(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の1つの走行経路について、走行中にGNSS測位システムにより測定された緯度経度情報を、前記緯度経度情報が測定された時刻を示す測定時刻情報とともに取得する位置情報取得部と、
前記測定時刻情報の時系列に沿って、前記緯度経度情報が示す地点を、地図の位置座標情報に対して特定して、前記地図上の位置合わせとなるマップマッチング処理を行うマッチング部と、
前記マップマッチング処理により、前記走行経路が前記地図上に特定された第1走行経路情報を生成する第1生成部と、
前記マップマッチング処理において、時系列に沿って前記測定時刻情報が前後の関係となる緯度経度情報それぞれが示す2つの地点が、前記位置座標情報において不連続となるように特定された場合に、前記走行経路における当該緯度経度情報が示す地点以降の地点であって、前記マッチング部により特定された地図上の位置座標情報との間の距離が所定距離内である前記緯度経度情報が示す位置信頼地点を起点として、時系列逆順に前記マップマッチング処理を行う逆マッチング部と、
前記逆マッチング部が行ったマップマッチング処理により、前記走行経路が前記地図上に特定された第2走行経路情報を生成する第2生成部と、
前記第1走行経路情報を前記第2走行経路情報により更新する更新部と、を備える
地図情報生成装置。
前記マッチング部および前記逆マッチング部は、取得した交通規制情報を用いて通行が規制されている交通規制区間を特定して、前記地図上の前記交通規制区間を除外したうえで、前記マップマッチング処理を行う
請求項1から3のいずれか1項に記載の地図情報生成装置。
前記マッチング部および前記逆マッチング部は、前記車両の車両制御情報であるCAN情報を用いるとともに、前記CAN情報のうち、操舵角情報から前記車両の進行方向を推定して、前記マップマッチング処理を行う
請求項1から4のいずれか1項に記載の地図情報生成装置。
前記位置情報取得部は、車両のプローブ情報を蓄積する交通情報収集装置から、特定の1つの車両の1つの走行経路における前記緯度経度情報および測定時刻情報として、前記プローブ情報を取得する
請求項1から5のいずれか1項に記載の地図情報生成装置。
前記マップマッチング処理において、時系列に沿って前記測定時刻情報が前後の関係となる緯度経度情報それぞれが示す2つの地点が、前記位置座標情報において不連続となるように特定された場合に、当該緯度経度情報に対応する測定時刻情報を含む所定時間において前記車両に搭載された映像記録装置により撮影された動画の確認を促すアラート部を備えている
請求項1から6のいずれか1項に記載の地図情報生成装置。
前記マッチングステップおよび前記逆マッチングステップでは、取得した交通規制情報を用いて通行が規制されている交通規制区間を特定して、前記地図上の前記交通規制区間を除外したうえで、前記マップマッチング処理を行う
請求項8から10のいずれか1項に記載の地図情報生成方法。
前記マッチングステップおよび前記逆マッチングステップでは、前記車両の車両制御情報であるCAN情報を用いるとともに、前記CAN情報のうち、操舵角情報から前記車両の進行方向を推定して、前記マップマッチング処理を行う
請求項8から11のいずれか1項に記載の地図情報生成方法。
前記位置情報取得ステップでは、車両のプローブ情報を蓄積する交通情報収集装置から、特定の1つの車両の1つの走行経路における前記緯度経度情報および測定時刻情報として、前記プローブ情報を取得する
請求項8から12のいずれか1項に記載の地図情報生成方法。
前記マップマッチング処理において、時系列に沿って前記測定時刻情報が前後の関係となる緯度経度情報それぞれが示す2つの地点が、前記位置座標情報において不連続となるように特定された場合に、当該緯度経度情報に対応する測定時刻情報を含む所定時間において前記車両に搭載された映像記録装置により撮影された動画の確認を促すアラートステップを実行する
請求項8から13のいずれか1項に記載の地図情報生成方法。
前記マッチング機能および前記逆マッチング機能では、取得した交通規制情報を用いて通行が規制されている交通規制区間を特定して、前記地図上の前記交通規制区間を除外したうえで、前記マップマッチング処理を行う
請求項15から17のいずれか1項に記載の地図情報生成プログラム。
前記マッチング機能および前記逆マッチング機能では、前記車両の車両制御情報であるCAN情報を用いるとともに、前記CAN情報のうち、操舵角情報から前記車両の進行方向を推定して、前記マップマッチング処理を行う
請求項15から18のいずれか1項に記載の地図情報生成プログラム。
前記位置情報取得機能では、車両のプローブ情報を蓄積する交通情報収集装置から、特定の1つの車両の1つの走行経路における前記緯度経度情報および測定時刻情報として、前記プローブ情報を取得する
請求項15から19のいずれか1項に記載の地図情報生成プログラム。
