【実施例1】
【0020】
まず、本発明の実施例1に係る機器及びその製造方法について、
図1乃至
図16を参照して説明する。本実施例では、本発明の構造を、画像表示領域に液晶パネル1を用いた基部と、遮光部3を有するカバープレート2と、硬化性樹脂4に光硬化型樹脂を用い、基部とカバープレート2を光硬化型樹脂にて全面貼り合せした表示装置に適用した場合の例を示す。以下に、本発明の実施例1の構成について、
図1、
図2を参照して説明する。
【0021】
基部は、フラットパネルディスプレイ、液晶表示装置、液晶パネル、LCD(Liquid Crystal Display)モジュール等の画像表示装置であり、本実施例では液晶パネルにて説明する。
【0022】
基部は、液晶パネル1であり、画像を表示する表示領域1eと表示領域1eの周囲で表示信号を供給するための配線領域1dを有する。表示領域1eは、TFT素子、RGB(赤、緑、青画素)、BM(ブラックマトリクス)パターンが形成(図示せず)され、表示信号により画像を表示する。配線領域1dは、TFT素子に表示信号を供給する配線(図示せず)があり、配線は金属膜等を用いる為、光を透過しない。また、配線領域1dには遮光膜を形成して図示していないバックライトからの光を遮光する。
【0023】
基部の液晶パネル1はTFT素子等がパターンニングされたTFT基板1b、RGB、BMパターン等がパターンニングされたカラーフィルタ基板1a、TFT基板1bとカラーフィルタ基板1aとを接合すると共に、その内側に任意の隙間を設けるシール1g、TFT基板1bとカラーフィルタ基板1aの隙間に充填された液晶剤1f、表面及び裏面に貼合される偏光板・光学補償フィルム1c等により構成される。
【0024】
遮光部3を有するカバープレート2は、透明なガラス、強化ガラスやアクリル板、PET板等のプラスチックを用いた基板やそれらの複合基板で、カバープレート2と基部を貼合した際に、基部の表示領域1eに相当する部位(透明領域2b)以外の外周部(周縁)には遮光性を有する黒インクで形成した遮光部3により遮光した帯状の遮光領域2aを有する。なお、本実施例の遮光部3は、黒インクを用いて形成しているが、遮光性を有する材料(たとえば色インク)や遮光性を有する表面処理(たとえば反射膜成膜)を用いて遮光部3を設けることができる。
【0025】
基部と遮光部3を有するカバープレート2の貼合に用いる硬化性樹脂4は、光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、湿気硬化型樹脂や、光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、湿気硬化型樹脂などの硬化機能を複合して有するハイブリット硬化型樹脂等の樹脂があるが、本実施例では光硬化型樹脂を用いた例で説明する。
【0026】
カバープレート2と基部との隙間の光硬化型樹脂は、光により硬化する樹脂であり、遮光部3の外周側にある硬化性樹脂(請求項における第1硬化性樹脂)と、遮光部3の内周側(内周近傍)にある硬化性樹脂(請求項における第2硬化性樹脂)と、遮光部3の内側の透明領域2bにある硬化性樹脂(請求項における第3硬化性樹脂)とを含む。これらの内、基部の表示領域1eに近い、遮光部3の内周近傍3b(深部)にある深部領域硬化性樹脂4bの硬化後の硬化率と、遮光部3の外周側3a(端部)にある端部領域硬化性樹脂4aの硬化後の硬化率が異なり、深部領域硬化性樹脂4bの硬化後の硬化率が、端部領域硬化性樹脂4aの硬化後の硬化率より低くなるよう硬化させる。隙間の硬化性樹脂4を硬化する方法は、後述する製造方法にて説明する。
【0027】
図2に示すように、基部の表示領域1eに近い深部領域硬化性樹脂4bの硬化後の硬化率は、60%程度で非流動(非流動の定義は後述する。)の硬化状態となり、端部領域硬化性樹脂4aの硬化後の硬化率は、80%以上の硬化状態とすることが好ましい。なお、本実施例では、遮光部3の内周近傍3bを深部、遮光部3の外周側3aを端部とし、硬化率が端部から深部に向かってなだらかに減少するよう図示しているが、理想的な硬化状態は、
図3に示すように、端部と深部の硬化率が階段状に変化をするものである。
