(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保護カバーは、前記センサ素子室からの出口である1以上の素子室出口を含む前記センサ素子室から外部への出口側ガス流路を形成し、内側保護カバーと該内側保護カバーの外側に配設された外側保護カバーとを有し、
前記内側保護カバーは、前記センサ素子室と、前記素子室入口と、前記素子室出口とを形成し、
前記外側保護カバーは、前記被測定ガスの外部からの入口であり前記入口側ガス流路の一部を構成する1以上の外側入口と、前記被測定ガスの外部への出口であり前記出口側ガス流路の一部を構成する1以上の外側出口と、を形成し、
前記外側保護カバー及び前記内側保護カバーは、両者の間の空間として前記入口側ガス流路の一部であり前記外側入口と前記素子室入口との間に位置する第1ガス室と、両者の間の空間として前記出口側ガス流路の一部であり前記外側出口と前記素子室出口との間に位置し前記第1ガス室と直接には連通していない第2ガス室と、を形成している、
請求項1又は2に記載のガスセンサ。
前記保護カバーは、前記素子室入口のうち前記センサ素子室側の開口部である素子側開口部が前記センサ素子の後端から先端へ向かう方向に開口するように該素子室入口を形成している、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1はエンジン1の排気経路2の概略説明図である。
図2は
図1のA−A断面図である。
【0017】
エンジン1の排気経路2には、
図1に示すように、酸化触媒3と、尿素を排気管内に注入するインジェクタ4と、尿素が加水分解したときに生成するアンモニアを利用して窒素酸化物(NOx)を還元して無害なN
2とH
2Oに分解させるSCR(選択還元型触媒)5と、SCR5を通過した後の排ガスが流れる配管20と、配管20に取り付けられ配管20内の排ガス(被測定ガス)中のアンモニア濃度を検出するガスセンサ100とが配置されている。エンジン1から排出された直後の排ガスは、ハイドロカーボン(HC)や一酸化炭素(CO)、NOxなどを含んでいる。この排ガスは、酸化触媒3を通過するときにHCやCOは水と二酸化炭素とに変換されて無毒化されるが、NOxは酸化触媒3を通過したあとも残存したままである。SCR5は、酸化触媒3を通過したあとの排ガス中のNOxを、インジェクタ4から注入された尿素が加水分解されて生成するアンモニアを利用して還元して、無毒なN
2とH
2Oに分解する。ガスセンサ100は、SCR5を通過した後の配管20内の排ガスに含まれる過剰のアンモニア濃度を検出する。ガスセンサ100は、
図2に示すように、ガスセンサ100の中心軸が配管20内の被測定ガスの流れに垂直な状態で配管20内に固定されている。なお、ガスセンサ100の中心軸が配管20内の被測定ガスの流れに垂直且つ鉛直方向(
図2の上下方向)に対して所定の角度(例えば45°)だけ傾いた状態で配管20内に固定されていてもよい。エンジンECU6は、検出された過剰のアンモニア濃度がゼロに近づくようにインジェクタ4から排気管へ注入する尿素量を制御する。以下、ガスセンサ100について詳説する。
【0018】
図3は
図2のB−B断面図であり、ガスセンサ100の縦断面図である。
図4は
図3の素子室入口127周辺を拡大した部分断面図である。
図5は
図3のC−C断面図である。
図6は
図3のD視図である。
図7は入口側ガス流路150,素子室内流路152,出口側ガス流路154の概略説明図である。
【0019】
ガスセンサ100は、
図3に示すように、被測定ガス中の所定のガス濃度(アンモニアの濃度)を検出する機能を有するセンサ素子110と、このセンサ素子110を保護する保護カバー120とを備えている。また、ガスセンサ100は、金属製のハウジング102及び外周面におねじが設けられた金属製のナット103を備えている。ハウジング102は配管20に溶接され内周面にめねじが設けられた固定用部材22内に挿入されており、さらにナット103が固定用部材22内に挿入されることでハウジング102が固定用部材22内に固定されている。これにより、ガスセンサ100が配管20内に固定されている。なお、配管20内の被測定ガスの流れる向きは、
図3における左から右に向かう方向である。
【0020】
センサ素子110は、細長な長尺の板状体形状の素子であり、ジルコニア(ZrO
2)等の酸素イオン伝導性固体電解質層を複数積層した構造を有している。センサ素子110は、被測定ガスを自身の内部に導入するガス導入口111を有しており、ガス導入口111から内部に流入した被測定ガスの所定のガス濃度(アンモニアの濃度)を検出可能に構成されている。より具体的には、センサ素子110は、ガス導入口111から内部に流入した被測定ガスのうちアンモニアをNOxに変換し、変換後のNOx濃度を検出することでアンモニア濃度を検出する。本実施形態では、ガス導入口111は、センサ素子110の先端面(
図3におけるセンサ素子110の下面)に開口しているものとした。センサ素子110は、センサ素子110を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒーターを内部に備えている。このようなセンサ素子110の構造やガス濃度を検出する原理は公知であり、例えば上述した特許文献1に記載されている。センサ素子110は、先端(
図3の下端)及びガス導入口111がセンサ素子室124内に配置されている。
【0021】
また、センサ素子110は、表面の少なくとも一部を覆う多孔質保護層110aを備えている。本実施形態では、多孔質保護層110aは、センサ素子110の6つの表面のうち5面に形成されて、センサ素子室124内に露出した表面のほとんどを覆っている。具体的には、多孔質保護層110aは、センサ素子110のうちガス導入口111が形成された先端面(
図3の下面)を全て覆っている。また、多孔質保護層110aは、センサ素子110の先端面に接続される4つの表面(
図5のセンサ素子110における上下左右の面)のうちセンサ素子110の先端面に近い側を覆っている。多孔質保護層110aは、例えば、被測定ガス中の水分等が付着してセンサ素子110にクラックが生じるのを抑制する役割を果たす。また、多孔質保護層110aは、被測定ガスに含まれるオイル成分等がセンサ素子110の表面の図示しない電極等に付着するのを抑制する役割を果たす。多孔質保護層110aは、例えばアルミナ多孔質体、ジルコニア多孔質体、スピネル多孔質体、コージェライト多孔質体,チタニア多孔質体、マグネシア多孔質体などの多孔質体からなる。多孔質保護層110aは、例えばプラズマ溶射,スクリーン印刷,ディッピングなどにより形成することができる。なお、多孔質保護層110aは、ガス導入口111も覆っているが、多孔質保護層110aが多孔質体であるため、被測定ガスは多孔質保護層110aの内部を流通してガス導入口111に到達可能である。特にこれに限定するものではないが、多孔質保護層110aの厚さは例えば100μm〜700μmである。
【0022】
保護カバー120は、センサ素子110の周囲を取り囲むように配置されている。この保護カバー120は、センサ素子110の先端を覆う有底筒状の内側保護カバー130と、内側保護カバー130を覆う有底筒状の外側保護カバー140とを有している。また、内側保護カバー130と外側保護カバー140とに囲まれた空間として第1ガス室122,第2ガス室126が形成され、内側保護カバー130に囲まれた空間としてセンサ素子室124が形成されている。なお、ガスセンサ100,センサ素子110,内側保護カバー130,外側保護カバー140の中心軸は同軸になっている。保護カバー120は、クロムとニッケルとの少なくとも一方を含む金属(例えばステンレス鋼)で形成されている。
【0023】
内側保護カバー130は、第1部材131と、第2部材135と、を備えている。第1部材131は、円筒状の大径部132と、円筒状で大径部132よりも径の小さい第1円筒部134と、大径部132と第1円筒部134とを接続する段差部133と、を有している。第2部材135は、第1円筒部134よりも径が大きい第2円筒部136と、第2円筒部136よりもセンサ素子110の先端方向(
図3の下方向)に位置し円錐台を逆さにした形状の先端部138と、第2円筒部136と先端部138とを接続する接続部137と、を有している。また、先端部138の底面の中心には、センサ素子室124と第2ガス室126とに通じ、センサ素子室124からの被測定ガスの出口である円形の素子室出口138a(内側ガス孔とも称する)が1つ形成されている。素子室出口138aの径は、特に限定するものではないが、例えば0.5mm〜2.6mmである。素子室出口138aは、ガス導入口111よりもセンサ素子110の先端方向(
図3の下方向)の位置に形成されている。換言すると、素子室出口138aは、センサ素子110の後端(
図3におけるセンサ素子110の図示しない上端)から見てガス導入口111よりも遠く(
図3の下方向)に位置している。すなわち、素子室出口138aは、ガス導入口111からの距離B1(
図3参照)が0mm未満の位置に形成されている。なお、距離B1は、センサ素子110の後端−先端方向(
図3の上下方向)の距離であり、先端から後端へ向かう方向(
図3の上方向)を正とする。また、距離B1は、センサ素子110の後端−先端方向で、ガス導入口111の開口の端部のうち最も素子室出口138aに近い部分と、素子室出口138aの端部のうち最もガス導入口111に近い部分と、の距離とする。なお、距離B1は後述する距離A1以下の値であってもよい。
