(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
壁の亀裂に先端が配置され該亀裂に充填剤を注入するノズル部及び該ノズル部に連設され該ノズル部に充填剤を流入させる流入管を有した注入ノズルと、空気を吸引する吸引通路が形成された支持軸に固定されるとともに該支持軸の吸引通路を通しての空気の吸引により壁面に吸着させられ吸引解除により壁面から離脱可能な吸着盤と、上記支持軸にその長手方向途中において第1ユニバーサルジョイントを介して支持されるとともに先端部に上記注入ノズルの流入管を第2ユニバーサルジョイントを介して支持するアームと、該アームの後端部に取付けられ上記壁面に先端が当接し上記注入ノズルによる充填剤の充填時に当該アームに生じるモーメント荷重を受ける当接部材とを備えた壁の亀裂補修装置において、
上記当接部材を上記アームの軸線方向に直交する方向に複数設け、
上記第1ユニバーサルジョイントを、上記支持軸が挿通される貫通孔を有した球形の回転部材と、該回転部材を回転自在に保持するリング状の保持リングとを備えて構成し、上記支持軸の外周に雄ネジを形成し、上記吸着盤の上面と上記アームの下面間に押さえコイルスプリングを圧縮状態で上記支持軸に遊嵌させて設け、上記アームの上面側において上記支持軸の雄ネジに螺合しアームの上側への移動を規制する規制ナット部を設けたことを特徴とする壁の亀裂補修装置。
上記軸体を、壁面に当接する当接頭及び該当接頭から延び該当接頭より小径の雄ネジ杆を有して構成し、上記アームの後端部に上記各当接部材の雄ネジ杆が挿通される複数の挿通孔を形成した後端部材を設け、上記ロック機構を、上記後端部材の下面及び上記雄ネジ杆の当接頭間に圧縮状態で該雄ネジ杆に遊嵌させて設けられる押圧コイルスプリングと、上記後端部材の上面側において上記雄ネジ杆に螺合するロックナットとを備えて構成したことを特徴とする請求項6記載の壁の亀裂補修装置。
上記軸体を、壁面に当接する当接頭及び該当接頭から延び該当接頭より小径の雄ネジ杆を有して構成し、上記アームの後端部に上記各当接部材の雄ネジ杆が挿通される複数の挿通孔を形成した後端部材を設け、上記ロック機構を、上記後端部材の下面側及び上面側において夫々雄ネジ杆に螺合するロックナットで構成したことを特徴とする請求項6記載の壁の亀裂補修装置。
上記アームを側面から見て、上記支持軸の中心軸と上記注入ノズルの中心軸との間隔をL1とし、上記支持軸の中心軸と上記当接部材の中心軸との距離をL2としたとき、L1<L2になる長さにしたことを特徴とする請求項1乃至8何れかに記載の壁の亀裂補修装置。
上記第2ユニバーサルジョイントを、上記流入管が挿通される貫通孔を有した球形の回転部材と、該回転部材を回転自在に保持するリング状の保持リングとを備えて構成し、上記流入管の外周に雄ネジを形成し、上記アームの上面側及び下面側において夫々上記流入管の雄ネジに螺合し流入管をロックする一対のロックナット部を設け、該一対のロックナット部を、夫々、上記流入管の雄ネジが螺合する雌ネジを有したナット本体と、該ナット本体の外周に一体に形成され把持されて該ナット本体を手動の操作で回転させるための操作フランジとを備えて構成したことを特徴とする請求項1乃至9何れかに記載の壁の亀裂補修装置。
上記第2ユニバーサルジョイントを、上記流入管が挿通される貫通孔を有した球形の回転部材と、該回転部材を回転自在に保持するリング状の保持リングとを備えて構成し、上記流入管の外周に雄ネジを形成し、上記アームの上面側及び下面側において夫々上記流入管の雄ネジに螺合し流入管をロックする一対のロックナット部を設け、該一対のロックナット部の少なくとも下面側のロックナット部を、上記流入管の雄ネジが螺合する雌ネジを有し該雌ネジが形成された一端側の一部を外周が基端から先端に向けて細くなるテーパ状のテーパ管で構成した第1ナットと、該第1ナットの一端側に設けられるとともに上記流入管の雄ネジが螺合する雌ネジ部を有し該第1ナットのテーパ管の外周に接合するテーパ面を有し第1ナット側への締め付けによりテーパ管を縮径させて該テーパ管を雄ネジに押圧するテーパ凹部を有した第2ナットとの組で構成したことを特徴とする請求項1乃至10何れかに記載の壁の亀裂補修装置。
上記吸着盤を、上記支持軸に固定される吸着本体と、該吸着本体に突出して設けられ内側に上記支持軸の吸引通路に連通し壁面側に対峙する凹所を形成するとともに壁面に弾接する樹脂製のリング状パッキンとを備えて構成し、上記吸着本体を透明な樹脂で形成したことを特徴とする請求項1乃至11何れかに記載の壁の亀裂補修装置。
上記注入ノズルのノズル部を、上記流入管に連設され漸次拡開するテーパ状の吐出口を有したノズル本体と、該ノズル本体の開口縁部に設けられ壁面に弾接する樹脂製のクッション部材とを備えて構成したことを特徴とする請求項1乃至12何れかに記載の壁の亀裂補修装置。
上記注入ノズルの流入管に接続され、該流入管に充填剤を供給するための供給管を接続し、該供給管を、上記流入管に接続される接続口を備えるとともに、該接続口に連通し3方向に分岐した第1分岐管,第2分岐管及び第3分岐管を備えて構成し、各分岐管に該各分岐管を開閉する手動の開閉弁を設けたことを特徴とする請求項1乃至14何れかに記載の壁の亀裂補修装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の壁の亀裂補修装置Saにあっては、当接部材110を壁面Waに弾接させて壁面Waの凹凸に対して追従性を良くしてはいるものの、アーム108は中間部を中心として注入ノズル100と当接部材110とによる前後2点支持になっており、そのため、壁面Waの凹凸の具合や、吸着盤105の吸着の具合等により、注入ノズル100と当接部材110との壁面Waに対する当接バランスが悪くなって、アーム108がぐらついて横方向に傾き、注入ノズル100のノズル部101が亀裂Kから浮き上がってしまったり、亀裂Kから離脱してしまうことがあるという問題があった。この場合には、充填剤の漏れが生じて充填不良を引き起こしたり、実質的に充填ができなくなる等の事態を生じる。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、壁面の凹凸の具合や、吸着盤の吸着の具合等により、注入ノズルと当接部材との壁面に対する当接バランスが多少悪くなっても、アームを横方向に傾きにくくし、注入ノズルの亀裂からの浮き上がりや離脱を防止して、充填剤を確実に亀裂に充填できるようにした壁の亀裂補修装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の壁の亀裂補修装置は、壁の亀裂に先端が配置され該亀裂に充填剤を注入するノズル部及び該ノズル部に連設され該ノズル部に充填剤を流入させる流入管を有した注入ノズルと、空気を吸引する吸引通路が形成された支持軸に固定されるとともに該支持軸の吸引通路を通しての空気の吸引により壁面に吸着させられ吸引解除により壁面から離脱可能な吸着盤と、上記支持軸にその長手方向途中において第1ユニバーサルジョイントを介して支持されるとともに先端部に上記注入ノズルの流入管を第2ユニバーサルジョイントを介して支持するアームと、該アームの後端部に取付けられ上記壁面に先端が当接し上記注入ノズルによる充填剤の充填時に当該アームに生じるモーメント荷重を受ける当接部材とを備えた壁の亀裂補修装置において、上記当接部材を上記アームの軸線方向に直交する方向に複数設けた構成としている。当接部材は、壁面に弾接させるように構成してもよく、また、弾接することなく当接させるようにしても良い。
