特許第6654157号(P6654157)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654157
(24)【登録日】2020年1月31日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/12 20060101AFI20200217BHJP
【FI】
   G01L9/12
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-5683(P2017-5683)
(22)【出願日】2017年1月17日
(65)【公開番号】特開2018-115903(P2018-115903A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】栃木 偉伸
(72)【発明者】
【氏名】石原 卓也
(72)【発明者】
【氏名】添田 将
(72)【発明者】
【氏名】関根 正志
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第2880798(JP,B2)
【文献】 特許第2569293(JP,B2)
【文献】 特開2001−356062(JP,A)
【文献】 特許第4014006(JP,B2)
【文献】 特許第3339565(JP,B2)
【文献】 特許第6568484(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L9/12
本件出願を優先基礎とする国際特許出願PCT/JP2017/046938の踏査結果が利用された。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台の表面から離間して前記基台と向かい合う対向面を有するダイアフラムと、
前記ダイアフラムの前記基台と向かい合う対向面のうち前記ダイアフラムが変位可能とされている可動領域の内側に設けられた第1電極と、
前記基台の表面に設けられて前記第1電極と向かい合う第2電極と、
前記ダイアフラムの前記対向面のうち前記可動領域の外側に凸状に形成され前記ダイアフラムの変位が規制されている参照領域に設けられた第1参照電極と
記第1参照電極に向かい合う前記基台の表面であり、前記可動領域の外側に凸状に形成され前記ダイアフラムの変位が規制されている参照領域に設けられた第2参照電極と
を備えることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
請求項1記載の圧力センサにおいて、
前記ダイアフラムの前記対向面の上の前記第1電極の周囲に設けられて前記第1参照電極に接続された第3参照電極と、
前記基台の表面に設けられ、前記第2参照電極に接続されて前記第3参照電極に向かい合う第4参照電極と
を備え、
前記第1電極と前記第3参照電極および前記第2電極と前記第4参照電極の少なくとも一方は電気的に絶縁され、
前記第3参照電極の少なくとも一部は、前記ダイアフラムの前記可動領域に配置されている
ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項3】
請求項1または2記載の圧力センサにおいて、
前記第1参照電極と前記第2参照電極との間の容量を基準とし、前記ダイアフラムの変位による前記第1電極と前記第2電極と容量変化を圧力値に変換して出力するように構成された圧力値出力部を備える
ことを特徴とする圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量の変化を検出することで圧力を計測する圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量式の隔膜真空計などの圧力センサは、ダイアフラム(隔膜)を含むセンサチップを測定対象のガスが流れる配管などに取り付けて、圧力を受けたダイアフラムのたわみ量、すなわち変位を静電容量値に変換し、静電容量値から圧力値を出力する。この圧力センサは、ガス種依存性が少ないことから、半導体設備をはじめ、工業用途で広く使用されている(特許文献1,特許文献2参照)。
【0003】
上述した隔膜真空計などの圧力センサのセンサチップは、図10に示すように、測定対象からの圧力を受けるダイアフラム302と、平面視中央に凹部を有し、ダイアフラム302を支持する支持部301aを有する基台301とを有する。ダイアフラム302と基台301とは容量室303を形成する。支持部301aによって支持されたダイアフラム302のうち基台301と離間した可動領域302aは、基台301の方向に変位可能となる。ダイアフラム302と基台301は、例えばサファイアなどの絶縁体から構成されている。
【0004】
また、圧力センサのセンサチップは、ダイアフラム302の可動領域302aに形成された可動電極304と、基台301の上に形成されて可動電極304に向かい合う固定電極305とを備える。また、圧力センサのセンサチップは、ダイアフラム302の可動領域302aにおいて可動電極304の周囲に形成された可動参照電極306と、固定電極305の周囲の基台301の上に形成され、可動参照電極306に向かい合う固定参照電極307とを備える。