【0028】
階段状の硬化率を得るには、硬化用のUV光を2種類以上の波長と波長毎の照度を選択的に制御することで実現可能である。例えば遮光部3の外周側3aにある硬化性樹脂4の端より10mmまでを端部領域硬化性樹脂4a、基部の表示領域1e側で遮光部3の内周近傍3bにある硬化性樹脂4の端より20mmまでを深部領域硬化性樹脂4bにする場合、
図4(a)に示すように、硬化性樹脂4の硬化条件を波長と波長毎の照度にて確認しておき、その結果を用いて、深部領域硬化性樹脂4bの硬化に有効な長波長(例えば400nm)を照度:中の条件で照射して端部領域硬化性樹脂4aを硬化し、端部領域硬化性樹脂4aの硬化に有効な短波長(例えば360nm)を照度:高の条件で照射して端部領域硬化性樹脂4aを硬化することで
図4(b)に示すような階段状の硬化が実現可能である。
【0029】
なお、
図5に示すように、カバープレート2の遮光部3と基部の配線領域1dの隙間の光硬化型樹脂を、基部の端部まで充填することで、基部の液晶パネル1表面及び裏面に貼り付けている偏光板・光学補償フィルム1cの劣化を抑制することが可能である。
【0030】
また、
図5に示すように、カバープレート2の遮光部3は、カバープレート2の外周端まで設けず、表示領域1e上にある透明領域2bから、カバープレート2の外周端の途中までを遮光する場合も、カバープレート2の遮光部3と基部の隙間にある硬化性樹脂4の深部領域硬化性樹脂4bの硬化後の硬化率が、端部領域硬化性樹脂4aの硬化後の硬化率より低くなるよう硬化させることが可能である。
【0031】
また、液晶パネルでは、TFT基板1bとカラーフィルタ基板1aの隙間の、シール1gにより区画された領域に充填される液晶剤1fは流動状態であり、液晶剤1fが充填された部分に外力が加わると、隙間が変動し表示不良になりやすい。そこで、カバープレート2の遮光部3の内周側端部からシール1gの内周側までの領域に上記の深部領域硬化性樹脂4bが配置され、遮光部3の外周側からシール1gの内周側までの領域に上記の端部領域硬化性樹脂4aが配置される。
図6に示すように、この外力を軽減する為に、カバープレート2の遮光部3と基部の配線領域1dの隙間の硬化性樹脂4のうち、深部領域硬化性樹脂4bの硬化後の硬化率を低くすることもできる。このようにすることで、基部の液晶パネル1が外力により表示異常となることを抑制することが可能である。なお、硬化性樹脂4の深部領域硬化性樹脂4bの硬化後の硬化率より、端部領域硬化性樹脂4aの硬化後の硬化率が高くなるように硬化させる位置は、表示領域1eの周囲の一部に適用することも可能である。
【0032】
以上では、基部が液晶パネル1で、カバープレート2が遮光部3を有するプレートの場合について説明したが、基部またはカバープレート2にはタッチセンサー5を有する基板を用い、タッチパネル等の入力機能を付加した構造であってもよい。例えば、
図7に示すように、カバープレート2にタッチセンサー5を付加した、タッチセンサー付きカバープレート6を用いた構造としたり、
図8に示すように、基部の液晶パネル1にタッチセンサー5を付加した、タッチセンサー付き液晶パネル7を用いた構造としたりすることができる。
【0033】
また、以上では、基部及びカバープレート2の両方に遮光性を有する場合について説明したが、基部またはカバープレート2のいずれか片方に遮光性を有する構造であっても良い。例えば、
図9に示すように、基部に遮光性がないタッチセンサー5を用いた構造としたり、
図10に示すように、遮光性がないカバープレート2を用いた構造としたりすることができる。
【0034】
以上説明した構造の効果を確認するために、本願出願人は、光硬化型樹脂を一様に硬化させた際の、硬化率と外力によるカバープレートに対する接着強度を確認した。その結果を下記の表1に示す。
【0035】
表1における光硬化型樹脂の硬化率に関しては、照射前の硬化性樹脂に含まれる樹脂組成物と、照射後の硬化性樹脂に含まれる、光反応する硬化成分(例えばビニル基C=C)を、FT−IR等により、それぞれ抽出し、照射前の硬化性樹脂に含まれる樹脂組成物より抽出したピーク強度:P