前記マップマッチング処理において、時系列に沿って前記測定時刻情報が前後の関係となる緯度経度情報それぞれが示す2つの地点が、前記位置座標情報において不連続となるように特定された場合に、当該緯度経度情報に対応する測定時刻情報を含む所定時間において前記車両に搭載された映像記録装置により撮影された動画の確認を促すアラート機能を実現させる
請求項15から20のいずれか1項に記載の地図情報生成プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係る地図情報生成システム1の概略図である。
地図情報生成システム1は、車両10、サーバ20、および地図情報生成装置30を備える。
車両10は、自車のプローブ情報を取得してサーバ20に送信する。
図1には1台の車両10のみ記載するが、車両10は複数台であってよい。
サーバ20は、例えば、複数のプローブ情報を記憶する。具体的には、サーバ20は、1又は複数の車両10から送信された複数のプローブ情報を記憶する交通情報収集装置である。
【0019】
地図情報生成装置30は、例えば、いわゆるビックデータの処理に適した、相対的に多数の情報を処理することができる装置である。
車両10に搭載されるナビゲーション装置(図示せず)は、目的地が設定された場合に、その目的地までの経路を案内する。地図情報生成装置30は、ナビゲーション装置と無線通信を行うことで、処理内容をナビゲーション装置に表示させる。
【0020】
次に、
図2を用いて、地図情報生成装置30について詳細に説明する。
図2は、地図情報生成装置30の構成を説明するブロック図である。
図2に示すように、地図情報生成装置30は、通信部40、記憶部50、処理部100を備えている。
【0021】
通信部40は、例えば、通信ネットワークを介して、サーバ20又は車両10と通信する。通信部40は、地図情報生成装置30(位置情報取得部110)の制御に基づいて、一例として、サーバ20から複数のプローブ情報を取得する。なお、通信部40は、車両10から送信されたプローブ情報を受信することとしてもよい。
【0022】
ここで、プローブ情報とは、実際に自動車が走行した位置や車速などの情報を用いて生成された道路交通情報である。
プローブ情報は、少なくとも走行位置情報、および識別情報を含む。走行位置情報は、車両10の走行位置に関する情報である。識別情報は、車両10を識別するための情報(車両ID)である。また、プローブ情報は、緯度経度情報を測定した時の時刻を示す測定時刻情報を含むこととしてもよい。
【0023】
記憶部50は、地図情報を含む種々の情報、および各種の制御プログラム等を記憶する装置である。
記憶部50は、地図情報を記憶する例として、目的地として設定される地点を予め記憶する。目的地として設定される地点は、案内経路(走行経路)の終点として設定される地点であり、地図上の位置座標情報により特定される。
【0024】
地図情報生成装置30は、例えば、上記のように記憶部50に記憶された地図情報を、通信部40を介して車両10に送信し、その地図情報を車両10のナビゲーション装置で利用させるようにしてもよい。
また、地図情報生成装置30は、例えば、地図情報を外部メモリ又は光ディスク等の記録媒体に記録してもよい。この場合、車両10は、記録媒体に記録される地図情報を読み込んで、地図情報をナビゲーション装置で利用することとしてもよい。
【0025】
処理部100は、地図情報生成装置30における各種の処理を行う機能を有するプロセッサである。処理部100は、集積回路(IC(IntegratedCircuit)チップ、LSI(LargeScaleIntegration))等に形成された論理回路(ハードウェア)や専用回路によって実現してもよいし、CPU(CentralProcessingUnit)およびメモリを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0026】
処理部100は、情報取得部110と、マップマッチング部120と、走行経路生成部130と、アラート部140と、を備えている。
情報取得部110は、通信ネットワークを介して各種の情報を取得する。情報取得部110は、位置情報取得部111と、CAN情報取得部112と、を備えている。
【0027】
位置情報取得部111は、車両10の1つの走行経路について、走行中にGNSS測位システムにより測定された緯度経度情報を、緯度経度情報が測定された時刻を示す測定時刻情報とともに取得する。
なお、位置情報取得部111は、出発地から目的地に向かうプローブ情報を複数取得してもよい。
【0028】
車両10は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)測位システム(以下、単に測位システムという)を利用することにより、車両10の走行位置情報を記録することができる。車両10は、連続的又は間欠的に位置情報を取得することにより、車両10が走行した経路の位置情報(走行位置情報)をプローブ情報に記録することができる。
【0029】
車両10は、自車と他車とを識別するための車両ID(識別情報)をプローブ情報に記録する。
