(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記作用周波数は、(前記1以上の処理部材の1分間当たりの公転回数)×(該1以上の処理部材の各々の公転1回当たりの、該1以上の処理部材の各々が前記容器に最接近する回数)×(該1以上の処理部材の個数)/60である、請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1による混練装置100の構成の一例を示す。
【0029】
図1に示される混練装置100は、1以上の処理部材により被処理物を混練するように構成されている。ここで、被処理物は、例えば、パン生地である。ただし被処理物はパン生地に限定されるものではなく、クッキー生地、ハンバーグ生地等の混練される他の食品材料であってもよい。このような食品材料は、水と小麦粉などとを混ぜて練り合わせることにより製造される。
【0030】
混練装置100は、被処理物104aの混練が行われる混練装置本体100aと、混練装置本体100aを操作者が操作するための操作部100dと、混練装置本体100aに設けられた駆動源に駆動電流を供給する駆動部100bと、操作部100dからの操作信号Osに基づいて駆動部100bを制御する制御部100cと、混練装置本体100aの駆動源で消費される消費電流を検出する電流センサ40と、検出された消費電流に基づいて、混練される被処理物104aの状態変化を検出する装置(以下、状態検出装置という。)10とを有する。
【0031】
ここで、混練装置本体100aは、被処理物104aを収容する容器104を有する。容器104内には、1以上の処理部材として2つの混練部材105aおよび105bが設けられている。混練装置本体100aの駆動源は、駆動部100bからのモータ駆動電流Dc1により混練部材105aおよび105bを公転させる公転用モータ101と、駆動部100bからのモータ駆動電流Dc2により混練部材105aおよび105bを自転させる自転用モータ102とを含む。混練装置本体100aは、筐体(図示せず)に対して回転可能に支持された回転筐体103をさらに有する。回転筐体103には、回転筐体103の回転により混練部材105aおよび105bが公転し、かつ回転筐体103に対して混練部材105aおよび105bが自転可能となるよう、混練部材105aおよび105bが支持されている。
【0032】
また、電流センサ40は、混練装置本体100aの公転用モータ101に供給されるモータ駆動電流Dc1および自転用モータ102に供給されるモータ駆動電流Dc2に基づいて混練装置100で消費される消費電流を検出し、消費電流を示す消費電流信号Csを出力する。状態検出装置10は、消費電流信号Csに基づいて混練装置100での消費電流を解析することにより、混練装置100により混練される被処理物104aの状態変化を定量的に検出する。
【0033】
以下、状態検出装置10の具体的構成の一例として、コンピュータにより構成されたものを説明する。ただし、状態検出装置10は、混練装置本体100aでの消費電流に基づいて被処理物104aの状態変化を検出する機能を達成する限り、コンピュータ以外の他の構成で実現してもよい。
【0034】
図2は、
図1に示される状態検出装置10の具体的構成の一例を示す。
【0035】
状態検出装置10は、電流センサ40からの消費電流信号Csの解析により被処理物の状態変化を検出するコンピュータ10aと、コンピュータ10aに情報を入力するための入力装置13aと、コンピュータ10aからの情報を出力するための出力装置14aとを有する。コンピュータ10aは、プロセッサ11と、メモリ12と、入力IF13と、出力IF14とを含む。プロセッサ11とメモリ12と入力IF13と出力IF14とは、データバス15を介して相互に接続されている。入力IF13には、電流センサ40が接続されており、さらにキーボード、マウス、タッチパネル、スキャナなどの入力装置13aが接続され得る。出力IF14には、液晶ディスプレイなどの表示装置が出力装置14aとして接続されている。
【0036】
ここで、メモリ12には、プロセッサ11に電流センサ40から出力される消費電流信号Csの解析を行わせるプログラムが格納されており、プロセッサ11は、メモリ12に格納されているプログラムにより消費電流信号Csの解析処理を実行する。
【0037】
次に混練装置100の動作を説明する。
【0038】
操作者により操作部100dの混練開始スイッチ(図示せず)がオンされると、操作部100dからの操作信号Osに基づいて制御部100cから駆動部100bに駆動制御信号Dsが出力される。駆動部100bは、駆動制御信号Dsに基づいて混練装置本体100aの公転用モータ101および自転用モータ102にそれぞれモータ駆動電流Dc1およびDc2を供給する。
【0039】
混練装置100の駆動状態では、駆動部100bから混練装置本体100aの公転用モータ101、自転用モータ102にそれぞれモータ駆動電流Dc1、Dc2が供給されているので、電流センサ40は、これらのモータ駆動電流Dc1、Dc2を検出し、混練装置100で消費されている消費電流を示す消費電流信号Csを状態検出装置10に出力する。