【0024】
大径部132,第1円筒部134,第2円筒部136,先端部138は中心軸が同一である。大径部132は、ハウジング102に内周面が当接しており、これにより第1部材131がハウジング102に固定されている。第2部材135は、接続部137の外周面が外側保護カバー140の内周面と当接しており溶接などにより固定されている。なお、先端部138の外径を外側保護カバー140の先端部146の内径よりわずかに大きく形成し、先端部138を先端部146内に圧入することで、第2部材135を固定してもよい。
【0025】
第2円筒部136の内周面には、第1円筒部134の外周面に向けて突出してこの外周面に接している複数の突出部136aが形成されている。
図5に示すように、突出部136aは3個設けられ、第2円筒部136の内周面の周方向に沿って均等に配置されている。突出部136aは、略半球形状に形成されている。このような突出部136aが設けられていることで、突出部136aによって第1円筒部134と第2円筒部136との位置関係が固定されやすくなっている。また、例えばガスセンサ100の組立時に、ハウジング102に第1部材131を固定した後、突出部136aを介して第1部材131に第2部材135を取り付けることができる。そのため、その後のガスセンサ100の組立工程(例えば外側保護カバー140の取付時)などにおいて、第1部材131から第2部材135が脱落するのを抑制でき、ガスセンサ100を組み立てやすくなる。なお、突出部136aは、第1円筒部134の外周面を径方向内側に向けて押圧していることが好ましい。こうすれば、突出部136aによって第1円筒部134と第2円筒部136との位置関係をより確実に固定できる。突出部136aは、例えば第2円筒部136の外周面を中心に向かって押圧して内周面の一部を突出させることで形成してもよいし、突出部136aを有する形状の第2円筒部136を金型を用いて一体的に形成してもよい。なお、突出部136aは、第1円筒部134と第2円筒部136との位置関係を固定できればよく、3個に限らず2個や4個以上としてもよい。なお、第1円筒部134と第2円筒部136との固定が安定化しやすいため、突出部136aは3個以上とすることが好ましい。
【0026】
この内側保護カバー130は、第1部材131と第2部材135との隙間でありセンサ素子室124への被測定ガスの入口である素子室入口127(
図3〜5参照)を形成している。素子室入口127は、より具体的には、第1円筒部134の外周面と第2円筒部136の内周面との間の筒状の隙間(ガス流路)として形成されている。素子室入口127は、外側入口144aの配置された空間である第1ガス室122側の開口部である外側開口部128と、ガス導入口111の配置された空間であるセンサ素子室124側の開口部である素子側開口部129と、を有している。外側開口部128は、素子側開口部129よりもセンサ素子110の後端側(
図3の上側)に形成されている。そのため、外側入口144aからガス導入口111に達するまでの被測定ガスの経路中で、素子室入口127はセンサ素子110の後端側(
図3の上側)から先端側(
図3の下側)へ向かう流路となっている。また、素子室入口127は、センサ素子110の後端−先端方向に平行な流路(
図3における上下方向の流路)となっている。
【0027】
素子側開口部129は、ガス導入口111からの距離A1(
図4参照)が−1.5mm以上の位置に形成されている。距離A1は0mm以上としてもよいし、1.5mm超過としてもよい。なお、距離A1は、センサ素子110の後端−先端方向(
図3の上下方向)の距離であり、先端から後端へ向かう方向(
図3の上方向)を正とする。また、距離A1は、センサ素子110の後端−先端方向で、ガス導入口111の開口の端部のうち最も素子側開口部129に近い部分と、素子側開口部129の端部のうち最もガス導入口111に近い部分と、の距離とする。なお、
図3においてガス導入口がセンサ素子110の側面に開口する横穴であり、ガス導入口の開口の上端と下端との間に素子側開口部129が位置するときには、距離A1は値0mmとする。距離A1の上限は内側保護カバー130やセンサ素子室124の形状によって定まる。特に限定するものではないが、距離A1は7.5mm以下としてもよい。
【0028】
また、素子側開口部129は、ガス導入口111から距離A2(
図4参照)の位置に形成されている。なお、距離A2は、センサ素子110の先端−後端方向に垂直な方向の距離である。また、距離A2は、センサ素子110の後端−先端方向に垂直な方向で、ガス導入口111の開口の端部のうち最も素子側開口部129に近い部分と、素子側開口部129の端部のうち最もガス導入口111に近い部分と、の距離とする。距離A2が大きいほど、センサ素子110と素子側開口部129とが離れるため、センサ素子110の冷えを抑制する効果が高まる傾向になる。特に限定するものではないが、距離A2は例えば0.6mm〜3.0mmである。また、素子側開口部129は、センサ素子110の後端から先端へ向かう方向に開口し且つセンサ素子110の後端−先端方向に平行に開口している。すなわち、素子側開口部129は、
図3の下方向(真下)に開口している。そのため、センサ素子110は、素子側開口部129から素子室入口127を仮想的に延長した領域(
図3における素子側開口部129の真下の領域)以外の位置に、配置されている。これにより、素子側開口部129から流出した被測定ガスがセンサ素子110の表面に直接当たることを抑制でき、センサ素子110の冷えを抑制できる。
【0029】
外側開口部128は、外側入口144aから距離A3(
図4参照)の位置に形成されている。なお、距離A3は、センサ素子110の先端−後端方向(
図3の上下方向)の距離であり、距離A1と同様に先端から後端へ向かう方向を正とする。また、距離A3は、センサ素子110の後端−先端方向で、外側入口144aの開口の端部のうち最も外側開口部128に近い部分と、外側開口部128の端部のうち最も外側入口144aに近い部分と、の距離とする。なお、本実施形態では、外側入口144aとして横孔144bと縦孔144cとが形成されており、
図3の上下方向で素子側開口部129に最も近いのは横孔144bの上端である。そのため、
図4に示すように横孔144bの上端と外側開口部128との距離が距離A3となる。例えば、
図3の上下方向で縦穴144cの下端よりも下側に外側開口部128が位置するときには、縦穴144cの下端と外側開口部128との上下方向の距離が距離A3となる。なお、外側開口部128は、距離A3が正の値となる位置に形成されていてもよいし、負の値となる位置に形成されていてもよい。ただし、距離A3は値0以上であることが好ましい。換言すると、外側開口部128は、外側入口144aの少なくとも1以上よりもセンサ素子の後端側(
図3の上側)にあることが好ましい。すなわち本実施形態では、縦穴144cの下端(段差部143bの下面)と同じかそれよりも上側に外側開口部128が位置することが好ましい。
【0030】
第1円筒部134の外周面と第2円筒部136の内周面とは、素子側開口部129において円筒の径方向に距離A4だけ離れており、外側開口部128において円筒の径方向に距離A5だけ離れている。また、第1円筒部134の外周面と第2円筒部136の内周面とは、突出部136aと第1円筒部134とが接触する部分(
図5に示した断面)において距離A7だけ離れている。距離A4,距離A5,距離A7は、特に限定するものではないが、例えばそれぞれ0.3mm〜2.4mmである。距離A4,距離A5の値を調整することで、素子側開口部129の開口面積や外側開口部128の開口面積を調整することができる。本実施形態では、距離A4,距離A5,距離A7は等しいものとし、素子側開口部129の開口面積と外側開口部128の開口面積とが等しいものとした。なお、本実施形態では、距離A4(距離A5,距離A7)は、第1円筒部134の外径と第2円筒部136の内径との差の半分の値と同じである。また、素子側開口部129と外側開口部128との上下方向の距離、すなわち素子室入口127の上下方向の距離L(素子室入口127の経路長に相当)は、特に限定するものではないが、例えば0mm超過6.6mm以下である。
【0031】
センサ素子110の表面から保護カバー120までの最短距離を距離A6とすると(
図4参照)、距離A6が大きいほど、センサ素子110の冷えを抑制する効果が高まる傾向になる。これは、距離A6が小さい(センサ素子110と保護カバー120とが近い)ほど、センサ素子110のヒーターからの熱が保護カバー120に奪われやすくなるからである。なお、本実施形態では、保護カバー120のうちセンサ素子110に最も近いのは、内側保護カバー130の第1円筒部134の内周面である。そのため、
図4に示すように、距離A6はセンサ素子110の側面と第1円筒部134の内周面との径方向(
図4の左右方向)の距離となる。なお、距離A6はセンサ素子110から保護カバー120との最短距離であるため、保護カバーの形状によってはセンサ素子110と保護カバーとの軸方向(
図4の上下方向)の距離が距離A6となるなど、距離A6は