【0005】
以上のように構成されたセンサチップでは、可動電極304と固定電極305とで容量が形成される。ダイアフラム302が外部より圧力を受けて中央部が基台301の方向に反れば、可動電極304と固定電極305との間隔が変化し、これらの間の容量が変化する。この容量変化を検出すれば、ダイアフラム302に受けた圧力を検出することができる。
【0006】
また、可動参照電極306と、固定参照電極307との間にも容量が形成される。ただし、可動参照電極306は、支持部301aに近い所に設けられているため、ダイアフラム302の反りによる変位量は、より中央部に配置された可動電極304より小さい。従って、固定電極305と可動参照電極306との間の容量変化を基準として固定電極305と可動電極304との間の容量変化をとらえることで、ダイアフラム302の変位量がばらつきを抑制して検出できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−003234号公報
【特許文献2】特開2000−105164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前述したような半導体装置の製造プロセスでは、半導体チップの微細化が進んでおり、圧力についても高い精度の計測が要求されている。これに伴い、従来の圧力センサでは、精度が不十分になることも生じている。
【0009】
例えば、外部からの熱による熱応力の影響を受け難くする構造とすることで、より高い測定精度を得る技術が提案されている(特許文献1参照)。また、より安価に入手できるR面としたサファイアから基台およびダイアフラムを構成する場合、可動電極を、サファイアのC軸投影面方向に延在している長方形に形成することで、より高い測定精度を得る技術が提案されている(特許文献2参照)。
【0010】
近年、半導体製造プロセスでは、より小さな圧力でより高い精度の圧力計測が要求されている。しかしながら従来の技術では、受圧したダイアフラム302の反りにより、可動参照電極306と固定参照電極307との間の容量も変化する。このように、従来では、基準とする容量も変化するため、上述したより高い精度による圧力計測の要求に応えられていないという問題があった。
【0011】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、より小さな圧力においてもより高い精度で圧力計測できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る圧力センサは、基台と、基台の表面から離間して基台と向かい合う対向面を有するダイアフラムと、ダイアフラムの基台と向かい合う対向面のうちダイアフラムが変位可能とされている可動領域の内側に設けられた第1電極と、基台の表面に設けられて第1電極と向かい合う第2電極と、ダイアフラムの対向面のうち可動領域の外側のダイアフラムの変位が規制されている参照領域に設けられた第1参照電極と、基台の表面に設けられて第1参照電極に向かい合う第2参照電極とを備える。
【0013】
上記圧力センサにおいて、ダイアフラムの対向面上の第1電極の周囲に設けられて第1参照電極に接続された第3参照電極と、基台の表面に設けられ、第2参照電極に接続されて第3参照電極に向かい合う第4参照電極とを備え、第1電極と第3参照電極および第2電極と第4参照電極の少なくとも一方は電気的に絶縁され、第3参照電極の少なくとも一部は、ダイアフラムの可動領域に配置されているようにしてもよい。
【0014】
上記圧力センサにおいて、第1参照電極と第2参照電極との間の容量を基準とし、ダイアフラムの変位による第1電極と第2電極と容量変化を圧力値に変換して出力するように構成された圧力値出力部を備える。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、ダイアフラムと基台との間隔が変化しない参照領域を設け、参照領域に参照電極を設けるようにしたので、より小さな圧力においてもより高い精度で圧力計測できるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施の形態1における圧力センサの構成を示す模式的な断面図である。
図2図2は、本発明の実施の形態1における圧力センサの構成を示す模式的な断面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態1における圧力センサの一部構成を示す平面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態1における圧力センサの一部構成を示す平面図である。
図5図5は、本発明の実施の形態2における圧力センサの構成を示す模式的な断面図である。
図6図6は、本発明の実施の形態2における圧力センサの構成を示す模式的な断面図である。
図7図7は、本発明の実施の形態2における圧力センサの一部構成を示す平面図である。
図8図8は、本発明の実施の形態2における圧力センサの一部構成を示す平面図である。