車両10は、例えば、走行位置情報を取得(又は、走行位置情報をプローブ情報として記録)した時の時刻に関する情報(測定時刻情報)をプローブ情報に記録する。
なお、プローブ情報に記録される情報は、上記の例に限らず、ワイパーのオン・オフに関する情報、前照灯のオン・オフに関する情報、および、車両10に配される種々のセンサで取得された情報を含んでいてもよい。
【0030】
ここで、車両10は、プローブ情報を生成する場合、ナビゲーション装置で設定される目的地をプローブ情報に記録してもよい。車両10は、例えば、ナビゲーション装置が利用される場合、走行位置情報に基づいて、道路を示すリンクから離脱した地点(座標)をプローブ情報に記録してもよい。
また、位置情報取得部111は、車両10のプローブ情報を蓄積するサーバ20(交通情報収集装置)から、特定の1つの車両10の1つの走行経路における緯度経度情報および測定時刻情報として、プローブ情報を取得する。
【0031】
CAN情報取得部112は、車両10の車両制御情報であるCAN情報を取得する。CAN情報とは、少なくとも操舵角を示す操舵角情報、車輪の回転数から推定される走行速度を含む車両制御情報である。
【0032】
マップマッチング部120は、マッチング部121と、補正マッチング部122と、逆マッチング部123と、を備えている。
マッチング部121は、測定時刻情報の時系列に沿って、緯度経度情報が示す地点を、地図の位置座標情報に対して特定して、地図上の位置合わせとなるマップマッチング処理を行う。
【0033】
具体的には、マッチング部121は、プローブ情報で示される位置が、地図情報で示される道路(リンク)のいずれに位置するかを特定する。このとき、マッチング部121は、その前に車両10が存在した道路に繋がる道路上に位置するようにマップマッチング処理を行う。
【0034】
そして、この整合がとれずプローブ情報で示される緯度経度情報がいずれの道路にも位置しないと判定された場合(所定距離以上離間していると判定された場合)にマップマッチングに失敗したと判定し、それまで存在した道路との繋がりを考慮せずに最も近い道路に位置するようにマップマッチング処理を行う。
また、マッチング部121は、CAN情報のうち、操舵角情報および車速のうちの少なくともいずれか一方を用いてマップマッチング処理を行う。
【0035】
補正マッチング部122は、時系列に沿って測定時刻情報が前後の関係となる緯度経度情報それぞれが示す2つの地点が、所定の条件を満たす場合に、CAN情報のうち、操舵角情報および車速のうちの少なくともいずれか一方を用いて、車両10の位置を地図の位置座標情報に対して補正する補正マップマッチング処理を行う。
【0036】
具体的には、操舵角により、車両の進行方向を特定するとともに、車速で特定される距離だけ走行したものとして、位置を特定する。例えば、操舵角が右方向10度で、車速が40kmであった場合に、補正マッチング部122は、1秒後の車両10の位置を、現在位置から、操舵角に応じた曲線の軌道に沿って11mの位置に存在すると推定する。
なお、補正マップマッチング処理が開始される所定の条件の詳細については後述する。
【0037】
逆マッチング部123は、マッチング部121によるマップマッチング処理において、時系列に沿って測定時刻情報が前後の関係となる緯度経度情報それぞれが示す2つの地点が、位置座標情報において不連続となるように特定された場合に、時系列逆順にマップマッチング処理を行う。
ここで、不連続となるように特定される原因として、プローブ情報で示される緯度経度情報が、いずれの道路にも位置しないと判定された場合(道路に対して所定距離以上離間していると判定された場合)や、前後の位置関係が所定の閾値以上となった場合、等が挙げられる。また、時系列逆順とは、測定時刻情報が新しい緯度経度情報から、古い緯度経度情報に遡順番に遡るという意味である。
なお、以下の説明において、時系列逆順に行うマップマッチング処理を、逆マップマッチング処理と呼ぶ。
【0038】
この際、逆マッチング部123は位置信頼地点を起点として、逆マップマッチング処理を行う。位置信頼地点とは、走行経路において、前後の関係となる緯度経度情報それぞれが示す2つの地点が、位置座標情報において不連続となるように特定された緯度経度情報が示す地点以降の地点であって、マッチング部121により特定された地図上の位置座標情報との間の距離が所定距離内である緯度経度情報が示す地点であり、位置が信頼できる地点を指す。位置信頼地点は、車両10の走行経路における終点であってもよい。走行経路における終点とは、地図に設定されたルート上の最後尾の地点を指す。位置信頼地点の他の具体例としては、車両10が目的地に到達した場所、即ち、車両10のエンジンが切られた場所等である。
【0039】
走行経路生成部130は、マップマッチング処理により、走行経路が地図上に特定された走行経路情報を生成する。走行経路生成部130は、第1生成部131と、第2生成部132と、更新部133と、を備えている。
