(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1(a)に示す配管構造10は、航空機のエンジンからの抽気を空調装置や防氷装置等に供給する。
配管構造10は、航空機の主翼や胴体の内部に用意されたスペースに配置されており、主翼や胴体を構成する構造部材により支持されている。
本明細書において、「上」は鉛直方向の上方をいい、「下」は鉛直方向の下方をいうものとする。
また、本明細書において、「水平方向」は、地上に駐機された状態の航空機における水平方向をいうものとする。
【0018】
本実施形態の配管構造10は、胴体の後端に設けられた補助動力装置からの抽気を空調装置や防氷装置等に供給するものにも適合する。
【0019】
配管構造10は、
図1(a)および(b)に示すように、抽気が流れる配管11と、配管11の外周部を覆う断熱材12およびカバー13と、配管11内からの抽気のリークを検知するリークセンサ30(リークディテクタ)とを備えている。
リークセンサ30は、温度に感応する温度センサに相当する線状のセンサ31と、センサ31の電気抵抗に基づいてリークを検知するコントローラ32とを有している(
図1(a))。
【0020】
配管11は、ステンレス鋼等の金属材料から形成されている。配管11は、複数の配管に分割されていてもよい。配管同士はカップリングにより接続される。
配管11の内部には、エンジンから取り出された高温の抽気が連続して流れる。その配管11を保温し、抽気の熱を配管11の内部に留めるため、配管11の外周部は、断熱材12(
図1(b)および(c))により包囲されている。
断熱材12は通気性を有している。断熱材12としては、例えば、グラスウール、ウレタンフォーム等、種々のものを用いることができる。
【0021】
カバー13は、配管11および断熱材12の外周部を覆うとともに、配管11からリークした抽気を流出させるリーク検知用の通気孔14を規定している。
カバー13としては、例えば、CFRP(carbon fiber reinforced plastic)等の複合材から形成されたものを用いることができる。カバー13が断面リング状に形成されていると、配管11に装着し易い。配管11およびカバー13は同心円状に配置される。
【0022】
通気孔14は、
図1(a)に示すように、カバー13の長さ方向(配管11の軸線方向Aに同じ)に間隔をおいて複数が形成されており、各通気孔14がカバー13を厚み方向に貫通している。通気孔14は円形に形成されているが、他の形状であってもよい。
各通気孔14は、カバー13の円周上の1箇所に形成されている(
図1(c))。
配管11の長さ方向の任意の箇所でかつ周方向の任意の箇所に生じた亀裂、腐食等の欠陥部からリークした抽気は、配管11の外周部とカバー13の内周部との間に位置する断熱材12を通り、欠陥部に近い通気孔14に到達し、その通気孔14を介して、カバー13の外側に配置された線状のセンサ31に向けて流出する。その抽気により、通気孔14に対向するセンサ31の部位31Aが昇温すると、センサ31の電気抵抗が変化するので、それに基づいてリークを検知することができる。
【0023】
リークセンサ30(
図1(a))は、各通気孔14を順次経由する線状のセンサ31の電気抵抗に基づいて、配管11の全長に亘り一括して抽気のリークを検知する。
センサ31の幅(径)は、通気孔14の孔径よりも小さく、例えば数mmである。
センサ31としては、昇温されると電気的特性が変化して電気抵抗が変化するものを適宜に用いることができる。
【0024】
センサ31は、通気孔14の各々に対応する位置を通るように、カバー13に沿って取り回される。センサ31は、長さ方向に適宜な間隔をおいて配置される図示しないブラケットにより、カバー13の表面との間に間隔をおいて支持される。ブラケットは、機体の構造部材や装備品に固定されている。センサ31とカバー13との間の間隔は、例えば、数mm〜数十mmである。
【0025】
配管構造10の周囲には、機体の構造部材や装備品等の部材が存在している。リーク時には高温の抽気が流出する通気孔14は、熱の影響を受け易い部材に対向する位置を避けて、カバー13の長さ方向における位置および周方向における位置が定められている。
熱の影響を受け易い部材としては、例えば、複合材(繊維強化樹脂)やアルミニウム合金から形成された部材が該当する。
