特許第6654139号(P6654139)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6654139濡れた眼用レンズの検査システムおよび検査方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654139
(24)【登録日】2020年1月31日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】濡れた眼用レンズの検査システムおよび検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20200217BHJP
   G01N 21/958 20060101ALI20200217BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20200217BHJP
   G02C 13/00 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   G01M11/00 L
   G01N21/958
   G01B11/30 Z
   G02C13/00
【請求項の数】45
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-547826(P2016-547826)
(86)(22)【出願日】2014年10月8日
(65)【公表番号】特表2016-540994(P2016-540994A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】SG2014000473
(87)【国際公開番号】WO2015053712
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2017年9月27日
(31)【優先権主張番号】201307605-4
(32)【優先日】2013年10月8日
(33)【優先権主張国】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】516106782
【氏名又は名称】イーメージ ヴィジョン ピーティーイー. エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】EMAGE VISION PTE. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォン、スン ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、ウェン セン
(72)【発明者】
【氏名】スモルゴン、セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】スリニヴァス、クンダプラ パラメシュワラ
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/0163638(US,A1)
【文献】 米国特許第05717781(US,A)
【文献】 米国特許第05805276(US,A)
【文献】 米国特許第05500732(US,A)
【文献】 米国特許第05748300(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0327396(US,A1)
【文献】 特開2006−139874(JP,A)
【文献】 特開2003−270129(JP,A)
【文献】 国際公開第03/073061(WO,A2)
【文献】 特開2012−073073(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0062104(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00−11/08
G01B 11/00−11/30
G01N 21/84−21/958
G02C 1/00−13/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動製造ラインにおいて搬送される眼用レンズの検査用視覚システムであって、
前記眼用レンズを照明するための複数の照明モジュールであって、異なる光技術を備えた、光を発光する複数の照明モジュールと、
前記眼用レンズを強調するために複数の照明を案内するための複数のビームスプリッタと、
前記眼用レンズの複数の調節画像を受光するための複数のビームスプリッタと、
適切な方法の画像をフィルタ処理するための複数のフィルタと、
前記眼用レンズの複数の画像を取り込むための複数の光モジュールであって、前記複数の光学部品の各々が前記眼用レンズの異なる欠陥のコントラストを強調させるために画像を調節する複数の光モジュールと、
フィルタ処理済みおよび調節済みの画像を受像するための複数の光検出器と、
前記眼用レンズを搬送するためのレンズホルダと、
前記眼用レンズの欠陥に関して前記複数の画像を処理および分析するための画像分析装置と、を備える視覚システム。
【請求項2】
前記照明モジュールによって発せられる光は、(1)可視スペクトル、(2)赤外スペクトルもしくは紫外スペクトルの光としてよい、請求項1に記載の視覚システム。
【請求項3】
前記ビームスプリッタはそれぞれ、ダイクロイックスプリッタとすることができる、請求項1に記載の視覚システム。
【請求項4】
前記複数の光モジュールは、各々の光モジュールが、レンズの組み合わせから成る、請求項1に記載の視覚システム。
【請求項5】
前記光モジュールの各レンズは、互いに異なる所定の倍率を有する、請求項4に記載の視覚システム。
【請求項6】
前記各々の光モジュールには、照明の適切な波長をフィルタ処理するための波長フィルタが設けられる、請求項4に記載の視覚システム。
【請求項7】
前記光検出器は、CCDモノクロカメラである、請求項1に記載の視覚システム。
【請求項8】
前記各々のカメラには、開口部が設けられる、請求項7に記載の視覚システム。
【請求項9】
前記開口部をより大きくすることにより明視野像が撮影される、請求項8に記載の視覚システム。
【請求項10】
前記開口部をより小さくすることにより焦点深度が深くなる、請求項8に記載の視覚システム。
【請求項11】
前記レンズは、ホルダ内に配置される、請求項1に記載の視覚システム。
【請求項12】
前記レンズは、生理食塩水または同様の液体内で浮遊した状態である、請求項11に記載の視覚システム。
【請求項13】
前記各々の照明モジュールは、(1)狭ビーム、(2)発散ビームもしくは広角度照明を発するように構成される、請求項2に記載の視覚システム。
【請求項14】
眼用レンズを検査するプロセスであって、
前記レンズをホルダの曲面に置くこと、
