(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記透明基板および前記第2光反射部は、前記第1光反射部上で、前記基準面に垂直な方向に長尺状に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の空中映像表示デバイス。
前記光学パネルは、前記基準面内で、前記実像に最も近い側の端部から、前記実像から最も遠い側の端部に向かうにつれて、厚みが段階的または連続的に減少する形状であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の空中映像表示デバイス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1のように、複数の反射面が平行に配置された光学パネルを2枚積層して表示デバイスを構成する場合、必ず、積層する枚数分(2枚)だけ光学パネルを用意しなければならない。このため、表示デバイスを構成する部品点数が増大し、材料費を含む生産コストが増大する。
【0006】
一方、特許文献2では、複数の鏡面部101を含む光学パネル100を1枚だけ用いて表示デバイスを構成していることから、部品点数およびコスト削減の観点では、特許文献1よりも有利な構成と言える。しかし、特許文献2のように、点光源Sから出射される光を、いずれかの鏡面部101での1回反射によって空中(実像の結像位置)に導く構成では、点光源Sから出射される光が発散光であるため、点光源Sから鏡面部101までの距離、または鏡面部101から位置Bまでの距離が長くなると、実像の結像状態の劣化が起こる。
【0007】
さらに、特許文献2のように、光学パネル100に対して、点光源Sと、実像が結像する位置Bとを互いに反対側の空間に位置させる構成では、上述のように実像を結像させる原理上、複数の鏡面部101を奥行方向(
図24Aでは点光源Sと位置Aとを結ぶ方向)に並べる必要がある。このため、光学パネル100が奥行方向に延びる形状となり、表示デバイスを配置する際に、奥行方向に大きなスペースを確保することが必要となる。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、光学パネルを単層で用いる構成で、部品点数およびコスト削減を図るとともに、実像の良好な結像状態を実現でき、しかも、奥行方向の配置スペースを削減することができる空中映像表示デバイスと、その空中映像表示デバイスを備えた空中映像表示装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係る空中映像表示デバイスは、物体の実像を映像として空中に表示する空中映像表示デバイスであって、平板状の光学パネルを有し、前記光学パネルは、該光学パネルの厚み方向に垂直な一方向に複数の板状部材が並んだ積層体と、前記積層体における該光学パネルの厚み方向に垂直な一側面を、前記複数の板状部材にわたって覆う平面状の第1光反射部とを有しており、前記複数の板状部材は、それぞれ、透明基板と、前記透明基板における前記一方向に垂直な2面の少なくとも一方に、前記第1光反射部と垂直に位置する平面状の第2光反射部とを有しており、前記第1光反射部および各第2光反射部の両方に垂直な任意の面を基準面としたとき、前記光学パネルは、前記物体から出射される発散光に含まれる各光線が、前記第1光反射部といずれかの前記第2光反射部とで合計2回反射されて前記物体とは異なる位置に向かい、かつ、前記2回の反射が前記各光線を投影した前記基準面内で再帰反射となるように配置されることにより、該光学パネルに対して前記物体と同じ側の第1の空間に前記実像を、前記光学パネルに対して前記物体とは反対側の第2の空間に前記物体の虚像をそれぞれ提供する。
【0010】
前記第1光反射部の法線は、前記2回の反射が前記基準面内で再帰反射となるように、前記基準面に投影した、前記光学パネルに入射する前記発散光の中心光線に対して、前記基準面内で傾いていることが望ましい。
【0011】
前記透明基板および前記第2光反射部は、前記第1光反射部上で、前記基準面に垂直な方向に長尺状に設けられていることが望ましい。
【0012】
前記第1光反射部は、金属膜であってもよい。
【0013】
前記第1光反射部は、シート状のミラーと、接着層とを有していてもよい。
【0014】
前記接着層の屈折率と、前記積層体に含まれる前記透明基板の屈折率との差は、0.01以下であることが望ましい。
【0015】
前記光学パネルは、前記基準面内で、前記実像に最も近い側の端部から、前記実像から最も遠い側の端部に向かうにつれて、厚みが段階的または連続的に減少する形状であることが望ましい。
