した。
図7の画像は、波長掃引を行いながら(非特許文献5参照)、動画を撮影したのちに、各画素を時間平均して得られた。これより、クロストーク光の出射パワーを推定したところ、−43.2dBmであった。また、
図7にはクロストーク光(XT光)とともに鏡筒内でのリファレンス光の反射が確認できるが、本実施例のように、反射光とクロストーク光が重なっていなければ測定可能である。なお、できるだけ反射光あるいは反射光の映り込みを抑えるような機構を設けてもよい。反射光を抑制する機構としては、鏡筒内に貼り付けて光を吸収する素材や、絞り等が挙げられる。
【0050】
(第4工程)
本工程では、リファレンス光のパワー及びクロストーク光のパワーからクロストークを求める。パワーがデシベルで表示される場合、デシベルの差がパワーの比となる。
実施例1の場合、第2工程で測定したリファレンス光のパワーは、−13.8dBmであり、第3工程で測定したクロストーク光のパワーは、−43.2dBmであった。したがって、クロストークの値は、クロストーク光のパワーからリファレンス光のパワーを差し引くことにより、−29.4dB/ファイバ長と求めることができる。
なお、従来技術1の方法でDCFのクロストークを測定したところ、−30.8[dB/ファイバ長]であり、本実施例の結果とよく一致した。
【0051】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0052】
実施例1では出射光の近視野像をカメラに結像させて撮影を行ったが、その代わりにスクリーンに近視野像を結像させてもよい。撮影の手順はカメラに近視野像を結像させた場合とほぼ同じとなる。このとき、可視光のレーザを光源に用いてもよい。また、スクリーンに映った像をカメラで撮影してもよい。スクリーン自体が複数の受光素子の列で構成されていてもよい。透過性を有するスクリーンの裏側に複数の受光素子の列を配置してもよい。マルチコアファイバに入射させる光が可視光の場合、スクリーンの像を確認しながら、受光素子で受光パターンを測定することもできる。
【0053】
本実施形態の測定装置10は、上述した撮影手段17及びリファレンス光のマスキング手段に加えて、コンピュータ等の制御手段(図示せず)を備えてもよい。制御手段は、ダミーファイバ13に入射したパワーと出射パターンとの相関データを取得する手段、クロストーク光のパワーを相関データから推定する手段、リファレンス光のパワーとクロストーク光のパワーとの比からクロストークを求める手段として用いることができる。
【0054】
例えば、相関データを制御手段(コントローラ)に取得させ、さらに撮影手段17により撮影したクロストーク光の画像データを制御手段に送信することにより、制御手段は、クロストーク光の撮影データと相関データとの関係に基づき、クロストーク光のパワーを推定することができる。
【0055】
また、撮影手段17により撮影したリファレンス光の画像データを制御手段に送信することにより、制御手段は、リファレンス光の撮影データと相関データとの関係に基づき、リファレンス光のパワーを推定することができる。なお、リファレンス光のパワーを測定する手段として、測定装置10が、上述したパワーメータを備えてもよい。測定装置10は、所望の工程において、撮影手段、マスキング手段、パワーメータ等をマルチコアファイバ11の出射端15に対して入れ替わり配置する手段を備えてもよい。
【0056】
制御手段は、第3工程において、クロストーク光の撮影データからリファレンス光の重なりを除去するため、画像処理を行うこともできる。マスキングを施した状態でクロストーク光を撮影した際、マスキングの周囲にリファレンス光のすそが漏れて、クロストーク光に重なり合う場合がある。そこで、クロストーク光の出射コアの位置におけるリファレンス光の強度を推定して、撮影データにおける強度から減算した結果をクロストーク光のより正しいデータとして用いることができる。このような画像処理を行うことにより、より精度よくクロストーク光のパワーを推定することができる。クロストーク光の出射コアの位置におけるリファレンス光の強度を推定する方法としては、MCF端面上にコアのない場所のうち、マスキングの中心位置から出射コアの位置までと距離が等しい位置における強度を抽出し、平均値、中央値等の代表値を取得する方法が挙げられる。マスキングの形状は、矩形(正方形、長方形)、多角形、円形等、特に限定されないが、リファレンス光の強度を推定する際にマスキングの形状を考慮して、マスキングの周囲におけるリファレンス光のすその分布を求めることもできる。
【0057】
カメラ、スクリーン又は複数の受光素子は、調心を不要にするため、マルチコアファイバ11の出射端15の延長線上に垂直な面内で二次元的に広がり、一定の領域内の任意の位置で撮影が可能な構成であることが好ましい。
光ファイバの端部の位置を撮影手段に対して調整するため、ステージ等の位置決め手段を用いてもよい。ステージは、少なくともXY二軸の調整が可能なステージが好ましい。
【0058】
次に、上記実施形態の測定方法を、7コアファイバ(7CF)に適用した実施例2と、32コアファイバ(32CF)に適用した実施例3について説明する。