前記眼用レンズを照明するため、選択的にストロボされるように構成された複数の照明モジュールを設けること、
複数の画像が複数の光検出器または撮像装置によって同時に取り込まれ、次に、複数の画像が前記眼用レンズ内の欠陥を検出するための画像処理アルゴリズムによって前記画像分析装置において処理および分析されること、を含み、
各々の前記照明モジュールは、それぞれ異なる波長の照明を同時に照射するように構成されており、
前記複数の光検出器または撮像装置は、複数のビームスプリッタ及び複数の光学フィルタと適切に結合されており、
前記複数のビームスプリッタ及び複数の光学フィルタは、異なる波長の照明をそれぞれの光検出器または撮像装置へ導くように配置されている、プロセス。
【請求項15】
前記複数の照明モジュールの各々は、異なる瞬間に異なる波長の照明を照射するように構成されている、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記ホルダが曲面凹部又は平坦凹部を有する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
前記眼用レンズは、複数の照明モジュールによって照明される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記照明モジュールによって発せられる光は、(1)可視スペクトル、(2)赤外スペクトルもしくは紫外スペクトルの光としてよい、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記照明モジュールによって発せられる光は、前記各々の照明モジュールに対して単一トリガパルスによって制御される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
前記単一トリガパルスは、かなり短時間で加えられる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項21】
前記取り込まれた複数の画像に2つ以上の同心円を描き、前記2つの同心円によって囲まれた領域を変換して2次元画像を形成するステップをさらに含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項22】
(a)小さいボックスによって前記画像内の領域を画定するステップと、
(b)前記光強度閾値を定義して黒画素と白画素とを区別することによって、前記ボックス内の領域を二値化するステップと、
(c)前記領域内の前記白画素群を識別するステップと、
(d)少なくとも1つの白画素群の幾何学的特性を評価するステップと、
を含む裏返ったレンズを分析するステップをさらに含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記幾何学的特性は、前記少なくとも1つの白画素群の高さを含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項24】
前記何学的特性は、前記少なくとも1つの白画素群の幅を含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項25】
前記何学的特性は、前記少なくとも1つの白画素群のアスペクト比を含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項26】
前記何学的特性は、水平方向の前記白画素群の数を計数するステップと、その後に、前記水平方向の白画素群の数が所定数を超える場合に、前記レンズを不合格品と判定するステップとを含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項27】
(a)裏返ったレンズ画像と正常レンズ画像の明視野像内のエッジ周囲の領域をそれぞれ画定するステップと、
(b)裏返ったレンズ画像と正常レンズ画像の暗視野内のエッジ周囲の領域をそれぞれ画定するステップと、
(c)前記暗視野画像からの前記裏返ったレンズ画像と、前記明視野内の前記裏返ったレンズ画像とを重ね合わせるステップと、
(d)前記暗視野画像からの前記正常レンズ画像と、前記明視野内の前記正常レンズ画像とを重ね合わせるステップと、
(e)前記重ね合わせ画像の白いエッジから黒い画素領域が膨張した割合を識別するステップと、
(f)前記重ね合わせ画像内の前記白画素に対する黒画素の膨張率の幾何学的特性を評価するステップと、
を含む裏返ったレンズを分析するステップをさらに含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項28】
前記幾何学的特性は、前記白画素に対する黒画素の膨張率をプログラム可能なユーザ設定値と比較するステップと、その後に、前記膨張率が所定の膨張率を超える場合に、前記レンズを不合格品と判定するステップとを含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項29】
前記幾何学的特性は、前記白画素に対する黒画素の膨張率をプログラム可能なユーザ設定値と比較するステップと、その後に、前記膨張率が所定値内にある場合に、前記レンズを合格品として通過させるステップとを含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項30】
(a)エッジ周囲の領域のアンラップ処理画像内のレンズエッジを識別するステップと、
(b)裂け目L1、L2の長さを測定するステップと、
(c)L1、L2の幾何学的特性を評価するステップと、
を含む眼用レンズの裂け目欠陥を分析するステップをさらに含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項31】
前記幾何学的特性は、前記裂け目L1、L2の高さを測定するステップと、その後に、前記高さがユーザ設定上限値を超える場合に、前記レンズを不合格品と判定するステップとを含む、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記幾何学的特性は、前記裂け目L1、L2の幅を測定するステップと、その後に、前記幅がユーザ設定上限値を超える場合に、前記レンズを不合格品と判定するステップとを含む、請求項30に記載のプロセス。
【請求項33】
(a)アンラップ処理画像内の前記レンズエッジを識別するステップと、
(b)前記レンズのアンラップ処理画像内のエッジ輪郭の隙間の位置を確認するステップと、
(c)前記ステップ(b)で識別された隙間の長さを測定するステップと、
を含む眼用レンズの隙間欠陥を分析するステップをさらに含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項34】
前記幾何学的特性は、前記隙間距離をユーザ設定値と比較するステップと、その後に、前記隙間値が前記ユーザ設定上限値を超える場合に、前記レンズを不合格品と判定するステップとを含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項35】
