特許第6654402号(P6654402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654402
(24)【登録日】2020年2月3日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】打音検査システム及び打音検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/04 20060101AFI20200217BHJP
   G01N 29/22 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   G01N29/04
   G01N29/22
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-212641(P2015-212641)
(22)【出願日】2015年10月29日
(65)【公開番号】特開2017-83330(P2017-83330A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165974
【氏名又は名称】古河機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 文雄
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−300809(JP,A)
【文献】 特開2004−205216(JP,A)
【文献】 特開平05−065704(JP,A)
【文献】 米国特許第04979125(US,A)
【文献】 特開2002−311002(JP,A)
【文献】 特開2001−349876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
E04G 23/00−23/08
E21D 11/00−19/06
E21D 23/00−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物に打撃を加える打撃部、及び、前記打撃に応じて発生した音を収集する集音部を有する打撃集音ユニットと、前記集音部で収集した音のデータを解析し、欠陥の有無を判定する判定部を備える解析ユニットと、前記検査対象物の欠陥部分に前記打撃部よりも強い打撃を加える欠陥打撃部を有する欠陥打撃ユニットと、を有する打音検査装置と、
伸縮動作、起伏動作及び旋回動作が可能なブームを備え、前記ブームの先端に、前記打撃集音ユニット及び前記欠陥打撃ユニットが取り付けられた機械装置と、
前記打音検査装置及び前記機械装置を制御する動作制御装置と、
を有し、
前記打撃集音ユニットと前記欠陥打撃ユニットとは別々に設けられ、
前記打撃集音ユニット及び前記欠陥打撃ユニットは、前記動作制御装置に制御される位置調整機構を介して前記ブームに取り付けられており、
前記動作制御装置は、
前記機械装置を制御し、前記ブームを動作させて前記打撃集音ユニットを所定位置に位置させた後、前記ブームの状態を維持したまま前記打音検査装置を制御し、前記打撃部による前記検査対象物への打撃、前記集音部による音の収集、前記判定部による欠陥有無の判定を行わせ、前記判定部による判定結果が欠陥有である場合、前記位置調整機構を制御し、前記ブームを動作させることなく、前記打撃集音ユニットがいた位置に前記欠陥打撃ユニットを位置させ、その後、前記欠陥打撃部による前記検査対象物への打撃をさらに行わせる打音検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載の打音検査システムにおいて、
前記動作制御装置は、前記判定部による判定結果が欠陥無である場合、前記欠陥打撃部による前記検査対象物への打撃を行わせない打音検査システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の打音検査システムにおいて、
前記位置調整機構は、スライド機構又は回転機構を有する打音検査システム。
【請求項4】
