特許第6654329号(P6654329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6654329冷凍・冷蔵ショーケースの温度警報発報方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654329
(24)【登録日】2020年2月3日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】冷凍・冷蔵ショーケースの温度警報発報方法
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20200217BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20200217BHJP
   A47F 3/04 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   F25D23/00 301B
   F25D11/00 101E
   A47F3/04 K
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-256498(P2015-256498)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-120148(P2017-120148A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000213493
【氏名又は名称】中野冷機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088720
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞一
(72)【発明者】
【氏名】長坂 直人
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 修太郎
【審査官】 田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−218158(JP,A)
【文献】 特開昭60−258611(JP,A)
【文献】 特開平05−240570(JP,A)
【文献】 実開平04−120585(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/00
A47F 3/04
F25D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍・冷蔵ショーケースの庫内温度を測定する工程と、
前記庫内温度が予め設定した警報温度以上に上昇したことを判定する工程と、
前記庫内温度が前記警報温度以上に上昇してからの経過時間毎にその経過時間に対して前記警報温度と前記庫内温度との温度差に応じて予め設定した掛け率を掛けた修正経過時間を求める工程と、
前記修正経過時間を積算して積算修正経過時間を求める工程と、
前記積算修正経過時間が予め設定した警報発報積算時間に到達したことを判定する工程と、
前記積算修正経過時間が前記警報発報積算時間に到達した場合に温度警報を発報する工程と、
を有することを特徴とする冷凍・冷蔵ショーケースの温度警報発報方法。
【請求項2】
前記警報温度として、基準警報温度とこの基準警報温度より低い下限警報温度とを設定し、
前記庫内温度が前記下限警報温度以上に上昇した場合と前記基準警報温度以上に上昇した場合とで前記掛け率の値を変え、前記庫内温度が前記下限警報温度以上に上昇した場合の前記掛け率の値より前記庫内温度が前記基準警報温度以上に上昇した場合の前記掛け率の値を大きくしていることを特徴とする請求項1記載の冷凍・冷蔵ショーケースの温度警報発報方法。
【請求項3】
前記警報温度として、基準警報温度とこの基準警報温度より低い下限警報温度とこの基準警報温度より高い上限警報温度とを設定し、
前記庫内温度が前記基準警報温度である場合には、前記掛け率の値を“1”とし、
前記庫内温度が前記下限警報温度以上であって前記基準警報温度未満の場合には、前記掛け率の値を“1”より小さい値で比例変化させ、