ここで、通気孔14の周方向における位置は、通気孔14の向き、すなわち、通気孔14の孔軸がカバー13の基準位置(例えば
図1(c)のT12)に対してなす角度(ローテーション)のことを意味している。本明細書においては、通気孔14の角度のことを、カバー13の横断面を時計の文字盤と見立てたときの「時」により示す場合がある。
【0026】
通気孔14が例えば3時位置T3や9時位置T9の近傍に位置していると、通気孔14に対向するセンサ31を取り付けるためのブラケットを、配管設置スペースの側方に存在するスパーやストリンガ等に取り付け易い。しかし、狭い配管設置スペースに熱の影響を受け易い部材が散在しているので、3時位置T3や9時位置T9の近傍にブラケットを取り付ける場所を確保できないことも多い。したがって、通気孔14の周方向の位置(角度、ローテーション)は一定ではない。
【0027】
通気孔14と、それに対向するセンサ31とが十分に近接していれば、通気孔14から流出した抽気の流れ(リーク流)がセンサ31にほぼ確実に到達するが、センサ31を支持するクランプの取付位置によっては通気孔14とセンサ31とが離れている。そのため、通気孔14から流出したリーク流がセンサ31から逸れてセンサ31が検知に必要な温度にまで昇温しない可能性がある。その主な要因は、リーク流に働く浮力にある。
【0028】
リーク流が浮力によりセンサ31から逸れることに対処するように、本実施形態の配管構造10は、センサ31の配線の向きに主要な特徴を有している。
ここで、
図1(a)に(T12)を付した通気孔14のようにカバー13の上端(12時位置)に通気孔14が位置している場合は、
図2(a)に実線矢印で示すように、通気孔14から孔軸方向に沿って上方へと流出したリーク流が、流量が小さくても浮力により誘導されることで、そのままセンサ31に到達する。そのため、センサ31を典型的な方法に従って配線すればよい。通気孔14(T12)に対応する位置では、
図1(a)および
図2(a)に示すように、センサ31がカバー13の長さ方向に沿って配線されている。
【0029】
問題となるのは、
図1(a)に示す通気孔14(T12)以外の通気孔14のように、カバー13の上端以外に通気孔14が位置している場合である。この場合は、当該通気孔14から孔軸に沿って流出したリーク流の流量が大きければ、
図1(c)に実線矢印のF1で示すように、リーク流がそのまま孔軸方向に沿って進む。一方、リーク流の流量が小さければ、そのリーク流の圧力に浮力が勝り、
図1(c)に破線矢印のF2で示すようにリーク流が周囲の気体に対して浮上する。このため、仮に、当該通気孔14に対応する位置でセンサ31をカバー13の長さ方向に沿って配線しており、リーク流の流量が小さい場合にセンサ31に高温の気体が到達しなければ、リークが検知されない。
【0030】
そこで、本実施形態では、カバー13の上端に位置する通気孔14(T12)以外の通気孔14の各々に対応する位置において、
図1(a)および(c)に示すように、カバー13の外周部に沿って上方へと立ち上がるようにセンサ31を配線している。そうすることで、流量が大きいリーク流F1(
図1(c)の実線)のみならず、流量が小さいリーク流F2(
図1(c)の破線)をもセンサ31に到達するようにしている。リーク流がセンサ31に到達し、センサ31が昇温するとセンサ31の電気抵抗が変化する。リークセンサ30のコントローラ32(
図1(a))は、センサ31の電気抵抗に基づいて、センサ31の温度が設定温度に到達しているか否かを判定し、設定温度に到達していると判定したならばリークを検知する。
【0031】
本実施形態では、
図1(c)に示すように、カバー13の周方向に沿ってセンサ31を配線しているが、必ずしもカバー13の周方向に沿って配線する必要はなく、通気孔14から流出したリーク流F1,F2がセンサ31に到達する限りにおいて許容される。
【0032】
図1(a)〜(c)に示す配管11の区間では、配管11が水平方向D0に沿って設置されているので、(T12)以外の通気孔14の各々に対応する位置で、センサ31が配管11の軸線Aに対して直交するように立ち上がっている。
一方、
図4(a)に示すように、通気孔14の各々に対応する位置において、配管11の軸線Aに対して傾斜した方向に配線することも許容される。その場合も、センサ31が通気孔14に対応する位置で上方へと立ち上がっている。