【0008】
これにより、壁の亀裂に充填剤を充填するときは、補修すべき壁面の亀裂の状態によって、最適な注入ノズルの位置を選択するとともに、この位置の近傍の亀裂の入っていない位置に、吸着盤を配置し壁面に吸着盤を吸着させて固定し、注入ノズルを選択した亀裂の位置に位置させる。この状態で、注入ノズルから充填剤を吐出すると、充填剤が亀裂内へ充填されていく。このとき、注入ノズルに充填剤の圧送により高圧が作用して反力が生じ、アームにその軸線方向に直交する水平軸回りのモーメントが生じ、アームはこの水平軸を中心に回動しようとするが、アームの後端部に取付けた当接部材が壁面に当接しているので、この当接部材によってアームに生じるモーメント荷重を受け止めることができ、そのため、吸着盤が壁面から剥がされにくくなる。このため、注入ノズルから高圧で充填剤を圧送して、充填剤を補修すべき亀裂に確実に充填することができるようになる。
【0009】
この場合、壁面の凹凸の具合や、吸着盤の吸着の具合等により、アームが横方向に傾こうとしても、アームはその長手方向途中を中心として前側が注入ノズルで支持され、後側が複数の当接部材に支持されるので、謂わば、前後3点支持以上の支持になることから、アームが横方向に傾く事態を防止することができる。そのため、注入ノズルの亀裂からの浮き上がりや離脱を防止して、充填剤を確実に亀裂に充填できるようにすることができる。また、充填剤の注入の信頼性の向上を図ることができる。
【0010】
そして、必要に応じ、上記各当接部材を、上記アームの後端部に進退可能に設けられる軸体で構成し、該各当接部材を夫々所要の進退動位置でロックするロック機構を備えた構成としている。各当接部材を所要の進退動位置でロックすることができるので、複数の当接部材の互いのバランス調整を行うことができ、より一層、アームの支持を安定化することができる。
【0011】
この場合、上記軸体を、壁面に当接する当接頭及び該当接頭から延び該当接頭より小径の雄ネジ杆を有して構成し、上記アームの後端部に上記各当接部材の雄ネジ杆が挿通される複数の挿通孔を形成した後端部材を設け、上記ロック機構を、上記後端部材の下面及び上記雄ネジ杆の当接頭間に圧縮状態で該雄ネジ杆に遊嵌させて設けられる押圧コイルスプリングと、上記後端部材の上面側において上記雄ネジ杆に螺合するロックナットとを備えて構成したことが有効である。軸体を挿通孔に対して進退動させロックナットでロックするだけで位置決めでき、調整を容易に行うことができる。また、使用時には、押圧コイルスプリングにより雄ネジ杆の当接頭が壁面に弾接することから、壁面が平坦ではなく凸凹していてもこれに追従することができ、支持を安定化させることができる。
【0012】
また、上記軸体を、壁面に当接する当接頭及び該当接頭から延び該当接頭より小径の雄ネジ杆を有して構成し、上記アームの後端部に上記各当接部材の雄ネジ杆が挿通される複数の挿通孔を形成した後端部材を設け、上記ロック機構を、上記後端部材の下面側及び上面側において夫々雄ネジ杆に螺合するロックナットで構成することができる。軸体を挿通孔に対して進退動させロックナットでロックするだけの簡易な機構なので、調整を容易に行うことができる。
【0013】
更に、必要に応じ、上記アームを側面から見て、上記支持軸の中心軸と上記注入ノズルの中心軸との間隔をL1とし、上記支持軸の中心軸と上記当接部材の中心軸との距離をL2としたとき、L1<L2になる長さにした構成としている。望ましくは、2L1≦L2である。これにより、注入ノズルから充填剤を吐出させた際、注入ノズルに充填剤の圧送により高圧が作用して反力が生じ、アームは当接部材側に回動しようとするが、当接部材によってアームに生じるモーメント荷重を受け止めることができるとともに、L1<L2として、注入ノズル側よりも当接部材側のアームの長さを長くしたので、アームに生じるモーメント荷重を確実に受け止めることができるようになる。
【0014】
更に、必要に応じ、上記第1ユニバーサルジョイントを、上記支持軸が挿通される貫通孔を有した球形の回転部材と、該回転部材を回転自在に保持するリング状の保持リングとを備えて構成し、上記支持軸の外周に雄ネジを形成し、上記吸着盤の上面と上記アームの下面間に押さえコイルスプリングを圧縮状態で上記支持軸に遊嵌させて設け、上記アームの上面側において上記支持軸の雄ネジに螺合しアームの上側への移動を規制する規制ナット部を設けた構成としている。
【0015】
これにより、規制ナット部を締め付けると、アームの上側への移動が規制され、吸着盤は、押さえコイルスプリングにより常時壁面側に付勢されることになる。そのため、吸着盤のガタツキがなく、吸着盤の壁面への装着を確実に行うことができるようになる。特に、天井への吸着においては有効になる。また、吸着盤の吸着力により、押さえコイルスプリングの付勢力に抗して、アーム自体が吸着盤側に引っ張られることから、注入ノズルと当接部材を壁面に良く押し付けることができ、この点でも、注入ノズルの亀裂からの浮き上がりや離脱を防止して、充填剤を確実に亀裂に充填できるようにすることができる。
【0016】
この場合、上記規制ナット部を、上記支持軸の雄ネジが螺合する雌ネジを有したナット本体と、該ナット本体の外周に一体に形成され把持されて該ナット本体を手動の操作で回転させるための操作フランジとを備えて構成したことが有効である。これにより、ナット本体を操作フランジの手動操作で回転させることができるので、押さえコイルスプリングの付勢力を容易に調整して、吸着盤の壁面への装着具合や、注入ノズルと当接部材の壁面に対する押し付け具合を適正なものに調整しやすくなり、操作性を向上させることができる。
【0017】
更にまた、上記規制ナット部を、上記支持軸の雄ネジが螺合する雌ネジを有し該雌ネジが形成された一端側の一部を外周が基端から先端に向けて細くなるテーパ状のテーパ管で構成した第1ナットと、該第1ナットの一端側に設けられるとともに上記支持軸の雄ネジが螺合する雌ネジ部を有し該第1ナットのテーパ管の外周に接合するテーパ面を有したテーパ凹部を有した第2ナットとの組で構成することができる。
これにより、第1ナットに対して第2ナットを締め付けると、テーパ凹部によりテーパ管が押圧されて縮径するので、支持軸の雄ネジに雌ネジが圧接し、規制ナット部が支持軸に対して容易に動きにくくなることから、アームの規制を確実に行うことができる。そのため、繰り返しの使用によって、規制ナット部が緩んで、アームが移動してしまう事態を防止することができ、注入ノズルの壁面への押し付け力の変動を抑止し、より一層充填剤を確実に亀裂に充填できるようにすることができる。