図9図9は、本発明の他の実施の形態における圧力センサの他の一部構成を一部破断して示す斜視図である。
図10図10は、隔膜真空計の検出部の一部構成を一部破断して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0018】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について図1,2,3,4を参照して説明する。図1図2は、本発明の実施の形態1における圧力センサ(センサチップ)の構成を示す模式的な断面図である。また、図3図4は、本発明の実施の形態1における圧力センサの一部構成を示す平面図である。図1は、図3のaa’線の断面を示している。また、図2は、図3の、bb’線の断面を示している。
【0019】
この圧力センサは、基台101、ダイアフラム102、可動電極(第1電極)104、固定電極(第2電極)105、を備える。実施の形態1では、受圧部となるダイアフラム102は、ダイアフラム基板111の所定領域に設けられている。また、ダイアフラム102は、ダイアフラム基板111に設けられた支持部112によって、基台101の上に支持されている。支持部112は、ダイアフラム102の周囲を取り囲むように配置されている。また、ダイアフラム102は、可動領域121で基台101と離間して配置されている。また、ダイアフラム102は、基台101と向かい合う対向面を有している。例えば、基台101,ダイアフラム基板111は、平面視正方形とされている。また、ダイアフラム102は、平面視円形とされている。
【0020】
ダイアフラム基板111の支持部112と基台101とは、可動領域121の外側の接合領域113で接合されている。ダイアフラム102は、基台101と向かい合う対向面のうちダイアフラム102が変位可能とされている可動領域121を備える。ダイアフラム102は、可動領域121で基台101の平面の法線方向に変位可能とされている。ダイアフラム102が測定対象からの圧力を受けると、可動領域121が変位する。
【0021】
基台101およびダイアフラム基板111は、例えばサファイアやアルミナセラミックなどの絶縁体から構成されている。なお、基台101の方に、支持部を設けてもよい。可動領域121におけるダイアフラム102と基台101との間には、容量室103が形成される。容量室103は、例えば、真空とされている。
【0022】
ダイアフラム102の基台101と向かい合う対向面のうちダイアフラム102が変位可能とされている可動領域121の内側に、可動電極104が設けられている。また、固定電極105は、基台101の表面に設けられて可動電極104と向かい合っている。なお、可動電極104および固定電極105は、容量室103の内部に配置されていることになる。
【0023】
可動電極104と固定電極105とは、容量を形成する。この容量は、ダイアフラム102の可動領域121が変位する(撓む)ことで、変化する。よく知られているように、静電容量式の圧力センサは、固定電極105と可動電極104との間に形成される容量の変化により、ダイアフラム102の受圧領域(可動領域121)で受けた圧力を測定する。
【0024】
また、実施の形態1における圧力センサは、ダイアフラム102の対向面のうち可動領域121の外側のダイアフラム102の変位が規制されている参照領域122に第1参照電極106を設けている。また、実施の形態1における圧力センサは、基台101の表面に、第1参照電極106に向かい合う第2参照電極107を設けている。
【0025】
例えば、参照領域122は、平面視で可動領域121の中心より離れる方向に、可動領域121の周縁部から凸状に形成されている。実施の形態1では、可動領域121の周縁部の円周上に等間隔に4つの参照領域122を設けている。ダイアフラム102が受圧して可動領域121が変位しても、参照領域122においては、ダイアフラム102と基台101との間隔がほとんど変化しない。
【0026】
言い換えると、受圧によりダイアフラム102が変位する領域が可動領域121である。一方、受圧によりダイアフラム102が変位しない領域が参照領域122である。参照領域122は、可動領域121の外側に部分的に設けられているが、これ以外の領域は、支持部112が存在している。なお、参照領域122のダイアフラム102と基台101との間には、参照室108が形成される。参照室108は、容量室103と連続している。
【0027】
実施の形態1では、図3図4に示すように、平面視で回転角が90°ずつ異なる点対称の位置関係となる4カ所に参照領域122を配置している。また、各々の参照領域122に第1参照電極106を配置し、これに向かい合って第2参照電極107を配置している。
【0028】
また、この圧力センサは、圧力値出力部110を備える。圧力値出力部110は、第1参照電極106と第2参照電極107との間の容量を基準とし、ダイアフラム102の反り(変位)による可動電極104と固定電極105との間の容量変化を検出する。圧力値出力部110は、検出した容量変化を、設定されているセンサ感度を用いて圧力値に変換して出力する。