(a)アンラップ処理画像内の前記レンズエッジを識別するステップと、
(b)前記レンズエッジのアンラップ処理画像内のエッジ輪郭の2本の黒いエッジ間の白画素ブラブの位置を確認するステップと、
(c)前記白画素ブラブの幾何学的特性を測定するステップと、
を含む眼用レンズの二重エッジ欠陥を分析するステップをさらに含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項36】
前記幾何学的特性は、前記ブラブの面積を計算するステップと、その後に、前記ブラブの面積が二重エッジ欠陥レンズのユーザ設定上限値を超える場合に、前記レンズを不合格品と判定するステップとを含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項37】
(a)アンラップ処理画像内の前記レンズエッジを識別するステップと、
(b)ステップ(a)で識別された実際のラインの垂直方向高さに関して正常レンズエッジラインの仮想ラインと異なる点の垂直方向高さとして前記幾何学的特性を測定するステップと、
を含む眼用レンズの非円形欠陥を分析するステップをさらに含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項38】
前記幾何学的特性は、異なる点において測定された種々の高さ値を比較するステップと、その後に、前記高さ値が非円形欠陥レンズのユーザ設定上限値を超える場合に、前記レンズを不合格品と判定するステップとを含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項39】
(a)暗視野像内の白いブラブ(X1およびX2)を識別するステップと、
(b)明視野像内の同じ組のブラブ(X1およびX2)を識別するステップと、
(c)前記暗視野像の白いブラブの面積を測定するステップと、
(d)前記白いブラブの周囲の所定面積における白黒画素比を計算するステップと、
を含む、前記眼用レンズ内の泡と前記溶液内の気泡とを区別するために幾何学的特性を分析するステップをさらに含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項40】
前記幾何学的特性は、前記白黒画素比をユーザ設定値と比較するステップと、その後に、前記白黒画素比が前記レンズ内の泡欠陥のユーザ設定値V2を超える場合に、前記レンズを不合格品と判定するステップとを含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項41】
前記幾何学的特性は、前記白黒画素比をユーザ設定値と比較するステップと、その後に、前記白黒画素比が前記溶液内で検出された気泡を示すユーザ設定値V1未満である場合に、前記レンズを合格品として認めるステップとを含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項42】
前記幾何学的特性は、前記白黒画素比をV1とV2との間の値と比較するステップと、その後に、前記白黒画素比がV1とV2との間の範囲内にある場合に、前記レンズをさらに分析するためのカテゴリに分類するステップとを含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項43】
(a)暗視野像内の白いブラブ(X1およびX2)を識別するステップと、
(b)明視野像内の白いブラブ(X1およびX2)を識別するステップと、
(c)欠陥X1、X2について白いブラブの面積を測定および抽出するステップと、
(d)欠陥X1、X2について黒いブラブの面積を測定および抽出するステップと、
(e)欠陥X1、X2について前記黒いブラブ上に前記白いブラブを重ね合わせるステップと、
(f)前記白いブラブの周囲の所定面積における前記白黒画素比を計算するステップと、
を含む、前記眼用レンズ内の泡と前記溶液内の気泡とをさらに区別するために前記幾何学的特性をさらに分析するステップをさらに含む、請求項4に記載のプロセス。
【請求項44】
前記幾何学的特性は、前記白黒画素比をプログラム可能なユーザ設定値と比較するステップと、その後に、前記白黒画素比が前記レンズ内の泡欠陥のユーザ設定値未満である場合に、前記レンズを不合格品と判定するステップとを含む、請求項4に記載のプロセス。
【請求項45】
前記幾何学的特性は、前記白黒画素比をプログラム可能なユーザ設定値と比較するステップと、その後に、前記白黒画素比が、欠陥が前記溶液内の気泡であり、前記レンズ内の泡欠陥ではないことを示すユーザ設定上限値より高い場合に、前記レンズを合格品として認めるステップとを含む、請求項4に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは自動レンズ製造ラインにおいて、濡れた眼用レンズを検査するための検査システムおよび検査方法に関する。検査ユニットは、検査の複数のチャネルを使用して画像を撮影することができるように構成された高解像度画像センサを備えた複数のカメラのシステムを提供する。各々のチャネルは、カスタマイズされた光モジュールを有する少なくとも1つのカメラと、検査される眼用レンズを強調するための照明モジュールとから成る。各チャネルの光モジュールはさらに、検査される欠陥に応じて、暗視野像と明視野像とを実現するために光線を調節するビームスプリッタおよび関連レンズ部品を構成する場合がある。本発明はさらに、特定の欠陥のタイプ用に構成された前記チャネルによって取り込まれた前記画像の検査方法であって、検査品質を向上させる検査方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
眼用レンズは、広く使用されており、大きな需要があることにより、標準的なコンタクトレンズおよび美容用コンタクトレンズの両方で非常に高い品質のレンズを大量に製造する必要がある。一般に、自動製造ラインで製造されたレンズは、予測不可能な問題を引き起こす手動製造システムによって製造されたレンズより信頼性が高いというのが周知の事実である。さらに、検査システムは、高品質の製品を消費者に届けるために、レンズを検査し、一貫して高品質の検査プロセスを維持するための自動製造ラインの不可欠な部分であることは、広く認められている。定期的にパラメータを微調整して、種々の眼用レンズモデルの検査特性を含む構成ファイルを作成することにより、検査システムをさまざまなタイプのレンズに柔軟に適応させることができる。眼用レンズは、視力矯正のためだけでなく、眼用レンズにデザインを印刷することによって眼を外見上美しく見せるために、人間の眼に使用するためのものである。したがって、眼用レンズを確実に欠陥のない製品にするために細心の注意が払われなければならない。これらの眼用レンズは、自動製造ラインで大量に製造される。確実にレンズ1枚1枚を厳しい品質管理基準通りに製造するために、自動検査方法を使用してレンズを包装する直前に検査することが重要である。
