(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属箔の一方の面に第一接着剤層を介して耐熱性樹脂層が貼り合わせされ、他方の面に第二接着剤層を介して熱可塑性樹脂層が貼り合わされた蓄電デバイス用外装材において、
前記第一接着剤層および第二接着剤層のうちの少なくとも一方が導電性接着剤からなり、
前記導電性接着剤で貼り合わされた樹脂層側の面において、樹脂層の一部が除去されてて金属箔に導通する導電部を有することを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
金属箔の一方の面に耐熱性樹脂層が貼り合わされ、他方の面に熱可塑性樹脂層が貼り合わされた2つの外装材が、熱可塑性樹脂層同士が向かい合って融着した熱封止部に囲まれることによって電池要素室が形成された外装体と、
前記外装体の電池要素室に収容され、正極要素、負極要素、およびこれらの間に配置されるセパレーターとを有する電池要素とを備え、
前記外装体を構成する2つの外装材のうちの少なくとも一方が請求項1または2に記載された蓄電デバイス用外装材からなり、外装材の導電部に正極要素および負極要素のうちの少なくとも一方が導通していることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ラミネート外装材の樹脂層を切り欠いて金属箔を露出させて導通を得るには、絶縁体である樹脂フィルムを完全に取り除いた上に、金属箔と樹脂フィルムとの間の接着剤も絶縁体であるから除去しなければならない。しかし、接着剤は金属箔に粘着しているので除去に手間がかかり、取り残せばデバイスの電気抵抗が大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、樹脂層の除去によって確実に電気の導通が得られる蓄電デバイス用の外装材、およびこの外装材を用いた蓄電デバイスの提供を目的とする。
【0008】
即ち、本発明は下記[1]〜[6]に記載の構成を有する。
【0009】
[1]金属箔の一方の面に第一接着剤層を介して耐熱性樹脂層が貼り合わせされ、他方の面に第二接着剤層を介して熱可塑性樹脂層が貼り合わされた蓄電デバイス用外装材において、
前記第一接着剤層および第二接着剤層のうちの少なくとも一方が導電性接着剤からなる特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【0010】
[2]前記導電性接着剤はベース接着剤と平均粒径2μm以下の導電材粒子とを含む接着剤組成物からなる前項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0011】
[3]前記導電性接着剤で貼り合わされた樹脂層側の面において、樹脂層の一部が除去されてて金属箔に導通する導電部を有する前項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0012】
[4]金属箔の一方の面に耐熱性樹脂層が貼り合わされ、他方の面に熱可塑性樹脂層が貼り合わされた2つの外装材が、熱可塑性樹脂層同士が向かい合って融着した熱封止部に囲まれることによって電池要素室が形成された外装体と、
前記外装体の電池要素室に収容され、正極要素、負極要素、およびこれらの間に配置されるセパレーターとを有する電池要素とを備え、
前記外装体を構成する2つの外装材のうちの少なくとも一方が前項3に記載された蓄電デバイス用外装材からなり、外装材の導電部に正極要素および負極要素のうちの少なくとも一方が導通していることを特徴とする蓄電デバイス。
【0013】
[5]前記正極要素および負極要素がセパレーターを介して積層された正極箔および負極箔である前項4に記載の蓄電デバイス。
【0014】
[6]前記正極要素および負極要素が外装材の金属箔に積層された正極活物質層および負極活物質層である前項4に記載の蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0015】