【0018】
また、必要に応じ、上記第2ユニバーサルジョイントを、上記流入管が挿通される貫通孔を有した球形の回転部材と、該回転部材を回転自在に保持するリング状の保持リングとを備えて構成し、上記流入管の外周に雄ネジを形成し、上記アームの上面側及び下面側において夫々上記流入管の雄ネジに螺合し流入管をロックする一対のロックナット部を設け、該一対のロックナット部を、夫々、上記流入管の雄ネジが螺合する雌ネジを有したナット本体と、該ナット本体の外周に一体に形成され把持されて該ナット本体を手動の操作で回転させるための操作フランジとを備えて構成している。これにより、一対のロックナット部を互いに締め付けると、流入管が固定されて容易に動きにくくなることから、注入ノズルの位置決めを確実に行うことができる。この場合、ナット本体を操作フランジの手動操作で回転させることができるので、操作性を向上させることができる。
【0019】
更に、必要に応じ、上記第2ユニバーサルジョイントを、上記流入管が挿通される貫通孔を有した球形の回転部材と、該回転部材を回転自在に保持するリング状の保持リングとを備えて構成し、上記流入管の外周に雄ネジを形成し、上記アームの上面側及び下面側において夫々上記流入管の雄ネジに螺合し流入管をロックする一対のロックナット部を設け、該一対のロックナット部の少なくとも下面側のロックナット部を、上記流入管の雄ネジが螺合する雌ネジを有し該雌ネジが形成された一端側の一部を外周が基端から先端に向けて細くなるテーパ状のテーパ管で構成した第1ナットと、該第1ナットの一端側に設けられるとともに上記流入管の雄ネジが螺合する雌ネジ部を有し該第1ナットのテーパ管の外周に接合するテーパ面を有し第1ナット側への締め付けによりテーパ管を縮径させて該テーパ管を雄ネジに押圧するテーパ凹部を有した第2ナットとの組で構成することができる。
【0020】
これにより、第1ナットに対して第2ナットを締め付けると、テーパ凹部によりテーパ管が押圧されて縮径するので、流入管の雄ネジに雌ネジが圧接し、ロックナット部が支持軸に対して容易に動きにくくなることから、壁面への装着時の注入ノズルの位置決めを確実に行うことができる。そのため、繰り返しの使用によって、ロックナット部が緩んで、注入ノズルが上側に移動してしまう事態を防止することができ、注入ノズルの壁面への押し付け力の変動を抑止し、より一層充填剤を確実に亀裂に充填できるようにすることができる。一対のロックナット部の両方を、第1ナット及び第2ナットとの組で構成した場合には、注入ノズルをより一層確実に位置決めすることができるとともに、ガタツキを防止することができる。
【0021】
そしてまた、必要に応じ、上記吸着盤を、上記支持軸に固定される吸着本体と、該吸着本体に突出して設けられ内側に上記支持軸の吸引通路に連通し壁面側に対峙する凹所を形成するとともに壁面に弾接する樹脂製のリング状パッキンとを備えて構成し、上記吸着本体を透明な樹脂で形成した構成としている。吸着盤を装着するためにバキュームポンプで空気を吸引する際、吸着盤のある部位に亀裂があって、この亀裂から充填剤を吸引し、バキュームポンプに至ってバキュームポンプを損傷する虞があるが、吸着盤の本体を透明にしたので、亀裂からの充填剤の吸引を視認することができ、この場合には、吸引を停止して、別の場所に吸着盤を装着できるので、安全を図ることができる。
【0022】
また、必要に応じ、上記注入ノズルのノズル部を、上記流入管に連設され漸次拡開するテーパ状の吐出口を有したノズル本体と、該ノズル本体の開口縁部に設けられ壁面に弾接する樹脂製のクッション部材とを備えて構成している。ノズル本体の吐出口を漸次拡開するテーパ状に形成したので、吐出口の開口が広くなることから、亀裂の線上に合わせ易くなり、また、充填剤の吐出を確実に行うことができるようになる。
【0023】
この場合、上記ノズル本体の開口縁部外周に、上記クッション部材の外周に食い込んで係合する係合凸部を設けたことが有効である。繰り返しの使用によってもクッション部材を外れにくくすることができ、耐久性を向上させることができる。
【0024】
更に、必要に応じ、上記注入ノズルの流入管に接続され、該流入管に充填剤を供給するための供給管を接続し、該供給管を、流入管に接続される接続口をそなえるとともに、該接続口に連通し3方向に分岐した第1分岐管,第2分岐管及び第3分岐管を備えて構成し、各分岐管に該各分岐管を開閉する手動の開閉弁を設けた構成としている。
これにより、第1分岐管にある一種の充填剤を供給する管路を接続し、第2分岐管に別の種類の充填剤を供給する管路を接続する。残った第3分岐管はエアによる洗浄用とする。先ず、ある一種の充填剤を注入するときは、第1分岐管の開閉弁を開にし、他を閉にする。また、別の種類の充填剤を注入するときは、第3分岐管の開閉弁を開にし、これにエアを送給して管路を洗浄する。次に、第1分岐管の開閉弁を閉にし、第3分岐管を閉にし、第2分岐管を開にして、別の充填剤を注入する。再度、ある一種の充填剤を充填するときは、同様に洗浄を行って、上記と同様にする。このように、1つの装置で、2種類の充填剤を適宜切換えて注入することができ、2種類の充填剤を注入する必要がある場合には、極めて作業効率が良くなる。例えば、亀裂のコンクリートに充填剤を良くなじませるためのコンクリートに含浸する充填剤を注入する場合等には、極めて有用になる。
【0025】
更にまた、必要に応じ、上記支持軸の吸引通路にバキュームポンプからの吸引配管を接続し、上記支持軸に上記吸引配管に介装される切換バルブを取付け、該切換バルブを、スプリングの付勢力で上記バキュームポンプの吸引を有効にする常態位置に位置する一方、該スプリングの付勢力に抗した押釦により上記吸引通路を大気開放して上記バキュームポンプの吸引を無効にする作動位置に位置する押しボタンを備えて構成している。
【0026】