【0016】
前記空中映像表示デバイスは、前記光学パネルを複数有しており、前記複数の光学パネルは、前記基準面内でつながるように、並んで配置されていてもよい。
【0017】
前記複数の光学パネルは、前記基準面内での各第1光反射部の法線の向きが、前記基準面内で各光学パネルにおける連結側とは反対側の端部同士を結ぶ線分に垂直な軸に対して傾斜し、かつ、対称となるように配置されていることが望ましい。
【0018】
本発明の他の側面に係る空中映像表示装置は、上述した空中映像表示デバイスと、前記物体とを含んでいる。
【発明の効果】
【0019】
平板状の光学パネルは、物体からの発散光に含まれる各光線の、第1光反射部および第2光反射部での2回の反射が、基準面内で再帰反射となるように配置されているため、物体から出射される光が発散光であっても、実像の良好な結像状態を実現することができる。しかも、1枚の光学パネルを上記のように配置することによって実像を提供するため、複数の光学パネルを積層して実像を提供する構成に比べて、表示デバイスの部品点数およびコストの削減を図ることができる。
【0020】
また、光学パネルは、上記各光線の2回の反射により、該光学パネルに対して物体と同じ側の第1の空間に実像を提供し、光学パネルに対して物体とは反対側の第2の空間に虚像を提供するため、第1光反射部に対して各第2光反射部が物体側(実像側)に位置するように、平板状の光学パネルを立てて使用する形態が可能となる。つまり、平板状の光学パネルを立てた配置で、上記それぞれの空間に実像および虚像を提供することが可能となる。このような光学パネルの配置では、光学パネルを寝かした構成に比べて、つまり、物体と実像とを光学パネルに対して互いに反対側の空間に位置させる構成に比べて、表示デバイスの奥行方向の長さが短くなる。これにより、表示デバイスの奥行方向の配置スペースを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】本発明の実施の一形態に係る空中映像表示デバイスの一例である表示デバイスの平面図である。
【
図2】上記表示デバイスが有する光学パネルの断面図である。
【
図5】上記積層構造体から切断された積層体の斜視図である。
【
図6】上記積層体の側面に第1光反射部を形成した光学パネルの斜視図である。
【
図8】上記他の表示デバイスが有する光学パネルの断面図である。
【
図10】空中映像表示装置の概略の構成を示す説明図である。
【
図11】物体の任意の1点から出射される光を模式的に示す説明図である。
【
図12】物体から出射される発散光に含まれる各光線のZX面内での振る舞いを模式的に示す説明図である。
【
図13】上記各光線のYZ面内での振る舞いを模式的に示す説明図である。
【
図14】複数の反射面が平行に配置された2枚の光学パネルを、各光学パネルの反射面が平面視で直交するように積層した表示デバイスの製法の一部を示す説明図である。
【
図15】上記表示デバイスの他の製法の一部を示す説明図である。
【
図16】2枚の光学パネルを積層した上記表示デバイスを、平面上に並べて大判化したときのデバイスの平面図である。
【
図17】本発明の実施の一形態に係る表示デバイスを平面上に並べて大判化したときのデバイスの平面図である。
【
図18】上記表示デバイスの光学パネルにおける各パラメータを図示した説明図である。
【
図19A】上記光学パネルにおける第2光反射部のピッチと、上記光学パネルの厚みとの関係を模式的に示す説明図である。
【
図19B】上記光学パネルの第1光反射部と第2光反射部とで入射光の2回反射が起こる状態を模式的に示す説明図である。
【
図20】上記光学パネルがZX面内で所定の角度だけ傾く場合の、ZX面内での、上記光学パネルの幅と、上記光学パネルから実像までの距離と、観察者による実像の観察距離との関係を模式的に示す説明図である。
【
図21】上記光学パネルの他の構成を示す説明図である。
【
図22】上記光学パネルのさらに他の構成を示す説明図である。
【
図23】上記空中映像表示装置の他の構成を示す説明図である。
【
図24A】従来の表示デバイスにおいて、物体と虚像との位置関係を模式的に示す説明図である。
【
図24B】上記従来の表示デバイスにおいて、物体と実像との位置関係を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本明細書において、数値範囲をa〜bと表記した場合、その数値範囲に下限aおよび上限bの値は含まれるものとする。また、本発明は、以下の内容に限定されるものではない。
【0023】
〔空中映像表示デバイスの構成について〕
図1A〜