【0040】
状態検出装置10に含まれるコンピュータ10aでは、消費電流信号Csが入力IF13およびデータバス15を介してプロセッサ11に入力されると、プロセッサ11はこの消費電流信号Csに対する電流解析処理を行う。
【0041】
図3は、状態検出装置10が行う処理をフローチャートで示す。
【0042】
(ステップS1)
まず、プロセッサ11に、電流センサ40の出力である消費電流信号Cs(
図4参照)が入力されると、プロセッサ11は、電流センサ40からの消費電流信号Csを例えばサンプリング周期200Hzでサンプリングする。なお、
図4では、実線の縦軸Aに振幅をとり、実線の斜め軸Tに時間をとった2次元座標に、消費電流信号Csが示されている。
【0043】
(ステップS2)
プロセッサ11は、得られた消費電流信号Csのサンプリングデータをメモリ12に記録する。
【0044】
(ステップS3)
続いて、プロセッサ11は、メモリ12に記録した消費電流信号Csのサンプリングデータを
図4に示すように、5秒毎に高速フーリエ変換アルゴリズムで周波数変換する。なお、消費電流信号Csのサンプリングデータに対する周波数変換の周期は5秒に限定されず、任意に設定することができる。
【0045】
プロセッサ11は、
図4に示すように、消費電流信号Csのサンプリングデータの周波数変換により、消費電流の5秒ごとのパワースペクトル情報G1〜G4を取得してメモリ12に記録する。
図4では、消費電流信号Csを、時間t0〜t1、時間t1〜t2、時間t2〜t3、時間t3〜t4のそれぞれの5秒間毎に周波数変換して得られるパワースペクトル情報G1〜G4が3次元座標に示されている。この3次元座標では、点線の縦軸Pがパワーを示し、実線の斜め軸Tが時間を示し、点線の横軸Fが周波数を示す。
【0046】
(ステップS4)
次に、プロセッサ11は、作用周波数Faの所定倍の周波数に対応するパワースペクトル値を抽出する。
【0047】
ここで、作用周波数Fa(Hz)は、1秒間に混練部材の先端が容器内壁に最接近する(あるいは容器内壁に当たる)回数であり、次式(1)で算出される。
【0048】
作用周波数
=公転速度(rpm)×自転係数×混練部材の数/60 ・・・(1)
ここで、自転係数は、混練部材の公転1回転における混練部材の先端が容器内壁に最接近する(あるいは容器内壁に当たる)回数である。
【0049】
例えば、混練部材の個数が2である場合、公転速度を84(rpm)とし、自転係数を2.9333とすると、作用周波数は8.213(Hz)=84×2.9333×2/60となる。
【0050】
ただし、式(1)は、1以上の混練部材の各々が容器内壁に最接近する(あるいは容器内壁に当たる)先端(以下、羽根という。)を1つだけ有する場合の作用周波数を算出するものであり、1以上の混練部材の少なくとも1つが複数の羽根を有する場合の作用周波数は、次式(2)で算出される。
【0051】
作用周波数
=公転速度(rpm)×自転係数
×混練装置に含まれる1以上の混練部材における羽根の総数/60 ・・・(2)
作用周波数の所定倍の周波数は、作用周波数のM/N倍(M、Nは任意の正の整数)の周波数であり、被処理物の種類に応じて、被処理物の処理状態の変化に対するノイズマージンが最大となる周波数、つまり、消費電流信号Csに対応するパワースペクトル値から被処理物の処理状態の変化を高い精度で検出可能な周波数に適宜設定される。また、作用周波数の所定倍の周波数を2つ以上用いた方が、作用周波数の所定倍の周波数を1つだけ用いる場合に比べて、消費電流信号Csに対応するパワースペクトル値から被処理物の処理状態の変化をより高い精度で検出可能である場合は、作用周波数の所定倍の周波数として2つ以上の周波数を用いてもよい。ここでは、例えば、作用周波数Faの1/2倍、1倍、3/2倍、2倍の周波数のうちの少なくとも1つのパワースペクトル値が用いられる。
【0052】
(ステップS5)
次に、プロセッサ11は、抽出したパワースペクトル値の時系列での変化に基づいて被処理物104aの状態変化を検出する。例えば、
図4に示すように、時刻t0〜t1の5秒間と次の時刻t1〜t2の5秒間とでは、作用周波数Faの1/2倍、1倍、3/2倍、2倍のいずれの周波数のパワースペクトル値にも変化はないが、時刻t1〜t2の5秒間に比べて次の時刻t2〜t3の5秒間では、作用周波数Faの1/2倍、1倍、3/2倍、2倍のいずれの周波数のパワースペクトル値も増大している。また、時刻t2〜t3の5秒間と次の時刻t3〜t4の5秒間とでは、作用周波数Faの1/2倍、1倍、3/2倍、2倍のいずれの周波数のパワースペクトル値にも変化はない。
【0053】
この場合、時刻t1〜t2の5秒間と次の時刻t2〜t3の5秒間との間でのパワースペクトル値の変化を、作用周波数Faの1/2倍、1倍、3/2倍、2倍の周波数のうちの少なくとも1つで求めることで、被処理物の状態変化を定量化することができる。例えば、作用周波数Faの1倍の周波数のパワースペクトル値が、
図4に示すように、時刻t1〜t2の5秒間と次の時刻t2〜t3の5秒間との間で、値P2から値P3に増加した場合、ΔP=(P3−P2)の値により被処理物104aの状態変化を定量化することができる。