これにより、亀裂補修装置を使用する際には、バキュームポンプを駆動させた状態で、切換バルブの押しボタンを押釦して吸引を無効にし、補修すべき壁面の亀裂に注入ノズルを位置させ、亀裂の入っていない適宜の位置に吸着盤を位置させる。そして、押しボタンの押釦を解除すると、切換ポンプの押しボタンは常態位置に位置するので、バキュームポンプの吸引が有効になり、吸着盤は壁面に吸着されて固定される。この状態で、注入ノズルから充填剤を吐出すると、充填剤が亀裂内へ充填されていく。充填が終わったならば、切換バルブの押しボタンを押釦する。これにより、バキュームポンプの吸引が無効になるので、吸着盤の吸着が解除される。そして、亀裂補修装置を別の位置に移動し、上記と同様に、吸着盤を壁面に吸着させて、注入ノズルから充填剤を充填する。この場合、切換バルブの押しボタンの押釦及び押釦解除をするだけで、吸着盤の吸着解除及び吸着を行うことができるので、操作が極めて簡単になり、亀裂補修装置の移動を円滑にすることができることから、作業性を大幅に向上させることができる。尚、吸着盤の壁面への吸着は、亀裂補修装置の移動中に押しボタンの押釦を解除して、吸引を有効にしながら行うようにしても良い。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、壁面に吸着盤を吸着させて固定し、注入ノズルを選択した亀裂の位置に位置させ、注入ノズルから充填剤を吐出する際、壁面の凹凸の具合や、吸着盤の吸着の具合等により、アームが横方向に傾こうとしても、アームはその長手方向途中を中心として前側が注入ノズルで支持され、後側が複数の当接部材に支持されるので、謂わば、前後3点支持以上の支持になることから、アームが横方向に傾く事態を防止することができる。そのため、注入ノズルの亀裂からの浮き上がりや離脱を防止して、充填剤を確実に亀裂に充填できるようにすることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る壁の亀裂補修装置について詳細に説明する。
図1乃至
図5には、本発明の実施の形態に係る壁の亀裂補修装置Sを示している。壁Wには亀裂Kが発生して壁面Waに表れており、この壁面Waの亀裂Kに本発明の実施の形態に係る壁の亀裂補修装置Sを用いて充填剤を充填する。充填剤としては、例えば、亀裂Kのコンクリートに含浸させてこれを緻密にする前処理充填剤と、亀裂Kを塞ぐ主充填剤との2種類の充填剤が用いられる。
【0030】
この壁の亀裂補修装置Sの基本的構成は、壁Wの亀裂Kに充填剤を注入する注入ノズル1と、空気の吸引により壁面Waに吸着させられ吸引解除により壁面Waから離脱可能な吸着盤20と、吸着盤20を支持する支持軸22にその長手方向途中において第1ユニバーサルジョイントJAを介して支持されるとともに先端部に注入ノズル1を第2ユニバーサルジョイントJBを介して支持するアーム30と、アーム30の後端部に取付けられ壁面Waに先端が当接し注入ノズル1による充填剤の充填時にアーム30に生じるモーメント荷重を受ける当接部材50とを備えてなる。
【0031】
注入ノズル1は、
図1,
図2及び
図5に示すように、亀裂Kに先端が配置され亀裂Kに充填剤を注入するノズル部2及びノズル部2に連設されノズル部2に充填剤を流入させる流入管3を有している。ノズル部2は、
図5に示すように、流入管3に連設され漸次拡開するテーパ状の吐出口4を有したノズル本体5と、ノズル本体5の開口縁部に設けられ壁面Waに弾接する樹脂製のクッション部材6とを備えて構成されている。
図5に示すように、クッション部材6はシリコーン樹脂等の密着性の高い弾性樹脂からなり、中央に吐出口4に連通する孔7を有した円盤状に形成されている。ノズル本体5の開口縁部外周には、クッション部材6の外周に食い込んで係合するリング状の係合凸部8が形成されている。
【0032】
また、
図1及び
図2に示すように、注入ノズル1の流入管3には、流入管3に充填剤を供給するための供給管10が接続されている。この供給管10は、流入管3に接続される接続口11を備えるとともに、接続口11に連通し3方向に分岐した第1分岐管12,第2分岐管13及び第3分岐管14を備えて構成されており、各分岐管12,13,14には、各分岐管12,13,14を開閉する手動の開閉弁15が設けられている。第1分岐管12には、例えば、ある一種の充填剤として、亀裂Kのコンクリートに含浸させてこれを緻密にする前処理充填剤が供給される供給管路(図示せず)が接続され、第2分岐管13には、別の充填剤として、亀裂Kを塞ぐ主充填剤が供給される供給管路(図示せず)が接続される。残った第3分岐管14はエアによる洗浄用とする。第1分岐管12及び第2分岐管13の供給管路には、夫々、個別に充填剤を供給する注入ポンプが介装されている。
図2には第2分岐管12用の注入ポンプ16を示す。
【0033】
吸着盤20は、空気を吸引する吸引通路21が形成された支持軸22に固定されるとともに支持軸22の吸引通路21を通しての空気の吸引により壁面Waに吸着させられる。吸着盤20は、
図2に示すように、中心部が支持軸22に固定される円盤状の吸着本体23を備えている。この吸着本体23は、例えばアクリル樹脂等の硬質の透明な樹脂で形成されている。この吸着本体23の下面には、壁面Waに弾接する樹脂製のリング状パッキン24が突設されている。吸着本体23の下面には中心部を中心としたリング状の溝25が形成されており、パッキン24の基端部はこの溝25に嵌合させられて接着剤で接着されている。このリング状のパッキン24内側に支持軸22の吸引通路21に連通し壁面Wa側に対峙する凹所26が形成される。また、パッキン24は、基端部側の弾性樹脂からなる第1部材24aと、第1部材24aに積層され壁面Waに当接するシリコーン樹脂等の密着性の高い弾性樹脂からなる第二部材24bとからなる。吸引通路21にはバキュームポンプ27(
図2)が接続される。
【0034】
アーム30は、断面矩形状の例えばステンレス等の金属製の棒状に形成されており、前後に軽量化するための楕円状の貫通孔31が形成されている。また、
図2に示すように、アーム30を側面から見て、支持軸22の中心軸と注入ノズル1の中心軸との間隔をL1とし、支持軸22の中心軸と当接部材50の中心軸との距離をL2としたとき、L1<L2になる長さに形成されている。望ましくは、2L1≦L2である。実施の形態では、2L1=L2にしている。
【0035】
第1ユニバーサルジョイントJAは、支持軸22が挿通される貫通孔を有した球形の回転部材aと、回転部材aを回転自在に保持するリング状の保持リングbとを備えて構成されている。保持リングbはアーム30の途中に形成した貫通凹部32に嵌合させられており、上面の一対の皿ボルト33で止められた押さえ板33aにより、抜け止め固定させられている。また、吸着盤20の上面とアーム30の下面側の第1ユニバーサルジョイントJAの保持リングbとの間には、押さえコイルスプリング34が圧縮状態で支持軸22に遊嵌させて設けられている。
【0036】
支持軸22の外周には雄ネジ35が形成されおり、アーム30の上面側には、支持軸22の雄ネジに螺合しアーム30の上側への移動を規制する規制ナット部36が設けられている。この規制ナット部36は、
図4に示すように、支持軸22の雄ネジ35が螺合する雌ネジを有したナット本体37と、ナット本体37の外周に一体に形成され把持されてナット本体37を手動の操作で回転させるための操作フランジ38とを備えて構成されている。操作フランジ38の外周は、円形に形成され、外周面には滑り止めのローレットが形成されている。
【0037】