上記[1]に記載された蓄電デバイス用外装材は、金属箔と耐熱性樹脂層との間の第一接着剤層、および金属箔と熱可塑性樹脂層との間の第二接着剤層のうちの少なくとも一方が導電性接着剤であるから、樹脂層を除去することにより金属箔に導通する導電部を形成することができる。また、接着剤層は導電性であるから接着剤層を除去することなく導電部を形成することができる。また、除去しなかった接着剤層は導電部における金属箔の保護層となる。
【0016】
上記[2]に記載の蓄電デバイス用外装材は、導電材粒子が平均粒径2μm以下の微粒子であるからベース接着剤中に均一に分散されて良好な導体となし得る。
【0017】
上記[3]に記載の蓄電デバイス用外装材は、樹脂層を除去した導電部を電池要素との導通部またはデバイス外部における電気の取り出し口として用いることができる。
【0018】
上記[4]に記載の蓄電デバイスは、外装体を構成する外装材の導電部を、電池要素の正極要素または負極要素との接続部、あるいはデバイスの電気取り出し口として利用できる。
【0019】
上記[5]に記載の蓄電デバイスによれば、正極要素および負極要素がセパレーターを介して積層された正極箔および負極箔で構成されたデバイスにおいて上記効果を奏することができる。
【0020】
上記[6]に記載の蓄電デバイスによれば、正極要素および負極要素が外装材の金属箔に積層された正極活物質層および負極活物質層で構成されたデバイスにおいて上記効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1〜
図4に本発明にかかる蓄電デバイス用外装材を示し、
図5および
図6に
図2の外装材を用いて外装体を形成した蓄電デバイスを示す。
【0023】
以下の説明において同一の符号は同一物を示すものとして重複する説明を省略する。
[蓄電デバイス用外装材]
図1に示す蓄電デバイス用外装材1aは、金属箔2の一方の面に第一接着剤層3を介して耐熱性樹脂層4が積層され、他方の面に第二接着剤層5を介して熱可塑性樹脂層6が積層されたラミネート材である。
【0024】
前記外装材1aは、
図2の導電部8,9を有する外装材7,7a、7bに加工し、
図5および
図6に参照される蓄電デバイス40、41の外装体50、70の材料として使用される。
【0025】
蓄電デバイス40,41において、外装材7,7a、7bの熱可塑性樹脂層6側の導電部9は電池要素60、80と導通し、耐熱性樹脂層4側の導電部8は電気の取り出し口となる。
【0026】
本発明において、前記第一接着剤層3および第二接着剤層5のうちの少なくとも一方は後述の導電性接着剤からなる。
[導電部を有する外装材およびその製造方法]
図2に示す外装材7、7a、7bは、第一接着剤層3および第二接着剤層5が導電性接着剤からなり、耐熱性樹脂層4側の面において耐熱性樹脂層4の一部が除去されて第一接着剤層3が露出する導電部8を有し、熱可塑性樹脂層6側の面において熱可塑性樹脂層6および第二接着剤層5の一部が除去されて金属箔層2が露出する導電部9を有する。
図2は金属箔2が第一接着剤層3に覆われた導電部8と第二接着剤層5が除去されて金属箔2が露出する導電部9を例示しているが、導電性接着剤であるから金属箔2上の接着剤層の有無にかかわらず金属箔2に導通する導電部となし得る。本発明の外装材は耐熱性樹脂層4側と熱可塑性樹脂層6側とで同一形態の導電部が形成されていても異なる形態の導電部が形成されていてもよい。
【0027】
図1の外装材1aの作製方法、およびこの外装材1aから導電部を有する外装材7、7a、7bを作製方法する方法は以下のとおりである。
【0028】
金属箔2の一方の面に第一接着剤層3として導電性接着剤を用いて耐熱性樹脂層4を貼り合わせ、他方の面に第二接着剤層5として導電性接着剤を用いて熱可塑性樹脂層6を貼り合わせる。貼り合わせ方法は限定されず、ドライラミネート法等の周知の方法で適宜貼り合わせて
図1の外装材1aを作製する。
【0029】