第1生成部131は、マップマッチング処理により、走行経路が地図上に特定された、すなわち、走行経路に沿って取得された車両10の緯度経度情報が、地図上の位置座標情報に位置合わせされた第1走行経路情報を生成する。
【0040】
第2生成部132は、補正マッチング部122が補正した位置座標情報を、第1走行経路情報に追加する。また、第2生成部132は、逆マッチング部123が行ったマップマッチング処理により、走行経路が地図上に特定された第2走行経路情報を生成する。
そして更新部133は、第1走行経路情報を第2走行経路情報により更新する。
【0041】
アラート部140は、マップマッチング処理において、時系列に沿って測定時刻情報が前後の関係となる緯度経度情報それぞれが示す2つの地点が、位置座標情報において不連続となるように特定された場合に、当該緯度経度情報に対応する測定時刻情報を含む所定時間において車両10に搭載された映像記録装置により撮影された動画等の確認を促す。
なお、アラート部140は、動画に代えて、車両10に搭載された記録装置により記録された画像データや音声データの確認を促してもよい。
【0042】
次に、地図情報生成装置30における処理部100の処理内容について
図3を用いて説明する。
図3は、処理部100における処理を説明するフローチャートである。
図3に示すように、まず処理部100における位置情報取得部111が、プローブ情報の読み込みを行う(ST10)。
【0043】
次に、位置情報取得部111は、地図情報の読み込みを行う(ST20)。
地図情報は、位置座標情報として表現される。位置座標情報は、地図において車両10が走行可能な道路を示す情報であり、具体的には、地図情報は、リンクとリンク同士の接点であるノードにより表現され、各リンク及び各ノードには、それぞれそのリンクまたはノードが位置する位置座標情報が対応付けられている。
ここで、位置情報取得部111は、地図情報の取得と同時に、交通規制情報を取得してもよい。交通規制情報とは、地図上の区間のうち、交通規制により通行が規制されている区間を示す情報である。交通規制情報は、最新の情報が時々刻々と更新されている。
【0044】
次に、マッチング部121が、マップマッチング処理(ST30)を行う。マップマッチング処理では、測定時刻情報の時系列に沿って、緯度経度情報が示す地点を、地図の位置座標情報に対して特定して、地図上の位置合わせを行う。
マッチング部121は、車両10の車両制御情報であるCAN情報を用いるとともに、CAN情報のうち、操舵角情報か車両10の進行方向を推定して、マップマッチング処理を行う。
また、マッチング部121は、取得した交通規制情報を用いて通行が規制されている交通規制区間を特定して、地図上の交通規制区間を除外したうえで、マップマッチング処理を行うこともできる。
【0045】
ここで、
図4および
図5を用いて、マップマッチング処理について説明する。
図4は、マップマッチング処理における成功例の第1例を説明する図である。
図5は、マップマッチング処理における失敗例の第1例を説明する図である。
なお、
図4および
図5において、丸印は測位システムにより特定された緯度経度情報を指し、三角印は、緯度経度情報を地図上の位置座標情報に対して位置合わせした結果のマップマッチング結果として生成された車両10の第1走行経路情報を指している。
【0046】
図4に示すように、道路がカーブしている場合においては、道路の形状に沿って、車両10の位置座標が変化してゆくようにマップマッチング処理を行うことができる。そして、このようにマップマッチング処理がなされると、第1生成部131により、走行経路が地図上に特定された第1走行経路情報Aが生成される。
ところで、測位システムから得られる緯度経度情報は誤差を多分に含んでいるため、地図の位置座標に対してマップマッチングを行った際に、例えば
図5に示すように、走行経路が分断されるようなエラーが生じることがある。
【0047】
この例では、本来、高架の高速道路であって、カーブする道路が正規のルートであるところ、直進している一般道路上にマップマッチング処理が行われ、第1走行経路情報A1が作成されていた。そして、ある地点以降は、正規のルート上の位置座標が特定され、そこから道路のカーブに沿って走行経路が特定されることで、第1走行経路情報A1と分断された第1走行経路情報A2が生成されている。
【0048】
このようなマップマッチング処理のエラーについて、
図6および
図7を用いて、他の例を挙げて説明する。この例では、高速道路R1と一般道R2とが並行して敷設されている場合である。
図6は、マップマッチング処理における成功例の第2例を説明する図である。
図7は、マップマッチング処理における失敗例の第2例を説明する図である。
【0049】
なお、
図6および
図7において、丸印は測位システムにより特定された緯度経度情報を指し、三角印は、緯度経度情報を地図上の位置座標情報に対して位置合わせした結果のマップマッチング結果として生成された車両10の第1走行経路情報を指している。
図6に示す例では、測位システムから取得した緯度経度情報に対してマップマッチング処理を行い、地図上の位置座標を特定することで、高速道路R1と一般道R2とが並行している場合であっても、円滑に走行経路の特定をすることができている。