また、アーム30の先端部に、注入ノズル1の流入管3が第2ユニバーサルジョイントJBを介して支持されている。第2ユニバーサルジョイントJBは、流入管3が挿通される貫通孔を有した球形の回転部材aと、該回転部材aを回転自在に保持するリング状の保持リングbとを備えている。この保持リングbはアーム30の先端部を構成するホルダ40に保持されている。ホルダ40には突出した雄ネジ部41が設けられており、アーム30の先端部に形成した軸方向に軸線を有する雌ネジ部42に螺合し、ネジ込み程度によりその突出寸法が調整可能になっている。また、ホルダ40には、回転部材aの回転をロックするロックボルト44が設けられている。このロックボルト44のボルト頭44aは、手動の操作で回転させることのできる円盤状に形成されており、外周面には滑り止めのローレットが形成されている。
【0038】
更に、流入管3の外周には雄ネジ45が形成されており、アーム30の上面側及び下面側において、夫々、流入管3の雄ネジ45に螺合し流入管3をロックする一対のロックナット部46,47が設けられている。
図5に示すように、ロックナット部46,47は、夫々、流入管3の雄ネジ45が螺合する雌ネジを有したナット本体48と、ナット本体48の外周に一体に形成され把持されてナット本体48を手動の操作で回転させるための操作フランジ49とを備えて構成されている。操作フランジ49の外周は、円形に形成され、外周面には滑り止めのローレットが形成されている。
【0039】
当接部材50は、アーム30の軸線P方向に直交する方向に軸線Pを跨いで複数(実施の形態では一対)並設されている。詳しくは、各当接部材50は、
図2及び
図3に示すように、アーム30の後端部に進退可能に設けられる軸体で構成されている。当接部材50は、壁面Waに当接する当接頭51及び当接頭51から延び該当接頭51より小径の雄ネジ杆52を有して構成されている。アーム30の後端部には、各当接部材50の雄ネジ杆52が挿通される複数(実施の形態では1対)の挿通孔53を形成した後端部材54がボルト55で止着されている。56は雄ネジ杆52の先端に螺合したキャップナットである。
【0040】
また、各当接部材50を夫々所要の進退動位置でロックするロック機構57が備えられている。このロック機構57は、後端部材54の下面及び雄ネジ杆52の当接頭51間に圧縮状態で雄ネジ杆52に遊嵌させて設けられる押圧コイルスプリング59と、後端部材54の上面側において雄ネジ杆52に螺合するロックナット58とを備えて構成されている。当接部材50としての軸体を挿通孔53に対して進退動させロックナット58でロックするだけの簡易な機構なので、調整を容易に行うことができる。
【0041】
更にまた、
図1,
図2及び
図4に示すように、支持軸22の吸引通路21には、バキュームポンプ27からの吸引配管27aが接続され、支持軸22の上端には、吸引配管27aに介装される切換バルブ60が取付けられている。この切換バルブ60は、3ポート2位置方向切換弁(ノーマルオープン,押しボタンスプリングリターン)であり、スプリング61の付勢力でバキュームポンプ27の吸引を有効にする常態位置E1に位置する一方、スプリング61の付勢力に抗した押釦により吸引通路21を大気開放してバキュームポンプ27の吸引を無効にする作動位置E2に位置する押しボタン62を備えて構成されている。
【0042】
従って、このように構成される本実施の形態に係る壁Wの亀裂補修装置Sを用いて、壁面Waの亀裂Kに充填剤を充填するときには、以下のようにして行なう。先ず、予め、支持軸22に対するアーム30の上側への移動の規制位置、注入ノズル1のノズル部2の第2ユニバーサルジョイントJBに対する突出位置、当接部材50の後端部材54に対する進退動位置を調整する。
【0043】
この際、支持軸22においては、規制ナット部36を所要の位置に移動させて固定する。この固定は、規制ナット部36を締め付ける。これにより、アーム30の上側への移動が規制され、吸着盤20は、押さえコイルスプリング34により常時壁面Wa側に付勢されることになる。そのため、吸着盤20のガタツキがなく、吸着盤20の壁面Waへの装着を確実に行うことができるようになる。特に、天井への吸着においては有効になる。この場合、ナット本体37を操作フランジ8の手動操作で回転させることができるので、押さえコイルスプリング34の付勢力を容易に調整して、吸着盤20の壁面Waへの装着具合や、注入ノズル1と当接部材50の壁面Waに対する押し付け具合を適正なものに調整しやすくなり、操作性を向上させることができる。
【0044】
また、注入ノズル1においては、注入ノズル1を所要の位置に進退動させ、一対のロックナット部46,47を第2ユニバーサルジョイントJBに対して締め付けて固定する。この場合、一対のロックナット部46,47を互いに締め付けると、流入管3が固定されて容易に動きにくくなることから、注入ノズル1の位置決めを確実に行うことができる。この場合、ナット本体48を操作フランジ49の手動操作で回転させることができるので、操作性を向上させることができる。
【0045】
更に、当接部材50においては、一対の各当接部材50を、後端部材54に対して進退動させ所要の位置でロック機構57のロックナット58でロックする。この場合、ロックナット58を、後端部材54の上面側において後端部材54に対して締め付ける。この場合、各当接部材50を所要の進退動位置でロックすることができるので、一対の当接部材50の互いのバランス調整を行うことができ、そのため、アーム30の支持を安定化することができる。
【0046】
そして、このような調整が行われた亀裂補修装置Sを使用する際には、バキュームポンプ27を駆動させた状態で、切換バルブ60の押しボタン62を押釦して切換バルブ60を作動位置E2に位置させ、バキュームポンプ27の吸引を無効にした状態で、補修すべき壁面Waの亀裂Kの状態によって最適な注入ノズル1の位置を選択し、この位置の近傍の亀裂Kの入っていない適宜の位置に吸着盤20を位置させ、アーム30をその長手方向途中の垂直軸回りに回転させて、壁面Waの亀裂Kの位置に注入ノズル1のノズル部2の先端を位置させる。そして、切換バルブ60の押しボタン62の押釦を解除すると、切換バルブ60は常態位置E1に位置するので、バキュームポンプ27の吸引が有効になり、吸着盤20は壁面Waに吸着されて固定される。第2ユニバーサルジョイントJBにおいては、適時にロックボルト44を締め付けて回転部材aをロックする。この場合、吸着盤20は、押さえコイルスプリング34により常時壁面Wa側に付勢されているので、ガタツキがなく、吸着盤20の壁面Waへの装着を容易に行うことができるようになる。特に、天井への吸着においては有効になる。尚、吸着盤20の壁面Waへの吸着は、亀裂補修装置Sの移動中に押しボタン62の押釦を解除して、吸引を有効にしながら行うようにしても良い。
【0047】
また、亀裂補修装置Sの壁面Waへの装着前あるいは装着後に、注入ノズル1に接続された供給管10において、各分岐管12,13,14に設けた開閉弁15を開閉して、必要な充填剤が供給されるようにしておく。この状態で、注入ポンプ(例えば