検査対象物に打撃を加える打撃部、及び、前記打撃に応じて発生した音を収集する集音部を有する打撃集音ユニットと、前記集音部で収集した音のデータを解析し、欠陥の有無を判定する判定部を備える解析ユニットと、前記検査対象物の欠陥部分に前記打撃部よりも強い打撃を加える欠陥打撃部を有する欠陥打撃ユニットと、を有する打音検査装置と、
伸縮動作、起伏動作及び旋回動作が可能なブームを備え、前記ブームの先端に、前記打撃集音ユニット及び前記欠陥打撃ユニットが取り付けられた機械装置と、
前記打音検査装置及び前記機械装置を制御する動作制御装置と、
を有し、
前記打撃集音ユニットと前記欠陥打撃ユニットとは別々に設けられ、
前記打撃集音ユニット及び前記欠陥打撃ユニットは、前記動作制御装置に制御される位置調整機構を介して前記ブームに取り付けられている打音検査システムの前記動作制御装置が、
前記機械装置を制御し、前記ブームを動作させて前記打撃集音ユニットを所定位置に位置させた後、前記ブームの状態を維持したまま前記打音検査装置を制御し、前記打撃部による前記検査対象物への打撃、前記集音部による音の収集、前記判定部による欠陥有無の判定を行わせ、前記判定部による判定結果が欠陥有である場合、前記位置調整機構を制御し、前記ブームを動作させることなく、前記打撃集音ユニットがいた位置に前記欠陥打撃ユニットを位置させ、その後、前記欠陥打撃部による前記検査対象物への打撃をさらに行わせる打音検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打音検査システム及び打音検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に関連する技術が開示されている。特許文献1には自動打音検査方法及びその装置が開示されている。特許文献1の技術では、建設中又は建設後にトンネルにハンマー装置を取り付け、これを常設する。そして、定期的(例:1日1回)に当該ハンマー装置を起動させてトンネルに打撃を加え、打音を検出し、検出した打音に基づきトンネルの劣化状況を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−221783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハンマー装置を常設する特許文献1に記載の技術の場合、検査対象の建築物が大きくなるほど、また、検査対象の建築物の数が多くなるほど、要するハンマー装置の数が増加する。結果、費用負担が大きくなる。
【0005】
本発明者らは、伸縮動作、起伏動作及び旋回動作が可能なブームを備える機械装置(以下、単に「機械装置」という場合がある)に、検査対象物への打撃及び集音を行うユニット(以下、「打撃集音ユニット」)を取り付け、橋梁、トンネル、ビルディング等の建築物の欠陥検査を行う技術を検討した。当該技術の場合、打撃集音ユニットを移動できるので、1つの打撃集音ユニットを用いて複数箇所の検査を行うことができる。結果、上記特許文献1に記載の技術の問題を解決できる。
【0006】
本発明者らは、脆弱な欠陥部分に打撃を加えて脆弱部分を叩き落とす欠陥打撃ユニットをさらに上記機械装置に取り付け、打撃集音ユニットによる打音検査、及び、欠陥打撃ユニットによる欠陥部分の叩落処理の両方を行う技術を検討した。
【0007】
当該技術としては、例えば、打撃集音ユニット及び欠陥打撃ユニットを交互に機械装置に取り付ける例(以下、「参考例」)が考えられる。当該参考例の場合、処理の流れは例えば以下のようになる。
【0008】
まず、機械装置のブームに打撃集音ユニットを取り付ける。そして、ブームを動作させ、打撃集音ユニットを所定の検査位置に移動させる。その後、その検査位置で、打撃集音ユニットに打撃及び集音を行わせる。そして、打撃集音ユニットにより集音された音データをコンピュータが解析し、欠陥有無を判定する。
【0009】
判定結果が欠陥無である場合、ブームを動作させ、打撃集音ユニットを他の検査位置に移動させる。そして、その検査位置で、打撃、集音、解析を再び行う。
【0010】