図4の左右方向の距離に限られない。特に限定するものではないが、距離A6は例えば0.6mm〜3.0mmである。また、保護カバー120の厚さが厚いほど、すなわち保護カバー120の熱容量が大きいほど、ヒーターからの熱が保護カバー120に奪われやすくなる傾向にある。本実施形態では、内側保護カバー130がセンサ素子110に近いため、内側保護カバー130の厚さが厚いほど、ヒーターからの熱が保護カバー120に奪われやすい。したがって、距離A6が大きいほど、また保護カバー120(特に内側保護カバー130)の厚さが薄いほど、センサ素子110の保温性は高まる傾向にある。
【0032】
外側保護カバー140は、
図3に示すように、円筒状の大径部142と、大径部142に接続しており大径部142よりも径の小さい円筒状の胴部143と、有底筒状で胴部143よりも内径の小さい先端部146とを有している。また、胴部143は、外側保護カバー140の中心軸方向(
図3の上下方向)に沿った側面をもつ側部143aと、胴部143の底部であり側部143aと先端部146とを接続する段差部143bと、を有している。なお、大径部142,胴部143,先端部146の中心軸はいずれも内側保護カバー130の中心軸と同一である。大径部142は、ハウジング102及び大径部132に内周面が当接しており、これにより外側保護カバー140がハウジング102に固定されている。胴部143は、第1円筒部134,第2円筒部136の外周を覆うように位置している。先端部146は、先端部138を覆うように位置していると共に、内周面が接続部137の外周面と当接している。この外側保護カバー140は、胴部143に形成され被測定ガスの外部からの入口である複数(本実施形態では12個)の外側入口144aと、先端部146に形成され被測定ガスの外部への出口である複数(本実施形態では6個)の外側出口147aとを有している。
【0033】
外側入口144aは、外側保護カバー140の外側(外部)と第1ガス室122とに通じる孔である(第1外側ガス孔とも称する)。外側入口144aは、側部143aに等間隔に形成された複数(本実施形態では6個)の横孔144bと、段差部143bに等間隔に形成された複数(本実施形態では6個)の縦孔144cとを有している(
図3,5,6参照)。この外側入口144a(横孔144b及び縦孔144c)は、円形(真円)に開けられた孔である。この12個の外側入口144aの径は、特に限定するものではないが、例えば0.5mm〜1.5mmである。なお、本実施形態では、複数の外側入口144aの径はいずれも同じ値であるものとした。なお、外側入口144aは、
図5に示すように、外側保護カバー140の周方向に沿って見たときに横孔144bと縦孔144cとが交互に等間隔に位置するように形成されている。すなわち、
図5における横孔144bの中心と外側保護カバー140の中心軸とを結んだ線と、その横孔144bに隣接する縦孔144cの中心と外側保護カバー140の中心軸とを結んだ線と、のなす角が30°(360°/12個)となっている。
【0034】
外側出口147aは、外側保護カバー140の外側(外部)と第2ガス室126とに通じる孔である(第2外側ガス孔とも称する)。この外側出口147aは、先端部146の側部に等間隔に形成された複数(本実施形態では3個)の横孔147bと、先端部146の底部に外側保護カバー140の周方向に沿って等間隔に形成された複数(本実施形態では3個)の縦孔147cとを有している(
図3,6参照)。この外側出口147a(横孔147b及び縦孔147c)は、円形(真円)に開けられた孔である。この6個の外側出口147aの径は、特に限定するものではないが、例えば0.5mm〜2.0mmである。なお、本実施形態では、複数の外側出口147aの径はいずれも同じ値であるものとした。なお、外側出口147aは、外側入口144aと同様に、外側保護カバー140の周方向に沿って見たときに横孔147bと縦孔147cとが交互に等間隔に位置するように形成されている。すなわち、外側保護カバー140の中心軸に垂直な断面で見たときに、横孔147bの中心と外側保護カバー140の中心軸とを結んだ線と、その横孔144bに隣接する縦孔144cの中心と外側保護カバー140の中心軸とを結んだ線と、のなす角が60°(360°/6個)となっている。
【0035】
第1ガス室122は、段差部133,第1円筒部134,第2円筒部136,大径部142,側部143a、段差部143bにより囲まれた空間である。センサ素子室124は、内側保護カバー130により囲まれた空間である。第2ガス室126は、先端部138と先端部146とに囲まれた空間である。なお、先端部146の内周面が接続部137の外周面と当接しているため、第1ガス室122と第2ガス室126とは直接には連通していない。また、先端部138の外側の底面と、先端部146の内側の底面とは、距離B2だけ離れている。距離B2が大きいほど、第2ガス室126の空間(容積)は大きくなる傾向にある。特に限定するものではないが、距離B2は例えば1.9mm〜9.0mmである。
【0036】
ここで、ガスセンサ100の保護カバー120内の被測定ガスの流れについて説明する。配管20内を流れる被測定ガスは、まず、複数の外側入口144a(横孔144b,縦孔144c)のいずれかを通って第1ガス室122内に流入する。次に、被測定ガスは、第1ガス室122から外側開口部128を経て素子室入口127に流入し、素子室入口127を経て素子側開口部129から流出して、センサ素子室124に流入する。ここで、素子室入口127を含む外部からセンサ素子室124へのガス流路(外側入口144a,第1ガス室122,素子室入口127)を、入口側ガス流路150と称する(
図7のハッチング部分参照)。素子側開口部129からセンサ素子室124内に流入した被測定ガスは、少なくとも一部がセンサ素子110のガス導入口111に到達する。このときの、センサ素子室124のうち素子室入口127(素子側開口部129)からガス導入口111までの被測定ガスの最短流路を、素子室内流路152と称する(
図7のハッチング部分参照)。
図7に示すように、素子室内流路152の上端と素子側開口部129とは上下方向の位置が同じであり、素子室内流路152の下端とガス導入口111とは上下方向の位置が同じである。このように、素子室内流路152は、多孔質保護層110aの厚さを考慮せずに定める。したがって、本実施形態では、素子室内流路152の上下の幅は距離A1と等しい。
【0037】
また、センサ素子室124内の被測定ガスは、素子室出口138aを通って第2ガス室126に流入し、そこから複数の外側出口147aのいずれかを通って外部に流出する。ここで、素子室出口138aを含むセンサ素子室124から外部へのガス流路(素子室出口138a,第2ガス室126,外側出口147a)を、出口側ガス流路154と称する(
図7のハッチング部分参照)。
【0038】
ここで、保護カバー120は、入口側ガス流路150に面する部分の表面積S1と、素子室内流路152に面する部分の表面積S2と、の和であるガス被触表面積Sが450mm
2以上1145mm
2以下となるように、大きさや形状などが調整されている。なお、
図7では、保護カバー120のうち入口側ガス流路150に面する部分及び素子室内流路152に面する部分を実線で示し、それ以外の部分を破線で示している。
図7からも分かるように、表面積S1は、外側入口144a(横孔144b,縦孔144c)の内周面の面積と、大径部142,胴部143,第1部材131,第2部材135のうち第1ガス室122内に露出した部分の面積と、第1部材131,第2部材135のうち素子室入口127内に露出した部分の面積と、の和である。表面積S2は、第1部材131,第2部材135のうち素子室内流路152内に露出した部分の面積である。より具体的には、表面積S2は、第1円筒部134の下端面の面積と、第2円筒部136及び接続部137のうち素子室内流路152内に露出した部分の面積と、の和である。ガス被触表面積Sは、被測定ガスが保護カバー120内に流入してガス導入口111に到達するまでに接触する保護カバー120の表面積の大きさに関する値である。
【0039】
また、ガスセンサ100は、面積比αが値12以上値35以下となるように素子室入口127,素子室出口138a,外側入口144a,外側出口147aの形状,大きさ,数などを調整することが好ましい。面積比α=断面積G2×断面積G3×断面積G4/断面積G1である。断面積G1[mm
2]は、外側入口144aの各々における被測定ガスの流れに垂直な断面積の和である。本実施形態では、12個の外側入口144a(横孔144b,縦孔144c)の径はいずれも同じであるため、これらの半径をr1とすると、断面積G1=(π×半径r1×半径r1)×12個となる。断面積G2[mm
2]は、素子室入口127における被測定ガスの流れに垂直な断面積である。なお、本実施形態では、突出部136aが形成されていることで、素子室入口127は被測定ガスの流れに垂直な断面積が一定ではない(被測定ガスの流れ方向に沿って断面積が変化する部分がある)。このような場合、断面積G2は、素子室入口127の断面積の最小値とする。例えば、素子室入口127のうち素子側開口部129の部分における被測定ガスの流れに垂直な断面積よりも、突出部136aと第1円筒部134とが接触する部分における被測定ガスの流れに垂直な断面積(
図5で示した素子室入口127の断面の面積)の方が小さく、この断面積が最小値となる。そのため、
図5で示した素子室入口127の断面の面積を断面積G2とする。断面積G3[mm