図1Cは、本実施形態の空中映像表示デバイスの一例である表示デバイス1の平面図、正面図および側面図である。なお、これらの図において、z方向は、後述する光学パネル1aの厚み方向に対応しており、x方向は、光学パネル1aの厚み方向(z方向)に垂直な一方向であって、光学パネル1aの幅方向に対応しており、y方向は、z方向およびx方向に垂直な方向であって、光学パネル1aの上下方向に対応している。
【0024】
表示デバイス1は、物体(被投影物)の実像を映像として空中に表示するデバイスであり、平板状の光学パネル1aで構成されている。光学パネル1aは、積層体2と、平面状の第1光反射部3とを備えている。
【0025】
積層体2は、x方向に複数の板状部材10が並んで(積層されて)構成されている。第1光反射部3は、積層体2における光学パネル1aの厚み方向に垂直な一側面(xy面)を、複数の板状部材10にわたって覆うように設けられている。第1光反射部3は、例えばアルミニウムや多層膜などの金属膜3aで構成されている。金属膜3aは、蒸着やスパッタなどの手法で積層体2の側面に容易に形成することができる。このため、金属膜3a(第1光反射部3)と、後述する第2光反射部12(
図2参照)とからなる2面コーナーミラーを容易に形成することが可能となる。また、第1光反射部3を金属膜3aで構成する場合は、金属膜3aを蒸着等の手段で形成できるため、第1光反射部3を積層体2の側面に接着するための接着層が不要となり、上記接着層による光量ロスや不要な屈折もなくなる。
【0026】
図2は、光学パネル1aのzx面での断面図である。各板状部材10は、透明基板11と、第2光反射部12とをそれぞれ有している。透明基板11は、例えば透明なガラスや樹脂で構成されており、y方向に長尺状に形成されている。第2光反射部12は、透明基板11におけるx方向に垂直な2つの面(yz面)のうちの一方に、アルミニウムや多層膜などの金属膜の蒸着によって平面状に形成されており、第1光反射部3と垂直に位置している。また、第2光反射部12は、第1光反射部3上で、y方向に長尺状(帯状)に形成されている。各板状部材10は、各第2光反射部12がx方向に所定間隔で平行に並ぶように、接着剤21(例えばエポキシ樹脂)を介して接着されている。
【0027】
図3は、他の光学パネル1aのzx面での断面図である。光学パネル1aの積層体2において、各板状部材10は、透明基板11の対向する2面の両方に第2光反射部12を有していてもよい。つまり、第2光反射部12は、透明基板11におけるx方向に垂直な2つの面の両方に平面状に形成されていてもよい。この場合でも、第1光反射部3と各第2光反射部12とで、2面コーナーミラーが形成される。
【0028】
図1A等で示した光学パネル1aは、例えば以下の手順によって製造される。まず、
図4に示すように、平板状の透明基板11の片面または両面に第2光反射部12を蒸着等によって形成した板状部材10を、接着剤21を介して複数層積層して、積層構造体30を得る。そして、
図5に示すように、積層構造体30をワイヤーソーなどによって等間隔で切断して積層体2を得る。なお、同図の破線は、ワイヤーソーによる切断線を示している。そして、得られた積層体2の切断面を研磨した後、
図6に示すように、積層体2の側面(上記切断面または切断面と反対側の面)に金属膜3aを蒸着して第1光反射部3を形成する。これによって、光学パネル1aが得られる。
【0029】
図7A〜
図7Cは、他の表示デバイス1の平面図、正面図および側面図である。表示デバイス1は、積層体2の一側面(xy面)に第1光反射部3を接着した光学パネル1aで構成されていてもよい。接着タイプの第1光反射部3は、シート状のミラー3bと、接着層3cとを有して構成される。シート状のミラー3bは、薄いガラス板や樹脂フィルムからなる基材上に反射膜を形成して構成されている。接着層3cは、接着剤または粘着シートで構成されている。なお、接着層3cを構成する接着剤は、接着剤21と同じ材料(例えばエポキシ樹脂)であってもよいし、異なる材料であってもよい。このような光学パネル1aは、
図4および
図5の過程を経て得られた積層体2の側面に、接着層3cが対向するように第1光反射部3を貼り合わせることによって得ることができる。
【0030】
接着タイプの第1光反射部3を用いる場合でも、積層体2としては、
図2および
図3と同様の構成を採用することができる。すなわち、積層体2は、
図8に示すように、透明基板11の片面に第2光反射部12を有する板状部材10をx方向に複数積層した構成であってもよいし、
図9に示すように、透明基板11の両面に第2光反射部12を有する板状部材10をx方向に複数積層した構成であってもよい。いずれの場合でも、第1光反射部3と各第2光反射部12とが垂直となるように、第1光反射部3が積層体2の側面に貼り合わされて光学パネル1aが構成され、第1光反射部3と各第2光反射部12とで、2面コーナーミラーが形成される。