一方、判定結果が欠陥有である場合、ブームを動作させ、ユニットの取り換えが可能な状態にする。その後、ブームから打撃集音ユニットを取り外し、代わりに欠陥打撃ユニットを取り付ける。そして、ブームを動作させ、欠陥打撃ユニットを欠陥有と判定された検査位置に移動させる。その後、その検査位置で、欠陥打撃ユニットに打撃を行わせ、脆弱部分を叩き落とす。
【0011】
その後、ブームを動作させ、ユニットの取り換えが可能な状態にする。そして、ブームから欠陥打撃ユニットを取り外し、打撃集音ユニットを取り付ける。その後、上記と同様の処理を行う。
【0012】
当該参考例の場合、作業効率が悪い。機械装置に打撃集音ユニット及び欠陥打撃ユニットの両方を取り付け、打音検査及び叩落処理の両方を行う技術においては、打音検査及び叩落処理を効率的に進めないと、作業効率が悪くなる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、
検査対象物に打撃を加える打撃部、及び、前記打撃に応じて発生した音を収集する集音部を有する打撃集音ユニットと、前記集音部で収集した音のデータを解析し、欠陥の有無を判定する判定部を備える解析ユニットと、前記検査対象物の欠陥部分に前記打撃部よりも強い打撃を加える欠陥打撃部を有する欠陥打撃ユニットと、を有する打音検査装置と、
伸縮動作、起伏動作及び旋回動作が可能なブームを備え、前記ブームの先端に、前記打撃集音ユニット及び前記欠陥打撃ユニットが取り付けられた機械装置と、
前記打音検査装置及び前記機械装置を制御する動作制御装置と、
を有し、
前記打撃集音ユニットと前記欠陥打撃ユニットとは別々に設けられ、
前記打撃集音ユニット及び前記欠陥打撃ユニットは、前記動作制御装置に制御される位置調整機構を介して前記ブームに取り付けられており、
前記動作制御装置は、
前記機械装置を制御し、前記ブームを動作させて前記打撃集音ユニットを所定位置に位置させた後、前記ブームの状態を維持したまま前記打音検査装置を制御し、前記打撃部による前記検査対象物への打撃、前記集音部による音の収集、前記判定部による欠陥有無の判定を行わせ、前記判定部による判定結果が欠陥有である場合、前記位置調整機構を制御し、前記ブームを動作させることなく、前記打撃集音ユニットがいた位置に前記欠陥打撃ユニットを位置させ、その後、前記欠陥打撃部による前記検査対象物への打撃をさらに行わせる打音検査システムが提供される。
【0014】
また、本発明によれば、
検査対象物に打撃を加える打撃部、及び、前記打撃に応じて発生した音を収集する集音部を有する打撃集音ユニットと、前記集音部で収集した音のデータを解析し、欠陥の有無を判定する判定部を備える解析ユニットと、前記検査対象物の欠陥部分に前記打撃部よりも強い打撃を加える欠陥打撃部を有する欠陥打撃ユニットと、を有する打音検査装置と、
伸縮動作、起伏動作及び旋回動作が可能なブームを備え、前記ブームの先端に、前記打撃集音ユニット及び前記欠陥打撃ユニットが取り付けられた機械装置と、
前記打音検査装置及び前記機械装置を制御する動作制御装置と、
を有し、
前記打撃集音ユニットと前記欠陥打撃ユニットとは別々に設けられ、
前記打撃集音ユニット及び前記欠陥打撃ユニットは、前記動作制御装置に制御される位置調整機構を介して前記ブームに取り付けられている打音検査システムの前記動作制御装置が、
前記機械装置を制御し、前記ブームを動作させて前記打撃集音ユニットを所定位置に位置させた後、前記ブームの状態を維持したまま前記打音検査装置を制御し、前記打撃部による前記検査対象物への打撃、前記集音部による音の収集、前記判定部による欠陥有無の判定を行わせ、前記判定部による判定結果が欠陥有である場合、前記位置調整機構を制御し、前記ブームを動作させることなく、前記打撃集音ユニットがいた位置に前記欠陥打撃ユニットを位置させ、その後、前記欠陥打撃部による前記検査対象物への打撃をさらに行わせる打音検査方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、機械装置に打撃集音ユニット及び欠陥打撃ユニットの両方を取り付け、打音検査及び叩落処理の両方を行う技術において、作業効率を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の装置のハードウエア構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態の打音検査システムの機能ブロック図の一例である。