0と照射後の硬化成分より抽出したピーク強度:P
1を求め、次式1により算出した。
【0036】
硬化率(%)={(P
0−P
1)/P
0}×100 … (1)
【0037】
硬化率が80%以上であれば、接着強度0.24N/mm
2以上を得ることができ、硬化率60%以下では接着強度0.15N/mm
2以下であり、硬化率80%は硬化率60%に対して1.6倍の強度を得ることができた。接着強度がさらに必要な場合は、硬化率を高めることで対応が可能であり、硬化率100%程度では0.32N/mm
2以上の強度を得ることができた。
【0038】
表1における外部応力による外観状態は、端部の剥離、表示領域の気泡及び液漏れの有無により判断し、気泡が発生し、液漏れも出る場合は“×”、剥離するが表示領域の気泡、液漏れがない場合は“△”、剥離がなく気泡、液漏れもない場合は“○”とした。
【0039】
【表1】
【0040】
また、本願出願人は、光硬化型樹脂を一様に硬化させた際の、硬化率と弾性率と外力による表示への影響について確認した。その結果を下記の表2に示す。
【0041】
表2では、光硬化型樹脂の状態として、使用や保管する環境温度(例えば25℃程度)や設置状態(例えば縦置き設置)を一定にした場合において、光硬化型樹脂が未硬化や硬化率が低い状態で隙間より流れ出てくる状態を“流動:×”、硬化反応が進み隙間より流れ出ない状態を“非流動:○”とした。
【0042】
また、外部応力による表示状態は、押しムラ等が顕著に発生する場合は“×”、軽微な押しムラ等が発生する場合は“△”、押しムラ等の発生がなく良好な場合は“○”とした。
【0043】
硬化率80%以上であれば、非流動状態で弾性率7KPa以上となり、硬化率60%では、非流動化状態で弾性率は5KPa以下であるが、硬化率50%では、流動状態(弾性率は1KPa以下)となり、光硬化型樹脂は基部とカバープレートの隙間より流れ出す。また、硬化率80%以上に硬化すると、外部応力により基部に用いている液晶表示装置の表示状態は押しムラにより悪化し、硬化率60%以下にて押しムラは見えにくくなる。
【0044】
【表2】
【0045】
本実施例の
図3のように、カバープレート2の遮光部3と基部の配線領域1dの隙間の光硬化型樹脂の深部を硬化率60%程度で非流動の硬化状態とし、端部を硬化率80%以上の硬化状態とした場合、接着強度は0.31N/mm
2で、外部応力による表示状態は良好な結果を得た。また、上記光硬化型樹脂の深部の硬化率は5KPa以下で、外部応力による表示状態は良好な結果を得た。
【0046】
なお、本実施例では、硬化性樹脂4の状態を硬化率にて規定する構成を示したが、一般に硬化率が高い場合、弾性率及び接着強度は高く、硬化率が低い場合、弾性率及び接着強度は低い為、弾性率では、端部領域硬化性樹脂4aの硬化後の弾性率より、深部領域硬化性樹脂4bの硬化後の弾性率が低くなるよう硬化し、接着強度では、深部領域硬化性樹脂4bの硬化後の接着強度より、端部領域硬化性樹脂4aの硬化後の接着強度が高くなる状態に硬化している。
【0047】
上記表1、表2は、光硬化型樹脂の評価結果であるが、本実施例の硬化性樹脂4は光硬化型樹脂に限定されず、他の熱硬化型樹脂、ハイブリット硬化型樹脂等の硬化性樹脂4においても、表に示したような特性に基づき硬化状態を制御することで、本実施例のような構成を実現することができる。
【0048】
次に、本発明の構造を、画像表示領域に液晶パネル1を用いた基部と、遮光部3を有するカバープレート2と、を光硬化型樹脂である硬化性樹脂4にて全面貼り合せした表示装置に適用した場合の製造方法について、
図11を参照して説明する。
【0049】
まず、
図11(a)に示すように、基部である液晶パネル1と遮光部3を有するカバープレート2の少なくとも一方に光硬化型樹脂を塗布し、基部とカバープレート2を位置合わせし、未硬化の硬化性樹脂4dにて貼り合せを行う。貼合後に次工程に搬送する際の位置ずれ等を防止する為に、光硬化型樹脂を部分的に仮硬化しても構わない。
【0050】