【0033】
配管11が水平方向D0に沿って設置される区間に限らず、
図2(c)に示すように配管11が水平方向D0に対して傾斜して設置される区間においても、カバー13の外周部に沿って上方へと立ち上がるようにセンサ31を配線するとよい。
つまり、本実施形態が適用される配管11が延出する方向は、水平方向D0には限定されず、設置された配管11の姿勢は任意である。配管11が水平方向に対して傾いていれば、通気孔14のローテーションを問わず、通気孔14に対応する位置でセンサ31が立ち上がるように配線するとよい。
第2実施形態〜第6実施形態でも同様である。
【0034】
本実施形態では、センサ31がカバー13の下端から上端まで(あるいは上端から下端まで)、半周に亘り配線されているが、浮力の影響を受ける、流量が小さいリーク流と、それよりも流量が大きいリーク流とをセンサ31に到達させることだけを考えれば、通気孔14よりも下方や、浮上したリーク流が通らない位置にセンサ31を配線する必要がない。つまり、センサ31を重点的に配置すべき範囲が存在する。
【0035】
図3(a)は、通気孔14がカバー13の3時位置よりも下方に位置する場合の配線例を示し、
図3(b)は、通気孔14がカバー13の3時位置よりも上方に位置する場合の配線例を示している。これらの図において、破線の矢印F2は、浮上する小流量のリーク流を示し、実線の矢印F1は、それよりも流量が大きいリーク流を示している。
図3(a)および(b)に示すように、流量が大きいリーク流(実線矢印F1)および流量が小さいリーク流(破線矢印F2)のいずれも、通気孔14の下端縁14Aよりも下方へは流れないとすると、カバー13の横断面の中心Xから通気孔14の下端縁14Aに向けて引いた直線L1よりも下方にはセンサ31を配線しなくてもよい。ここでは、余裕を見て直線L1よりも少し下方にまでセンサ31を配線している。
図3(a)に示すように、3時および9時位置よりも下方に位置する通気孔14から流出したリーク流は、3時および9時位置まではカバー13の外周部に沿って上昇する。その流出直後のリーク流によりセンサ31を効率よく昇温させるように、3時および9時位置よりも下方の範囲RLではセンサ31をカバー13の周方向に沿って配線することが好ましい。その範囲RLよりも上方では、リーク流はカバー13により進路を規制されずに鉛直方向に沿って浮上する。
【0036】
図3(a)および(b)に示すように、流量が小さいリーク流(破線矢印F2)が、自由に浮上を開始可能な起点P1から上方へと引いた直線L2よりも上方へは流れないとすると、直線L2よりも上方にはセンサ31を配線しなくてもよい。
直線L2は、
図3(a)においては3時位置および9時位置でカバー13の直径に沿って引いた線L3に対する垂線であり、
図3(b)においては、通気孔14の上端縁14Bでカバー13の直径に沿って引いた線L3に対する垂線である。
図3(a)および(b)のいずれにおいても、余裕を見込んで直線L2よりも少し上方にまでセンサ31を配線している。
以上より、
図3(a)および(b)に示す例では、直線L1と直線L2とがなす角度の範囲R1,R2が、センサ31を重点的に配置すべき範囲に該当する。
ここで、流量が大きいリーク流をセンサ31に確実に到達させるため、直線L1は、少なくとも通気孔14の上端縁14Bよりも下方、望ましくは下端縁14Aよりも下方に定める必要がある。
【0037】
図3(c)に示すように、通気孔14が6時位置またはその近傍に形成されている場合において、通気孔14から流出したリーク流の流量が大きければ、リーク流は実線矢印で示すようにそのまま下方へと噴出する。この場合は、通気孔14よりも下方にセンサ31を配置するとよい。ここでは、直線L2から、通気孔14を少し過ぎた位置L4までの範囲R3に亘りセンサ31を配線している。
【0038】
本実施形態によれば、カバー13の通気孔14から上方へと立ち上がる範囲R1,R2,R3を含むようにセンサ31を配線することにより、流量が小さいリーク流もセンサ31に到達するので、リークセンサ30により、亀裂や腐食等が進展していない欠陥部に起因するリークをも確実に検知することができる。リークセンサ30による検知結果に基づいて、配管11の補修、交換を適切に行うことにより、配管構造10を含む系統の信頼性や航空機の安全性を向上させることができる。