【0003】
眼用レンズは、包装する前に透明のレンズホルダに入れられる。各々のホルダは、1枚のレンズを保持し、レンズは、通常、溶液に漬かった状態である。ホルダ内の濡れたレンズは、自動製造ラインにおいてレンズキャリアがコンベヤに沿って移動する時に検査される。製造ラインのスループットを向上させるためには、レンズをできる限り迅速に検査することが重要である。
【0004】
使用されるホルダは、好ましくは、底面がコーティングされていない透明ガラス製にする必要がある。ホルダの底面にコーティングが施されている場合には、背景が一様でない画像になる可能性がある。
【0005】
一般に使用されている濡れた眼用レンズの検査技術は、明視野像、暗視野像、および赤外線領域の照明を使用して撮影された画像を使用する検査技術である。ハロゲンランプ、キセノンランプ、LEDを使用した照明などを使用したさまざまなタイプの照明がある。異なる照明を使用することによって、多くの異なるタイプの欠陥が強調され、そのことにより、撮影された画像で非常に微細なタイプの欠陥を検出しやすくなり、不合格品を最小限に抑えることができる。
【0006】
先行技術の米国特許第6765661号明細書は、欠陥の高品質な検査を提供するために明視野画像法と暗視野画像法とを組み合わせて使用する方法を開示している。しかし、同発明人により後に出願された特許(先行技術の米国特許第7663742号明細書および米国特許第7855782号明細書)から明らかなように、暗視野画像法と明視野画像法のみを組み合わせて使用する方法は、眼用レンズの全てのタイプの欠陥を徹底的に検査するには十分でない。
【0007】
先行技術の米国特許第7855782号明細書および米国特許第7663742号明細書は、サイズの正確度、表面欠陥、裂け目、周囲破断、泡や異物のような内包物、および眼用レンズのエッジの小さな欠陥のような全てのタイプの欠陥を検査するために、明視野画像法または暗視野画像法のいずれかと共に位相差画像法を組み合わせて使用する方法を開示している。
【0008】
上述の発明の先行技術では、光を二次ビームに分離するビームスプリッタおよび他の光学系と共に、単色照明光源が使用されており、二次ビームの一方は位相差画像法に使用され、他方は明視野像法または暗視野像法のいずれかに使用される。位相差画像法と共に明視野画像法または暗視野画像法のいずれかを使用するために連続的に光源を切り替えることによって、眼用レンズを徹底的に検査することができる。この作業は、かなりの時間を要し、照明と外部光との間の寄生効果の影響を受けやすい。さらに、平底面を有するホルダを使用すると、検査される対象物がホルダ内を動き回るので、一貫して対象物のエッジの位置を確認するのが難しくなる。また、焦点深度不足は、眼用レンズの一部の領域における画像の鮮明さに影響を及ぼし、このことがエッジ検出能力ひいては欠陥の検出に影響を及ぼす。
【0009】
したがって、異なる照明波長および異なる偏光の条件下で、検査用の複数のカメラを使用して眼用レンズの複数の高解像度画像を撮影する必要があり、画質を損ねることなく、ユーザが選択した同じ瞬間または異なる瞬間に、照明およびカメラシャッタをトリガすることができる必要がある。これが本発明の目的である。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、過度のスペースを必要とせずに検査ステーションを追加または除去し、対象物を1つの検査ステーションから次の検査ステーションへと移動させる必要性をなくすことにより、検査時間を大幅に減少させ、製造ラインのスループットを向上させるように構成されたシステムアーキテクチャの形態の装置を提供することによって問題を解決する。
【0011】
本発明の一態様では、カスタマイズされた光モジュール(異なる波長用のフィルタを使用してもよいし、使用しなくてもよい)をそれぞれ有する複数のモノクロカメラを使用して、眼用レンズの複数の画像を撮影する装置が提供される。検査される対象物(眼用レンズ)は、各々が異なる波長または異なる偏光用に構成され、時間領域の異なる瞬間または同じ瞬間に照明のストロボ発光がトリガされる複数の照明モジュールによって照明される。
【0012】
本発明の別の態様では、本発明は、カスタマイズされた光モジュール(異なる波長用のフィルタを使用してもよいし、使用しなくてもよい)をそれぞれ有する複数のモノクロカメラを使用して眼用レンズの複数の画像を撮影する方法を提供する。検査される対象物(眼用レンズ)は、各々が異なる波長または異なる偏向用に構成され、時間領域の異なる瞬間または同じ瞬間に照明のストロボ発光がトリガされる複数の照明モジュールによって照明される。
【0013】
本発明の別の態様では、本発明のシステムにより、複数の検査ステーションのカメラから対象物の複数の暗視野像、明視野像、および高コントラスト画像、または異なる方法で照明された対象物の画像を同時に撮影することができる。
【0014】
本発明の別の態様では、本発明のシステムにより、異なる瞬間に関連照明モジュールを選択的にストロボ発光させることで、複数の検査ステーションのカメラから対象物の複数の暗視野像、明視野像、および高コントラスト画像、または異なる方法で照明された対象物の画像を別個に撮影することができる。
【0015】
本発明のさらに別の態様では、本発明は、異なる形態のホルダ内に保持されている対象物の複数の画像を撮影して検査する装置および方法を提供する。
【0016】
本発明のさらに別の態様では、本発明は、印刷された眼用レンズ、色付き眼用レンズ、またはシンプルな透明の眼用レンズである対象物の複数の画像を撮影して検査する装置および方法を提供する。
【0017】
本発明のさらなる詳細および利点は、以下の説明および図面から明らかであろう。
【0018】
本発明の可能な構成を示した添付図面に関して本発明をさらに説明するのが都合がよいであろう。本発明の他の構成も可能であり、したがって、添付図面の特殊性は、本発明の上記説明の一般原理に優先するものとして理解すべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の複数の照明モジュールおよび複数のカメラを有する検査システムを示した図である。
図2】一般的に成形プロセス後の乾いたレンズの検査用の異なるレンズホルダを示した図である。
図3】通常は液体(図示せず)を入れた平底面の別のホルダを示した図である。
図4】本発明の波長1、波長2、および波長3(WL1、WL2、およびWL3)の典型的な照明装置の分光感度のグラフである。
図5】一般に、3つの異なる波長の照明(例えば、650nm、550nm、および450nmの波長の光を発する照明モジュール)によって照明される3つの異なるチャンネルで検査される典型的な欠陥を示した表である。
