(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の詳細な説明において、主題に関係のある教示を十分に理解できるようにするために、多数の具体的な詳細事項が例として示されている。しかしながら、当業者にとっては、本教示はそのような詳細事項がなくても実施できることが明らかであるはずである。また別の場合に、よく知られた方法、手順、構成要素、及び/又は回路については、詳細を示さずに比較的高いレベルで説明することにより、本教示の態様が不必要に曖昧になることを回避している。
【0017】
本明細書において開示される各種のシステム及び方法は、選択された性の胚の育成を促進するために、卵中の胚の性を制御するか、又はそれに影響を与えることに関する。
【0018】
これらのシステム及び方法は、選択された波長を有する光を培養卵に照射して、卵内で発生中の胚の性比に影響を与えることに依存している。システムは、内部空間を有する孵卵器を含み、その中に、選択された波長を有する光を発する照明要素が取り付けられている。照明要素は、卵を保持するように設計されたトレイに取り付けられ、それによって照明要素により発せられた光が卵に照射される。照明要素は、孵卵期間早期に卵を照明し、それによって選択された性の卵の生産を促進する。
【0019】
鳥類における性決定については、様々な研究がなされてきた。ある研究では、P450(17−アルファ)及びP450アロマターゼ(P450arom)mRNA発現の局在性が、孵卵4〜9日目の鶏胚の生殖腺において調査された。P450(17−アルファ)mRNAは孵卵5〜6日目に、遺伝的な雄及び雌生殖腺において最初に検出され、P450aromは、孵卵6.5日目に雌生殖腺において最初に検出されたが、雄生殖腺では検出されなかった。そのため、孵卵開始から数日経過するまで、鶏の性決定はなされないようである。
【0020】
さらに、鳥類の性決定においては、エストロゲンの合成が重要な役割を果たす。エストロゲンの合成に必要な2つの酵素、P−450アロマターゼと17βHSDとは、形態学的分化の開始時(孵卵6〜6.5日目)においてZW(雌)生殖腺においてのみ発現する。したがって、アロマターゼと17βHSDとは、主要な雌雄二形的構成要素である。
【0021】
酵素合成は、環境の刺激の影響を非常に受けやすい。1つの既知の環境刺激は温度であり、これは、温度による性決定(temperature−dependent sex determination)(TSD)に見られる。TSDは、環境性決定の1種であり、胚発生中に経験した温度が子孫の性を決定するというものである。これは、爬虫類に分類される羊膜類脊椎動物中で優性であり、一般的である。それに関して、ごく特定的なH&H段階(Hamburger V,Hamilton HL Dev.Dyn.1992 Dec.,195(4):231−272で規定されているような、鶏胚の発生中の一連の正常な段階)において孵卵温度を上げると、家禽類の性転換が起こるという調査結果があるが、このような温度上昇によって孵化率が下がり、このような性転換が経済的に有利ではなくなる。
【0022】
特定の波長の光は光異性化を起こすことが知られており、酵素活動を光の波長によって有効に制御できる。特に、最近の調査結果では、制限エンドヌクレアーゼを分子ハサミとして使用し、リン酸ジエステル結合を切って二重鎖を切断できることが示されている。このようにして、従来の制限エンドヌクレアーゼPvuIIの触媒活性が提供された。
【0023】
これに加えて、RNA干渉を利用して、DMRT1(doublesex−mab−3−related transcription factor 1)蛋白発現量を減少させると、遺伝的に雄胚中の胚生殖腺の雌化につながり、部分的な性逆転が引き起こされるという研究結果がある。DMRT1はジンクフィンガコアを有し、これがUV光(例えば、その波長が410nm〜430nmの範囲の光等、波長約430nmの光)を吸収でき、それによって、同様にDMRT1蛋白発現量を減少させ得る。そのため、その結果としてDMRT1の量が少なくなることで、雄の子孫が減り、雌の子孫が増える。
【0024】
ここで、添付の図面に示され、以下に説明される例を詳細に参照する。
【0025】
図1Aは、本体12を有する孵卵器10を示す。