【0039】
センサ31は、カバー13に形成された通気孔14に対応する位置から上方へと立ち上がる範囲を含んでいる限り、任意に取り回すことができる。
図4(a)に示すように、カバー13の長さ方向に通気孔14が並んでいる配管構造10の区間では、センサ31をカバー13の周りにほぼ螺旋状に配線することができる。
また、
図4(b)に示すように、カバー13の上半分にセンサ31を重点的に配線することもできる。
【0040】
センサ31の断線等に備えた冗長性を確保し、かつ、センサ31の検知感度をより向上させるために、2本のセンサ31を用いてセンサ31を二重化することが好ましい。このとき、
図4(c)に示すように、2本のセンサ31を平行に配線することもできるし、
図4(d)に示すように、1本のセンサ311をカバーの長さ方向に沿って配線し、そのセンサ311に対してもう1本のセンサ312を通気孔14に対応する位置で交差させることもできる。この場合は、通気孔14の位置で上下方向に沿って配線されるセンサ312により、浮上した小流量のリーク流を捕捉することができる。
図4(d)に示す構成によれば、配線長を抑えつつリークの検知感度を向上させることができる。
【0041】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
以下の実施形態では、第1実施形態と相違する事項を中心に説明する。第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付している。
第2実施形態も、第1実施形態と同様に、リーク流がセンサ31から逸れることによりリークが検知されないことへの方策を提供する。
第2実施形態では、センサ31に曲げ加工を施すことによりリーク流が流れる位置にセンサ31を重点的に配置している。それによって、リーク流に接触するセンサ31の表面積を拡大することでリーク流を捕捉する。
【0042】
図5(a)に示す例では、センサ31を折り曲げることによって通気孔14に対応する位置にセンサ31を十字状に配置している。詳しくは、通気孔14を孔軸方向に投影した範囲(図では通気孔14の開口範囲と同じ)の内側に、カバー13の長さ方向に通気孔14を通過するセンサ31の区間315と、カバー13の上下方向に通気孔14を通過するセンサ31の区間316とが位置している。
十字状に配線することにより、通気孔14に対応する位置でセンサ31を単にカバー13の長さ方向に沿って配線した場合と比べて、通気孔14から流出したリーク流がセンサ31に接触する表面積が拡大されている。センサ31の周囲の気体の流動や温度・圧力の変動等の外乱により、センサ31から逸れ易い小流量のリーク流であっても、通気孔14に対応する位置でセンサ31の表面積が拡大されている分、センサ31から逸らさずに捕捉することができる。これによってリークセンサ30による検知感度を向上させることができる。
さらに、十字を形成するセンサ31の上下方向に延びる区間316が、通気孔14に対応する位置から上方へと立ち上がっているので、第1実施形態と同様に、通気孔14から浮上するリーク流をセンサ31から逸らさずに捕捉することができる。
【0043】
また、
図5(b)に示す例のように、センサ31を通気孔14に対応する位置で上下方向に沿って蛇行するように折り曲げることによっても、通気孔14から流出したリーク流に接触するセンサ31の表面積が増えるので、同様の効果を得ることができる。
図5(b)とは異なり、センサ31がカバー13の長さ方向に沿って蛇行していてもよいが、
図5(b)のように上下方向に沿ってセンサ31が蛇行していると、通気孔14に対応する位置から上方へとセンサ31が立ち上がっているので、第1実施形態と同様に、通気孔14から浮上するリーク流をセンサ31から逸らさずに捕捉することができる。
【0044】
図5(b)に示すセンサ31の一部を、
図5(d)に示すように、通気孔14に向けて折り曲げることもできる。そうすると、通気孔14から流出した直後のリーク流を捕捉することが可能となるので、効率よくリークを検知することができる。
【0045】
さらに、
図5(c)に示すように、通気孔14に対応する位置でセンサ31を渦巻状に曲げることによっても、通気孔14から流出したリーク流に接触するセンサ31の表面積が増えるので、同様の効果を得ることができる。