前記外装材1aに対し、導電部8を形成する部分の耐熱性樹脂層4、および導電部9を形成する部分の熱可塑性樹脂層6を除去する。除去方法は限定されず、レーザーを照射して焼き切る方法を例示できる。導電部8,9の形成に際しては、絶縁材である耐熱性樹脂層4および熱可塑性樹脂層6を除去すれば良く、第一接着剤層3および第二接着剤層5は導電性接着剤であるから除去しても除去しなくてもまた取り残しがあっても導電部8、9を形成することができる。また、第一接着剤層3および第二接着剤層5が絶縁性接着剤であれば、接着剤層まで完全に取り除く必要があって除去作業に手間がかかるが、導電性接着剤を用いることで第一接着剤層3および第二接着剤層5の除去の程度に関係なく導電部8、9を形成できるので、絶縁性接着剤で貼り合わせた外装材よりも容易に導電部8,9を形成できる。しかも、接着剤層に深く切り込まなくても導電部8,9を形成できるので金属箔2を傷つけるおそれもない。
【0030】
また、前記第一接着剤層3は金属箔2よりも樹脂同士である耐熱性樹脂層4と接着力が強い。同様に、第二接着剤層5は金属箔2よりも熱可塑性樹種層6との接着力が強い。上述したように、導電性接着剤を取り残すことに不都合はないが、接着剤層と強く接着した耐熱性樹脂層4および熱可塑性樹脂層6を取り残さないように確実に除去するには手間がかかる。
【0031】
このような樹脂層除去の手間を軽減する方法として、外装材の作製の段階で接着剤層および樹脂層に対して接着力の弱い離型紙を導電部8,9形成予定部に挟んでおく方法がある。具体的には、
図3に示す外装材1bのように、第一接着剤層3上の所定位置に離型紙10を貼り付け、その後耐熱性樹脂層4を貼り合わせる。同様に、第二接着剤層5上の所定位置に離型紙10を貼り付け、その後熱可塑性樹脂層6を貼り合わせる。そして、導電部8,9形成予定部上の耐熱性樹脂層4および熱可塑性樹脂層6を切除する。前記離型紙10は第一接着剤層3および耐熱性樹脂層4の両方に対して接着力が弱いので、耐熱性樹脂層4を容易に除去でき、また耐熱性樹脂層4と離型紙10の両方を簡単に除去することができる。第一接着剤層3は除去されないが、導電性接着剤であるから導電部8として使用することに何ら不都合はなく、第一接着剤層3は導電部8における金属箔2の保護層として機能する。前記離型紙10を用いることで第一接着剤層3の厚みを減じることなく確実に残すことができるので、導電部8に安定した保護機能を与えることができる。また、離型紙10が絶縁材の場合は除去する必要があるが、黒鉛や金属のような導電性シートの場合は除去せずに導電部の表面材として残すこともできる。熱可塑性樹脂層6側の導電部9についても同様である。
【0032】
さらに、
図4に示す外装材1cからでも導電部を形成することができる。前記外装材1cは、第一接着剤層3の一部に接着剤が塗布されていない第一接着剤未塗布部3aが形成され、第二接着剤層5の一部に接着剤が塗布されていない第二接着剤未塗布部5aが形成されている。前記第一接着剤未塗布部3aおよび第二接着剤未塗布部5aは導電部8,9の形成予定部である。前記第一接着剤未塗布部3a上の耐熱性樹脂層4および第二接着剤未塗布部5a上の熱可塑性樹脂層8を切除することにより導電部8,9を形成することができる。この方法で形成した導電部8、9は金属箔2が露出している。
【0033】
第一接着剤未塗布部3aおよび第二接着剤未塗布部5aは接着剤の塗布工程で形成するが、塗布工程で接着剤のにじみや塗布位置のわずかなずれが生じて導電部8、9の形成予定部に接着剤がはみ出したとしても、導電性接着剤を用いれば導電部8、9の導電性を低下させることはない。絶縁性接着剤であれば導電部8、9の形成予定領域内への侵入を厳しく規制する必要があり厳格な工程管理が求められるが、導電性接着剤を用いることで厳しい工程管理条件を緩和することができる。
【0034】