図1Aの例示的実施形態において、本体12は概して直方体の形状であり、相互に平行な第一及び第二の側壁14及び16を有する。第一及び第二の側壁14及び16は、それら自体は相互に平行な上壁及び下壁18及び20に接続され、これと直交する。後壁22は、本体12の中空の内部空間24を画定する。前壁又はドア26は、側壁14及び16のうちの一方に蝶着されて、本体12の内部空間24にアクセスできる一方で、ドア26を閉じたときに内部空間24を外部環境から隔絶できるようになっている。幾つかの例において、ドア26は透明材料で製作され、及び/又は窓を含み、それによってドア26が閉まっているときに使用者が内部空間24を見ることができる。他の例において、ドア26は内部空間24を完全に閉じる。ドア26はさらに、一方向窓で形成されてもよく、それによって、使用者は外から内部空間24を見ることができるが、空間24の外からの光は窓を通って空間24に入らない。本体12は一般に、孵卵器10の内部と孵卵器10内に置かれた卵を、孵卵器10の外に存在する放射、例えば光から遮蔽する。
【0026】
複数の保持部材又はトレイ28は、内部空間24内に配置される。トレイ28は、複数の卵30を受け、安定に保持するように構成される。図のように、各トレイ28は複数のスロット、穴35、又はその他のカップを含むことができ、その各々が1つの卵を安定に保持するように構成される。トレイ28は、本体12の内部に取り付けられる。幾つかの例において、トレイ28は、トレイ28を本体12に関して移動させることのできる1つ又は複数のアクチュエータに取り付けられる。1つの例において、各トレイ28は回転アクスル37に取り付けられ、これは回転アクチュエータ39に取り付けられて、それによって制御される(
図1B参照)。アクチュエータ39自体は、本体12に取り付けられ、トレイ28を本体12に関して移動させるように動作できる。アクチュエータは、卵30がその上に載せられた状態のトレイ28を連続的又は周期的に移動させてもよい。その1つの例において、アクチュエータ39は、トレイを水平位置(図の状態)と傾斜位置との間で時計回り及び反時計回り方向に回転させるように動作可能である。傾斜位置は、水平線から測定された角度に対応してもよく、0°と最大角度(例えば、15°又は30°)との間の範囲であってもよい。最大角度は一般に、トレイが最大角度まで回転されたときでも、トレイ28に載せられた卵30が1つもそのスロット、穴35、又はカップから外れないように選択される。
【0027】
卵30は、何れの種の鳥とすることもでき、鶏卵、七面鳥卵、及びその他が含まれるが、これらに限定されない。爬虫類及びその他の種の卵も使用できる。トレイ28は、アクチュエータ39に応答して各種の角度まで回転又は傾斜し、例えば卵が雌鳥によって産み落とされるとき、又はその他の環境条件に曝されるとき等、卵が自然界で受けるような動きをシミュレートする。
【0028】
図1Cは、トレイ28の詳細な上面図を提供し、
図1Dは複数のトレイ28を通る断面図を提供する。幾つかの実施形態において、トレイ28の上面図及び底面図が実質的に同じであり、このような実施形態では、トレイ28の底面図は、したがって、
図1Cに示される図と実質的に同じであってもよい点に留意されたい。
【0029】
図1C及び1Dに示されるように、複数の照明要素32が各トレイ28の一方又は両方の表面に設置される。1つの例において、照明要素32は、各トレイ28の下面にのみ設置される。他の例において、照明要素32は、トレイ28の上面(卵30が載せられる面に対応する)にのみ設置される。他の例において、照明要素32は、
図1Dに示されるように、各トレイ28の下面及び上面の両方に設置される。照明要素32は、これに加えて、又はその代わりに、本体12の表面(例えば、内部空間24の表面)上、又は照明要素32により発せられた光及び/又は放射がそこから卵30に届くその他の場所に設置できる。
【0030】
一般に、照明要素32は、これらが孵卵器10内に設置された各卵30に高い照明強度を提供できるように設置される。照明要素32は、したがって、
図1C及び1Dに示されるように、卵30を保持するスロット、穴35、又はカップに近接して設置されてもよい。さらに、照明要素32は、要素32により発せられた光が各卵30の全て又は実質的に全ての表面に届くように設置される。したがって、
図1Dに示されるように、卵30は、要素32により発せられる光を全ての側から受け取ることができる。トレイ28、及び卵30を保持するためのスリット、穴35、又はカップもまた、各卵30の実質的に全ての表面が光を受けることができるように設計できる。
【0031】
照明要素32は相互に、及び電源33(