図3】本実施形態の打撃集音ユニットの一例を示す図である。
図4】本実施形態の機械装置の一例を示す図である。
図5】本実施形態の機械装置を搭載したトラックの一例を示す図である。
図6】本実施形態のブームの動作の一例を示す図である。
図7】本実施形態のブームの動作の一例を示す図である。
図8】本実施形態の位置調整機構の一例を模式的に示す図である。
図9】本実施形態の位置調整機構の一例を模式的に示す図である。
図10】本実施形態の打音検査ユニットの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本実施形態の装置(打音検査装置、機械装置、動作制御装置)のハードウエア構成の一例について説明する。図1は、本実施形態の装置のハードウエア構成を例示するブロック図である。図1に示すように、装置は、プロセッサ1A、メモリ2A、入出力インターフェイス3A、周辺回路4A、バス5Aを有する。周辺回路には、様々なモジュールが含まれる。
【0018】
バス5Aは、プロセッサ1A、メモリ2A、周辺回路4A及び入出力インターフェイス3Aが相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。プロセッサ1Aは、例えばCPU(Central Processing Unit) やGPU(Graphics Processing Unit)などの演算処理装置である。メモリ2Aは、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリである。入出力インターフェイス3Aは、センサ、遠隔操作端末、各部等と情報の送受信を行うためのインターフェイスなどを含む。プロセッサ1Aは、各モジュールに指令を出し、それらの演算結果をもとに演算を行う。
【0019】
以下、本実施の形態について説明する。なお、以下の実施形態の説明において利用する機能ブロック図は、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。これらの図においては、各装置は1つの機器により実現されるよう記載されているが、その実現手段はこれに限定されない。すなわち、物理的に分かれた構成であっても、論理的に分かれた構成であっても構わない。なお、同一の構成要素には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0020】
まず、本実施形態の概要について説明する。本実施形態の打音検査システムでは、検査対象物への打撃及び集音を行う打撃集音ユニット、及び、脆弱な欠陥部分に打撃を加えて脆弱部分を叩き落とす欠陥打撃ユニットの両方を一緒にブームに取り付ける。そして、以下のような流れで打音検査及び叩落処理を行う。
【0021】
まず、機械装置のブームに、位置調整機構を介して、打撃集音ユニット及び欠陥打撃ユニットを取り付ける。そして、ブームを動作させ、打撃集音ユニットを所定の検査位置に移動させる。この時、欠陥打撃ユニットも一緒に移動する。その後、その検査位置で、打撃集音ユニットに打撃及び集音を行わせる。そして、打撃集音ユニットにより集音された音データをコンピュータが解析し、欠陥有無を判定する。
【0022】
判定結果が欠陥無である場合、ブームを動作させ、打撃集音ユニットを他の検査位置に移動させる。この時、欠陥打撃ユニットも一緒に移動する。そして、その検査位置で、打撃、集音、解析を再び行う。
【0023】
一方、判定結果が欠陥有である場合、位置調整機構を駆動し、打撃集音ユニットがいた位置に欠陥打撃ユニットを位置させる。この位置調整においては、ブームを動作させる必要がない。そして、その検査位置で欠陥打撃ユニットに打撃を行わせ、脆弱部分を叩き落とす。その後、ブームを動作させ、打撃集音ユニットを他の検査位置に移動させる。この時、欠陥打撃ユニットも一緒に移動する。
【0024】
このように本実施形態の場合、ユニットの取り換え作業を行う必要がない。また、上述した参考例に比べて、ブームの動作を減らすことができる。結果、作業効率を向上させることができる。
