(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(イリジウム錯体)
本発明のイリジウム錯体は、式〔I〕で表される化合物である。
【化4】
【0013】
式〔I〕中、A
1は、窒素原子またはC(R
1)を示し、A
2は、窒素原子またはC(R
2)を示し、A
3は、窒素原子またはC(R
3)を示す。R
1〜R
3は、それぞれ独立に、水素原子、または置換基を示す。
【0014】
R
1〜R
3における置換基としては、C1〜6アルキル基、C2〜6アルケニル基、C2〜6アルキニル基、C3〜8シクロアルキル基、C6〜10アリール基、C7〜11アラルキル基、3〜6員ヘテロシクリル基、C1〜6アルコキシ基、C2〜6アルケニルオキシ基、C2〜6アルキニルオキシ基、C7〜11アラルキルオキシ基、C1〜7アシルオキシ基、ハロゲノ基、C1〜6ハロアルキル基、C6〜10ハロアリール基、C1〜6ハロアルコキシ基、C6〜10ハロアリールオキシ基、C1〜6アルキル置換アミノ基、C7〜11アラルキル置換アミノ基、C1〜7アシル置換アミノ基、C1〜6アルキルチオ基、C6〜10アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、C7〜11アラルキルチオ基、C1〜6アルキルスルフィニル基、C6〜10アリールスルフィニル基、ヘテロアリールスルフィニル基、C7〜11アラルキルスルフィニル基、C1〜6アルキルスルホニル基、C6〜10アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、C7〜11アラルキルスルホニル基、シアノ基、ニトロ基などを挙げることができる。
これらのうち、C1〜6アルキル基、C6〜10アリール基、C1〜6アルコキシ基、ハロゲノ基、C1〜6ハロアルキル基、C6〜10ハロアリール基、C1〜6ハロアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基が好ましく、C1〜6アルキル基、C6〜10アリール基、ニトロ基がより好ましい。
【0015】
上記各置換基について、具体的には以下のものを例示することができる。
C1〜6アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。
C2〜6アルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基等が挙げられる。
C2〜6アルキニル基としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、2−メチル−3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−メチル−2−ブチニル基、2−メチル−3−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1,1−ジメチル−2−ブチニル基等が挙げられる。
C3〜8シクロアルキル基は、単環又は多環のアルキル基であり、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロヘプチル基、ノルボルニル基等が挙げられる。
C6〜10アリール基は、単環又は多環のアリール基を意味する。ここで、多環アリール基の場合は、完全不飽和に加え、部分飽和の基も包含する。例えばフェニル基、ナフチル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基、テトラリニル基等が挙げられる。
C7〜11アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニル−n−プロピル基、1−フェニル−n−へキシル基、ナフタレン−1−イルメチル基、ナフタレン−2−イルエチル基、1−ナフタレン−2−イル−n−プロピル基、インデン−1−イルメチル基等が挙げられる。
3〜6員ヘテロシクリル基は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を少なくとも1個有する芳香族複素環、飽和複素環、不飽和複素環を意味し、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、ジヒドロピラニル基、テトラヒドロピリジル基等が挙げられる。
C1〜6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
C2〜6アルケニルオキシ基としては、エテニルオキシ基、プロパ−1−エン−1−イルオキシ基、ブタ−1−エン−1−イルオキシ基、ペンタ−1−エン−1−イルオキシ基、3−メチル−ブタ−1−エン−1−イルオキシ基、ヘキサ−1−エン−1−イルオキシ基等が挙げられる。
C2〜6アルキニルオキシ基としては、プロパ−1−イン−1−イルオキシ基、ブタ−1−イン−1−イルオキシ基、ペンタ−1−イン−1−イルオキシ基、ヘキサ−1−イン−1−イルオキシ基等が挙げられる。
C7〜11アラルキルオキシ基としては、フェニルメトキシ基、3−フェニル−n−プロポキシ基、1−フェニル−n−ヘキソキシ基、ナフタレン−1−イルメトキシ基等が挙げられる。