図6】本発明のシステムによる検査のフローチャートである。
図7】検査フローチャートのステップ102で確認された正常なレンズのエッジを示した図である。
図8】ステップ102のレンズ画像の一部Aのアンラップ処理画像である。
図9図8のアンラップ処理画像から抽出した小さい一部を示した画像である。
図10図9を2値化した後の画像である。
図11】検査フローチャートのステップ102で確認された裏返ったレンズのエッジを示した図である。
図12】ステップ102のレンズ画像の一部Bのアンラップ処理画像である。
図13図12のアンラップ処理画像から抽出した小さい一部を示した画像である。
図14図13を2値化した後の画像である。
図15】正常レンズの暗視野像である。
図16図15の暗視野像の一部Cの拡大図である。
図17】正常レンズの明視野像である。
図18図17の明視野像の一部Eの拡大画像である。
図19図16の画像と図18の画像を重ね合わせた後に得られた画像である。
図20】裏返ったレンズの暗視野像である。
図21図20の暗視野像の一部Dの拡大画像である。
図22】裏返ったレンズの明視野像である。
図23図22の明視野像の一部Fの拡大画像である。
図24図21の画像と図23の画像を重ね合わせた後に得られた画像である。
図25】裂け目の欠陥があるレンズの明視野像である。
図26図25のレンズのエッジ領域のアンラップ処理画像である。
図27】隙間の欠陥があるレンズの画像である。
図28図27のレンズのエッジ領域のアンラップ処理画像である。
図29】隙間の欠陥がある領域の拡大画像である。
図30】二重エッジの欠陥があるレンズの画像である。
図31図30のレンズのエッジ領域のアンラップ処理画像である。
図32】二重エッジの欠陥がある領域の拡大画像である。
図33】非円形の欠陥があるレンズの画像である。
図34図33のレンズのエッジ領域のアンラップ処理画像である。
図35】泡の欠陥のあるレンズの暗視野像である。
図36】泡の欠陥があるレンズの明視野像である。
図37図35および図36の領域X1および領域X2の異なる閾値の画像を示した表である。
図38】X軸に白黒画素比、Y軸にサンプル数を示した分布曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に従って、上記図面を参照しながら好適な実施形態について説明する。
【0021】
本発明のシステムは、複数の照明モジュールを使用して照明された対象物の高解像度画像を撮影するために、複数のカメラおよび光モジュールを使用する。照明モジュールは、様々な波長の照明モジュールであり、また異なる偏光の照明モジュールである場合もある。異なる波長の照明を使用することにより、システムは、画像を撮影する際に、特に、画像撮影時に照明が同時にストロボ発光される、またはトリガされる時に、照明間の寄生効果の影響を受けにくくなる。システムはさらに、カラーフィルタを使用してフィルタ波長以外の全ての他の光の波長を除去する場合がある。取り込み画像間の干渉を防止するこのシステムは、強調された欠陥を含む画像を生成する。したがって、正確度かつ検査速度の点で検査品質を大幅に向上させる高品質画像が得られる。
【0022】
さらに、先行技術のシステムでは、焦点深度が損なわれやすい特徴であることがわかっている。先行技術でわかっているように、浅い焦点深度を使用したシステムによって撮影された画像は、焦点深度の範囲から外れた取り込み画像の領域に見られる微小欠陥の明瞭さが欠如した画像になる。特定の製品のタイプに合わせて光学調整することに依存して、眼用レンズの取り込み画像は、一定の領域では鮮明に見え、他の領域ではぼやけて見える。欠陥の不正確な測定により、欠陥のあるレンズが市場に出回ることになる。さらに、複数のカメラシステムにおいて焦点深度をより深くすることは重要な課題であることがわかった。
【0023】
本発明の光学系は、レンズの曲率にほぼ厳密に一致する焦点深度を有するように設計されている。この湾曲した焦点深度範囲は、レンズの輪郭全体の鮮明な画像を撮影するのに役立つ。ホルダがレンズを保持するのに曲面凹部を有するのか平坦凹部を有するのかに関係なく、レンズ一式に十分に焦点が当たるので、ホルダと共に対象物の位置の確認をより迅速に行うことができる。得られた画像は、ユーザによって視覚化された時またはコンピュータプログラムによって分析された時に、裂け目、泡、切れ目、および非常に低コントラストの欠陥を見えやすく、検出しやすくする。
【0024】
図1に示されているように、本発明のシステムは、「N」個の照明モジュール、「N」個のカメラ、特別に設計されたホルダ、そして、照明モジュールから眼用レンズへ、その後、検査される特徴のタイプに応じて、各々のカメラ用に特別に設計された光モジュールを通して個々のカメラへと照明を方向づけるビームスプリッタを使用する。
【0025】
本発明の好適な実施形態では、照明モジュールは、複数の画像を同時に撮影するために、同時にストロボ発光される。寄生効果を除去するために、適切な波長のフィルタが使用される。システムは、より高い解像度の画像を実現するためにモノクロカメラを使用する。さらに、異なる照明モジュールは、異なる瞬間間隔でストロボ発光される場合があり、複数のカメラは照明ストロボパルスと同期されて画像を撮影する。場合によっては、画像の強度要求に適合させるために、画像を撮影する前に遅延を実行する必要がある。通常、遅延は、照明が最大強度に達するのに要する時間がより遅い場合に、カメラシャッタトリガに組み込まれる。例えば、カメラが照明と同じエッジでトリガされると、シャッタがトリガされる時間に応じて、画像は、ぼやける、または不鮮明になる傾向がある。均一な強度の画像にするために、少なくとも50マイクロ秒だけカメラシャッタのトリガを遅延させ、カメラシャッタがトリガされた後に、光強度が光飽和点に達することができるようにするのが好ましい。この方法では、照明のストロボパルスは、通常、カメラシャッタパルスより長くなるが、この技術により、確実な画像が得られる。照明制御機構は、本発明の範囲外であるので、示されていない。
【0026】
「N2」個のチャンネルの各々の光学系は、対象物の異なる照明特性に対応できるように別個に設計される。照明システムは、異なる波長の発光モジュールを使用して、暗視野像または明視野像を生成するように構成される。照明の選択は、異なる欠陥のタイプに合わせて異なる選択をしなければならない場合がある。このような場合、光の特定の波長および倍率でより強調される特定の欠陥のタイプに対応できるように、カメラおよび関連するカスタマイズ光学系および照明の数を増やさなければならない場合がある。さらに、画像を撮影する方法に関して、特定の欠陥に対して最適な画像を実現するために、別々に撮影するのか、または同時に撮影するのかを判断しなければならない場合がある。
【0027】