【0025】
次に、本実施形態の打音検査システムの構成を詳細に説明する。図2に、本実施形態の打音検査システム100の機能ブロック図の一例を示す。図示するように、打音検査システム100は、打音検査装置10と、動作制御装置20と、機械装置30とを有する。
【0026】
打音検査装置10は、打撃集音ユニット11と、解析ユニット12と、欠陥打撃ユニット13とを有する。
【0027】
打撃集音ユニット11は、検査対象物に打撃を加える打撃部、及び、打撃に応じて発生した音を収集する集音部を有する。検査対象物は、例えば建築物(例:橋梁、ビルディング等)であるが、これに限定されない。
【0028】
打撃集音ユニット11の構成は制限されず、あらゆる技術を採用できる。図3に、打撃集音ユニット11の一例を示す。図3は、打撃集音ユニット11の全体像を示す。図3において、付勢部3、サスペンション機構4及び保持リンク5以外の部分については、部分的に断面図として内部構造を示しており、付勢部3については、その衝突部材6の一部分を除き、内部構造を示さない正面図となっている。
【0029】
図3に示すように、打撃集音ユニット11は、検査対象物に衝突して打撃を加える打撃部材1と、打撃部材1を保持するとともに、一方向に案内する案内部7と、打撃部材1に衝突して打撃部材1を一方向に付勢する付勢部3と、マイク8と、マイク8を保持するマイク保持部9とを有する。打撃部材1、案内部7、及び、付勢部3が、打撃部に対応する。マイク8が、集音部に対応する。
【0030】
付勢部3の衝突部材6は、一方向にスライド移動可能に構成される。衝突部材6は、付勢部3内で発生した力に応じて一方向にスライド移動する。その結果、衝突部材6は打撃部材1に衝突する。打撃部材1は、付勢部3によって付勢された後、案内部7により案内されて一方向に移動して、検査対象物を打撃する。例えば、打撃集音ユニット11の開口面Aを検査対象物に当接させた状態で打撃部材1を図示するように移動させることで、検査対象物に打撃を加える。
【0031】
マイク8は、マイク保持部9を介して、打撃集音ユニット11の所定位置に固定されている。打撃集音ユニット11は、マイク8で集音した音のデータを出力する出力手段(入出力I/F)をさらに有する。
【0032】
図2に戻り、解析ユニット12は、打撃集音ユニット11と有線及び/又は無線で通信し、集音部(マイク8)が収集した音のデータを取得する。そして、解析ユニット12の判定部は、集音部(マイク8)で収集した音のデータを解析し、検査対象物における欠陥の有無を判定する。判定部による解析の詳細は特段制限されず、あらゆる技術を採用できる。例えば、特許文献1に開示されている技術を用いてもよい。
【0033】
解析ユニット12は、判定結果を出力する出力手段(入出力I/F)を有する。解析ユニット12と打撃集音ユニット11は物理的に一体となって構成されてもよいし、物理的に分かれて構成されてもよい。また、解析ユニット12と欠陥打撃ユニット13は物理的に一体となって構成されてもよいし、物理的に分かれて構成されてもよい。
【0034】
欠陥打撃ユニット13は、欠陥打撃部を有する。欠陥打撃部は、検査対象物の欠陥部分(解析ユニット12により欠陥有と判定された部分)に、打撃集音ユニット11の打撃部よりも強い打撃を加える。欠陥打撃ユニット13の構成は制限されず、あらゆる技術を採用できる。例えば、欠陥打撃ユニット13は、図3に示すような打撃集音ユニット11と同様の構成を有し、打撃部材1の構成(大きさ、重量、硬さ等)や付勢部3の構成を変化させることで、打撃集音ユニット11の打撃部よりも強い打撃を加えるように構成されたものでもよい。
【0035】
図2に戻り、機械装置30は、伸縮動作、起伏動作及び旋回動作が可能なブームを備え、ブームの先端に、打撃集音ユニット11及び欠陥打撃ユニット13が一緒に取り付けられる。なお、解析ユニット12は、ブーム以外の位置に取り付けられてもよいし、ブームに取り付けられてもよい。
【0036】