【0031】
ここで、接着タイプの第1光反射部3を用いる場合において、接着層3cの屈折率をnaとし、積層体2に含まれる透明基板11の屈折率をnbとしたとき、屈折率naと屈折率nbとの差は、0.01以下であることが望ましい。例えば、透明基板11aとして、屈折率na=1.52〜1.53のガラスを用いる場合、接着層3cとして、屈折率nb=1.528の透明なエポキシ系接着剤を用いることができる。このようにすることで、透明基板11と接着層3cとの界面でのフレネル反射による不要光の発生を抑え、上記不要光によるゴーストの発生を抑えることができる。同様の観点から、各板状部材10を接着する接着剤21についても、透明基板11との屈折率差が0.01以下であることが望ましく、接着層3cとの屈折率差も0.01以下であることが望ましい。
【0032】
なお、光学パネル1aは、片面または両面(対向する2面)に反射面を形成した角柱を積層して積層体2を形成し、この積層体2を、反射面が形成された1枚のガラス板に接着するなどの方法で作製されてもよい。この場合は、角柱の積層によって積層体2が直接得られるため、
図5で示した切断工程を不要として、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0033】
〔光学パネルの配置および実像等の観察原理について〕
図10は、本実施形態の空中映像表示装置40の概略の構成を示す説明図である。なお、同図では、空中映像表示装置40の表示デバイス1の奥行方向をZ方向とし、Z方向に垂直な面内で上下方向をY方向とし、YZ面に垂直な左右方向をX方向としている。なお、後述するように、表示デバイス1はZX面内で傾き角θ(°)だけ傾いているため、
図10におけるX方向およびZ方向は、
図1A等で示したx方向およびz方向と一致していないが、Y方向については、
図1A等で示したy方向と一致している。
【0034】
空中映像表示装置40は、上述した構成の表示デバイス1(光学パネル1a)と、物体OBとを有している。物体OBは、3次元の物体であってもよいし、画像を表示する表示装置であってもよい。また、表示デバイス1には、物体OBそのものが発光する光が入射してもよいし、物体OBに光が当たったときに周囲に散乱される光(散乱光)が入射してもよい。
【0035】
図10に示すように、平板状の光学パネル1aは、第1光反射部3が積層体2に対して物体OBとは反対側に位置し、かつ、積層体2に含まれる透明基板11および第2光反射部12が全て、第1光反射部3上で、ZX面に垂直なY方向に長尺状に位置するように配置される。しかも、光学パネル1aは、ZX面内で傾くように配置されている(
図12参照)。これにより、物体OBから入射する光線を、第1光反射部3およびいずれかの第2光反射部12で合計2回反射させて、物体OBの実像Rおよび虚像Q(
図13参照)を観察者に観察させることができる。以下、その観察原理について説明する。
【0036】
図11は、物体OBの任意の1点から出射される光を模式的に示している。物体OBから出射される光が、自ら発光する光である場合、あるいは、照明光が物体OBに入射して反射された光である場合のいずれにおいても、光は物体OBからある広がりを持った光束として空間に発散していく。このとき、特定の方向の光を光線(ベクトル)と捉えると、空間では3次元的なベクトルの集まりとして光束を表現できる。各ベクトルは、任意の成分(例えばZX面内の成分とYZ面内の成分)に分解できるため、このように各ベクトルを任意の成分に分解して考えることで、本実施形態の空中映像表示装置40における光線の振る舞いを分かりやすく説明することができる。
【0037】
図12は、物体OBの任意の1点から出射される発散光に含まれる各光線のZX面内での振る舞いを模式的に示している。なお、
図12では、上記各光線の例として、3つの光線L1〜L3を考えており、そのうち、光線L1が、上記発散光の中心光線(例えば強度の最も高い光線)に相当している。上記のZX面は、第1光反射部3および各第2光反射部12の両方に垂直な任意の面であるが、この面のことを、以下では基準面と呼ぶこともある。
【0038】
本実施形態では、光学パネル1aは、物体OBの任意の1点から出射される発散光に含まれる各光線が、第1光反射部3といずれかの第2光反射部12とで合計2回反射されて、物体OBとは異なる位置に向かい、かつ、その2回の反射が上記各光線を投影したZX面内で再帰反射となるように配置されている。より詳しくは、上記2回の反射がZX面内で再帰反射となるように、光学パネル1aの第1光反射部3の法線Nが、ZX面に投影した、光学パネル1aに入射する上記発散光の中心光線(光線L1)に対して、ZX面内で傾き角θだけ傾いている。