代替形態では、モノクロカメラは、低解像度のカラー画像を撮影するためにカラーカメラと置き換えられてよい。取り込まれたカラー画像は、異なる3色で抽出され、これらの3色は、抽出画像内の欠陥を検出するための適切なアルゴリズムを使用してさらに分析される。
【0028】
本発明は、対象物(眼用レンズ)の高正確度で鮮明に焦点が合わされた画像を生成することができる複数の撮像装置および照明を使用する撮像システムを目的とすることに留意されたい。この目的が実現されることによって、前記画像は、眼用レンズの微小な特徴または欠陥(裂け目、切れ目、泡、内包物、破断、変形、寸法欠陥、異物汚染を含むが、これらに限定されない)を効率的に検出するのに適した画像になる。
【0029】
本発明のシステムにより、複数の明視野像、暗視野像、および高コントラスト画像を撮影することができる。検査される眼用レンズは、ガラスホルダ内に保持され、液体中に浮遊した状態である。ホルダは、撮影される画像の矛盾を防ぐために底面がコーティングされていない透明ガラス製であるのが好ましい。底面がコーティングされたガラスホルダが使用される場合に、不均一な画像が生成される。このため、底面にコーティングが塗布されていない透明ガラスホルダを使用することが推奨される。眼用レンズが液体中に浮遊した状態で収められているホルダの設計に関係なく、光学系は、眼用レンズの曲率に厳密に一致する焦点深度を有するように設計される。例えば、レンズのホルダが14mmの内半径を有し、レンズが8mmの半径を有する場合、光学系は、半径11mmの湾曲した焦点深度を有するように設計され、そのことにより、確実にレンズ全体に焦点が合う。湾曲した焦点深度により、レンズが光軸の中心からわずかにずれたとしてもレンズの位置を確認することができる。
【0030】
眼用レンズが位置決めされるホルダには、液体(例えば、水、または生理食塩水、または同様の透明溶液)が入っている。ホルダは、通常、ホルダ内の眼用レンズが底部で自然と中心に位置するように設計されている。レンズを保持するのに複数のタイプのホルダが使用されるが、湾曲輪郭の焦点深度を光モジュールに設計することにより、レンズ全体に焦点が合う。ホルダは、独立型の器具として使用される場合もあれば、または複数のホルダを含む大型装置の一部とすることもできる。
【0031】
本発明のさらに別の実施形態では、図2に示されているように、ホルダはレンズを上下逆に保持する。該ホルダ上にレンズが位置決めされる状態は、レンズを製造するのに使用される金型でよく見られる。本発明の別の実施形態では、標準的なホルダは、検査システムの下にレンズを位置決めするのに使用される。ホルダは、図3に示されているような平底面を有し、レンズはホルダ内の液体(図示せず)内で浮遊した状態である。
【0032】
図1を参照すると、検査システムは、光モジュール(番号5、6、7〜N2)にそれぞれ取り付けられた複数のカメラ(番号1、2、3〜N)から成る。カメラは、高解像度の画像を撮影するためにモノクロカメラであるのが好ましい。5、6、7〜Nのセンサの代わりに、カラーカメラが使用される場合もあるが、同じ解像度のモノクロカメラと比べて画像解像度が低くなる。
【0033】
当業者は、検査の目的に合わせて同じシステムの中でモノクロカメラおよびカラーカメラの両方を使用してよいことは理解するであろう。光モジュール5、6、7〜N2の構成は、撮影される欠陥のタイプおよび使用される照明のタイプに応じて変わる。
【0034】
照明モジュール14、15、16〜N5は、図5の表に示されるように、光の異なる波長(WL1、WL2、WL3など)が異なる欠陥を強調するように構成される。さらに、新しいタイプの欠陥を検出することができるように、これより多くの該照明モジュールを適切な光モジュールと共に組み込むことができる。基本的に、検査システムは、必要に応じて、要件に基づいて検査の新しいチャンネルを追加することによって構成されてよい。ビームスプリッタ11、12、13〜N4は、照明モジュール14、15、16〜N5から発せられた特定の波長の光を、ホルダ17内で浮遊している眼用レンズ18に向けて偏向させる。ビームスプリッタ8、9、10〜N3は、検査されているレンズ18を透過した光を、カスタマイズされた光モジュール5、6、7〜N2それぞれに向けて偏向させる。最後に、光モジュール5、6、7〜N2により調節された後、カメラ1、2、3〜Nそれぞれによって画像が撮影される。つまり、眼用レンズの異なる特徴を検査するのに合わせて異なる特性を含むN枚の画像が撮影される。
【0035】
上述したように、上述のホルダ17は、単色ガラス製であり、画像の歪曲を最小限に抑えるために表面にはコーティングが施されていない。
【0036】
好適な実施形態では、液体(図示せず)に漬かった状態の眼用レンズ18を入れたホルダ17は、検査されている眼用レンズの輪郭と一致する湾曲底面を有する。
【0037】
別の実施形態では、図2に示されているように、ホルダは、レンズ成形プロセスの直後の乾燥した状態のレンズを検査するのに適したひっくり返したタイプのホルダ19とすることができる。
【0038】
さらに別の代替形態では、図3に示されているように、ホルダ20は、同様に濡れた状態のレンズの検査に適した平面タイプの底面を有することができる。
【0039】
図4は、3つの異なる波長の光を発する3つの照明モジュールの分光感度を示した図である。WL1は、400nm〜500nmの範囲である。典型的には、WL1は430nmの波長に構成される。WL2は、500nm〜600nmの範囲である。典型的には、WL2は550nmの波長に構成される。WL3は、600nm〜700nmの範囲である。典型的には、WL3は650nmの波長に構成される。
【0040】
照明モジュール14から発せられる光は、400nm〜500nmの波長WL1の光である。典型的には、WL1は450nmの波長に構成される。この光は、散乱光線と反射光線とから成り、暗視野像を生成する。暗視野像は、非常に低コントラストの欠陥を強調し、場合によっては、コントラストのない欠陥も強調される。照明モジュール14から発せられた光は、ビームスプリッタ11によって、ホルダ17内の液体に漬かった状態の眼用レンズ18に向けて偏向される。ビームスプリッタ8は、眼用レンズからの光を、カメラ1を含む撮像システムの光学フィルタ5に向けて偏向させる。図5の表内の列4は、波長WL1の光を使用する第1の検査チャンネルで検査される欠陥をまとめたものである。
【0041】
照明モジュール15から発せられる光は、500nm〜600nmの波長WL2の光である。典型的には、WL2は、550nmの波長に構成され、欠陥を強調して高コントラストの画像を生成する。カメラ2は、波長WL2のライトヘッド15による照明を受けて画像を撮影するために狭開口で設定される。小開口では、眼用レンズの照明は比較的狭い角度で入射され、このことにより、ほとんどの欠陥を十分なコントラストで撮影することができる。照明モジュール15からの光は、ビームスプリッタ12によって、ホルダ17内の液体に漬かった状態の眼用レンズ18に向けて偏向される。ビームスプリッタ9は、眼用レンズからの光を、カメラ2を含む撮像システムの光学フィルタ6に向けて偏向させる。図5の表内の列3は、波長WL2の光を使用する第2の検査チャンネルで検査される欠陥をまとめたものである。