光硬化型樹脂を塗布する方法は、特に限定されず、例えば、ディスペンサーを用いる方法、コーターを用いる方法、印刷を用いる方法等がある。これらの中では、塗布量の制御及び貼合時の気泡混入を防止する点からディスペンサーを用いる方法が好ましい。
【0051】
また、基部とカバープレート2を位置合わせする方法は、特に限定されず、例えば、外形基準にて位置決めする方法、カバープレート2の遮光部パターンと基部の液晶パネル1に設けた貼合用位置決めマーク(図示しない)とを画像処理して位置決めする画像処理位置決め方法等がある。これらの中では、位置決め精度の点から画像処理位置決め方法が好ましい。
【0052】
また、基部とカバープレート2を貼合する方法は、特に限定されず、例えば、貼合環境では、常圧下で貼合する方法、真空下で貼合する方法があり、貼合方式としてローラーにて貼合する方法、平行平板にて貼合する方法等がある。これらの中では、貼合時の気泡を防止する観点から、真空下で平行平板にて貼合する方法が好ましい。
【0053】
次に、
図11(b)に示すように、カバープレート2の上方または基部の下方よりUV光8を照射し、カバープレート2の透明領域2bの下部にある光硬化型樹脂を硬化させる(硬化した硬化性樹脂4e)。図ではカバープレート2の上方より照射した例を示す。
【0054】
カバープレート2の透明領域2bにある光硬化型樹脂を硬化する方法は、特に限定されず、例えば、貼合したカバープレート2と基部とを、カバープレート2を上側にして置き、カバープレート2上方に配したUVランプにて一括照射する方法、スポットUVランプにて均一に走査して照射する方法、カバープレート2と基部とを、カバープレート2を下側にして置き、コンベアで搬送しながらカバープレート2下方に配したUVランプにて照射する方法等がある。これらの中では、照射による硬化状態の均一性の観点から、コンベアで搬送しながらUVランプにて照射する方法が好ましい。
【0055】
その次に、
図11(c)に示すように、カバープレート2の遮光部3と基部の配線領域1dの隙間の深部まで光硬化型樹脂をUV光8により硬化させる(60%程度硬化した硬化性樹脂4f)。
【0056】
カバープレート2と基部の隙間の深部にある光硬化性樹脂を硬化させる方法は、特に限定されず、例えば、400nm程度の長波長光を照射可能なLED光源を用いる方法、光線を平行光に調光可能な光学レンズ等を用いる方法、光源を隙間に対して平行な位置より照射する方法等がある。本実施例では、これらを組み合わせて、隙間の深部に光を到達させ隙間深部を安定して硬化させる点から、長波長光を照射可能な光源と光線を平行光に調光可能な光学レンズを用い隙間に平行な位置より照射する方法が好ましい。
【0057】
その次に、
図11(d)に示すように、カバープレート2の遮光部3と基部の配線領域1dの隙間の端部にある光硬化型樹脂をUV光8により硬化させる(80%以上硬化した硬化性樹脂4g)。なお、カバープレート2の遮光部3と基部の配線領域1dの隙間の端部にある光硬化型樹脂は、
図11(c)のUV光8(400nm程度の長波長のUV光)によってある程度硬化しているため、本工程のUV光照射によって80%以上硬化するように、UV光8の波長及び照度を調整すればよい。
【0058】
カバープレート2と基部の隙間の端部にある光硬化性樹脂を硬化させる方法は、特に限定されず、例えば、360nm程度の短波長光を照射可能なLED光源を用いる方法、光線をスポット状に集光可能な光学レンズ等を用いる方法、光源を隙間の斜め下方より照射する等がある。本実施例では、これらを組み合わせて、隙間の端部に光を集中させ隙間端部を安定して硬化させる点から、短波長光を照射可能な光源と光線をスポット状に調光可能な光学レンズを用い隙間の斜め下方より照射する方法が好ましい。
【0059】
次に、本実施例の表示装置の他の製造方法について、
図12を参照して説明する。
【0060】
まず、
図12(a)に示すように、基部である液晶パネル1と遮光部3を有するカバープレート2の少なくとも一方に光硬化型樹脂を塗布し、基部とカバープレート2を位置合わせし、貼り合せを行う。次に、