【0039】
なお、光学パネル1aに向かう光線L1の空気中での進行方向(入射方向)は、表示デバイス1の奥行方向(Z方向)に沿っているため、表示デバイス1の奥行方向に対して第1光反射部3の法線NがZX面内で傾き角θだけ傾くように光学パネル1aを配置することにより、ZX面内で光線L1と法線Nとを傾き角θだけ傾ける構成を実現することができる。
【0040】
このように光学パネル1aが配置されていることにより、物体OBの任意の1点から出射された発散光に含まれる各光線L1〜L3は、光学パネル1aに入射して第1光反射部3およびいずれかの第2光反射部12で反射された後、光学パネル1aに対して物体OBと同じ側の空間SP1(第1の空間)に向かう。なお、各光線L1〜L3の第1光反射部3および第2光反射部12での反射の順序は特に限定されず、第2光反射部12および第1光反射部3の順に反射されてもよいし(光線L1、L2参照)、第1光反射部3および第2光反射部12の順に反射されてもよい(光線L3参照)。このとき、ZX面内では、第1光反射部3および第2光反射部12での2回反射が、2面コーナーミラーによる再帰反射となるため、各光線L1〜L3は、空間SP1内で、Z方向およびX方向においては物体OBと同じ位置で、Y方向には物体OBと異なる位置に集まる(
図10参照)。これにより、空間SP1内の上記位置に、物体OBの実像Rが良好に結像される。
【0041】
一方、
図13は、物体OBから出射される光線のYZ面内での振る舞いを模式的に示している。物体OBの任意の1点から出射された発散光に含まれる各光線は、光学パネル1aに入射して第1光反射部3およびいずれかの第2光反射部12で反射された後、光学パネル1aに対して物体OBと同じ側の空間SP1に向かう。YZ面内では、第1光反射部3および第2光反射部12での2回の反射により、物体OBからの光の発散状態が維持されるため、観察者が空間SP1側から、光線の進行方向とは逆向きに光学パネル1aを見ると、光学パネル1aに対して物体OBとは反対側の空間SP2(第2の空間)に、物体OBの虚像Qを観察することができる。なお、空間SP2で虚像Qが観察される位置は、光学パネル1aから空間SP1側に出射された発散光を逆トレースして光学パネル1aを透過させたときの集光位置である。
【0042】
このように、複数の第2光反射部12が第1光反射部3と垂直に位置するように、積層体2の側面を第1光反射部3で覆った平板状の光学パネル1aを用いることにより、上述した光学パネル1aの傾斜配置によって、空間SP1に物体OBの実像Rを提供することができる。このように、光学パネル1aの単層(1枚)の構成で実像Rを提供できるため、複数の光学パネルを積層する構成に比べて、表示デバイス1の部品点数およびコストの削減を図ることができる。
【0043】
また、光学パネル1aは、物体OBからの発散光に含まれる各光線の、第1光反射部3およびいずれかの第2光反射部12での2回の反射がZX面内で再帰反射となるため、物体OBから出射される光が発散光であっても、ZX面内において、実像Rの結像位置に各光線を集光させて、実像Rの良好な結像状態を実現することができる。
【0044】
また、例えば、光学パネルを寝かして配置して、物体と実像とを上記光学パネルに対して互いに反対側の空間に位置させる構成では、実像を空中に結像させる原理上、上記光学パネルが奥行方向に延びた形状となる。その結果、表示デバイスを配置する際に、奥行方向に大きなスペースを確保することが必要となる(
図24A、
図24B参照)。
【0045】
これに対して、本実施形態では、上述のように、光学パネル1aは、物体OBからの発散光に含まれる各光線の第1光反射部3および第2光反射部での2回反射により、光学パネル1aに対して物体OBと同じ側の空間SP1に実像Rを提供し、光学パネル1aに対して物体OBとは反対側の空間SP2に虚像Qを提供するため、
図10等に示したように、第1光反射部3に対して第2光反射部12が物体OB側(実像R側)となるように、平板状の光学パネル1aを立てて使用することが可能となる。このような光学パネル1aの配置では、
図24Aの構成に比べて、表示デバイス1の奥行方向(Z方向)の長さが短くなり、表示デバイス1の配置において、実用上、奥行方向の空間を大きく占有することがなくなる。したがって、表示デバイス1の奥行方向の配置スペースを削減することができる。
【0046】