C1〜7アシルオキシ基としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチロイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基等が挙げられる。
ハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等が挙げられる。
C1〜6ハロアルキル基、C6〜10ハロアリール基、C1〜6ハロアルコキシ基及びC6〜10ハロアリールオキシ基は、上記C1〜6アルキル基、C6〜10アリール基、C1〜6アルコキシ基、C6〜10アリールオキシ基の少なくとも1個の水素原子がハロゲノ基で置換されたものが挙げられる。
C1〜6アルキル置換アミノ基、C7〜11アラルキル置換アミノ基及びC1〜7アシル置換アミノ基は、アミノ基の水素原子の1又は2個が上記C1〜6アルキル基、C7〜11アラルキル基、C1〜7アシル基で置換されたものが挙げられる。
C1〜6アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、t−ブチルチオ基、1−エチルプロピルチオ基、n−ヘキシルチオ基、イソヘキシルチオ基等が挙げられる。
C6〜10アリールチオ基としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アズレニルチオ基、インデニルチオ基、インダニルチオ基、テトラリニルチオ基等が挙げられる。
ヘテロアリールチオ基としては、ピリジニルチオ基、イミダゾリルチオ基、フリルチオ基、チエニルチオ基、イソキサゾリルチオ基等が挙げられる。
C7〜11アラルキルチオ基としては、フェニルメチルチオ基、3−フェニル−n−プロピルチオ基、1−フェニル−n−ヘキシルチオ基、ナフタレン−1−イルメチルチオ基等が挙げられる。
C1〜6アルキルスルフィニル基、C6〜10アリールスルフィニル基、ヘテロアリールスルフィニル基、C7〜11アラルキルスルフィニル基、C1〜6アルキルスルホニル基、C6〜10アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基及びC7〜11アラルキルスルホニル基としては、上記C1〜6アルキル基、C6〜10アリール基、ヘテロアリール基又はC7〜11アラルキル基で置換されたスルフィニル基又はスルホニル基が挙げられる。
【0016】
また、R
1とR
2、またはR
2とR
3とが一緒になって環を形成していてもよい。形成していてもよい環は特に限定されないが、R
1とR
2、またはR
2とR
3とが一緒になって、無置換の若しくは置換基を有するベンゼン環を形成しているのが好ましい。R
1とR
2とが一緒になって無置換の若しくは置換基を有するベンゼン環を形成した場合、式〔I〕で表されるイリジウム錯体は、式〔II〕で表すことができる。R
2とR
3とが一緒になって無置換の若しくは置換基を有するベンゼン環を形成した場合、式〔I〕で表されるイリジウム錯体は、式〔III〕で表すことができる。
【0019】
式〔II〕、式〔III〕中、R
10はベンゼン環上の置換基を示す。具体的には、R
1〜R
3における置換基において例示されたものと同様の基が挙げられる。
nは、ベンゼン環上の置換基R
10の数を意味し、0〜4のいずれかの整数を示す。式〔II〕及び式〔III〕中、A
1、A
3、R
4、R
5〜R
8、C
1、C
2、X及びYは、式〔I〕と同様である。
【0020】
式〔I〕中、R
4は、水素原子または置換基を示す。
【0021】
R
4における置換基としては、C1〜6アルキル基、C2〜6アルケニル基、C2〜6アルキニル基、C3〜8シクロアルキル基、C6〜10アリール基、C7〜11アラルキル基、3〜6員ヘテロシクリル基、ハロゲノ基、C1〜6ハロアルキル基、C6〜10ハロアリール基などを挙げることができる。上記各置換基について、具体的には、R
1〜R
3における置換基において例示されたものと同様の基が挙げられる。
これらのうち、C1〜6アルキル基、C6〜10アリール基が好ましく、C1〜6アルキル基がより好ましく、メチル基がよりさらに好ましい。
【0022】
式〔I〕中、R
5〜R
8は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を示す。
【0023】
R
5〜R
8における置換基としては、C1〜6アルキル基、C2〜6アルケニル基、C2〜6アルキニル基、C3〜8シクロアルキル基、C6〜10アリール基、C7〜11アラルキル基、3〜6員ヘテロシクリル基、C1〜6ハロアルキル基、C6〜10ハロアリール基などを挙げることができる。上記各置換基について、具体的には、R
1〜R
3における置換基において例示されたものと同様の基が挙げられる。
これらのうち、C1〜6アルキル基、C6〜10アリール基が好ましい。
【0024】
また、R
5またはR
6と、R
7またはR
8とが一緒になって環を形成していてもよい。形成していてもよい環は特に限定されない。
【0025】
式〔I〕中、C
1、C
2は、炭素原子を示す。ただし、C
1及びC
2のうち、少なくとも1つは不斉炭素原子である。
【0026】
式〔I〕中、Xは、ヒドリド、またはアニオン性配位子を示す。
【0027】
式〔I〕中、アニオン性配位子としては、CF
3SO
3-、BF