【0029】
実施の形態1によれば、ダイアフラム102が受圧しても、第1参照電極106と第2参照電極107との間隔はほとんど変化せず、これらの間の容量はほとんど変化しない。このように、実施の形態1によれば、基準とする容量が受圧によりほとんど変化しない。
【0030】
これにより、可動電極104と固定電極105と容量変化と、第1参照電極106と第2参照電極107とによる容量との差は、参照電極間も容量が変化してしまう場合よりも大きくなり、センサ感度が向上する。この結果、より小さな圧力であっても、より高い精度で圧力が計測できるようになる。
【0031】
なお、可動電極104の一部には、引き出し配線205の一端が電気的に接続している。また、引き出し配線205の他端には、端子部206が電気的に接続している。端子部206は、接合領域113に設けられている。引き出し配線205は、容量室103より接合領域113にかけて引き出されている。端子部206は、基台101に設けられた図示しない貫通配線に電気的に接続し、貫通配線は、基台101裏面の図示しない外部端子に電気的に接続する。
【0032】
また、第1参照電極106の一部には、引き出し配線207の一端が電気的に接続している。第1参照電極106の一部に接続する引き出し配線207の部分は、図2においては省略している。引き出し配線207の他端には、端子部208が電気的に接続している。端子部208は、接合領域113に設けられている。引き出し配線207は、容量室103より接合領域113にかけて引き出されている。端子部208は、基台101に設けられた図示しない貫通配線に電気的に接続し、貫通配線は、基台101裏面の図示しない外部端子に電気的に接続する。
【0033】
固定電極105の一部には、引き出し配線201の一端が電気的に接続している。また、引き出し配線201の他端には、端子部202が電気的に接続している。端子部202は、接合領域113に設けられている。引き出し配線201は、容量室103より接合領域113にかけて引き出されている。端子部202は、基台101に設けられた図示しない貫通配線に電気的に接続し、貫通配線は、基台101裏面の図示しない外部端子に電気的に接続する。
【0034】
また、第2参照電極107の一部には、引き出し配線203の一端が電気的に接続している。引き出し配線203の他端には、端子部204が電気的に接続している。端子部204は、接合領域113に設けられている。引き出し配線203は、容量室103より接合領域113にかけて引き出されている。端子部204は、基台101に設けられた図示しない貫通配線に電気的に接続し、貫通配線は、基台101裏面の図示しない外部端子に電気的に接続する。
【0035】
なお、可動電極104と第1参照電極106および固定電極105と第2参照電極107の少なくとも一方が、電気的に絶縁分離されていればよい。従って、可動電極104と第1参照電極106とが電気的に接続されている構成としてもよい。この場合、引き出し配線205および引き出し配線207の一方のみを外部端子へと接続する構成としてもよい。
【0036】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について図5,6,7,8を参照して説明する。図5図6は、本発明の実施の形態2における圧力センサ(センサチップ)の構成を示す模式的な断面図である。また、図7図8は、本発明の実施の形態2における圧力センサの一部構成を示す平面図である。図5は、図7のaa’線の断面を示している。また、図6は、図7の、bb’線の断面を示している。
【0037】
この圧力センサは、基台101、ダイアフラム102、可動電極(第1電極)104、固定電極(第2電極)105、を備える。実施の形態2では、受圧部となるダイアフラム102は、ダイアフラム基板111の所定領域に設けられている。また、ダイアフラム102は、ダイアフラム基板111に設けられた支持部112によって、基台101の上に支持されている。支持部112は、ダイアフラム102の周囲を取り囲むように配置されている。また、ダイアフラム102は、可動領域121で基台101と離間して配置されている。また、ダイアフラム102は、基台101と向かい合う対向面を有している。例えば、基台101,ダイアフラム基板111は、平面視正方形とされている。また、ダイアフラム102は、平面視円形とされている。
【0038】
ダイアフラム基板111の支持部112と基台101とは、可動領域121の外側の接合領域113で接合されている。ダイアフラム102は、基台101と向かい合う対向面のうちダイアフラム102が変位可能とされている可動領域121を備える。ダイアフラム102は、可動領域121で基台101の平面の法線方向に変位可能とされている。ダイアフラム102が測定対象からの圧力を受けると、可動領域121が変位する。
【0039】
基台101およびダイアフラム基板111は、例えばサファイアやアルミナセラミックなどの絶縁体から構成されている。なお、基台101の方に、支持部を設けてもよい。可動領域121におけるダイアフラム102と基台101との間には、容量室103が形成される。容量室103は、例えば、真空とされている。