図1Bに示されている)に電気的に接続される。好ましい実施形態において、複数の照明要素32は、作動のために、その端子においてAC電圧及び/又はAC電流波形を受け取る発光ダイオード(LED)要素である。特に、照明要素32及び電源33から形成されるアセンブリは、以下の特許出願のうちの何れか1つに記載されたAC駆動LED技術を取り入れることができる:Grajcarの米国特許出願公開第2011/0101883号明細書、Grajcarの米国特許出願公開第2011/0109244号明細書、Grajcarの米国特許出願公開第2011/0210678号明細書、Grajcarの米国特許出願公開第2011/0228515号明細書、Grajcarの米国特許出願公開第2011/0241559号明細書、Grajcarの米国特許出願公開第2011/0273098号明細書、Grajcarの米国特許出願第13/452332号明細書、及び/又はGrajcarの米国特許仮出願第61/570,552号明細書であり、これら全ての全体を本明細書に援用する。
【0032】
孵卵器10は、機器10の内部空間24内の条件を制御するための各種のシステムを含むことができる。
図1Bは、内部空間24内の環境及びその他の条件を制御するように動作可能な幾つかのシステムのブロック図である。
図1Bに示されるように、孵卵器10は、したがって、内部空間24の温度を制御するためのヒータ38、及び/又はクーラ、及び/又は内部空間24内の水分レベルを制御するための加湿器36、及び/又は除湿機を含むことができる。任意選択による磁場源40が、磁場源40に印加される励起電流に応答して、内部空間24内で一定の及び/又は時変的な磁場又は磁束を印加するためにさらに使用可能である。磁場源40を含む実施形態において、本体12の壁及び/又は空間24の内壁が、磁気シールドを提供し、空間24に印加される磁場又は磁束のための戻り経路を提供してもよい。トレイアクチュエータ39がさらにトレイ28に取り付けられ、トレイ28を継続的又は周期的に移動させ、回転させ、又は振動させるように動作できる。前述のように、孵卵器は、内部空間24内に設置された卵30に当てられるための光及び/又はその他の放射を発するように構成された照明要素32をさらに含む。システムの各々は、電源33から動力を受け取る。
【0033】
コントローラ31は、内部空間24内の環境及びその他の条件を制御するように動作可能なシステムを動作させるように動作可能である。コントローラ31は、各システムを作動させ、作動停止させることができ、さらに、所定の温度、湿度、磁場若しくは磁束、又はその他に到達するようにシステムの動作を調整できる。コントローラ31は、内部空間24内に配置され、コントローラ31に、温度、湿度、及びその他を含む現在の環境条件に関する情報を提供するセンサ(図示せず)を含むか、それに電気的に接続されてもよい。幾つかの実施形態において、コントローラ31は、クロックを含み、所定のスケジュールに従ってシステムを制御するように動作可能である。コントローラ31は、したがって、システムを周期的に(例えば、毎日作動パターンを繰り返すことによる)、又は他の時変的な方法で(例えば、孵卵1日ごとに異なるパターンに従ってシステムを作動させることによる)動作させてもよい。
【0034】
照明コントローラ34は、照明要素32の動作を制御するように動作可能である。照明コントローラ34は、コントローラ31から分離させることができ(図示のとおり)、又は照明コントローラ34はコントローラ31と一体化することもできる。照明コントローラ34は、各照明要素32により発せられる光の強度と波長とを制御するように動作可能である。照明コントローラ34は、以下でさらに詳細に説明するように、連続的又は時変的に(例えば、周期的に又は非周期的に)照明要素32を作動させ、及び/又は減光することができる。
【0035】
照明コントローラ34は、照明要素32をまとめて作動させ、全ての照明要素が同時に作動し、作動停止するようにし、及び/又は全ての照明要素が同じ照明強度又は減光度合いで作動されるようにすることができる。或いは、照明コントローラ34は、照明要素32の異なる組を異なる方法で、例えば第一の組の照明要素32を特定の期間にわたり(及び/又は特定の強度レベルで)作動させ、第二の組の照明要素32を異なる期間にわたり(及び/又は異なる強度レベルで)作動させるように動作できる。
【0036】
幾つかの実施形態において、照明コントローラ34は、照明要素32により発せられる光の波長を制御するように動作可能である。特に、複数の照明要素32は、複数の組の照明要素32を含んでいてもよく、各々が異なる波長を有する光を生成するように動作可能である。例えば、複数の照明要素32は、第一の波長範囲(例えば、410〜450nm、450〜495nm、又はその他の狭い波長範囲)内の波長を有する光を生成するように動作可能な第一の組の照明要素と、第一の範囲とは異なる、それと重複しない第二の波長範囲(例えば、410〜450nm、450〜495nm、又はその他の狭い波長範囲)内の波長を有する光を生成するように動作可能な第二の組の照明要素とを含むことができる。