つまり、本実施形態の構成によれば、実像Rと虚像Qとを両方観察可能な構成でありながら、部品点数およびコストを削減しつつ、実像Rの結像状態が良好で、奥行方向の配置スペースを削減できる表示デバイス1および空中映像表示装置40を実現することが可能となる。
【0047】
特に、第1光反射部3の法線Nは、第1光反射部3および第2光反射部12での2回の反射がZX面内で再帰反射となるように、ZX面に投影した光線L1(光学パネル1aに入射する上記発散光の中心光線)に対して、ZX面内で傾き角θだけ傾いているため、ZX面内で上記の再帰反射を確実に実現して、実像Rの良好な結像状態を確実に実現することができる。
【0048】
また、積層体2に含まれる透明基板11および第2光反射部12は全て、第1光反射部3上で、ZX面に垂直なY方向に長尺状に設けられているので、Y方向において、光学パネル1aに斜めから入射する物体OBからの発散光を発散状態のまま(第1光反射部3および第2光反射部12にてY方向の光束幅を規制することなく)、空間SP1側へ反射させることができる。これにより、空間SP1内には上述の再帰反射によって結像状態の良好な実像Rを提供しつつ、上記発散光が空間SP2内で集光する位置に虚像Qを提供する構成を確実に実現することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態の構成によれば、さらに以下の効果を得ることもできる。すなわち、用いる光学パネル1aの枚数が、積層タイプに比べて減るため、上記した部品点数および材料費等のコスト削減のみならず、表示デバイス1の軽量化も図れる。さらに、光学パネル1aが単層であることで、光学パネルを2枚積層する場合に比べて厚みが確実に減る。このため、1つの積層構造体30(
図4参照)から、1つの表示デバイス1を作製するのに必要な部材(積層体2)の取り数が、積層タイプ(光学パネル2枚分)よりも増える。これにより、デバイスの生産性(量産性)を向上させることも可能となる。なお、光学パネル1aの厚みの数値例については後述する。
【0050】
また、
図14は、複数の反射面が平行に配置された2枚の光学パネルを、各光学パネルの反射面が平面視で直交するように積層した表示デバイス50の製法の一部を示している。なお、最も外側の枠よりも内側の格子状の実線は、反射面を示しているものとする(他の図面でも同様とする)。表示デバイス50は、通常、平面視で正方形(または長方形)の形状で、かつ、奥行方向が各反射面と45°の角度をなす状態で配置される(2面コーナーミラーによる実像形成のため)。このため、表示デバイス50は、2枚の上記光学パネルを積層して積層体50aを得た後、表示デバイス50の外形を構成する各辺が積層体50aの各反射面と45°の角度をなすように、積層体50aから上記正方形(または長方形)の領域を切り出すことによって形成される。つまり、積層タイプの表示デバイス50の作製においては、このような切り出し工程が必要である。
【0051】
また、
図15は、表示デバイス50の他の製法の一部を示している。同図のように、積層体50aから表示デバイス50を切り出すと、4つの直角二等辺三角形状の破片部50bが残る。これら4つの破片部50bを、1つの正方形の形状となるように並べて貼り合わせることにより、表示デバイス50を製造することもできる。この場合は、各破片部50bを並べて貼り合わせる工程(タイリング工程)が必要となる。
【0052】
これに対して、本実施形態の表示デバイス1(光学パネル1a)は、積層体2の側面に第1光反射部3を形成することによって得られ、これをZX面内で傾ける配置によって、2面コーナーミラーによる反射を実現できる。つまり、積層タイプで必要であった上記の切り出し工程やタイリング工程を行わなくても、2面コーナーミラーによる反射を実現できる。よって、デバイスの製造において、上記の切り出し工程等が不要になる分、製造工程を簡略化することができる。
【0053】
また、
図16は、複数の表示デバイス50を平面上に並べて大判化(大面積化)したデバイスの平面図である。大判のデバイスを構成する場合、個々の表示デバイス50によって結像される実像を滑らかにつなげるために、隣り合う表示デバイス50のつなぎ目で反射面が面一となるように、隣り合う表示デバイス50を精度よくつなぎ合わせることが必要である。各表示デバイス50においては、つなぎ合わせの境界線B1・B2の両方に対して、反射面が傾斜しているため、境界線B1・B2に沿う各方向において、精度よく隣り合う表示デバイス50をつなぎ合わせることが必要となる。
【0054】
これに対して、