図12(b)に示すように、カバープレート2の遮光部3と基部の隙間の深部まで光硬化型樹脂をUV光8により硬化させる(60%程度硬化した硬化性樹脂4f)。この工程は、上記と同様に、400nm程度の長波長光を照射可能な光源と光線を平行光に調光可能な光学レンズを用い隙間に平行な位置より照射する方法を用いて行うことができる。その次に、
図12(c)に示すように、カバープレート2の遮光部3と基部の隙間の端部にある光硬化型樹脂をUV光8により硬化させる(80%以上硬化した硬化性樹脂4g)。この工程も、上記と同様に、360nm程度の短波長光を照射可能な光源と光線をスポット状に調光可能な光学レンズを用い隙間の斜め下方より照射する方法を用いて行うことができる。なお、上記と同様に、カバープレート2の遮光部3と基部の隙間の端部にある光硬化型樹脂は
図12(b)のUV光8によってある程度硬化しているため、本工程のUV光照射によって80%以上硬化するように、UV光8の波長及び照度を調整すればよい。その次に、
図12(d)に示すように、カバープレート2の上方または基部の下方(図ではカバープレート2の上方)よりUV光8を照射し、カバープレート2の透明領域2bの下部にある光硬化型樹脂を硬化させる(硬化した硬化性樹脂4e)。この工程も、上記と同様に、コンベアで搬送しながらUVランプにて照射する方法などを用いて行うことができる。
【0061】
この方法によれば、
図12(a)、
図12(b)及び
図12(c)の工程を同一の装置内に組み込むことが可能であり、また、
図12(a)にて貼合した後、
図12(b)を同一装置にて処理することで、貼合後に次工程に搬送する際の位置ずれ等を防止するために必要な仮硬化を兼ねることが可能である。
【0062】
次に、硬化性樹脂4として熱硬化型樹脂を用いる場合の表示装置の製造方法について、
図13を参照して説明する。
【0063】
まず、
図13(a)に示すように、基部である液晶パネル1と遮光部3を有するカバープレート2の少なくとも一方に熱硬化型樹脂を塗布し、基部とカバープレート2を位置合わせし、貼り合せを行う。次に、
図13(b)に示すように、カバープレート2の遮光部3と基部の隙間の深部まで熱硬化型樹脂を遠赤外線9bにて硬化させる(60%程度硬化した硬化性樹脂4f)。その次に、
図13(c)に示すように、カバープレート2の遮光部と基部の隙間の端部にある熱硬化型樹脂を赤外線9aにて硬化させる(80%以上硬化した硬化性樹脂4g)。なお、上記と同様に、カバープレート2の遮光部3と基部の隙間の端部にある光硬化型樹脂は
図13(b)の遠赤外線9bによってある程度硬化しているため、本工程の赤外線照射によって80%以上硬化するように、赤外線9aの波長及び照度を調整すればよい。その次に、
図13(d)に示すように、カバープレート2の上方または基部の下方(図ではカバープレート2の上方)より赤外線9aを照射し、カバープレート2の透明領域2bにある熱硬化型樹脂を硬化させる。
【0064】
この方法によれば、硬化性樹脂4として熱硬化型樹脂を用いた場合でも、前述した
図1から
図10の構成を実現することが可能である。
【0065】
さらに、硬化性樹脂4として湿気硬化機能を有するハイブリット硬化型樹脂を用いる場合の表示装置の製造方法について、
図14を参照して説明する。
【0066】
ハイブリット硬化型樹脂は、光硬化型や熱硬化型等の硬化機能に湿気硬化機能を付加した硬化性樹脂4であり、光硬化型と湿気硬化型の機能を有するハイブリット硬化型樹脂を用いる場合、
図11、
図12の製造方法に湿気硬化工程を組み合わせることで表示装置の製造が可能である。
【0067】
例えば、
図14(a)に示すように、基部である液晶パネル1と遮光部3を有するカバープレート2の少なくとも一方にハイブリット硬化型樹脂を塗布し、基部とカバープレート2を位置合わせし、貼り合せを行う。次に、
図14(b)に示すように、カバープレート2の遮光部3と基部の隙間の深部までハイブリット硬化型樹脂をUV光8にて硬化させる。次に、
図14(c)に示すように、カバープレート2の遮光部3と基部の隙間の端部にあるハイブリット硬化型樹脂に湿気10を加え硬化させる。その次に、
図14(d)に示すように、前記カバープレート2の上方または基部の下方(図ではカバープレート2の上方)よりUV光8を照射し、カバープレート2の透明領域2bにあるハイブリット硬化型樹脂を硬化させる。