【0054】
プロセッサ11はこのような処理部材の状態変化を示す情報を、出力IF14を介して出力装置14aである表示装置に表示することにより操作者に知らせることができる。
【0055】
操作者は、このような被処理物の状態変化が検出されたときは、混練装置の動作状態を、被処理物に対する処理が被処理物の状態に応じた処理となるように変更する。
【0056】
以下、操作者が、混練装置100の動作モードを変更することにより、または、動作モードでの動作条件(自転係数)を変更することにより、混練装置100での被処理物の混練処理を変更する方法を説明する。
【0057】
図5は、
図1に示す混練装置100の2つの動作モードを説明する図である。
【0058】
ここで、混練装置100の動作モードには、
図5(a)に矢印で示すように、混練部材105a、105bの自転方向と混練部材105a、105bの公転方向とが異なる動作モード(r動作)と、
図5(b)に矢印で示すように、混練部材105a、105bの自転方向と混練部材105a、105bの公転方向とが同じである動作モード(Q動作)とがある。r動作では混練部材105aの先端Eaは
図6(a)に示す軌跡Taを描き、Q動作では混練部材105aの先端Eaは
図6(b)に示す軌跡Tbを描く。なお、
図6(a)、
図6(b)中、C0は混練部材105aの公転の中心であり、公転の中心C0は容器の内周の中心と一致している。Trcは混練部材105aの自転中心が移動する円形経路である。Trdは、容器104の内周、つまり容器内壁104bから20mm離れた位置を示す仮想円である。
【0059】
例えば、r動作では、Q動作に比べて、混練部材105aの先端Eaは、容器内壁104bに対してその法線方向Lrにより近い角度から容器内壁に近づく。逆に、Q動作では、r動作に比べて、混練部材105aの先端Eaは、容器内壁104bに対してその接線方向Lqにより近い角度から容器内壁に近づく。
【0060】
従って、r動作では、混練部材105a、105bが被処理物104を容器の内壁104bに押さえ付けて変形させるずり変形を被処理物104に与えやすくなり、Q動作では、混練部材105a、105bが被処理物104を容器内壁104bの接線方向に飛ばしやすくなる。また、r動作あるいはQ動作で、自転係数を調整することにより、被処理物に与えるずり変形の程度、あるいは被処理物を接線方向に飛ばす勢いなどを調整することができる。
【0061】
なお、このように混練部材105aの先端Eaが容器内壁104bに近づくときの角度は、作用角度とした以下のとおり定義される。
【0062】
以下、作用角度の定義を具体的に説明する。
【0063】
図7は、作用角度を説明するための図であり、
図7(a)は、
図6(a)のR部分を拡大し、
図7(b)は、自転係数Naと作用角度Kとの関係を示す。
【0064】
例えば、作用角度Kは、
図7(a)に示すように、混練部材105aの先端Eaの軌跡Ta上の点Paと、容器104の内壁104a上の点Pbとを結ぶ直線Laが、容器104の内壁104a上の点Pbでの内壁104bの接線Lbに対してなす角度として定義される。ここで、軌跡Ta上の点Paは、混練部材105aの先端Eaが容器104の内壁104bまで20mmに接近する点である。容器104の内壁104a上の点Pbは、混練部材105aの先端Eaの軌跡Taが最も容器104の内壁104aに近づく点である。なお、
図7(a)中の点Prは、混練部材105aの先端Eaが最も容器内壁104bに近づいたときの先端Eaの位置を示す。
【0065】
なお、Q動作における作用角度もr動作における作用角度と同様に定義される。また、混練部材105bの先端Ebも混練部材105aの先端Eaと同じ軌跡を描き、混練部材105bの作用角度も混練部材105aと同様に定義される。
【0066】
また、作用角度は、動作モードあるいは自転係数を変えることにより変更することができる。例えば、r動作においては、
図7(b)のグラフJ1で示すように、自転係数Naが増大するにつれて作用角度Kが減少し、Q動作においては、
図7(b)のグラフJ2で示すように、自転係数Naが増大するにつれて作用角度Kが増大する。ここで、作用角度Kが急激に変化する自転係数Naの範囲は5以下の範囲である。
【0067】
従って、操作者は、被処理物の状態変化に応じて、混練装置の動作モードをr動作かQ動作のいずれかに設定し、さらに設定した動作モードで自転係数Naを調整することにより作用角度Kを所望の角度に調整し、これにより、被処理物に対する混練部材105a、105bによる処理(例えば、混練部材105a、105bが被処理物104aに与えるずり変形の強さなど)を被処理物の状態に応じたものにすることができる。
【0068】
このように本実施形態1による検出装置1では、電流センサ40と状態検出装置10とを備え、電流センサ40が被処理物を混練する混練装置100での消費電流を検出し、状態検出装置10が、検出された消費電流の周波数解析により得られた消費電流のパワースペクトルを示す情報から、混練部材105a、105bが被処理物に作用する作用周波数の所定倍の周波数に対応するパワースペクトル値を抽出し、抽出したパワースペクトル値の時系列での変化に基づいて被処理物の状態変化を検出するので、消費電流の周波数成分のうちで、無負荷状態で変動する無負荷電力の変動分を実質的に含まない成分に基づいて被処理物104aの状態変化を高い精度で検出することができる。