前記庫内温度が前記基準警報温度より大きく前記上限警報温度以下である場合には、前記掛け率の値を“1”より大きい値で比例変化させることを特徴とする請求項1記載の冷凍・冷蔵ショーケースの温度警報発報方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍・冷蔵ショーケースの庫内温度が上昇した場合に温度警報を発報するようにした冷凍・冷蔵ショーケースの温度警報発報方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗では、商品を陳列する機器として冷凍・冷蔵ショーケースが使用されている。これらの冷凍・冷蔵ショーケースでは、何らかの不具合により商品陳列室内の温度(庫内温度)が許容温度以上に上昇すると、陳列されている商品が傷んでしまう。そこで、庫内温度が許容温度より高い或る一定温度(警報温度)以上に上昇した場合には温度警報を発報し、ユーザーに庫内温度の上昇を伝えるようにしている。但し、庫内温度が警報温度に上昇した場合に直ちに温度警報を発報すると、冷却器の除霜時や商品陳列室内への商品陳列作業時における庫内温度の上昇によっても温度警報が発報されることになる。このような除霜時や商品陳列作業時における庫内温度の上昇は、冷凍・冷蔵ショウケースの不具合に伴う温度上昇ではないため、温度警報を発報しないようにすることが望ましい。そこで、温度警報の発報を、庫内温度が警報温度以上に上昇し、かつ、その状態が一定の経過時間(遅延時間)を経過した場合に行うことが一般的である。そして、除霜時や商品陳列時の温度上昇等のショーケースの不具合でない温度上昇時に温度警報を発報させないようにするためには、警報温度を高めに設定し、遅延時間長めに設定する必要がある。
【0003】
また、冷凍・冷蔵ショーケースの管理を集中管理盤を用いて行い、庫内温度の上昇等の不具合が発生した場合に警備会社、メンテナンス会社、自社メンテナンス部門等に温度警報を含む各種の警報を発報するようにした場合において、警備会社、メンテナンス会社、自社メンテナンス部門等ごとに温度警報を発報する条件である警報温度や遅延時間を夫々異なる値に設定したものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−242705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来行われている温度警報の発報方法、即ち、庫内温度が警報温度以上に上昇し、かつ、庫内温度が警報温度に上昇してから一定の遅延時間を経過した後に温度警報を発砲する方法では、温度警報を発報するタイミングが遅れ、冷凍・冷蔵ショーケースの商品陳列室内に陳列されている商品が温度上昇により傷んでしまう場合がある。
【0006】
さらに、従来行われている温度警報の発報方法では、商品陳列室内の温度が許容温度以上に上昇しても警報温度以下であると、その状態が長時間続いても温度警報が発報されないことになり、商品陳列室内に陳列されている商品が傷んでしまう。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、冷凍・冷蔵ショーケースの庫内温度の上昇の程度に応じて温度警報を発報するタイミングを調整し、温度警報の発報が遅れることや温度警報が発報されないことが原因となる商品の傷みを抑制することができる冷凍・冷蔵ショーケースの温度警報発報方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る冷凍・冷蔵ショーケースの温度警報発報方法は、冷凍・冷蔵ショーケースの庫内温度を測定する工程と、前記庫内温度が予め設定した警報温度以上に上昇したことを判定する工程と、前記庫内温度が前記警報温度以上に上昇してからの経過時間毎にその経過時間に対して前記警報温度と前記庫内温度との温度差に応じて予め設定した掛け率を掛けた修正経過時間を求める工程と、前記修正経過時間を積算して積算修正経過時間を求める工程と、前記積算修正経過時間が予め設定した警報発報積算時間に到達したことを判定する工程と、前記積算修正経過時間が前記警報発報積算時間に到達した場合に温度警報を発報する工程と、を有する。
【0009】
また、前述の冷凍・冷蔵ショーケースの温度警報発報方法において、前記警報温度として、基準警報温度とこの基準警報温度より低い下限警報温度とを設定し、前記庫内温度が前記下限警報温度以上に上昇した場合と前記基準警報温度以上に上昇した場合とで前記掛け率の値を変え、前記庫内温度が前記下限警報温度以上に上昇した場合の前記掛け率の値より前記庫内温度が前記基準警報温度以上に上昇した場合の前記掛け率の値を大きくしていることが望ましい。
【0010】