2]は、素子室出口138aにおける被測定ガスの流れに垂直な断面積である。本実施形態では、素子室出口138aの半径をr3とすると、断面積G3=(π×半径r3×半径r3)となる。断面積G4[mm
2]は、外側出口147aの各々における被測定ガスの流れに垂直な断面積の和である。本実施形態では、6個の外側出口147a(横孔147b,縦孔147c)の径はいずれも同じであるため、これらの半径をr4とすると、断面積G4=(π×半径r4×半径r4)×6個となる。こうして求められる面積比αは、外部から保護カバー120内への入口の大きさを表す断面積G1が小さいほど、大きい値となる。また、面積比αは、保護カバー120内での被測定ガスの流速を律速するセンサ素子室124の出入口の大きさを表す断面積G2,G3や、保護カバー120内から外部への出口の大きさを表す断面積G4が大きいほど、大きい値となる。そのため、面積比αは、保護カバー120内に流入した被測定ガスの流れやすさ(流速)を表す値となっている。なお、特にこれに限定するものではないが、断面積G1は例えば4〜15mm
2であり、断面積G2は例えば2〜35mm
2であり、断面積G3は例えば0.5〜5mm
2であり、断面積G4は例えば2.5〜7.5mm
2である。また、面積比αは値18以上がより好ましい。断面積G2は40mm
2以下であってよい。
【0040】
なお、本実施形態では、素子室入口127が1つであったが、素子室入口が複数形成されている場合は、断面積G1,G4と同様に素子室入口の各々の断面積の和を断面積G2とする。断面積G3についても同様である。また、本実施形態では、外側入口144aは被測定ガスの流れに垂直な断面積が一定である(被測定ガスの流れ方向に沿って断面積が変化しない)が、断面積が一定でない場合は、断面積G2と同様に外側入口の各々の断面積の最小値の和を断面積G1とする。断面積G3,G4についても同様である。
【0041】
次に、こうして構成されたガスセンサ100によるアンモニア濃度の検出について説明する。上述したように被測定ガスが入口側ガス流路150及びセンサ素子室124を通過してガス導入口111からセンサ素子110の内部に流入すると、センサ素子110は、この被測定ガスのうちアンモニアをNOxに変換し、変換後のNOx濃度に応じた電気信号(電圧又は電流)を発生させる。この電気信号に基づいて、エンジンECU6は被測定ガス中のアンモニア濃度を検出する。また、センサ素子110は、所定の温度を保つように内部のヒーターの出力が例えばエンジンECU6によって制御される。ここで、ガスセンサ100に流入する前の被測定ガスは、SCR5でNOxが還元されて無毒化されているためNOxを含んでいない。しかし、被測定ガスは過剰のアンモニアを含んでおり、そのアンモニアがセンサ素子110内で酸化されてNOxに変換されることで、アンモニア由来のNOxが発生する。したがって、NOx濃度を測定することにより、被測定ガス中のアンモニア濃度を検出することができる。
【0042】
ここで、上述したように保護カバー120はクロムとニッケルとの少なくとも一方を含んでおり、これらはアンモニアの分解性を有する。そのため、被測定ガスが入口側ガス流路150及びセンサ素子室124を通過する間に、保護カバー120と接触した被測定ガス中のアンモニア(NH
3)が、窒素(N
2)又はNOxと、水素(H
2)又は水(H
2O)と、に分解される場合がある。このように保護カバー120に起因するアンモニアの分解が生じると、ガス導入口111に到達する前に被測定ガス中のアンモニア濃度が変化してしまい、アンモニア濃度の検出精度が低下してしまう。しかし、本実施形態のガスセンサ100は、ガス被触表面積Sが1145mm
2以下であることで、被測定ガスが保護カバー120内を通過してガス導入口111に到達するまでに保護カバー120と接触する面積が十分小さくなる。したがって、保護カバー120による被測定ガス中のアンモニアの分解を抑制でき、アンモニア濃度の検出精度の低下を抑制できる。また、ガス被触表面積Sが450mm
2以上では、被測定ガスが保護カバー120内を通過してガス導入口111に到達するまでの被測定ガスの経路(入口側ガス流路150及び素子室内流路152)が単純化してしまうことによる不具合を抑制できる。被測定ガスの経路が単純化することによる不具合としては、例えば外部の被毒物質がセンサ素子110に到達しやすくなることや、被測定ガス中の水分がセンサ素子110に付着しやすくなりクラックが生じることなどが挙げられる。なお、ガス被触表面積Sが小さいほど、保護カバー120による被測定ガス中のアンモニアの分解を抑制する効果は高まる傾向にある。この観点から、例えば、ガス被触表面積Sは1100mm
2以下、1050mm
2以下、1040mm
2以下、1000mm
2以下、950mm
2以下、900mm
2以下、850mm
2以下、800mm
2以下であってもよい。また、ガス被触表面積Sが大きいほど、被測定ガスの経路が単純化してしまうことによる不具合を抑制できる傾向にある。この観点から、例えば、ガス被触表面積Sは500mm
2以上,550mm
2以上,600mm
2以上、650mm
2以上がより好ましく、700mm
2以上、750mm
2以上であってもよい。
【0043】
以上詳述した本実施形態によれば、ガス被触表面積Sを1145mm
2以下とすることで、保護カバー120による被測定ガス中のアンモニアの分解を抑制できる。また、ガス被触表面積Sが450mm
2以上では、被測定ガスが保護カバー120内を通過してセンサ素子110のガス導入口111に到達するまでの被測定ガスの経路が単純化してしまうことによる不具合を抑制できる。
【0044】
また、保護カバー120は、ガス導入口111からの距離A1が−1.5mm以上の位置に素子室入口127が形成され、ガス導入口111よりもセンサ素子110の先端方向(
図3の下方向)の位置に素子室出口138aが形成されている。ここで、素子室出口138aがガス導入口111よりもセンサ素子110の先端方向に位置しており(=距離B1が0mm未満である)、距離A1が−1.5mm未満である場合、センサ素子室124のうちガス導入口111周辺は被測定ガスが流れにくくなり、被測定ガスが滞留しやすい。そして、被測定ガスが滞留すると、被測定ガスと保護カバー120との接触時間が長くなり被測定ガス中のアンモニアの分解が生じやすい。距離A1が−1.5mm以上では、被測定ガスが流れやすくなり、保護カバー120による被測定ガス中のアンモニアの分解を抑制できる。
【0045】
さらに、保護カバー120は、1つの素子室出口138aを含む出口側ガス流路154を形成し、内側保護カバー130と内側保護カバー130の外側に配設された外側保護カバー140とを有している。内側保護カバー130は、センサ素子室124と、素子室入口127と、素子室出口138aとを形成している。外側保護カバー140は、入口側ガス流路150の一部を構成する複数の外側入口144aと、出口側ガス流路154の一部を構成する複数の外側出口147aと、を形成している。外側保護カバー140及び内側保護カバー130は、両者の間の空間として入口側ガス流路150の一部であり外側入口144aと素子室入口127との間に位置する第1ガス室122を形成している。外側保護カバー140及び内側保護カバー130は、両者の間の空間として出口側ガス流路154の一部であり外側出口147aと素子室出口138aとの間に位置し第1ガス室122と直接には連通していない第2ガス室126を形成している。
【0046】
さらにまた、内側保護カバー130は、素子室入口127よりもセンサ素子110の先端方向に素子室出口138aを形成している。外側保護カバー140は、外側入口144aが形成された円筒状の胴部143と、外側入口144aよりもセンサ素子110の先端方向に位置する外側出口147aが形成され胴部143よりも内径の小さい有底筒状の先端部146と、を有している。外側保護カバー140及び内側保護カバー130は、胴部143と内側保護カバー130との間に第1ガス室122を形成しており、先端部146と内側保護カバー130との間に第2ガス室126を形成している。
【0047】
そしてまた、面積比αが値12以上値35以下となっている。面積比αが大きいほど、外側入口144aの断面積G1に対して素子室入口127,素子室出口138a,外側出口147aの断面積G2,G3,G4が大きい傾向にあることになり、被測定ガスが保護カバー120内を流れやすくなる。そして、面積比αが値12以上では、被測定ガスが保護カバー120内を十分流れやすくなり、被測定ガスがセンサ素子110のガス導入口111に到達するまでに保護カバー120と接触する時間が短くなる。したがって、保護カバー120による被測定ガス中のアンモニアの分解を抑制でき、アンモニア濃度の検出精度の低下を抑制できる。また、面積比αが値35以下では、被測定ガスの流速が速過ぎることによるセンサ素子110の冷えを抑制でき、センサ素子110のクラックの発生を抑制できる。なお、面積比αが大きいほど、保護カバー120による被測定ガス中のアンモニアの分解を抑制する効果は高まる傾向にある。この観点から、例えば、面積比αは値12.79以上が好ましく、値13以上がより好ましく、値18以上がさらに好ましい。また、面積比αが小さいほど、センサ素子110の冷えを抑制する効果が高まる傾向にある。この観点から、例えば、面積比αは値34.20以下が好ましく、値30以下がより好ましく、値27以下がさらに好ましく、値24以下が一層好ましく、値20以下、値19.70以下であってもよい。