図2の注入ポンプ16)を駆動する。これにより、注入ノズル1のノズル部2から充填剤が吐出され、壁面Waの亀裂K内へ充填剤が充填されていく。この場合、注入ノズル1のノズル部2の吐出口4を漸次拡開するテーパ状に形成したので、吐出口4の開口が広くなることから、亀裂Kの線上に合わせ易くなり、また、充填剤の吐出を確実に行うことができるようになる。
【0048】
この充填剤の充填時には、注入ノズル1に充填剤の圧送により高圧が作用して反力が生じ、アーム30にその軸線P方向に直交する水平軸Q回りのモーメントMが生じるが、アーム30の後端部に取付けた当接部材50が壁面Waに当接し、アーム30に生じるモーメント荷重を受け止めるので、吸着盤20が壁面Waから剥がされにくくなる。このため、注入ノズル1から高圧で充填剤を圧送して、充填剤を補修すべき亀裂Kに確実に充填することができるようになる。
【0049】
そしてまた、この場合、壁面Waの凹凸の具合や、吸着盤20の吸着の具合等により、アーム30が第1ユニバーサルジョイントJAを介してアーム30の軸線P回りに回動しようとしても、アーム30は支持軸22を中心として前側が注入ノズル1で支持され、後側が一対の当接部材50に支持されるので、謂わば、前後3点支持の支持になることから、アーム30がアーム30の軸線P回りに回動して横方向に傾く事態を防止することができる。そのため、注入ノズル1の亀裂Kからの浮き上がりや離脱を防止して、充填剤を確実に亀裂Kに充填できるようにすることができるようになる。更に、アーム30を、2L1≦L2にしているので、注入ノズル1側よりも当接部材50側のアーム30の長さが長くなることから、アーム30に生じるモーメント荷重を確実に受け止めることができるようになる。
【0050】
また、当接部材50においては、押圧コイルスプリング59により雄ネジ杆52の当接頭51が壁面に弾接することから、壁面Waが平坦でなく凸凹していてもこれに追従することができ、支持を安定化させることができる。また、吸着盤20の吸着力により、押さえコイルスプリング34の付勢力に抗して、アーム30自体が吸着盤20側に引っ張られることから、注入ノズル1と当接部材50を壁面Waに良く押し付けることができ、この点でも、注入ノズル1の亀裂Kからの浮き上がりや離脱を防止して、充填剤を確実に亀裂Kに充填できるようにすることができる。
【0051】
充填が終わったならば、切換バルブ60の押しボタン62を押釦する。これにより、切換バルブ60は作動位置E2に位置し、バキュームポンプ27の吸引が無効になるので、吸着盤20の吸着が解除される。そして、亀裂補修装置Sを別の位置に移動し、上記と同様に、吸着盤20を壁面Waに吸着させて、注入ノズル1から充填剤を充填する。この場合、切換バルブ60の押しボタン62の押釦及び押釦解除をするだけで、吸着盤20の吸着解除及び吸着を行うことができるので、操作が極めて簡単になり、亀裂補修装置Sの移動を円滑にすることができることから、作業性を大幅に向上させることができる。尚、吸着盤20の壁面Waへの吸着は、亀裂補修装置Sの移動中に押しボタン62の押釦を解除して、吸引を有効にしながら行うようにしても良い。
【0052】
このようにして、順次、亀裂Kに充填剤を注入していく。この場合、亀裂補修装置Sは繰り返し使用されることになるが、壁面Waの状態によっては、亀裂補修装置Sが不安定になることがあるが、その場合には、規制ナット部36の締め付けを調整し、あるいは、一対のロックナット部46,47の締め付けを調整する。この場合、規制ナット部36においては、ナット本体37を操作フランジ8の手動操作で回転させることができるので、操作性を向上させることができる。また、一対のロックナット部46,47においても、ナット本体48を操作フランジ49の手動操作で回転させることができるので、操作性を向上させることができる。そのため、吸着盤20の壁面Waへの装着具合や、注入ノズル1と当接部材50の壁面Waに対する押し付け具合を適正なものに調整しやすくなり、亀裂補修装置Sを安定化させることができる。
【0053】
更にまた、吸着盤20をバキュームポンプ27で空気を吸引して壁面Waに吸着した際、吸着盤20のある部位に亀裂があって、この亀裂から充填剤を吸引し、バキュームポンプ27に至ってバキュームポンプ27を損傷する虞があるが、吸着盤20の吸着本体23を透明にしたので、亀裂からの充填剤の吸引を視認することができ、この場合には、吸引を停止して、別の場所に吸着盤20を装着できるので、安全を図ることができる。また、ノズル本体5の開口縁部外周に設けたクッション部材6は、その外周に食い込んで係合する係合凸部8により押さえられているので、繰り返しの使用によってもノズル本体5から外れにくくなり、それだけ、耐久性を向上させることができる。
【0054】
また、実施の形態に係る亀裂補修装置Sにおいては、注入ノズル1の流入管3に第1分岐管12,第2分岐管13及び第3分岐管14を備えた供給管10を接続したので、充填剤の種類を切換えて充填することができる。例えば、先ず、ある一種の充填剤を注入するときは、第1分岐管12の開閉弁15を開にし、他を閉にする。また、別の種類の充填剤を注入するときは、第3分岐管14の開閉弁を開にし、これにエアを送給して管路を洗浄する。次に、第1分岐管12の開閉弁を閉にし、第3分岐管14を閉にし、第2分岐管13を開にして、別の充填剤を注入する。再度、ある一種の充填剤を充填するときは、同様に洗浄を行って、上記と同様にする。このように、1つの装置で、2種類の充填剤を適宜切換えて注入することができ、2種類の充填剤を注入する必要がある場合には、極めて作業効率が良くなる。
【0055】
図6乃至
図10には、本発明の別の実施の形態に係る壁の亀裂補修装置Sを示している。この壁の亀裂補修装置Sの基本的構成は、上記と同様に、壁Wの亀裂Kに充填剤を注入3から離脱可能な吸着盤20と、吸着盤20を支持する支持軸22にその中間部において第1ユニバーサルジョイントJAを介して支持されるとともに先端部に注入ノズル1を第2ユニバーサルジョイントJBを介して支持するアーム30と、アーム30の後端部に取付けられ壁面Waに先端が当接し注入ノズル1による充填剤の充填時にアーム30に生じるモーメント荷重を受ける当接部材50とを備えてなる。
【0056】
注入ノズル1は、
図6,
図7及び
図10に示すように、亀裂Kに先端が配置され亀裂Kに充填剤を注入するノズル部2及びノズル部2に連設されノズル部2に充填剤を流入させる流入管3を有している。ノズル部2は、
図10に示すように、流入管3に連設され漸次拡開するテーパ状の吐出口4を有したノズル本体5と、ノズル本体5の開口縁部に設けられ壁面Waに弾接する樹脂製のクッション部材6とを備えて構成されている。クッション部材6はシリコーン樹脂等の密着性の高い弾性樹脂からなる。
【0057】
また、
図6及び