また、前述の冷凍・冷蔵ショーケースの温度警報発報方法において、前記警報温度として、基準警報温度とこの基準警報温度より低い下限警報温度とこの基準警報温度より高い上限警報温度とを設定し、前記庫内温度が前記基準警報温度である場合には、前記掛け率の値を“1”とし、前記庫内温度が前記下限警報温度以上であって前記基準警報温度未満の場合には、前記掛け率の値を“1”より小さい値で比例変化させ、前記庫内温度が前記基準警報温度より大きく前記上限警報温度以下である場合には、前記掛け率の値を“1”より大きい値で比例変化させることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る冷凍・冷蔵ショーケースの温度警報発報方法によれば、庫内温度が警報温度以上に上昇した場合に、警報温度に上昇してからの経過時間毎にその経過時間に予め設定されている掛け率を掛けた修正経過時間を求め、修正経過時間を積算した積算修正経過時間が予め設定されている警報発報積算時間に到達した場合に温度警報が発報される。そして、掛け率は警報温度と庫内温度との温度差に応じた値に設定されている。このため、警報温度を低い温度に設定し、さらに、庫内温度が警報温度に近い場合には掛け率の値を小さくするとともに庫内温度が警報温度から離れて上昇するにつれて掛け率の値を大きくすることにより、庫内温度が上昇するにつれて修正経過時間が大きくなるとともに積算修正経過時間が急激に大きくなって警報発報積算時間に迅速に到達し、温度警報が迅速に発報されるので、庫内温度の上昇に伴う商品の傷みを抑制することができる。さらに、警報温度を低い温度に設定することにより、庫内温度が低い温度であってもその庫内温度が警報温度を超えている場合には積算修正経過時間が次第に増大するとともにやがて警報発報積算時間に到達して温度警報が発報されるので、庫内温度が従来では温度警報の発報対象とならない低い温度の場合でも温度警報を発報させることができ、庫内温度が低い温度に上昇してその状態が継続された場合であっても商品が傷むということを抑制することができる。
【0012】
また、警報温度として、基準警報温度とこの基準警報温度より低い下限警報温度とを設定し、庫内温度が下限警報温度以上に上昇した場合と基準警報温度以上に上昇した場合とで掛け率の値を変え、庫内温度が下限警報温度以上に上昇した場合の掛け率の値より庫内温度が基準警報温度以上に上昇した場合の掛け率の値を大きくしている。このため、庫内温度が基準警報温度以上に上昇した場合には、積算修正経過時間が急激に大きくなって警報発報積算時間に迅速に到達するとともに温度警報が迅速に発報されるので、庫内温度の上昇に伴う商品の傷みを抑制することができる。さらに、庫内温度が下限警報温度以上には上昇したが基準警報温度以上には上昇しない場合でも、その状態が継続した場合には積算修正経過時間が次第に増大するとともにやがて警報発報積算時間に到達して温度警報が発報されるので、庫内温度が基準警報温度未満であって下限警報温度以上の低い温度に上昇してその状態が継続された場合であっても商品が傷むということを抑制することができる。
【0013】
また、警報温度として、基準警報温度とこの基準警報温度より低い下限警報温度とこの基準警報温度より高い上限警報温度とを設定し、庫内温度が基準警報温度である場合には、掛け率の値を“1”とし、庫内温度が下限警報温度以上であって基準警報温度未満の場合には、掛け率の値を“1”より小さい値で比例変化させ、庫内温度が基準警報温度より大きく上限警報温度以下である場合には、掛け率の値を“1”より大きい値で比例変化させている。このため、庫内温度が基準警報温度以上に上昇した場合には、積算修正経過時間が急激に大きくなって警報発報積算時間に迅速に到達するとともに温度警報が迅速に発報されるので、庫内温度の上昇に伴う商品の傷みを抑制することができる。さらに、庫内温度が下限警報温度以上には上昇したが基準警報温度以上には上昇しない場合でも、その状態が継続した場合には積算修正経過時間が次第に増大するとともにやがて警報発報積算時間に到達して温度警報が発報されるので、庫内温度が基準警報温度未満であって下限警報温度以上の低い温度に上昇してその状態が継続された場合であっても商品が傷むということを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の冷蔵ショーケースを示すブロック図である。
図2】庫内温度が下限警報温度、基準警報温度、上限警報温度と次第に上昇する場合における温度警報の発報タイミングを説明するグラフである。
図3】庫内得温度が下限警報温度以上に上昇するが基準警報温度以上に上昇しない場合の温度警報の発報タイミングについて説明するグラフである。
図4】警報温度(下限警報温度、基準警報温度、上限警報温度)と庫内温度との温度差に応じて設定した掛け率の変化について示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について、図面に基づいて説明する。図1は、冷蔵ショーケース1の商品陳列室内の温度(庫内温度)の上昇時に温度警報を発報するシステムを示すブロック図であり、冷蔵ショーケース1には庫内温度を測定する温度センサ2が設けられ、この温度センサ2は制御装置3に接続されている。制御装置3は、冷蔵ショーケース1を管理する事務室等に設置されている。なお、冷蔵ショーケースには冷却器を含む冷凍装置が設けられ、この冷凍装置により冷蔵ショーケース1の庫内温度が調整されている。