【0050】
一方、
図7に示す例では、高速道路R1上の位置座標に対するマップマッチング処理が、途中から一般道へのマップマッチング処理に変更されたことにより、第1走行経路情報A1、A2が分断されて表現されている。
このように、マップマッチング処理にエラーが生じる原因としては、前述した測位システムの誤差、および測位システムからの位置情報が取得できない走行環境がある。また、その他の原因として、交差あるいは並行して敷設された複数の道路の位置座標情報が近接していること、および高速走行時におけるサンプリングレートの影響等が挙げられる。
【0051】
そして、
図3に示すように、このようなマップマッチング処理に生じるエラーを解消するために、本発明の地図情報生成装置30の処理部100では、補正マッチング部122による補正マッチング処理(ST40)、および逆マッチング部123による逆マップマッチング処理(ST50)が行われる。この点について詳述する。
【0052】
まず
図8から
図12を用いて、補正マッチング部122による補正マッチング処理について説明する。
図8は、トンネル内を走行する車両10において、マップマッチング処理に生じるエラー、および補正マップマッチング処理を行った場合を説明する図である。
図9は、補正マップマッチング処理を行わない場合の第1例を説明する図である。
図10は、補正マップマッチング処理を行う場合の第1例を説明する図である。
図11は、補正マップマッチング処理を行わない場合の第2例を説明する図である。
図12は、補正マップマッチング処理(ST40:
図3参照)を行う場合の第2例を説明する図である。
【0053】
なお、
図9および
図11において、丸印は、マップマッチング処理により特定された第1走行経路情報を指している。そして、
図10および
図12における丸印は、第1走行経路情報に対しておよび補正マップマッチング処理により特定された走行経路情報が追加されたものである。
【0054】
図8の上図に示すように、例えば車両10がトンネル内を走行する場合、トンネル内では、測位システムからの緯度経度情報が取得できなくなることがある。このような場合には、緯度経度情報の座標値が異常値として蓄積される。なお、
図8では説明のため、座標値が異常値の緯度経度情報を、トンネルの入口と出口付近に配置している。
ここで、
図8の下図に示すように、補正マッチング部122がCAN情報から算出された車速と、トンネルの入口を通過した時刻からの経過時間に基づいて、車両10の位置を特定することで、トンネルの入口および出口に配置された異常値に代えて、走行時刻毎の車両10の位置として、トンネル内の適切な位置を特定することができる。
【0055】
すなわち、補正マッチング部122は、所定の条件として、2つの地点が所定の範囲(距離)以下、又は所定の範囲(距離)以上である場合に、時系列で測定時刻情報が前となる緯度経度情報に対して、車速と当該測定時刻情報からの経過時間を乗じた距離を加えることで、経過時間における車両10の位置を推測する。
【0056】
例えば
図9に示すように、海底のトンネル内を走行する場合に、仮に補正マップマップマッチング処理を行わない場合には、トンネル内の車両10の位置座標を特定することができない。
このため、第1生成部131により生成された第1経路情報A1において、走行位置が特定されていない空白部が形成されている。
【0057】
一方、本発明の地図情報生成装置30では、
図10に示すように、補正マッチング部122が、CAN情報の車速等を用いてトンネル内の車両10における地図上の位置座標を特定する。
そして、第2生成部132が、補正マップマッチングにより特定された走行経路情報A2を第1経路情報A1に追加することで、空白部が形成されることなく、走行経路を特定することができる。
【0058】
次に、他の例について説明する。
図11に示す場合のように、トンネル内の車両10の位置座標と特定することができない場合においても、補正マッチング部122がCAN情報の車速等を用いて、補正マップマッチング処理を行う。
これにより、
図12に示すように、測位システムにより位置が特定できない走行経路A2について、時系列に沿って、車両10の位置座標を特定、第1走行経路情報A1に追加することができる。
【0059】
また、補正マッチングは、CAN情報のうちの操舵角情報をマップマッチング処理に用いることもできる。この点について
図13を用いて説明する。
図13は、車両10が地下駐車場に進入した際の操舵角情報を説明する模式図である。
【0060】
図13に示すように、地下駐車場では、測位システムからの緯度経度情報を取得できないことがある。このように測位システムからの位置情報が取得できない場合において、車速が一定以下であるとともに、操舵角が一定の閾値以上である場合には、駐車場に進入していると推定することができる。
そして、車速と操舵角情報とを併用することで、駐車場内における車両10の位置座標を特定することができる。