【0042】
照明モジュール16は、600nm〜700nmの波長WL3に構成される。典型的には、WL3は650nmの波長に構成される。この波長の光は、光学系が光線を眼用レンズに通過させて平行光線、集束光線、または発散光線を生成する時に、欠陥を強調し、明視野像を生成する。照明モジュール16からの光は、ビームスプリッタ13によって、ホルダ17内の液体に漬かった状態の眼用レンズ18に向けて偏向される。ビームスプリッタ10は、眼用レンズからの光を、カメラ3を含む撮像システムの光モジュール7に向けて偏向させる。波長WL3の光は、幅の広い光束を有し、視野全体にわたって均一な輝度の画像を生成する。この光を使用した明視野画像法は、より広い視野にわたって均一な画像を生成する。照明強度が均一であるので、レンズ全体にある欠陥が容易に測定される。波長WL3の光によって生成された画像は液体内の眼用レンズの位置の影響を受けず、眼用レンズの位置ずれに関係なく眼用レンズの良質な画像が撮影されることに留意されたい。図5の表内の列2は、波長WL3の光を使用する第3の検査チャンネルによって検査可能である欠陥をまとめたものである。
【0043】
当業者は、異なる波長の光を使用した評価を実施してもよく、図5に示されている表と同様の表を作成することができることを理解するであろう。その研究に基づいて、関連照明モジュール、適切な光モジュール、波長フィルタ、および関連カメラを選択して検査チャンネルを設計することができる。システムのアーキテクチャにより、検査チャンネルを容易に追加または削除することができる。
【0044】
好適な照明モジュールの例は、発光ダイオードまたはショートアーク型キセノンフラッシュランプである。ハロゲンランプのような他の照明モジュールを使用してもよい。この場合、最適な画質を実現するために適切なフィルタが必要である。
【0045】
本発明の別の実施形態では、検査チャンネルは、赤外スペクトルで動作する照明モジュールを使用して画像を撮影するための専用のチャンネルとしてよい。
【0046】
本発明の別の実施形態では、印刷品質のような特徴を検査するためにさらに別の検査チャンネルが構成されてよい。
【0047】
本発明の好適な実施形態では、照明モジュールは全て同時にストロボ発光され、全てのカメラは対応する光の設定通りに異なる画像を同時に撮影する。
【0048】
本発明の代替形態では、照明モジュールは、時間領域の異なる瞬間にストロボ発光され、対応するカメラは、光の設定通りに画像を撮影する。
【0049】
本発明のさらに別の実施形態では、使用される照明モジュールは、検査される欠陥のタイプに応じて、選択的に電源が切られる。
【0050】
照明コントローラ(図示せず)は、ストロボの強度およびパルス持続時間を変えるように制御されるCPUである。CPUはさらに、一貫した画質が得られるように、カメラシャッタに対するトリガパルス同期のタイミングを制御する。明確にするために、ストロボ発光機構および画像取込技術は、ここでは説明しない。画像取込技術は、画像をコンピュータメモリに移す十分に確立された技術であるためである。その後、画像は、さらに画像処理するために、異なる記憶場所に移動される、またはコピーされる。
【0051】
図6について説明する。図6は、検査プロセスのフローチャートである。ソフトウェアアルゴリズムは、(最初に)連続ステップ100からメモリ内の画像の処理(ステップ1ごとに)を開始する。このステップでは、まずレンズホルダが検出され、その後、ステップ101でレンズエッジが検出される。ソフトウェアがホルダ内のレンズを検出することができた場合、検査の順序はステップ102に移る。レンズエッジが見つけられない場合、順序はステップ103に移り、エラーメッセージを表示して、ステップ120で終了する。ステップ102では、エッジ発見アルゴリズムによってレンズ位置が確認され、その後、レンズの有無が決定される。ステップ102では、レンズエッジ位置が確認され、その位置が記録される。図7では、レンズエッジは破線の外円で示されている。
【0052】
第1の方法は、レンズ構造およびレンズの特性に依存する。この方法では、ステップ104で、図7に示されているようにレンズエッジからレンズの同心領域が選択され、さらに処理するためにアンラップ処理が行われる。レンズの中心に対して外円からプログラム可能な距離で外円に対して第2の同心円が描かれる。その後、2つの同心円内の領域は、図8に示されているように、アンラップ処理される。アンラップ処理画像は縮尺通りでないことに留意されたい。画像のアンラップ処理部分を使用して、エッジの多くの欠陥が検出される。
【0053】
次のステップ105で、裏返ったレンズの検査が行われる。小さい領域Aは、ユーザによってプログラムされた領域として選択される。例えば、領域Aは抽出され(図9)、二値化技術を使用して処理されてよい。図10に示されている結果画像には、白い垂直線が示されている。
【0054】
図11に示されている別の画像は、図7と同じ方法で、さらに領域Bのように別の領域を選択して処理され、二値化される。図14に示されている結果の二値化画像には、水平線が示されている。
【0055】
レンズ構造は信号対雑音比が低い特性であることから、正常レンズは、二値化画像では垂直線を有し、裏返ったレンズは、二値化画像では水平線を有するという構造になる。ステップ105において、二値化画像の線の向きに基づいて決定がなされる。レンズが裏返ったレンズであると決定された場合、順序はステップ109に移る。レンズが正常である、または裏返っていないことがわかった場合、順序はステップ106に移り、次の欠陥が検出される。
【0056】
裏返ったレンズを検出するための第2の方法について説明する。図15は、正常レンズの暗視野像を示している。図16は、図15のレンズの部分Cの拡大画像を示している。レンズのエッジは、白い太曲線で示されている。図17は、同じレンズの明視野像を示している。図18は、図17の明視野像の部分Eの拡大画像を示している。図から明らかなように、明視野像の黒いエッジは、図16の暗視野像の白いエッジより太い。図18の画像を図16の画像と重ねると、図19の得られた画像では、細く白いエッジの後ろに暗いエッジが示される。
【0057】