【0069】
なお、上記実施形態1では、混練部材105aの先端Eaが容器104の内壁104bまで20mmに接近する点の位置を用いて作用角度を定義したが、作用角度の定義に用いる点の位置は、容器104の内壁104bまで20mmに接近する点の位置に限定されない。例えば、混練装置の容器の大きさ(容器内径)や自転係数が変わったときには、作用角度の定義に用いる点の位置が変化する。
【0070】
そこで、以下、作用角度の定義に用いる点(以下、作用点という。)の位置の定義を明確にした上で、定義された作用点の位置から作用角度を定義する方法を説明する。
【0071】
〔作用点の位置の定義〕
この作用点の位置の定義は、混練部材105aの先端Eaの速さが最小から最大に変化する途中、または最大から最小に変化する途中での変曲点の位置を作用点の位置とするものであり、以下、具体的に説明する。
【0072】
図12は、混練装置100の動作特性をグラフで示す図であり、
図12(a)は、自転係数が4.0833である場合に、混練部材の公転角度の増大に伴って、混練部材の先端の速さ(実線)、混練部材の先端から容器内壁までの距離(点線)、混練部材の先端の加速スカラー(一点鎖線)が変化する様子を示す。
【0073】
混練部材の先端の速さ(以下、先端速さという。)は、
図12(a)に実線で示すように、混練部材の公転角度が増大するにつれて正弦的に変化し、混練部材の先端が容器内壁に最接近するとき、および容器中心に最接近するときに、最大速さまたは最小速さとなる。
【0074】
ここでは、作用点の位置は、先端速さが最小から最大に変化する途中での変曲点の位置、または先端速さが最大から最小に変化する途中の変曲点の位置であるので、作用点の位置は、公転角度が、先端速さを微分して得られる加速スカラーが最大値または最小値になるときの混練部材の先端の位置(以下、先端位置という。)として、つまり、加速スカラーをさらに微分した値が0となるときの公転角度での先端位置として求めることができる。
【0075】
次に、作用点の位置の定義に従って作用点の位置を求める方法を具体的に説明する。
【0076】
図13は、混練部材の公転中心C0をXY座標の原点にとり、混練部材の先端Eaの位置(XY座標のx座標およびy座標)を混練部材の公転角度tの関数で表す関係式の導出方法を説明するための図である。
【0077】
混練部材の先端Eaの位置のx座標、y座標は、
図13に示すように、混練部材の公転角度t、混練部材の自転角度s、混練部材の公転半径H、混練部材の自転半径rを用いて、x=Hcos(t)+rcos(s)、y=Hsin(t)+rsin(s)と表される。なお、これらの式でr動作とQ動作との違いは自転角度sの符号によって表される。また、混練部材の自転角度sは、公転角度tと自転係数pとを用いてs=(p+1)tと表される。従って、x座標およびy座標は以下のとおり式F1および式F2で表される。
【0079】
混練部材の先端の速度ベクトル(以下、先端速度ベクトルという。)は、式F1および式F2を微分して得られる式F4および式F5を式F3に代入することにより得られる。
【0081】
さらに、混練部材の先端の速さ(以下、先端速さという。)は、x軸方向の速度成分(式F4)とy軸方向の速度成分(式F5)とを式F6に代入することで、これらの速度成分の2乗平均(式F7)として求められる。
【0083】
さらに、先端速さ(式F7)の微分により加速スカラーが以下の式F8として求められる。
【0085】
さらに、式F8に下記の式F9〜F11を代入して係数を簡略化した後に、先端速さの加速スカラー(式F8)を微分することにより、羽根先端速さの加速スカラーの微分値が式F12として得られる。
【0088】
式F12の右辺が0となる公転角度tをtaとすると、公転角度(t=ta)であるとき、混練部材の先端Eaが先端速さの変曲点に位置し、公転角度taにおける先端位置Eaが作用点の位置となる。
【0089】
具体的な作用点の位置を示すX座標xa、Y座標yaは、式F1およびF2に公転角度taを代入することにより、式F13、F14に示すように求められる。さらに、作用点と容器内壁との距離Laは、式F15により求められる。ただし、式F15では、容器内周(半径)は、混練部材の先端が容器内面に最接近したときに容器内面に当たる場合(つまり、混練部材の自転半径と公転半径との和に一致する場合)を想定している。
【0091】
例えば、r軌跡の動作モードで公転半径HをH=40mm、混練部材の先端の自転半径rをr=59mm、自転係数pをp=−4.08333とすると、作用点から容器内壁までの距離Laは21.8mmとなる。
【0092】
このように、式F12によれば、混練部材の先端Eaが先端速さの変曲点に位置するときの公転角度(t=ta)を、混練部材の公転半径H、混練部材の自転半径r、自転係数pによって求めることができ、作用角度を定義するための作用点の位置を、混練部材の先端Eaの速さの変曲点の位置と定義することにより、どのような容量の混練装置であっても作用点の位置および作用点の位置に基づいた作用角度を一意的に求めることができる。