【0061】
また、補正マッチング部122は、取得した交通規制情報を用いて通行が規制されている交通規制区間を特定して、地図上の交通規制区間を除外したうえで、補正マップマッチング処理を行うこともできる。
これにより、リアルタイムで通行が規制されている道路を把握して、精度の高い補正マップマッチング処理を行うことができる。
【0062】
次に、逆マッチング部123による逆マップマッチング処理(ST50:
図3参照)について説明する。
逆マップマッチング処理は、例えば走行後の走行履歴のデータに対して行う。これにより、走行履歴のデータを更新し、正確な走行履歴を得ることができる。なお、このような態様に限られず、逆マッチング部123は、走行中にリアルタイムで逆マップマッチング処理を行ってもよい。
【0063】
逆マッチング部123は、走行経路上にエラーが出た場合、すなわち、マップマッチング処理において、時系列に沿って測定時刻情報が前後の関係となる緯度経度情報それぞれが示す2つの地点が、位置座標情報において不連続となるように特定された場合に、逆マップマッチング処理を行う。
【0064】
逆マップマッチング処理では、走行経路の終点を位置信頼地点とし、この終点を起点として、時系列逆順にマップマッチング処理を行う。なお、位置信頼地点は走行経路の終点でなくてもよく、走行経路におけるマップマッチング処理のエラーが生じた地点以降の地点であって、位置が信頼できる地点であればよい。
【0065】
この逆マップマッチング処理について、
図14および
図15を用いて具体的に説明する。
図14は、逆マップマッチング処理(ST50:
図3参照)を説明する図である。
図15は、
図14に示す矩形破線部の拡大図であって、
図15(a)は、逆マップマッチング処理を行う前の第1走行経路情報を示す図、
図15(b)は、逆マップマッチング処理を行った後に更新された第2走行経路情報を示す図である。
【0066】
なお、
図14および
図15(a)において、丸印は第1走行経路情報を指している。
そして、
図15(b)、
図16、および
図17において、丸印は、第2生成部132により生成され、更新部133により第1走行経路情報が更新された第2走行経路情報を指している。
【0067】
図14に示す走行経路において、終点(GOAL)から始点(START)に向けて、マップマッチ処理を行う。この点について
図15を用いて詳述する。
図15(a)に示す走行経路では、実際には高速道路上を走行しているにも関わらず、マップマッチング処理のエラーにより、走行経路の一部が、高速道路と並行して敷設された一般道上に特定された第1走行経路情報A1、A2、A3が生成されていた。
この第1走行履歴情報では、地図の下側から上側に向けて走行してきた車両10の位置座標情報において、右側に向けて方向転換する過程において、マップマッチングのエラーが検出されるとともに、本来の高速道路上にマップマッチングされた状態となっている。
【0068】
そして、このようなマップマッチング処理においてエラーが生じた走行履歴に対して、逆マップマッチングを行うと、終点から走行経路の逆順に、緯度経度情報と地図上の位置座標情報との位置合わせを行う。
この場合には、走行時の順方向のマップマッチング処理と異なり、逆マップマッチングを行う過程において、車両10の出発地点(始点:すなわち逆マップマッチングにより到達する地点)が確定している。さらに、最初のマップマッチング処理により、測定時刻情報が前となる緯度経度情報がどこに位置するのかが特定されている。このため、どのような経路をたどれば、終点から始点まで連続した経路とすることを判断しやすく、精度の高いマップマッチング処理を行うことができる。
そして、逆マップマッチング処理により得られた情報に基づいて、第2生成部132が
図15(b)に示すような第2走行経路情報A4を生成する。
【0069】
また、逆マッチング部123は、取得した交通規制情報を用いて通行が規制されている交通規制区間を特定して、地図上の交通規制区間を除外したうえで、マップマッチング処理を行うこともできる。
これにより、実際の道路において車両10が走行できなかった部分を走行経路から除外することで、正確な逆マップマッチング処理を行うことができる。
【0070】
また、逆マッチング部123は、車両10の車両制御情報であるCAN情報を用いるとともに、CAN情報のうち、操舵角情報から車両10の進行方向を推定して、逆マップマッチング処理を行うこともできる。
このような逆マップマッチングにおけるCAN情報の利用について、
図16および
図17を用いて説明する。
図16は、ジャンクションを走行中の車両10の走行経路を示す図である。
図17は、
図16に示す矩形破線部の拡大図である。
【0071】
図16および
図17に示すように、高速道路のジャンクションのように進行方向が蛇行するような道路では、マップマッチング処理のエラーが生じやすい。車両10が高速で走行しているため、測位システムのサンプリングレートの間隔が影響を与えるばかりでなく、道路自体が交差しており、地図上の位置座標情報により表現されるリンクが重なっている場合があるためである。