図17は、複数の表示デバイス1(光学パネル1a)を平面上に並べて大判化したデバイスの平面図である。複数の光学パネル1aは、各々の第1光反射部3が面一となるように並べられる。このとき、各光学パネル1aの第2光反射部12は、つなぎ合わせの境界線B1・B2のうち、一方の境界線B2と平行であり、他方の境界線B1と交わるため、境界線B2に沿う方向の光学パネル1aの位置ズレは許容され、境界線B1に沿う方向においてのみ、つなぎ目で第2光反射部12がB2方向に面一となるように、精度よく隣り合う光学パネル1aをつなぎ合わせることが必要となる。このように、一方の境界線B2に沿う方向の位置ズレが許容されるため、大判化の際の各光学パネル1aのつなぎ合わせ(タイリング)が、
図16で示した積層タイプの場合よりも容易になる。
【0055】
〔光学パネルの厚みの数値例〕
次に、光学パネル1aの厚みの数値例について説明する。光学パネル1aは、板状部材10を多数枚積層して積層構造体30(
図4参照)を作製し、この積層構造体30を所定間隔で切断して切断面を研磨した後、切断面に金属膜からなる第1光反射部3を形成することで作製されている。ここでは、上記の板状部材10は、薄板ガラス等の透明基板11の両面にアルミ等の金属膜をコートして第2光反射部12を形成したもので構成されているとする。
【0056】
図18に示すように、光学パネル1aの第1光反射部3に垂直な方向の厚みをt(mm)とし、複数の第2光反射部12の形成ピッチ(配置間隔)をp(mm)とする。また、第1光反射部3の法線Nは、基準面(ZX面)内で物体からの発散光の中心光線(光線L1)に対して、傾き角θ(°)だけ傾いているものとする。また、透明基板11を構成するガラスの屈折率をnとし、空気の屈折率をn
0とする。なお、光学パネル1aの厚みtは、積層体2の厚みと第1光反射部3の厚みとの和となるが、第1光反射部3(金属膜)の厚みは例えば数nm〜数百nmであり、積層体2の厚みに比べて十分に薄いため、ここでは積層体2の厚みとほぼ等しいものとする。
【0057】
図19Aは、ピッチpと厚みtとの関係を模式的に示しており、
図19Bは、第1光反射部3と第2光反射部12とで入射光の2回反射が起こる状態を模式的に示している。透明基板11に入射角θで入射する光線の透明基板11内での屈折角をθ’(°)としたとき、屈折の法則より、
n
0×sinθ=n×sinθ’ ・・・(1)
が成り立つ。また、
図19Aより幾何学的に、ピッチpは、厚みtを用いて以下の式で表される。
p=t×tanθ’×2 ・・・(2)
【0058】
第1光反射部3と第2光反射部12とで2回反射が起こるためには、pは、式(2)の右辺よりも小さいことが条件となる(
図19B参照)。すなわち、
p<t×tanθ’×2 ・・・(3)
を満足することが必要である。
【0059】
ここで、例えば、透明基板11として、厚み0.5mmの薄板ガラス(Schott社のD263Teco)を使用し、このガラスの両面にアルミ膜を100nm程度蒸着して第2光反射部12を形成した場合、板状部材10を積層したときの第2光反射部のピッチpは、透明基板11の厚み(0.5mm)にほぼ等しい。このため、光学パネル1aにて2回反射が起こるためには、p=0.5を式(3)に代入して、
0.5<t×tanθ’×2 ・・・(4)
を満足することが必要である。
【0060】
一方、上記した傾き角θを例えば22.5°とした場合、上記薄板ガラスの屈折率n=1.523とし、n
0=1とすると、式(1)より、
sin22.5°=1.523×sinθ’
が成り立つため、この式より、
θ’=14.55°
となる。したがって、得られたθ’の値を式(4)に代入してtについて整理すると、
t>0.963
が得られる。すなわち、光学パネル1aの厚みtが0.963mmよりも大きい場合、第1光反射部3と第2光反射部12とで入射光の2回反射が起こり、1mm程度の薄さで上記2回反射を実現できることになる。
【0061】
2枚の光学パネルを積層してデバイスを構成する方式では、各光学パネルにおける反射面の形成ピッチを上記と同様に0.5mmとした場合、1枚の光学パネルの厚みは1.5mm程度となることがわかっている。したがって、上記の数値例では、光学パネル1aの厚みは、積層タイプ(光学パネル2枚分)の約2/3の厚みでよいことになる。よって、このことからも、本実施形態の光学パネル1aは、デバイスの軽量化および生産性向上に寄与できると言える。
【0062】
図20は、光学パネル1aの傾き角θが22.5°の場合の、ZX面内での、光学パネル1aの幅W(第2光反射部12が並ぶ方向の幅)と、光学パネル1aから実像R(または物体OB)までの距離Dと、観察者による実像Rの観察距離Eとの関係を模式的に示している。ZX面内において、光学パネル1aの幅Wを例えば400mmとすると、光学パネル1aからの距離Dが500mmとなる位置に、上述した入射光の2回反射によって実像Rが表示される。観察者は、この実像RをE=500mmの距離から観察することができる。