本発明の外装材の製造方法は上述した方法に限定されない。また、金属箔に対して耐熱性樹脂層と熱可塑性樹脂層とを同じ方法で貼り合わせることにも限定されない。例えば、一方の樹脂層を接着剤層に離型紙を貼り付ける方法で貼り合わせ、他方の樹脂層を接着剤未塗布部を有する接着剤層を形成する方法で貼り合わせることもできる。また、本発明の外装材は、第一接着剤層および第二接着剤層のうちの少なくとも一方が導電性接着剤からなることが要件である。さらに、樹脂層を除去する前の外装材(
図1、3、4参照)および樹脂層を除去して導電部を形成した外装材(
図2参照)の両方が本発明の外装材に該当する。
[外装材の構成材料]
外装材の金属箔2は、蓄電デバイスの正極または負極、あるいは正極または負極に繋がる導体として機能する。
【0035】
前記金属箔2が正極または正極用導体である場合の好ましい材料は軟質のアルミニウム箔であり、厚さは7〜150μmが好ましい。成形性やコストの点で特に30〜80μmの軟質アルミニウム箔が好ましい。一方、前記金属箔2が負極または負極用導体である場合の好ましい材料は、軟質または硬質のアルミニウム箔、ステンレス箔、ニッケル箔、銅箔、チタン箔である。これらの箔の好ましい厚さは7〜150μmであり、耐衝撃性や曲げ耐性、コストの点で15〜100μmが好ましい。
【0036】
また、前記金属箔2はメッキ処理箔やクラッド箔も用いることができる。例えば、第二金属箔21にとして、銅にニッケルメッキを施したメッキ処理箔や、ステンレスとニッケルのクラッド箔を用いることができる。
【0037】
さらに、前記金属箔層2に化成皮膜が形成されているのが好ましい。前記化成皮膜は、金属箔の表面に化成処理を施すことによって形成される皮膜であり、このような化成処理が施されていることによって、内容物(電解質等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できるし、電気の取出し窓となる露出部でも、デバイスを作製する際電解質が付着しても変色や劣化することがなく、大気中の水分などによる腐食の影響も低減できる。化成処理層自体の導電性はほとんどないが、塗膜厚が極めて少ないので通電抵抗もほとんどない。例えば、次のような処理を行うことによって、金属箔に化成処理を施す。即ち、脱脂処理を行った金属箔の表面に、
1)リン酸と、
クロム酸と、
フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸およびクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸およびクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)〜3)のうちのいずれかの水溶液を金属箔の表面に塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施す。
【0038】
前記化成皮膜は、クロム付着量(片面当たり)として0.1mg/m
2〜50mg/m
2が好ましく、特に2mg/m
2〜20mg/m
2が好ましい。
【0039】
前記耐熱性樹脂層4を構成する耐熱性樹脂としては、外装材をヒートシールする際のヒートシール温度で溶融しない耐熱性樹脂を用いる。前記耐熱性樹脂としては、熱可塑性樹脂層6を構成する熱可塑性樹脂の融点より10℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが好ましく、熱可塑性樹脂の融点より20℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが特に好ましい。例えば、ポリエステルフィルムやポリアミドフィルムの他、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等の延伸フィルムが好ましい。また、厚さは9〜50μmの範囲が好ましい。
【0040】
前記熱可塑性樹脂層6としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムが好ましく、厚さは20〜80μmの範囲が好ましい。
【0041】