【0048】
そしてまた、保護カバー120は、素子室入口127のうちセンサ素子室124側の開口部である素子側開口部129がセンサ素子110の後端から先端へ向かう方向(
図3の下方向)に開口するように素子室入口127を形成している。これにより、素子側開口部129から流出した被測定ガスがセンサ素子110の表面(ガス導入口111以外の表面)に垂直に当たることを抑制したり、センサ素子110の表面上を長い距離通過してからガス導入口111に到達することを抑制したりできる。従って、センサ素子110の冷えを抑制できる。しかも、素子側開口部129の開口の向きを調整することでセンサ素子110の冷えを抑制しており、被測定ガスの流量や流速を減らしているわけではないため、ガス濃度検出の応答性の低下も抑制できる。これらにより、センサ素子110の応答性と保温性とを両立することができる。しかも、素子側開口部129は、センサ素子110の後端−先端方向に平行に開口しているため、素子側開口部129から流出した被測定ガスがセンサ素子110の表面に直接当たることを抑制でき、センサ素子110の冷えをより抑制できる。
【0049】
そしてまた、保護カバー120は、アンモニアの分解性を有する物質としてクロムとニッケルとの少なくとも一方を含む金属で形成されている。保護カバー120がクロムとニッケルとの少なくとも一方を含むことで、保護カバー120の耐食性を高めることができる。
【0050】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しうることは言うまでもない。
【0051】
例えば、保護カバー120の形状は上述した実施形態に限られない。
図8は変形例のガスセンサ200の縦断面図であり、
図9は
図8のE−E断面図である。なお、
図8,
図9では、ガスセンサ100と同じ構成要素については同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
図8,9に示すように、ガスセンサ200は、内側保護カバー130の代わりに内側保護カバー230を備えている。内側保護カバー230は、1つの部材からなるものであり、大径部132と、円筒状で大径部132よりも径の小さい第1胴部234と、円筒状で第1胴部234よりも径の小さい第2胴部236と、有底筒状で第2胴部236よりも径の小さい先端部238とを有している。大径部132と第1胴部234とは、段差部133により接続されている。また、内側保護カバー230は、第1胴部234と第2胴部236とを接続する段差部235と、第2胴部236と先端部238とを接続する段差部237とを有している。なお、大径部132,第1胴部234,第2胴部236,先端部238は中心軸が同一である。第1胴部234,第2胴部236は、センサ素子110の側面を覆うように位置している。第1胴部234には、長方形に開口した複数(ガスセンサ200では6個)の貫通孔(横孔)である素子室入口227と、素子室入口227を経てセンサ素子室124に流入する被測定ガスの流れを規制する板状の規制部材227aと、が形成されておいる。素子室入口227は、
図9に示すように、第1胴部234の外周に沿って等間隔に形成されている。素子室入口227は、センサ素子110の先端−後端方向に垂直な方向のガス流路として形成されている。また、素子室入口227は、第1胴部234の中心軸に垂直な断面で見て中心軸に向かう方向(径方向)のガス流路として形成されている。なお、素子室入口227のうち第1胴部234の外側の開口が外側開口部228であり、内側の開口が素子側開口部229である。規制部材227aは、
図9に示すように、複数の素子室入口227と1対1に対応している。規制部材227aは対応する素子室入口227とセンサ素子110との間に位置するように形成されている。複数の規制部材227aは、回転対称(本実施形態では6回対称)となるように形成されている。また、規制部材227aの規制面と素子室入口227の外側開口面とのなす角θ1(
図9参照)は、素子室入口227の素子側開口部229を通過する被測定ガスがセンサ素子110に直接向かうことを規制するような角度に設定されている。こうすることで、素子側開口部229から流出した被測定ガスがセンサ素子110の表面に直接当たりにくくなるため、センサ素子110の冷えを抑制できる。なす角θ1は、例えば20°以上70°以下としてもよく、25°以上67.5°以下としてもよい。先端部238の側面には、センサ素子室124と第2ガス室126とに通じる孔である素子室出口238aが等間隔に4個形成されている。
【0052】
外側保護カバー240は、外側入口144a及び外側出口147aに代えて外側入口244a及び外側出口247aが形成されている点以外は、外側保護カバー140と同じ構成をしている。外側入口244aは、横孔144b及び縦孔144cを有さない代わりに複数(ガスセンサ200では6個)の角孔244dを有している。角孔244dは、側部143aと段差部143bとの境界の角部に形成され、角孔244dの外部開口面(
図8左下拡大図の直線a)と段差部143bの底面(下面)(
図8左下拡大図の直線b)とのなす角θ2が10°〜80°の範囲の値(
図8では45°)となっている。外側出口247aは、外側入口244aと同様に複数(ガスセンサ200では6個)の角孔247dを有している。角孔247dは、先端部146の側部と底部との境界の角部に形成されている。角孔247dの傾きは、角孔244dのなす角θ2と同様に45°となっている。なお、変形例のガスセンサ200における距離A1は、
図8に示すように、ガス導入口111から素子側開口部229の下端までの上下方向の距離となる。同様に距離A2は、センサ素子110の端部(
図8の左端)から素子側開口部229までの左右方向の距離となる。距離A6は、センサ素子110と第2胴部236の内周面との最短距離となる。保護カバー120は、外側入口244a,第1ガス室122,素子室入口227で構成された入口側ガス流路250を形成している。内側保護カバー230,外側保護カバー240のうちこの入口側ガス流路250に面する部分の面積の和が表面積S1となる。また、センサ素子室124のうち素子室入口227(素子側開口部229)の上端からガス導入口111までの被測定ガスの最短流路が素子室内流路252となる(
図8のハッチング部分参照)。内側保護カバー230のうちこの素子室内流路252に面する部分の面積の和が表面積S2となる。なお、
図8の右上拡大図では、内側保護カバー230のうち素子室内流路252に面する部分を実線で示し、それ以外の部分を破線で示している。
図8の右上拡大図からもわかるように、表面積S2には、規制部材227aのうち素子室入口227に対向する面(規制面)の面積や、規制部材227aの下面の面積が含まれる。保護カバー120は、素子室出口238a,第2ガス室126,外側出口247aで構成された出口側ガス流路254を形成している。このようなガスセンサ200においても、上述した実施形態と同様の特徴により、同様の効果が得られる。例えば、ガス被触表面積Sを450mm
2以上1145mm
2以下とすることで、保護カバー120による被測定ガス中のアンモニアの分解を抑制しつつ、被測定ガスの経路が単純化してしまうことによる不具合を抑制できる。
【0053】
図10は変形例のガスセンサ300の縦断面図である。なお、
図10では、ガスセンサ100又はガスセンサ200と同じ構成要素については同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
図10に示すように、ガスセンサ300は、内側保護カバー130の代わりに内側保護カバー330を備えている。内側保護カバー330は、第1部材331と、第2部材335と、を備えている。第1部材331は、第1円筒部134の代わりに第1円筒部134よりも軸方向長さの短い第1円筒部334を備える点以外は、
図3の第1部材131と同様の構成を有している。第1円筒部334には、
図8,9で示したガスセンサ200と同様に複数(6個)の素子室入口227及び複数(6個)の規制部材227aが形成されている。第2部材335は、第2円筒部136及び接続部137の代わりに第2円筒部336及び折り返し部339を備える点以外は、
図3の第2部材135と同様の構成を有している。第2円筒部336は、第2円筒部136よりも径が小さく、内周面が第1円筒部334の外周面に接触している。そのため、第1円筒部334と第2円筒部336との間には被測定ガスの流路は形成されておらず、被測定ガスは素子室入口227を介して第1ガス室122からセンサ素子室124へ流入する。折り返し部339は、第2円筒部336の上端の径を広げて下方向に折り返した形状をしている。折り返し部339は、第1ガス室122内に流入した水などがセンサ素子室124へ流入するのを抑制する役割を果たす。外側保護カバー340は、外側入口144a及び外側出口147aに代えて外側入口344a及び外側出口347aが形成されている点以外は、外側保護カバー140と同じ構成をしている。外側入口344aは、縦孔を有さず、胴部143に等間隔に形成された複数(6個)の横孔344bを有している。外側出口347aは、縦孔を有さず、先端部146の側面に等間隔に形成された複数(6個)の横孔347bを有している。なお、変形例のガスセンサ300における距離A1は、