図7に示すように、注入ノズル1の流入管3には、流入管3に充填剤を供給するための供給管10が接続されている。この供給管10は、流入管3に接続される接続口11を備えるとともに、接続口11に連通し3方向に分岐した第1分岐管12,第2分岐管13及び第3分岐管14を備えて構成されており、各分岐管12,13,14には、各分岐管12,13,14を開閉する手動の開閉弁15が設けられている。第1分岐管12には、例えば、ある一種の充填剤として、亀裂Kのコンクリートに含浸させてこれを緻密にする前処理充填剤が供給される供給管路(図示せず)が接続され、第2分岐管13には、別の充填剤として、亀裂Kを塞ぐ主充填剤が供給される供給管路(図示せず)が接続される。残った第3分岐管14はエアによる洗浄用とする。第1分岐管12及び第2分岐管13の供給管路には、夫々、個別に充填剤を供給する注入ポンプが介装されている。
図7には第2分岐管12用の注入ポンプ16を示す。
【0058】
吸着盤20は、空気を吸引する吸引通路21が形成された支持軸22に固定されるとともに支持軸22の吸引通路21を通しての空気の吸引により壁面Waに吸着させられる。吸着盤20は、
図7に示すように、中心部が支持軸22に固定される円盤状の吸着本体23を備えている。この吸着本体23は、例えばアクリル樹脂等の硬質の透明な樹脂で形成されている。この吸着本体23の下面には、壁面Waに弾接する樹脂製のリング状パッキン24が突設されている。吸着本体23の下面には中心部を中心としたリング状の溝25が形成されており、パッキン24の基端部はこの溝25に嵌合させられて接着剤で接着されている。このリング状のパッキン24内側に支持軸22の吸引通路21に連通し壁面Wa側に対峙する凹所26が形成される。また、パッキン24は、基端部側の弾性樹脂からなる第1部材24aと、第1部材24aに積層され壁面Waに当接するシリコーン樹脂等の密着性の高い弾性樹脂からなる第二部材24bとからなる。吸引通路21にはバキュームポンプ27(
図7)が接続される。
【0059】
アーム30は、断面矩形状の例えばステンレス等の金属製の棒状に形成されており、前後に軽量化するための楕円状の貫通孔31が形成されている。第1ユニバーサルジョイントJAは、支持軸22が挿通される貫通孔を有した球形の回転部材aと、回転部材aを回転自在に保持するリング状の保持リングbとを備えて構成されている。保持リングbはアーム30の中間部に形成した貫通凹部5に嵌合させられており、上面の一対のボルト33により、抜け止め固定させられている。また、吸着盤20の上面とアーム30の下面側の第1ユニバーサルジョイントJAの保持リングbとの間には、押さえコイルスプリング34が圧縮状態で支持軸22に遊嵌させて設けられている。
【0060】
支持軸22の外周には雄ネジ35が形成されおり、アーム30の上面側には、支持軸22の雄ネジに螺合しアーム30の上側への移動を規制する規制ナット部36が設けられている。この規制ナット部36は、
図9に示すように、支持軸22の雄ネジ35が螺合する雌ネジを有しこの雌ネジが形成された一端側の一部を外周が基端から先端に向けて細くなるテーパ状のテーパ管naで構成した第1ナットN1と、第1ナットN1の一端側に設けられるとともに支持軸22の雄ネジ35が螺合する雌ネジ部を有しこの第1ナットN1のテーパ管naの外周に接合するテーパ面を有したテーパ凹部nbを有した第2ナットN2との組で構成されている。
【0061】
また、アーム30の先端部に、注入ノズル1の流入管3が第2ユニバーサルジョイントJBを介して支持されている。第2ユニバーサルジョイントJBは、流入管3が挿通される貫通孔を有した球形の回転部材aと、該回転部材aを回転自在に保持するリング状の保持リングbとを備えている。この保持リングbはアーム30の先端部を構成するホルダ40に保持されている。ホルダ40には突出した雄ネジ部41が設けられており、アーム30の先端部に形成した軸方向に軸線を有する雌ネジ部42に螺合し、ネジ込み程度によりその突出寸法が調整可能になっている。43は雌ネジ部42に螺合しホルダ40の所要の突出位置でロックするロックナットである。また、ホルダ40には、回転部材aの回転をロックするロックボルト44が設けられている。
【0062】
更に、流入管3の外周には雄ネジ45が形成されており、アーム30の上面側及び下面側において、夫々、流入管3の雄ネジ45に螺合し流入管3をロックする一対のロックナット部46,47が設けられている。
図10に示すように、上側のロックナット部46は、1つのナットで構成されている。一方、下面側のロックナット部47は、流入管3の雄ネジ45が螺合する雌ネジを有し雌ネジが形成された一端側の一部を外周が基端から先端に向けて細くなるテーパ状のテーパ管naで構成した第1ナットN1と、第1ナットN1の一端側に設けられるとともに流入管3の雄ネジ45が螺合する雌ネジ部を有しこの第1ナットN1のテーパ管naの外周に接合するテーパ面を有し第1ナットN1側への締め付けによりテーパ管naを縮径させてテーパ管naを雄ネジ45に押圧するテーパ凹部nbを有した第2ナットN2との組で構成されている。
【0063】
当接部材50は、アーム30の軸線P方向に直交する方向に軸線Pを跨いで複数(実施の形態では一対)並設されている。詳しくは、各当接部材50は、
図7及び
図8に示すように、アーム30の後端部に進退可能に設けられる軸体で構成されている。当接部材50は、壁面Waに当接する当接頭51及び当接頭51から延び該当接頭51より小径の雄ネジ杆52を有して構成されている。アーム30の後端部には、各当接部材50の雄ネジ杆52が挿通される複数(実施の形態では1対)の挿通孔53を形成した後端部材54がボルト55で止着されている。56は雄ネジ杆52の先端に螺合したキャップナットである。
【0064】
また、各当接部材50を夫々所要の進退動位置でロックするロック機構57が備えられている。このロック機構57は、後端部材54の下面側及び上面側において夫々雄ネジ杆52に螺合するロックナット58で構成されている。当接部材50としての軸体を挿通孔53に対して進退動させロックナット58でロックするだけの簡易な機構なので、調整を容易に行うことができる。
【0065】
従って、このように構成される本実施の形態に係る壁Wの亀裂補修装置Sを用いて、壁面Waの亀裂Kに充填剤を充填するときには、以下のようにして行なう。先ず、予め、支持軸22に対するアーム30の上側への移動の規制位置、注入ノズル1のノズル部2の第2ユニバーサルジョイントJBに対する突出位置、当接部材50の後端部材54に対する進退動位置を調整する。
【0066】
この際、支持軸22においては、規制ナット部36を所要の位置に移動させて固定する。この固定は、第1ナットN1に対して第2ナットN2を締め付ける。これにより、第2ナットN2のテーパ凹部nbにより第1ナットN1のテーパ管naが押圧されて縮径するので、第1ナットN1の雌ネジが支持軸22の雄ネジ35に圧接し、固定される。そのため、規制ナット部36が支持軸22に対して容易に動きにくくなることから、アーム30の規制を確実に行うことができる。
【0067】