4-、PF
6-、ClO
4-、ハロゲノ基、ヒドロキシル基、ジケトネート基、アルケニル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基などを挙げることができる。これらのうち、ハロゲノ基が好ましい。
【0028】
式〔I〕中、Yは、無置換の若しくは置換基を有するシクロペンタジエニル、または、無置換の若しくは置換基を有するインデニルを示す。
【0029】
Yにおけるシクロペンタジエニル、インデニルの置換基としては、C1〜C6アルキル基、アリール基などを挙げることができる。
【0030】
無置換の若しくは置換基を有するシクロペンタジエニルとしては、シクロペンタジエニル、メチルシクロペンタジエニル、エチルシクロペンタジエニル、イソプロピルシクロペンタジエニル、フェニルシクロペンタジエニル、ベンジルシクロペンタジエニル、1,2−ジメチルシクロペンタジエニル、1,3−ジメチルシクロペンタジエニル、1,2,3−トリメチルシクロペンタジエニル、1,2,4−トリメチルシクロペンタジエニル、1,2,3,4−テトラメチルシクロペンタジエニル、1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニルなどを挙げることができる。
【0031】
無置換の若しくは置換基を有するインデニルとしては、インデニル、2−フェニルインデニル、2−メチルインデニルなどを挙げることができる。
【0032】
(イリジウム錯体の製造方法)
本発明のイリジウム錯体〔I〕は、式〔IV〕で表される化合物と、式〔V〕で表されるイリジウム錯体を溶媒中で反応させることにより製造することができる。
【0034】
式〔IV〕中、A
1、A
2、A
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、C
1、C
2は、式〔I〕中のA
1、A
2、A
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、C
1、C
2と同様である。
【0036】
式〔V〕中、X、Yは、式〔I〕中のX、Yと同様である。
【0037】
反応に用いる式〔V〕で表されるイリジウム錯体の使用量は、式〔IV〕で表される化合物1モルに対して、好ましくは1〜2モル、より好ましくは1モルである。
【0038】
反応に用いる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセタミド、1,3−ジメチルイミダゾリジン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT)などのアミド類;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;ジメチルスルホキシド(DMSO)などを挙げることができる。これらの溶媒は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0039】
溶媒の使用量は、反応物質1gに対して、好ましくは1ml〜100ml、より好ましくは1ml〜10mlである。
【0040】
(還元反応)
本発明のイリジウム錯体〔I〕の存在下に、水素供与性化合物と、イミン類を反応させて還元することにより、アミン類を製造することができる。
【0041】
本発明の製造方法で用いられるイミン類とは、分子内にイミン構造を含む化合物である限り特に限定されない。イミン類としては、無置換の若しくは置換基を有するピリジン、無置換の若しくは置換基を有するキノリン、無置換の若しくは置換基を有するイソキノリンなどの含窒素芳香族化合物を挙げることができる。その他に、イミン類としては、酸触媒の存在下、あるいは酸触媒の非存在下で、式〔VI〕で表されるカルボニル類と式〔VII〕で表されるアミン類との縮合反応により得られるイミン類〔VIII〕を挙げることができる。
【0042】
【化9】
式〔VI〕中、R
11、R
12は、それぞれ独立に、任意の有機基を示す。
【0043】
【化10】
式〔VII〕中、R
13、R
14は、それぞれ独立に、水素原子または任意の有機基を示す。
【0044】
【化11】
式〔VIII〕中、R
11、R
12は、式〔VI〕中のR
11、R
12と同様である。式〔VIII〕中、R
13、R
14は、式〔VII〕中のR
13、R
14と同様である。
【0045】
式〔VI〕で表されるカルボニル類と式〔VII〕で表されるアミン類との縮合反応に用いる酸触媒としては、ブレンステッド酸、ルイス酸を挙げることができる。
ブレンステッド酸としては、有機カルボン酸、有機スルホン酸、フェノール類などの有機酸;リン酸、ホウ酸、塩酸、硝酸などの鉱酸を挙げることができる。
ルイス酸としては、チタニウムテトライソプロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシドなどを挙げることができる。
【0046】
本発明で用いられるイミン類は、市販品を用いてもよいし、前記の反応により別途合成したものを用いてもよいし、反応系内で生成させたものを用いてもよい。
【0047】
本発明の製造方法で用いられるアミン類とは、本発明の製造方法で用いられるイミン類を還元して得られる化合物である。例えば、本発明のイリジウム錯体〔I〕の存在下に、水素供与性化合物と、イミン類〔VIII〕を反応させることにより、式〔IX〕で表されるアミン類を得ることができる。