【0068】
この方法によれば、硬化性樹脂4としてハイブリット硬化型樹脂を用いた場合でも、前述した
図1から
図6の構成を実現することが可能である。
【0069】
また、硬化性樹脂4として熱硬化型と湿気硬化型の機能を有するハイブリット硬化型樹脂についても、
図13と
図14の製造方法を組み合わせることで、前述した
図1から
図10の構成を実現することが可能である。
【0070】
なお、
図11乃至
図14では、カバープレート2の遮光部3と基部の隙間の深部の硬化性樹脂まで(すなわち、遮光部3にある硬化性樹脂全体)を硬化させた後、カバープレート2の遮光部3と基部の隙間の端部にある硬化性樹脂を硬化させたが、端部にある硬化性樹脂を先に硬化させた後、深部の硬化性樹脂まで硬化させることも可能である。その場合、端部にある硬化性樹脂は後の硬化工程によって更に硬化されるため、先の硬化工程では、後の硬化工程による硬化を考慮して硬化条件を調整することが好ましい。
【0071】
次に、本発明の実施例1の動作について、
図15、
図16を参照して説明する。
【0072】
図15に示すように、貼合したカバープレート2と基部とのいずれか片方(本動作説明ではカバープレート2)に、引きはがす外力11が加わったとする。
【0073】
図15(a)に示すように、引きはがす外力11は、端部領域硬化性樹脂4aに加わるが、端部領域硬化性樹脂4aは十分に硬化している為、硬化性樹脂4の接着強度によって剥離しにくい。また、剥離しても深部領域硬化性樹脂4bは非流動状態である為、深部領域硬化性樹脂4bが隙間より流れ出ず、カバープレート2、基部及びその周辺環境を汚染しない。
【0074】
一方、
図15(b)に示すように、隙間の硬化性樹脂4の硬化後の硬化率が一様に低いと、カバープレート2と基部とが硬化性樹脂4より剥離13し、表示領域1e内に気泡12が発生し、更に隙間内部の硬化が不十分であると、硬化性樹脂4の未硬化部分が流れ出し、カバープレート2、基部及びその周辺環境を汚染する。
【0075】
図16に示すように、貼合したカバープレート2と基部とのいずれか片方(本動作説明ではカバープレート2)に、タッチ操作等により押しつぶす外力11が加わったとする。
【0076】
図16(a)に示すように、押しつぶす外力11は、隙間の深部領域硬化性樹脂4bにも加わるが、深部領域硬化性樹脂4bは十分に柔らかい為、深部領域硬化性樹脂4bが応力を吸収し応力11aは軽減する。
【0077】
一方、
図16(b)に示すように、深部領域硬化性樹脂4bから液晶パネル1に伝わった応力は、液晶パネル1端部を受けている基板受け15bを有するバックライトシャーシ15aに伝わり、液晶パネル1とバックライトシャーシ15aの接した個所に集中し基部への応力11aが液晶パネル1にかかる。
【0078】
ここで、バックライトシャーシ15aの基板受け15bから集中的に加わった応力11aは、液晶パネル1の隙間の高さを変化させるが、
図16(a)の構造では、応力11aは深部領域硬化性樹脂4bに吸収されて小さくなるため、軽微な波紋状の表示不良14を発生させるに過ぎない。一方、
図16(b)のように、隙間の硬化性樹脂4の硬化後の硬化率が一様に高く、弾性率が高いと、押しつぶす外力11が吸収されず、バックライトシャーシ15aの基板受け15bから集中的に加わった応力11aは、液晶パネル1の隙間の高さを大きく変化させ、波紋状の表示不良14を発生させる。
【0079】
以上説明したように、本実施例では、端部領域硬化性樹脂4aの硬化後の硬化率、弾性率、接着強度を相対的に高くしているため、引きはがす外力11によりカバープレート2と基部とが硬化性樹脂4より剥離しにくく、仮に引きはがす外力11によりカバープレート2と基部とが硬化性樹脂4より剥離したとしても、硬化性樹脂4が隙間より流れ出ず、カバープレート2、基部及びその周辺環境の汚染を防止できるという効果がある。また、本実施例では、深部領域硬化性樹脂4bの硬化後の硬化率、弾性率、接着強度を相対的に低くしているため、押しつぶす外力11による表示不良が発生しにくいという効果がある。