【0046】
第2実施形態は、カバー13の周方向における通気孔14の位置(角度、ローテーション)を問わず、カバー13に形成された複数の通気孔14のいずれにも適合する。
【0047】
図5(a)〜(d)に示した十字状、蛇行した形状、渦巻状に形成されたセンサ31の部分が、必ずしも、通気孔14を孔軸方向に沿って投影した範囲内に配置されている必要はなく、浮力がリーク流に及ぼす影響も考慮して、センサ31の当該部分を通気孔14に対して適宜な位置(例えば、通気孔14よりも少し上方)に配置することができる。
【0048】
図5(a)〜(d)に示した例において、2本のセンサ31を用いてセンサ31を二重化することも可能である。その場合は、2本のセンサ31の両方に対して、十字状、蛇行した形状、渦巻状等、リーク流との表面積を拡大するための加工を施してもよいし、一方のセンサ31に対してのみ、当該加工を施し、他方のセンサ31には当該加工を施さなくてもよい。
以上は、第3〜第6実施形態においても同様であり、第3〜第6実施形態のそれぞれの特徴を2本のセンサ31の両方に適用するのか、いずれか一方のみに適用するのかは、任意に選択することができる。
【0049】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、流量が小さいリーク流をも逃さずにセンサ31により捕捉することができるので、流量の如何によらず、発生したリークを確実に検知することができる。
【0050】
第1実施形態に関して説明したセンサ31の配線例と、第2実施形態に関して説明したセンサ31の形態例とを組み合わせることもできる。例えば、
図3(b)に示した角度範囲R2に亘り、センサ31を上下方向に蛇行するように配線することができる。
【0051】
〔第3実施形態〕
次に、
図6を参照し、本発明の第3実施形態について説明する。
第3実施形態では、少量のリークを検知するために、カバー13の内側にセンサ31の一部を配置する。カバー13の内側には、配管11を包囲する断熱材12(
図6(b))が存在している。
【0052】
図6(a)および(b)に示すように、本実施形態のセンサ31は、カバー13の外側に配線される外側部分313と、外側部分313から連続し、カバー13の内側に配置された断熱材12に接触する内側部分314とを有している。内側部分314は、通気孔14を介してカバー13の内側に入っている。
本実施形態では、断熱材12として、ガラス繊維から形成されたグラスウールや、樹脂材料から形成された連続気泡のフォーム(例えばウレタンフォーム)等、通気性を有するものを用いるものとする。
【0053】
配管11に生じた亀裂等の欠陥部からリークした抽気は、配管11を包囲する断熱材12を介して通気孔14に向かい、通気孔14から流出するまでのプロセスとして、まずは断熱材12に拡散する。抽気が断熱材12に拡散するというのは、断熱材12を構成するガラス繊維の間やウレタンフォームの連続気泡等、断熱材12に散在する空隙S1に抽気が巡ることを意味する。そうすると、拡散した抽気によりセンサ31の内側部分314が昇温するので、リークセンサ30によりリークを検知することができる。
【0054】
第3実施形態によれば、周囲の風の影響を受けたりすることがないので、カバー13の内側で微小な流量のリークをも検知することが可能となる。
【0055】
本実施形態では、センサ31の内側部分314が断熱材12の内部に達するように、断熱材12に切込みを入れ、
図6(b)に示すように、センサ31の内側部分314を断熱材12にもぐり込ませている。内側部分314をもぐり込ませる位置は、断熱材12の厚みの例えば半分程度に留める。内側部分314が配管11に近接していると、リークしていない配管11の温度にセンサ31が感応するおそれがあるためである。
本実施形態に限らず、センサ31が断熱材12の表面に接触していてもよい。
【0056】
配管11からリークした抽気は、断熱材12に留まらず、断熱材12の外周部とカバー13の内周部との間の環状の隙間S2(空隙)にも拡散する。
そのため、カバー13の内側にセンサ31の一部を配置するにあたり、
図6(c)に示すように、断熱材12の外周部とカバー13の内周部との間の隙間S2にセンサ31の内側部分314を通気孔14から差し込むことができる。隙間S2に拡散した抽気によりセンサ31の内側部分314が昇温するので、