【0072】
ここで、CAN情報における操舵角情報を用いて、ある地点における操舵角を特定すると、車両10のその後の進行方向を推定することができる。これにより、車両10がその後に走行するべき道路のリンクを特定することができ、精度の高い逆マップマッチング処理を行うことができる。
【0073】
そして
図3に示すように、最後に、更新部133が第1走行経路情報を第2走行経路情報により更新する更新処理を行う(ST60)。これにより、エラーが生じた第1走行経路情報に代えて、精度の高い第2走行経路情報を、車両10の走行履歴として利用することができる。
【0074】
このような車両10の走行履歴の利用としては、例えば損害保険への活用が考えられる。例えば車両10が事故に巻き込まれた際に、車両10の走行履歴を確認して、車両10の運転が適切であったかどうかを確認したいという要請がある。このような場合に、精度の高い走行履歴情報が必要となる。
【0075】
また、本発明の地図情報生成装置30では、走行履歴情報を補填する機能として、アラート部140を備えている。アラート部140は、第1走行経路情報と第2走行経路情報との間で異なる内容となっている部分(懸案部分)について、車両10に搭載された映像記録装置により撮影された動画等の確認をうながす。
【0076】
ここで、懸案部分とは、最初のマップマッチング処理において、時系列に沿って測定時刻情報が前後の関係となる緯度経度情報それぞれが示す2つの地点が、位置座標情報において不連続となるように特定された場合に、当該緯度経度情報に対応する測定時刻情報を含む所定時間を指す。すなわち、当該懸案部分において、車両10の運転が適切であったかどうかを確認することで、例えば逆走や進入禁止区域への進入等、車両10の運転に不適切な部分が無かったかどうかを確認させることができる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態に係る地図情報生成装置30によれば、マッチング部121が行うマップマッチング処理において、時系列に沿って測定時刻情報が前後の関係となる緯度経度情報それぞれが示す2つの地点が、位置座標情報において不連続となるように特定された場合に、逆マッチング部123が、位置信頼地点を起点として、時系列逆順に逆マップマッチング処理を行う。
【0078】
このため、走行履歴を後ろから辿りながら逆マップマッチング処理を行うことにより、正規のマッチング処理において仮にエラーが生じていた場合に、当該エラーを修正することができる。
そして、更新部133が、当初マッチングされた第1走行経路情報を、逆マッチング部123がマッチングした第2走行経路情報により更新することにより、マップマッチング処理の精度を向上することができる。
【0079】
また、位置座標情報が、地図において車両10が走行可能な道路を示す情報であるため、仮に測位システムから取得された緯度経度情報に誤差がある場合であっても、車両10が走行するべき道路上の位置を正確に特定することができる。
【0080】
また位置信頼地点が、車両10の走行経路における終点であるため、走行経路において最後に到達した地点を逆マップマッチングの起点とすることで、位置が信頼できる点として精度の高い逆マップマッチングを行うことができる。
【0081】
また、マッチング部121および逆マッチング部123が、取得した交通規制情報を用いてマップマッチング処理を行う。このため、車両10が走行することができない道路を走行経路から除外することができ、マップマッチング処理において生じるエラーを生じにくくすることができる。
【0082】
また、マッチング部121および逆マッチング部123が、車両10の車両制御情報であるCAN情報を用いるとともに、CAN情報のうち、操舵角情報から車両10の進行方向を推定して、マップマッチング処理を行う。このため、測位システムにより緯度経度情報が得られないような走行環境であっても、車両10の位置を推定することが可能になり、精度の高い走行経路の特定を行うことができる。
【0083】
また、位置情報取得部111は、車両10のプローブ情報を蓄積する交通情報収集装置から、特定の1つの車両10の1つの走行経路における緯度経度情報および測定時刻情報として、プローブ情報を取得する。このため、特定の車両10における緯度経度情報および測定時刻情報を精度よく取得することができる。
【0084】
また、地図情報生成装置30が、走行履歴のうち、マップマッチング処理にエラーが生じた懸案部分について、映像記録装置により撮影された動画等の確認を促すアラート部140を備えている。このため、マップマッチング処理におけるエラーが、車両10の運転の不良に起因しているかどうかを確認することができる。
【0085】