図10に示すように、ガス導入口111から素子側開口部229の下端までの上下方向の距離となる。保護カバー120は、外側入口344a,第1ガス室122,素子室入口227で構成された入口側ガス流路350を形成している。内側保護カバー330,外側保護カバー340のうちこの入口側ガス流路350に面する部分の面積の和が表面積S1となる。また、センサ素子室124のうち素子室入口227(素子側開口部229)の上端からガス導入口111までの被測定ガスの最短流路が素子室内流路352となる(
図10のハッチング部分参照)。内側保護カバー330のうちこの素子室内流路352に面する部分の面積の和が表面積S2となる。なお、
図10の右上拡大図では、内側保護カバー330のうち素子室内流路352に面する部分を実線で示し、それ以外の部分を破線で示している。
図10の右上拡大図からもわかるように、表面積S2には、規制部材227aのうち素子室入口227に対向する面(規制面)の面積や、規制部材227aの下面の面積が含まれる。保護カバー120は、素子室出口138a,第2ガス室126,外側出口347aで構成された出口側ガス流路254を形成している。このようなガスセンサ300においても、上述した実施形態と同様の特徴により、同様の効果が得られる。例えば、ガス被触表面積Sを450mm
2以上1145mm
2以下とすることで、保護カバー120による被測定ガス中のアンモニアの分解を抑制しつつ、被測定ガスの経路が単純化してしまうことによる不具合を抑制できる。
【0054】
上記のガスセンサ200,300に限らず、保護カバー120の形状や素子室入口127,素子室出口138a,外側入口144a,外側出口147aの形状,個数,配置などは、適宜変更してもよい。例えば、素子室入口127は第1部材131と第2部材135との隙間としたが、これに限らず、素子室入口はセンサ素子室124への入口であればどのような形状であってもよい。例えば素子室入口は内側保護カバー130に形成された貫通孔であってもよい。なお、素子室入口が貫通孔である場合も、素子室入口がセンサ素子110の後端側から先端側へ向かう流路を形成していてもよい。例えば素子室入口が縦孔や
図3の上下方向から傾斜した孔であってもよい。また、素子室入口の数は1つに限らず複数でもよい。素子室出口138a,外側入口144a,外側出口147aについても、孔に限らず保護カバー120を構成する複数の部材の隙間であってもよいし、各々の数は1以上であればよい。また、外側入口144aは横孔144bと縦孔144cとを有するものとしたが、いずれか一方のみを有するものとしてもよい。また、横孔144b及び縦孔144cに加えて又は代えて、側部143aと段差部143bとの境界の角部に角孔を形成してもよい。素子室入口127,素子室出口138a,外側出口147aについても、同様に横孔,縦孔,角孔のいずれか1以上を有するものとしてもよい。
【0055】
上述した実施形態では、突出部136aは第2円筒部136の内周面に形成されているが、これに限られない。第1円筒部134の外周面と第2円筒部136の内周面との少なくとも一方の面に、他方の面に向けて突出してその面に接する複数の突出部が形成されていればよい。また、上述した実施形態では、
図3〜5に示すように、第2円筒部136のうち突出部136aが形成されている部分の外周面は内側に窪んでいるが、これに限らず外周面が窪んでいなくてもよい。また、突出部136aは半球形状に限らずどのような形状であってもよい。なお、第1円筒部134の外周面及び第2円筒部136の内周面に突出部136aが形成されていなくてもよい。
【0056】
上述した実施形態では、素子室入口127は第1円筒部134の外周面と第2円筒部136の内周面との間の筒状の隙間としたが、これに限られない。例えば、第1円筒部の外周面と第2円筒部の内周面との少なくとも一方に凹部(溝)が形成されており、素子室入口は、凹部により形成された第1円筒部と第2円筒部との隙間としてもよい。
図11は、変形例の素子室入口427を示す断面図である。
図11に示すように、第1円筒部434の外周面と第2円筒部436の内周面とは接しており、第1円筒部434の外周面には複数(
図11では4個)の凹部434aが等間隔に形成されている。この凹部434aと第2円筒部436の内周面との間の隙間が、素子室入口427となっている。
【0057】
上述した実施形態では、素子室入口127は、センサ素子110の後端−先端方向に平行な流路(
図3における上下方向の流路)としたが、これに限られない。例えば、素子室入口は、センサ素子110の後端側から先端側に向かうにつれてセンサ素子110に近づくように後端−先端方向から傾斜した流路としてもよい。
図12は、この場合の変形例のガスセンサ500の縦断面図である。
図12では、ガスセンサ100と同じ構成要素については同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
図12に示すように、ガスセンサ500は、内側保護カバー130に代えて内側保護カバー530を備えている。内側保護カバー530は、第1部材531と、第2部材535と、を備えている。第1部材531は、第1部材131と比べて、第1円筒部134を備えない代わりに、円筒状の胴部534aと、センサ素子110の後端側から先端側に向かうにつれて縮径する円筒状の第1円筒部534bと、を備えている。第1円筒部534bは、センサ素子110の後端側の端部で胴部534aと接続されている。第2部材535は、第2部材135と比べて、第2円筒部136及び接続部137を備えない代わりに、センサ素子110の後端側から先端側に向かうにつれて縮径する円筒状の第2円筒部536を備えている。第2円筒部536は、先端部138と接続されている。第1円筒部534bの外周面と第2円筒部536の内周面とは接しておらず、両者により形成される隙間が素子室入口527となっている。素子室入口527は、第1ガス室122側の開口部である外側開口部528と、センサ素子室124側の開口部である素子側開口部529と、を有している。この素子室入口527は、第1円筒部534b及び第2円筒部536の形状によって、センサ素子110の後端側から先端側に向かうにつれてセンサ素子110に近づくように(内側保護カバー530の中心軸に近づくように)後端−先端方向から傾斜した流路となっている。同様に、素子側開口部529は、センサ素子110の後端側から先端側に向かうにつれてセンサ素子110に近づくように後端−先端方向から傾斜して開口している(
図12の拡大図参照)。このように素子室入口527が傾斜した流路である場合や素子側開口部529が傾斜して開口している場合でも、素子側開口部529からセンサ素子室124に流出する被測定ガスの流れる向きはセンサ素子110の後端−先端方向から傾斜した向きになる。これにより、上述した実施形態の素子室入口127や素子側開口部129と同様の効果が得られる。すなわち、センサ素子110の表面(ガス導入口以外の表面)に垂直に当たることを抑制したり、センサ素子110の表面上を長い距離通過してからガス導入口111に到達することを抑制したりできる。これにより、センサ素子110の冷えを抑制できる。また、素子室入口527の幅は、センサ素子110の後端側から先端側に向かうにつれて狭くなっている。そのため、素子側開口部529の開口面積は外側開口部528の開口面積よりも小さい。換言すると、素子室入口527は、
図4を用いて説明した距離A5よりも距離A4の方が小さくなっている。これにより、被測定ガスが外側開口部528から流入して素子側開口部529から流出することで流入時と比べて流出時の被測定ガスの流速が高まる。そのため、ガス濃度検出の応答性を向上させることができる。なお、素子室入口527を必ずしもセンサ素子110の後端−先端方向から傾斜させなくとも、素子側開口部529の開口面積が外側開口部528の開口面積よりも小さければ、それにより応答性を向上させる効果が得られる。
【0058】
なお、変形例のガスセンサ500における距離A1は、
図12に示すように、ガス導入口111から素子側開口部529の下端までの上下方向の距離となる。また、ガスセンサ500の保護カバー120は、外側入口144a,第1ガス室122,素子室入口527で構成された入口側ガス流路550を形成している。内側保護カバー530,外側保護カバー140のうちこの入口側ガス流路550に面する部分の面積の和が表面積S1となる。また、センサ素子室124のうち素子室入口527(素子側開口部529)の上端からガス導入口111までの被測定ガスの最短流路が素子室内流路552となる(
図12のハッチング部分参照)。内側保護カバー530のうちこの素子室内流路552に面する部分の面積の和が表面積S2となる。なお、
図12の拡大図では、内側保護カバー530のうち素子室内流路552に面する部分を実線で示し、それ以外の部分を破線で示している。
図12の右上拡大図からもわかるように、表面積S2には、第1円筒部534bの下面の面積や第2円筒部536の内周面の一部の面積が含まれる。
【0059】
上述した実施形態では、ガス導入口111は、センサ素子110の先端面(
図3におけるセンサ素子110の下面)に開口しているものとしたが、これに限られない。例えば、センサ素子110の側面(
図5におけるセンサ素子110の上下左右の面)に開口していてもよい。また、保護カバー120に素子室入口が複数形成されている場合(例えば