前記導電性接着剤は、例えばベース接着剤と導電材とを含む接着剤組成物からなる。耐熱性樹脂層4を貼り合わせる第一接着剤層3用の接着剤組成物において、好ましいベース接着剤はポリエステルポリウレタン系接着剤、ポリエーテルポリウレタン系接着剤であり、好ましい導電材としてカーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、グラファイト等のカーボン粉末、金、銀、銅等の金属粉末、ポリアセチレン、ポリアリニン等の樹脂粉末である。一方、熱可塑性樹脂層6を貼り合わせる第二接着剤層5用の接着剤組成物において、好ましいベース接着剤は2液硬化型オレフィン系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、エチレン−酢酸ビニル樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤であり、好ましい導電材はカーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、グラファイト等のカーボン粉末である。
【0042】
前記接着剤組成物は、接着剤層による電気抵抗の上昇を可及的に抑制して良好な導体を形成するために、導電材がベース接着剤中に均一に分散していることが好ましい。このため、導電材は平均粒径が2μm以下の微粒子を用いることが好ましく、特に平均粒径が0.01〜0.5μmの微粒子が好ましい。接着剤層は接着力が得られる限り薄いことが好ましいが、導電材の粒径が大きくなると接着剤層が過度に厚くなるので、前記の範囲の粒径が好ましい。接着剤組成物中の導電材含有量は1〜20質量%が好ましく、使用する導電材に応じて適宜設定する。導電部を形成しない面では金属箔と樹脂層の貼り合わせにそれぞれのベース接着剤を用いる。
【0043】
なお、前記接着剤組成物には、接着性および導電性を阻害しない限り他成分の添加が許容される。前記導電材含有量は接着剤が固化した状態における含有量であり、粘度調整用の溶媒等の揮発成分は含まれない。
[蓄電デバイス]
図5および
図6に2種類の蓄電デバイス40、41を示す。これらの蓄電デバイス40、41の外装体50,70は、前記外装材7または熱可塑性樹脂層6側の導電部9を拡大した外装材7、7a、7bを用い、熱可塑性樹脂層6同士を向かい合わせることにより電池要素室57、71を形成し、この電池要素室57、71の周囲を熱封止することにより作製されている。これらの蓄電デバイス40,41は、外装材7、7a、7bの導電部8,9を電池要素との接続部およびデバイスの電気取り出し口として利用している。
【0044】
なお、
図5および
図6において、外装材7、7a、7bは第一接着剤層3および第二接着剤層5の図示を省略し、金属箔2、耐熱性樹脂層4および熱可塑性樹脂層6のみを図示している。
〈第1の蓄電デバイス〉
図5に示すように、蓄電デバイス40の外装体50は、平面視角形の凹部52とこの凹部52の開口縁から外方に延びるフランジ53を有する本体51と、前記本体51のフランジ53の外回り寸法と同寸の蓋板55とを組み合わせて作製されたものである。前記凹部52は電池要素60を収納する電池要素室57を形成している。
【0045】
前記外装体50の本体51は、
図2に示す金属箔層2の両面に導電部8,9を有するフラットシートの外装材7に対し、張り出し成形、絞り成形等の塑性変形加工を施して凹部52を形成し、凹部52の周囲の未変形部分をフランジ53の外回り寸法にトリミングしたものである。一方、前記蓋板55は、金属箔層2の両面に導電部8,9を有するフラットシートの外装材7を所要寸法に裁断したものである。前記本体51の凹部52の底面において、負極導電部54が設けられ、蓋板55に正極導電部56が設けられている。前記正極導電部56および負極導電部54はラミネート外装材7の導電部8,9によって形成されている。
【0046】