光源は、光源により発せられる照明エネルギーの90%超又は95%超が指定された狭い波長範囲内にあるときに、指定された波長範囲(例えば、410〜450nm、450〜495nm、又はその他の狭い波長範囲)内に実質的に集中するスペクトルを有する光を生成するように動作可能である点に留意されたい。幾つかの例において、光源は、したがって、指定された範囲外の少量の光(例えば、照明エネルギーの10%未満、又は5%未満)も発し得る。複数の照明要素32は、他の波長を有する光を生成するように動作可能なその他の組の照明要素をさらに含むことができる。照明コントローラ34は、各組の照明要素23を別々に制御するように動作可能であり、それによって、異なる組の照明要素23をそれぞれの照明強度で選択的に作動させることにより、複数の照明要素23により発せられる光の波長範囲を調整できる。
【0037】
一般に、孵卵器10の内部に設置された卵は孵卵器10の外に存在する光及びその他の放射から遮蔽される。孵卵器10により提供される遮蔽を含む遮蔽の結果として、卵30はしたがって、孵卵器10内の、孵卵期間中に作動される照明要素23により発せられる光の波長範囲のみに(又は実質的にそれのみに)露出される。さらに、照明コントローラ34は、指定された範囲外に実質的に集中する波長の光を生成する照明要素23が孵卵期間中、又は指定された波長範囲が卵に当てられている期間中にまったく作動しないように動作可能であってもよい。
【0038】
例えば、
図1Cに示されるトレイ28の「r」の領域において、2種類の組の照明要素32が提供され、第一の組の照明要素32aは、1つの波長範囲内の光を発するように動作可能であり、第二の組の光要素32bは、他の波長範囲内の光を発するように動作可能である。照明コントローラ34は、照明要素32a及び32bの組を別々に制御するように動作可能であり、それによって、各組を他方の照明要素の組とは異なるタイミングと異なる強度で作動させることができる。異なる組の照明要素を、トレイ28のうち、トレイ28の他の面を含め、領域「r」の外側の残りの部分に同様に設置できる。
【0039】
1つの実施形態において、複数の照明要素32は、青色波長(450〜495nm)光、紫外光、又は電磁放射を発する照明要素32を含む。照明要素32は、光の強度を減光させて、強度を3ルーメン未満に下げるように動作可能な照明コントローラ34によって制御される。そのため、一定の低強度の波長の光が内部空間24全体を通じて発せられる。光は、所望の正確な光波長を方向付けるために狭い周波数又は単色とすることができる。これに加えて、低強度と説明されているが、コントローラ34により必要とされれば、より高強度の波長の光を提供することもできる。さらに、LED要素が、LED照明要素の特性から照明要素32として使用されている実施形態において、光は長い持続期間にわたりオンのままにすることができる。
【0040】
同じ又は他の実施形態において、複数の照明要素32は、410〜450nmの波長範囲の光を発する照明要素32を含む。照明要素32はさらに、光の強度を減光させて、強度を3ルーメン未満に下げるように動作可能な照明コントローラ34によって制御される。そのため、一定の低強度波長光が内部空間24全体に発せられる。それに加えて、低強度と説明されているが、コントローラ34により必要とされれば、より高強度の光を提供することもできる。
【0041】
光の強度を3ルーメン未満に低くすることができる一方で、光の強度は同様に、800ルーメン、1000ルーメン、又はそれを超える出力まで増大させることもできる。同様に、光の持続時間は、日単位、週単位、又は月単位等、長期間にわたるようにすることができる一方で、明期間と暗期間との間の持続時間はまた、照明コントローラ34によって時間単位、分単位、秒単位、さらにはミリ秒単位の精度で制御できる。
【0042】
他の実施形態において、複数の照明要素32は、同じトレイ28上に、赤色波長範囲の光を発する照明要素、並びに電磁放射及び紫外/青色波長範囲の光を発する照明要素を含む。
【0043】
加湿器36も内部空間24に関連付けられ、好ましくは上壁18に取り付けられる。加湿器36は、ドア26が閉まっているときに内部空間24内の湿度レベルを増大させることのできる加湿要素を有する。加湿器36は、水を受けるための水吸込みポートを含むことができる。このようにして、内部空間24内の湿度を制御して、0%の湿度から100%の湿度までの何れの相対湿度でも提供でき、それによって内部空間24内の湿度を事前設定できる。好ましくは、湿度は50%〜80%の湿度の範囲に保持される。幾つかの例において、湿度を所定の範囲に保持するために除湿機も使用できる。
【0044】