【0093】
例えば、
図12(b)は、5L容器(容量が5リットル)に関して式F12から得られる、容器内壁から作用点までの距離と動作モード(Q動作、r動作)および自転係数との関係を示す。
【0094】
5L容器(公転半径H=40mm、羽根半径r=59mm、容器半径=173mm)では、
図12(b)に示すように、動作モードと自転係数とに応じて作用点の位置を一意的に求めることができる。また、実施形態1で作用点の位置として示した、容器内壁から20mm離れた位置は、5L容器における、r動作での自転係数が3付近である場合の一例であることが
図12(b)からわかる。
【0095】
また、
図12(c)は、30L容器(容量が30リットル)に関して式F12から得られる、容器内壁から作用点までの距離と動作モード(Q動作、r動作)および自転係数との関係を示す。
【0096】
30L容器(公転半径H=60mm、羽根半径r=112mm、容器半径=173mm)に関しても、
図12(c)に示すように、動作モードと自転係数とに応じて作用点の位置を一意的に求めることができる。
【0097】
〔定義された作用点の位置から求められる作用角度の第1の定義〕
定義された作用点の位置に基づく作用角度の第1の定義は、実施形態1で
図7を用いて説明したように、作用角度Kは、位置が定義された作用点Paと混練部材105aの先端Eaが最も接近する容器内壁上の点Pbとを結ぶ直線Laと、点Pbでの内壁104bの接線Lbとがなす角度とするというものである。
【0098】
〔定義された作用点の位置から求められる作用角度の第2の定義〕
定義された作用点の位置に基づく作用角度の第2の定義は、実施形態1で説明した第1の定義とは異なるものであり、以下簡単に説明する。
【0099】
図14は、作用点Paに基づく作用角度の第2の定義を説明するための図であり、
図14(a)は、混練部材の先端Eaの軌跡Ta上での作用点Pa1、作用点Pa1に最短である容器内壁の円周上の点Pb1、および混練部材の先端Eaが最接近するあるいは当たる容器内壁上の位置Pc1を示し、
図14(b)は、これらの点Pa1、点Pb1、位置Pc1の位置関係を拡大して示し、
図14(c)は、点Pa1と点Pb1との距離La1、および位置Pc1から点Pb1までの円弧(半径H+r)の長さLb1に基づいた作用角度θaの定義を示す。
【0100】
図14に示す作用角度θaの第2の定義は、以下の式F16〜F18に示すとおりである。
【0101】
簡単に説明すると、作用角度θaは、
図14(c)に示すように、作用点Paから容器内壁の円周Crまでの最短距離La1を底辺とし、作用長さLb1(半径H+rの円周Cr上の点Pb1から点Pc1までの円弧の長さ)を高さとする直角三角形の正接(式F18)を規定する角度である。
【0102】
ここで、作用長さLb1は式F17に示すように、円周Crの半径(H+r)と、混練部材の先端Eaが作用点Pa1に位置するときの角度θbとの積で求めることができ、さらに角度θbは、式F16に示すように作用点Pa1のx座標とy座標とから得られる。
【0104】
なお、作用角度は、混練部材の先端がどの程度深い角度で容器内壁に接近するかを定量的に示す指標であるため、作用角度は混練部材の先端が容器内壁に近づくときの変曲点である作用点Paの位置座標を用いて作用角度を演算すべきであるが、混練部材の先端が容器内壁から離れるときの変曲点Pa1も幾何学的には混練部材の先端が容器内壁に近づくときの変曲点Paと全く同じ位置にあるので、作用角度を求める計算が簡単である変曲点Pa1の位置座標を用いている。
【0105】
一例として、上述した作用点の位置の定義に従って、5L容器(公転半径H=40mm、自転半径r=59mm、自転係数p=−4.08333)における作用点Pa1の位置(容器内壁からの距離La1:21.8mm)を計算し、さらに、この作用点の位置を用いて、作用角度を
図14で説明した第2の定義に従って計算したところ、作用角度θaは23.9度とであった。ただし、作用長さLbを規定する角度θbは28.4度、作用長さLbは49.15mmであった。
【0106】
図15は、5L容器に関して、自転係数と作用点Pa1の位置との関係(
図15(a))および自転係数と作用角度θaとの関係(
図15(b))を示す。
【0107】
図15(a)からは、Q動作では、自転係数の増加(2〜11程度)に従って、容器内壁から作用点Pa1までの距離La1が37mm程度から30mm程度まで変化し、r動作では、自転係数の増加(2〜11程度)に従って、容器内壁から作用点Pa1までの距離La1が10mm程度から26mm程度まで変化していることが分かる。
【0108】
また、
図15(b)からは、Q動作では、自転係数の増加(2〜11程度)に従って、作用角度(rad)が0.32程度から0.22程度の範囲内で変化し、r動作では、自転係数の増加(2〜11程度)に従って、作用角度(rad)が0.8程度から0.32程度まで変化していることが分かる。
【0109】
〔作用点の位置および作用角度のとり得る範囲の例示〕