前記電池要素60は正極箔61と負極箔62とがセパレータ63を介して積層されてなり、電池要素室57内において、正極箔61の端部が正極導電部56の内側の導電部9に接合され、負極箔62の端部が負極導電部54の内側の導電部9に接続されている。前記正極箔61および負極箔62は本発明における正極要素および負極要素に対応する。
【0047】
前記蓄電デバイス40は、電池要素60の正極箔61および負極箔62をそれぞれの導電部56、54を接合した後に、電池要素60を本体51の凹部52に収納して蓋板55を被せ、電解質注入口を残して本体51のフランジ53と蓋板55との接触部の熱可塑性樹脂層6同士をヒートシールし、電解質注入後に電解質入口をヒートシールすることによって外装体50を封止したものである。
【0048】
前記蓄電デバイス40は、正極導電部56の外側の導電部8および負極導電部54の外側の導電部8が電気の取り出し口となる。
〈第2の蓄電デバイス〉
図6に示すように、蓄電デバイス41は、外装体70がフラットな2枚の外装材7a、7bによって構成されているとともに、外装材7a、7bの金属箔2を電極として利用する薄型デバイスである。前記外装材7a、7bは熱可塑性樹脂層6側の導電部9が耐熱性樹脂層4側の導電部8よりも面積が大きいことを除いて
図2の外装材7と同一構成である。
【0049】
前記蓄電デバイス41は、一方の外装材7aの導電部9に正極活物質層81を積層し、他方の外装材7bの導電部9に負極活物質層82を積層し、2つの外装材7a、7bをセパレータ63を介して重ね、電解質とともに導電部9の周囲を熱封止することにより形成されている。
【0050】
前記蓄電デバイス41において、正極活物質層81を有する外装材7aの金属箔2が正極であり導電部8が電気取り出し口であり、負極活物質層82を有する外装材7bの金属箔2が負極であり導電部8が電気取り出し口である。また、正極活物質層81および負極活物質層82が本発明における正極要素および負極要素に対応し、正極活物質層81、負極活物質層82およびセパレータ63が電極要素80である。前記電極要素80が存在する空間が電池要素室71である。
【0051】
また、前記蓄電デバイス41は、外装材の貼り合わせの工程で極活物層を形成することもできる。例えば、金属箔2の所要位置に正極または負極の極活物質層を塗布して乾燥させ、極活物質層の表面をマスキング用シートで覆った状態で第二接着剤層5を形成して熱可塑性樹脂層6を貼り合わせる。その後、熱可塑性樹脂層6および第二接着剤層5をマスキング用シートとともに除去する。この方法においても、導電性接着剤を用いることにより、接着剤のにじみ等による抵抗値の増大を抑制する効果があり、導電性接着剤による効果を享受できる。
【0052】
本発明において、蓄電デバイスの外装体外面における導電部(電気の取り出し口)は金属箔を挟んで熱可塑性樹脂層側の導電部の対称位置に形成することにも限定されないし、耐熱性樹脂層の面側に形成することにも限定されない。例えば、熱封止部の外側に一方の外装材を延長して熱可塑性樹脂層を露出させれば、熱可塑性樹脂層側の面に外装体外面の導電部を形成することができる。電池要素との導通部およびデバイス外部との導通部の両方を熱可塑性樹脂層側の面に形成することがあり、かかる外装材も本発明の技術的範囲に含まれる。従って、蓄電デバイスの外装材は少なくとも熱可塑性樹脂層側に導電部を有し、耐熱性樹脂層側の導電部の有無は外装体の形態によって異なる。また、第一接着剤層および第二接着剤層のうちの少なくとも一方が導電性接着剤からなる外装材は本発明の技術的範囲に含まれる。一方の樹脂層の貼り合わせに接着剤の影響の少ない方法を採用すれば、他方の樹脂層の貼り合わせのみに導電性接着剤を使用すれば相応の効果を得ることができるためである。接着剤の影響の少ない貼り合わせ方法とは、例えば
図4の外装材1cに参照される、接着剤未塗布部を有する接着剤層を形成して貼り合わせる方法である。
【0053】
さらに、蓄電デバイスは外装体を構成する2つの外装材のうちの少なくとも一方が本発明の外装材で構成されていれば本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、