【0040】
ダイアフラム102の基台101と向かい合う対向面のうちダイアフラム102が変位可能とされている可動領域121の内側に、可動電極104が設けられている。また、固定電極105は、基台101の表面に設けられて可動電極104と向かい合っている。なお、可動電極104および固定電極105は、容量室103の内部に配置されていることになる。
【0041】
可動電極104と固定電極105とは、容量を形成する。この容量は、ダイアフラム102の可動領域121が変位する(撓む)ことで、変化する。よく知られているように、静電容量式の圧力センサは、固定電極105と可動電極104との間に形成される容量の変化により、ダイアフラム102の受圧領域(可動領域121)で受けた圧力を測定する。
【0042】
また、実施の形態2における圧力センサは、ダイアフラム102の対向面のうち可動領域121の外側のダイアフラム102の変位が規制されている参照領域122に第1参照電極106を設けている。また、実施の形態2における圧力センサは、基台101の表面に、第1参照電極106に向かい合う第2参照電極107を設けている。
【0043】
例えば、参照領域122は、平面視で可動領域121の中心より離れる方向に、可動領域121の周縁部から凸状に形成されている。実施の形態2では、可動領域121の周縁部の円周上に等間隔に4つの参照領域122を設けている。ダイアフラム102が受圧して可動領域121が変位しても、参照領域122においては、ダイアフラム102と基台101との間隔がほとんど変化しない。
【0044】
言い換えると、受圧によりダイアフラム102が変位する領域が可動領域121である。一方、受圧によりダイアフラム102が変位しない領域が参照領域122である。参照領域122は、可動領域121の外側に部分的に設けられているが、これ以外の領域は、支持部112が存在している。なお、参照領域122のダイアフラム102と基台101との間には、参照室108が形成される。参照室108は、容量室103と連続している。
【0045】
実施の形態2では、図7図8に示すように、平面視で回転角が90°ずつ異なる点対称の位置関係となる4カ所に参照領域122を配置している。また、各々の参照領域122に第1参照電極106を配置し、これに向かい合って第2参照電極107を配置している。上記構成は、前述した実施の形態1と同様である。
【0046】
なお、実施の形態2では、可動領域121においても、第1参照電極106に接続する第3参照電極106aが配置されている。実施の形態2において、第3参照電極106aは、第1参照電極106に連続して形成されている。第3参照電極106aは、可動電極104と支持部112(接合領域113)との間に配置されている。また、第3参照電極106aは、可動領域121(容量室103)の範囲内で、可動電極104の周囲を取り巻くように配置されている。
【0047】
また、実施の形態2では、第3参照電極106aに向かい合って基台101の表面に第4参照電極107aが形成されている。第4参照電極107aは、第2参照電極107に接続して形成されている。実施の形態2において、第4参照電極107aは、第2参照電極107に連続して形成されている。第4参照電極107aは、固定電極105の周囲を取り巻くように配置されている。第3参照電極106aと第4参照電極107aとは、容量室103内で向かい合って配置されている。
【0048】
ここで、可動電極104と第3参照電極106aおよび固定電極105と第4参照電極107aの少なくとも一方は電気的に絶縁分離されている。可動電極104と第3参照電極106aおよび固定電極105と第4参照電極107aの両者が電気的に絶縁分離されていてもよい。
【0049】
また、この圧力センサは、圧力値出力部110を備える。圧力値出力部110は、第1参照電極106と第2参照電極107との間の容量を基準とし、ダイアフラム102の反り(変位)による可動電極104と固定電極105との間の容量変化を検出する。圧力値出力部110は、検出した容量変化を、設定されているセンサ感度を用いて圧力値に変換して出力する。
【0050】
実施の形態2によれば、ダイアフラム102が受圧しても、第1参照電極106と第2参照電極107との間隔はほとんど変化せず、これらの間の容量はほとんど変化しない。このように、実施の形態2によれば、基準とする容量が受圧によりほとんど変化しない。これにより、可動電極104と固定電極105と容量変化と、第1参照電極106と第2参照電極107とによる容量との差は、参照電極間も容量が変化してしまう場合よりも大きくなり、センサ感度が向上する。この結果、より小さな圧力であっても、より高い精度で圧力が計測できるようになる。
【0051】
ところで、実施の形態2では、第1参照電極106に第3参照電極106aが連続して形成されている。また、第2参照電極107に第4参照電極107aが、連続して形成されている。可動領域121に設けられている第3参照電極106aと第4参照電極107aとの間隔は、ダイアフラム102の変位により変化する。このため、第3参照電極106aと第4参照電極107aとによる容量は、受圧により変化する。このため、[第1参照電極106+第3参照電極106a]と[第2参照電極107+第4参照電極107a]とによる容量も、ダイアフラム102の変位により変化する。