機械装置30は、例えばクレーンや、クレーンからフック及びフック吊り上げ機能を取り除いたもの、高所作業機、橋梁点検機等が考えられる。図4に、ブーム72の先端に打撃集音ユニット11及び欠陥打撃ユニット13を一緒に取り付けられた機械装置30の一例を示す。図示するように、機械装置30は、左右自在に回転する旋回体の上にコラム715を取り付けている。そして、そのコラム715にブーム72をブームフートピンと起伏シリンダ705で固定している。起伏シリンダ705の伸縮でブーム72の起伏動作を可能としている。また、ブーム72に内蔵されている伸縮シリンダ710を伸縮させることでブーム72を伸縮させることができる。このような機械装置30の動作を、機械装置30本体に設置されている手動レバー725や遠隔操作端末等を用いて制御することができる。図5に、機械装置30を搭載したトラックの一例を示す。
【0037】
図6に示すように、ブーム72の長さ及びブーム72の起伏角度を変更することで、ブーム72の先端に取り付けられた打撃集音ユニット11及び欠陥打撃ユニット13を水平方向にスライドさせることができる。また、図7に示すように、ブーム72の長さ及びブーム72の起伏角度を変更することで、打撃集音ユニット11及び欠陥打撃ユニット13の位置を鉛直方向にスライドさせることができる。図示する機構の場合、姿勢調節ユニット74により、ブーム72の状態にかかわらず打撃集音ユニット11及び欠陥打撃ユニット13の姿勢が一定に維持される。姿勢調節ユニット74の詳細は特段制限されないので、ここでの説明は省略する。
【0038】
なお、打撃集音ユニット11及び欠陥打撃ユニット13は、動作制御装置20に制御される位置調整機構を介して、ブームに取り付けられる。位置調整機構は、スライド機構又は回転機構を有する。位置調整機構を適切に動作させることで、動作前に打撃集音ユニット11がいた位置に、動作後に欠陥打撃ユニット13を位置させることができる。位置調整機構はあらゆる構成を採用できるが、以下一例を説明する。
【0039】
図4の例では、回転機構を備える位置調整機構14が示されている。位置調整機構14は、ブームに固定される固定部14−1と、固定部14−1の上に回転可能に保持された回転部14−2とを有する。動作制御装置20は、回転部14−2の回転動作(回転動作を実行するか否か、回転方向、回転量等)を制御する。回転部14−2が図示するように自転すると、それに応じて、打撃集音ユニット11及び欠陥打撃ユニット13が同じ方向に公転する。適切な回転角度(予め登録されていてもよい)だけ回転させることで、回転前に打撃集音ユニット11がいた位置に、回転後に欠陥打撃ユニット13を位置させることができる。
【0040】
図8の例では、スライド機構を備える位置調整機構15が示されている。位置調整機構15は、ブームに固定される固定部15−1と、固定部15−1の上にスライド移動可能に保持された移動部15−2とを有する。打撃集音ユニット11及び欠陥打撃ユニット13は、移動部15−2に保持される。移動部15−2は、打撃集音ユニット11及び欠陥打撃ユニット13を並べた方向(図示する場合、左右方向)にスライド移動する。動作制御装置20は、移動部15−2のスライド動作(スライド動作を実行するか否か、スライド方向、スライド移動量等)を制御する。
【0041】
移動部15−2がスライド移動すると、それに応じて、打撃集音ユニット11及び欠陥打撃ユニット13が同じ方向にスライド移動する。適切な移動量(予め登録されていてもよい)だけスライド移動させることで、スライド移動前に打撃集音ユニット11がいた位置に、スライド移動後に欠陥打撃ユニット13を位置させることができる。
【0042】
なお、図示する例では、一次元方向にスライド移動する例を示しているが、二次元方向にスライド移動できてもよい。
【0043】
図9の例では、回転機構を備える位置調整機構16が示されている。動作制御装置20は、当該回転機構の回転動作(回転動作を実行するか否か、回転方向、回転量等)を制御する。位置調整機構16が図示するように回転軸Bを中心に自転すると、それに応じて、打撃集音ユニット11及び欠陥打撃ユニット13が同じ方向に公転する。適切な回転角度(予め登録されていてもよい)だけ回転させることで、回転前に打撃集音ユニット11がいた位置に、回転後に欠陥打撃ユニット13を位置させることができる。