また、注入ノズル1においては、注入ノズル1を所要の位置に進退動させ、一対のロックナット部46,47を第2ユニバーサルジョイントJBに対して締め付けて固定する。この場合、下側のロックナット部47においては、第1ナットN1に対して第2ナットN2を締め付ける。これにより、第2ナットN2のテーパ凹部nbにより第1ナットN1のテーパ管naが押圧されて縮径するので、第1ナットN1の雌ネジが流入管3の雄ネジ45に圧接し、固定される。そのため、ロックナット部46,47が支持軸22に対して容易に動きにくくなることから、壁面Waへの装着時の注入ノズル1の位置決めを確実に行うことができる。
【0068】
更に、当接部材50においては、一対の各当接部材50を、後端部材54に対して進退動させ所要の位置でロック機構57のロックナット58でロックする。この場合、ロックナット58を、後端部材54の下面側及び上面側において夫々後端部材54に対して締め付ける。この場合、各当接部材50を所要の進退動位置でロックすることができるので、一対の当接部材50の互いのバランス調整を行うことができ、そのため、アーム30の支持を安定化することができる。
【0069】
そして、このような調整が行われた亀裂補修装置Sを用い、補修すべき壁面Waの亀裂Kの状態によって最適な注入ノズル1の位置を選択し、この位置の近傍の亀裂Kの入っていない適宜の位置に吸着盤20を位置させ、アーム30を中間部の垂直軸回りに回転させて、壁面Waの亀裂Kの位置に注入ノズル1のノズル部2の先端を位置させ、この状態で、バキュームポンプ27を駆動させて吸着盤20の凹所26の空気を抜き、壁面Waに吸着盤20を吸着させて固定する。第2ユニバーサルジョイントJBにおいては、適時にロックボルト44を締め付けて回転部材aをロックする。この場合、吸着盤20は、押さえコイルスプリング34により常時壁面Wa側に付勢されているので、ガタツキがなく、吸着盤20の壁面Waへの装着を容易に行うことができるようになる。特に、天井への吸着においては有効になる。
【0070】
また、亀裂補修装置Sの壁面Waへの装着前あるいは装着後に、注入ノズル1に接続された供給管10において、各分岐管12,13,14に設けた開閉弁15を開閉して、必要な充填剤が供給されるようにしておく。この状態で、注入ポンプ(例えば
図7の注入ポンプ16)を駆動する。これにより、注入ノズル1のノズル部2から充填剤が吐出され、壁面Waの亀裂K内へ充填剤が充填されていく。この場合、注入ノズル1のノズル部2の吐出口4を漸次拡開するテーパ状に形成したので、吐出口4の開口が広くなることから、亀裂Kの線上に合わせ易くなり、また、充填剤の吐出を確実に行うことができるようになる。
【0071】
この充填剤の充填時には、注入ノズル1に充填剤の圧送により高圧が作用して反力が生じ、アーム30にその軸線P方向に直交する水平軸Q回りのモーメントMが生じるが、アーム30の後端部に取付けた当接部材50が壁面Waに当接し、アーム30に生じるモーメント荷重を受け止めるので、吸着盤20が壁面Waから剥がされにくくなる。このため、注入ノズル1から高圧で充填剤を圧送して、充填剤を補修すべき亀裂Kに確実に充填することができるようになる。
【0072】
そしてまた、この場合、壁面Waの凹凸の具合や、吸着盤20の吸着の具合等により、アーム30が第1ユニバーサルジョイントJAを介してアーム30の軸線P回りに回動しようとしても、アーム30は中間部を中心として前側が注入ノズル1で支持され、後側が一対の当接部材50に支持されるので、謂わば、前後3点支持の支持になることから、アーム30がアーム30の軸線P回りに回動して横方向に傾く事態を防止することができる。そのため、注入ノズル1の亀裂Kからの浮き上がりや離脱を防止して、充填剤を確実に亀裂Kに充填できるようにすることができるようになる。また、吸着盤20の吸着力により、押さえコイルスプリング34の付勢力に抗して、アーム30自体が吸着盤20側に引っ張られることから、注入ノズル1と当接部材50を壁面Waに良く押し付けることができ、この点でも、注入ノズル1の亀裂Kからの浮き上がりや離脱を防止して、充填剤を確実に亀裂Kに充填できるようにすることができる。
【0073】
このようにして、順次、亀裂Kに充填剤を注入していく。この場合、亀裂補修装置Sは繰り返し使用されることになるが、アーム30を支持した支持軸22においては、規制ナット部36が第1ナットN1のテーパ管naに対する第2ナットN2のテーパ凹部nbの締め付けによりに支持軸22に対して容易に動きにくくなることから、繰り返しの使用によって、規制ナット部36が緩んで、アーム30が移動してしまう事態を防止することができ、注入ノズル1の壁面Waへの押し付け力の変動を抑止し、より一層充填剤を確実に亀裂Kに充填できるようにすることができる。
【0074】
また、注入ノズル1の流入管3においても、下側のロックナット部47が第1ナットN1のテーパ管naに対する第2ナットN2のテーパ凹部nbの締め付けによりに流入管3に対して容易に動きにくくなることから、繰り返しの使用によって、ロックナット部47が緩んで、注入ノズル1が移動してしまう事態を防止することができ、注入ノズル1の壁面Waへの押し付け力の変動を抑止し、より一層充填剤を確実に亀裂Kに充填できるようにすることができる。尚、一対のロックナット部46,47の両方を、第1ナットN1及び第2ナットN2との組で構成した場合には、注入ノズル1をより一層確実に位置決めすることができるとともに、ガタツキを防止することができる。
【0075】
更にまた、吸着盤20をバキュームポンプ27で空気を吸引して壁面Waに吸着した際、吸着盤20のある部位に亀裂があって、この亀裂から充填剤を吸引し、バキュームポンプ27に至ってバキュームポンプ27を損傷する虞があるが、吸着盤20の吸着本体23を透明にしたので、亀裂からの充填剤の吸引を視認することができ、この場合には、吸引を停止して、別の場所に吸着盤20を装着できるので、安全を図ることができる。
【0076】
また、実施の形態に係る亀裂補修装置Sにおいては、注入ノズル1の流入管3に第1分岐管12,第2分岐管13及び第3分岐管14を備えた供給管10を接続したので、充填剤の種類を切換えて充填することができる。例えば、先ず、ある一種の充填剤を注入するときは、第1分岐管12の開閉弁15を開にし、他を閉にする。また、別の種類の充填剤を注入するときは、第3分岐管14の開閉弁を開にし、これにエアを送給して管路を洗浄する。次に、第1分岐管12の開閉弁を閉にし、第3分岐管14を閉にし、第2分岐管13を開にして、別の充填剤を注入する。再度、ある一種の充填剤を充填するときは、同様に洗浄を行って、上記と同様にする。このように、1つの装置で、2種類の充填剤を適宜切換えて注入することができ、2種類の充填剤を注入する必要がある場合には、極めて作業効率が良くなる。
【0077】
尚、上記実施の形態において、当接部材50は、一対設けたが必ずしもこれに限定されるものではなく、3以上設けても良く、適宜変更して差支えない。また、各部材の材質や形状も上記に限定されるものではなく、適宜変更して差支えない。