【0052】
しかしながら、第1参照電極106と第2参照電極107との間において容量はほとんど変化がない。このため、第3参照電極106aおよび第4参照電極107aのみの場合に比較し、第1参照電極106および第2参照電極107を設けることで、基準とする容量の受圧による変化が抑制できるようになる。この結果、[第1参照電極106+第3参照電極106a]と[第2参照電極107+第4参照電極107a]との構成であっても、精度は向上する。
【0053】
ここで、第3参照電極106aおよび第4参照電極107aを設けず、第1参照電極106および第2参照電極107のみとすることで、基準とする容量は変化しないものとすることが可能となる。ただし、[第1参照電極106+第3参照電極106a]および[第2参照電極107+第4参照電極107a]の構成とすることで、容量が発生する面積をより大きくすることができる。よく知られているように、面積を大きくすることで、より大きな容量が得られるようになる。
【0054】
なお、可動電極104の一部には、引き出し配線205の一端が電気的に接続している。また、引き出し配線205の他端には、端子部206が電気的に接続している。端子部206は、接合領域113に設けられている。引き出し配線205は、容量室103より接合領域113にかけて引き出されている。端子部206は、基台101に設けられた図示しない貫通配線に電気的に接続し、貫通配線は、基台101裏面の図示しない外部端子に電気的に接続する。
【0055】
また、第1参照電極106の一部には、引き出し配線207の一端が電気的に接続している。実施の形態2では、第1参照電極106に連続して形成されている第3参照電極106aを介して引き出し配線207が接続されている。引き出し配線207の他端には、端子部208が電気的に接続している。端子部208は、接合領域113に設けられている。引き出し配線207は、容量室103より接合領域113にかけて引き出されている。端子部208は、基台101に設けられた図示しない貫通配線に電気的に接続し、貫通配線は、基台101裏面の図示しない外部端子に電気的に接続する。
【0056】
固定電極105の一部には、引き出し配線201の一端が電気的に接続している。また、引き出し配線201の他端には、端子部202が電気的に接続している。端子部202は、接合領域113に設けられている。引き出し配線201は、容量室103より接合領域113にかけて引き出されている。端子部202は、基台101に設けられた図示しない貫通配線に電気的に接続し、貫通配線は、基台101裏面の図示しない外部端子に電気的に接続する。
【0057】
また、第2参照電極107の一部には、引き出し配線203の一端が電気的に接続している。実施の形態2では、第2参照電極107に連続して形成されている第4参照電極107aを介して、引き出し配線203が接続されている。引き出し配線203の他端には、端子部204が電気的に接続している。端子部204は、接合領域113に設けられている。引き出し配線203は、容量室103より接合領域113にかけて引き出されている。端子部204は、基台101に設けられた図示しない貫通配線に電気的に接続し、貫通配線は、基台101裏面の図示しない外部端子に電気的に接続する。
【0058】
ところで、図9に示すように、ダイアフラム基板111に、スペーサ部131を設けてもよい。スペーサ部131は、ダイアフラム基板111の外側上面に設けられる。また、スペーサ部131は、可動領域121を取り囲む(取り巻く)リング状に形成されている。スペーサ部131は、可動領域121の周囲に設けられた、ダイアフラム基板111のより厚い領域である。スペーサ部131により、このセンサチップの実装を行う。スペーサ部131の上面を、実装面に接合することでセンサチップの実装を行う。
【0059】
ダイアフラム102のスペーサ部131の部分は、ダイアフラム102の変位が規制される。従って、スペーサ部131を設ける構成では、平面視でスペーサ部131の内側領域が可動領域121となる。
【0060】
以上に説明したように、本発明によれば、ダイアフラムと基台との間隔の変化が規制された参照領域を設け、参照領域に参照電極を設けるようにしたので、より小さな圧力においてもより高い精度で圧力計測できるようになる。
【0061】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0062】
101…基台、102…ダイアフラム、103…容量室、104…可動電極(第1電極)、105…固定電極(第2電極)、106…第1参照電極、106a…第3参照電極、107…第2参照電極、107a…第4参照電極、108…参照室、110…圧力値出力部、111…ダイアフラム基板、112…支持部、113…接合領域、121…可動領域、122…参照領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10