図8及び
図10に示したガスセンサ200,300の素子室入口227)において、複数の素子室入口のうち1以上が他の素子室入口と比べてセンサ素子110の後端−先端方向にずれた位置に形成されていてもよい。
図13は、変形例のガスセンサ600の縦断面図である。
図13では、ガスセンサ200と同じ構成要素については同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
図13に示すように、ガスセンサ600は、センサ素子110がガス導入口111を備えない代わりに側面に開口したガス導入口611を備える点、内側保護カバー230が素子室入口227及び規制部材227aを備えない代わりに複数の素子室入口627を備える点、以外は
図8のガスセンサ200と同様の構成をしている。素子室入口627は、第1ガス室122とセンサ素子室124とに通じる孔である。素子室入口627は、第1胴部234に形成された複数の上側横孔627aと、第1胴部234のうち上側横孔627aよりもセンサ素子110の先端方向(
図13の下方向)に形成された複数の下側横孔627bとを有している。変形例のガスセンサ600における距離A1は、
図13に示すように、下側横孔627bの下端からガス導入口611の上端までの上下方向の距離となる。距離B1は、ガス導入口611の下端から素子室出口238aの上端までの上下方向の距離となる。また、ガスセンサ600の保護カバー120は、外側入口244a,第1ガス室122,素子室入口627(上側横孔627a,下側横孔627b)で構成された入口側ガス流路650を形成している。内側保護カバー630,外側保護カバー240のうちこの入口側ガス流路650に面する部分の面積の和が表面積S1となる。また、センサ素子室124のうち素子室入口627の上端(上側横孔627aの上端)からガス導入口611の下端までの被測定ガスの最短流路が素子室内流路652となる(
図13のハッチング部分参照)。内側保護カバー630のうちこの素子室内流路652に面する部分の面積の和が表面積S2となる。
【0060】
上述した実施形態では、保護カバー120は内側保護カバー130と外側保護カバー140とを備えるものとしたが、これに限られない。保護カバー120はセンサ素子110の先端及びガス導入口111が内部に配置されるセンサ素子室と、センサ素子室への入口である1以上の素子室入口を含む外部からセンサ素子室への入口側ガス流路と、を形成していればよい。例えば、保護カバー120が内側保護カバー130と外側保護カバー140との他に両者の間に配置された中間保護カバーを備えていてもよい。
【0061】
上述した実施形態では、距離A1が−1.5mm以上であり、ガス導入口111よりもセンサ素子110の先端方向の位置に素子室出口138aが形成されている(距離B1が0mm未満である)が、これに限られない。例えば、距離A1が−1.5mm未満の位置や−5mm以上1.5mm以下の位置に素子室入口127(素子側開口部129)が形成されていてもよい。ただし、被測定ガスが流れやすくなり、保護カバー120による被測定ガス中のアンモニアの分解を抑制できるため、距離A1が−1.5mm以上且つ距離B1が0mm未満であることが好ましい。
【0062】
上述した実施形態では、保護カバー120はクロムとニッケルとの少なくとも一方を含む金属(例えばステンレス鋼)で形成されているが、これに限られない。保護カバー120は、アンモニアの分解性を有する物質を含んでいればよい。また、内側保護カバー130と外側保護カバー140とは、各々がアンモニアの分解性を有する物質を含んでいればよく、異なる材質であってもよい。同様に、第1部材131と第2部材135とが異なる材質であってもよい。
【0063】
上述した実施形態では、センサ素子110は多孔質保護層110aを備えているが、多孔質保護層110aを備えていなくてもよい。
【0064】
上述した実施形態では、センサ素子110は、アンモニアをNOxに変換し変換後のNOx濃度に応じた電気信号を発生させることでアンモニア濃度を検出するが、これに限られない。例えば、センサ素子110内部でアンモニアを分解してH
2とN
2とを発生させ、そのうちのH
2をプロトンポンプ(特許第3511468号公報の段落0103,0104参照)によって汲み出し、その際のポンプ電流を検出することによってアンモニア濃度を求めてもよい。また、上述した実施形態では、センサ素子110は被測定ガス中のアンモニアの濃度を検出する機能を有するが、これに限らず被測定ガス中の所定のガス濃度を検出する機能を有すればよい。例えば、センサ素子110が被測定ガス中のNOx濃度や酸素濃度を検出する機能を有していてもよい。センサ素子110がNOx濃度を検出する場合、ガス導入口111に到達する前に被測定ガス中のアンモニアが分解されてNOxが生じると、検出精度が低下する。センサ素子110が酸素濃度を検出する場合、ガス導入口111に到達する前に被測定ガス中のアンモニアの分解により被測定ガス中の酸素が消費されると、検出精度が低下する。そのため、センサ素子110がNOx濃度や酸素濃度を検出する場合でも、上述した実施形態と同様に保護カバー120によるアンモニアの分解を抑制することで被測定ガスの検出精度の低下を抑制できる。
【実施例】
【0065】
以下には、ガスセンサを具体的に作製した例を実施例として説明する。実験例2〜5,8〜12が本発明の実施例に相当し、実験例1,6,7が比較例に相当する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0066】
[実験例1]
図3〜7に示したガスセンサ100のうち保護カバー120を備えない状態のガスセンサを実験例1とした。
【0067】
[実験例2]
図3〜7に示したガスセンサ100を実験例2とした。具体的には、内側保護カバー130の第1部材131は、板厚が0.3mm、軸方向長さが10.2mm、大径部132の軸方向長さが1.8mm、大径部132の外径が14.4mm、第1円筒部134の軸方向長さが8.4mm、第1円筒部134の外径が7.7mmとした。第2部材135は、板厚が0.3mm、軸方向長さが11.5mm、第2円筒部136の軸方向長さが4.5mm、第2円筒部136の内径が9.7mm、先端部138の軸方向長さが4.9mm、先端部138の底面の径が3.0mmとした。素子室入口127に関して、距離A1は0.59mm、距離A2は1.5mm、距離A3は3.1mm、距離A4,A5,A7はいずれも1.0mm、距離A6は1.2mm、距離Lは4mmとした。断面積G2は22.3mm
2とした。素子室出口138aの径は1.5mmとした。距離B1は−6.3mmとした(断面積G3=1.77mm
2)。外側保護カバー140は、板厚が0.4mm、軸方向長さが24.35mm、大径部142の軸方向長さが5.85mm、大径部142の外径が15.2mm、胴部143の軸方向長さが8.9mm(胴部143の上端から段差部143bの上面までの軸方向長さが8.5mm)、胴部143の外径が14.6mm、先端部146の軸方向長さが9.6mm、先端部146の外径が8.7mmとした。外側入口144aは、径1mmの横孔144bを6個、径1mmの縦孔144cを6個、それぞれ交互に等間隔(隣接する孔のなす角が30°)に形成した(断面積G1=9.42mm
2)。外側出口147aは、径1mmの横孔147bを3個、径1mmの縦孔147cを3個、それぞれ交互に等間隔(隣接する孔のなす角が60°)に形成した(断面積G4=4.71mm
2)。距離B2は2.7mmとした。保護カバー120の材質は、SUS301Sとした。表面積S1は1052.78mm
2、表面積S2は24.94mm
2、ガス被触表面積Sは1077.72mm
2とした。面積比αは19.7とした。また、ガスセンサ100のセンサ素子110は、幅(
図5における左右長さ)が4mm、厚さ(
図5における上下長さ)が1.5mmとした。多孔質保護層110aはアルミナ多孔質体とし、厚さは400μmとした。
【0068】
[実験例3]
第2円筒部136の軸方向長さを1mm長くした(5.5mm)点以外は、実験例2と同様のガスセンサ100を実験例3とした。なお、距離A3が4.1mm、距離Lが5mmであり、表面積S1は1115.58mm
2、ガス被触表面積Sは1140.52mm
2となった。
【0069】
[実験例4]
第2円筒部136の軸方向長さを1mm短くした(3.5mm)点以外は、実験例2と同様のガスセンサ100を実験例4とした。なお、距離A3が2.1mm、距離Lが3mmであり、表面積S1は989.98mm
2、ガス被触表面積Sは1014.92mm
2となった。
【0070】
[実験例5]
第2円筒部136が突出部136aを備えず、第2円筒部136の軸方向長さを2.1mmとし、ハウジング102の軸方向長さを長くし、大径部142の軸方向長さを長くし(8.6mm)、胴部143の軸方向長さを短くし(胴部143の上端から段差部143bの上面までの軸方向長さが6.2mm)た点以外は、実験例2と同様のガスセンサ100を実験例5とした。なお、距離A3が0.25mm、距離Lが1.5mmであり、表面積S1は789.93mm
2、ガス被触表面積Sは814.87mm
2となった。
【0071】
[実験例6]