ここで、作用点の位置は、作用点が容器内壁からどの程度離れているかを示す指標であり、以下の説明では、作用点の位置を作用点から容器内壁までの距離という。
【0110】
図16は、容器容量と作用点Pa1から容器内壁までの距離との関係〔自転係数が2である場合〕(
図16(a))および容器容量と作用点Pa1から容器内壁までの距離との関係〔自転係数が11である場合〕(
図16(b))を示す。
【0111】
図16(a)には、容器容量が、5L、25L、30L、45L、60L、110L、250Lのそれぞれである場合について、自転係数が2であるr動作での作用点Pa1から容器内壁までの距離(実線)および自転係数が2であるQ動作での作用点Pa1から容器内壁までの距離(点線)が示されている。
図16(a)から分かるように、自転係数が2であるr動作では作用点Pa1から容器内壁までの距離が容器容量の増大に伴って10mm程度から45mm程度まで変化し、自転係数が2であるQ動作では作用点Pa1から容器内壁までの距離が容器容量の増大に伴って38mm程度から120mm程度まで変化する。
【0112】
また、
図16(b)には、容器容量が、5L、25L、30L、45L、60L、110L、250Lのそれぞれである場合について、自転係数が11であるr動作での作用点Pa1から容器内壁までの距離(実線)および自転係数が11であるQ動作での作用点Pa1から容器内壁までの距離(点線)が示されている。
図16(b)から分かるように、自転係数が11であるr動作では作用点Pa1から容器内壁までの距離が容器容量の増大に伴って25mm程度から95mm程度まで変化し、自転係数が11であるQ動作では作用点Pa1から容器内壁までの距離が容器容量の増大に伴って32mm程度から105mm程度まで変化する。
【0113】
従って、定義された作用点から容器内壁までの距離は、5L容器で自転係数が2程度のr動作を行ったときの10mm程度から、250L容器で自転係数が2程度のQ動作を行ったときの120mm程度まで変化することが分かる。
【0114】
図17は、容器容量と作用角度θaとの関係〔自転係数が2である場合〕(
図17(a))、および容器容量と作用角度θaとの関係〔自転係数が11である場合〕(
図17(b))を示す。
【0115】
図17(a)には、容器容量が、5L、25L、30L、45L、60L、110L、250Lのそれぞれである場合について、自転係数が2であるr動作での作用角度(実線)および自転係数が2である場合のQ動作での作用角度(点線)が示されている。
図17(a)から分かるように、自転係数が2であるr動作では作用角度が容器容量の増大に伴って0.82(rad)程度から0.48(rad)程度の範囲で変化し、自転係数が2であるQ動作では作用角度が容器容量の増大に伴って0.32(rad)程度から0.28(rad)程度の範囲で変化することが分かる。
【0116】
図17(b)には、容器容量が、5L、25L、30L、45L、60L、110L、250Lのそれぞれである場合について、自転係数が11であるr動作での作用角度(実線)および自転係数が11である場合のQ動作での作用角度(点線)が示されている。
図17(b)から分かるように、自転係数が11であるr動作では作用角度が容器容量の増大に伴って0.32(rad)程度から0.24(rad)程度の範囲で変化し、自転係数が11であるQ動作では作用角度が容器容量の増大に伴って0.26(rad)程度から0.18(rad)程度の範囲で変化することが分かる。ここで、作用角度は、5L容器で自転係数が2であるr動作が行われるときに最大となり、45L容器あるいは60L容器で自転係数が11であるQ動作が行われるときに最小となる。
【0117】
その結果、作用角度θaの範囲は、45L容量あるいは60L容器で自転係数が11であるQ動作が行われる場合の約0.18(rad)から、5L容量で自転係数が2であるr動作が行われる場合の0.82(rad)程度までの範囲となる。
【0118】
(実施形態2)
図8は、本発明の実施形態2による混練装置を説明するための図である。
【0119】
この混練装置200は、実施形態1の混練装置100において、操作部100からの操作信号Osに基づいて駆動部100bを制御する制御部100cに代えて、操作部100からの操作信号Osおよび状態検出装置10で検出された被処理物の状態変化を示す状態変化信号Asの両方の信号に基づいて駆動部100bを制御する制御部200cを備えたものである。ここで、制御部200cは、処理される被処理物の状態変化に応じて、公転用モータ101および自転用モータ102の回転数および回転方向の少なくとも一方を変更することにより、作用周波数あるいは作用角度を、被処理物の処理状態に適したものとするように構成されている。なお、この実施形態2の混練装置200におけるその他の構成は、実施形態1の混練装置100と同一である。
【0120】
以下、混練装置に含まれる制御部200cの具体的構成の一例として、コンピュータにより構成されたものを説明する。ただし、制御部200cは、操作信号Osおよび状態変化信号Asの両方の信号に基づいて駆動部100bを制御する機能を達成する限り、コンピュータ以外の他の構成で実現してもよい。
【0121】
図9は、