【0048】
【化12】
式〔IX〕中、R
11、R
12は、式〔VI〕中のR
11、R
12と同様である。式〔IX〕中、R
13、R
14は、式〔VII〕中のR
13、R
14と同様である。
【0049】
本発明の製造方法で用いられる水素供与性化合物とは、熱によって、あるいは触媒作用によって水素を供与することのできる化合物を意味する。そのような性質を有する化合物である限り特に限定されない。
【0050】
水素供与性化合物としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、sec−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、シクロペンチルアルコール、n−へキシルアルコール、シクロへキシルアルコール、ベンジルアルコール、ギ酸、HCOOK、HCOONa、HCOOLi、HCOONH
4などを挙げることができる。これらは単独で、または複数種組み合わせて用いることができる。
【0051】
水素供与性化合物の使用量は、イミン類またはエナミン類1モルに対し、1〜30モルである。
【0052】
本発明の製造方法で使用するイリジウム錯体〔I〕の使用量は、イリジウム触媒〔I〕に対するイミン類およびエナミン類のモル比をS/C(Sはイミン類およびエナミン類のモル数、Cは触媒のモル数を表す)として表記することができる。その場合、S/Cをどの程度まで高められるかは基質の構造、触媒の種類、水素供与体の種類等によって大きく変動するが、実用上は、S/C=100〜20000程度に設定することが望ましい。
【0053】
本発明の製造方法では、適時反応溶媒を用いることができる。プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒、イオン性液体、および水を単独で、もしくは複数組み合わせて用いることができる。
【0054】
反応温度は、好ましくは−20℃〜100℃であり、より好ましくは、20℃〜60℃である。反応時間は、基質濃度、温度、圧力等の反応条件によって異なるが、数分から100時間で反応が完結する。
生成したアミン類〔VIII〕は、酸−塩基抽出、カラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶等の公知の方法により、または適時それらの組み合わせにより精製することができる。
【0055】
次に、実施例を示し、本発明をより詳しく説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0056】
(イリジウム錯体の合成)
実施例1
(工程1)
4−エチル−3,5−ジメチル−1H−ピロール−2−カルバアルデヒド(0.30g)と、(1S,2R)−1−アミノ−2−ヒドロキシインダン(0.30g)をメタノール3mlに溶解し、室温で16時間撹拌した。反応液を濃縮し、メタノールで再結晶して、3,5−dimethyl−4−ethylpyrrole−2−[(1S,2R)−2,3−dihydro−2−hydroxy−1H−indenyl]carbaldimine(0.30g)を得た。
【0057】
(工程2)
塩化メチレン3mlに工程1で得られた3,5−dimethyl−4−ethylpyrrole−2−[(1S,2R)−2,3−dihydro−2−hydroxy−1H−indenyl]carbaldimine(90mg)と、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)イリジウム(III)ジクロリド (ダイマー)(Cp*IrCl
2)
2(110mg)を溶解させた。トリエチルアミン(0.1ml)を加えて室温で20分撹拌した。溶媒を留去して得られた粗生成物をエタノールで再結晶して、イリジウム錯体1(0.15g)を得た。
イリジウム錯体1の構造
【0059】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ (ppm): 7.58 (s, 1H), 7.36-7.24 (m, 4H), 5.47 (d, J=4.6 Hz, 1H), 4.64 (m, 1H), 3.21 (m, 1H), 3.13-3.05 (m, 2H), 2.50 (s, 3H), 2.36 (m,2H), 2.17 (s, 3H), 1.75 (s, 15H), 1.05 (t, J=7.5 Hz, 3H).
【0060】
実施例2
実施例1と同様の手法でイリジウム錯体2を合成した。
イリジウム錯体2の構造
【0062】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ (ppm): 7.79 (s, 1H), 7.37-7.20 (m, 4H), 7.17 (m, 1H),6.65 (dd, J=3.8, 1.0 Hz, 1H), 6.34 (dd,J=3.8, 1.8 Hz, 1H), 5.55 (d, J=4.6 Hz, 1H), 4.70 (m, 1H), 3.41 (m, 1H), 3.20-3.08 (m, 2H), 1.77 (s, 15H).