【0044】
図2に戻り、動作制御装置20は、打音検査装置10、機械装置30及び位置調整機構を制御する。
【0045】
動作制御装置20は、機械装置30を制御し、ブームを動作させて打撃集音ユニット11を所定位置(検査対象位置)に位置させた後、ブームの状態を維持したまま打音検査装置10を制御し、打撃集音ユニット11の打撃部による検査対象物への打撃、打撃集音ユニット11の集音部による音の収集、解析ユニット12の判定部による欠陥有無の判定を行わせる。そして、解析ユニット12の判定部による判定結果が欠陥有である場合、欠陥打撃ユニット13の欠陥打撃部による検査対象物への打撃をさらに行わせる。
【0046】
なお、解析ユニット12の判定部による判定結果が欠陥有である場合、動作制御装置20は、欠陥打撃ユニット13の欠陥打撃部による検査対象物への打撃の前に位置調整機構を制御し、ブームを動作させることなく、打撃集音ユニット11がいた位置に欠陥打撃ユニット13を位置させる。その後、欠陥打撃ユニット13の欠陥打撃部による検査対象物への打撃を行わせる。
【0047】
一方、解析ユニット12の判定部による判定結果が欠陥無である場合、欠陥打撃ユニット13の欠陥打撃部による検査対象物への打撃を行わせない。
【0048】
次に、図10のフローチャートを用いて、本実施形態の打音検査システム100の処理の流れの一例を説明する。
【0049】
打音検査システム100を起動すると、その後、打音検査システム100は、ブームを動作させる指示入力待ち、及び、打音検査を行わせる指示入力待ちとなる。
【0050】
オペレータは、機械装置30本体に設置されている手動レバー725(図4参照)や遠隔操作端末等を用いて、ブームを動作させる指示入力を行う。ブームを動作させる指示入力があると(S10のYes)、動作制御装置20は、当該指示入力に従い、機械装置30のブームを動作させる(S11)。これにより、ブームに取り付けられた打撃集音ユニット11及び欠陥打撃ユニット13の移動が実現される。
【0051】
打撃集音ユニット11を所定の検査対象箇所に位置させると、その後、オペレータは、遠隔操作端末等を用いて、打音検査を行わせる指示入力を行う。打音検査を行わせる指示入力があると(S12のYes)、S13に進む。
【0052】
S13では、動作制御装置20は、ブームの状態を維持したまま打音検査装置10を制御し、打撃集音ユニット11の打撃部による検査対象物への打撃、打撃集音ユニット11の集音部による音の収集、解析ユニット12の判定部による欠陥有無の判定を行わせる。
【0053】
解析ユニット12の判定部による判定の結果が欠陥有である場合(S14のYes)、動作制御装置20は、位置調整機構を制御し、ブームを動作させることなく、打撃集音ユニット11がいた位置に欠陥打撃ユニット13を位置させる。その後、動作制御装置20は、欠陥打撃ユニット13の欠陥打撃部による検査対象物への打撃(欠陥有と判定された箇所への打撃)を行わせる(S15)。
【0054】
その後、打音検査システム100はS10に戻り、ブームを動作させる指示入力待ち、及び、打音検査を行わせる指示入力待ちとなる。
【0055】
また、解析ユニット12の判定部による判定の結果が欠陥無である場合(S14のNo)も、打音検査システム100はS10に戻り、ブームを動作させる指示入力待ち、及び、打音検査を行わせる指示入力待ちとなる。
【0056】
以降、同様の処理を繰り返す。
【0057】
以上説明した本実施形態によれば、ブームを動作させて所望の状態にすると、ブームの当該状態を維持したまま、打音検査のための打撃、集音、判定、及び、脆弱部分を叩き落とすための打撃のすべてを行うことができる。このため、ブームの無駄な動作を減らし、作業効率を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態の場合、ブームに打撃集音ユニット11及び欠陥打撃ユニット13を一緒に取り付けることができる。このため、打撃集音ユニット11及び欠陥打撃ユニット13を交互に取り付ける場合に比べて、ユニット交換作業がない分、作業効率を向上させることができる。
【0059】
以下、参考形態の例を付記する。