ヒータ38も電源33に電気的に接続され、内部空間24内に設置されて、内部空間内に所定の量の熱を供給する。好ましくは、孵卵器10の内部空間24は、孵卵中に華氏90〜110度の温度に保持される。
【0045】
1つの実施形態において、磁場源40は孵卵器10に関連付けられ、内部空間24内に取り付けられて、空間24内を通じて所定の磁束を形成するか、その中に設置された卵30に影響を与える。
【0046】
図2は、光源を使用して卵生胚の性を制御する方法200のステップを示すフロー図である。この方法は、孵卵器10等の孵卵器を使用して、又は他の適当な何れかの装置を使用して実行できる。
【0047】
方法200はステップ201から始まり、そこで照明要素(例えば、LED等の照明要素23)が卵支持トレイに沿って設置される。孵卵器10が使用される実施形態において、卵支持トレイはトレイ28である。照明要素は、卵支持トレイの上及び/又は下面を含め、
図1C及び1Dに示されているように卵支持トレイに取り付けることができる。その代わりに、又はそれに加えて、照明要素は内部空間24の側面に、卵支持トレイに沿って設置されて、卵支持トレイの上及び/又は下面を照明するように取り付けることができる。照明要素は、所定の波長範囲内の光を発してよく、異なる波長範囲の光を発する異なる照明要素の組が支持トレイに沿って設置されてもよい。
【0048】
ステップ203において、卵が、それに沿って照明要素が設置されている卵支持トレイ上に設置される。孵卵器10が使用される実施形態において、卵30は、トレイ28の上、又はその中に位置付けられて卵30を所定の位置に保持するように構成されたスリット、穴35、又はカップ内に設置される。卵は、照明要素により発せられた光が各卵30の実質的に外面全体に確実に届くようにするために、卵支持トレイ上に、離間されて均等に分散されるように設置される。
【0049】
卵が支持トレイ上に載せられたら、ステップ205において、所定の環境条件が卵に適用される。環境条件は、所定のレベルの湿度と温度を含むことができる。環境条件は、磁場の印加をさらに含むことができる。環境条件は、これに加えて、例えばトレイ28を回転アクスル37上で回転させるように動作可能なトレイアクチュエータ39により提供される移動又は作動を含むことができる。一般に、環境条件は、所定の複数日にわたるスケジュールに従って適用され、それにより、異なる日に及び/又は各日の異なる時刻に異なる環境条件を適用できる。環境条件は一般に、複数の卵の孵化を促進するように選択される。
【0050】
環境条件の適用中、ステップ207において、環境条件の適用に加えて所定の照明条件が卵に適用される。照明条件は、卵内で選択された性の胚の生成を促進するように選択される。照明条件は、照明要素により卵30に提供される光の所定の波長を含むことができ、波長ごとに所定の照明強度が提供される。照明条件は一般に、複数日にわたるスケジュールに従って適用され、それにより、複数日にわたるスケジュールで適用される環境条件に従い、異なる照明条件を異なる日に及び/又は各日のうちの異なる時刻に適用できる。照明条件は、卵30に指定された波長範囲(例えば、410〜450nm、450〜495nm、又はその他の狭い波長範囲)内に実質的に集中するスペクトルを有する光を、卵に照射される照明エネルギーの90%超又は95%超が指定された狭い波長範囲内にあるように照射するステップを含むことができる。卵はまた、指定された範囲外の少量の光(例えば、照明エネルギーの10%未満、又は5%未満)を受け取り得ることに留意されたい。
【0051】
ステップ205及び207は、環境条件及び/又は照明条件に対する調整が決定されて卵30に適用される間に繰返し実行されてもよい。支持トレイ上に載せられた卵の孵卵期間が経過したら、ステップ209において、卵30及び/又は卵30からの稚鳥がその環境から取り出される。
【0052】
動作中、ステップ207で卵に適用された所定の照明条件は、卵30に含まれる胚の性を制御するように選択できる。例えば、複数の卵30又は胚から、例えば七面鳥の雌鳥の子孫のパーセンテージを増やすことが望まれる場合、卵又は胚に所定の電磁放射、UV、又は青色光を照射する。さらに、所定の湿度及び磁場も孵卵器10内に提供される。その結果、卵内の酵素活性が可逆的に制御される。
【0053】
具体的には、P450アロマターゼの「P450」とは、そのスペクトル吸収特性に由来している(Photonic 450nm)。この分子は、光を吸収すると、それを他のエネルギー形態に変換しなければならない。吸収されたエネルギーは、化学反応のパワーとして使用されず、放射にも変換されない。そのため、熱又は場合により電子の低から高へのスピン転移が副生成物として生じることになる。これによって、雄となり得る鳥を雌鳥に転換する酵素が強化又は制御される。
【0054】