【0063】
実施例3
実施例1と同様の手法でイリジウム錯体3を合成した。
イリジウム錯体3の構造
【0065】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ (ppm): 7.46 (s, 1H), 7.51-7.34 (m, 5H), 7.12 (m, 1H),6.57 (dd, J=3.8, 1.0 Hz, 1H), 6.30 (dd,J=3.8, 1.8 Hz, 1H), 5.13 (t, J=3.3 Hz, 1H), 4.31 (ddd, J=12.1, 7.0, 3.3 Hz, 1H), 4.14 (ddd, J=12.1, 8.4, 3.3 Hz, 1H), 3.78 (dd, J=8.4, 7.0 Hz, 1H), 1.76 (s, 15H).
【0066】
実施例4
実施例1と同様の手法でイリジウム錯体4を合成した。
イリジウム錯体4の構造
【0068】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ (ppm): 7.84 (s, 1H), 7.13 (m, 1H), 6.73 (dd, J=3.8, 1.0 Hz, 1H), 6.30 (dd, J=3.8, 1.8 Hz, 1H), 4.04 (ddd, J=11.9, 7.9, 2.9 Hz, 1H), 3.73 (ddd, J=11.9, 7.9, 3.7 Hz, 1H), 3.56 (m, 1H), 3.29 (t, J=7.9 Hz, 1H), 2.43 (m, 1H), 1.71 (s, 15H), 1.15 (d, J=6.5 Hz, 1H), 1.03 (d, J=6.6 Hz, 1H).
【0069】
実施例5
実施例1と同様の手法でイリジウム錯体5を合成した。
イリジウム錯体5の構造
【0071】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ (ppm): 7.52 (s, 1H), 7.49-7.05 (m, 10H), 7.12 (m, 1H), 6.57 (dd, J=3.9, 1.0 Hz, 1H), 6.30 (dd,J=3.9, 1.8 Hz, 1H), 5.71 (m, 1H), 5.55 (d, J=3.3 Hz, 1H), 4.28 (d, J=5.9 Hz, 1H), 1.81 (s, 15H).
【0072】
実施例6
実施例1と同様の手法でイリジウム錯体6を合成した。
イリジウム錯体6の構造
【0074】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ (ppm): 7.79 (s, 1H), 7.34-7.07 (m, 4H), 7.19 (m, 1H),6.62 (m, 1H), 6.34 (m, 1H), 5.33 (d, J=7.4 Hz, 1H), 5.18 (m, 1H), 4.45 (m, 1H),3.27 (dd, J=15.5, 7.8 Hz, 1H), 2.97 (dd, J=9.6, 15.5 Hz, 1H), 1.77 (s, 15H).
【0075】
実施例7
実施例1と同様の手法でイリジウム錯体7を合成した。
イリジウム錯体7の構造
【0077】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ (ppm): 7.35-7.20 (m, 4H), 7.13 (m, 1H), 6.57 (dd, J=3.8, 1.1 Hz, 1H), 6.30 (dd, J=3.8, 1.8 Hz, 1H), 5.86 (d, J=6.2 Hz, 1H), 4.91 (m, 1H), 3.78 (d, J=2.1 Hz, 1H), 3.17 (dd, J=17.5, 6.8 Hz, 1H), 3.17 (d, J=17.5 Hz, 1H), 1.97 (s, 3H), 1.74 (s, 15H).
【0078】
実施例8
実施例1と同様の手法でイリジウム錯体8を合成した。
イリジウム錯体8の構造
【0080】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ (ppm): 7.81 (d, J=1.3 Hz, 1H), 7.37-7.18 (m, 4H), 7.08 (d, J=1.3 Hz, 1H), 5.91 (d, J=6.3 Hz, 1H), 4.94 (m, 1H), 3.49 (d, J=3.3 Hz, 1H), 3.64 (d, J=2.8 Hz, 1H), 3.36 (dd, J=17.5, 6.6 Hz, 1H), 3.18 (d, J=17.5 Hz, 1H), 1.96 (s, 3H), 1.75 (s, 15H).
【0081】
実施例9
実施例1と同様の手法でイリジウム錯体9を合成した。
イリジウム錯体9の構造
【0082】
【化21】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ (ppm): 7.37-7.22 (m, 4H), 7.07 (d, J=4.3 Hz, 1H), 6.47 (d, J=4.3 Hz, 1H), 5.88 (d, J=7.1 Hz, 1H), 5.06 (m, 1H), 3.49 (d, J=3.4 Hz, 1H), 3.44 (dd, J=17.8, 7.8 Hz, 1H), 3.13 (d, J=17.8 Hz, 1H), 1.97 (s, 3H), 1.67 (s, 15H).