図6(a)および(b)に示した構成と同様の効果を得ることができる。
【0057】
あるいは、
図6(d)に示すように、隙間S2の略全周に亘り、センサ31を配線することもできる。通気孔14からカバー13の内側に入ったセンサ31は、隙間S2を通ってカバー13の内側をほぼ1周し、通気孔14からカバー13の外側へと出る。
このようにカバー13の内側でほぼ全周に亘りセンサ31を配置していると、周方向に温度勾配が存在する場合であっても、隙間S2に配置された内側部分314の一部でもリークの検知に必要な温度にまで昇温することで、リークを検知することができる。
【0058】
第3実施形態は、カバー13の周方向における通気孔14の位置(角度、ローテーション)を問わず、カバー13に形成された複数の通気孔14のいずれにも適合する。
【0059】
〔第4実施形態〕
次に、
図7を参照し、本発明の第4実施形態について説明する。
第4実施形態に係る配管構造は、周囲の風によるリーク検知感度の低下を避けるため、通気孔14から流出するリーク流に対して風を遮蔽する防風壁15(
図7(a)および(b))を備えている。
配管構造の周囲の風は、例えば、配管設置スペースの換気や、当該スペース内の温度勾配や圧力勾配などによる気体の流動であり、リーク流の当初の向きを規定する通気孔14の孔軸方向に対して交差する向きに流れている。
その風の向きに従って、特に小流量のリーク流がセンサ31から逸れてしまうことを防ぐため、防風壁15は、通気孔14が形成されたカバー13の表面から突出している。
【0060】
図7(a)および(b)に示す例では、センサ31が、カバー13の表面に対して所定の間隔をおいて、カバー13の長さ方向に沿って配線されている。センサ31は防風壁15を貫通している。また、センサ31は、
図5(b)を参照して説明したように通気孔14に対応する位置で蛇行するように折り曲げられている。これに限らず、例えば、
図5(a)、(c)、および(d)に示すような他の形態を作用することができる。
【0061】
本実施形態では、防風壁15が環状に形成されており、カバー13の外周部を包囲するようにカバー13に装着されている。防風壁15は、カバー13の長さ方向における通気孔14の両側にそれぞれ配置されている。これらの防風壁15により、図中、左方から通気孔14へと向かう風F3と、右方から通気孔14へと向かう風F4とのいずれをも遮蔽することができる。
本実施形態によれば、配管構造の周囲の風F3,F4を防風壁15により遮蔽することにより、流量が小さいリーク流をもセンサ31に到達させることができるので、配管11に発生したリークを確実に検知することができる。
【0062】
防風壁15は、リーク流が逸れずにセンサ31に確実に到達するように、カバー13の表面から、少なくともセンサ31の位置まで突出していることが好ましい。本実施形態の防風壁15は、通気孔14を横切るセンサ31を超える位置まで突出している。
【0063】
防風壁15は、リーク流に対して風を遮蔽するために通気孔14およびその近傍のみに設けられていればよい。例えば、防風壁15をC字状に形成する等、リーク流に対して風を遮蔽するために必須ではない箇所を欠損させることもできる。
また、防風壁15は、リーク流の流れに影響を及ぼすために遮蔽したい風の向きに応じて必要な位置に設ければよく、通気孔14の片側だけに設けることもできる。
カバー13の上下方向に沿って上向きあるいは下向きに風が流れる場合は、通気孔14の上方あるいは下方に位置する防風壁を設けることができる。例えば、
図7(c)に示すように、側壁161および上壁162を備えるように、防風壁16を形成することができる。
防風壁16は、カバー13に設けることもできるし、センサ31に設けることもできる。
【0064】
第4実施形態は、通気孔14の位置(角度、ローテーション)を問わず、カバー13に形成された複数の通気孔14のいずれにも適合する。
第4実施形態は、第1実施形態および第2実施形態で説明した各構成と適宜に組み合わせることができる。
例えば、
図7(d)に示すように、防風壁15,15の間で、第1実施形態と同様に、通気孔14に対応する位置から上方へと立ち上がるようにセンサ31を配線するとよい。
【0065】
〔第5実施形態〕
次に、