図8に示す混練装置に含まれる制御部200cの具体的構成の一例を示す。
【0122】
制御部200cはコンピュータ20aにより構成され、コンピュータ20aは、操作部100dからの操作信号Osおよび状態検出装置101からの被処理物の状態変化を示す状態変化信号Asに基づいて駆動部100bを制御する。
【0123】
コンピュータ20aは、プロセッサ21と、メモリ22と、入力IF23と、出力IF24とを含む。プロセッサ21とメモリ22と入力IF23と出力IF24とは、データバス25を介して相互に接続されている。入力IF23には、状態検出装置10が接続されており、さらに混練装置200を操作するための操作部100dが接続されている。操作部100dは、キーボード、マウス、タッチパネルなどのコンピュータ20aに対して情報を入力するための装置を含む。出力IF24には駆動部100bが接続されている。
【0124】
ここで、メモリ22には、プロセッサ21に、状態検出装置10から出力される状態変化信号Aに基づいて駆動部100bを制御させるプログラム(自動運転プログラム)が格納されており、プロセッサ21は、メモリ22に格納されている自動運転プログラムにより混練装置本体100aでの混練部材105a、105bの自動運転制御を実行する。なお、メモリ22には、プロセッサ21に、操作部100dからの操作信号Osに基づいて駆動部100dを制御させるプログラムが格納されていることは言うまでもない。
【0125】
図10は、
図8に示す混練装置に含まれる混練装置本体の具体的な構成の一例を示す。
【0126】
混練装置本体100aは、筐体108と、筐体108内に配置された回転可能な筒状公転軸111を有する。筒状公転軸111は、固定具132により筐体108に固定された環状部材131の内部に、外側上軸受131aおよび外側下軸受131bを介して回転可能に取り付けられている。筒状公転軸111の上端には従動スプロケット112が取り付けられ、従動スプロケット112は、公転用モータ101のモータ軸101aに取り付けられた駆動スプロケット113にチェーン114により連結されている。筒状公転軸111の下端には、筒状公転軸111とともに回転する回転筐体103が取り付けられている。
【0127】
混練装置本体100aは、筒状公転軸111内に配置された棒状自転軸121を有する。棒状自転軸121は、内側上軸受111aおよび内側下軸受111bを介して筒状公転軸111に対して回転可能に取り付けられている。棒状自転軸121の上端部は、従動スプロケット112を突き抜けて上方に突出しており、自転用モータ102のモータ軸102aに結合されている。棒状自転軸121の下端部は、回転筐体103の内部に侵入しており、棒状自転軸121の下端部には大歯車121aが取り付けられている。回転筐体103内には、棒状自転軸121と平行に配置された一対の従動自転軸123および124が設けられている。従動自転軸123は従動軸上軸受123bおよび従動軸下軸受123cを介して回転筐体103に回転可能に取り付けられており、従動自転軸124は従動軸上軸受124bおよび従動軸下軸受124cを介して回転筐体103に回転可能に取り付けられている。従動自転軸123および124にはそれぞれ、小歯車123aおよび124aが取り付けられ、小歯車123aおよび124aは大歯車121aとかみ合っている。さらに、従動自転軸123および124の下端にはそれぞれ、混練部材105aおよび105bが取り付けられている。
【0128】
このような構造の混練装置本体100aでは、混練部材105aおよび105bは、公転駆動軸111および自転駆動軸121の回転により公転するとともに自転するようになっている。
【0129】
また、筐体108の下部には、混練容器102を載置する載置台108aが昇降自在に設けられている。載置台108aが下端位置にあるとき、混練容器104への被処理物104aの出し入れが可能であり、載置台108aが上端位置にあるとき、容器蓋部材106により混練容器104の上部開口部分が塞がれるようになっている。
【0130】
次に混練装置200の動作を説明する。
【0131】
図11は、混練装置200の動作をフローチャートで示す図である。
【0132】
例えば、メモリ22には、パン生地、クッキー生地、ハンバーグ生地等の食品材料、例えばパン生地を製造するための自動運転プログラムが格納されている。
【0133】
(ステップS11)
操作者の操作によりプロセッサ21が自動運転プログラムの実行を開始すると、プロセッサ21は、予め設定された動作条件を読み込む。ここで、動作条件は、例えば、混練部材105a、105bの動作モード(r動作あるいはQ動作)、公転速度(rpm)、自転係数である。
【0134】
(ステップS12)
プロセッサ11は、混練部材105a、105bの動作モード、自転係数および公転速度が動作条件に適合するように駆動部100bに駆動制御信号Dsを出力すると、駆動部100bは、公転用モータ101および自転用モータ102を動作条件が満たされるように駆動する。これにより被処理物104aの処理が開始される。
【0135】
なお、混練部材105a、105bにより被処理物104aが処理されている状態では、状態検出装置10のプロセッサ11が、