【0083】
実施例10
実施例1と同様の手法でイリジウム錯体10を合成した。
イリジウム錯体10の構造
【0085】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ (ppm): 8.23 (s, 1H), 7.51-6.89 (m, 8H), 5.72 (d, J=4.8 Hz, 1H), 4.77 (m, 1H), 3.31 (dd, J=3.5, 1.2 Hz, 1H), 3.21 (dd, J=17.0, 4.8 Hz,1H), 3.13 (d, J=17.0 Hz, 1H), 2.60 (s, 3H), 1.83 (s, 15H).
【0086】
(還元反応)
実施例11
4−メトキシフェニルアセトン0.82g(5mmol)およびベンジルアミン0.80g(7.5mmol)をアセトニトリル3mlに溶解した。ギ酸・トリエチルアミン混合溶液(5:2)1mlを加え、30℃に温調した。実施例1で合成したイリジウム触媒1(0.2mol%)を加え、30℃で撹拌した。反応の進行をHPLCで追跡した。反応終了後、溶媒を留去し、水を加え、3N水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水洗浄、硫酸マグネシウム乾燥、濃縮して、粗生成物を得た。
得られた粗生成物を下記の条件でHPLC分析することで、アミン化合物(目的物)、ケトン化合物(原料)、アルコール化合物(副生成物)の各収率を算出した。
(分析条件)
カラム:TSK-Gel ODS-80TM 15 cm, 4.6 mmID.
カラム温度:40℃
移動相:アセトニトリル:水:1%リン酸:4%SDS=45:50:1:4、
流速:1ml/min.
分析波長:UV 225 nm
次いで、粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した後、トリフルオロ酢酸無水物にてアミド化した化合物をHPLC分析することにより光学純度(ee)を算出した。
(分析条件)
カラム:Chiralpac AD-H 25 cm, 4.6 mmID.
カラム温度:30℃
移動相:ヘキサン:イソプロパノール=99:1、
流速:1 ml/min.
分析波長:UV 275 nm
結果を表1に示す。
【0087】
実施例12〜17
イリジウム錯体2〜5、7、9、10を用いて実施例11と同様に還元的アミノ化反応をおこなった。結果を表1に示す。
【0091】
【化24】
2−メチルキノリン(0.73g)をアセトニトリル(3ml)に溶解した。ギ酸(1ml)を加え、30℃に温調した。イリジウム錯体1(6mg)を添加した後、4時間撹拌した。溶媒を留去後、水を加え、3M水酸化ナトリウム水溶液で中和した。酢酸エチルで抽出した後、飽和食塩水にて洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、有機相を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することで目的物(0.65g)を得た。
HPLC分析(カラム:Chiralcel OJ-H 15 cm, 4.6 mmID.移動相:ヘキサン:イソプロパノール=90:10、0.8ml/min.、25℃)により光学純度を算出したところ82%eeであった。
【0093】
【化25】
2−フェニルキノリン(0.205g)をアセトニトリル(1ml)に溶解した。ギ酸/トリエチルアミン混合溶液(5/2)(0.3ml)を添加した。イリジウム錯体2(6mg)を添加した後、室温で15時間撹拌した。反応液から溶媒を留去した後、水を加えた。次いで、3M水酸化ナトリウム水溶液で中和した。酢酸エチルで抽出した後、飽和食塩水にて洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウム乾燥した後、有機相を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することで目的物(0.203g)を得た。
HPLC分析(カラム:Chiralcel AS-H 15 cm, 4.6 mmID. 移動相:ヘキサン:イソプロパノール=90:10、0.8ml/min.、25℃)により光学純度を算出したところ85%eeであった。
【0095】
【化26】
2−メチルシクロヘキサノン(0.56g)とベンジルアミン(0.59g)をアセトニトリル(3ml)に溶解した。ギ酸/トリエチルアミン混合溶液(5/2)(1ml)を添加した後、30℃に温調した。イリジウム錯体2(6mg)を添加した後、3.5時間撹拌した。反応液から溶媒を留去した後、反応液に水を加えた。3M水酸化ナトリウム水溶液で反応液を中和した。酢酸エチルで抽出した後、飽和食塩水で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、濃縮して粗生成物を得た。
1HNMR分析の結果、生成物のベンジルアミノ基とメチル基の立体化学はcis:trans=10:1であった。
得られた粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより目的物(0.93g)得た。HPLC分析(カラム:Chiralcel OD-H 15 cm, 4.6 mmID.、移動相:ヘキサン:ジエチルアミン=1000:3、1ml/min.、20℃)により光学純度を算出したところ32%eeであった。