【0063】
〔光学パネルの他の構成〕
図21は、本実施形態の光学パネル1aの他の構成を示している。光学パネル1aは、第1光反射部3に垂直な方向の厚みtが、ZX面内で、実像Rに最も近い側の端部E1から、実像Rから最も遠い側の端部E2に向かうにつれて、連続的に減少する形状であってもよい。
【0064】
上述したように、光学パネル1aをZX面内で傾き角θだけ傾ける構成では、物体OBから出射された光線の光学パネル1aに対する入射角が、端部E1から端部E2に向かうにつれて大きくなる。このため、端部E1から端部E2に向かうにつれて、物体OBから出射された光線が、光学パネル1aの厚み方向(第1光反射部3に垂直な方向)の深くまで入射しにくくなる。その結果、物体OBから出射されて第1光反射部3および第2光反射部12で2回反射される光線の量が、端部E1から端部E2に向かうにつれて少なくなり、端部E1・E2を結ぶ幅方向において、再帰反射光の光量ムラが生じる。
【0065】
しかし、光学パネル1aの厚みtを、ZX面内で端部E1から端部E2に向かうにつれて連続的に減少させることにより、光学パネル1aの上記幅方向のいずれの入射位置においても、物体OBから出射された各光線を光学パネル1aの厚み方向の深くまで入射させて、第1光反射部3および第2光反射部12にて2回反射させることが可能となる。これにより、光学パネル1aの上記幅方向の各入射位置において、2回反射される光線の量を均一にすることができる。その結果、上記幅方向において、再帰反射光に光量ムラが生じるのを抑えることができ、観察される実像Rに輝度ムラが生じるのを抑えることができる。
【0066】
図22は、本実施形態の光学パネル1aのさらに他の構成を示している。同図に示すように、光学パネル1aは、第1光反射部3に垂直な方向の厚みtが、ZX面内で、実像Rに最も近い側の端部E1から、実像Rから最も遠い側の端部E2に向かうにつれて、段階的に減少する形状であってもよい。なお、「厚みtが段階的に減少する」とは、光学パネル1aを、端部E1・E2を結ぶ幅方向において複数の領域に分割したときに、各領域同士では厚みが互いに異なり、同じ領域では厚みが一定となるように、端部E1から端部E2に向かって光学パネル1aの厚みtが変化(減少)することを指す。同図では、例として、光学パネル1aの厚みtを3段階に変化させているが、2段階以上の変化であればよい(段階数は特に限定されない)。
【0067】
このように光学パネル1aの形状を設定した場合でも、物体OBから出射された光線の入射角が大きくなる端部E2およびそれに近い位置では、各光線を光学パネル1aの厚み方向の深くまで入射させて、第1光反射部3および第2光反射部2にて2回反射させることが可能となる。これにより、上記幅方向における厚みが一定の光学パネル1aを用いる場合に比べて、端部E2およびそれに近い位置での再帰反射光の光量を増大させて、上記幅方向における再帰反射光の光量ムラを抑えることが可能となる。
【0068】
〔空中映像表示装置の他の構成〕
図23は、本実施形態の空中映像表示装置40の他の構成を模式的に示している。同図のように、空中映像表示装置40の表示デバイス1は、複数の光学パネル1a・1aを有していてもよい。複数の光学パネル1a・1aは、ZX面内でつながるように、並んで配置されている。なお、ここでは、光学パネル1aを2枚並べて配置しているが、3枚以上並べて配置してもよい。また、2枚の光学パネル1a・1aは、各第1光反射部3が面一となるように並べられてもよいが、ここでは、ZX面内での各第1光反射部3の法線Nの向きが、ZX面内で各光学パネル1aにおける連結側とは反対側の端部F1・F1同士を結ぶ線分Vに垂直な軸AXに対して傾斜し、かつ、対称となるように配置されている。
【0069】
上記のように複数の光学パネル1a・1aをZX面内でつながるように並べることにより、例えば物体OBを大画面の液晶表示装置で構成した場合には、そのような大画面の液晶表示装置から出射される光を各光学パネル1a・1aにて反射させて、大画面の実像Rを空中に結像させることが可能となる。
【0070】
また、複数の光学パネル1a・1aは、ZX面内において、各第1光反射部3の法線Nの向きが、軸AXに対して傾斜し、かつ、対称となるように配置されているので、各第1光反射部3が面一となるように各光学パネル1a・1aを並べて配置する場合に比べて、表示デバイス1の奥行方向(Z方向)の長さを短くすることができる。これにより、複数の光学パネル1a・1aを用いる場合でも、表示デバイス1の奥行方向の配置スペースを削減できる薄型の構成で、大画面の実像Rを空中に結像させることが可能となる。