図8に示したガスセンサ200を実験例6とした。具体的には、内側保護カバー230は、軸方向長さが17.7mm、第1胴部234の軸方向長さが5.4mm、第1胴部234の外径が11.8mm、第2胴部236の軸方向長さが5.6mm、第2胴部236の外径が8.2mm、先端部238の軸方向長さが4.9mm、先端部238の外径が5.9mmとした。6個の素子室入口227の各々の外部開口面積は0.396mm
2とした(断面積G2=2.38mm
2)。また、距離A1が6.2mm、距離A2が3.6mm、距離A6が1.8mmとした。規制部材227aの規制面と素子室入口227の外側開口面とのなす角θ1は、38°とした。規制部材227aの上下の高さ(
図8の上下の高さ)は1.15mmとした。素子室出口238aは、径1mmの横孔とした(断面積G3=3.14mm
2)。外側保護カバー240は、外側入口244aとして径1mmの角孔244dを6個等間隔に形成し(断面積G1=4.71mm
2)、外側出口247aとして径1.2mmの角孔247dを6個等間隔に形成した(断面積G4=6.78mm
2)。距離B1は−5.7mm、距離B2は2.7mmとした。表面積S1は868.67mm
2、表面積S2は281.15mm
2、ガス被触表面積Sは1149.82mm
2とした。面積比αは10.74とした。それ以外の部分は実験例2と同じとした。
【0072】
[実験例7]
図10に示したガスセンサ300を実験例7とした。具体的には、内側保護カバー330は、第1円筒部334の軸方向長さが5.4mm、第1円筒部334の外径が7.70mm、第2部材335の軸方向長さが5.75mm、第2円筒部336の外径が8.23mm、折り返し部339の軸方向長さが1.8mm、折り返し部339の内径がR0.6mmとした。6個の素子室入口227の各々の外部開口面積は全て同じとし、断面積G2=2.87mm
2とした。また、距離A1が6.0mm、距離A2(=距離A6)が1.8mmとした。規制部材227aの規制面と素子室入口227の外側開口面とのなす角θ1は、38°とした。規制部材227aの上下の高さ(
図8の上下の高さ)は1.15mmとした。素子室出口138aは、径1mmの横孔とした(断面積G3=0.79mm
2)。外側保護カバー340は、外側入口344aとして径1mmの横孔344bを6個等間隔に形成し(断面積G1=4.71mm
2)、外側出口347aとして径1mmの横孔347bを6個等間隔に形成した(断面積G4=4.71mm
2)。距離B1は−6.3mm、距離B2は2.6mmとした。表面積S1は972.57mm
2、表面積S2は178.14mm
2、ガス被触表面積Sは1150.72mm
2とした。面積比αは2.25とした。それ以外の部分は実験例2と同じとした。
【0073】
[実験例8]
外側入口144a及び外側出口147aの径をいずれも0.8mmとした点以外は実験例2と同じガスセンサ100を実験例8とした。なお、距離A3が3.0mm、表面積S1は1053.16mm
2、ガス被触表面積Sは1078.10mm
2、断面積G1は6.03mm
2、断面積G4は3.01mm
2となった。面積比αは19.7となった。
【0074】
[実験例9]
外側入口144a及び外側出口147aの径をいずれも1.2mmとした点以外は実験例2と同じガスセンサ100を実験例9とした。なお、距離A3が3.2mm、表面積S1は1051.65mm
2、ガス被触表面積Sは1076.59mm
2、断面積G1は13.56mm
2、断面積G4は6.78mm
2、面積比αは19.7となった。
【0075】
[実験例10]
内側保護カバー130の距離A4,A5,A7を1.5mmとし、第2円筒部136が突出部136aを備えないものとした点以外は実験例2と同じガスセンサ100を実験例10とした。表面積S1は1028.29mm
2、表面積S2は24.00mm
2、ガス被触表面積Sは1052.29mm
2、断面積G1は9.42mm
2、断面積G2は38.64mm
2、断面積G3は1.77mm
2、断面積G4は4.71mm
2、面積比αは34.20となった。
【0076】
[実験例11]
内側保護カバー130の距離A4,A5,A7を0.5mmとし、第2円筒部136が突出部136aを備えないものとした点以外は実験例2と同じガスセンサ100を実験例10とした。表面積S1は1056.87mm
2、表面積S2は25.89mm
2、ガス被触表面積Sは1082.76mm
2、断面積G1は9.42mm
2、断面積G2は14.45mm
2、断面積G3は1.77mm
2、断面積G4は4.71mm
2、面積比αは12.79となった。
【0077】
[実験例12]
第1円筒部134の軸方向長さを0.5mm短くし(7.9mm)、第1円筒部134の外径を0.5mm大きくした(8.2mm)た点以外は、実験例2と同様のガスセンサ100を実験例12とした。なお、距離A1は1.1mm、距離A4,A5,A7は0.75mm、表面積S1は1042.74mm
2、表面積S2は40.95mm
2、ガス被触表面積Sは1083.69mm
2、断面積G2は17.20mm
2、面積比αは15.22となった。
【0078】
実験例1〜12の外側保護カバー,内側保護カバーのそれぞれの出入口に関する値、表面積S1,表面積S2,ガス被触表面積S,距離A1,距離B1,断面積G1〜G4,面積比αを、表1にまとめて示す。
【0079】
【表1】
【0080】
[評価試験]
実験例1〜12について、NOx濃度の検出感度に対するアンモニア濃度の相対検出感度比[%]を測定した。具体的には、以下のように測定を行った。まず、実験例1のガスセンサをそれぞれ
図2と同様に配管(直径20mm)に取り付けた。そして、この配管内に
図2と同様の向きに測定条件1のガスを流し、ガスセンサの出力が安定したあとの出力値(センサ素子110内のNOx濃度に応じた電流値)を測定した。同様に、測定条件2〜4についてもガスセンサの出力値を測定した。そして、表1の表1の欄外に示す式により検出感度比を測定した。実験例2〜12についても、同様に検出感度比を測定した。測定条件1〜4を表2に示す。また、実験例1〜12の相対検出感度比[%](実験例1の検出感度比を100%としたときの検出感度比の値)を表1に示した。なお、実験例2〜4,6,7,12については、複数回の測定を行った検出感度比の平均値に基づいて相対検出感度比を導出した。実験例2〜4,6,7,12については、相対検出感度比の最大値と最小値についても表1に示した。ここで、保護カバーと接触して被測定ガス中のアンモニアが分解されるほど、表1の欄外に示す式の分子が小さくなるため、検出感度比は小さい値になる。また、実験例1は保護カバーを備えないため、保護カバーによるアンモニアの分解は生じず検出感度比は最大になる。そのため、相対検出感度比[%]が100%(実験例1の検出感度比)に近いほど、保護カバーによる被測定ガス中のアンモニアの分解が抑制されていることを意味する。
【0081】
【表2】
【0082】
図14は、実験例1〜7のガス被触表面積Sと相対検出感度比[%]との関係を示すグラフである。
図14に示すように、ガス被触表面積Sが小さいほど、相対検出感度比は100%に近くなる(大きくなる)傾向にあった。特に、ガス被触表面積Sが1145mm
2以下である実験例2〜5は相対検出感度比が84%以上となっており、被測定ガス中のアンモニアの分解が十分抑制できていた。また、ガス被触表面積Sが1145mm
2を超えると相対検出感度比が急激に低下する傾向が見られた。これらのことから、ガス被触表面積Sが1145mm
2以下であることが好ましいと考えられる。また、ガス被触表面積Sが小さ過ぎる場合には、保護カバーを備えない実験例1に近い状態になりガス導入口111に到達するまでの被測定ガスの経路が単純化することから、ガス被触表面積Sが450mm
2以上が好ましく、500mm
2以上,550mm
2以上,600mm
2以上、650mm
2以上がより好ましいと考えられる。なお、複数回の測定を行った実験例2〜4,6,7を比較すると、ガス被触表面積Sが小さい方が相対検出感度比のばらつき(最大値と最小値との差)が小さい傾向にあった。また、ガス被触表面積Sが1145mm
2以下である実験例2〜4は、実験例6,7と比べて相対検出感度比のばらつきが大幅に抑制されていた。
【0083】
図15は、実験例1,2,6〜11の面積比αと相対検出感度比[%]との関係を示すグラフである。なお、実験例1は保護カバーを備えないため面積比αの値が存在しないが、面積比αは被測定ガスの流れやすさを表す値であることから、実験例1の面積比αは無限大に相当すると仮定して、
図15にプロットした。
図15に示すように、面積比αが大きいほど、相対検出感度比は100%に近くなる(大きくなる)傾向にあった。特に、面積比αが12以上である実験例2,8〜11は相対検出感度比が84%以上となっており、被測定ガス中のアンモニアの分解が十分抑制できていた。実験例2,8〜11の結果から、面積比αが値12以上であることが好ましく、値12.79以上、値13以上、値18以上であることがより好ましいと考えられる。また、面積比αが大き過ぎる場合には、保護カバーを備えない実験例1に近い状態になり被測定ガスの流速が速過ぎてセンサ素子110が冷えやすいことから、面積比αは値35以下が好ましいと考えられる。また、面積比αは値34.20以下が好ましく、値30以下がより好ましく、値27以下がさらに好ましく、値24以下が一層好ましいと考えられる。なお、面積比αが同じ実験例2,8,9間で比較しても、ガス被触表面積Sが小さいほど相対検出感度比が大きい傾向にあった。