【0016】
制御装置3には、経過時間を測定するタイマ4と、各種のデータを記憶する記憶部5と、記憶部5に記憶されたデータと温度センサ2で測定した庫内温度とタイマ4で測定した時間とに基づいて各種の演算を行う演算部6と、演算部6での演算結果に応じて温度警報を発報する温度警報発報部7とが設けられている。
【0017】
記憶部5に記憶されているデータとしては、予め設定した警報温度(下限警報温度、基準警報温度、上限警報温度)や、庫内温度が警報温度以上に上昇してからの経過時間毎にその経過時間から修正経過時間を求める場合に使用する掛け率等の固定データと、経過時間に掛け率を掛けることにより得られた修正経過時間を積算した積算修正経過時間である可変データ等がある。
【0018】
ここで、下限警報温度を8℃、基準警報温度を12℃、上限警報温度を16℃に設定した場合における本発明の温度警報の発報と、基準警報温度を警報温度として庫内温度がその警報温度に上昇してから一定の遅延時間の経過後に温度警報を発報する従来例とについて、図2ないし図4に基づいて説明する。なお、図2は、庫内温度が下限警報温度、基準警報温度、上限警報温度と次第に上昇する場合について示しており、図3は、庫内温度が下限警報温度よりは上昇するが基準警報温度(従来例の警報温度)には上昇しない場合について示している。
【0019】
また、図4は、警報温度(下限警報温度、基準警報温度、上限警報温度)と庫内温度との温度差に応じて設定した掛け率の変化について示している。この掛け率の値は、庫内温度が基準警報温度(12℃)である場合には“1”、庫内温度が下限警報温度以上であって基準警報温度未満の場合には、1よれ小さい値で比例変化し、庫内温度が基準警報温度より大きく上限警報温度以下である場合には、“1”より大きい値で比例変化するように設定されている。
【0020】
このような構成において、冷蔵ショーケース1の庫内温度は温度センサ2により測定されており、測定結果は制御装置3の演算部6に入力されている。演算部6では、庫内温度が下限警報温度以上に上昇したか否かの判定が行われ、庫内温度が下限警報温度に上昇したと判定された場合には一定の経過時間毎(例えば、1分毎)にその経過時間に掛け率を掛けた修正経過時間が演算される。さらに、演算部6では、修正経過時間を積算することにより積算修正経過時間が求められ、積算修正経過時間が警報発報積算時間に到達したか否かが判定され、警報発報積算時間に到達した場合には、温度警報発報部7に対して温度警報を発報する信号を出力し、温度警報発報部7から温度警報が発報される。
【0021】
庫内温度が基準警報温度より低い場合には、修正経過時間を求めるための掛け率が“1”より小さいので、修正経過時間は実際の経過時間の値より小さくなり、その修正経過時間を積算した積算修正経過時間の上昇は緩やかになる。
【0022】
一方、庫内温度が基準警報温度より上昇した場合には、修正経過時間を求めるための掛け率が“1”より大きくなるとともに、その掛け率は庫内温度が上昇するにつれて次第に大きくなる。このため、庫内温度が上昇するにつれて修正経過時間を積算した積算修正経過時間は急激に大きくなり、警報発報積算時間に迅速に到達するとともに温度警報が迅速に発報される。このため、庫内温度が基準警報温度より上昇した場合には、従来例の温度警報の発報方法、即ち、庫内温度が警報温度に上昇してから一定の遅延時間が経過した後に温度警報を発報する方法に比べて、温度警報を発報する時間が“T”短くなる。これにより、庫内温度の上昇に伴う商品の傷みを抑制することができる。
【0023】
つぎに、図3に示したように、庫内温度が下限警報温度以上には上昇したが基準警報温度以上には上昇しない場合でも、その状態が継続することにより修正経過時間を積算した積算修正経過時間が求められ、この積算修正経過時間はやがて警報発報積算時間に到達して温度警報が発報される。このため、庫内温度が基準警報温度未満であって下限警報温度以上の低い温度に上昇してその状態が継続された場合に、温度警報が発報されずに商品が傷むということを抑制することができる。従来例の温度警報発報方法によれば、庫内温度が警報温度に到達しない場合には、温度警報が発報されない。
【0024】
なお、本実施の形態では、温度警報発報方法を冷蔵ショーケースに適用した場合を例に挙げて説明したが、この温度警報発報方法を冷凍ショーケースに適用してもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 冷蔵ショーケース
2 温度センサ
3 制御装置
4 タイマ
5 記憶部
6 演算部
7 温度警報発報部
図1
図2
図3
図4