図5の蓄電デバイス40の外装体50の蓋体55を導電部8,9を持たない外装材に変更し、電池要素60の正極箔61にタブリードを接続して外装体外に引き出すように変更した場合も本発明に含まれる。
【実施例】
【0054】
各例の試験材として、金属箔と熱可塑性樹脂層とを異なる接着剤で貼り合わせた3層材を作製した。金属箔および熱可塑性樹脂層は各例共通あり、金属箔は厚さ40μmの軟質アルミニウム箔(JIS H4160 A8079H)、熱可塑性樹脂層は厚さ40μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを使用した。
(実施例1)
ベース接着剤である二液硬化型酸変性ポリプロピレン系接着剤に導電材として平均粒径2μmの黒鉛微粉を添加して均一に分散させて導電性の接着剤組成物を調製した。前記接着剤組成物中の導電材含有量は20質量%である。
【0055】
金属箔の一方の面に、前記接着剤組成物を塗布して100℃で乾燥させた。乾燥させた接着剤層の表面に、20mm×20mmのシリコーン系の剥離剤をコーティングした離型紙を貼り付け、熱可塑性樹脂層を重ねて圧着し、40℃のエージング炉で3日間養生して試験材を作製した。養生後の接着剤層の厚さは2μmであった。
(実施例2)
接着剤組成物の導電材を平均粒径0.03μmのアセチレンブラックに変更し、含有量を1質量%に変更したことを除き、実施例1と同じ方法で試験材を作製した。
(実施例3)
接着剤組成物の導電材を平均粒径1μmの黒鉛微粉に変更し、含有量を7質量%に変更したことを除き、実施例1と同じ方法で試験材を作製した。
(実施例4)
接着剤組成物の導電材を平均粒径0.1μmのカーボンブラックに変更し、含有量を3質量%に変更したことを除き、実施例1と同じ方法で試験材を作製した。
(比較例)
接着剤としてベース接着剤のみを用いたことを除き、実施例1と同じ方法で試験材を作製した。
(参考例)
接着剤はベース接着剤のみを使用し、金属箔の一方の面に20mm×20mmの接着剤未塗布部を形成しつつ接着剤を塗布し、熱可塑性樹脂層を貼り合わせた。塗布した接着剤の乾燥条件および熱可塑性樹脂層を貼り合わせた後の養生条件は実施例1と同じである。
【0056】
実施例1〜4および比較例の試験材に対し、熱可塑性樹脂層における黒鉛シートの周縁の対応箇所にレーザーを照射して熱可塑性樹脂層を切断し、離型紙とともに熱可塑性樹脂層を除去し、接着剤層を露出させて20mm×20mmの導電部を形成した。
【0057】
また、参考例の試験材に対しては、熱可塑性樹脂層における接着剤未塗布部の周縁の対応箇所にレーザーを照射して熱可塑性樹脂層を切断して除去し、金属箔を露出させて20mm×20mmの導電部を形成した。
【0058】
導電部を形成した各試験材について、熱可塑性樹脂層の除去によって形成した導電部と金属箔の他方の面との間の電気抵抗値を測定した。即ち、実施例1〜4および比較例は金属箔と接着剤層の積層部の抵抗値を測定し、参考例は金属箔単独の抵抗値を測定した。表1に測定結果を示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示したとおり、実施例1〜4の試験材は導電性接着剤で熱可塑性樹脂層を貼り合わせたことで接着剤層を除去しなくても、金属箔単独の参考例に対して抵抗値の増加はわずかであることがわかる。また、比較例の試験材は厚さ2μmの接着剤層でも抵抗値が増大し、導電部になり得ないことを示している。
【0061】
上記実施例は蓄電用デバイス用外装材の熱可塑性樹脂層側の面に形成した導電部であるが、耐熱性樹脂層側の面に形成する導電部においても同様の結果が得られる。
【0062】
また、参考例は導電材を含有しない接着剤を用いた例であるが、実施例1〜4の結果と合わせると、導電性接着剤を用いることにより、接着剤の転写時に接着剤未塗布部の位置ずれや接着剤のにじみが生じても抵抗値の増加は極わずかにすぎないと見なすことができる。