1. 検査対象物に打撃を加える打撃部、及び、前記打撃に応じて発生した音を収集する集音部を有する打撃集音ユニットと、前記集音部で収集した音のデータを解析し、欠陥の有無を判定する判定部を備える解析ユニットと、前記検査対象物の欠陥部分に前記打撃部よりも強い打撃を加える欠陥打撃部を有する欠陥打撃ユニットと、を有する打音検査装置と、
伸縮動作、起伏動作及び旋回動作が可能なブームを備え、前記ブームの先端に、前記打撃集音ユニット及び前記欠陥打撃ユニットが取り付けられた機械装置と、
前記打音検査装置及び前記機械装置を制御する動作制御装置と、
を有し、
前記動作制御装置は、
前記機械装置を制御し、前記ブームを動作させて前記打撃集音ユニットを所定位置に位置させた後、前記ブームの状態を維持したまま前記打音検査装置を制御し、前記打撃部による前記検査対象物への打撃、前記集音部による音の収集、前記判定部による欠陥有無の判定を行わせ、前記判定部による判定結果が欠陥有である場合、前記欠陥打撃部による前記検査対象物への打撃をさらに行わせる打音検査システム。
2. 1に記載の打音検査システムにおいて、
前記動作制御装置は、前記判定部による判定結果が欠陥無である場合、前記欠陥打撃部による前記検査対象物への打撃を行わせない打音検査システム。
3. 1又は2に記載の打音検査システムにおいて、
前記打撃集音ユニット及び前記欠陥打撃ユニットは、前記動作制御装置に制御される位置調整機構を介して前記ブームに取り付けられており、
前記動作制御装置は、前記判定部による判定結果が欠陥有である場合、前記欠陥打撃部による前記検査対象物への打撃の前に前記位置調整機構を制御し、前記打撃集音ユニットがいた位置に前記欠陥打撃ユニットを位置させる打音検査システム。
4. 3に記載の打音検査システムにおいて、
前記動作制御装置は、前記判定部による判定結果が欠陥有である場合、前記欠陥打撃部による前記検査対象物への打撃の前に前記位置調整機構を制御し、前記ブームを動作させることなく、前記打撃集音ユニットがいた位置に前記欠陥打撃ユニットを位置させる打音検査システム。
5. 3又は4に記載の打音検査システムにおいて、
前記位置調整機構は、スライド機構又は回転機構を有する打音検査システム。
6. 検査対象物に打撃を加える打撃部、及び、前記打撃に応じて発生した音を収集する集音部を有する打撃集音ユニットと、前記集音部で収集した音のデータを解析し、欠陥の有無を判定する判定部を備える解析ユニットと、前記検査対象物の欠陥部分に前記打撃部よりも強い打撃を加える欠陥打撃部を有する欠陥打撃ユニットと、を有する打音検査装置と、
伸縮動作、起伏動作及び旋回動作が可能なブームを備え、前記ブームの先端に、前記打撃集音ユニット及び前記欠陥打撃ユニットが取り付けられた機械装置と、
前記打音検査装置及び前記機械装置を制御する動作制御装置と、
を有する打音検査委ステムの前記動作制御装置が、
前記機械装置を制御し、前記ブームを動作させて前記打撃集音ユニットを所定位置に位置させた後、前記ブームの状態を維持したまま前記打音検査装置を制御し、前記打撃部による前記検査対象物への打撃、前記集音部による音の収集、前記判定部による欠陥有無の判定を行わせ、前記判定部による判定結果が欠陥有である場合、前記欠陥打撃部による前記検査対象物への打撃をさらに行わせる打音検査方法。
【符号の説明】
【0060】
1A プロセッサ
2A メモリ
3A 入出力I/F
4A 周辺回路
5A バス
1 打撃部材
3 付勢部
4 サスペンション機構
5 保持リンク
6 衝突部材
7 案内部
8 マイク
9 マイク保持部
10 打音検査装置
11 打撃集音ユニット
12 解析ユニット
13 欠陥打撃ユニット
14 位置調整機構
14−1 固定部
14−2 回転部
15 位置調整機構
15−1 固定部
15−2 移動部
16 位置調整機構
20 動作制御装置
30 機械装置
72 ブーム
74 姿勢調節ユニット
100 打音検査システム
705 起伏シリンダ
710 伸縮シリンダ
715 コラム
725 手動レバー
A 打撃集音ユニット11の開口面
B 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10