図8を参照し、本発明の第5実施形態について説明する。
第5実施形態に係る配管構造は、通気孔14から流出したリーク流をセンサ31へと案内するガイド部材17を備えている。
図8(a)および(b)に示す例では、センサ31が、カバー13の表面に対して所定の間隔をおいて、カバー13の長さ方向に沿って配線されている。また、センサ31は、
図5(b)を参照して説明したように通気孔14に対応する位置で蛇行するように折り曲げられている。これに限らず、例えば、
図5(a)、(c)、および(d)に示すような他の形態を作用することができる。
【0066】
ガイド部材17は、
図8(a)および(b)に示すように、板状に形成されてカバー13の表面から突出しており、通気孔14よりも上方に配置されている。
このガイド部材17は、主として、浮力の影響により浮上するリーク流に対応する。ガイド部材17は、リーク流が逸れずにセンサ31に確実に到達するように、カバー13の表面から、少なくともセンサ31の位置まで突出していることが好ましい。本実施形態のガイド部材17は、通気孔14を横切るセンサ31を超える位置まで突出している。
【0067】
通気孔14から流出したリーク流は、ガイド部材17により浮上が規制されることで、ガイド部材17の下方に位置するセンサ31へと到達する。
したがって、浮力の影響を受け易い小流量のリーク流をも確実に検知することができる。
【0068】
ガイド部材17は、
図8(c)および(d)に示すように、通気孔14の孔軸方向に沿った外周縁17Aが下方に向けて突出するように形成することもできる。そうすると、外周縁17Aにより、ガイド部材17の下方に流入したリーク流をガイド部材17の下方から逃さずに、センサ31に向けて案内することができる。
【0069】
さらには、
図8(e)および(f)に示すように、筒状に形成したガイド筒18を用いることもできる。
ガイド筒18は、通気孔14を包囲し、カバー13の表面から突出している。センサ31は、ガイド筒18の壁を厚み方向に貫通するように配線されている。
通気孔14から流出したリーク流は、ガイド筒18の壁により浮上が規制されつつ、ガイド筒18の軸線方向に沿ってセンサ31まで案内される。
ガイド筒18を用いると、浮力の影響による他、周囲の気体の流動等の外乱によりリーク流がセンサ31から逸れることも避けることができる。
【0070】
ガイド筒18の内径は、リーク流の圧力損失を考慮して適宜に定めることができる。
図8(e)および(f)に示す例では、通気孔14の孔径よりも少し大きく設定しているが、通気孔14の孔径と同等の内径に設定してもよい。
【0071】
第5実施形態は、通気孔14の位置(角度、ローテーション)を問わず、カバー13に形成された複数の通気孔14のいずれにも適合する。
ガイド部材17およびガイド筒18がカバー13の表面から突出する向きは、通気孔14の孔軸に沿った向きに限らない。ガイド部材17およびガイド筒18が、孔軸に対して傾斜する向きに突出していてもよい。
【0072】
以上で説明した第1〜第5実施形態のうち、適宜に選択した2つ以上を組み合わせることができる。
【0073】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
配管11とカバー13との間に断熱材12を介在させることは必須ではない。
図9に示すように、配管11の外周部がカバー13により直接覆われている場合でも、上記の第1〜第3実施形態で説明したセンサ31の配線の手法や、第4〜第5実施形態で説明した、配管構造に用いるデバイス(防風壁、ガイド部材)が適合する。
図9に示す配管11の外周部とカバー13の内周部との間の隙間S2に、第3実施形態(
図6)で示すようにセンサ31の一部(内側部分314)を配置すれば、第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0074】
本発明の配管構造は、エンジンや補助動力装置からの抽気が流れるものに限定されない。他の高温ガスが流れる配管構造にも本発明を適用することができる。
また、本発明は、航空機に限らず、各種の産業プラントに装備される配管構造に適用することもできる。
【0075】
さらに、リーク検知のために用いる感応部は、リーク先の空間の気体の温度に感応する温度センサには限らず、気体の濃度に感応する濃度センサであってもよい。