また、地図情報生成装置30が、補正マップマッチング処理を行う補正マッチング部122と、補正マッチング部122が補正した位置座標情報を、第1走行経路情報に追加することで、第2走行経路情報を作成する第2生成部132と、を備えている。このため、仮に測位システムから緯度経度情報が取得できない環境であっても、第2生成部132が、補正マッチング部122が補正した位置座標情報を追加することで、走行履歴に車両10の走行位置が特定できない空白部が生じることがなく、精度の高い走行履歴を得ることができる。
【0086】
また、補正マッチング部122が、所定の条件として、2つの地点が所定の範囲以下、又は所定の範囲以上である場合に、時系列で測定時刻情報が前となる緯度経度情報に対して、車速と当該測定時刻情報からの経過時間を乗じた距離を加えることで、経過時間における車両10の位置を推測する。これにより、走行経路のうち、補正マップマッチング処理が必要な部分を明確にすることができる。
【0087】
なお、前述した構成はあくまで一実施形態であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、各種の変更や機能の集約、あるいは分離を行うことができる。
例えば、本実施形態では、地図情報生成装置30が、車両10に搭載されたナビゲーション装置とは別の装置である構成を示したが、このような態様に限られない。地図情報生成装置30の機能の一部を、ナビゲーション装置に搭載した制御部により実現してもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、補正マッチング部122がCAN情報を用いてマップマッチング処理を行う構成を示したが、このような態様に限られない。補正マッチング部122の機能をマッチングに集約することで、補正マッチング部122としての機能を有するマッチング部121が、CAN情報を用いたマップマッチング処理を行ってもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、マップマッチング部120の機能として、マッチング部121、補正マッチング部122、および逆マッチング部123を備えた構成を示したが、このような態様に限られない。地図情報生成装置30のマップマッチング部120としては、例えばマッチング部121および補正マッチング部122の機能のみを備えてもよいし、マッチング部121および逆マッチング部123の機能のみを備えてもよい。
【0090】
また、上述した地図情報生成装置30の各部は、コンピュータの演算処理装置等の機能として実現されてもよい。すなわち、地図情報生成装置30の処理部100における情報取得部110、マップマッチング部120、走行経路生成部130、およびアラート部140は、コンピュータの演算処理装置等による、情報取得機能、マップマッチング機能、走行経路生成機能、およびアラート機能としてそれぞれ実現されてもよい。
【0091】
そしてこのような場合には、情報取得機能は位置情報取得機能およびCAN情報取得機能を備える、そして、マップマッチング機能は、マッチング機能、補正マッチング機能、および逆マッチング機能を備える。そして、走行経路生成部130は、第1生成機能、第2生成機能、および更新機能を備える。
【0092】
また、地図情報生成プログラムは、上述した各機能をコンピュータに実現させることができる。地図情報生成プログラムは、外部メモリ又は光ディスク等の、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録されていてもよい。
【0093】
また、上述したように、地図情報生成装置30の各部は、コンピュータの演算処理装置等で実現されもよい。その演算処理装置等は、例えば、集積回路等によって構成される。このため、地図情報生成装置30の各部は、演算処理装置等を構成する回路として実現されてもよい。すなわち、地図情報生成装置30の処理部100は、
図18に示すように、コンピュータの演算処理装置等を構成する処理回路100aとして実現されてもよい。この場合には、処理回路100aは、情報取得回路110a、マップマッチング回路120a、走行経路生成回路130a、およびアラート回路140aを備えている。
【0094】
また、地図情報生成装置30の通信部40、および記憶部50は、例えば、集積回路等によって構成されることにより、
図18に示すように、通信回路40a、および記憶回路50aとして実現されてもよい。また、地図情報生成装置30の通信部40、および記憶部50は、例えば、複数のデバイスによって構成されることにより、通信装置、および記憶装置として構成されてもよい。
【解決手段】地図情報生成装置は、緯度経度情報を測定時刻情報とともに取得する位置情報取得部と、マップマッチング処理を行うマッチング部と、走行経路が地図上に特定された第1走行経路情報を生成する第1生成部と、時系列に沿って測定時刻情報が前後の関係となる緯度経度情報それぞれが示す2つの地点が、位置座標情報において不連続となるように特定された場合に、時系列逆順にマップマッチング処理を行う逆マッチング部と、逆マッチング部が行ったマップマッチング処理により、走行経路が地図上に特定された第2走行経路情報を生成する第2生成部と、第1走行経路情報を第2走行経路情報により更新する更新部と、を備える。