他の実施形態においては、DMRT1蛋白発現量を減らして、性転換を引き起こす。具体的には、孵卵開始から数日間(例えば、孵卵0日〜6日中)に卵30に近UV光又は青色光(例えば、410nm〜450nmの範囲に実質的に集中する波長を有する光等、約430nmの波長を有する光)を照射し、それによってDMRT1蛋白発現量を削減する。そのため、卵30を近UV光又は青色光に露出することによって卵30のDMRT1のレベルが低下し、その結果として、卵内で発育する雄の子孫が減り、雌の子孫が増える。
【0055】
このようにして、光の波長を利用して、受精期間中にP−450アロマターゼの合成を制御し、又はDMRT1蛋白発現量を減少させ、したがって、鳥類の性を制御又は転換させることにより、電磁放射、UV、又は青色光で照明されなかった複数の卵の対照群と比較して、孵卵からの雌動物のパーセンテージをより大きくするか、又は雄動物のパーセンテージをより大きくすることができる。1つの実施形態において、雌雄比は、指定された波長範囲の照明が適用されなかった対照群において見られる比と比較して、少なくとも5%増大させることができる。他の実施形態において、照明された卵における雌雄比は、対照群において見られる比と比較して、少なくとも10%増大する。
【0056】
特に、受精七面鳥卵と受精鶏卵との両方を使用して、実験的試験を行った。卵を、孵卵期間中に卵を取り囲む、トレイ28上に取り付けられた照明要素32を有する孵卵器10等の孵卵器内に置いた。具体的には、約450nmの単色青色光を生成するLED照明要素をトレイに取り付け、これを使用して、孵卵期間中、孵卵開始から約84時間(3.5日)にわたり卵を照明した。トレイ28の照明要素32からの光のみが卵に届くような環境に孵卵器10を置き、孵卵器内の照明要素32の付近に卵を置いた。孵卵器10内に入れる前に、七面鳥卵を約40〜50°Fの温度で数時間保管し、その後、室温に戻してから孵卵器10内に置いた。
【0057】
この実験的試験において、まず、孵卵第1日目に七面鳥卵を孵卵器10に投入し、孵卵第2日目に鶏卵を追加した。機器10内の湿度、孵卵温度、及び機器10の外部の周辺室温を孵卵中毎日記録した。湿度を約56%に、また孵卵温度を98〜100°Fに保った。室温は通常、67°〜73°Fで変化したが、部屋は数回にわたり80°〜90°Fの範囲の温度に到達した。孵卵開始の約3週間後に卵を孵卵器から取出し、卵内の胚の性別を判定した。
【0058】
初期試験中、雌七面鳥胚対雄七面鳥胚の比は約2:1であることがわかった。これに加えて、初期試験中、多数の雌雄両性七面鳥胚が発見された。さらに分析すると、雌雄両性七面鳥は雌と判定され、雌七面鳥胚対雄七面鳥胚の比は3:1となった。この比は、本明細書中に記載されている所定の照明条件が適用されない一般的な孵卵方法による培養七面鳥卵について得られる約1:1の雌雄比と大きく異なる。これに加えて、実験した七面鳥卵の孵化率は100%であり、これは一般的な孵卵方法を使用する業界の約85%という孵化率と対照的であり、したがって、青色波長光の照射が七面鳥などの鳥類の孵化率を向上させることを示している。
【0059】
鶏卵に関して、性別判定した多数の卵が雌雄両性であることがわかった。七面鳥胚で見られた3:1の性比と、雌雄両性の鶏胚とにより証明されるように、光を利用して、特に鳥類の種における卵の胚の性を制御するか、又はそれに影響を与えることができる。実験的試験では青色光のみを使用したが、紫外、緑色、黄色、橙色、赤色、及び赤外光を含むがこれらに限定されないその他の波長の光の照射も異なる程度まで卵内の胚の性を使用するために制御できる。
【0060】
好ましいプロトコルによれば、ステップ207において、孵卵開始から6.5日間にわたり、少なくとも1日1時間の期間、選択された波長範囲(例えば、390〜419nm、410〜450nm、420〜450nm、450〜495nm、又はその他の適当な範囲)を有する光で卵又は胚を照明する。1つの実施形態においては、孵卵開始から3.5又は4.5日間にわたり、選択された波長を有する光を使用して、1日少なくとも1時間、卵を照明する。或いは、孵化0日〜6.5日まで、毎日24時間、選択された波長範囲を有する光で胚を照明する。或いは、孵卵開始から6.5日の期間にわたり、毎日(又はその他の適当な周期ベースで)で適用されるその他の照明期間が想定される。
【0061】
異なる波長の光を使用して、(対照群の比と比較して)鳥胚の雄雌比を増大させるか、雌雄比を増大させることができるが、同様に、卵に当てられる光の強度又はルーメン出力にも効果がある。そのため、鳥の種に応じて、七面鳥、鶏、アヒル、又はその他の何れかによって、類似の対照的状況(選択された波長と強度の光が当てられない)で提供されるパーセンテージと比較して、照明を使用したときに複数の卵から生まれる雄又は雌のパーセンテージの増加を最適化するように決定できる。