【0059】
(実施例2)
7CFのパラメータは、ファイバ長5.8km、クラッド径179.8μm、平均コア間距離40.5μm、ケーブルカットオフ波長≦1.22μmである。
図8には、本実施例でMCFとして用いた7CFの端部の写真を示す。MCF端面上にマーカーを有してもよい。測定波長は1550nmとした。
【0060】
実施例1と同様に、第1工程によってダミーファイバの端部における出射パターンを撮影し、ダミーファイバに入射したパワーと出射パターンとの相関データを取得した。
図9に、相関データの測定例を示す。
図9の横軸は7CFからの出射パワーとカメラのシャッタースピードの積であり、縦軸は各画素の輝度値の合計値である。これより、横軸と縦軸の関係はほぼ線形であると分かる。したがって、この相関データを線形近似して得られる関係式を用いることで、実施例1と同様に、撮影画像から出射パワーを推定することができる。
【0061】
7CFの中心コアを励振し、実施例1の第3工程と同様の手順でクロストーク光を撮影したところ、
図10のような画像が得られた。中心コアからの光(リファレンス光)がマスクされ、周囲の6コアからクロストーク光が撮影されている。なお、クロストーク光を撮影する前又は後に、中心コアと任意の外側2コアにダミーファイバを接続(融着あるいはバットジョイント)し、光を入射したときにどの場所が光るかを確認することで、コア番号の対応を行っている。
【0062】
実施例1の第4工程と同様の手順により、
図10に例示されるクロストーク光撮影画像と、NDフィルタを用いたリファレンス光の撮影画像(図示略)と、
図8の相関データを用いて、クロストークの値を求めた。表1に、カメラによるクロストーク測定値(すなわち本実施例)と、従来のパワーメータ法によるクロストーク測定値(参考例)を示す。なお、カメラによるクロストーク測定は、第3工程において画像処理を行ってリファレンス光のすその影響を除去する方法を用いる以外は、実施例1の第2〜第4工程と同様にして繰り返し3回実施した。これより、本実施例と参考例の測定値は良く一致していることが分かる。
【0064】
(実施例3)
32CFのパラメータは、ファイバ長5.8km、クラッド径244.2μm、最近接の平均コア間距離29.0μm、第二近接(対角)の平均コア間距離40.9μm、1km伝搬後カットオフ波長≦1.53μmである。
図11には、本実施例でMCFとして用いた32CFの端部の写真を示す。MCF端面上にマーカーを有してもよい。また、32CFのコア番号を
図12に示す。
【0065】
この32CF(MCF)に対して、改良した測定系を用いてクロストークの測定を行った。この改良した測定系では、MCFの出射端の次に対物レンズを配置し、対物レンズの次に空間フィルタを配置し、空間フィルタの次に集光レンズ、NDフィルタ(必要な場合)及びカメラを配置した。また、MCFの出射端から空間フィルタの間には鏡筒を配置せず、空間フィルタからカメラの間には鏡筒を配置した。さらに、実施例1と同様に、第1工程によってダミーファイバの端部における出射パターンを撮影し、ダミーファイバに入射したパワーと出射パターンとの相関データを取得した(図示略)。
【0066】
32CFの26番コア(#26)又は29番コア(#29)を励振し、実施例1の第3工程と同様の手順でクロストーク光を撮影したところ、
図13のような画像が得られた。
図13(a)は26番コア励振時、
図13(b)は29番コア励振時を示す。
【0067】
画像中には不要な反射とみられる光は確認できないが、
図13(a)においてはマスキングの周囲にリファレンス光のすそがクロストーク光に重なっていることが確認できる。また、26番コアの周囲では、最近接コア(奇数番:#23、#25、#27、#29)へのクロストーク光は確認できるが、第二近接コア(偶数番:#10、#24、#28、#32)へのクロストーク光は確認できないことが分かる。これは、第二近接コアへのクロストークが、最近接コアへのクロストークよりも小さい(少なくとも10dB程度以上)ためである。これは、従来のパワーメータ法での測定結果からも確認されている。
図13(b)においても、
図13(a)よりは少ないもののマスキングの周囲にリファレンス光のすそが見られるが、周囲8コア(最近接コア及び第二近接コア)のすべてのクロストーク光が確認できた。
【0068】
図14に、波長1550nmにおけるコア間のクロストーク(XT)測定結果を示す。ここで、「1st time」、「2nd time」及び「3rd time」は、カメラによるクロストーク測定値(すなわち本実施例)を示す。また、「PM」は、従来のパワーメータ法によるクロストーク測定値(参考例)を示す。なお、カメラによるクロストーク測定は、実施例2と同様に、第3工程において画像処理を行ってリファレンス光のすその影響を除去する方法を用いる以外は、実施例1の第2〜第4工程と同様にして繰り返し3回実施した。これより、−50dB/ファイバ長に近いクロストークが測定できており、本実施例と参考例の測定値は良く一致していることが分かる。なお、本実施例においては、画像処理を行わない場合、最近接コアへのクロストークが数dB程度悪く測定されることも確認している。