図20は、裏返ったレンズの暗視野像であり、図21は、図20のレンズの部分Dの拡大画像である。エッジは、正常レンズの図16の画像とかなり似た白いエッジである。さらに、図22は、裏返ったレンズの明視野像であり、図23は、図22のレンズの部分Fの拡大画像である。図23の明視野像の黒いエッジは、図18の正常レンズの明視野像の暗いエッジと比べて細い。図23の画像と図21の画像を重ねると、図24の得られた画像では、白いエッジの後ろに細く黒い線が示される。裏返ったレンズの場合に見られる黒いエッジが白いエッジまで広がらないという現象は、正常レンズと裏返ったレンズとの違いを決定するために、検査される重要な特徴である。多くの異なるレンズサンプルを評価した後、白いエッジ幅および黒いエッジ幅を使用すれば閾値パーセンテージが得られることがわかった。このパラメータは、正常レンズと裏返ったレンズとを正確に検出するのに使用することができる。
【0058】
レンズが正常であると検査された場合、検査はステップ106に移り、レンズエッジに関連した全ての欠陥が検査される。
【0059】
図25は、裂け目の欠陥のある眼用レンズの画像を示している。この画像において、レンズおよびレンズエッジ位置を確認してアンラップ処理するプロセスが、図6に示されているフローチャートのステップ102およびステップ104で説明されているステップと同様に行われる。画像をアンラップ処理する際に、ソフトウェアは、レンズエッジに対する裂け目L1、L2の高さ(図26)をチェックする。ユーザ定義の欠陥基準に基づいて、プログラムはレンズ裂け目が欠陥であるか否かを決定する。
【0060】
図27は、隙間の欠陥がある眼用レンズの別の画像を示している。この画像において、エッジを抽出して、同心領域をアンラップ処理するという同じプロセスが実行される。アンラップ処理画像は、図28に示されている。図29には、隙間欠陥の拡大領域が示されており、図28には、アンラップ処理画像の欠陥の位置が示されている。この場合も、ユーザ定義の欠陥基準に基づいて、プログラムはレンズが欠陥品であるか否かを決定する。
【0061】
図30は、二重エッジの眼用レンズの画像を示している。図32の拡大画像および図31のアンラップ処理画像には、二重エッジレンズを示す2本の黒い線の間に白い線が示されている。この黒い線の間に白い線がある現象は、二重エッジ欠陥として決定される。さらに、レンズが欠陥品であるか否かを決定するために、この欠陥の寸法をユーザ設定の欠陥基準と比較する処理が行われる。
【0062】
図33および図34は、非円形レンズの画像を示している。エッジ位置の確認およびレンズ領域のアンラップ処理のプロセスは、ステップ102およびステップ104通りに行われる。線のエッジから非円形領域までの距離が測定され、その後、ユーザ定義の不合格基準と比較されて、レンズが不合格であるか否かが決定される。
【0063】
いくつかの処理方法について説明したが、当業者は、ソフトウェアがエッジにある他のタイプの内包物を測定するように構成可能であることは理解するであろう。エッジ欠陥検査が完了すると、順序はステップ107に移り、プログラムはステップ106で欠陥が発見されたか否かをチェックする。発見された場合、順序はステップ109へと移り、次にステップ120へと進む。
【0064】
ステップ107で欠陥が見つからなかったと判断された場合、順序はステップ108に移る。レンズ内の欠陥を検出するプロセスはここで開始される。後述の検査方法は、レンズ内で見つかった泡、および典型的には、レンズ表面で見つかった気泡に関する検査方法である。気泡が原因である過度の不合格品を減らすために、新規な方法を以下で説明する。当業者は、プロセスステップを若干変更した同じアルゴリズムを使用して、基本アルゴリズムは変更せずに、ほとんどのレンズ内の欠陥を検出することができることは理解するであろう。
【0065】
図35および図36は、レンズの暗視野像を示しており、図36は、図35の同じレンズの明視野像を示している。分析後、2つの点、X1およびX2が選択されている。2つの領域X1およびX2は、異なる閾値で二値化され、図37に示されている表では合計4つの画像が記録されている。X1の画像2に示されている白い領域は、画像2のX2の白い領域より大きい。しかし、X1の画像1に示されている黒い領域は、X2の画像1の黒い領域に比べて小さい。同じことが画像3および画像4にも言える。いくつかの実験を行った後に、黒い領域に対する白い領域の割合が35%より大きい場合、レンズ内に泡が存在するということがわかった。しかし、黒い領域に対する白い領域の割合が25%未満の場合、気泡がその位置に存在する。25%〜35%の割合であればどんな割合であっても、さらに処理(例えば、オーバーレイ方法であるが、これに限定されない)が必要な場合がある。オーバーレイ方法は、2つの画像(この場合、列1および列2の画像)を重ね合わせる方法を含む。泡がレンズ内にある欠陥X1の場合、得られる画像は、白い領域が黒い領域とほぼ融合していることを示している。しかし、泡が実際に気泡であるX2の場合に、X2の列5に示されているオーバーレイ画像では、白い領域が黒いリングで囲まれている。オーバーレイ方法は、レンズ内に存在する可能性のある非常に微細なレンズ内の泡を検出するための高度な方法である。
【0066】
ステップ108では、他の欠陥を決定するためにさらに処理が行われるが、ここでは詳細に説明しない。ステップ110で、プログラムは、ステップ108の検査で欠陥が発見されたか否かをチェックする。発見された場合、順序はステップ109に移り、さらにステップ120へと移り、プログラムを終了する。ステップ110で欠陥が発見されなかったと判断された場合、プログラムシーケンスはステップ111に移り、プログラムを終了する前に検査済み眼用レンズを合格品として通過させる。
【0067】
本発明は、被検査物(眼用レンズ)が所定経路に沿って搬送され、検査用の検査ステーションの下に位置決めされる自動製造ラインで使用されるのが好ましい。好ましくは、眼用レンズは、検査システムの中を移動している。しかし、眼用レンズは、検査プロセスで固定位置での検査が必要な場合は、固定位置で検査されてもよい。
【0068】
上記説明では、本発明は、特定の実施形態に関して説明されている。しかし、本発明のより広範な精神および範囲から逸脱せずに、当業者によって、上記の実施形態に種々の修正および変更が加えられてもよいことは明らかであろう。例えば、その実施形態の1つは、複数の照明モジュールと共に単色カメラまたはモノクロカメラを使用する形態で、異なる時間領域で同じ物体の複数の画像を撮影するように構成されてよい。したがって、明細書および図面は、限定的な意味ではなく例示的なものとしてとらえるべきである。
【0069】
上述の方法は、全ての種類の眼用レンズ、好ましくは、ソフトコンタクトレンズである従来のハイドロゲルコンタクトレンズ(ポリHEMAホモポリマーもしくはコポリマー、PVAホモポリマーもしくはコポリマー、または架橋ポリエチレン・グリコールもしくはポリシロキサンハイドロゲルを含む)を検査するのに適した方法である。
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