【0062】
同様に、本明細書に記載されているシステム及び方法は、魚、両生類、爬虫類、哺乳類、及びその他を含む、他の卵生種の卵にも応用できる。1つの実施形態において、照明要素32は、全体を本明細書に援用するGrajcarらの米国特許出願第13/715,904号明細書において開示されているものと同様の複数の水中照明装置である。照明要素32は、その付近に位置付けられた魚卵に対して異なる波長の光を提供する。光は、鮭等の水中生物の卵によって受け取られ、鮭又はその他の種の性を制御するために使用される。1つの実施形態において、約450nmの青色波長を有する光を卵に当て、このような波長の光が当てられない対照群と比較して、雌雄比を増大させる。同様に、他の実施形態において、(約390nm〜419nm)の可視光吸収ソーレ帯内の波長を有する光によって、このような波長の光が当てられない対照群と比較して、雄雌比を増大させる。光の他の波長も同様に、効果を最適化し、水中を進む光の影響を考慮するように利用され、発せられてもよい。
【0063】
水生生物の性が制御又は決定されることになる
図3及び4に示される例示的実施形態においては、水槽システム510が提供され、これは、開放した上部525を有し、ある体積の水と、当技術分野で知られているように幼生及び卵を含む水生生物530を保持するための内部空間522を形成する隣接壁520を有するタンク515を有する。照明装置535も提供され、これは隣接側壁520の上面と係合する大きさ及び形状の本体540を有する。1つの実施形態において、本体540は周辺フランジ545を有し、それが隣接側壁520と係合して、本体540がタンク515内に収まるようになっている。
【0064】
前述の実施形態と同様に、コントローラ550は、照明装置535に電気的に接続されて、照明装置535上の複数の照明要素32a及び32bを作動させる。照明要素32a及び32bは、390nm〜460nmの範囲内の光を発し、それによってDMRT1の生成を促進又は阻止し、したがって、水生生物530の性を制御又は決定するような化学反応を起こす。或いは、約390nm〜395nm、425nm〜430nm、及び/又は450nm波長光が、それぞれ第一及び第二の照明要素32a及び32bによって提供される。他の実施形態において、440〜460nmの所定の限定的な波長範囲が使用される。前述のように、1つの実施形態では、光は一定であるが、他の実施形態では間欠的であり、1秒及びさらには3ms未満の明のサイクル又は期間と、その後の同様に1秒未満、又はさらには3ms未満とすることのできる暗のサイクル又は期間とによる明及び暗の交互の期間を提供する。透明カバー555は、照明要素32a及び32bを覆うように延び、1つの実施形態ではアクリル材料で製作される。カバー555により、照明装置535の、タンク内の水に隣接する表面上にある照明要素32a及び32b及び/又は駆動回路(図示せず)に水がかかるのが防止される。
【0065】
動作中、タンク515は水で満たされ、その中に幼生等の水生生物が入っている。次に照明装置535がタンク515の開口部を覆うように設置される。任意選択で、タンクの壁520は、不透明材料で製作されて、照明装置535により提供される光以外の光がタンク515の内部に存在しないようにされる。すると、コントローラ550を使用して、孵卵期間中、照明要素から所望の所定の波長、強度、及び変調の光が提供され、卵が照明される。
【0066】
本出願人のために行われた実験では、テレピア幼生をタンク515内に投入し、照明装置の照明要素32a及び32bで450nm波長光(例えば、440〜460nmの範囲内に集中する波長を有する光)を発した。1つの群に450nmの処理を5日間行い、他の群には450nmの処理を45日間行った。次に、両方の群の性別判定を行い、自然界で知られている約50%−50%の雄雌比が見られるか否かを確認した。450nmの光に45日間露出された群においては、7匹の標本のうち5匹の雄が発見され、1匹は雌、1匹は間性(両方の器官が存在する)であった。450nmの処理を5日間受けた群に関しては、5匹がサンプリングされ、4匹が雄、1匹のみが雌であった。全体として、450nmの処理を受け、サンプリングされた12匹のテラピアについては、9匹が雄、2匹が雌、1匹が異常な間性であった。そのため、450nmの処理を受けたテレピアでは、その性が照明装置に基づいて雄となるように制御又は決定されたため、雌より雄が大幅に多かった。したがって、所定の波長の光を集中させることによって、水生生物530の性を制御又は決定できる。
【0067】