図3に示すステップS1〜S5に示す処理を実行することにより、混練装置本体100aでの消費電流の解析を行い、状態検出装置10のプロセッサ11が、被処理物の状態変化を示す情報(状態変化信号)Asを制御部200cのプロセッサ21に供給する。
【0136】
(ステップS13)
プロセッサ21は、状態変化信号Asを受信する。
【0137】
(ステップS14)
プロセッサ21は、状態変化信号Asに基づいて被処理物104aの状態変化があったか否かを判定する。
【0138】
(ステップS15)
この判定の結果、被処理物104aの状態変化がなければ、プロセッサ21は、各モータ101、102の回転数が維持されるように駆動部100bを制御する。これにより、被処理物104aの処理状態が現状のまま維持される。その後、プロセッサ21の処理は、消費電流の解析処理(ステップS13)に戻る。
【0139】
(ステップS16)
一方、ステップS14で被処理物104aの状態変化があると判定された場合は、プロセッサ21は、被処理物104aの状態変化が被処理物104aの処理終了状態への変化であるか否かをさらに判定する。被処理物104aの状態変化が被処理物104aの処理終了状態への変化である場合は、プロセッサ21は各モータ101および102が停止するように駆動部100bを制御し、被処理物104aの処理を終了する。
【0140】
(ステップS17)
一方、被処理物104aの状態変化が被処理物104aの処理終了状態への変化でない場合は、プロセッサ21は、各モータ101、102の回転数が被処理物104aの状態変化に応じた値となるように駆動部100bを制御する。これにより、被処理物104aの処理状態が被処理物104aの状態変化に応じて変更される。その後、プロセッサ21の処理は、状態変化信号Asの受信処理(ステップS13)に戻る。
【0141】
このように本実施形態2の混練装置200では、被処理物104aを処理する混練装置本体100aと、混練装置本体100aでの消費電流を検出する電流センサ40と、電流センサ40で検出された消費電流の解析により被処理物104aの状態変化を検出する状態検出装置10とを備え、制御部200cによる駆動部100bの制御により、検出した被処理物104aの状態変化に応じて被処理物104aの処理状態を変更するようにしたので、パン生地など、混練処理が進むにつれて状態が変化する被処理物104aの処理を、被処理物104aの状態に合わせて適切な処理状態に変更しつつ、被処理物104aの処理を被処理物が完成状態となるまで自動で行うことが可能となる。
【0142】
なお、上記実施形態2では、消費電流の周波数解析を用いた被処理物の状態変化の検出と、駆動部の制御とは、別々のコンピュータにより行うようにしているが、被処理物の状態変化の検出と駆動部の制御とは1つのコンピュータにより行うようにしてもよい。
【0143】
また、上記各実施形態では、状態変化を検出する対象である被処理物の処理が混練である場合を示したが、被処理物の処理は、混練に限定されず、混合や撹拌などの他の処理であってもよい。
【0144】
また、上記各実施形態では、状態変化を検出する対象である被処理物が、パン生地などの食品材料である場合を示したが、被処理物は、食品材料だけでなく、その他医薬や理化学分野で用いられる原材料でもよい。
【0145】
例えば、本発明は、スマートホンに使用されるコンデンサやコイル、接着フィルムなどの部品の究極的な縮小化技術に対応するための混練技術、あるいは自動車用電池の原料の精密混合分散技術にも、食品材料の混合技術あるいは混練技術と同様に適用することができ、これにより、被処理物の混合状態の変化あるいは混練状態の変化の定量化と被処理物の品質管理とを提供することができる。
【0146】
このように本発明は、各実施形態で説明した被処理物の混練だけでなく、混合や撹拌といった材料を混ぜる技術には幅広く適用可能である。
【0147】
また、上記各実施形態では、1以上の処理部材として2つの混練部材105a、105bを有する混練装置100を示したが、混練装置の混練部材は1つでも3つ以上でもよい。
【0148】
また、上記各実施形態では、1以上の処理部材が公転するとともに自転するように構成した混練装置を示したが、混練装置は、1秒間に1以上の被処理物が被処理物の容器の内壁に最接近する回数を設定可能なものであれば、1以上の処理部材の回転運動が自転運動あるいは公転運動のいずれか一方のみであるものでもよい。
【0149】
さらに、本発明の検出装置による被処理物の状態変化の検出が、1以上の処理部材の公転方向と自転方向とが異なる混練装置のr動作、および1以上の処理部材の公転方向と自転方向とが同じである混練装置のQ動作のいずれにおいても可能であることはいうまでもない。
【0150】
またさらに、混練装置は、1以上の混練部材の各々が容器内壁に最接近する(あるいは容器内壁に当たる)先端(羽根)を1つだけ有するものに限定されず、混練装置が、1以上の混練部材の少なくとも1つが複数の羽根を有するものであってもよいこともいうまでもない。
【0151】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。