この実施形態においては、提供される水の体積が水槽システム510内にあるが、河川、湖、海洋、及びその他を含むがこれらに限定されない、何れの場所の水も想定され、本開示の範囲から逸脱しない。これに加えて、テラピア以外の水生生物も本開示によって想定され、行われた実験の例においてのみ提示されている。
【0068】
このようにして、鳥及び魚(又はその他の水生動物)の胚を含む胚の性を制御するための方法と、それを実行する装置とが提供される。特に、好ましくは、AC駆動LED照明アセンブリである照明アセンブリの使用を通じて、異なる波長及び強度の光が複数の鳥胚又は魚(若しくはその他の水生動物)の胚に提供される。影響を与えるその他の要素は、卵を所定の湿度及び磁気特性に曝露させることを含むことができる。その結果、複数の胚からの雄又は雌の何れかのパーセンテージは、このような波長及び強度の光を受けていない胚と比較して少なくとも5%増大する。そのため、産卵事業にとって、複数の卵か得られる雌の動物の比を増大させ、複数の卵から得られる採卵動物の量を最大化できる。その結果、安楽死又は喪失させなければならない鳥の数が削減され、効率が向上し、利益が最大化する。
【0069】
特に断りがないかぎり、後述の特許請求の範囲を含む本明細書中に記載されている全ての測定値、数値、評価、位置、大きさ、サイズ、及びその他の仕様は、厳密ではなくおおよそである。これらは、これらが関係する機能及びそれが関係する技術分野において一般的なものと一致する合理的範囲を有するものと意図される。
【0070】
保護の範囲は、後述の特許請求の範囲によってのみ限定される。その範囲は、本明細書とその後の審査経過とを考慮して解釈したときに、特許請求の範囲内で使用されている文言の通常の意味と同程度に広く、構造的及び機能的均等物の全てを包含することが意図され、そのように解釈するべきである。それにかかわらず、特許請求の範囲の何れにも、特許法第101条、第102条、又は103条の要求事項を満たさない主題が含まれないものとし、又はそのように解釈するべきではない。このような主題が意図せず含まれた場合に関しては、ここでそれを否認する。
【0071】
上文で述べたことを除き、記載又は図示されているものの何れも、それが特許請求の範囲内に記載されているか否かを問わず、何れの構成要素、ステップ、特徴、物体、利益、利点、又は均等物を公衆に献呈するとは意図されず、そのように解釈されるべきではない。
【0072】
当然のことながら、本明細書で使用される用語及び表現は、本明細書中にそれ以外の具体的な意味が記載されていないかぎり、それに対応するそれぞれの探究及び調査分野に関してそのような用語及び表現に付与された通常の意味を有する。第一の、第二の等の関係を示す用語は、1つの実体又は動作を相互に区別するためにのみ使用され得、必ずしもかかる実体又は動作間に実際のかかる関係又は順序があることを求めるか、又は黙示しているわけではない。「含む(comprises)」、「含んでいる(comprsing)」という用語又はそれらの変化形は、非排他的な包含を含むものであり、複数の要素を含む工程、方法、物品、又は装置は、それらの要素のみを含むのではなく、明記されていない、又はそのような工程方法、物品、又は装置に固有のその他の要素を含み得る。「1つの(a)」又は「1つの(an)」に続く要素は、さらなる限定なしに、その要素を含む工程、方法、物品、又は装置に同じ要素が他に存在することを排除しない。
【0073】
本開示の要約は、読者が技術的開示の基本を迅速に把握できるように提供されている。これは、それが特許請求の範囲又は意味を解釈又は限定するために使用されないという理解のうえで提示されている。これに加えて、上述の詳細な説明では、本開示を合理化するために、各種の特徴が各種の実施形態にまとめられていることがわかる。この開示方法は、特許請求されている実施形態に、各請求項に明記されているもの以外の特徴が必要となるとの意図を反映するとは解釈されない。むしろ、後述の特許請求の範囲に反映されているように、発明性のある主題は、開示されている単独の実施形態の全ての特徴のうちの一部にある。そのため、後述の特許請求の範囲を本明細書により詳細な説明に援用し、各請求項は、別に特許請求される主題として自立している。
【0074】
上記は、最良の態様及び/又はその他の例と考えられるものを説明しているが、そこには様々な変更を加えることができ、また本明細書において開示されている主題は、様々な形態及び例において実施でき、教示は様々な用途に応用でき、そのうちの一部のみが本明細書において開示されていると理解される。以下の特許請求の範囲により、本教示の真の範囲内に含まれる全てのあらゆる応用形態、改良形態、及び変更形態を特許請求することが意図されている。